特許第5685183号(P5685183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685183
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】ステント付き心臓弁装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20150226BHJP
   A61M 29/00 20060101ALI20150226BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   A61F2/24
   A61M29/00
   A61L27/00 E
【請求項の数】17
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-506449(P2011-506449)
(86)(22)【出願日】2009年4月23日
(65)【公表番号】特表2012-508033(P2012-508033A)
(43)【公表日】2012年4月5日
(86)【国際出願番号】US2009041536
(87)【国際公開番号】WO2009132187
(87)【国際公開日】20091029
【審査請求日】2012年4月23日
(31)【優先権主張番号】61/125,235
(32)【優先日】2008年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/428,737
(32)【優先日】2009年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ヒル アレキサンダー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】キャップス マーク ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】モロー ジョセフ シー
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド ステュアート アール
(72)【発明者】
【氏名】シェイ ジャニス エル
(72)【発明者】
【氏名】レッドモンド ジェラルド エル
(72)【発明者】
【氏名】ハウス モーガン エム
(72)【発明者】
【氏名】エバーハート キャロル イー
(72)【発明者】
【氏名】ラフィイー ナッサー
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−516870(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0210304(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/127765(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の端部と、中央長手方向軸と、少なくとも2つの延在支柱と前記少なくとも2つの延在支柱のそれぞれの間にあるピークおよび谷の略正弦波構造部とを含むワイヤ部分と、を備え、前記延在支柱が前記環状部材の正弦波構造部より大きな高さを有し且つ弁尖の取付け領域を提供する環状部分と、
前記環状部分の前記第1の端部から延在する心房部分であって、前記環状部分の前記長手方向軸に対して半径方向外向きに延在する複数のフレアを備えている心房部分と、
前記環状部分の前記第2の端部から延在する心室部分と、を備え、
該心部分が、前記環状部分の前記長手方向軸に対して半径方向外向きに延在し第1の高さを有している少なくとも1つのフレアと、
前記環状部分の外縁によって規定され、前記環状部分の第2の端部から延び、前記第1の高さより小さい第2の高さを有する第1部分と、を有している、
ことを特徴とする人工心臓弁用ステントフレーム。
【請求項2】
前記フレームは、体腔への経皮的送達および移植のために圧縮可能かつ拡張可能である、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項3】
前記環状部分、前記心房部分、および前記心室部分のうちの少なくとも1つは、形状記憶材料を含む、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項4】
前記延在支柱のそれぞれは、前記中央長手方向軸にほぼ平行である方向に延在する、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項5】
前記心房部分の前記フレアのそれぞれは、前記環状部分のピークから延在する第1の端部と、前記環状部分の隣接するピークから延在する第2の端部と、を有する、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項6】
前記少なくとも2つの延在支柱のそれぞれは、前記環状部分の2つの隣接するピークから、および前記ステントフレームの前記心室部分へ向かって延在する、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項7】
前記ステントフレームの内部の中で2つの隣接する延在支柱に取り付けられる第1の弁尖と、前記ステントフレームの前記内部の中で2つの隣接する延在支柱に取り付けられる第2の弁尖と、をさらに備えている、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項8】
前記ステントフレームの前記内部の中で2つの隣接する延在支柱に取り付けられる第3の弁尖をさらに備えている、
請求項7に記載のステントフレーム。
【請求項9】
前記環状部分、前記心房部分、および前記心室部分は、一体構造を備えている、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項10】
前記延在支柱のそれぞれの高さは、前記少なくとも2つの延在支柱のそれぞれの間にある前記略正弦波構造の前記ピークと谷との間の距離より大きい、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項11】
第1の延在支柱は、前記ステントフレームの前記心房部分から前記フレームの最遠位点にある間隔があいた基部を含み、前記ステントフレームは、前記ステントフレームの前記環状部分から延在する第1の端部と、前記ステントフレームの前記環状部分から延在する第2の端部と、前記第1の延在支柱の前記基部に隣接するその第1と第2の端部との間にある基部と、を備えている、
請求項10に記載のステントフレーム。
【請求項12】
前記第1の支持部材は、前記ステントフレームの前記中央長手方向軸にほぼ平行である方向に延在する、
請求項11に記載のステントフレーム。
【請求項13】
前記環状部分、前記心房部分、および前記心室部分のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分に取り付けられる被覆材料をさらに含む、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項14】
前記被覆材料は、前記延在支柱のそれぞれの幅にわたって延在し、前記被覆材料は、前記延在支柱の前記幅内にある切断線を備えている、
請求項13に記載のステントフレーム。
【請求項15】
前記環状部分、前記心房部分、および前記心室部分は、別々のワイヤを含む、
請求項1に記載のステントフレーム。
【請求項16】
心臓弁プロテーゼであって、
請求項1ないし15のいずれか1項に記載のステントフレームと、
前記ステントフレームの内部の中で2つの隣接する延在支柱に取り付けられる第1の弁尖と、前記ステントフレームの前記内部の中で2つの隣接する延在支柱に取り付けられる第2の弁尖とを備えている人工心臓弁と、を備えている、
ことを特徴とする弁プロテーゼ。
【請求項17】
前記環状部分の前記延在支柱は、前記人工弁の交連と並ぶ、
請求項16に記載の弁プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、心臓弁の修復のための装置および方法に関し、より詳細には、僧帽弁の置換における使用のための人工心臓弁に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓における2つの房室弁のうちの1つは、僧帽弁であり、心臓の左側に位置し、弁輪および弁尖を形成または画定する。僧帽弁は、左心房と左心室との間に位置し、体への配給のために、肺からの酸素を含む血液を心臓の左側を通って大動脈へ送る働きをする。心臓の他の弁と同様に、僧帽弁は、それ自体いかなるエネルギーも消費せず、いかなる収縮機能も行わないという点において受動的構造である。
【0003】
僧帽弁は、弁の両側での差圧に応じて開閉する2つの可動の弁尖を含む。理想的には、弁尖は、弁が開いた位置にある場合、互いから離れるように移動し、弁が閉じた位置にある場合、合わさる即ち「接合」する。しかしながら、弁に関連する問題が生じ得、それは、概略的には、弁が適切に開かない狭窄、または弁が適切に閉じない機能不全(逆流とも称される)のいずれかに分類され得る。狭窄および機能不全は、同じ弁に同時に生じる場合がある。典型的に患者に対する比較的重大な生理学的影響を有する僧帽弁逆流またはバックフローを伴う弁機能不全の影響は異なる。僧帽弁の他の異常を伴う逆流は、心臓にかかる作業負荷を増加させ得る。心臓および患者に対するこのストレスの増加の重度、およびそれに適応する心臓の能力は、特定の患者に対して利用可能な治療選択肢を決定する。場合によっては、薬剤は、患者を治療するために十分であり得、それは、実行可能である場合、好ましい選択肢であるが、多くの場合、患者が通常の生活を送れるように、欠陥のある弁は、修復されるか、または完全に置換されなければならない。
【0004】
僧帽弁の修復が実行可能である1つの状況は、弁にある欠陥が弁輪の拡張に関連する場合であり、それは、弁の能力を妨げるだけではなく、弁口の正常形の歪みも引き起こす。弁輪の再形成は、僧帽弁に対するこれらの種類の再建方法の中心となる。僧帽弁が修復される場合、結果は、概略的には、僧帽弁輪の後部の大きさの縮小である。僧帽弁修復の一環として、弁輪の罹患した切片は、弁尖が閉じる際に正確に接合できるように縮小され(すなわち、収縮)、および/または弁輪は、術後の拡張が生じないように安定化させられる。いずれの結果も、弁輪の上の位置における人工弁輪またはバンドの移植によって頻繁に到達される。輪またはバンドの目的は、弁閉鎖不全を矯正および/または防止するために、制約、再形成および/または支持することである。弁のそのような修復は、技術的に可能な場合、比較的良い長期的効果をもたらし得る。
【0005】
しかしながら、弁修復は、時折、不可能もしくは好ましくないかのいずれかであるか、または弁輪の拡張が問題ではない場合等に失敗し、弁置換を僧帽弁の手術を改善するための好ましい選択肢とする。僧帽弁が置換される場合、移植のために利用可能な弁の2つの一般的なカテゴリーは、機械弁および生体または組織弁である。機械弁は、長年使用され、それらが移植される特定の場所の血流要件に対応する多種多様な設計を包含する。これらの弁の材料および設計特色は、継続的に改善されているが、それらは、血流中の凝固のリスクを増加させ、それは、心臓発作または脳卒中につながり得る。そのため、機械弁受容者は、血栓の形成を防止するために、一生、抗凝固薬を飲まなければならない。一方、組織弁の使用は、抗凝固薬を必要としない利点を提供するが、それらは、典型的に、機械弁ほど存続しない。伝統的に、いずれの種類の弁も、左心房を通って僧帽弁へアクセスするために患者の胸部を開き、新しい弁を適所に縫合することを伴う外科的処置を使用して移植されている。この処置は、非常に侵襲的であり、感染症および他の合併症のリスクを伴い、患者の回復に長期間を必要とする。
【0006】
外科的処置を簡略化し、患者の外傷を減少させるために、心臓弁の低侵襲的かつ経皮的な置換への最近の高まった関心がある。このような心臓弁の置換は、典型的に、罹患または損傷心臓弁の実際の物理的除去を伴わない。むしろ、置換弁は、それが、その動作状態まで拡張される弁部位へ、圧縮状態で送達される。そのような弁置換システムの一例は、置換肺動脈弁をバルーンカテーテルへ挿入し、それを血管系を介して機能不全の肺動脈弁の場所へ経皮的に送達することを含む。そこで、置換弁は、右心室流出路に対して生来の弁尖を圧縮するようにバルーンによって拡張され、それにより、置換弁を固定し、密封する。経皮的肺動脈弁置換との関連において、両方ともTower,et al.によって出願された、米国特許第2003/0199971A1号公報および同第2003/0199963A1号公報では、置換肺動脈弁としての使用のための、拡張ステント内に搭載されるウシ頸静脈の弁付き切片が記載される。“Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve”,Bonhoeffer,et al.,Journal of the American College of Cardiology 2002;39:1664−1669および“Transcatheter Replacement of a Bovine Valve in Pulmonary Position”,Bonhoeffer,et al.,Circulation 2000;102:813−816の論文に記載されるように、置換肺動脈弁は、弁付き導管内に位置する生来の肺動脈弁または人工肺動脈弁を置換するために移植される場合がある。他の移植片および植え込み送達装置も、米国特許出願公開第2003/0036791 A1号公報および欧州特許出願第1 057 460−A1号公報に記載される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肺動脈弁と比較すると、僧帽弁の異なる物理的特性により、僧帽弁部位における弁の経皮的移植は、弁置換に対する独自の特有の要件を有する。僧帽弁を経皮的に置換するための装置および方法の提供等、心臓の手術中に必要以上のストレスを引き起こさずに心臓の物理的構造に対応する僧帽弁置換装置および処置を改善することができるための継続的な要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、房室弁のうちの1つの置換のため等の、体腔への移植のための圧縮可能かつ拡張可能なステントを含む。ステントは、中央環状領域を有するフレーム、環状領域の片側から延在する心房フレア、および環状領域の反対側の一部分から延在する心室フレアを含む。有利に、本発明のステントフレームのフレアおよび他の特色は、特異な形を有する大きい開口および複数の開口に対応することができるステント付き弁を作製するために使用することがきる。比較的大きい僧帽弁口内での配置に関して、本発明のステント付き弁は、弁の移動が生じない方法で、左心室流出路が閉塞されないように移植することができる。本発明のステントフレームは、自己拡張型であり、ステントアセンブリを作製するための羽布張りと共に使用される。弁は、心膜コンストラクトであり得るか、または動物弁を使用することができるかのいずれかである。そのようなステントアセンブリのために使用される送達システムは、送達のための圧縮状態にステントアセンブリを維持するための、遠位端にシースを伴うカテーテルから成り得る。
【0009】
本発明は、心臓の房室弁開口部のうちの1つ等の体腔へ弁を位置付ける方法をさらに含む。方法は、ステント付き弁のステントフレームを圧縮するステップを含み、ステントフレームは、中央環状領域、心房フレア、および心室フレアを含む。そして、ステント付き弁は、患者の所望の弁部の弁輪へ送達され、送達は、例えば、心尖部を経て行われてもよい。1つの方法では、弁は、弁の下部を通ってアクセスされる。弁が適所にある場合、ステントの心房領域または部分は解放され、その後、送達システムは、ステントの心房部分を弁輪に係合させるために、弁輪に対してステント弁を引き戻すために使用される。その後、ステントの心室部分は、送達システムから解放され、送達システムは、患者から引っ込められ得る。
【0010】
本発明は、付図を参照してさらに説明され、同じ構造は、いくつかの図を通して同じ符号により参照される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるステントフレームの例示的な一実施形態の斜視図である。
図2図1のステントフレームの上面図である。
図3図1のステントフレームの異なる側面図である。
図4図1のステントフレームの異なる側面図である。
図5図1〜4の実施形態とは異なるステントフレーム配置を含み、ステントのワイヤに取り付けられた布をさらに示す別のステントフレームの斜視図である。
図6図5のステントフレームの上面図である。
図7図5のステントフレームの底面図である。
図8図5のステントフレームの異なる側面図である。
図9図5のステントフレームの異なる側面図である。
図10】本発明による別のステントフレームの斜視図である。
図11図10のステントフレームの上面図である。
図12図10のステントフレームの異なる側面図である。
図13図10のステントフレームの異なる側面図である。
図14】ステントフレームの部分に取り付けられた布を伴う、図10のステントフレームの斜視図である。
図15図14のステントフレームの上面図である。
図16図14のステントフレームの底面図である。
図17図14のステントフレームの異なる側面図である。
図18図14のステントフレームの異なる側面図である。
図19】本発明による別のステントフレームの斜視図である。
図20図19のステントフレームの上面図である。
図21図19のステントフレームの異なる側面図である。
図22図19のステントフレームの異なる側面図である。
図23】本発明のステントフレームのためのパターンの側面図である。
図24】布が取り付けられた本発明のステントフレームの斜視図である。
図25】僧帽弁の弁輪内に位置する本発明のステントフレームを伴う心臓の一部分の概略断面図である。
図26】生来の弁輪に対して位置する経カテーテル弁の例示的なステントを伴う心臓の一部分の概略正面図である。
図27】生来の弁輪に対して位置する例示的なステントフレームを伴う心臓の一部分の概略正面図である。
図28図27のステントフレームの斜視図である。
図29図27および28のステントフレームの側面図である。
図30】別の例示的なステントフレームの斜視図である。
図31図30のステントフレームの側面図である。
図32】別の例示的なステントフレームの斜視図である。
図33図32のステントフレームの側面図である。
図34】別の例示的なステントフレームの斜視図である。
図35図34のステントフレームの上面図である。
図36図34のステントフレームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、構成要素がいくつかの図を通して同じ符号で分類される図、最初に図1〜4を参照して、本発明による例示的なステントフレーム10の一実施形態を示す。ステントフレーム10等の本発明のステントは、主に、僧帽弁置換のために使用されているように本明細書に記載されるが、当然のことながら、これらのステントの特色の多くは、心臓の他の部分における弁のために使用することもできる。例えば、本発明のステントは、三尖弁の置換において使用されてもよく、そこでは、そのようなステントの構成は、同一であるか、または心臓のその部分における異なる生体構造により、僧帽弁の置換に関して本明細書に記載されるものと若干異なってもよい。いずれにしろ、本発明のステントは、望ましくは、心臓弁の正常機能を復元し、この種類の手術の利益を活用する経皮的移植を意図する。しかしながら、本明細書に記載されるステントは、代わりに、低侵襲的方法またはより伝統的な開心術を含む外科技術を使用して移植され得る。
【0013】
ステントフレーム10等の本発明のステントフレームの例示的な実施形態を示し、図に関連して説明する。これらのステントフレームは、プラチナ、ステンレス鋼、ニチノール、もしくは他の生体適合性金属または金属の組み合わせで製造されてもよい。本発明のステントフレームは、代替として、ワイヤストックを使用して製造されてもよいか、またはステントフレームは、ステントの製造において一般的に使用される、金属チューブからステントを機械加工するか、またはレーザー切断することによって製造されてもよい。ワイヤの数、そのようなワイヤの位置付け、およびステントの様々な他の特色は、本発明の範囲内にとどまるが、図に図示のものと大幅に異なり得る。
【0014】
いずれにしろ、本発明のステントフレームは、好ましくは、患者への挿入のために比較的小さい直径に圧縮可能であるが、患者の所望の位置にある場合、この圧縮状態からより大きい直径に少なくとも若干拡張可能でもある。ステントを圧縮する過程は、その拡張が困難または不可能である方法でステントを恒久的に変形させないことがさらに好ましい。すなわち、各ステントは、圧縮され拡張された後に所望の構造的完全性を維持することが可能であるべきである。本発明の好ましい一実施形態では、ステントフレームのそれぞれを作製するワイヤは、ニッケルチタン合金(例えば、ニチノール)等の形状記憶材料から形成され得る。この材料により、ステントフレームは、熱、エネルギー等の適用によってか、または外力(例えば、圧縮力)の除去等によって、収縮状態から拡張状態へ自己拡張可能であり得る。ステントフレームは、ステントフレームの構造を損傷せずに繰り返し圧縮および拡張されることが可能であるべきである。また、ステントフレームは、上述のように、一体成形の材料からレーザー切断されてもよいか、または複数の構成要素またはワイヤから組み立てられてもよい。これらの種類のステント構造のために、使用することができる送達システムの一例は、シースが、ステントフレームが拡張することを可能にするために引き込まれ得る位置でカテーテルが展開されるまで、ステントおよびその関連する弁構造を覆う引込み式シースを伴うカテーテルを含む。本発明のステントフレームを伴うそのような送達過程のさらなる詳細を、以下でさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明のステントフレームは、好ましくは、弁尖を形成するためのステントフレームの内部の中に取り付けられる弁材料を含むステント付き弁アセンブリの一部として使用される。本発明のこれらのステント付き弁アセンブリは、温存された天然のブタ大動脈弁もしくは他の血管またはドナー種を使用してもよい。心臓の僧帽弁部に存在する比較的高圧の条件において付加的な弁力を提供するため、および/または特定の大きさおよび/または形状の弁を設計する際により高い柔軟性を提供するために、心膜弁が、代替として、三尖または二尖弁構成で組み立てられてもよい。
【0016】
再度、図1〜4を参照すると、ステントフレーム10は、概略的には、環状部分12、環状部分12の一端から延在する心房部分14、および環状部分12の反対端から延在する心室部分16を含む。環状部分12は、ワイヤ構造を含み、それは、その周囲で略正弦波構成に形成される。より詳細には、環状部分12は、その周囲のほぼ反対側に2つの延長支柱(延在支柱)18、および延長支柱18のそれぞれの間にほぼ一定の高さを有する正弦波パターンを含む。この環状部分12は、単一のワイヤによって形成されるように示されるが、多数の異なるワイヤまたはステントフレーム構成要素は、この環状部分12を作製するように組み立てられてもよいことが意図される。ステントフレーム10全体は、環状部分12が、個々の構成要素を含まない一体構造の一部であるように、一枚の材料から切断されることがさらに意図される。延長支柱18は、支柱18の間の環状部分12の部分より大きい高さを有しているように示され、環状部分12のこれらの部分の間の相対的な大きさの差は、同じか、または図示のものと相当異なり得る。いずれにしろ、延長支柱18のそれぞれの高さは、ステントフレーム10内に取り付けられる弁の弁尖のための取り付け部を提供するように設計される。そのため、2つの延長支柱18を有するステントフレーム10のこの実施形態は、二葉弁に対応するように設計されるが、環状部分12は、代わりに、三葉弁の取り付けに対応する3つの延長支柱18を含み得ることが意図される。
【0017】
ステントフレームは、代替としてか、または付加的に、延長支柱18に対して上述されたものと反対方向に延在する1つ以上の延長支柱を含むことがさらに意図される。これらの延長支柱は、ステントの心室部分ではなく、ステントの心房部分へ向かって延在し得る。
【0018】
心房部分14は、ワイヤ構造を含み、それは、環状部分12の一端の周辺に斜めに半径方向外向きに延在する一連のフランジ20を提供するように成形される。この心房部分14は、単一のワイヤによって形成されるように示されるが、複数のワイヤまたはステントフレーム構成要素は、この心房部分14を作製するように組み立てられてもよいか、またはステントフレーム10全体は、個々のワイヤがその構造に使用されないように、一枚の材料から切断されることが意図される。図示されているように、フランジ20のすべては、ほぼ同じ大きさおよび形状であり、環状部分12からほぼ同じ角度で延在するが、フランジ20は、互いに異なって構成されることが意図される。フランジは、ステントフレーム10が移植される弁輪の片側との係合のために提供されるため、フランジ20は、ステントフレームが移植されてもよい場所の特定の要件を満たす多数の異なる構成で提供され得る。例えば、心房部分14は、図示のものより多いか、または少ないフランジ20を有してもよく、フランジ20は、環状部分12の略円筒形状に対して、図示のものより大きいか、または小さい角度で延在し得、フランジ20は、図示のものより長いか、または短いことがある。
【0019】
心室部分16は、その周辺の一部分に沿った環状部分12とほぼ同じ縦または軸方向に延在する第1の部分22を提供するように配置されるワイヤ、および環状部分12に対して斜めに半径方向外向きに延在する少なくとも1つのフランジ24を含む。この心室部分16は、単一のワイヤによって形成されるように示されるが、複数のワイヤまたはステントフレーム構成要素は、この心房部分16を作製するように組み立てられてもよいか、またはステントフレーム10全体は、個々のワイヤがその構造に使用されないように、一枚の材料から切断されることが意図される。図示されているように、心室部分16の第1の部分22は、互いにほぼ同じ大きさおよび形状である一連の正弦波ピークおよび谷であるが、それらは互いに異なって構成されることが意図される。この第1の部分22は、概略的には、ステントフレームの軸方向に環状部分12の外周に従い(すなわち、環状部分12に対するこの部分22のフレアはほとんどないか、またはない。)、部分22のワイヤの「ピーク」は、例えば、交点26等で、環状部分12の「谷」に合わさる。そのような交点は、ステントフレーム10の周辺で生じ得る。部分22は、左心室流出路を大幅に遮断せずに、大動脈弁尖(すなわち、心室フレアの大動脈部分)と係合するために、環状部分12に対して少なくとも若干広がり得ることがさらに意図される。
【0020】
心室部分16は、ステントフレーム10の片側の環状部分12から外向きに延在するか、または広がる少なくとも1つのフランジ24をさらに含む。各フランジ24は、僧帽弁輪の後側等、ステントフレームが移植される弁輪との特定の係合のために提供される。この実施形態では、心室部分16の部分22は、僧帽弁部位に移植される場合に左心室流出路を閉塞しないように、前側で外向きに広がらない。フランジ24は、ステントフレーム10が移植される弁輪の片側との係合のために提供されるため、フランジ24は、ステントフレームが移植されてもよい場所の特定の要件を満たす多数の異なる構成で提供され得る。特に、心室部分16は、図示のものより多いか、または少ないフランジ24を有してもよく、フランジ24は、環状部分12の周囲に対して、図示のものより大きいか、または小さい角度で延在し得、フランジ24は、図示のものより長いか、または短い等でもよい。
【0021】
上記のように、ステントフレーム10は、一体成形の材料から切断される構造等の一体成形構造を含んでもよいか、または代わりに、ステントフレーム10の周辺に互いに取り付けられる一連のワイヤまたはワイヤ切片を含んでもよい。いずれの場合でも、環状部分12、心房部分14、および心室部分16のワイヤ部分は、同じ厚さであるか、または互いに異なる厚さを有してもよい。例示的な一実施形態では、環状部分12は、比較的厚いワイヤ部分を含むが、心房部分14および心室部分16は、比較的薄いワイヤ部分を含む。そのような実施形態では、心房部分14および心室部分16を作製するワイヤの厚さは、同じか、または互いに異なってもよい。
【0022】
図5〜9は、本発明の別の実施形態によるステントアセンブリ30を示す。ステントアセンブリ30は、ステントフレーム32および被覆材料34を含む。ステントフレーム32は、概略的には、中央環状部分36、環状部分36の一端から延在する心房部分38、および環状部分36の反対端から延在する心室部分40を含む。環状部分36は、環状部分36が、ステントフレーム10の延長支柱18より幾分広い、環状部分36のほぼ反対側にある2つの部材42を含むワイヤ配置を有することを除き、図1〜4に対して上述される環状部分と同様である。これらの部材42は、環状部分36の残り部分の高さより大きい高さを有する。環状部分36の周辺にある部材42のそれぞれの間にあるワイヤは、略正弦波パターンで配置される。心房部分38は、環状部分36の一端から斜めに半径方向外向きに延在する一連のフランジ44を提供するように配置されるワイヤを含む。フランジ44のすべては、ほぼ同じ大きさおよび形状であり、環状部分36からほぼ同じ角度で延在するが、フランジ44は、互いに異なって構成されることが意図される。心室部分40は、その周辺の一部分に沿った環状部分36とほぼ同じ縦または軸方向に延在する第1の部分46を提供するように成形されるワイヤ、および環状部分36に対して斜めに半径方向外向きに延在する少なくとも1つのフランジ48を含む。第1の部分46は、代替として、左心室流出路を大幅に遮断せずに、大動脈弁尖と係合するために、環状部分36に対して少なくとも若干広がってもよい。第1の部分46は、互いにほぼ同じ大きさおよび形状である一連の正弦波ピークおよび谷として配置されるが、それらは互いに異なることが意図される。
【0023】
ステントフレーム32は、示される構成で図示されているように、概略的には、互いに取り付けられる多数のワイヤまたはワイヤ部分を含んでもよく、1つの配置は、環状部分36、心房部分38、および心室部分40のそれぞれのための別々のワイヤを含み得る。代替として、ステントフレーム32全体は、ステントフレーム32が、個々の構成要素を含まない一体構造であるように、一枚の材料から切断されてもよい。ステントフレーム32の部分のそれぞれに対して示されるワイヤピーク、谷、およびフランジの相対的大きさおよび数は、例示的であり、構造は、代わりに、これらの構成要素の異なる大きさ、数、および構成を含み得る。また、ステントフレーム32のこの実施形態は、示される二葉弁取り付け配置の代わりに、フレーム内での三葉弁の取り付けに対応する3つの延長部材42を含む変形を含む、ステントフレーム10に対して上述される任意の変形を含み得る。
【0024】
ステントアセンブリ30は、ステントフレーム32のワイヤの少なくともいくつかに取り付けられ、所望であれば、ステントフレーム32のワイヤまたはワイヤ部分のすべてに取り付けられてもよい被覆材料34をさらに含む。被覆材料は、弁構造(図示せず)が、環状部分36の中央部内でステントフレーム32に取り付けられることが可能となるように、ステントフレーム32への取り付けの前または後に切断することができる。被覆材料34は、ポリエステルまたはPTFEニットなどのニットまたは織ったポリエステルであり得、それは、組織内方成長のための媒体、および布に曲面に一致するように伸びる能力を提供することが所望である場合に使用され得る。ポリエステルベロア布は、片側に組織内方成長のための媒体、および他面に滑らかな面を提供することが所望である場合等に使用されてもよい。これらおよび他の適切な心臓血管布は、例えば、Bard Peripheral Vascular,Inc.of Tempe,Arizonaから市販されている。被覆材料は、縫合、接着剤、または他の取り付け方法によって、そのそれぞれのステントフレームに取り付けられてもよい。
【0025】
図10〜13は、本発明の別の実施形態によるステントフレーム60を示し、概略的には、中央環状部分62、環状部分62の一端から延在する心房部分64、および環状部分62の反対端から延在する心室部分66を含む。環状部分62は、環状部分62のほぼ反対側にある2つの延長支柱68、およびその延長支柱68のそれぞれの間にある略正弦波パターンを提供するように成形されるワイヤ部分を含むという点において、図1〜4に対して上述される環状部分と同様である。この実施形態では、環状部分62は、V字形支持部材70をさらに含み、それは、延長支柱68の基部とほぼ合致するV字形部材70の各「V」の基部を伴って配置される。これらのV字形部材70は、ステントフレーム60がV字形部材70と共に延長支柱68の組み合わせを含むという点において、ステントフレーム32の延長部材42と同様の構成を有する。これらのV字形部材70は、ステントフレーム60に付加的な構造的完全性を提供するために使用され得る。
【0026】
心房部分64は、環状部分62の一端から斜めに半径方向外向きに延在する一連のフランジ72を含む。フランジ72のすべては、ほぼ同じ大きさおよび形状であるように示され、環状部分62からほぼ同じ角度で延在するが、フランジ72の少なくともいくつかは、互いに異なって構成されることが意図される。心室部分66は、その周辺の一部分に沿った環状部分62とほぼ同じ縦または軸方向に延在する第1の部分74を提供するように配置されるワイヤ、および環状部分62に対して斜めに半径方向外向きに延在する少なくとも1つのフランジ76を含む。第1の部分74は、左心室流出路を大幅に遮断せずに、大動脈弁尖と係合するために、環状部分62に対して少なくとも若干広がり得る。第1の部分74は、互いにほぼ同じ大きさおよび形状である一連の正弦波ピークおよび谷として配置されるが、それらは互いに異なる大きさおよび/または形状であることが意図される。
【0027】
ステントフレーム60は、示される構成で図示されているように、概略的には、互いに取り付けられる多数のワイヤまたはワイヤ部分を含んでもよく、1つの配置は、環状部分62、心房部分64、および心室部分66のそれぞれのための別々のワイヤを含み得る。一実施形態では、V字形部材70は、ステントフレーム60の他のワイヤに圧着される。代替として、ステントフレーム60全体は、ステントフレーム60が、個々の構成要素を含まない一体構造であるように、一枚の材料から切断されてもよい。ステントフレーム60の部分のそれぞれに対して示されるワイヤピーク、谷、およびフランジの相対的大きさおよび数は、例示的であり、構造は、代わりに、これらの構成要素の異なる大きさ、数、および構成を含み得る。また、ステントフレーム60のこの実施形態は、示される二葉弁取り付け配置の代わりに、フレーム内での三葉弁の取り付けに対応する3つの延長部材68を含む変形を含む、本明細書に記載されるステントフレームに対して上述される任意の変形を含み得る。
【0028】
図14〜18は、図10〜13に対して上述されるステントフレーム60とほぼ同様のステントフレーム82を含み、被覆材料84をさらに含むステントアセンブリ80を示す。上述される被覆材料34と同様に、被覆材料84は、同様に、少なくともいくらかの組織内方成長を促進する材料を含み得る。被覆材料84は、ステントフレーム82の内部の中に位置する弁(図示せず)の取り付けを可能にするように、ほぼ切断線88に沿って等、ステントフレーム82の延長支柱86の間で切断され得る。このステントフレームおよびアセンブリは、多くの他の本発明のステントと共に、自己拡張型材料で作製される部分、およびバルーン拡張可能な材料で作製される他の部分を備えてもよい。特に図17を参照すると、例えば、心房および心室部分は、自己拡張型材料で作製されてもよいが、中央環状部分は、弁輪での高い半径方向力を可能にするように、バルーン拡張可能な材料で作製されてもよい。
【0029】
図19〜22は、本発明の別の実施形態によるステントフレーム100を示し、概略的には、環状部分102、環状部分102の一端から延在する心房部分104、環状部分102の反対端から延在する心室部分106を含む。環状部分102は、一連のX字形構造でステントフレーム100の周辺で互いに交差するワイヤまたはワイヤ部分を含む。ステントフレーム100は、環状部分102の一端から斜めに半径方向外向きに延在する一連のフランジ108を提供するように成形される1つ以上のワイヤを含む。フランジ108のすべては、ほぼ同じ大きさおよび形状を有するように示され、環状部分102から同じ角度で延在するが、フランジ108は、互いに異なって構成されることが意図される。フランジ108の少なくともいくつかは、1つ以上の返しまたは延長部110も含み、この示される実施形態は、フランジ108のそれぞれの遠位先端付近の2つの返し110を含む。返し110のそれぞれは、好ましくは、ステントフレーム100が、それが移植される弁の弁輪に対して位置する場合、返し110は、それらが隣接する組織と係合可能となるように、そのそれぞれのフランジ108から延在する。そのため、図21および22に最も良く図示されているように、返し110は、それらが、移植される場合に心臓の構造と係合することができるように、下方、またはステントフレーム100の環状部分102に向かって延在する。当然のことながら、返し110は、図示のものと異なる大きさ、形状、配向、位置付け等を有し得、フランジ108のそれぞれは、示される2つの返し110より多いか、または少ないものを含み得る。さらに、フランジ108のいくつかのみが、そのような返し110を含むことが意図される。
【0030】
心室部分106は、ステントフレーム100のほぼ反対側にある2つの延長支柱112、延長支柱112の間でステントフレーム100の片側に環状部分102から半径方向外向きに延在する少なくとも1つのフランジ部分114、および延長支柱112の間でステントフレーム100の反対側にある正弦波ワイヤパターンを提供するように成形されるワイヤを含む。フランジ114の少なくともいくつかは、少なくとも1つの返し116も含み、この示される実施形態は、フランジ114のそれぞれの遠位先端付近の2つの返し116を含む。返し114のそれぞれは、好ましくは、ステントフレーム100が、それが移植される弁の弁輪に対して位置する場合、返し116は、それらが隣接する組織と係合可能となるように、そのそれぞれのフランジ114から延在する。そのため、図21および22に最も良く図示されているように、返し116は、上方、またはステントフレーム100の環状部分102に向かって延在する。上述される返し110と同様に、返し116は、図示のものと異なる大きさ、形状、配向、位置付け等を有し得、フランジ114のそれぞれは、示される2つの返し116より多いか、または少ないものを含み得る。さらに、フランジ114のいくつかのみが、そのような返し116を含むことが意図される。
【0031】
図23は、図19〜22に対して上述される種類のステントフレームのための例示的なパターン120を示す。このステントフレームパターン120は、一枚の材料から切断され得るダイヤモンド形パターンを含む。ステントフレームパターン120は、ステントフレームを作製するためにチューブ形状に形成され得る。図示されているように、この実施形態は、パターンの遠位端から延在する多数の返し122を含む。
【0032】
図24は、本発明のステントアセンブリ130を示し、それは、ステントフレーム132および被覆材料134を含む。図示されているように、被覆材料134は、可視である、このアセンブリのワイヤの多くに沿ってステントフレーム132に縫い付けられる。このステントフレーム132は、互いにほぼ向かい合って位置する2つの延長支柱136を含み、それは、弁アセンブリの弁尖が、二葉弁を提供するために取り付けられる交連支柱として提供される。
【0033】
図25は、心臓140の一部分を概略的に示し、本発明の例示的なステントアセンブリ141がその中に位置する。特に、心臓140は、左心房142、左心室144、僧帽弁146、および大動脈弁148を含む。僧帽弁146の破線は、その生来の弁尖を示し、それは、それらが、概略的には、ステントアセンブリ141の移植前に構成されるからである。特に、僧帽弁146は、弁の前側にある第1の弁尖150および弁の後側にある第2の弁尖152を含む。生来の僧帽弁146が適切に作動している場合、生来の弁尖150、152は、概略的には、弁尖150、152が開いた位置にある場合、血液が左心室144へ向かって流れ、弁尖150、152が閉じた位置にある場合、血液が左心房142へ向かって移動しないようにするように機能する。しかしながら、ステントアセンブリ141は、本発明に従って、僧帽弁146が適切に機能していない場合にその部分に位置し得(僧帽弁を置換するため)、それによって、変位した弁尖156および158としてそれぞれ示される等の僧帽弁の空間から弁尖150、152を押し出す。
【0034】
図示されているように、ステントアセンブリ141は、環状部分160、環状部分160の側から左心房142へ向かって延在するフレアを含む心房部分162、および環状部分160の後側から左心室144へ向かって延在するフレアを含む心室部分164を含む。大動脈弁148を通る血液の流れを遮断しないために、大動脈弁148に最も近いステントアセンブリ142の心室部分164は、フレアを有さないか、または最小の高さを有するフレアを有する。このように、ステントアセンブリ142は、大動脈弁148を通る血液を妨げる、および/または大動脈弁148の弁尖の実際の動作または機能を妨げる位置に弁尖156を押さない。しかしながら、環状部分160は、好ましくは、僧帽弁輪との接触の好適な部分を提供し、それがその所望の位置に維持するために役立つ十分な長さを有する。
【0035】
前述のように、本発明のステントアセンブリは、三尖弁の置換のために移植されることもできる。特に、本発明のステントアセンブリが、三尖弁の弁輪内に位置する場合、心房フレアは、除去されるか、またはそれらが、伝導系(すなわち、AV結節およびヒス束)を妨害しないために、コッホの三角形の頂点に接触しないように作製される。また、心室フレアは、伝導系を妨害しないために、心室の中隔部分に接触せず、そのため、これらのフレアは、僧帽弁部のためのステントアセンブリに対して上述したものと同様であり得る。また、この実施形態における心室フレアは、下および前方向の後部フレア(例えば、フレアの約2/3)とほぼ類似し得る。
【0036】
上述される種類のステントフレームは、本明細書に記載される本発明の方法に従って、ステント付き弁アセンブリへ組み立てられ得るが、そのような弁は、図示されない。ステント付き弁を組み立てるための1つの例示的な方法は、概略的には、まず、ブタ大動脈弁の調製、そして、多様な装着または取り付け技術を使用する、調製したブタ弁のステントフレームへのその後の装着または取り付けを含む。弁アセンブリの二葉弁、三葉弁、および他の変形は、本明細書に記載されるステントフレーム内に取り付けられ得る。
【0037】
ステントフレームの心房部分および心室部分に対して上述される様々なフランジ部分は、概略的には、V字形またはU形状であるように示される。しかしながら、フランジ部分は、代わりに、半円形、長方形、楕円形等であってもよく、図示のものより大幅に小さいか、または大きくてもよい。さらなる別の変形では、ステントフレームの環状部分の周辺により継続する異なるフランジ構造が使用され得る(すなわち、フランジ構造は、一連の隣接するフランジを含まないが、代わりに、むしろ、ステントフレームの一端または両端での継続的な広がった構造を含む)。いずれにしろ、フランジ部分(単数または複数)は、好ましくは、ステントアセンブリが、弁を置換するために位置される場合、それに固定機能を提供することができる形状および大きさに構成される。例えば、ステントアセンブリが、僧帽弁輪内に位置する場合、心房側にあるステントアセンブリから延在する任意のフランジ部分は、左心房の壁を妨げることがあり、それによって、ステントアセンブリの動きを抑制する。
【0038】
心房フレアまたはフランジ部分は、クリップ、縫合等の様々な手段を使用する心房切開閉鎖の一環として、ステントが定位置に縫い付けられることを可能にする特色を組み込むこともできる。また、ステントの心房フレアまたはフランジ部分が、心房の上部に向かって上向きにさらに進む場合、結果は、プロテーゼの安定化の強化を提供し得る。そのような安定化特色を提供するステントフレーム180の構成の一例を図26に示す。安定化特色を含む、この、および他のステントフレームは、置換弁の安定した位置および固定のために心房の生来の生体構造と連動し得る。この概念は、機能不全または狭窄僧帽または三尖弁の経カテーテルまたは低侵襲的置換に適用され得る。そのようなステントフレームは、概略的には、心房の湾曲に一致するように、生来の弁輪を超えて延在するステント流入側面部材(単数または複数)を含む。これらの部材は、多様な形状および構成を有し得るが、概略的には、すべて、弁アセンブリの順行性および/または逆行性移動を防止するように機能する。心房への突出の程度は異なり得るが、湾曲の半径の変曲点を越えて有利に延在し得る。部材は、所望であれば、心房の上部まで延在することもできる。部材は、生体構造の形状にほぼ一致するように、心房の上部で分離または結合し得る。布、ポリマー、組織、または他の生体適合性材料等の材料を含む様々な被覆材料を使用して、ステントフレームの安定化部分を覆うか、または部分的に覆うことができる。材料は、所望であれば、内方成長を強化する、および/または摩耗および外傷を低減させるようにさらに選択され得る。
【0039】
図26の例示的な実施形態では、ステントフレーム180は、生来の弁の弁輪182に対して位置するように示され、フープまたは一連のフープ184(心房186の破線によって示される)は、ステントフレーム180の上端から心房186へ延在し、それは、ステントの付加的な安定化を提供し、ステント移動を最小限にするために役立ち得る。図26を参照すると、左心室188、心房186、乳頭筋190、および生来の弁の弁輪182を含む、心臓の一部分の概略図が示される。本発明のステントフレーム180を含む弁は、その弁輪192が、生来の弁の弁輪182より少なくとも若干高いように、位置されるように示される。2つの例示的な弁尖194は、その弁輪192の位置でフレーム180から延在しているように示される。ステントフレーム180のこの位置付けは、左心室188へのその突出を低減させ得、それは、それによって、左心室188の壁および乳頭筋190の接触および摩擦を最小限にし得る。ステントフレーム180の位置は、衰退、不整脈、および虚血の可能性を低減させることができる。
【0040】
図27〜29は、生来の弁輪に対する位置付けおよび固定のために上述される特色を提供するステントフレーム200の別の実施形態を示す。図27は、心房202および心室204に対して位置するこのステントフレーム200を示す。ステントフレーム200は、環状部分206、心房部分208、心室部分210、および心房部分208から延在する固定部分212を含む。固定構造212は、概略的には、花弁に配置される一連のワイヤ、または心房部分208のワイヤのピークから延在する別の構成を含む。花弁は、図示されているように、ディスク214、またはワイヤをドーム型形状に維持する他の構造にそれらの遠位端で取り付けられる。心室部分210は、ステントフレームの心室端に対して上述される任意の特色を含み得、この特定の実施形態は、ステントフレーム200の中央長手方向軸に対して外向きに延在するフレアを有する心室部分を示す。環状部分206は、2つの延長支柱216をさらに含み、それらは、延長支柱の間にある環状部分の構造の高さより少なくとも幾分高いか、または長い。
【0041】
図30および31は、ステントフレームの中央長手方向軸へ向かって少なくとも若干湾曲した一連のフレアを含む心房部分224も含むステントフレーム220の別の実施形態を示す。フレーム220は、この実施形態の付加的な固定構造を形成する少なくとも2つの支持ワイヤ222をさらに含む。図示されているように、この例示的な実施形態は、2つのワイヤ222を示し、それぞれ、フレームの反対側にある2つの心房フレアの間で延在し、それによって、フレアをこの構成に維持するために役立ち、ドーム形状の支持構造を提供する。しかしながら、ステントフレーム220は、代わりに、2つのワイヤより多いか、または少ないワイヤを含むことが意図される。さらに、ワイヤは、図示されているように、心房部分224のフレアのいくつかのみから延在し、心房部分224のフレアのすべては、支持ワイヤ222によって別のフレアに接続されることが意図される。図32および33に示されるさらなる別の実施形態では、ステントフレーム240は、ステントフレーム240の中央長手方向軸に向かって幾分湾曲した複数のフレアを有する心房部分242を含む。しかしながら、この例示的な実施形態も、フレアの間のいかなる付加的な接続ワイヤを含まない。
【0042】
図34〜36は、フレア262およびステントフレームの中央長手方向軸へ向かってフレア262から延在する一連のワイヤ266を含む心房部分を含むステントフレーム260のさらなる別の実施形態を示す。ワイヤ266は、花弁、または心房部分のワイヤのピークから延在する別の構成として配置される。ワイヤ266は、図示されているように、ワイヤをドーム型形状に維持する構造264にそれらの遠位端で取り付けられる。ステントフレーム260の心室部分は、ステントフレームの心室端に対して上述される任意の特色を含み得、この特定の実施形態は、ステントフレームの中央長手方向軸に対して外向きに延在するフレアを有する心室部分を示す。環状部分は、2つの延長支柱268をさらに含み、それらは、延長支柱の間にある環状部分の構造の高さより少なくとも幾分高いか、または長い。
【0043】
本発明に関連する本明細書に記載されるステントアセンブリの任意の実施形態は、弁傍漏洩に対する密封を提供し、ステントの安定化のためのパンヌス内方成長を促進するように、その外部の周りにガスケットまたは他の部材を含んでもよい。そのようなガスケットまたは他の部材は、代替としてか、または付加的に、ステントの内部またはステント上に提供されるカフの下面に位置してもよい。
【0044】
また、本発明のステント付き弁に関連する心室フレアは、しばしば、虚血性僧帽弁逆流を伴う患者において後下に位置する、梗塞を標的とする生物製剤(幹細胞、遺伝子、タンパク質等)を収容し得ることが意図される。固定するために使用される本発明のステント付き弁の部分は、周囲組織への迅速な組み込みのための内方成長を促進する細胞または生物製剤とともに播種され得る。これは、弁傍漏洩の排除、およびプロテーゼの移動または塞栓の排除に役立ち得る。僧帽弁置換の一例では、心房および環状部分は、内方成長促進生物製剤を含み得、心室部分は、治療用生物製剤および/または内方成長促進生物製剤を含み得る。
【0045】
本発明のステントアセンブリは、多数の異なる方法での侵入を介して心臓の所望の部内に位置してもよい。一例では、ステントアセンブリは、心房を経て挿入されてもよく、その場合、侵入は、アクセスが心臓の側面を通る、鼓動している心臓に対して経皮的に、または低侵襲的技術においてのいずれかで、または記載される装置が、標準的置換の代替として使用される心肺バイパスおよび胸骨切開を使用する標準的開心弁置換術によって行われてもよい。別の例では、ステントアセンブリは、心尖部を経て挿入されてもよく、その場合、侵入は、再度、アクセスが心臓の側面を通る、鼓動している心臓に対して経皮的に、または低侵襲的技術においてのいずれかで行われてもよい。さらなる別の例では、ステントアセンブリは、中隔を経て挿入されてもよく、その場合、侵入は経皮的に行われ得る。
【0046】
本発明は、心臓の房室弁の開口部のうちの1つ等の体腔へ弁を位置付ける方法をさらに含む。方法は、ステント付き弁のステントフレームを圧縮するステップを含み、ステントフレームは、環状領域、環状領域の一端から延在する心房部分、および環状領域の他端から延在する心室部分を含む。送達システムのシースまたは他の構成要素は、圧縮ステント付き弁上でスライドするか、またはそうでなければ位置し得、それが拡張しないようにし、ステント付き弁とそれが通って移動する血管系との間の妨害を最小限にする。そして、ステント付き弁は、患者の所望の弁部の弁輪に送達され、送達は、例えば、心尖部を経て行われてもよい。1つの方法では、弁は、弁の下部を通ってアクセスされる。弁が定位置にある場合、ステントの心房領域または部分は、ステント付き弁のこの部分が暴露される十分な量だけ、送達システムのシースを引っ込めること等によって解放される。ステントフレームの自己拡張型特性のために、心房部分は、それが封入されたシースに対して外向きに拡張する。その後、送達システムは、ステントの心房部分を弁輪に係合するために、弁輪に対してステント弁を引き戻すために使用される。その後、送達システムのシースは、送達システムからステントフレームの心室部分を解放するように、さらに引っ込められ得る。ステントフレームの自己拡張型特性のために、心室部分は、それが封入されたシースに対して外向きに拡張する。その後、送達システムは、患者から引っ込められ得る。
【0047】
ここで、本発明をそのいくつかの実施形態を参照して説明した。本明細書に挙げられる任意の特許または特許出願の内容は、それらの全体として参照することにより組み込まれる。前述の詳細な説明および例は、理解を明確にするためのみに与えられた。そこから理解される不要な限定はない。本発明の範囲から逸脱せずに記載される実施形態において多くの変更が行われ得ることは、当業者にとって明らかである。そのため、本発明の範囲は、本明細書に記載される構造に限定されるものではない。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図9
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図12
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