特許第5685199号(P5685199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5685199特に電気自動車のバッテリの冷却装置およびそうした装置を有する車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685199
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】特に電気自動車のバッテリの冷却装置およびそうした装置を有する車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20150226BHJP
   H01M 10/60 20140101ALI20150226BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   B60L3/00 S
   H01M10/60
   B60H1/32 613Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-542865(P2011-542865)
(86)(22)【出願日】2009年12月7日
(65)【公表番号】特表2012-514445(P2012-514445A)
(43)【公表日】2012年6月21日
(86)【国際出願番号】FR2009052428
(87)【国際公開番号】WO2010076454
(87)【国際公開日】20100708
【審査請求日】2012年12月3日
(31)【優先権主張番号】0859125
(32)【優先日】2008年12月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ロベール
(72)【発明者】
【氏名】デュビエフ, フラヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】オリグチ, マサト
【審査官】 関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−254607(JP,A)
【文献】 特開2007−200580(JP,A)
【文献】 実開平07−030450(JP,U)
【文献】 特開2007−261400(JP,A)
【文献】 特開2006−141157(JP,A)
【文献】 特開2008−068740(JP,A)
【文献】 特開2004−001674(JP,A)
【文献】 特開2009−302054(JP,A)
【文献】 特開2009−170370(JP,A)
【文献】 特開2007−012486(JP,A)
【文献】 特開平11−204151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
B60H 1/32
H01M 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ車両、特に電気自動車の1個または複数個のバッテリ(11)を冷却するための装置であって、
空調設備
前記空調設備の蒸発器(1)であって、車両の客室(2)を冷却するように構成され、かつ筺体(13)に収容された蒸発器(1)と
前記1個または複数個のバッテリを収納するケーシング(10)と、
を備え、
前記蒸発器(1)の筺体(13)はダクト(14)に連結し、ダクトの出口(14a)は、1個または複数個のバッテリ(11)を収容するケーシング(10)の少なくとも1つの外面(16)上に設けられた熱交換領域(15)の方向に向けられており、
前記熱交換領域(15)はラジエータからなり、ラジエータは金属基板(17)を有し、この金属基板(17)は、その一面に前記ダクト(14)の出口(14a)方向に向けられた第1の一連のフィン(18)と、その反対面に前記ケーシング(10)の内側方向に向けられた第2の一連のフィン(19)とが設けられている
装置。
【請求項2】
前記ラジエータ(15)は、前記ダクト(14)の出口(14a)に面して位置しているケーシング(10)の外壁に、ケーシングを密封する様式で連結されている請求項に記載の装置。
【請求項3】
ラジエータ(15)のフィン(19)と1個または複数個のバッテリ(11)との間で、対流によって熱交換する手段を有する請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ラジエータ(15)のフィン(19)と1個または複数個のバッテリ(11)の間で伝導によって熱交換する手段を有し、これら手段は金属構造またはヒートパイプを含む請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
1個または複数個のバッテリ(11)を収容するケーシング(10)の少なくとも一つの外壁に、ケーシング(10)の内側と外気とを連通させるため、開放可能な少なくとも1個のフラップ(20)を有する請求項1ないし請求項いずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
請求項1ないしいずれか1項に記載の冷却装置を取り付けたモータ車両、特に電気自動車。
【請求項7】
1個または複数個のバッテリ(11)を収容するケーシング(10)が、車両に着脱可能に取り付けられている請求項に記載のモータ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電気モータ自動車、ハイブリッドあるいは全電気自動車の1個または複数個のバッテリの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータを備えた車両はバッテリによって電力が供給される。バッテリの初期価格を考えるとバッテリの寿命が極めて重要である。
温度変化に対して極めて敏感なこれら電気化学的バッテリは、通常、温度範囲20〜40℃、あるいはさらに狭い20〜30℃の温度範囲で最適に動作するよう設計されている。
40℃より高い温度はリチウム電池の性能を向上させることができるが、劣化の速度を速めるので、40℃は長寿命を確保するためには既に高温である。
【0003】
NiMH(またはNiCd)タイプのバッテリに対して、40℃より高い温度は、バッテリの充電容量に影響し温度の上昇を加速する。
それらバッテリのサイズおよび重量(一般的には、走行距離100〜150kmの15〜20kWhのバッテリの重量は150〜200kgである。)が比較的大きいことから、これらのバッテリは温度がゆっくりと上昇するが、冷却は困難である。
【0004】
熱の発生は、電流の二乗に比例し、電力は電流に比例するので、熱の発生は電力の二乗に比例する。
したがって、バッテリへの非常に急速な充電(およそ15分以内)により、バッテリ内で多大な熱の発生が引き起こされかねない。
バッテリへの急速な充電を行なうシステムの場合、運転者は、車両を使用してバッテリが完全に放電した後にバッテリを急速に充電して、車両を1日に数回使用することがある。
【0005】
この場合、バッテリの温度は上昇を続け、バッテリは許容最高温度に到達する。バッテリはこのバッテリの2回の急速充電サイクルの間冷却する時間がない。
従って、バッテリの寿命を保つために、バッテリは冷却する必要がある。
【0006】
特許文献第US5 834 132号は、モータ車両のバッテリの温度を制御するシステムを提案している。
このシステムは、バッテリのセル間を循環する冷却回路を提案しており、この回路には、容器から冷却液が供給される。
冷却液を循環させるために、ポンプが必要である。
冷却液はラジエータおよびそれに連結された扇風機によって、外部の空気で冷却される。
【0007】
然しながら、有効な冷却を確保するために、ラジエータの寸法と扇風機の能力はよく考慮しなければならない。外気と冷却液の温度差、およびバッテリと冷却液の温度差は、比較的小さい。
この結果は、比較的そうしたシステムの容積が大きく重量も重くなる。さらに、システムが、サイズの大きい冷却回路、ポンプ、ラジエータ、換気扇のため、および、必要な弁類のために複雑で高価となってしまう。
【0008】
さらに、継続的な急速充電の場合、非常に短時間で非常に大量の熱が発生するため、そうしたシステムは、バッテリの冷却が十分効率的ではない。
【0009】
その他の既知の冷却装置において、1個または複数個のバッテリの冷却に車両の空調システムが用いられる。
この装置は、Ford Escape Typeの車両に取り付けられ、図1に図示されている。
【0010】
この装置は、客室の外側に配置された凝縮装置3と、コンプレッサ6によって圧縮された例えばフレオンといった冷却剤が流れる2本のダクト4、5によって接続された、客室2内に配置された蒸発器1を有する。
2本のダクト4、5は、バッテリ11を収納するケーシング10の内側を冷却する蒸発器9に接続された2本の分岐ダクト7、8に接続されている。
ホルダー12、13は、ダクト4、5、7、8内の冷却剤の流れを調節することを可能とする。
【0011】
この冷却装置の欠点は、バッテリを収納するケーシング10内に蒸発器9が配置されていることで、このため、ケーシング10の容積が増加し、蒸発器9と冷却剤の分岐回路との間の接続が複雑となるため、ケーシング10を車両から取り外したい場合に問題を引き起こす。
本発明の目的は、これらの欠点を是正することである。
【発明の概要】
【0012】
この目的は、本発明に従って、モータ車両、特に電気自動車の1個または複数個のバッテリを冷却するための装置によって達成される。即ち、該冷却装置は、空調設備を含み、該空調設備の蒸発器が、車両の客室を冷却するに適し、かつ筐体に収容されており、1個または複数個のバッテリはケーシング内に配置されており、この装置の特徴は、蒸発器の筐体はダクトに連結し、ダクトの出口は、1個または複数個のバッテリが収容されているケーシングの少なくとも1つの外面上に設けられた熱交換領域の方向に向けられていることである。
【0013】
従って、蒸発器で作られた冷気の一部分は、蒸発器を入れた筐体から引き出され、ダクトを経由してケーシングの少なくとも一面上に設けられた熱交換領域に送られる。このような構成が1個または複数個のバッテリの冷却を可能としている。
このため、ケーシングは第2の蒸発器を含まず、このケーシングの製造を単純化することを可能としている。
【0014】
本発明の好ましい態様において、前記熱交換領域は、前記ダクトの出口に面して配置された前記ケーシングの外側部分と、前記ケーシングの内側に面して配置された部分とからなっている。
【0015】
本発明の特に有利な実施形態によれば、前記熱交換領域は、ラジエータからなり、ラジエータは金属基板を有し、この金属基板は、その一面上に前記ダクトの出口の方向へ向けられた第1の一連のフィンと、基板の反対面上に前記ケーシングの内側方向へ向けられた第2の一連のフィンとが設けられている。
従って、第1の一連のフィンは、ラジエータをダクトから出る冷気によって冷却可能とし、第2の一連のフィンは、今度はケーシング内に含まれる空気を冷却可能とするので、1個または複数個のバッテリを効果的に冷却することが出来る。
この実施形態において、前記ラジエータは、前記ダクトの出口に面して設置された前記ケーシングの外壁に、ケーシングを密封する様式で連結されている。
【0016】
ラジエータのフィンと1個または複数個のバッテリの間の熱交換は、空気の自然対流または扇風機による強制対流によって達成できる。
この熱交換は、また、金属構造またはヒートパイプを用いた伝導によっても達成される。
【0017】
本発明による装置の改良例において、1個または複数個のバッテリを収容するケーシングの外壁の少なくとも一面には、ケーシングの内側を外気とを連通させるために、開放可能な少なくとも1個のフラップを有している。
従って、外気が冷たい場合、前記フラップを開けてケーシングの内側を冷たい外気で冷却することができる。この結果、車両の空調のスイッチを切ることが可能となるので、エネルギーの節約を実現できる。
【0018】
別の態様によれば、本発明はまた、本発明による冷却装置を有するモータ車両、特に、電気自動車に関する。
この車両の好ましい形態において、1個または複数個のバッテリを収容するケーシングは、この車両に着脱可能な状態で取り付けられている。ケーシングには蒸発器を含まず、ラジエータ(あるいは、前記熱交換領域)は空調装置のその他の部分から物理的に切り離されているので、これにより車両に問題は発生しない。
本発明のその他の特別の特徴や利点は、以下の明細書の記載を通して明らかとされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は従来の冷却装置を示す図である。
図2図2は本発明による冷却装置の図である。
図3図3は、改良された冷却装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面は、非限定的な例として示している。
図2および図3の図面において、図1に示す既知の冷却装置と同一の要素は、同じ参照番号を付した。
従って、図2、3と図1の間で共通の要素は、再度説明はしない。
【0021】
図2および図3に示す実施形態において、モータ車両、特に電気自動車の1個または複数個のバッテリの冷却のための装置は、空調設備を含み、該空調設備の蒸発器1は、車両の客室2を冷却するに適し、かつ筺体13に収容されている。
筺体13は、冷気を客室2に拡散するための出口(図示していない)を有する。
【0022】
本発明によれば、蒸発器1の筺体13はダクト14に連結され、ダクトの出口14aは、バッテリ11を収容するケーシング10の外表面16に設けられた熱交換領域15に向けられている。
この熱交換領域15は、ダクト14の出口14aに対向して配置されたケーシング10の外側部分と、ケーシング10の内側に面して配置された内側部分と、を有する。
【0023】
図2および図3に示した例において、熱交換領域15は、金属基板17を有するラジエータからなり、金属基板17の一面には、ダクト14の出口14a方向に向けて設置された第1の一連のフィン18と、金属基板17の反対面には、ケーシング10の内側方向に向けて設置された第2の一連のフィン19とが取り付けられている。
【0024】
ラジエータ15は、ダクト14の出口14aに面して位置しているケーシング10の外壁に、ケーシングを密封する様式で連結されている。
ラジエータ15のフィン19とバッテリ11との間の熱交換は、自然対流または扇風機による強制対流によって得られる。
この熱交換は、ラジエータ15のフィン19とバッテリ11の間で、金属構造またはヒートパイプによる伝導によっても達成される。
【0025】
図3に示す形態において、バッテリ11を収容するケーシング10の外壁の一部にフラップ20を有し、外気温度がバッテリ11を冷却するに十分な低温な時、ケーシング10の内側と外気とを連通させるためにフラップ20を開放可能な構成としている。
バッテリ11を収容するケーシング10は、例えば、ダクト14が可能な限り短くなるように、空調設備の筺体13のほぼ直下の車両の床21の下側に、着脱可能に取り付けられている。
【0026】
ケーシング10の着脱可能な連結は、特別な問題を引き起こすことはない。なぜなら、図1に示す従来の例と異なり、ケーシング10と空調設備の残余の間には物理的な連結は無いからである。
【0027】
ここで、本発明による冷却装置の操作について、図3を参照して説明する。
回路4、5のホルダー12が作動している時、フレオンといった冷却剤は蒸発器1の内部を流れ、このことによって、客室2を冷却し、冷気をダクト14に送る効果が得られる。
【0028】
ダクトの出口14aを離れる冷気はラジエータ15のフィン18を冷却し、ラジエータ15のフィン19は、ケーシング10に含まれる空気を冷却し、その冷気が自然対流あるいは扇風機による強制対流によって、バッテリ11を冷却する。
【0029】
こうして、冷却装置はバッテリが40℃程度の温度を超えることを防ぐことを可能とし、一方、車両の走行中客室2を冷却することをも可能としている。
【0030】
車両が停止している場合、この装置は、バッテリを急速に再充電するサイクルの間、バッテリ11を効率的に冷却することも可能である。
この場合、コンプレッサ6を駆動するために車両のモータを動かし、客室2を不必要に冷却することを防止するために筺体13の出口を閉止するだけでよい。
【0031】
外気温度が十分低温であれば、ケーシング10のフラップ20を開き、車両の空調のスイッチを切ることができる。
特に、この場合は、ケーシング10内の空気と、ケーシング内に位置するバッテリ11を冷却できるほど外気が十分低温である。
図1
図2
図3