(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685206
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】棒状物品のすべり接触式電気めっき
(51)【国際特許分類】
C25D 7/00 20060101AFI20150226BHJP
C25D 17/22 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
C25D7/00 V
C25D17/22
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-9846(P2012-9846)
(22)【出願日】2012年1月20日
(65)【公開番号】特開2013-147712(P2013-147712A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】395010794
【氏名又は名称】名古屋メッキ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081628
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 桂
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 延之
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀衛
【審査官】
瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−37072(JP,U)
【文献】
実開昭61−183970(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第0697474(EP,A1)
【文献】
特開2003−89897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00
C25D 7/00
C25D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状物品をすべり接触式で電気めっきする方法であって、
棒状物品は、両端部をそれぞれ両側の非導電性の筒体に入れて両側の筒体に掛け渡し、中央部を筒体で覆わず、
両側の筒体はめっき液に浸け、両側の筒体に掛け渡した棒状物品と両側又は片側の筒体内に配置した棒状又は突起状の陰極をめっき液に没入し、
両側の筒体は、棒状物品の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転し、両側の筒体に掛け渡した棒状物品をめっき液中で回転しつつ移動して棒状又は突起状の陰極とすべり接触させることを特徴とする棒状物品のすべり接触式電気めっき方法。
【請求項2】
両側の筒体は、その中心軸と離れて平行する軸の周りに回転することを特徴とする請求項1に記載の棒状物品のすべり接触式電気めっき方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のすべり接触式電気めっき方法によって電気めっきされたことを特徴とする棒状物品。
【請求項4】
両端又は片端の端部に凹凸や突起部があることを特徴とする請求項3に記載の棒状物品。
【請求項5】
圧縮点火機関の点火を補助するグロープラグの棒状部品であることを特徴とする請求項3又は4に記載の棒状物品。
【請求項6】
すべり接触式で電気めっきする棒状物品をめっき液中で移動させつつ通電する物品移動器具であって、
両側にそれぞれ非導電性の筒体を配置して両側の筒体を間隔を置いて向い合わせ、両側の筒体に棒状物品を掛け渡す構成にし、両側又は片側の筒体内に棒状又は突起状の陰極を配置し、両側の筒体を棒状物品の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転する構成にし、
両側の筒体を棒状物品の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転すると、両側の筒体に掛け渡した棒状物品が回転しつつ移動して棒状又は突起状の陰極とすべり接触する構成にしたことを特徴とする棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具。
【請求項7】
両側の筒体は、棒状物品を掛け渡す間隔を増減可能にしたことを特徴とする請求項6に記載の棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具。
【請求項8】
両側又は片側の筒体は、周壁に、めっき液が通過する液通過孔を配列したことを特徴とする請求項6又は7に記載の棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具。
【請求項9】
両側又は片側の筒体は、周壁に、棒状物品の端部が通過する物品出し入れ部を設けたことを特徴とする請求項6、7又は8に記載の棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状物品をバレル式とも言われるすべり接触式で電気めっきする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
すべり接触式の電気めっきに用いるバレルは、非導電性の容器であって、内部に陰極線が垂れ下っている。また、非導電性容器は、籠状であって、周壁に多数の液通過孔を貫通している。籠状容器は、液通過孔を通じてめっき液が出入する。
【0003】
すべり接触式の電気めっき法は、バレルに多数の小形の物品を容れ、めっき槽にめっき液と陽極板を入れる。バレルは、多数の物品を閉じ込めた状態でめっき槽のめっき液に浸け、バレル内の陰極線と物品をめっき液に没入する。陽極板と陰極線の間には、電圧を印加する。バレルは、回転する。すると、バレル内の多数の物品は、それぞれ、めっき液の中で回転しつつ移動し、陰極線や隣の物品とすべり接触する。電流は、陽極板からバレル外のめっき液、バレル周壁の液通過孔、バレル内のめっき液と物品を経て陰極線に流れる。物品は、電気めっきされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−23333号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[課 題]
上記のようなすべり接触式の電気めっき法で、軸部品のような棒状物品を電気めっきすると、棒状物品は、その形状に起因して、電流密度が端部で高くて中央部で低くなる。めっきの付着量が両端部で多くて中央部で少なくなり易い。棒状物品は、電気めっきが均等厚さになり難い。特に、棒状物品は、端部にネジやローレットのような凹凸や突起部があると、めっき厚さの不均等が顕著になる。
【0006】
また、棒状物品は、陰極線が巻き付き易い。陰極線が棒状物品に絡み付くと、バレル内の多数の棒状物品は、回転や移動が困難になる。各棒状物品は、他の棒状物品や陰極線に接触し難くなる。棒状物品は、長くて細いと、湾曲したり、折れ曲がったりすることがある。棒状物品は、良好に電気めっきし難い。
結局、棒状物品は、均等厚さに良好に電気めっきし難い。
【0007】
[考察と着想]
第1点
バレルの籠状容器の液通過孔付き周壁は、電流が陽極から物品を経て陰極に流れるのに対して抵抗になっている。その上、バレル内の物品付近のめっき液、金属イオン濃度の低いめっき液が、バレル外のめっき液、金属イオン濃度の高いめっき液と入れ替わるのに対して抵抗になっている。即ち、バレルの液通過孔付き周壁は、めっきの付着量が多くならない原因になっている。
【0008】
そこで、軸部品のような棒状物品は、めっきの付着量が多くならない中央部をバレルの周壁で覆わない。棒状物品の中央部は、陽極との間にバレルの周壁を介在させないことにした。
棒状物品をめっき液中で移動させつつ通電する物品移動器具は、物品の全体を包む容器のバレルに替えて、
図1に示すように、棒状物品1を掛け渡す方式にする。この掛け渡し式の物品移動器具は、両側にそれぞれ非導電性の筒体2を配置して両側の筒体2を間隔を置いて向い合わせる。両側の筒体2は、棒状物品1を掛け渡す対の筒体を構成する。
棒状物品1は、両端部を両側の筒体2に入れ、両側の対の筒体2に掛け渡す。両端支持する。すると、棒状物品1は、中央部が筒体2で覆われない。棒状物品1の中央部について、めっき付着量が物品移動器具の形態に起因して多くならない原因がなくなる。
【0009】
なお、掛け渡し式の物品移動器具は、
図2に側面を示すように、複数本の棒状物品1を両側の対の筒体2に掛け渡す。各棒状物品1は、それぞれ、両端部を両側の筒体2に入れる。
【0010】
第2点
バレル内の陰極線が棒状物品に巻き付いて絡み付く原因は、陰極線が湾曲可能であることに起因している。
【0011】
そこで、陰極3は、
図1と
図2に示すように、線ではなく、棒状にする。又は、突起状にする。掛け渡し式の物品移動器具は、両側又は片側の筒体2内に棒状又は突起状の陰極3を配置する。
掛け渡し式の物品移動器具は、両側の対の筒体2を棒状物品1の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転する。すると、棒状物品1は、両端部を両側の筒体2に入れた状態で、回転しつつ径方向に移動し、他の棒状物品1や棒状又は突起状の陰極3にすべり接触する。棒状又は突起状の陰極3は、棒状物品1には巻き付かない。絡み付かない。陰極の形態に起因して良好に電気めっきされない原因がなくなる。
【0012】
両側の対の筒体2を棒状物品1の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転するに当たり、対の筒体2の中心軸4の周りに回転する。自転する。又は、対の筒体2の中心軸4と離れて平行する並列軸5の周りに回転する。公転する。公転の方が自転より、めっき液中で棒状物品1が移動する距離が長くなる。棒状物品1が金属イオン濃度の高いめっき液と接触し易くなる。電気めっきが促進され易い。
【0013】
第3点
軸部品のような棒状物品1は、長いものも、短いものもある。そこで、掛け渡し式の物品移動器具は、両側の対の筒体2の間隔を増減可能にする。対の筒体2は、棒状物品1を掛け渡す間隔を棒状物品1の長さに応じて調整する。
【0014】
第4点
掛け渡し式の物品移動器具は、両側又は片側の筒体2の周壁に、めっき液が通過する液通過孔6を貫通して配列する。また、両側又は片側の筒体の周壁に、棒状物品の端部が通過する物品出し入れ部を設ける。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1.棒状物品をすべり接触式で電気めっきする方法であって、
棒状物品は、両端部をそれぞれ両側の非導電性の筒体に入れて両側の筒体に掛け渡し、中央部を筒体で覆わず、
両側の筒体はめっき液に浸け、両側の筒体に掛け渡した棒状物品と両側又は片側の筒体内に配置した棒状又は突起状の陰極をめっき液に没入し、
両側の筒体は、棒状物品の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転し、両側の筒体に掛け渡した棒状物品をめっき液中で回転しつつ移動して棒状又は突起状の陰極とすべり接触させることを特徴とする棒状物品のすべり接触式電気めっき方法。
2.上記1の棒状物品のすべり接触式電気めっき方法において、
両側の筒体は、その中心軸と離れて平行する軸の周りに回転することを特徴とする。
3.上記1又は2のすべり接触式電気めっき方法によって電気めっきされたことを特徴とする棒状物品。
4.上記3の棒状物品において、
両端又は片端の端部に凹凸や突起部があることを特徴とする。
5.上記3又は4の棒状物品において、
圧縮点火機関の点火を補助するグロープラグの棒状部品であることを特徴とする。
6.すべり接触式で電気めっきする棒状物品をめっき液中で移動させつつ通電する物品移動器具であって、
両側にそれぞれ非導電性の筒体を配置して両側の筒体を間隔を置いて向い合わせ、両側の筒体に棒状物品を掛け渡す構成にし、両側又は片側の筒体内に棒状又は突起状の陰極を配置し、両側の筒体を棒状物品の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転する構成にし、
両側の筒体を棒状物品の掛け渡し方向に沿う軸の周りに回転すると、両側の筒体に掛け渡した棒状物品が回転しつつ移動して棒状又は突起状の陰極とすべり接触する構成にしたことを特徴とする棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具。
7.上記6の棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具において、
両側の筒体は、棒状物品を掛け渡す間隔を増減可能にしたことを特徴とする。
8.上記6又は7の棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具において、
両側又は片側の筒体は、周壁に、めっき液が通過する液通過孔を配列したことを特徴とする。
9.上記6、7又は8の棒状物品のすべり接触式電気めっき用物品移動器具において、
両側又は片側の筒体は、周壁に、棒状物品の端部が通過する物品出し入れ部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
棒状物品が均等厚さに良好に電気めっきされ易い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の概念ないし技術的思想を示す斜視図。
【
図3】本発明の実施形態におけるすべり接触式電気めっき用の物品移動器具の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[物品移動器具の構成]
すべり接触式電気めっき用の物品移動器具は、
図3〜
図5に示すように、左右の両側にそれぞれ縦板11を設けている。両側の縦板11は、並列して向い合わせにしている。両側の縦板11の下端と上端には、それぞれ、横棒12を左右方向に掛け渡して固定している。左右の縦板11と上下の横棒12は、前後方向に開口した方形状の枠体を構成している。枠体11、12は、合成樹脂製にし、非導電性にしている。枠体11、12の上側位置には、運搬用の複数の吊り軸13を設けている。
【0019】
枠体11、12は、両側の縦板11の下半分に回転軸21を左右方向に掛け渡して軸受けしている。回転軸21は、左右の端部にそれぞれ円形状の回転板22、23を同心状に固定している。左端の回転板22は左側の縦板11の内側に、右端の回転板23は右側の縦板11の内側に配置している。回転軸21は、左右の回転板22、23の間に位置する部分を四角形断面状の角軸にしている。この角軸は、中央部に2枚の円形状の回転板24、25をそれぞれ同心状に嵌合して取り付けている。2枚の回転板24、25は、それぞれ、回転軸21に対して回転不能にし、回転軸21に沿って移動可能にしている。そして、ボルト26で回転軸21に固定する構成にしている。即ち、回転軸21の中央部に取り付けた2枚の回転板24、25は、それぞれ、固定位置を回転軸21に沿って変更可能にしている。
【0020】
左端の回転板22とこれに対面する回転板24は、それぞれ、内側面の周辺側に筒体27、28を固定している。回転板22に固定の筒体27と回転板24に固定の筒体28は、それぞれ、短円筒形状にし、その中心軸を回転軸21に沿う左右方向に配置している。左側の筒体27と右側の筒体28は、同心状にして左右に間隔を置いて向い合わせている。左右の筒体27、28は、棒状物品1を左右方向に掛け渡す対の筒体を構成している。対の筒体27、28は、左端の回転板22とこれに対面する回転板24に複数対を設けている。図示例では、対の筒体27、28は4対にしている。複数対の筒体27、28は、回転板22、24の周方向の等間隔位置に配置している。各対の筒体27、28は、回転板24の固定位置を変更することにより、棒状物品1を左右方向に掛け渡す間隔を増減可能にしている。また、右端の回転板23とこれに対面する回転板25にも、同様に、複数対の筒体27、28を設けている。
【0021】
各対の筒体27と筒体28は、それぞれ、周壁に多数の液通過孔29を貫通して配列している。液通過孔29は、めっき液61が通過する。各筒体28は、それぞれ、
図5に鎖線で示すように、周壁の一部を開閉可能にし、物品出し入れ部30を設けている。物品出し入れ部30は、棒状物品1の端部が通過する。
【0022】
回転軸21、回転板22と回転板24及びその間の筒体27、28、並びに、回転板23と回転板25及びその間の筒体27、28などは、回転体を構成している。回転体21〜30は、合成樹脂製にし、非導電性にしている。
【0023】
右端の回転板23は、歯車に形成している。右側の縦板11は、内側に小歯車31を軸で取り付けている。小歯車31は、回転板の歯車23の上側に配置し、歯車23に噛み合わせている。両側の縦板11は、上半分に駆動軸32を左右方向に掛け渡して軸受けしている。駆動軸32は、右側の縦板11の内側位置に歯車33を取り付けている。歯車33は、小歯車31の上側に配置し、小歯車31に噛み合わせている。また、駆動軸32は、右側の縦板11の外側位置に歯車34を取り付けている。歯車34は、図示しない回転駆動装置に連結可能にしている。歯車34、駆動軸32、歯車33、小歯車31と歯車23は、回転駆動装置から回転軸21への回転伝動機構を構成している。回転伝動機構23、31〜34は、合成樹脂製にし、非導電性にしている。
【0024】
回転駆動装置が回転伝動機構の歯車23を回転すると、回転体21〜30が回転軸21の中心軸の周りに回転する。各対の筒体27、28は、それぞれ、回転軸21の中心軸の周り、即ち、その筒体27、28の中心軸と離れて平行する並列軸の周りに回転する。各対の筒体27、28は、棒状物品1の掛け渡し方向に沿う回転軸21の周りに回転する。回転軸21の中心軸の周りに公転する。
【0025】
左端の回転板22と回転板24の間の各対の筒体27、28は、それぞれ、左端の回転板22に固定の筒体27の中心位置に棒状の陰極41を配置している。棒状の陰極41は、先端を丸めた丸棒にしている。棒状陰極41は、基端を左端の回転板22に埋没している。棒状陰極41の基端は、回転板22に埋設した帯状の電線42に接続している。電線42は、回転軸21の左端部に同心状に埋設した導電軸43に接続している。各棒状陰極41は、それぞれ、電線42を経て導電軸43に接続している。導電軸43は、左端部を左側の縦板11の外側に突出している。導電軸43の突出左端部は、上側位置にブラシ44、ばね45と電線46を順次配置して接続している。導電軸43の左端部、ブラシ44、ばね45と電線46を水密に密封する非導電性の覆い47を設けている。導電軸43の左端部にブラシ44をばね45で押し付けて導電軸43と電線46を電気的に接続するブラシ機構を構成している。
【0026】
左側の縦板11は、導電帯48を前後方向に沿って固定している。導電帯48は、電線46の上側に位置し、中央部分に電線46の上端を接続している。導電帯48の前後の端部には、それぞれ、導電支持軸49を左方に外側に突出して固定している。導電支持軸49は、導電帯48、ブラシ機構43〜47と電線42を経て各棒状陰極41に電気的に接続している。
【0027】
右端の回転板23と回転板25の間の各対の筒体27、28も、同様に、右端の回転板23に固定の筒体27の中心位置に棒状の陰極41を配置している。各棒状陰極41は、基端を右端の回転板23に埋没している。右端の回転板23と右側の縦板11にも、同様に、電線42、ブラシ機構43〜47、導電帯48と導電支持軸49を設けている。右側の導電支持軸49は、右側の導電帯48、ブラシ機構43〜47と電線42を経て右側の各棒状陰極41に電気的に接続している。なお、右側の導電帯48と左側の導電帯48は、電線50で接続している。
【0028】
[物品移動器具の使用方法、電気めっき方法]
物品移動器具を使用する場合、各対の筒体27、28に、それぞれ、
図1と
図2に示したように、複数の棒状物品1を掛け渡して支持する。多数の棒状物品1を装填した物品移動器具は、
図3〜
図5に示すように、めっき液61と陽極板62を入れた非導電性のめっき槽63に装着する。左右の導電支持軸49は、めっき槽63の左右の側板上に載せる。回転伝動機構の歯車34は、回転駆動装置に連結する。回転体21〜30は、めっき液61に没入する。回転体21〜30の前側と後側に、それぞれ、めっき液61中の陽極板62が位置する。各対の筒体27、28に掛け渡した棒状物品1は、それぞれ、めっき液61中の陽極板62に対面する。各対の筒体27、28に両端部を入れた棒状物品1は、両端部が筒体27、28の液通過孔29付き周壁で覆われ、液通過孔29付き周壁を介してめっき液61中の陽極板62に対面する。棒状物品1の中央部は、筒体27、28の液通過孔29付き周壁で覆われず、液通過孔29付き周壁を介せずにめっき液61中の陽極板62に対面する。
【0029】
回転駆動装置は、作動する。すると、回転体21〜30は、めっき液61中で回転軸21の中心軸の周りに自転する。各対の筒体27、28は、それぞれ、めっき液61中で回転軸21の周りに公転する。各対の筒体27、28に掛け渡した各棒状物品1は、回転しつつ径方向に移動して、他の棒状物品1や棒状陰極41にすべり接触する。
【0030】
陽極板62と導電支持軸49は、直流電源に接続する。すると、電流が陽極板62からめっき液61を経て棒状物品1に流れて棒状陰極41に至る。更に、電流は、棒状陰極41から電線42、ブラシ機構43〜47と導電帯48を経て導電支持軸49に達する。各棒状物品1は、電気めっきされる。
【0031】
棒状物品1の両端部に陽極板62から流入する電流は、筒体27、28の液通過孔29付き周壁を通過する。棒状物品1の中央部に陽極板62から流入する電流は、筒体27、28の液通過孔29付き周壁を通過しない。
棒状物品1の両端部付近と陽極板62付近の間で入れ替わるめっき液は、筒体27、28の液通過孔29付き周壁を通過する。棒状物品1の中央部付近と陽極板62付近の間で入れ替わるめっき液は、筒体27、28の液通過孔29付き周壁を通過しない。
棒状物品1は、均等厚さに良好に電気めっきされ易い。
【0032】
また、筒体27、28の回転中、対の筒体27、28に両端部を入れた各棒状物品1は、筒体27、28の中心軸に対して傾く角度が制限される。棒状物品1の端部の角部、凸部や突起部が他の棒状物品1に当る強さが大きくならない。電気めっきされる棒状物品1は、打ち痕や打ち傷が生じ難い。
【0033】
[棒状物品の例]
棒状物品1は、
図1と
図2に示すように、丸軸のような丸棒にする。角棒にする。筒状の中空棒にする。
また、棒状物品1は、機械機器の棒状部品にする。両端又は片端の端部にネジやローレットのような凹凸や突起部がある棒にする。圧縮点火機関の点火を補助するグロープラグの棒状部品、片端の端部にネジやローレットのある丸軸にする。このグロープラグの棒状部品は、長さが50〜200mm位で、太さが2〜10mm位である。
【0034】
[変形例]
1.上記の実施形態において、物品移動器具は、回転軸21の中央部に2枚の回転板24、25を設けているが、両回転板24、25を設けない。そして、左端の回転板22に固定の筒体27と右端の回転板23に固定の筒体27は、棒状物品1を掛け渡す対の筒体にする。
2.上記の実施形態において、陰極41は、丸棒状にしているが、円盤形状や半球形状などの突起状にする。
3.上記の実施形態において、筒体27、28は、円筒形状にしているが、六角筒や八角筒などの角筒形状にする。
【符号の説明】
【0035】
1 棒状物品
2 筒体
3 陰極、棒状陰極
4 中心軸
5 並列軸
6 液通過孔
11、12 枠体
11 縦板
12 横棒
13 吊り軸
21〜30 回転体
21 回転軸
22、23、24、25 回転板
23 回転板、歯車
26 ボルト
27、28 筒体
29 液通過孔
30 物品出し入れ部
23、31〜34 回転伝動機構
31 小歯車
32 駆動軸
33 歯車
34 歯車
41 陰極、棒状陰極
42 電線
43〜47 ブラシ機構
43 導電軸
44 ブラシ
45 ばね
46 電線
47 覆い
48 導電帯
49 導電支持軸
50 電線
61 めっき液
62 陽極板
63 めっき槽