特許第5685239号(P5685239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685239
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20150226BHJP
   F16H 21/32 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   F16H49/00 A
   F16H21/32
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-251558(P2012-251558)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-98462(P2014-98462A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2012年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】512296368
【氏名又は名称】庵地 三徳
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】庵地 三徳
【審査官】 河端 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−105544(JP,A)
【文献】 特開2000−352395(JP,A)
【文献】 米国特許第07694599(US,B2)
【文献】 特開平04−285461(JP,A)
【文献】 特開昭63−099758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
F16H 21/32
H02K 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース、左右の上側第一磁石、左右の下側第一磁石、伝達機構、出力部材、及び第二磁石を備え、
前記出力部材は前記ベースに左右軸回り方向に回転自在に設けられ、
前記伝達機構は、スライドリンク、揺動リンク、左右の従動リンクを備え、
前記スライドリンクは、モーターの駆動時において前記モーターの駆動力により左右方向に往復直線運動するように構成され、
前記揺動リンクは長形でその長さ方向の中間部が前記ベースに対して前後軸回り方向に回動自在に支持され、
前記従動リンクは左右方向において前記出力部材の両側の夫々に設けられ、
前記各従動リンクは、上下方向の中間部が前記ベースに設けられた揺動軸に対して前後軸回り方向に回動自在に支持され、
前記左右の従動リンクのうちの一方は第一従動リンクであり且つ他方は第二従動リンクであり、
前記揺動リンクの長さ方向において前記揺動リンクの回動中心よりも一端側の部分が前記スライドリンクに前後軸回り方向に回動自在に連結されると共に他端側の部分が前記第一従動リンクに前後軸回り方向に回動自在に連結されることで、前記第一従動リンクが前記揺動軸を中心に前記スライドリンクと逆位相で揺動するように構成され、
前記第二従動リンクが前記揺動リンクを介さずに前記スライドリンクに前後軸回り方向に回動自在に連結されることで、前記第二従動リンクが前記揺動軸を中心に前記第一従動リンクと逆位相で揺動するように構成され、
前記左右の上側第一磁石のうちの一方の上側第一磁石は、前記第一従動リンクにおいて前記揺動軸よりも上側の部分に設けられると共に、他方の上側第一磁石は、前記第二従動リンクにおいて前記揺動軸よりも上側の部分に設けられ、
前記左右の下側第一磁石のうちの一方の下側第一磁石は、前記第一従動リンクにおいて前記揺動軸よりも下側の部分に設けられると共に、他方の下側第一磁石は、前記第二従動リンクにおいて前記揺動軸よりも下側の部分に設けられ、
前記モーターの駆動時において、前記左右の上側第一磁石が接近・離反し且つ前記左右の下側第一磁石が接近・離反し、
前記出力部材は、左右方向において、前記左右の上側第一磁石の間、及び前記左右の下側第一磁石の間に配置され、
前記第二磁石が前記出力部材に設けられ、
前記モーターの駆動時において、前記第二磁石に対して、接近する左右の上側第一磁石と、接近する左右の下側第一磁石から、前記出力部材の回転方向の反発力又は吸引力を受けるように構成されたことを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーターの駆動力を伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には電気モーターの回転出力を減速して出力する動力伝達装置が開示されている。この動力伝達装置は歯車減速機であって、電気モーターの回転出力をウォームや歯車を介して最終段の歯車に伝達し、これにより最終段の歯車に連結したロッドを回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−80567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、モーターから最終段の歯車まで全てウォームや歯車等のギヤを介して連結しており、ギヤの噛み合い箇所が多く、ギヤ同士の摩耗により不具合が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、モーターの動力を出力部材に磁気的な連結を介して効率良く伝達することができ、ギヤ同士の摩耗による不具合が生じ難い新規な動力伝達装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の動力伝達装置は、ベース、左右の上側第一磁石、左右の下側第一磁石、伝達機構、出力部材、及び第二磁石を備え、前記出力部材は前記ベースに左右軸回り方向に回転自在に設けられ、前記伝達機構は、スライドリンク、揺動リンク、左右の従動リンクを備え、前記スライドリンクは、モーターの駆動時において前記モーターの駆動力により左右方向に往復直線運動するように構成され、前記揺動リンクは長形でその長さ方向の中間部が前記ベースに対して前後軸回り方向に回動自在に支持され、前記従動リンクは左右方向において前記出力部材の両側の夫々に設けられ、前記各従動リンクは、上下方向の中間部が前記ベースに設けられた揺動軸に対して前後軸回り方向に回動自在に支持され、前記左右の従動リンクのうちの一方は第一従動リンクであり且つ他方は第二従動リンクであり、前記揺動リンクの長さ方向において前記揺動リンクの回動中心よりも一端側の部分が前記スライドリンクに前後軸回り方向に回動自在に連結されると共に他端側の部分が前記第一従動リンクに前後軸回り方向に回動自在に連結されることで、前記第一従動リンクが前記揺動軸を中心に前記スライドリンクと逆位相で揺動するように構成され、前記第二従動リンクが前記揺動リンクを介さずに前記スライドリンクに前後軸回り方向に回動自在に連結されることで、前記第二従動リンクが前記揺動軸を中心に前記第一従動リンクと逆位相で揺動するように構成され、前記左右の上側第一磁石のうちの一方の上側第一磁石は、前記第一従動リンクにおいて前記揺動軸よりも上側の部分に設けられると共に、他方の上側第一磁石は、前記第二従動リンクにおいて前記揺動軸よりも上側の部分に設けられ、前記左右の下側第一磁石のうちの一方の下側第一磁石は、前記第一従動リンクにおいて前記揺動軸よりも下側の部分に設けられると共に、他方の下側第一磁石は、前記第二従動リンクにおいて前記揺動軸よりも下側の部分に設けられ、前記モーターの駆動時において、前記左右の上側第一磁石が接近・離反し且つ前記左右の下側第一磁石が接近・離反し、前記出力部材は、左右方向において、前記左右の上側第一磁石の間、及び前記左右の下側第一磁石の間に配置され、前記第二磁石が前記出力部材に設けられ、前記モーターの駆動時において、前記第二磁石に対して、接近する左右の上側第一磁石と、接近する左右の下側第一磁石から、前記出力部材の回転方向の反発力又は吸引力を受けように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、モーターの動力を出力部材に磁気的な連結を介して効率良く伝達することができ、ギヤ同士の摩耗による不具合が生じ難い動力伝達装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の動力伝達装置を組み込んだ回転装置の正面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】同上の回転装置に設けられる対を成すフレームのうち、左側に配置されるフレームとこれに設けられた従動リンク及び第一磁石を示す斜視図である。
図4】同上の回転装置に設けられる対を成すフレームのうち、右側に配置されるフレームとこれに設けられた従動リンク及び第一磁石を示す斜視図である。
図5】同上の出力部材及びこれに設けられた第二磁石を示す斜視図である。
図6】同上の出力部材及びこれに設けられた第二磁石の側面図である。
図7】三段の出力部材の配置を示す側面図である。
図8】上下二対の第一磁石のうち、上側一対の第一磁石が離反した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の動力伝達装置1は、回転装置等に組み込まれて用いられる。図1には本実施形態の動力伝達装置1を具備する回転装置2が示されている。
【0011】
回転装置2は、動力伝達装置1に加えて、モーター3を具備している。動力伝達装置1は設置面4に設置されるベース15を有している。モーター3は電気モーターであって、ベース15に対して固定されるモーター本体30と、モーター本体30から水平方向に突出するモーター軸31を備えている。以下では、ベース15を設置面4に設置した状態を基準にした方向を用いて説明し、モーター軸31の軸方向を前後方向、モーター軸31のモーター本体30からの突出方向を前方として説明する。
【0012】
動力伝達装置1は、ベース15に加えて、第一磁石10、伝達機構11、出力部材12、及び第二磁石13を備えている。伝達機構11はリンク機構であって、対を成す左右の従動リンク115を有している。対を成す従動リンク115は左右方向に三対並べて設けられており、各対の従動リンク115の間には夫々出力部材12が配設されている。
【0013】
各従動リンク115の上下両端部には第一磁石10が設けられており、対を成す従動リンク115の対応する端部に設けられた第一磁石10同士は出力部材12を介して対向している。すなわち、各対の従動リンク115には上下に一対ずつ第一磁石10が設けられており、動力伝達装置1全体では計6対の第一磁石10が設けられている。
【0014】
伝達機構11は、モーター3の駆動力を用いて各対の第一磁石10が左右方向において接近・離反するように各第一磁石10を動作させる。伝達機構11は、駆動リンク110、スライドリンク111、揺動リンク112、中間リンク113、連結リンク114、及び従動リンク115を有している。
【0015】
駆動リンク110は、一端部がモーター軸31の偏心位置に前後軸回り方向に回動自在に連結され、他端部が左右に長いスライドリンク111の端部に前後軸回り方向に回動自在に連結されている。ここで、前後軸回り方向に回動自在とは前後方向と平行な回動軸を中心にして回動自在であることを意味する。
【0016】
スライドリンク111はベース15に設けられた複数のローラー150によってその長手方向にスライド自在に支持されている。モーター3が駆動されて図2中矢印aに示す方向にモーター軸31が回転すると、モーター軸31の偏心位置に駆動リンク110を介して連結されたスライドリンク111は、図2中矢印bに示されるように左右方向に往復動する。すなわち、モーター軸31の回転は、駆動リンク110によってスライドリンク111の往復直線運動に変換される。
【0017】
スライドリンク111には三つの揺動リンク112と三つの連結リンク114が連結されている。揺動リンク112と連結リンク114はスライドリンク111の長手方向において交互に設けられている。
【0018】
各揺動リンク112は長手方向の中間部がベース15に設けられた軸151によって前後軸回り方向に回動自在に支持されている。各揺動リンク112の一端部はスライドリンク111に前後軸回り方向に回動自在に連結されている。各揺動リンク112のスライドリンク111と反対側の端部には、中間リンク113の一端部が前後軸回り方向に回動自在に連結されている。各連結リンク114は二本のリンク部材116を連結して略L字状に形成されており、各連結リンク114の一端部はスライドリンク111に前後軸回り方向に回動自在に連結されている。なお、各連結リンク114は他のリンクと同様に一本のリンク部材で構成しても構わない。
【0019】
各従動リンク115はくの字状に形成されている。左右対を成す従動リンク115は、互いの狭角側が対向するように左右対称に配置されている。すなわち、各対の従動リンク115は、一方の従動リンク115aが正面視くの字状となるように配置され、他方の従動リンク115bが正面視逆くの字状となるように配置されている。各従動リンク115aの上側及び下側には第一磁石10が取り付けられている。各第一磁石10は永久磁石であって、例えばブロック状のネオジム磁石である。
【0020】
図1に示されるようにベース15の各従動リンク115に対応する箇所には、左右方向で見て円環状を成すように湾曲した螺旋状のフレーム152が取り付けられている。図3には従動リンク115aが設けられたフレーム152が示されている。図4には従動リンク115bが設けられたフレーム152が示されている。図1に示されるように、各フレーム152には軸方向が前後方向と平行な揺動軸153が設けられている。くの字状を成す各従動リンク115の屈曲部分は、対応するフレーム152に設けられた揺動軸153に前後軸回り方向に回動自在に支持されている。各対の従動リンク115は、正面視左側に配置される従動リンク115aが、揺動軸153よりも上方において、対応する中間リンク113の揺動リンク112と反対側の端部に前後軸回り方向に回動自在に連結されている。他方、対を成す従動リンク115のうち、正面視右側に配置される従動リンク115bは、揺動軸153よりも上方において、対応する連結リンク114のスライドリンク111と反対側の端部に前後軸回り方向に回動自在に連結されている。
【0021】
前述のようにスライドリンク111が往復動すると、スライドリンク111に連結された各揺動リンク112は、同期して軸151を中心にして揺動し、スライドリンク111と反対側の端部が左右方向においてスライドリンク111と逆方向に動作する。このため、各揺動リンク112に中間リンク113を介して連結された従動リンク115aは、揺動軸153を中心にしてスライドリンク111と逆位相で揺動する。同時にスライドリンク111に連結された連結リンク114はスライドリンク111と同じ方向に動作する。このため、スライドリンク111に連結リンク114を介して連結された各従動リンク115bは、同期して揺動軸153を中心に従動リンク115aと逆位相で揺動する。このように各従動リンク115が揺動することで、各対の第一磁石10は接近と離反を交互に繰り返す。また、各対を成す従動リンク115に設けられた上下二対の第一磁石10は、図2に示されるように上側一対の第一磁石10が接近したときには下側一対の第一磁石10が離反し、図8に示されるように下側一対の第一磁石10が接近したときには上側一対の第一磁石10が離反する。すなわち、各従動リンク115には、従動リンク115の一方向の回動時において出力部材12に接近する第一磁石10と、従動リンク115の前記一方向とは逆方向の回動時において出力部材12に接近する他の第一磁石10とが設けられている。
【0022】
図1に示されるようにベース15には軸方向が左右方向と平行な出力軸14が軸回り方向に回転自在に設けられている。出力軸14には三つの出力部材12が出力軸14の軸方向に間隔を介して設けられている。各出力部材12の回転軸方向における両側に従動リンク115が配置されている。
【0023】
各出力部材12は、図6に示されるように左右方向で見て円環状を成す環状部120と、環状部120の中心に位置する円筒状の軸連結部121と、軸連結部121から放射方向に突出して環状部120と軸連結部121を連結する複数の輻部122を有している。各出力部材12の軸連結部121には出力軸14が挿通され、各出力部材12の軸連結部121はビス等を用いて出力軸14に固定されている。これにより、各出力部材12は出力軸14と共に左右軸回り方向に回転自在になっている。また、図7に示されるように三段の出力部材12を左右方向から見たとき、各出力部材12の環状部120は重複して配置されている。
【0024】
図6に示されるように各出力部材12の環状部120には、三個一組の第二磁石13が二組設けられている。各第二磁石13は永久磁石であって、例えばブロック状のネオジム磁石である。各第二磁石13は対応する出力部材12の環状部120の外周面に取り付けられている。各第二磁石13は対応する出力部材12の回転時において、その両側の従動リンク115に設けられた各対の第一磁石10の間を通過する位置に配置されている。
【0025】
各第一磁石10及び各第二磁石13は、前記モーター3の駆動時において対を成す第一磁石10が接近したときに、対応する第二磁石13が当該第一磁石10から磁力由来の反発力を受けるように設けられる。この反発力の向きは、図8中矢印cに示される出力部材12の周方向、すなわち、出力部材12の回転方向である。一例を挙げると、各第一磁石10の着磁方向が揺動軸153の軸方向(前後方向)と略平行とされ、各第二磁石13の着磁方向が出力部材12の径方向と平行とされ、さらに、各第二磁石13が対応する第一磁石10に対向する位置を通過するときに、第一磁石10の前側に配置される磁極と、これに対向する第二磁石13の前側に配置される磁極とが同極とされる。なお、モーター3の駆動時において接近する第一磁石10から第二磁石13に対して出力部材12の回転方向の反発力を受けるものであれば、各第一磁石10及び各第二磁石13の磁極の配置は前記に限られるものではない。例えば各第一磁石10の着磁方向揺動軸153の軸方向に対して交差したり、各第二磁石13の着磁方向が出力部材12の径方向に対して交差したりしてもよい。また、モーター3の駆動時において接近する第一磁石10から第二磁石13に対して出力部材12の回転方向の吸引力が働くものであってもよい。
【0026】
図6に示されるように各組における第二磁石13は環状部120の周方向に等間隔で設けられている。具体的には、各組の第二磁石13は環状部120の中心を中心にして環状部120の周方向に30度間隔で設けられている。また、各出力部材12においては、一方の組の第二磁石13と他方の組の第二磁石13とが環状部120の中心を中心にして点対称位置に配置されている。さらに、各出力部材12は、図7に示されるように周方向に60度ずつずらして配置されている。このため、図7に示されるように三段の出力部材12を左右方向から見たとき、一部の第二磁石13が重複し、環状部120の周方向に第二磁石13が12等分された位置に配置されるようになっている。
【0027】
また、図3図4等示されるように、本実施形態の各フレーム152には、出力部材12に設けられた第二磁石13に対して出力部材12の回転方向に磁力由来の反発力を作用させる複数の第三磁石16が設けられている。各第三磁石16は永久磁石であって、例えばブロック状のネオジム磁石である。第三磁石16は、フレーム152の外周面において周方向に間隔を介して複数設けられている。なお、第三磁石16はフレーム152において従動リンク115に対応する箇所には設けられていない。各第三磁石16の着磁方向は、左右方向で見て円環状を成すフレーム152の径方向と平行であり、その径方向外側に位置する磁極は、出力部材12の回転時において第三磁石16に対向する箇所を通過する第二磁石13の外側の磁極と同極とされる。なお、第三磁石16は省略可能である。
【0028】
前述のように回転装置2のモーター3を駆動して各従動リンク115が揺動すると、図2及び図8に示されるように各対の第一磁石10は接近及び離反を交互に繰り返す。このとき、接近する第一磁石10に近い第二磁石13は、当該第一磁石10から出力部材12の回転方向の反発力を受け、出力部材12を回転方向に加速させる。このため、各出力部材12は出力軸14を中心にして図2中矢印dに示される左右軸回り方向に回転し、これら出力部材12に固定された出力軸14も回転する。この出力軸14の回転力は回転装置2の出力として利用される。
【0029】
ここで、同一の出力部材12に設けられた第二磁石13は、一方の組において出力部材12回転方向の最後に位置する第二磁石13と他方の組において出力部材12回転方向の最前に位置する第二磁石13との間隔L1(図2参照)と、従動リンク115に設けられた上下の第一磁石10の間隔L2(図2参照)とが略同じ寸法となるように設けられている。このため、図2に示されるように接近する上側一対の第一磁石10の間に一方の組の第二磁石13が通過するときには、離反する下側一対の第一磁石10の間に他方の組の第二磁石13が進入し、また、図8に示されるように接近する下側一対の第一磁石10の間に一方の組の第二磁石13が通過するときには、離反する上側一対の第一磁石10の間に他方の組の第二磁石13が進入するようになっている。従って、各第二磁石13には第一磁石10から出力部材12の回転方向と反対方向の反力が与えられ難く、出力部材12を効率良く回転させることができる。
【0030】
また、各従動リンク115の揺動の周期は、各対を成す第一磁石10が接近する度に、当該両第一磁石10から三個一組の第二磁石13に対して出力部材12の回転方向の反発力が一度与えられるように設定することが好ましい。このようにすることで、出力部材12が一回転する度に各対を成す第一磁石10から出力部材12に対して回転力を二回付与することができ、より効率良く出力部材12を回転できる。
【0031】
以上説明した本実施形態の動力伝達装置1は、対を成す第一磁石10と、モーター3の駆動力を用いて両第一磁石10を接近・離反するように動作させる伝達機構11と、両第一磁石10の間に設けられた回転自在な出力部材12と、出力部材12に設けられて接近する両第一磁石10から出力部材12の回転方向の反発力を受ける第二磁石13を備えている。このため、モーター3の駆動時には、伝達機構11によって両第一磁石10を接近・離反させ、この両第一磁石10から第二磁石13に反発力を付与して出力部材12を回転させることができる。すなわち、両第一磁石10と第二磁石13を磁気的に連結し、この磁気的な連結を介してモーター3の出力を出力部材12に効率良く伝達することができる。このため、ギヤの摩耗に伴う不具合や、ギヤ同士の噛み合いによる騒音の発生が生じ難くなる。
【0032】
また、本実施形態の伝達機構11は、モーター3に連結されモーター3の駆動時において両第一磁石10が接近・離反するように動作するリンク機構である。このため、モーター3の動力をギヤを用いずに出力部材12に伝達することができ、ギヤの摩耗に伴う不具合や、ギヤ同士の噛み合いによる騒音が生じないようにすることができる。
【0033】
また、本実施形態の伝達機構11は、出力部材12の回転軸方向において出力部材12の両側に配置されてモーター3の駆動時において出力部材12の回転軸方向に対して交差する揺動軸153を中心にして揺動する従動リンク115を有している。また、各従動リンク115の揺動軸153を挟んだ両側に第一磁石10が設けられている。この構成により、一の従動リンク115により、当該従動リンク115の両側に設けられた第一磁石10を出力部材12に接近・離反させることができる。
【0034】
また、本実施形態の動力伝達装置1は、複数の出力部材12を備え、各出力部材12に設けられた複数の第二磁石13が出力部材12の軸方向から見て出力部材12の周方向において等分された位置に配置されている。このため、モーター3の駆動初期において、いずれかの第二磁石13に第一磁石10より出力部材12の回転方向の反発力を付与しやすくなり、出力部材12が回転駆動しやすくなる。なお、このようにすることは出力部材12を三段以上設けた場合に特に有効である。また、本実施形態では、複数の出力部材12を左右方向から見たとき、一部の第二磁石13が重複するようにしたが、第二磁石13を重複させることなく出力部材12の周方向において等分された位置に配置してもよく、さらには出力部材12を一つだけ設ける場合には、当該出力部材12に複数の第二磁石13を等分された位置に配置してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、第一磁石10を各従動リンク115の上下に一個ずつ設けたが、上下に複数個ずつ設けてもよく、また、各従動リンク115に第一磁石10を一個だけ設けて、対を成す従動リンク115に第一磁石10を一対のみ設けても構わない。また、本実施形態の動力伝達装置1は対を成す従動リンク115を三対備えたものであるが、一対又二対、あるいは四対以上備えたものであってもよい。また、モーター軸31の軸方向や、出力部材12の回転軸方向等も本実施形態のものに限定されるものではない。また、本実施形態では出力部材12の回転軸方向がモーター軸31の軸方向に対して垂直であるが、出力部材12の回転軸方向はモーター軸31の軸方向に対して垂直以外の交差する方向であってもよいし、モーター軸31の軸方向と平行であってもよい。また、伝達機構11は本実施形態のリンク機構に限られず、モーター3の駆動力を用いて対を成す第一磁石10を接近・離反させるものであれば、他のリンク機構であってもよい。また、伝達機構11はリンク機構以外の他の伝達機構であってもよく、この他の伝達機構11としては、ギヤを用いたものであってもよいが、ギヤを用いないものが好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 動力伝達装置
3 モーター
10 第一磁石
11 伝達機構
12 出力部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8