【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 中國醫藥大學 生物科技系修士班 修士学位論文 学位論文番号:BST99−12(0012)、2012年7月6日発行
【文献】
OBARA, K. et al,Controlled release of paclitaxel from photocrosslinked chitosan hydrogels and its subsequent effect on subcutaneous tumor growth in mice,J. Control. Release,2005年,Vol.110, No.1,p.79-89
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性剤は、アモキシシリン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン、メトロニダゾール、クルクミン、ベルベリン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;保護剤は、トレハロース、グルコース、ラクトース、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;架橋剤は、グルタルアルデヒド、ゲニピン、エポキシ樹脂、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、塩化カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項4に記載の薬剤キャリア。
活性剤は、アモキシシリン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;保護剤は、トレハロースであり;架橋剤は、ゲニピン、塩化カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項5に記載の薬剤キャリア。
アモキシシリンを封入するフコース結合キトサン/ヘパリンナノキャリア、クルクミンを封入するフコース結合キトサン/ポリ(グルタミン酸)ナノキャリア、又はフコース結合キトサン/ゼラチン/EGCGナノキャリアである、請求項6に記載の薬剤キャリア。
工程(d)が存在し、第三の成分は、活性剤、保護剤、及び架橋剤を含有し、第一の成分、第二の成分、活性剤、保護剤、及び架橋剤は、約1:0.1−1:0.1−1:1−10:0.02−0.2の重量比で用いられる、
ことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のいくつかの実施態様が下記に詳細に開示される。しかしながら、本発明の精神から逸脱することなく、本発明は種々の実施態様において具体化され得、本明細書に記載される実施態様に限定されるべきではない。加えて、本明細書において他に言及のない限り、本明細書において(特に後述の特許請求の範囲において)用いられる“一”、“該”又は同様の用語は、単数形式及び複数形式の両方を包含するように理解されるべきである。
【0013】
前述の通り、抗菌薬がヘリコバクターピロリ感染患者の治療において臨床的に用いられる場合、抗菌薬はしばしば胃酸により分解されてその治療効果を維持させることができず、又は抗菌薬は胃粘膜を通過するのが困難であるためにヘリコバクターピロリを良好に除去することができず、その結果、抗菌薬では良好な治療結果を達成することができない。本発明は、伝統的治療法の不利な点を克服し、ヘリコバクターピロリをターゲティングし得る薬剤キャリアを提供する。それは、胃粘膜層のバリアを通過し得、胃酸から抗ヘリコバクターピロリ薬を保護し、その結果薬剤の有用性を増加させ、良好な生物適合性を有する。
【0014】
したがって、本発明は、アミノ基(−NH
2)を有する生体適合性ポリマーである第一の成分と;グルコース、フコース、ガラクトサミン、マンノース、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるサッカライドと;生物適合性マテリアルである第二の成分と;を含有する薬剤キャリアを提供する。サッカライドは、第一の成分のアミノ基(−NH
2)により第一の成分に結合し、第一の成分は、イオン結合により第二の成分に結合する。
【0015】
本発明の薬剤キャリアにおいて、第一の成分は、アミノ基(−NH
2)を有するいかなる適切な生体適合性ポリマーであってもよい。例えば、限定されることなく、第一の成分は、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、エチレン グリコール−キトサン、ポリ(エチレン グリコール)−キトサン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。好ましくは、第一の成分は、キトサン、ゼラチン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0016】
本発明に適するサッカライドは、ヘリコバクターピロリの表面に結合し得るいかなるサッカライドであってもよい。例えば、限定されることなく、本発明の薬剤キャリアは、グルコース、フコース、ガラクトサミン、マンノース、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるサッカライドを含み得る。好ましくは、本発明の薬剤キャリアは、フコースを含む。
【0017】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の薬剤キャリアにおいて、サッカライドは第一の成分のヒドロキシル基(−OH)及びアミノ基(−NH
2)により第一の成分に結合し得ると考えられる。一般に、本発明の薬剤キャリアにおけるサッカライドは、サッカライドと結合する第一の成分の全アミノ基(−NH
2)が約5%から約30%となり得る量であり、好ましくは約10%から約15%である。加えて、本発明の薬剤キャリアが第一の成分として複数のマテリアルを含む場合(例えば、第一の成分としてゼラチン及びキトサンの2つのマテリアルを用いる場合)、実際の要求及び製造の利便性に依存して、採用されるサッカライドは、ヘリコバクターピロリのターゲティングという目的を達成し得る限り、各々のマテリアルに結合してもよく、又は一つのマテリアルのみに結合してもよい。
【0018】
本発明の薬剤キャリアはまた、第二の成分を含有し得、それは、イオン結合により第一の成分に結合し得る、いかなる生体適合性マテリアルであってもよい。例えば、限定されることなく、第二の成分は、抗ヘリコバクターピロリといった薬剤活性を有する物質であってもよい。例えば、第二の成分は、主成分として、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECG)、及びエピガロカテキンガレート(EGCG)(EGCGは最も高い割合のカテキンを作る)を含有するカテキンといった、茶ポリフェノールであってもよい。第二の成分はまた、薬剤活性を持たない生物適合性マテリアルであってもよく、例えば、ヘパリン、ポリ(グルタミン酸)、トリポリリン酸、ポリ(アクリル酸)、リン脂質、アルギン酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。本発明のいくつかの態様において、薬剤キャリアの第二の成分は、ヘパリン、ポリ(グルタミン酸)、アルギン酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0019】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の薬剤キャリアにおいて、キャリアの調製プロセスの間、第一の成分は調製溶液において正電荷を有する物質として解離され、第二の成分は負電荷を有する物質として解離されていると考えられる。第一の成分及び第二の成分は、陽イオンと陰イオンとの間のイオン性相互作用により互いに引きつけられており、イオン結合により互いに結合し、本発明の薬剤キャリアを提供する。概して、本発明の薬剤キャリアにおいて、第一の成分及び第二の成分は、約1:0.1−1、好ましくは約1:0.2−0.4の重量比で用いられる。
【0020】
本発明の薬剤キャリアは、薬剤キャリアの適用性を高めるために、任意に第三の成分を含有していてもよい。例えば、限定されることなく、第三の成分は、活性剤、保護剤、架橋剤、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。活性剤は、例えば、限定されることなく、アモキシシリン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン、メトロニダゾール、クルクミン、ベルベリン、及びこれらの組み合わせを含む、抗ヘリコバクターピロリ活性を有する成分であってもよい。好ましくは、活性剤は、アモキシシリン又はクルクミンのうち少なくともいずれか一方である。保護剤は、トレハロース、グルコース、ラクトース、グリセリン、及びこれらの組み合わせといった、後の凍結乾燥プロセスにおいて薬剤キャリアの構造を保護し得る凍結防止剤であってもよい。架橋剤については、それは、薬剤キャリアの構造的安定性を向上させるように、本発明の薬剤キャリアにおいて第一の成分及び/又は第二の成分と架橋し得、酸性コンディション(例えば、胃液におけるpH1.2のコンディション)で薬剤キャリアを安定的に維持し、一方で中性コンディション(例えば、胃粘膜層における、又はヘリコバクターピロリが感染した胃上皮細胞のコンディションにおけるpH7.4のコンディション)で崩壊し始めて活性剤及び活性物質を放出する。例えば、限定されることなく、本発明の薬剤キャリアにおいて有用な架橋剤は、グルタルアルデヒド、ゲニピン、エポキシ樹脂、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、塩化カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。好ましくは、本発明の薬剤キャリアは、架橋剤としてゲニピン又は塩化カルシウムのうち少なくともいずれか一方を含む。
【0021】
第三の成分が存在する場合で、薬剤キャリアの所望の特性が影響を受けない前提のもとでは、第三の成分の量は、それが所望の薬剤の効果、保護効果、及び/又は架橋効果を提供し得る限りにおいて、特に制限されない。概して、第三の成分、活性剤が存在する場合、本発明の薬剤キャリアにおける第一の成分、第二の成分、及び活性剤は、約1:0.1−1:0.1−1の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:0.2−0.4の重量比で用いられる。第三の成分、保護剤が存在する場合、第一の成分、第二の成分、及び保護剤は、約1:0.1−1:1−10の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:3−5の重量比で用いられる。第三の成分、架橋剤が存在する場合、第一の成分、第二の成分、及び架橋剤は、約1:0.1−1:0.02−0.2の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:0.05−0.1の重量比で用いられる。2つ又は3つの第三の成分が存在する場合、各成分の量は、前述の通りである。例えば、活性剤、保護剤、及び架橋剤が存在する場合、第一の成分、第二の成分、活性剤、保護剤、及び架橋剤は、約1:0.1−1:0.1−1:1−10:0.02−0.2の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:0.2−0.4:3−5:0.05−0.1の重量比で用いられる。
【0022】
本発明の薬剤キャリアは、ナノの形態、微粒子の形態、ヒドロゲルの形態等であってもよい。例えば、適切な調製プロセス下において、ゼラチンが第一の成分として用いられる場合、アルギン酸ナトリウムは通常、第二の成分として用いられる。塩化カルシウムは、ヒドロゲルの形態における薬剤キャリアを提供するように、架橋剤として用いられ得る。他の例を挙げると、ゼラチンが第一の成分として用いられ、カテキンが第二の成分として用いられる場合、微粒子の形態における薬剤キャリアが提供され得る。さらに、ゼラチン又はキトサンが第一の成分として用いられ、ヘパリン又はポリ(グルタミン酸)が第二の成分として用いられる場合、ナノの形態における薬剤キャリアが通常提供され得る。生物体への経口投与のための薬剤キャリアの粒子サイズは、バイオアベイラビリティを最大化させるように、薬剤キャリアを、胃粘膜層のバリアを経て感染部位に良好に到達させるために、好ましくはナノ−スケールであると考えられる。したがって、胃粘膜層のバリアを良好に通過するように、本発明の薬剤キャリアの粒径は、好ましくは約100nmから約4μm、より好ましくは約150nmから約1μm、最も好ましくは約200nmから約500nmである。
【0023】
本発明のいくつかの態様によれば、薬剤キャリアは、アモキシシリンを封入したフコース結合キトサン/ヘパリンナノキャリア、クルクミンを封入したフコース結合キトサン/ポリ(グルタミン酸)ナノキャリア、又はフコース結合キトサン/ゼラチン/EGCGナノキャリアである。薬剤キャリアは好ましくは、ゲニピンにより架橋され、アモキシシリンを封入し、トレハロースを含有するフコース結合キトサン/ヘパリンナノキャリアである。
【0024】
本発明の薬剤キャリアは、ヘリコバクターピロリの表面に結合することのできるサッカライドを含むため、それは特異的にヘリコバクターピロリをターゲットとすることができる。本発明の薬剤キャリアが抗ヘリコバクターピロリ活性剤(例えば、アモキシシリン、クラリスロマイシン、及びクルクミン)を封入し、又は第二の成分として抗ヘリコバクターピロリ活性物質(例えばEGCG)を含む場合、それは、活性剤又は活性物質がヘリコバクターピロリ感染部位に到達するのを促進する。したがって、本発明の薬剤キャリアは、薬剤を製造するために、具体的には抗ヘリコバクターピロリ薬剤を製造するために用いられ得、該薬剤は、消化性潰瘍、胃炎、又は胃癌の治療又は軽減の効果を達成し得る。
【0025】
前述の通り、本発明の薬剤キャリアは、ヘリコバクターピロリをターゲットとし得、抗ヘリコバクターピロリ活性剤を封入し得、又は第二の成分として抗ヘリコバクターピロリ活性物質を含有するため、本発明はまた、有効量の前述の薬剤キャリアを必要に応じて対象に投与することを含む、消化性潰瘍、胃炎又は胃癌を治療又は軽減させるといった、ヘリコバクターピロリに関連する疾患又はコンディションを治療又は軽減させる方法を提供する。各々の成分のタイプ及び量は、前述の通りである。
【0026】
本発明はまた、下記の工程:
(a)グルコース、フコース、ガラクトサミン、マンノース、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるサッカライドが結合した、アミノ基(−NH
2)を有する生体適合性ポリマーである第一の成分を提供することと;
(b)サッカライドが結合した第一の成分を水に溶解して、第一の溶液を提供することと;
(c)生物適合性マテリアルである第二の成分を水に溶解して、第二の溶液を提供することと;
(d)任意に、活性剤、保護剤、架橋剤、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される第三の成分を含有する第三の溶液を提供することと;
(e)第一の溶液、第二の溶液、及び任意の第三の溶液を混合させて、薬剤キャリアを形成させること(第一の成分、第二の成分、活性剤、保護剤、及び架橋剤は前述の通り規定される);
を含む、前述の薬剤キャリアの調製方法を提供する。
【0027】
本発明による方法の工程(a)において、サッカライドが結合した第一の成分は、例えば、サッカライド及び第一の成分を別々に同じ又は異なる溶媒に溶解させ、その後、2つの溶液を混合させ、サッカライドを第一の成分と反応させ、サッカライドを第一の成分に結合させることにより提供され得る。この点において、特定の理論に縛られることを望むものではないが、サッカライドの−OHが第一の成分の−NH
2と反応して結合(grafting)が達成され得ると考えられる。サッカライド及び第一の成分を溶解させるのに有用な溶媒は、水、酢酸、又はこれらの混合物といった成分を含む。メタノール、エタノール、又はこれらの混合物といった他の溶媒がさらに、結合(grafting)プロセスを促進させるために、それに加えられ得る(通常、第一の成分の溶液に加えられる)。
【0028】
本発明の一実施態様において、工程(a)は、(サッカライドとしての)フコースの水溶液及び(第一の成分としての)キトサンの溶液(酢酸/メタノール=1/1)を混合させ、約5−8時間、暗所、室温にて、還元剤の存在下で混合物を攪拌することを含む。その後、溶媒及び未反応のマテリアルを凍結乾燥により除去し、フコース結合キトサンを得ることができる。本発明において有用である還元剤は、限定されることなく、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
3)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等を含む。結合(grafting)プロセスを行う際、所望の結合(grafting)レベル及び製造の利便性に依存して、コンディション(例えば、サッカライド溶液及びキトサン溶液の濃度、攪拌速度、並びに反応時間)が調節され得る。
【0029】
その後、工程(b)において、サッカライドが結合した第一の成分を水に溶解させて、第一の成分を提供する。さらに、工程(c)において、第二の成分を水に溶解させて、第二の溶液を提供する。そして、任意の工程(d)において、活性剤、保護剤、架橋剤、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される第三の成分を含む第三の溶液が提供される。第三の溶液で用いられる溶媒は、本発明の薬剤キャリアに悪影響を及ぼさず、第三の成分を溶解することができる限り、特に限定されることはない。例えば、第三の溶液で用いられる溶媒は、水、酢酸、メタノール、エタノール、ジメチルスルフォキシド、ポリビニルアルコールといった極性溶媒から選択され得る。
【0030】
第一の溶液、第二の溶液、及び任意の第三の溶液を提供した後、第一の溶液、第二の溶液、及び任意の第三の溶液を工程(e)において混合させ、本発明の薬剤キャリアを形成する。第三の溶液が存在する場合、第一の溶液、第二の溶液、及び第三の溶液は、いかなる適切な順序においても混合され得る。例えば、第一の溶液及び第二の溶液を最初に混合し、その後、第三の溶液を混合する。あるいは、第一の溶液及び第三の溶液を最初に混合し、その後、第二の溶液を混合する。第一の溶液、第二の溶液、及び第三の溶液を同時に混合する。
【0031】
本発明の方法において、得られる薬剤キャリアの特性は、用いられる第一の成分及び第二の成分(及び任意の第三の成分)及び混合コンディション(例えば、混合の順番、混合時間、及び攪拌速度)を選択することにより、制御及び調節され得る。概して、第一の成分及び第二の成分は、約1:0.1−1の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4の重量比で用いられる。第三の成分、活性剤が存在する場合、本発明の方法における第一の成分、第二の成分、及び活性剤は、約1:0.1−1:0.1−1の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:0.2−0.4の重量比で用いられる。第三の成分、保護剤が存在する場合、第一の成分、第二の成分、及び保護剤は、約1:0.1−1:1−10の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:3−5の重量比で用いられる。第三の成分、架橋剤が存在する場合、第一の成分、第二の成分、及び架橋剤は、約1:0.1−1:0.02−0.2の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:0.05−0.1の重量比で用いられる。2つ又は3つの第三の成分が存在する場合、各成分の量は、前述の通りである。例えば、活性剤、保護剤、及び架橋剤が同時に存在する場合、第一の成分、第二の成分、活性剤、保護剤、及び架橋剤は、約1:0.1−1:0.1−1:1−10:0.02−0.2の重量比、好ましくは約1:0.2−0.4:0.2−0.4:3−5:0.05−0.1の重量比で用いられる。
【0032】
本発明の方法の一実施態様において、ナノの形態におけるフコース結合キトサン/ヘパリン薬剤キャリアは、下記の工程により調製され得る:
(1)6時間、室温にて、NaCNBH
3の存在下でフコースとキトサンとの間の結合(grafting)反応を行い、その後、サンプルを凍結乾燥させ、フコース結合キトサンを収集する;
(2)得られたフコース結合キトサンを水に溶解させる;
(3)ヘパリンを水に溶解させる;及び
(4)キトサン溶液及びヘパリン溶液を均一に混合させ、得られたナノ薬剤キャリアを収集する。
【0033】
第三の成分を含有するフコース結合キトサン/ヘパリン薬剤キャリアの調製のために、(活性剤としての)アモキシシリン、(凍結防止剤としての)トレハロース、及び/又は(架橋剤としての)ゲニピンといった第三の成分を水に溶解させ、溶液を前述の調製プロセスより得られたナノキャリアと混合させ、120分間、室温にて攪拌する。その後、サンプルを凍結乾燥させ、形成されたナノ薬剤キャリアを収集する。このプロセスにおいて、アモキシシリン、トレハロース、及びゲニピンを第三の成分に同時に加える場合、ゲニピンにより架橋され、アモキシシリンを封入し、トレハロースを含有する、フコース結合キトサン/ヘパリンナノキャリアが得られ得る。
【0034】
本発明による方法の他の態様において、ヒドロゲルの形態におけるフコース結合ゼラチン/アルギン酸ナトリウム薬剤キャリアが、下記の工程:
(1)6時間、室温にて、NaCNBH
3の存在下、フコースとゼラチンとの間の結合(grafting)反応を行い、その後、サンプルを凍結乾燥させ、フコース結合ゼラチンを収集する;
(2)得られたフコース結合ゼラチンを水に溶解させる;
(3)アルギン酸ナトリウムを水に溶解させる;
(4)ゼラチン溶液及びアルギン酸ナトリウム溶液を均一に混合させる;及び
(5)(4)の混合溶液をシリンジに充填させ、塩化カルシウム溶液にゆっくりと滴下し、ヒドロゲルの形態における薬剤キャリアを形成させる;
により調製され得る。ヒドロゲルの形態における形成された薬剤キャリアは、安定的な構造を有し、酸性コンディション(例えば、胃液におけるpH1.2のコンディション)で安定的である一方、中性コンディション(例えば、胃粘膜層における、又はヘリコバクターピロリが感染した胃上皮細胞のコンディションにおけるpH7.4のコンディション)で崩壊し始め活性剤及び/又は活性物質を放出し得る。したがって、ヒドロゲルの形態における薬剤キャリアは、活性剤を封入するように用いられ得、又は本発明のナノ薬剤キャリアは、所望の薬剤を調製するように用いられ得る。
【0035】
本発明の方法において、架橋剤を用いることに加えて、得られる薬剤キャリアの安定性は、工程(e)において油−水エマルジョンを形成させることで向上し得、封入率は活性剤が封入されるコンディション下で増加し得る。例えば、第一の溶液及び第三の溶液を工程(e)で最初に混合させ、その後、第二の溶液と混合させ得、界面活性剤を含有する油性溶液を、第二の溶液と混合させる前にそれに加える。具体的には、工程(e)は下記の工程を含む:(e1)第一の溶液及び第三の溶液を混合させて、第一の混合溶液を形成させる;(e2)第一の混合溶液及び界面活性剤を含有する油性溶液を混合させて、第二の混合溶液を形成させる;及び(e3)第二の混合溶液及び第二の溶液を混合させて、薬剤キャリアを形成させる。界面活性剤は、例えば、限定されることなく、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、Span20、Span40、Span60、Span80等であってもよい。油性溶液における油は、例えば、限定されることなく、パラフィン油、大豆油であってもよい。概して、界面活性剤及び油は、約0.005−0.02:1の容積比で用いられる。
【0036】
本発明による方法の一実施態様において、油/水エマルション法の形成による薬剤キャリアの調製は、最初にフコース結合キトサン溶液及びアモキシシリン溶液を均一に攪拌して混合させ;Tween20を含むパラフィン油溶液を加え、ホモジナイザーを用いて(例えば15000−25000rpm)低温で混合物を攪拌して、均一な混合溶液を形成させ;その後ヘパリン溶液を前述の均一な混合溶液と均一に混合させ;最後に遠心分離によりアモキシシリンを封入したサッカライド結合薬剤キャリアを得ることを含む。この方法により得られる薬剤キャリアは通常、ナノの形態である。
【0037】
本発明はさらに、下記の通り特定の実施例により詳細に記述される。しかしながら、下記の実施例は本発明を記述するために単に提供されたものにすぎず、本発明の範囲はそれにより限定されない。加えて、本明細書において他に言及のない限り、後に用いられる“%”の単位は、“重量/容積%”を意味する。
【実施例】
【0038】
(実施例1)活性剤を封入したナノ薬剤キャリアの調製
(1)フコース結合キトサン(以下、“フコース−キトサン”という)の調製
キトサンを50mLの溶媒(1%酢酸:メタノール=1:1)に溶解して1%キトサン溶液を提供し、0.5gのグルコースを10mLの脱イオン水に溶解した。フコース溶液及びキトサン溶液を混合し、それに0.1gのNaCNBH
3を加え、混合液を6時間、暗所、室温にて、マグネチックスターラーで攪拌した。反応溶液を3日間透析し、未反応のNaCNBH
3を除去した。その後、サンプルを凍結乾燥し、フコース−キトサンを得た。
【0039】
得られたフコース−キトサンをフーリエ変換赤外分光法により分析した。結果を
図1に示す。キトサンは、1572cm
−1でNH
3+官能基のシグナルを示し;フコースは、2900cm
−1及び3450cm
−1でCH及びOH官能基のシグナルを示し;フコース−キトサンは、NH
3+官能基のシグナル(1568cm
−1)及びCH及びOH官能基のシグナル(2923cm
−1−3457cm
−1)の両方を示す。フコースは良好にキトサンに結合したことが示される。
【0040】
(2)フコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアの調製
(1)より得られたフコース−キトサンを水に溶解して0.12%のフコース−キトサン溶液(10mL)を調製し、それに0.1%ヘパリン水溶液(2mL)を加え、10分間室温にて攪拌した。その後、サンプルを遠心分離し、沈殿したフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを収集した。得られたフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを、下記の実験のために、0.5mLの脱イオン水に溶解させた。
【0041】
得られたフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアをフーリエ変換赤外分光法により分析した。結果を
図2に示す。フコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアは、3462cm
−1−2906cm
−1でフコースのCH官能基のシグナル及びOH官能基のシグナルを示し;1570cm
−1でキトサンのNH
3+官能基のシグナルを示し;1240cm
−1でヘパリンのSO
4−官能基のシグナルを示す。
【0042】
(3)架橋剤で架橋されたフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアのの調製
12.0%のトレハロース(凍結防止剤)溶液(0.5mL)及び0.075%のゲニピン(架橋剤)(0.5mL)を均一に混合し、それに(2)で得られた0.5mLのフコース−キトサン/ヘパリンナノキャリア溶液を加えた。サンプルを2時間、室温で攪拌し、ゲニピンにより架橋されたフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを形成させた。架橋されたナノ薬剤キャリアを、一晩、−20℃で保存し、凍結乾燥により収集した。
【0043】
得られたナノ薬剤キャリアを、透過電子顕微鏡法により観察した。粒径は、約250nmである。
【0044】
(4)活性剤を封入した架橋剤で架橋されたフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアの調製
1.6%アモキシシリン溶液(0.125mL)及び24.0%トレハロース(凍結防止剤)溶液(0.125mL)を均一に混合し、0.25mLの0.075%ゲニピン(架橋剤)を加え、アモキシシリン/トレハロース/ゲニピンの混合物を形成させた。それに(1)で得られたフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリア溶液(0.5mL)を加え、サンプルを2時間、室温で攪拌し、ゲニピンにより架橋され、アモキシシリンを封入したフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを形成させた。
【0045】
ゲニピンにより架橋され、アモキシシリンを封入したフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを、フーリエ変換赤外分光法により分析した。結果を
図2に示す。架橋剤、ゲニピンは、1628cm
−1でC=C官能基のシグナルを示し;得られた、ゲニピンにより架橋され、アモキシシリンを封入したフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアもまた、C=C官能基のシグナルを示す(1636cm
−1)。この結果により、ゲニピンは良好にフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを架橋したことが示される。
【0046】
得られたナノ薬剤キャリアを、透過電子顕微鏡法により観察した。結果を
図3(A)に示す。ナノ薬剤キャリアの粒径は、約200nm−約300nmであることが示された。
【0047】
(5)得られたナノ薬剤キャリアの薬剤封入率
得られたナノ薬剤キャリアの抗菌薬を封入する能力(すなわち、封入率)を、高速液体クロマトグラフィーにより求めた。最初に、(4)で得られたナノ薬剤キャリアを15000rpmで遠心分離し、上清を収集し、段階希釈した。希釈サンプル(50μL)を、30/70%(容積/容積)のアセトニトリル及び0.1Mリン酸二水素ナトリウムを含む移動相で、分析システムに注入し、ナノ薬剤キャリアに封入されていないアモキシシリンの濃度を分析した。ナノ薬剤キャリアの抗菌薬封入率は、下記の式を用いて算出される。
封入率=(アモキシシリンの全量(重量/容積)−非封入アモキシシリンの量(重量/容積))/アモキシシリンの全量(重量/容積)×100%
【0048】
その結果により、得られたナノ薬剤キャリアの薬剤封入率は、44.8±2.3%に到達し得ることが示される。
【0049】
(実施例2)In vitro薬剤放出試験
実施例1(4)で得られたナノ薬剤キャリアを、pH1.2のコンディション(胃液コンディションのシミュレーション)又はpH4.5、pH6.0、若しくはpH7.4のコンディション(すべては、胃粘膜層における、又はヘリコバクターピロリが感染した胃上皮細胞のコンディションのシミュレーション)に置いた。これらのナノ薬剤キャリアの外観及び粒径を透過電子顕微鏡法により観察した。結果を
図3に示す。
【0050】
図3(B)−3(D)に示されるように、ナノ薬剤キャリアがpH1.2、pH4.5、及びpH6.0の酸性コンディションに置かれた場合、ナノ薬剤キャリアの構造は安定的であり、崩壊していなかった。これは、ナノ薬剤キャリアにより、封入された活性剤が酸性コンディションにおいて崩壊しないように保護され得ることを示す。ナノ薬剤キャリアがpH7.4の酸性コンディションに置かれた場合(
図3(E))、ナノ薬剤キャリアは崩壊し始め、活性剤(すなわちアモキシシリン)を放出した。これらの結果は、本発明のナノ薬剤キャリアが胃内で酸性コンディションに入ったときに胃液による破壊を回避し得、一方、ナノ薬剤キャリアが胃壁に付着したときに、それは中性のコンディション(例えば、胃粘膜層におけるコンディション、又はヘリコバクターピロリが感染した胃上皮細胞のコンディション)において活性剤を放出し得、その結果、薬剤放出を制御する目的を達成することを示す。
【0051】
(実施例3)薬理的効果の試験
(1)コロニー数の実験
小型の黒色マウスに、2週間、6回にわたって継続的に1.0×10
9CFU/mLのヘリコバクターピロリを含有するブロスを与え、ヘリコバクターピロリ感染動物モデルを確立した。マウスにヘリコバクターピロリを与える前に一晩絶食させ、胃内の粘膜を減少させ、感染率を高めた。その後、ヘリコバクターピロリ感染マウス(各群6匹のマウス)に、(a)実施例1(2)で得られたナノ薬剤キャリア(コントロール群);(b)30mg/kgのアモキシシリン;及び(c)実施例1(4)で得られたナノ薬剤キャリア(アモキシシリン濃度、30mg/kg)を10日間、1日1回投与した。その後、マウスを屠殺し、胃内の組織を取り出し、コロニー数実験を行った。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるように、アモキシシリンにより治療されていないコントロール群のマウスに比して、30mg/kgのアモキシシリンを投与したマウスの胃内組織のヘリコバクターピロリのコロニー数は、502.3±83.7から316.9±30.5に減少し、一方、アモキシシリンを封入したナノキャリアを投与したマウスの胃内組織のヘリコバクターピロリのコロニー数は、さらに63.2±15.5に減少した。これらの結果より、本発明のナノ薬剤キャリアは、封入された活性剤の治療効果を効果的に向上させ得ることが示される。
【0054】
(2)カンピロバクター様菌アッセイ
カンピロバクター様菌アッセイ(CLO)を行い、ヘリコバクターピロリ感染マウスの治療におけるナノ薬剤キャリアの効果を評価した。ヘリコバクターピロリ感染マウスの胃組織の内側をCLOゲルに接触させ、圧着させて、組織を12時間、37℃でインキュベートし、CLOゲルの色の変化を観察した。結果を
図4に示す。ヘリコバクターピロリを含まない(脱イオン水を接触させた)CLOゲルは、黄の色である。ヘリコバクターピロリを少し含むCLOゲルは、黄−オレンジの色である。ヘリコバクターピロリをたくさん含むCLOゲルは、赤の色である。色が暗くなると、より多くの量のヘリコバクターピロリが存在することを表す。
【0055】
図4に示されるように、活性剤を封入していないナノ薬剤キャリアを投与したマウスの胃組織(コントロール群;暗赤色を示す)及びアモキシシリンを投与したマウスの胃組織(赤色を示す)に比して、アモキシシリンを封入したナノ薬剤キャリアを投与したマウスの胃組織(黄色を示す)におけるヘリコバクターピロリ量は、顕著に減少した。これらの結果により、本発明のナノ薬剤キャリアは、封入された活性剤の治療効果を効果的に向上させ得ることが示される。
【0056】
(実施例4)ヘリコバクターピロリへのターゲティングにおけるナノ薬剤キャリアの効果の試験
(1)工程A:蛍光標識された抗菌薬を封入した蛍光標識ナノ薬剤キャリアの調製
フルオレセインアミン(FA;0.0583g)を1.0mLのアセトニトリルに溶解させ、FA溶液を作った。アモキシシリン(0.1g)を30mLの脱イオン水に溶解させ、前述のFA溶液と混合した。それに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(0.0408g)を加え、FAをアモキシシリンのカルボキシル基に結合させるように、12時間、暗所、室温にて、マグネチックスターラーで攪拌し、蛍光標識されたFA−アモキシシリンを作った。そして、最後に、サンプルを凍結乾燥し、蛍光標識されたFA−アモキシシリンを収集した。
【0057】
その後、ゲニピンにより架橋され、FA−アモキシシリンを封入したフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを、実施例1(4)に記載された方法に従い調製したが、アモキシシリンをFA−アモキシシリンに置き換えた。加えて、架橋されていない、FA−アモキシシリンを封入したフコース−キトサン/ヘパリンナノ薬剤キャリアを実施例1(4)に記載の方法に従い調整したが、ゲニピンを加えず、アモキシシリンをFA−アモキシシリンに置き換えた。加えて、フコース−キトサンをCy3蛍光色素により標識し、蛍光標識されたCy3−フコース−キトサンを作った。
【0058】
(2)工程B:蛍光標識されたヘリコバクターピロリの調製
ヘリコバクターピロリが感染した細胞を観察するために、DilC18(5)−DS分子プローブ(励起波長、649nm)をヘリコバクターピロリの細胞膜に導入して、蛍光標識されたDil−ヘリコバクターピロリを作った。最初に、1×10
6のヘリコバクターピロリを50μLのDilC18(5)−DS分子プローブ及び950μLのPBS緩衝溶液と混合させた。5分間、30℃の水浴中で、その後15分間、4℃の水浴中で、反応させた。サンプルを遠心分離し、沈殿物を収集して、蛍光標識されたDil−ヘリコバクターピロリを得た。
【0059】
(3)工程C:蛍光標識されたDil−ヘリコバクターピロリに感染したヒト胃腺癌細胞の調製
ヒト胃腺癌(AGS)細胞株を、10%FBSを含有する培地でインキュベートし、トランスウェル細胞培養チャンバー(12well/プレート;8μm;生育領域、4.7cm
2;MILLPORE)に植菌した。細胞を24−30日間、インキュベートし、その後、取り出した。次に、蛍光標識されたDil−ヘリコバクターピロリを2時間、AGS細胞と共培養し、Dil−ヘリコバクターピロリに感染したAGS細胞株を得た。
【0060】
(4)工程D:ターゲティングアッセイ
上述の工程Aで調製したFA−アモキシシリン溶液(100μL)と、架橋されていないFA−アモキシシリンを封入したターゲティングの蛍光標識ナノ薬剤キャリアと、ゲニピンにより架橋されFA−アモキシシリンを封入したターゲティングの蛍光標識ナノ薬剤キャリアと、を別々に加え、Dil−ヘリコバクターピロリに感染したAGS細胞株と共培養した。120分後、蛍光標識された抗菌薬を封入したターゲティングの蛍光標識ナノ薬剤キャリアを、蛍光イメージをスキャンするために共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、ヘリコバクターピロリが感染した細胞におけるターゲティング作用を観察した。FA−アモキシシリンをコントロール群として用いた。実験結果を
図5A−5Cに示す。
【0061】
図5A−5Cに示されるように、FA−アモキシシリン溶液をヘリコバクターピロリが感染したAGS細胞と共培養した場合、FA−アモキシシリンは明らかに、AGS細胞に入って行かなかった(
図5A)。架橋されておらずFA−アモキシシリンを封入したターゲティングの蛍光標識ナノ薬剤キャリアと、ゲニピンにより架橋されFA−アモキシシリンを封入したターゲティングの蛍光標識ナノ薬剤キャリアと、を、ヘリコバクターピロリが感染したAGS細胞と共培養した場合、明らかに、細胞におけるFA−アモキシシリン及びCy3−フコース−キトサンの蛍光発色が観察された(
図5B及び5Cにおける白色スポット)。これらの実験結果により、本発明の薬剤キャリアがたしかに、ヘリコバクターピロリの表面に結合できることが示される。すなわち、本発明の薬剤キャリアは、ヘリコバクターピロリをターゲットとすることができ、その結果、封入された薬剤の抗ヘリコバクターピロリ活性を向上させることができる。
【0062】
上述の実施例は、本発明の原理及び有効性を示すために単に例示されたにすぎず、本発明を限定することを意図していない。本技術分野における当業者であれば、本発明の技術的範囲において種々の変更及び修正を行い得ることが明白である。それゆえ、これらの変更及び修正は添付された特許請求の範囲及び同等物の範囲内に含まれることが明らかである。
【0063】
(関連する出願)
本出願は、台湾特許出願101136910(出願日2012年10月5日)に基づく優先権を主張しており、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。