特許第5685251号(P5685251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5685251-極低温推進剤を用いるロケットエンジン 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685251
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】極低温推進剤を用いるロケットエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/62 20060101AFI20150226BHJP
   F02K 9/97 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   F02K9/62
   F02K9/97
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-520078(P2012-520078)
(86)(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公表番号】特表2012-533701(P2012-533701A)
(43)【公表日】2012年12月27日
(86)【国際出願番号】FR2010051504
(87)【国際公開番号】WO2011007108
(87)【国際公開日】20110120
【審査請求日】2013年7月12日
(31)【優先権主張番号】0954984
(32)【優先日】2009年7月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ドベック オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ル ドルツ ダニエル
【審査官】 寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−248994(JP,A)
【文献】 特開2003−278600(JP,A)
【文献】 特開2001−140698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/42−68,97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1液体推進剤用の第1タンク(70)と、第2液体推進剤用の第2タンク(80)と、不活性流体用の第3タンク(60)と、燃焼室(41)、第1液体推進剤及び第2液体推進剤を燃焼室(41)に噴射するための装置(44、45)、ノズルスロート(42)、並びに末広部分(43)を含む軸対称ノズル(40)と、を有する極低温推進剤ロケットエンジンにおいて、ロケットエンジンの運転中に放出される熱放射のエネルギーを回収するために、及び上記不活性流体を加熱するために、上記不活性流体を移送するための少なくとも1つのダクトを含み且つノズル(40)の外側に、そのすぐ近くで接触することなく配置されるヒータ装置(20)を更に含み、ヒータ装置(20)は、ノズル(40)の末広部分(43)の周囲に、30°から360°の範囲にある角度σにわたって延在する切頭円錐扇形の板(21)を含むことを特徴とする極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項2】
ヒータ装置(20)は、加熱するための不活性流体が内部を流れる金属構造体を含み、熱放射の観点から、吸収性の高い薄い層(23)が、少なくとも輻射力源を構成するノズルに面する壁に付着されることを特徴とする請求項1に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項3】
ヒータ装置(20)の上記板(21)は、5mm乃至15mmの範囲にある厚さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項4】
ヒータ装置(20)の板(21)は、矩形又は円形断面の連続的なチャネル(22)のネットワークを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項5】
不活性流体はヘリウムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項6】
少なくとも1つの液体酸素タンク(70)を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項7】
少なくとも1つの液体酸素タンク(70)と、この液体酸素タンク(70)に加圧用ヘリウムを供給するために、ヒータ装置(20)と液体酸素タンク(70)との間を連結するパイプを含むことを特徴とする請求項5に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項8】
ノズル(40)は、伸長可能な末広部分(43)を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【請求項9】
耐熱構造炭素−炭素、炭素−セラミック、又はセラミック−セラミック複合材料で作られた末広部分を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の極低温推進剤ロケットエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、第1液体推進剤用の第1タンクと、第2液体推進剤用の第2タンクと、不活性流体用の第3タンクと、燃焼室、第1及び第2液体推進剤を燃焼室に噴射するための装置、ノズルスロート、並びに末広部分を含む軸対称ノズルと、を有する極低温推進剤ロケットエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,658,863号明細書は、詳細には、推進剤をロケットエンジンに連続的に送出するために、及びタンクの構造的集結性を維持するために、1又は2以上の推進剤タンクを加圧することを目的として、ロケットエンジン打上げロケットに積み込まれている、ヘリウム等の不活性ガスを加圧下で貯蔵し供給するためのシステムを記載する。そのような公知のシステムは、打上げロケットの推進システムからの高温ガスを熱源として使用することができる熱交換器を実施する。変形例として、電気加熱を使用する提案もなされている。そのような解決法は、全てのタイプのロケットエンジン及び末広ノズルには適していない。特に、それらの解決法は、エキスパンダー型サイクルで動作し、又は複合材料で作られた末広ノズルを用いるロケットエンジンからエネルギーを回収するには不十分である。
【0003】
一般に、産業界では、固体部品から得られるエネルギー源を使用することにより流体を加熱する熱交換器がしばしば用いられる。このエネルギー源は、伝導(2つの部品間の接触)、あるいは対流(熱流体と壁との間の接触)のいずれかにより回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,658,863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、先行技術の上述した欠点を改善し、1又は2以上の推進剤タンクを加圧するための不活性流体を加熱するために、最適な且つ簡単な方法で、ロケットエンジンから得られる熱を回収することを可能にし、且つまた、ロケットエンジンが搭載された打上げロケットの搭載重量を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、これらの目的は、少なくとも第1液体推進剤用の第1タンクと、第2液体推進剤用の第2タンクと、不活性流体用の第3タンクと、燃焼室、第1液体推進剤及び第2液体推進剤を燃焼室に噴射するための装置、ノズルスロート、並びに末広部分を含む軸対称ノズルと、を有する極低温推進剤ロケットエンジンにおいて、ロケットエンジンの運転中に放出される熱放射のエネルギーを回収するために、及び上記不活性流体を加熱するために、上記不活性流体を移送するための少なくとも1つのダクトを含み且つノズルの外側に、そのすぐ近くで接触することなく配置されるヒータ装置を更に含み、ヒータ装置は、ノズルの末広部分の周囲に、30°から360°の範囲にある角度σにわたって延在する切頭円錐扇形の板からなることを特徴とする極低温推進剤ロケットエンジンにより達成される。
【0007】
複合材料で作られたロケットエンジンの末広ノズル部分によって放出される輻射力は、末広部分の単位平方メートルあたり250キロワット(kW/m2)より大きく、かくして、大量の輻射エネルギーを不活性流体(例えば20ケルビン(K)で使用可能なヘリウム)を加熱するために回収することができ、それにより、必ずしも、エネルギーをロケットエンジンから伝導又は対流によって回収することなく、打上げロケット段階を加圧し、搭載量に関して直接の増加(数十キログラム程度の)を得ることができる。
【0008】
本発明の一側面によれば、ヒータ装置は、加熱するための不活性流体が内部を流れる金属構造体を含み、熱放射の観点から吸収性の高い薄い層が、少なくとも輻射力源を構成するノズルに面する壁に付着される。
【0009】
ヒータ装置の板は、約5ミリメートル(mm)から15mmの範囲にある厚さを有するのがよい。
【0010】
ヒーター装置の板は、有利には、矩形又は円形断面の連続的なチャネルのネットワークを含むのがよい。
【0011】
不活性流体は、有利には、例えば液体酸素タンクを加圧するための加圧用ガスとして機能するヘリウムである。このような状況下において、連結パイプが、液体酸素タンクに加圧用ヘリウムを供給するために、ヒータ装置と液体酸素タンクとの間に配置される。
【0012】
ロケットエンジンのノズルは、幅広く様々な方法で作られるのがよく、例えば、有利には炭素−炭素複合材料によって作られる伸長可能な末広ノズルを含むのがよい。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して例として与えられる特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態におけるロケットエンジンノズル及びプレートヒータ装置の概略断面図である。
図2図1のプレートヒータ装置の部分IIの拡大図である。
図3】ノズル及び図1のプレートヒータ装置の概略斜視図である。
図4】本発明が適用されるロケットエンジンの一例の全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明は、本発明が特に適用できるエキスパンダーサイクルロケットエンジンの例に関する図4を参照して簡潔に始める。
【0016】
タンク80に貯蔵された水素などの燃料の流れは、ポンプ83によってタンクからパイプ82及びバルブ81を経て汲み出され、パイプ84に沿ってノズル40の壁47まで流れ、ノズルに沿って再生器回路85を構成するチューブのネットワーク内を流れる。再生器回路85は、再生器回路85からパイプ86を経て抽出される燃料推進剤を加熱することによって、末広部分43の頂部の壁47、ノズルスロート42、及び燃焼室41の温度を低下させる。タービンポンプ83によって燃料推進剤を送出するための及びポンプ73によって酸化剤推進剤を送出するためのターボポンプの部分を形成するタービン87及び77は、パイプ86、97、及び98から推進剤を受け入れる。この推進剤は、再生器回路85によってガス化されており、タービン87及び77から、燃焼室41に至るダクト99を経て出口で排出される。パイプ86内を流れる燃料推進剤の流れ全体は、噴射器45によって燃焼室41内に噴射される。推進剤タンク70から取り出された酸化剤推進剤は、ポンプ73を使用してパイプ72及びバルブ71を経て汲み出され、燃焼室41に噴射されるためにパイプ74を経て噴射器44まで進む。
【0017】
従来の方法では、再生器回路85は、燃焼室の壁及びロケットエンジンノズルの全部又は一部を構成するシェルに取り付けられた金属チューブのネットワークによって構成される。
【0018】
本発明は、単に例として与えられている、再生器回路85を組み込んだノズルに限定されない。
【0019】
本発明は、いかなるタイプの末広部分43にも適用され、例えば、一緒に溶接又はロウ付けされ、且つ、末広ノズルの少なくとも一部分を直接構成する並置冷却チューブのシートを備えるロケットエンジンに適用される。それにもかかわらず、本発明は、好ましくは、例えば炭素−炭素型、炭素−セラミック型、又はセラミック−セラミック型の耐熱構造複合材料で作られた末広ノズルに適用され、この末広ノズルは、任意に、伸長可能であるのがよい。
【0020】
また、本発明は、ある他の形式の冷却回路、例えば、エンジンに供給される主推進剤の流れとは異なる補助流体回路で稼動するロケットエンジンに適用してもよい。
【0021】
末広部分43が冷却されず且つ複合材料で作られていると、ロケットエンジンの運転中、ロケットエンジンは高レベルの熱放射を外部に放出する。末広部分43から放出される出力は、一般的に、末広部分の単位平方メートル当たり250kWより大きい。
【0022】
本発明によれば、不活性流体を移送する少なくとも1つのダクトを含むヒータ装置20は、ロケットエンジンが運転中である場合に放出される熱放射のエネルギーを回収し、それにより不活性流体、例えばヘリウムを加熱するために、ノズル40の外側に、そのすぐ近くで、接触することなく配置される。
【0023】
図4において、パイプ62及びバルブ61を経てヒータ装置20に連結されるヘリウムタンク60と、液体水素タンク70に加圧用のヘリウムを供給するためにヒータ装置を液体酸素タンク70に連結するパイプ63とを見ることができる。
【0024】
図4においては、チャネル22を有する切頭円錐扇形の板を備えるヒータ装置20を見ることができるが、ロケットエンジンからの輻射エネルギーを回収し、1又は2以上の推進剤タンクを加圧するのに役立つと共に、輻射熱交換器を使用しない従来のヘリウム加圧システムと比較して搭載量に関して数十キログラムの改善を得るこの輻射熱交換器に関して、様々な実施形態が可能である。
【0025】
ロケットエンジンから生じる輻射エネルギーを回収するヒータは、加熱するための流体が内部を流れる金属構造体で構成されている。ヒータは、その場所で吸収することができる使用可能な輻射出力の関数として寸法決めされる。一定の寸法形状に関して、その吸収力は、その吸収特性と、ヒータとロケットエンジンとの間の全体の可視率との、両方に依存している。そういうわけで、熱放射の観点から吸収性の高い薄い層が、輻射力源の対面壁に付着されるのである。付着物の強い吸収により、ロケットエンジンから生じる入射束の過度の反射を防止することを可能にし、それにより過熱点を生じさせない。熱交換器内を流れる流体は、従来の対流により加熱し、それによってヒータの壁の温度を安定させるのに役立つ。
【0026】
ヒータの環境は、宇宙の真空(温度は3K)、及び、運転中高温(T>1000K)である軸対称形状の少なくとも一部からなるロケットエンジンから成り立っている。
【0027】
有利な一実施形態において、ヒータ装置20は、末広ノズル(図1及び図3に切頭円錐30により図式的に表されている)の周囲に、30°から360°の範囲にある角度σにわたって延在する切頭円錐扇形の金属板からなる。
【0028】
図2に見られるように、ヒータ20の板21は、矩形又は円形断面の連続的なチャネル22のネットワークを含む。熱放射の観点から吸収性の高い材料の薄い層23が、輻射力源30に面する板21の壁上に形成される。
【0029】
ヒータ20の板21は、約5ミリメートル(mm)から15mmの範囲にある厚さを有するのがよい。
図1
図2
図3
図4