【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、表示パネルに対して平面板を貼り合わせる際に光硬化性樹脂を使用する場合には、光硬化性樹脂を硬化させるために、平面板側から及び表示パネル側からの2通りの方向から光を露光することが考えられるが、例えば、液晶表示パネルでは、液晶表示パネル自身が持つTFT、配線、ブラックマトリックス等が遮光部となり、更に、カラーフィルタによって光が制限されることもあって、液晶表示パネル側から光を露光することは好ましくない。また、表示パネルによっては、そもそも光を透過しないものもある。従って、平面板側から光を露光する必要があるが、このとき、平面板が有する遮光部の存在が問題となる。上記特許文献5及び6に記載の方法のように、平面板と表示パネルを貼り合わせた後に、側方から光を照射して遮光部と重なる領域の未硬化樹脂を硬化させることも考えられるが、一般的に、この部分は膜厚が薄く、側方から照射したとしても全ての領域に充分に光が届きにくく、また、仮に行き渡ったとしても、硬化するまで長時間の照射が必要になるため、製造工程として好ましくない。特に、大型のディスプレイに対してこの方法を用いて遮光領域の全体を充分に硬化させることは困難である。
【0010】
一方、熱硬化によって遮光部を含む全体を硬化させてしまうことも考えられるが、熱硬化では、硬化反応による重合で収縮応力が発生する上、高温である反応時から温度が下がることによって熱膨張率差に基づく応力が発生し、薄いガラスに対しては撓みを生じさせることがある。特に、大型のディスプレイパネルに対して熱硬化処理を行う際にはその影響が顕著であり、このような応力の発生を抑えることは非常に困難である。更に、特性面でも、熱硬化性樹脂は光硬化性樹脂に比べて透明性を確保することが難しく、製造工程の面でも、常温で処理できないことや、硬化速度の点等で光硬化性の樹脂に比べて劣る。
【0011】
液晶表示パネルにおいて未硬化領域が残っていると、以下のような課題が生じる。
図18及び
図19は、平面板が遮光部を有する場合において、平面板側から光照射を行うときの平面板及び表示パネルの断面模式図である。
図18は、光照射を行う前を表し、
図19は、光照射を行った後をそれぞれ表している。一般的な液晶表示パネル120は、ガラス基板を母体とする一対の基板(例えば、一方がアクティブマトリクス基板、他方がカラーフィルタ基板)121、122と、該一対の基板121、122間に挟持された液晶層123とを備え、一対の基板121、122の外側の両面には偏光板125が貼り付けられる。液晶表示パネル120に対し、透明基板111を母体とする平面板110を設置する際には、平面板110と液晶表示パネル120上の偏光板125との間に光硬化性樹脂131が塗布され、平面板110側から光を照射して光硬化性樹脂131を硬化させることで、平面板110と液晶表示パネル120とを接着することができる。また、平面板110の液晶表示パネル120側の面上の一部には遮光層112が設けられる。この遮光層112は、液晶表示パネル120の外縁を覆うものであり、表示領域として用いない周辺領域を隠す、デザイン性を向上させる等、重要な役割を果たす。
【0012】
しかしながら一方で、このような液晶表示パネル120に対し透明基板111側から光照射を行うと、遮光部112によって光が遮断される領域が生じ、未硬化領域116が残る。すなわち、平面板110のうち遮光層112と重なる領域が遮光部101bとなり、遮光層112と重ならない領域が透光部101aとなる。
図18に示すように、樹脂塗布時には、樹脂が液状であるため追従性がよく、反りは発生しないが、硬化されることにより硬化収縮が起こり、
図19に示すように、液晶表示パネル120は中心方向に引っ張られる。このとき、未硬化領域116が残存していると、特に、表面側のガラス(平面板の透明基板)111が厚い場合、相対的に液晶表示パネル120が引っ張られることになり、樹脂側に向かって反り上がることになる。ガラス基板の撓みでこれらの間には寸法差が生じるが、液晶表示パネル120の周囲は端面近くで封止シール124によりシールされており、液晶表示パネル120が有する2枚のガラス基板は、上記封止シール124により互いに固定されている。したがって、寸法差を解消するために平面板110側のガラス基板は端面に波打ちが生じるように歪み、これによって液晶層123厚に変化が生じ、表示領域の外縁に沿ってスジムラ(以下、周辺スジともいう。)が発生する。また、硬化時において周辺スジが見られない場合であっても、高温放置後にムラが鮮明になることがある。これは、エージング工程等の温度履歴を経た後で応力分布が変化するためと考えられる。
図20は、未硬化樹脂が残ることによりスジムラが生じたときの液晶表示パネルの写真図である。
図20に示すように、液晶表示パネルの表示領域の外縁に沿って、外縁から5〜10mmの範囲で白黒のスジムラが発生している。また、未硬化領域が残ることで樹脂が外部に流れ出す、又は、樹脂中のモノマー成分が偏光板等の表示パネル表面を構成する部材に浸透し、偏光板の体積を膨張させ、その性能を劣化させるため、黒表示で光り抜けが起き、表示品位が下がるおそれもある。
【0013】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、遮光部を一部に有する部材が表示パネルの前面側に配置される場合において、遮光部と重なる領域に位置する硬化性樹脂についても、充分に硬化が進行した平面板付き表示パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、遮光部が形成された領域に未硬化領域を残さない方法について種々検討を行ったところ、光硬化でも熱硬化でもない他の硬化方法に着目した。具体的には、金属錯体を含むプライマー剤を遮光部の裏側に配し、一方、接着用の樹脂としては、重合性をもつモノマー成分、オリゴマー成分等の反応性成分に対し、過酸化物を含有させたものを用意する。続いて、プライマー剤を未硬化の樹脂組成物と接触させ、プライマー剤を当該樹脂組成物中に分散させて過酸化物との間でラジカルを発生させることで上記反応性成分の重合が開始するようなメカニズムとすることにより、光照射を行わずに、遮光層下の未硬化樹脂組成物を硬化させる。このような方法によれば、遮光層が配置されていない透過部については、通常の光重合による硬化を採用することができるので、常温で短時間に、平面板と表示パネルとを効果的に接着させることができる。また、上記課題は、平面板と表示パネルとを直接貼り付ける場合のみならず、平面板と表示パネルとの間に別の部材を配置する場合にも同様に発生しうる。
【0015】
上記別の部材としては、タッチパネルが想定される。タッチパネルには、抵抗膜式、静電容量式、光学式等がある。ここでは、抵抗膜式及び静電容量式を代表にして述べる。光学式の場合は、赤外線の発光受光素子又は表面波振動子とセンサーとを備えたものが用いられ、これらは液晶表示パネルの端部に設置されるため、平面板と表示パネルとの間に新たに中間部材となる基材は配されない。
【0016】
一方、抵抗膜式は、短冊状に加工された、透明導電膜からなる電極を配した複数の基材(ガラス又はPET等のフィルム)を、各電極が互いに直交するように(それぞれX方向及びY方向に延びるように)、かつ隙間を空けて積層した構造を有し、使用時には、指で触った際に起こる抵抗変化によって指の位置を検出する。
【0017】
また、静電容量式は、パターニングされた透明導電膜からなる電極を配した複数の基材(フィルム等)を、基板(ガラス、プラスチック等)上に一枚以上(複数枚の場合は、各電極の延伸方向が直交するように)貼り付けた構造を有し、あらかじめ電極には交流電界がかけられており、使用時には、指が触れることによって生じる静電容量の変化に応じて流れる微弱電流を測定することによって指の位置を検出する。
【0018】
これらはいずれも、電極を持った基材を一枚以上使用する点で共通するが、上記基材が貼り付けられる、又は、中間部材として液晶表示パネルとの間に配置されるとき、次のような不具合が起きる可能性がある。
【0019】
抵抗膜式の場合は、通常、各基材の間に0.1mm程度の隙間が設けられるが、上記のような各基材が平面板上に貼り付けられる、又は、平面板と液晶表示パネルとの間に配置される際に、平面板が有する遮光層(配線もこれに含まれる)によって光が遮られ、基材を貼り付けるための樹脂に硬化部と未硬化部とが生じ、応力による歪みが生じて基材間の隙間の厚みが部分的に変位することがある。そしてそれにより、タッチパネルの感度が変化する、又は、電極同士が接触して機能が発揮できない場合が生じうる。また、硬化部と未硬化部との境界付近では、歪みによって樹脂厚分布が生じ、像に歪みを生じさせることがある。このような不具合は、複数の基材の少なくとも一方が柔らかい基材である場合により多く発生し、特に、フィルム基材はガラス基材よりも柔らかいため、平面板側のみならず液晶表示パネル側にも樹脂によるフィルム基材の貼り付けが行われた場合、更に不具合が発生する確率が高くなる。
【0020】
静電容量式の場合は、通常、基材間に隙間は設けられないが、配線が配される基材として柔らかいPET等のフィルムが用いられることから、遮光層によって光が遮られて樹脂に未硬化部と硬化部とが混在することになると、その歪みによって樹脂厚分布が生じ、像に歪みを生じさせることがある。
【0021】
なお、上記遮光領域が形成される原因としては、平面板が有する遮光層、及び、タッチパネルに搭載されるFPCに加え、タッチパネルの外周に沿って金属配線が配される場合には、これも遮光領域を形成する原因となりうる。
【0022】
次に、未硬化樹脂自体が引き起こす不具合について述べる。例えば、
図21は、平面板と液晶表示パネルとの間にタッチパネルを配置した場合に、未硬化樹脂が残っているときの様子を示す断面模式図である。また、
図22及び
図23は、平面板と液晶表示パネルとの間にタッチパネルを配置したときの平面模式図である。
図22は最前面を表し、
図23は遮光層を取り除いたときの面を表す。
【0023】
図21〜23に示すように、タッチパネル140は、ガラス等の透明基板141を母体とし、端部に周辺配線142及びフレキシブルプリント(FPC)基板143を備える。
図21に示す例の場合のように未硬化樹脂116が残存すると、該未硬化樹脂116が液晶表示パネル120とバックライトユニット151との間、又は、バックライトユニット151の内部に流れ込むことがあり、表示不良の原因となりうる。
【0024】
また、流れ込む樹脂の成分によっては、偏光板に使用されているTACフィルム、位相差フィルム、光学フィルム等に多く用いられるアクリル系フィルム、シクロヘキサンフィルム等を侵す場合がある。
【0025】
更に、仮に流れ出た未硬化樹脂を拭き取るとしても、光硬化性樹脂(特に、UV硬化性樹脂)にはアクリル系樹脂が多く用いられるため、溶剤としてMEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)等を用いる場合には、同様にアクリル系樹脂で構成されている他の光学フィルムを侵すことになり、また、偏光板の基材であるTACフィルムに対して浸透することにもなるため、使用する上での制約が多い。
【0026】
これに対し、上記本発明者らが見出した思想によれば、表示パネルと該他の部材とを貼り付けるための接着層に対しても同様に、未硬化樹脂が残存してしまうことを防ぐことができるため、上述のような未硬化樹脂の流れ込みが原因による不良の発生が起こりにくくなる。こうして、本発明者らは、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0027】
すなわち、本発明の一側面は、透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルと、上記平面板と上記表示パネルとの間に設けられた接着層とを備える平面板付き表示パネルであって、上記接着層は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを反応成分とする重合から形成された樹脂硬化体層である平面板付き表示パネルである。以下、本発明の平面板付き表示パネルについて詳述する。
【0028】
本発明の平面板付き表示パネルは、透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルとを備える。遮光部の位置は用途に応じて適宜変更することができ、特に限定されない。平面板には透光部及び遮光部の両方が含まれており、透光部を通して、観察者が表示パネルを視認することができる。遮光部の具体例としては、周辺領域を隠すために表示領域の外縁に沿って形成される黒色の印刷膜、裸眼による立体表示又は異なる位置から見たときに異なる画像を表現するためのストライプパターンで形成される黒色の印刷膜等が挙げられる。すなわち、上記平面板の好ましい形態の一例としては、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルである形態が挙げられる。これにより、三次元(3D)表示、見る角度によって画面表示が変わる表示等が可能となる。
【0029】
本発明の平面板付き表示パネルは、上記平面板と上記表示パネルとの間に設けられた接着層を備え、上記接着層は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを反応材料とする重合から形成された樹脂硬化体層である。好ましくは、上記反応性成分は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの全てを含む。また、本発明における接着層は、少なくとも遮光部と重なる領域が過酸化物とプライマー剤との反応により発生するラジカルにより反応性成分の重合反応が生じてポリマーとなって形成されるものである。なお、遮光部と重なる領域以外の領域をこの反応機構によって硬化させてもよい。
【0030】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーとは、(メタ)アクリレート基を分子末端又は側鎖に一つ以上有するオリゴマーであり、例えば、ポリイソプロピレン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的な商品としては、ポリイソプレン(メタ)アクリレートであればクラレ社製のUC−1等が、ポリブタジエン(メタ)アクリレートであれば日本石油社製のTE−2000等が挙げられる。
【0031】
上記ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的な商品としては、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートであればローム&ハース社製のQM−657等が、イソボルニルアクリレートであれば、共栄社化学社製のライトエステルIB−XA等が挙げられる。
【0032】
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的な商品としては、2−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートであれば共栄社化学社製のライトエステルHOB−A等が挙げられる。
【0033】
また、本発明における(メタ)アクリレートとしては、より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
本発明におけるプライマー剤としては、過酸化物との間でラジカルを形成することができるものであれば特に限定されず、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、及び、チタン(Ti)からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属錯体を含有することが好ましい。
【0035】
本発明における過酸化物としては、プライマー剤との間でラジカルを形成することができるものであれば特に限定されず、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。具体的な商品としては、ジアシルパーオキサイドであれば日油社製のパーロイルL、ナイパーBMT等が、パーオキシエステルであれば日油社製のパーブチルZ、PV、O等が、ハイドロパーオキサイドであれば日油社製のパークミルH、パーオクタH等が挙げられる。
【0036】
本発明によれば、少なくとも遮光部下の樹脂硬化体層を光硬化及び熱硬化のいずれも行うことなく得ることができるので、充分な硬化特性が得られ、かつ従来のような側方からの光照射や加熱を行うことに伴って起こる課題が生じない。
【0037】
本発明の平面板付き表示パネルにおける接着層は、平面板と表示パネルとの間に他の中間部材を配置した場合には、該中間部材と、平面板又は表示パネルとを接着させるものであってもよい。すなわち、本発明の平面板付き表示パネルの例としては、(i)上記接着層は、上記平面板と上記表示パネルとを接着させる樹脂硬化体層である形態、(ii)上記平面板と上記表示パネルとの間には、中間部材が配置され、上記接着層は、上記表示パネルと上記中間部材とを接着させる樹脂硬化体層である形態が挙げられる。なお、中間部材の数は特に限定されない。
【0038】
本発明の平面板付き表示パネルの構成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素により特に限定されるものではない。
【0039】
以下、本発明の平面板付き表示パネルの好ましい形態について詳述する。
【0040】
上記樹脂硬化体層のうち、上記平面板の透光部と重なる部位は、上記反応性成分と、光重合開始剤とを反応材料とする重合から形成されたものであることが好ましい。光重合開始剤を用いた光重合によれば、高い透過率をもつ樹脂硬化体層が得られ、表示パネルの視認性が良好になる。また、光重合開始剤を用いた光重合によれば、熱重合と違い、常温で重合反応を行うことができるとともに、接着剤よりもはるかに短時間(数分〜数時間)で接着を行うことができ、タクトタイムの点で有利である。本発明においては、遮光部下における重合反応が上述の反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを用いた重合反応で形成されればよいので、透過部においては、より反応性、視認性の点で優れた本形態が平面板付き表示パネルへの適用として優れている。
【0041】
上記樹脂硬化体層は、実質的に、上記反応性成分と、上記過酸化物成分と、上記プライマー剤とを反応材料とする重合のみから形成されたものであることが好ましい。特に製造時間に制限がない場合、遮光部の面積が透光部の面積に比べてはるかに大きい等、光重合を行うことが不適切な条件である場合等には、このような形態としてもよい。
【0042】
上記樹脂硬化体層の25℃における貯蔵剛性率は、1.1kPa以上であることが好ましい。硬化後の樹脂硬化体層の貯蔵剛性率が1.1kPa未満である場合、流動性が見られ、充分に固定機能が果たせないおそれがあり、表示ムラが起こる可能性がある。そのため、本条件を満たすことが信頼性の観点から好ましい。
【0043】
上記表示パネルは、一対の基板と、上記一対の基板で挟持された液晶層とを備える液晶表示パネルであることが好ましい。上述したように、遮光部下に未硬化領域が残存している場合、特に液晶表示パネルにおいて表示ムラとなって現れやすい。そのため、本発明は、液晶表示パネルに対して好適に適用される。
【0044】
上記平面板は、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルであることが好ましい。このようなパネルとしては、立体表示を行うためのもの、異なる場所から見たときに違う見え方を実現するためのものが挙げられる。
【0045】
立体表示を行う場合には、表示画面の前面又は裏面にスリット状の遮光部を形成するパネルが配置されることがあり、遮光部をストライプ状に構成することで、一画面で両目に対しそれぞれ異なる複数の画像表示を行うことができ、立体表示が可能となるため、本発明は、このような立体表示パネルに特に好適に用いられる。すなわち、上記平面板は、表示画面の前面又は裏面にスリット状の遮光部を形成する立体表示パネルであることが好ましい。
【0046】
表示パネルの前方にスリットを複数有する遮光部材が配置されることで、上記立体表示パネルが持つスリットと同様、遮光部がストライプ状に構成され、同じパネルであっても見る位置によって異なる画像表示を行うことが可能となる。このような遮光部材は、光を遮り、未露光部を形成することになるため、本発明が好適に用いられる。すなわち、上記平面板は、複数の視点から見たときに異なる表示を実現するパネルであることが好ましい。
【0047】
上記中間部材は、上記平面板の遮光部と重なる領域に遮光部材を有する場合に特に好適に用いられる。このような場合、平面板の遮光部と逆側から光の照射を行ったとしても、その光が遮光部材によって遮られ、未硬化領域が残存してしまう可能性がある。しかしながら、上記反応性成分を用いた方法によれば、光の当たらない領域であっても硬化することが可能となるため、未硬化樹脂が他の領域に流れ込むことを防ぐことができる。このような中間部材の例としては、タッチパネルが挙げられる。タッチパネルは、通常、表示領域(平面板の透光部と重なる領域)外に遮光性の周辺配線及びFPC基板を備える。
【0048】
また、本発明は、このような平面板付き表示パネルを作製することが可能な製造方法でもある。すなわち、本発明の他の一側面は、透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルと、上記平面板と上記表示パネルとの間に設けられた接着層とを備える平面板付き表示パネルの製造方法であって、上記製造方法は、平面板の遮光部と表示パネルとの間にプライマー剤を配する工程と、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分とを含む未硬化樹脂組成物を、平面板と表示パネルとの間、及び、プライマー剤上に配する工程と、上記プライマー剤上に配された未硬化樹脂組成物を硬化させて、接着層となる樹脂硬化体層を形成する工程とを有する平面板付き表示パネルの製造方法でもある。好ましくは、上記反応性成分は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの全てを含むものである。
【0049】
プライマー剤による硬化法によれば、硬化される部分がプライマー剤が塗布された部分近傍に限られるので、熱硬化のような一部の領域のみでの硬化が難しい手法と異なり、硬化させる部分を自由に限定することができる。本発明においては、平面板からの照射では光が届かない領域であっても、プライマー剤によって硬化を進行させることができるので、未硬化領域が残存することを防ぐことができる。そのため、上記樹脂硬化体層のうち、上記平面板の遮光部と重なる部位は、プライマー剤と過酸化物成分とが反応して発生したラジカルによる重合で形成されることが好ましい。
【0050】
また、プライマー剤による硬化法によれば、室温付近で硬化反応を進めさせることが出来るため、熱硬化のように高温にすることにより生じる新たな応力を内包させることなく樹脂組成物を硬化させることができ、応力によるムラの発生を抑制することができる。
【0051】
本発明の平面板付き表示パネルの製造方法を有する製造工程としては、このような製造工程を必須として形成されるものである限り、その他の製造工程により特に限定されるものではない。本発明の製造方法で用いる各反応性成分、過酸化物成分、プライマー剤等の具体例としては、上述の本発明の平面板付き表示パネルにおいて説明したものと同じものを用いることができる。
【0052】
本発明の平面板付き表示パネルの製造方法においても、接着層は、平面板と表示パネルとを貼り合わせるためのものに限らず、平面板と表示パネルとの間に他の中間部材が配置される場合には、表示パネルと中間部材を接着させるものであってもよい。
【0053】
すなわち、本発明の平面板付き表示パネルの製造方法としては、(i)更に、上記平面板と上記表示パネルとを上記未硬化樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、(ii)更に、上記平面板と上記表示パネルとの間に中間部材を配置し、上記接着層は、上記未硬化樹脂組成物を介して上記表示パネルと上記中間部材とを貼り合わせる工程を有していてもよい。
【0054】
以下、本発明の平面板付き表示パネルの製造方法の好ましい形態について詳述する。
【0055】
上記製造方法は、上記プライマー剤上に配された未硬化性樹脂を硬化させる工程の後、更に、上記平面板の透光部を介して光を照射し、上記平面板の透光部と重なる樹脂硬化体層を形成する工程を有することが好ましい。表示パネルにおいて透光部は表示領域を構成するため、表示部の広さは、透過部の広さに比べてはるかに大きく、また、透光部においては短時間で広範囲に、かつ均質に処理を行うことができる光照射が好ましい。これにより、タクトタイムの減少を図ることができる。
【0056】
また、プライマー剤による硬化は光硬化よりも反応が遅いため、光硬化よりもあとで徐々に硬化させることも可能である。したがって、硬化による両樹脂の物性、特に収縮が拮抗しあう両硬化の境界領域において、先に硬化した光硬化領域の収縮後の形状に追従して硬化するので、境界前後の収縮に伴う応力集中を緩和させることが可能となる。
【0057】
上記未硬化樹脂組成物は、光重合開始剤を含み、上記樹脂硬化体層のうち、上記平面板の透光部と重なる部位は、上記光重合開始剤に対して光が照射されて発生したラジカルによる重合で形成されることが好ましい。これにより、迅速でかつ充分な光重合を行うことができる。
【0058】
上記製造方法は、更に、平面板と表示パネルとの間の隙間から光を照射し、上記平面板の遮光部と重なる未硬化樹脂組成物を仮硬化させる工程を有することが好ましい。プライマー剤による硬化は、反応速度が遅いため、仮硬化を行っておくことで、平面板と表示パネルのアライメントズレの発生を防ぐことができる。
【0059】
以上、平面板付き表示パネルの製造方法の好ましい形態について説明してきたが、その他にも、上述した平面板付き表示パネルの好ましい形態を上記製造方法に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0060】
更に、本発明の他の一側面は、透光部及び遮光部を含む基材に対して塗布されることで、上記基材を他の基材と接着させる樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と過酸化物成分とを含み、プライマー剤との化学反応によって硬化する樹脂組成物でもある。