特許第5685270号(P5685270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5685270平面板付き表示パネル、及び、平面板付き表示パネルの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685270
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】平面板付き表示パネル、及び、平面板付き表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20150226BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20150226BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20150226BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20150226BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150226BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20150226BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   G09F9/00 313
   G09F9/00 366A
   G09F9/00 338
   G06F3/041 420
   G06F3/041 400
   G02F1/1333
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
   H05B33/10
【請求項の数】21
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-553753(P2012-553753)
(86)(22)【出願日】2012年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2012050971
(87)【国際公開番号】WO2012099171
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-8175(P2011-8175)
(32)【優先日】2011年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 暁義
(72)【発明者】
【氏名】田口 登喜生
(72)【発明者】
【氏名】三成 千明
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】千田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】石野 健太
(72)【発明者】
【氏名】片上 英治
(72)【発明者】
【氏名】椎根 翼
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−076578(JP,A)
【文献】 特開平07−037274(JP,A)
【文献】 特開平07−206481(JP,A)
【文献】 特開平08−094968(JP,A)
【文献】 特開2005−250467(JP,A)
【文献】 特開2007−115748(JP,A)
【文献】 特開2008−241728(JP,A)
【文献】 特開2009−086656(JP,A)
【文献】 特開2009−275160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−5/10、 9/00−201/10
G02F 1/13−1/13363、
1/1339−1/1341、1/1347、
1/137−1/141
H01L 51/50
H05B 33/00−33/28
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルと、該平面板と該表示パネルとの間に設けられた接着層とを備える平面板付き表示パネルであって、
該接着層は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを反応材料とする重合から形成された樹脂硬化体層であり、
該樹脂硬化体層のうち、該平面板の透光部と重なる部位は、該反応性成分と光重合開始剤とを反応材料とする重合から形成されたものであり、
該樹脂硬化体層のうち、該平面板の透光部と重なる部位の光重合開始剤の濃度は、該平面板の遮光部と重なる部位の光重合開始剤の濃度よりも低い
ことを特徴とする平面板付き表示パネル。
【請求項2】
透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルと、該平面板と該表示パネルとの間に設けられた接着層とを備える平面板付き表示パネルであって、
該接着層は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを反応材料とする重合から形成された樹脂硬化体層であり、
該樹脂硬化体層のうち、該平面板の透光部と重なる部位は、該反応性成分と光重合開始剤とを反応材料とする重合から形成されたものであり、
該樹脂硬化体層のうち、該平面板の透光部と重なる部位のプライマー剤の濃度は、該平面板の遮光部と重なる部位のプライマー剤の濃度よりも低い
ことを特徴とする平面板付き表示パネル。
【請求項3】
前記接着層は、前記平面板と前記表示パネルとを接着させる樹脂硬化体層であることを特徴とする請求項1又は2記載の平面板付き表示パネル。
【請求項4】
前記平面板と前記表示パネルとの間には、中間部材が配置され、
前記接着層は、前記表示パネルと該中間部材とを接着させる樹脂硬化体層である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の平面板付き表示パネル。
【請求項5】
前記中間部材は、タッチパネルであることを特徴とする請求項記載の平面板付き表示パネル。
【請求項6】
前記プライマー剤は、鉄、アルミニウム、コバルト、マンガン、スズ、亜鉛、バナジウム、クロム、ジルコニウム、インジウム、及び、チタンからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属錯体を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の平面板付き表示パネル。
【請求項7】
前記反応材料は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの全ての反応性成分を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の平面板付き表示パネル。
【請求項8】
前記樹脂硬化体層の25℃における貯蔵剛性率は、1.1kPa以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の平面板付き表示パネル。
【請求項9】
前記表示パネルは、一対の基板と、該一対の基板で挟持された液晶層とを備える液晶表示パネルであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の平面板付き表示パネル。
【請求項10】
前記平面板は、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の平面板付き表示パネル。
【請求項11】
透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルと、該平面板と該表示パネルとの間に設けられた接着層とを備える平面板付き表示パネルの製造方法であって、
該製造方法は、平面板の透光部と表示パネルとの間にプライマー剤を配さず、平面板の遮光部と表示パネルとの間にプライマー剤を配する工程と、
(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分と、光重合開始剤とを含む未硬化樹脂組成物を、平面板と表示パネルとの間、及び、プライマー剤上に配する工程と、
該プライマー剤上に配された未硬化樹脂組成物を硬化させて、平面板の遮光部と重なる領域において、接着層となる樹脂硬化体層を形成する工程と
平面板の透光部を介して光を照射し、平面板の透光部と重なる領域において、接着層となる樹脂硬化体層を形成する工程とを有する
ことを特徴とする平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項12】
前記製造方法は、更に、前記未硬化樹脂組成物を介して前記平面板と前記表示パネルとを貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項11記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項13】
前記製造方法は、更に、前記平面板と前記表示パネルとの間に中間部材を配置し、前記未硬化樹脂組成物を介して前記表示パネルと該中間部材とを貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項11記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記中間部材は、タッチパネルであることを特徴とする請求項13記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項15】
前記プライマー剤は、鉄、アルミニウム、コバルト、マンガン、スズ、亜鉛、バナジウム、クロム、ジルコニウム、インジウム、及び、チタンからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属錯体を含有することを特徴とする請求項1114のいずれかに記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項16】
前記反応性成分は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの全ての反応性成分を含むことを特徴とする請求項1115のいずれかに記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記樹脂硬化体層のうち、前記平面板の遮光部と重なる部位は、前記プライマー剤と前記過酸化物成分とが反応して発生したラジカルによる重合で形成されることを特徴とする請求項1116のいずれかに記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項18】
記樹脂硬化体層のうち、前記平面板の透光部と重なる部位は、該光重合開始剤に対して光が照射されて発生したラジカルによる重合で形成される
ことを特徴とする請求項1117のいずれかに記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項19】
前記製造方法は、更に、平面板と表示パネルとの間の隙間から光を照射し、前記平面板の遮光部と重なる未硬化樹脂組成物を仮硬化させる工程を有することを特徴とする請求項1118のいずれかに記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項20】
前記表示パネルは、一対の基板と、該一対の基板で挟持された液晶層とを備える液晶表示パネルであることを特徴とする請求項1119のいずれかに記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【請求項21】
前記平面板は、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルであることを特徴とする請求項1120のいずれかに記載の平面板付き表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面板付き表示パネル、平面板付き表示パネルの製造方法、及び、樹脂組成物に関する。より詳しくは、ディスプレイ面の保護、大型ディスプレイ面の割れ防止、デザイン性の向上等を目的とする平面板が設置された平面板付き表示パネル、該平面板付き表示パネルの製造方法、及び、該製造方法を可能にする樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルに代表される各種表示パネルは、近年、ビジネス用途から一般家庭用途に至るまで幅広く用いられており、携帯電話、ゲーム機等の小型サイズの機種から、TV、野外インフォメーションディスプレイ等の大型サイズの機種まで様々なものが提案され、実用化されている。
【0003】
これらの表示パネルでは、近年、従来までの二次元(2D)表示のみではなく三次元(3D)表示が可能となるもの、見る角度によって画面表示が変わるもの等、付加価値を加えたものが注目を集めており、これらの機能を有する部材が従来の表示パネルの前面側に設置したものが見られつつある。
【0004】
特に、液晶表示パネルは、薄型化のために薄いガラスを基板として使用している場合があり、用途によっては表示パネルの表面保護、大型の表示パネルにおける割れ防止等を目的として、前面側にガラス板又は透明なプラスチック板が設置されることがある。また、表面が硬く光沢があってフラットな表面であることがデザイン性の観点から望まれることもあって、表示パネルの前面側にガラス板を設置するモデルもある。
【0005】
これら液晶表示パネルの前面側に設置されるガラス板、プラスチック板、3Dパネル等(以下、平面板ともいう。)は、従来は液晶表示パネル面、つまり偏光板が貼合される側の面上に、一定の隙間を空けて設置されていた。ところが隙間を空けて設置すると、平面板の液晶表示パネル側(内側)と空気との屈折率界面、又は、偏光板と空気との屈折率界面で引き起こされる表面反射のために、表示画像が二重に見える、又は、移りこんだ像で本来の表示が見え難くなるといった課題があった。これらの課題は、媒質間の屈折率差で引き起こされることが原因であるから、反射を引き起こすそれぞれの面に反射防止用のコーティングを施す、又は、空気層を平面板若しくは偏光板の屈折率に近い材料で置き換えることによって解決される。この点に関しては、例えば、液晶表示パネルにおいて、平面板との隙間に樹脂を埋め込んだ例(例えば、特許文献1参照。)、及び、プラズマパネルにおいて、平面板との間を樹脂で接着した例(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0006】
また、平面板を有する表示パネルにおける他の工夫としては、平面板を貼合し樹脂を硬化させた時に生じる収縮に起因する応力によってディスプレイ上に生じるムラを解消するために硬化後の樹脂弾性率をある一定の値以下に設定するもの(例えば、特許文献3参照。)、及び、平面板と液晶表示パネルとの間に充填される樹脂の周りにダムとなるようにガイドを作り、その中に光硬化性の樹脂を埋めて貼合した液晶表示パネル(例えば、特許文献4参照。)も検討されている。
【0007】
更に、平面板を表示パネルに貼り合わせるために、これらの間隙に光硬化性樹脂組成物を充填して光硬化させようとすると、例えば、一部に遮光部がある場合に、その遮光部が光照射の妨げになって光が充分に到達せず、未硬化の領域が残ってしまうことがある。そこで、遮光部の形成領域にある光硬化性樹脂組成物が確実に硬化するよう、遮光部形成面の外方側面側から光を照射して硬化を行う方法が検討されている(例えば、特許文献5、6参照。)。また、遮光部下の光硬化性樹脂組成物の他の硬化方法としては、光重合ではなく熱重合で硬化させることができるよう、熱重合開始剤もあわせて添加しておくという方法も検討されている(例えば、特許文献7参照。)。また、光重合だけでなく熱重合も行うという点では、遮光部の有無に関わらず、両方を用いて硬化を行う方法も検討されている(例えば、特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−55641号公報
【特許文献2】特開2007−94191号公報
【特許文献3】特開2008−282000号公報
【特許文献4】特開2008−129159号公報
【特許文献5】特開2009−186954号公報
【特許文献6】特開2009−186955号公報
【特許文献7】特開2008−281997号公報
【特許文献8】特開2010−26539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、表示パネルに対して平面板を貼り合わせる際に光硬化性樹脂を使用する場合には、光硬化性樹脂を硬化させるために、平面板側から及び表示パネル側からの2通りの方向から光を露光することが考えられるが、例えば、液晶表示パネルでは、液晶表示パネル自身が持つTFT、配線、ブラックマトリックス等が遮光部となり、更に、カラーフィルタによって光が制限されることもあって、液晶表示パネル側から光を露光することは好ましくない。また、表示パネルによっては、そもそも光を透過しないものもある。従って、平面板側から光を露光する必要があるが、このとき、平面板が有する遮光部の存在が問題となる。上記特許文献5及び6に記載の方法のように、平面板と表示パネルを貼り合わせた後に、側方から光を照射して遮光部と重なる領域の未硬化樹脂を硬化させることも考えられるが、一般的に、この部分は膜厚が薄く、側方から照射したとしても全ての領域に充分に光が届きにくく、また、仮に行き渡ったとしても、硬化するまで長時間の照射が必要になるため、製造工程として好ましくない。特に、大型のディスプレイに対してこの方法を用いて遮光領域の全体を充分に硬化させることは困難である。
【0010】
一方、熱硬化によって遮光部を含む全体を硬化させてしまうことも考えられるが、熱硬化では、硬化反応による重合で収縮応力が発生する上、高温である反応時から温度が下がることによって熱膨張率差に基づく応力が発生し、薄いガラスに対しては撓みを生じさせることがある。特に、大型のディスプレイパネルに対して熱硬化処理を行う際にはその影響が顕著であり、このような応力の発生を抑えることは非常に困難である。更に、特性面でも、熱硬化性樹脂は光硬化性樹脂に比べて透明性を確保することが難しく、製造工程の面でも、常温で処理できないことや、硬化速度の点等で光硬化性の樹脂に比べて劣る。
【0011】
液晶表示パネルにおいて未硬化領域が残っていると、以下のような課題が生じる。図18及び図19は、平面板が遮光部を有する場合において、平面板側から光照射を行うときの平面板及び表示パネルの断面模式図である。図18は、光照射を行う前を表し、図19は、光照射を行った後をそれぞれ表している。一般的な液晶表示パネル120は、ガラス基板を母体とする一対の基板(例えば、一方がアクティブマトリクス基板、他方がカラーフィルタ基板)121、122と、該一対の基板121、122間に挟持された液晶層123とを備え、一対の基板121、122の外側の両面には偏光板125が貼り付けられる。液晶表示パネル120に対し、透明基板111を母体とする平面板110を設置する際には、平面板110と液晶表示パネル120上の偏光板125との間に光硬化性樹脂131が塗布され、平面板110側から光を照射して光硬化性樹脂131を硬化させることで、平面板110と液晶表示パネル120とを接着することができる。また、平面板110の液晶表示パネル120側の面上の一部には遮光層112が設けられる。この遮光層112は、液晶表示パネル120の外縁を覆うものであり、表示領域として用いない周辺領域を隠す、デザイン性を向上させる等、重要な役割を果たす。
【0012】
しかしながら一方で、このような液晶表示パネル120に対し透明基板111側から光照射を行うと、遮光部112によって光が遮断される領域が生じ、未硬化領域116が残る。すなわち、平面板110のうち遮光層112と重なる領域が遮光部101bとなり、遮光層112と重ならない領域が透光部101aとなる。図18に示すように、樹脂塗布時には、樹脂が液状であるため追従性がよく、反りは発生しないが、硬化されることにより硬化収縮が起こり、図19に示すように、液晶表示パネル120は中心方向に引っ張られる。このとき、未硬化領域116が残存していると、特に、表面側のガラス(平面板の透明基板)111が厚い場合、相対的に液晶表示パネル120が引っ張られることになり、樹脂側に向かって反り上がることになる。ガラス基板の撓みでこれらの間には寸法差が生じるが、液晶表示パネル120の周囲は端面近くで封止シール124によりシールされており、液晶表示パネル120が有する2枚のガラス基板は、上記封止シール124により互いに固定されている。したがって、寸法差を解消するために平面板110側のガラス基板は端面に波打ちが生じるように歪み、これによって液晶層123厚に変化が生じ、表示領域の外縁に沿ってスジムラ(以下、周辺スジともいう。)が発生する。また、硬化時において周辺スジが見られない場合であっても、高温放置後にムラが鮮明になることがある。これは、エージング工程等の温度履歴を経た後で応力分布が変化するためと考えられる。図20は、未硬化樹脂が残ることによりスジムラが生じたときの液晶表示パネルの写真図である。図20に示すように、液晶表示パネルの表示領域の外縁に沿って、外縁から5〜10mmの範囲で白黒のスジムラが発生している。また、未硬化領域が残ることで樹脂が外部に流れ出す、又は、樹脂中のモノマー成分が偏光板等の表示パネル表面を構成する部材に浸透し、偏光板の体積を膨張させ、その性能を劣化させるため、黒表示で光り抜けが起き、表示品位が下がるおそれもある。
【0013】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、遮光部を一部に有する部材が表示パネルの前面側に配置される場合において、遮光部と重なる領域に位置する硬化性樹脂についても、充分に硬化が進行した平面板付き表示パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、遮光部が形成された領域に未硬化領域を残さない方法について種々検討を行ったところ、光硬化でも熱硬化でもない他の硬化方法に着目した。具体的には、金属錯体を含むプライマー剤を遮光部の裏側に配し、一方、接着用の樹脂としては、重合性をもつモノマー成分、オリゴマー成分等の反応性成分に対し、過酸化物を含有させたものを用意する。続いて、プライマー剤を未硬化の樹脂組成物と接触させ、プライマー剤を当該樹脂組成物中に分散させて過酸化物との間でラジカルを発生させることで上記反応性成分の重合が開始するようなメカニズムとすることにより、光照射を行わずに、遮光層下の未硬化樹脂組成物を硬化させる。このような方法によれば、遮光層が配置されていない透過部については、通常の光重合による硬化を採用することができるので、常温で短時間に、平面板と表示パネルとを効果的に接着させることができる。また、上記課題は、平面板と表示パネルとを直接貼り付ける場合のみならず、平面板と表示パネルとの間に別の部材を配置する場合にも同様に発生しうる。
【0015】
上記別の部材としては、タッチパネルが想定される。タッチパネルには、抵抗膜式、静電容量式、光学式等がある。ここでは、抵抗膜式及び静電容量式を代表にして述べる。光学式の場合は、赤外線の発光受光素子又は表面波振動子とセンサーとを備えたものが用いられ、これらは液晶表示パネルの端部に設置されるため、平面板と表示パネルとの間に新たに中間部材となる基材は配されない。
【0016】
一方、抵抗膜式は、短冊状に加工された、透明導電膜からなる電極を配した複数の基材(ガラス又はPET等のフィルム)を、各電極が互いに直交するように(それぞれX方向及びY方向に延びるように)、かつ隙間を空けて積層した構造を有し、使用時には、指で触った際に起こる抵抗変化によって指の位置を検出する。
【0017】
また、静電容量式は、パターニングされた透明導電膜からなる電極を配した複数の基材(フィルム等)を、基板(ガラス、プラスチック等)上に一枚以上(複数枚の場合は、各電極の延伸方向が直交するように)貼り付けた構造を有し、あらかじめ電極には交流電界がかけられており、使用時には、指が触れることによって生じる静電容量の変化に応じて流れる微弱電流を測定することによって指の位置を検出する。
【0018】
これらはいずれも、電極を持った基材を一枚以上使用する点で共通するが、上記基材が貼り付けられる、又は、中間部材として液晶表示パネルとの間に配置されるとき、次のような不具合が起きる可能性がある。
【0019】
抵抗膜式の場合は、通常、各基材の間に0.1mm程度の隙間が設けられるが、上記のような各基材が平面板上に貼り付けられる、又は、平面板と液晶表示パネルとの間に配置される際に、平面板が有する遮光層(配線もこれに含まれる)によって光が遮られ、基材を貼り付けるための樹脂に硬化部と未硬化部とが生じ、応力による歪みが生じて基材間の隙間の厚みが部分的に変位することがある。そしてそれにより、タッチパネルの感度が変化する、又は、電極同士が接触して機能が発揮できない場合が生じうる。また、硬化部と未硬化部との境界付近では、歪みによって樹脂厚分布が生じ、像に歪みを生じさせることがある。このような不具合は、複数の基材の少なくとも一方が柔らかい基材である場合により多く発生し、特に、フィルム基材はガラス基材よりも柔らかいため、平面板側のみならず液晶表示パネル側にも樹脂によるフィルム基材の貼り付けが行われた場合、更に不具合が発生する確率が高くなる。
【0020】
静電容量式の場合は、通常、基材間に隙間は設けられないが、配線が配される基材として柔らかいPET等のフィルムが用いられることから、遮光層によって光が遮られて樹脂に未硬化部と硬化部とが混在することになると、その歪みによって樹脂厚分布が生じ、像に歪みを生じさせることがある。
【0021】
なお、上記遮光領域が形成される原因としては、平面板が有する遮光層、及び、タッチパネルに搭載されるFPCに加え、タッチパネルの外周に沿って金属配線が配される場合には、これも遮光領域を形成する原因となりうる。
【0022】
次に、未硬化樹脂自体が引き起こす不具合について述べる。例えば、図21は、平面板と液晶表示パネルとの間にタッチパネルを配置した場合に、未硬化樹脂が残っているときの様子を示す断面模式図である。また、図22及び図23は、平面板と液晶表示パネルとの間にタッチパネルを配置したときの平面模式図である。図22は最前面を表し、図23は遮光層を取り除いたときの面を表す。
【0023】
図21〜23に示すように、タッチパネル140は、ガラス等の透明基板141を母体とし、端部に周辺配線142及びフレキシブルプリント(FPC)基板143を備える。図21に示す例の場合のように未硬化樹脂116が残存すると、該未硬化樹脂116が液晶表示パネル120とバックライトユニット151との間、又は、バックライトユニット151の内部に流れ込むことがあり、表示不良の原因となりうる。
【0024】
また、流れ込む樹脂の成分によっては、偏光板に使用されているTACフィルム、位相差フィルム、光学フィルム等に多く用いられるアクリル系フィルム、シクロヘキサンフィルム等を侵す場合がある。
【0025】
更に、仮に流れ出た未硬化樹脂を拭き取るとしても、光硬化性樹脂(特に、UV硬化性樹脂)にはアクリル系樹脂が多く用いられるため、溶剤としてMEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)等を用いる場合には、同様にアクリル系樹脂で構成されている他の光学フィルムを侵すことになり、また、偏光板の基材であるTACフィルムに対して浸透することにもなるため、使用する上での制約が多い。
【0026】
これに対し、上記本発明者らが見出した思想によれば、表示パネルと該他の部材とを貼り付けるための接着層に対しても同様に、未硬化樹脂が残存してしまうことを防ぐことができるため、上述のような未硬化樹脂の流れ込みが原因による不良の発生が起こりにくくなる。こうして、本発明者らは、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0027】
すなわち、本発明の一側面は、透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルと、上記平面板と上記表示パネルとの間に設けられた接着層とを備える平面板付き表示パネルであって、上記接着層は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを反応成分とする重合から形成された樹脂硬化体層である平面板付き表示パネルである。以下、本発明の平面板付き表示パネルについて詳述する。
【0028】
本発明の平面板付き表示パネルは、透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルとを備える。遮光部の位置は用途に応じて適宜変更することができ、特に限定されない。平面板には透光部及び遮光部の両方が含まれており、透光部を通して、観察者が表示パネルを視認することができる。遮光部の具体例としては、周辺領域を隠すために表示領域の外縁に沿って形成される黒色の印刷膜、裸眼による立体表示又は異なる位置から見たときに異なる画像を表現するためのストライプパターンで形成される黒色の印刷膜等が挙げられる。すなわち、上記平面板の好ましい形態の一例としては、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルである形態が挙げられる。これにより、三次元(3D)表示、見る角度によって画面表示が変わる表示等が可能となる。
【0029】
本発明の平面板付き表示パネルは、上記平面板と上記表示パネルとの間に設けられた接着層を備え、上記接着層は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを反応材料とする重合から形成された樹脂硬化体層である。好ましくは、上記反応性成分は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの全てを含む。また、本発明における接着層は、少なくとも遮光部と重なる領域が過酸化物とプライマー剤との反応により発生するラジカルにより反応性成分の重合反応が生じてポリマーとなって形成されるものである。なお、遮光部と重なる領域以外の領域をこの反応機構によって硬化させてもよい。
【0030】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーとは、(メタ)アクリレート基を分子末端又は側鎖に一つ以上有するオリゴマーであり、例えば、ポリイソプロピレン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的な商品としては、ポリイソプレン(メタ)アクリレートであればクラレ社製のUC−1等が、ポリブタジエン(メタ)アクリレートであれば日本石油社製のTE−2000等が挙げられる。
【0031】
上記ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的な商品としては、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートであればローム&ハース社製のQM−657等が、イソボルニルアクリレートであれば、共栄社化学社製のライトエステルIB−XA等が挙げられる。
【0032】
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的な商品としては、2−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートであれば共栄社化学社製のライトエステルHOB−A等が挙げられる。
【0033】
また、本発明における(メタ)アクリレートとしては、より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
本発明におけるプライマー剤としては、過酸化物との間でラジカルを形成することができるものであれば特に限定されず、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、及び、チタン(Ti)からなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属錯体を含有することが好ましい。
【0035】
本発明における過酸化物としては、プライマー剤との間でラジカルを形成することができるものであれば特に限定されず、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。具体的な商品としては、ジアシルパーオキサイドであれば日油社製のパーロイルL、ナイパーBMT等が、パーオキシエステルであれば日油社製のパーブチルZ、PV、O等が、ハイドロパーオキサイドであれば日油社製のパークミルH、パーオクタH等が挙げられる。
【0036】
本発明によれば、少なくとも遮光部下の樹脂硬化体層を光硬化及び熱硬化のいずれも行うことなく得ることができるので、充分な硬化特性が得られ、かつ従来のような側方からの光照射や加熱を行うことに伴って起こる課題が生じない。
【0037】
本発明の平面板付き表示パネルにおける接着層は、平面板と表示パネルとの間に他の中間部材を配置した場合には、該中間部材と、平面板又は表示パネルとを接着させるものであってもよい。すなわち、本発明の平面板付き表示パネルの例としては、(i)上記接着層は、上記平面板と上記表示パネルとを接着させる樹脂硬化体層である形態、(ii)上記平面板と上記表示パネルとの間には、中間部材が配置され、上記接着層は、上記表示パネルと上記中間部材とを接着させる樹脂硬化体層である形態が挙げられる。なお、中間部材の数は特に限定されない。
【0038】
本発明の平面板付き表示パネルの構成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素により特に限定されるものではない。
【0039】
以下、本発明の平面板付き表示パネルの好ましい形態について詳述する。
【0040】
上記樹脂硬化体層のうち、上記平面板の透光部と重なる部位は、上記反応性成分と、光重合開始剤とを反応材料とする重合から形成されたものであることが好ましい。光重合開始剤を用いた光重合によれば、高い透過率をもつ樹脂硬化体層が得られ、表示パネルの視認性が良好になる。また、光重合開始剤を用いた光重合によれば、熱重合と違い、常温で重合反応を行うことができるとともに、接着剤よりもはるかに短時間(数分〜数時間)で接着を行うことができ、タクトタイムの点で有利である。本発明においては、遮光部下における重合反応が上述の反応性成分と、過酸化物成分と、プライマー剤とを用いた重合反応で形成されればよいので、透過部においては、より反応性、視認性の点で優れた本形態が平面板付き表示パネルへの適用として優れている。
【0041】
上記樹脂硬化体層は、実質的に、上記反応性成分と、上記過酸化物成分と、上記プライマー剤とを反応材料とする重合のみから形成されたものであることが好ましい。特に製造時間に制限がない場合、遮光部の面積が透光部の面積に比べてはるかに大きい等、光重合を行うことが不適切な条件である場合等には、このような形態としてもよい。
【0042】
上記樹脂硬化体層の25℃における貯蔵剛性率は、1.1kPa以上であることが好ましい。硬化後の樹脂硬化体層の貯蔵剛性率が1.1kPa未満である場合、流動性が見られ、充分に固定機能が果たせないおそれがあり、表示ムラが起こる可能性がある。そのため、本条件を満たすことが信頼性の観点から好ましい。
【0043】
上記表示パネルは、一対の基板と、上記一対の基板で挟持された液晶層とを備える液晶表示パネルであることが好ましい。上述したように、遮光部下に未硬化領域が残存している場合、特に液晶表示パネルにおいて表示ムラとなって現れやすい。そのため、本発明は、液晶表示パネルに対して好適に適用される。
【0044】
上記平面板は、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルであることが好ましい。このようなパネルとしては、立体表示を行うためのもの、異なる場所から見たときに違う見え方を実現するためのものが挙げられる。
【0045】
立体表示を行う場合には、表示画面の前面又は裏面にスリット状の遮光部を形成するパネルが配置されることがあり、遮光部をストライプ状に構成することで、一画面で両目に対しそれぞれ異なる複数の画像表示を行うことができ、立体表示が可能となるため、本発明は、このような立体表示パネルに特に好適に用いられる。すなわち、上記平面板は、表示画面の前面又は裏面にスリット状の遮光部を形成する立体表示パネルであることが好ましい。
【0046】
表示パネルの前方にスリットを複数有する遮光部材が配置されることで、上記立体表示パネルが持つスリットと同様、遮光部がストライプ状に構成され、同じパネルであっても見る位置によって異なる画像表示を行うことが可能となる。このような遮光部材は、光を遮り、未露光部を形成することになるため、本発明が好適に用いられる。すなわち、上記平面板は、複数の視点から見たときに異なる表示を実現するパネルであることが好ましい。
【0047】
上記中間部材は、上記平面板の遮光部と重なる領域に遮光部材を有する場合に特に好適に用いられる。このような場合、平面板の遮光部と逆側から光の照射を行ったとしても、その光が遮光部材によって遮られ、未硬化領域が残存してしまう可能性がある。しかしながら、上記反応性成分を用いた方法によれば、光の当たらない領域であっても硬化することが可能となるため、未硬化樹脂が他の領域に流れ込むことを防ぐことができる。このような中間部材の例としては、タッチパネルが挙げられる。タッチパネルは、通常、表示領域(平面板の透光部と重なる領域)外に遮光性の周辺配線及びFPC基板を備える。
【0048】
また、本発明は、このような平面板付き表示パネルを作製することが可能な製造方法でもある。すなわち、本発明の他の一側面は、透光部及び遮光部を含む平面板と、表示パネルと、上記平面板と上記表示パネルとの間に設けられた接着層とを備える平面板付き表示パネルの製造方法であって、上記製造方法は、平面板の遮光部と表示パネルとの間にプライマー剤を配する工程と、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と、過酸化物成分とを含む未硬化樹脂組成物を、平面板と表示パネルとの間、及び、プライマー剤上に配する工程と、上記プライマー剤上に配された未硬化樹脂組成物を硬化させて、接着層となる樹脂硬化体層を形成する工程とを有する平面板付き表示パネルの製造方法でもある。好ましくは、上記反応性成分は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの全てを含むものである。
【0049】
プライマー剤による硬化法によれば、硬化される部分がプライマー剤が塗布された部分近傍に限られるので、熱硬化のような一部の領域のみでの硬化が難しい手法と異なり、硬化させる部分を自由に限定することができる。本発明においては、平面板からの照射では光が届かない領域であっても、プライマー剤によって硬化を進行させることができるので、未硬化領域が残存することを防ぐことができる。そのため、上記樹脂硬化体層のうち、上記平面板の遮光部と重なる部位は、プライマー剤と過酸化物成分とが反応して発生したラジカルによる重合で形成されることが好ましい。
【0050】
また、プライマー剤による硬化法によれば、室温付近で硬化反応を進めさせることが出来るため、熱硬化のように高温にすることにより生じる新たな応力を内包させることなく樹脂組成物を硬化させることができ、応力によるムラの発生を抑制することができる。
【0051】
本発明の平面板付き表示パネルの製造方法を有する製造工程としては、このような製造工程を必須として形成されるものである限り、その他の製造工程により特に限定されるものではない。本発明の製造方法で用いる各反応性成分、過酸化物成分、プライマー剤等の具体例としては、上述の本発明の平面板付き表示パネルにおいて説明したものと同じものを用いることができる。
【0052】
本発明の平面板付き表示パネルの製造方法においても、接着層は、平面板と表示パネルとを貼り合わせるためのものに限らず、平面板と表示パネルとの間に他の中間部材が配置される場合には、表示パネルと中間部材を接着させるものであってもよい。
【0053】
すなわち、本発明の平面板付き表示パネルの製造方法としては、(i)更に、上記平面板と上記表示パネルとを上記未硬化樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、(ii)更に、上記平面板と上記表示パネルとの間に中間部材を配置し、上記接着層は、上記未硬化樹脂組成物を介して上記表示パネルと上記中間部材とを貼り合わせる工程を有していてもよい。
【0054】
以下、本発明の平面板付き表示パネルの製造方法の好ましい形態について詳述する。
【0055】
上記製造方法は、上記プライマー剤上に配された未硬化性樹脂を硬化させる工程の後、更に、上記平面板の透光部を介して光を照射し、上記平面板の透光部と重なる樹脂硬化体層を形成する工程を有することが好ましい。表示パネルにおいて透光部は表示領域を構成するため、表示部の広さは、透過部の広さに比べてはるかに大きく、また、透光部においては短時間で広範囲に、かつ均質に処理を行うことができる光照射が好ましい。これにより、タクトタイムの減少を図ることができる。
【0056】
また、プライマー剤による硬化は光硬化よりも反応が遅いため、光硬化よりもあとで徐々に硬化させることも可能である。したがって、硬化による両樹脂の物性、特に収縮が拮抗しあう両硬化の境界領域において、先に硬化した光硬化領域の収縮後の形状に追従して硬化するので、境界前後の収縮に伴う応力集中を緩和させることが可能となる。
【0057】
上記未硬化樹脂組成物は、光重合開始剤を含み、上記樹脂硬化体層のうち、上記平面板の透光部と重なる部位は、上記光重合開始剤に対して光が照射されて発生したラジカルによる重合で形成されることが好ましい。これにより、迅速でかつ充分な光重合を行うことができる。
【0058】
上記製造方法は、更に、平面板と表示パネルとの間の隙間から光を照射し、上記平面板の遮光部と重なる未硬化樹脂組成物を仮硬化させる工程を有することが好ましい。プライマー剤による硬化は、反応速度が遅いため、仮硬化を行っておくことで、平面板と表示パネルのアライメントズレの発生を防ぐことができる。
【0059】
以上、平面板付き表示パネルの製造方法の好ましい形態について説明してきたが、その他にも、上述した平面板付き表示パネルの好ましい形態を上記製造方法に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0060】
更に、本発明の他の一側面は、透光部及び遮光部を含む基材に対して塗布されることで、上記基材を他の基材と接着させる樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分と過酸化物成分とを含み、プライマー剤との化学反応によって硬化する樹脂組成物でもある。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、遮光部を一部に有する平面板が表示パネルに備え付けられる場合において、遮光部下に位置する硬化性樹脂についても、充分に硬化を進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】実施形態1に係る平面板付き表示パネルの断面模式図である。
図2】実施形態1における平面板と表示パネルとの貼り合わせ部の拡大図である。
図3】実施形態1における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
図4】実施形態1における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
図5】実施形態1における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
図6】反応性成分と、プライマー剤と、過酸化物とを反応成分とする重合反応の様子を示す断面模式図である。
図7】実施形態2に係る平面板付き表示パネルの断面模式図である。
図8】実施形態2における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
図9】実施形態2における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
図10】実施形態2における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
図11】実施形態3に係る平面板付き表示パネルの断面模式図である。
図12】実施形態4に係る平面板付き表示パネルの斜視模式図である。
図13】立体表示パネルを実現する原理を示す模式図である。
図14】異なる場所から見たときに異なる表示を実現する原理を示す模式図である。
図15】立体表示パネルを実現する他の例の表示の原理を示す模式図である。
図16】接着強度と時間との関係を示すグラフであり、プライマー濃度の希釈を行っていない場合の結果を示している。
図17】接着強度と時間との関係を示すグラフであり、プライマー濃度を1/10に希釈した場合の結果を示している。
図18】平面板が遮光部を有する場合において、平面板側から光照射を行うときの平面板及び表示パネルの断面模式図であり、光照射を行う前を表している。
図19】平面板が遮光部を有する場合において、平面板側から光照射を行うときの平面板及び表示パネルの断面模式図であり、光照射を行った後を表している。
図20】未硬化樹脂が残ることによりスジムラが生じたときの液晶表示パネルの写真図である。
図21】平面板と液晶表示パネルとの間にタッチパネルを配置した場合に、未硬化樹脂が残っているときの様子を示す断面模式図である。
図22】平面板と液晶表示パネルとの間にタッチパネルを配置したときの平面模式図であり、最前面を表す。
図23】平面板と液晶表示パネルとの間にタッチパネルを配置したときの平面模式図であり、遮光層を取り除いたときの面を表す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0064】
本発明は、遮光部を持つ平面板が表示パネルに備え付けられて作製されたものを対象としており、特に画面サイズは限定されない。また、本発明において平面板は、下記実施形態にあるように一枚の板(例えば、ガラス板、プラスチック板等)のみで構成されている必要はない。一例としては、立体表示を行うために二枚以上の板を貼り合わせたパネルを平面板として用いるものが挙げられる。
【0065】
表示パネルの前面の保護という目的であれば、平面板は表示パネルの前面(表示面側)に配置されることで効果を発揮するが、例えば、上記平面板がスリットを有する立体表示パネルであり、表示パネルが透過性を有していれば、立体表示に使用されるスリットは表示パネルの前面でも後面でもよいため、必ずしも平面板は表示パネルの前面に限定されるものでもない。
【0066】
本発明においては、本発明で規定する接着層を備える限り、平面板と表示パネルとの間に、タッチパネル等の他の中間部材が配置されていてもよい。
【0067】
上述した周辺スジは大型になるほど顕著になる場合も多く、20インチ以上の大型サイズの装置において有用であるので、本発明は、TV、電子看板、駅、空港の案内表示板等のインフォメーションディスプレイ、デジタルサイネージの大型のディスプレイに特に好適に用いられる。また、表示パネルを小型化するほど未硬化樹脂のパネル内への流れ込みによる表示不良の発生の可能性が高くなるため、本発明は、10インチ以下の小型のサイズの装置においても有用であり、例えば、携帯電話、ゲーム機等の小型のディスプレイにも好適に用いられる。
【0068】
本発明が適用されうる表示パネルとしては、液晶表示パネル(LCD:Liquid Crystal Display Panel)、エレクトロルミネセンス表示パネル(EL: Electroluminescence Display Panel)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel)等が挙げられる。
【0069】
実施形態1
実施形態1は、液晶表示パネルの前方に平面板が配置された平面板付き表示パネルである。図1は、実施形態1に係る平面板付き表示パネルの断面模式図である。また、図2は、実施形態1における平面板と表示パネルとの貼り合わせ部の拡大図である。図1に示すように実施形態1では、平面板10が樹脂硬化体層33を介して表示パネル20に貼り付けられている。
【0070】
図2に示すように、表示パネル20は、一対の基板21、22と、該一対の基板21、22間に挟持された液晶層23とを備える。一対の基板21、22のうち、一方の基板はアクティブマトリクス基板21であり、他方の基板は、カラーフィルタ基板22である。アクティブマトリクス基板21は、ガラス基板等の絶縁基板を母体とし、該絶縁基板上に、TFT、画素電極、走査線及び信号線を含む各種配線等、液晶分子の配向を制御するための部材を備える。一方、カラーフィルタ基板22もまた、ガラス基板等の絶縁基板を母体とし、該絶縁基板上に、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、共通電極等の部材を備える。これら一対の基板21、22間には、液晶材料が封入されており、その周囲には封止シール24が配置され、スペーサによって基板間隔が保持されている。一対の基板21、22の外側の各面上には、それぞれ偏光板25が配置されており、表示パネル20に入射する光、及び、入射し、外部に放出される光の透過及び遮断を選択することができる。
【0071】
平面板10は、ガラス、プラスチック等の透明基板11を母体とし、表示パネル20の表面保護機能を果たす。また、透明基板11の表示パネル20側の面上の一部には、光を遮光する黒色の印刷物(遮光層)12が設けられている。平面板10は、透光部1aと遮光部1bとで構成される。遮光層12が配置された領域が遮光部1bを構成し、それ以外の領域が透光部1aを構成する。透光部1aは実質的に表示画面を構成し、表示パネル20によって表される映像を観察者が視認することができる。実施形態1では、遮光層12は表示パネル20の表示領域(透過部)1aに沿って外縁に設けられている。遮光部1bを設けることで、周辺回路等、表示パネル20周辺を構成する各部材を隠すことができ、デザイン性も向上する。
【0072】
樹脂硬化体層33は、(メタ)アクリレートオリゴマー、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも一つの反応性成分を重合反応させて、ポリマー化して形成した層である。好ましくは、これら全ての成分を用いて樹脂硬化体層33を形成する。各成分の重合前の混合比の例としては、(メタ)アクリレートオリゴマーを30〜50質量部、ビシクロ環を有する(メタ)アクリレートモノマーを30〜50質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを10〜30質量部含むものが挙げられる。平面板10と表示パネル20との間に上記反応性成分を含む樹脂組成物を塗布し、一定の重合反応を生じさせることで、樹脂硬化体層33は、平面板と表示パネルとを接着させる接着層として機能する。(メタ)アクリレートを用いることで、ポリマー化したときに高い光透過性を有し、かつガラスと屈折率を一致させやすい。
【0073】
透光部1a下に位置する樹脂硬化体層33aについては、平面板10側からの光照射によって光重合開始剤がラジカルを発生し、上記反応性成分の重合を進行させるラジカル重合反応によって形成されている。一方、遮光部1b下に位置する樹脂硬化体層33bについては、プライマー剤と過酸化物とを反応させてラジカルを発生させ、上記反応性成分の重合を進行させるラジカル重合反応によって形成されている。上記樹脂組成物中の、ラジカル形成前の過酸化物の存在比の例としては、上記樹脂組成物全体を100質量%としたときに、0.5〜5質量%とする場合が挙げられる。遮光部1bにおいては光の照射ができないので、このような方法により、平面板10に遮光部1bを設けたときであっても、未硬化領域を残すことなく、充分に重合反応を進行させることができる。また、光照射によるラジカル重合、及び、プライマー剤と過酸化物とを用いたラジカル重合によれば、急激な硬化収縮も起こらないため、製造される平面板付き表示パネルに寸法の変動が生まれず、高い信頼性が得られる。
【0074】
特に、実施形態1によれば、液晶表示パネルを構成する基板として、薄型、かつ大型のガラス基板を用いたときであっても、該ガラス基板に撓みが発生して端面に波打ちが生じ、その結果、液晶層23間の間隔が変動し、表示パネルの外縁に表示ムラを生じさせるといったことがないので、優れた表示特性を得ることができる。また、透光部1a下は光重合によってポリマー化した樹脂硬化体層で構成されているので、優れた透過率が得られる。
【0075】
なお、平面板10の厚みとしては、0.5〜3mmであることが好適である。また、遮光層12の厚みとしては、20μmが好適である。遮光層12の横幅としては、パネルのサイズによっても異なるが、5〜30mmとすることが好適である。なお、遮光層12の横幅が1mm以上であると、側方から光照射を行ったとしても全体に光が行き渡らない。樹脂硬化体層の厚みとしては、50〜150μmとすることが好適である。液晶表示パネルを構成する一対の基板のそれぞれの絶縁基板(ガラス基板等)の厚みは、0.5〜1.1mmとすることが好適である。なお、これらの数値は一例であり、特に限定されるものではない。
【0076】
以下、実施形態1における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程について、詳述する。図3図5は、実施形態1における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
【0077】
まず、図3に示すように、表示パネル20と、一部に遮光層12を有する平面板10とを用意する。遮光層12の表示パネル20側の面上には、プライマー剤13があらかじめ塗布されている。プライマー剤13の材料としては、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、チタン(Ti)等を含む金属錯体が挙げられる。
【0078】
次に、図4に示すように、表示パネル20の末端と平面板10の遮光層12とが重なるようにそれぞれ位置合わせを行い、これらの間に上記反応性成分31及び過酸化成分32を含む樹脂組成物30を配置し、平面板10と表示パネル20とを重ね合わせる。なお、これらを貼り合わせた時点でプライマー剤13は樹脂組成物30内に拡散し、過酸化物32と反応を起こしてラジカルを生成するので、平面板10と表示パネル20との貼り合わせの時点から、遮光部12における重合反応は進行する。なお、平面板10の透光部1a下においては、プライマー剤は塗布されていないため、樹脂組成物30が硬化する範囲は、遮光部1b下付近のプライマー剤13が拡散できる範囲に限られる。
【0079】
また、図4に示すように、平面板10と表示パネル20とを貼り合わせると同時に、平面板10と表示パネル20との貼り合わせた部分の側方から、光を露光する。この露光は平面板10と表示パネル20とのアライメントズレを抑える仮硬化のための露光であり、端面付近のみが固まればよく、短時間の照射で充分である。したがって、これによって遮光膜12下の樹脂部が全て硬化するわけではない。
【0080】
次に、図5に示すように、透明基板11側から平面板10全体に光を一括露光する。これが本硬化であり、平面板10の透光部を通り抜けた光は、樹脂組成物30に照射されて光重合が開始し、硬化が進行する。なお、平面板10の遮光部12では光が遮断されるため、遮光部12下の樹脂組成物30は、光照射による重合は進行しない。
【0081】
こうして、平面板10の透光部1a下及び遮光部1b下のいずれにも未硬化領域が残存しない樹脂硬化体層33を作製することができる。
【0082】
以下、上記工程における重合のメカニズムについて詳述する。図6は、反応性成分と、プライマー剤と、過酸化物とを反応成分とする重合反応の様子を示す断面模式図である。
【0083】
図6に示すように、プライマー剤13が塗布された部分に対して樹脂組成物30が接触すると、プライマー剤13が樹脂組成物30中に拡散し始める(図中の小矢印方向)。そして、拡散したプライマー剤13は、樹脂組成物30中の過酸化物32と反応し、ラジカルを発生する。このラジカルが樹脂組成物30中の反応性成分31の重合反応を開始させる。プライマー剤13を遮光部1b下に塗布することで、遮光部1b下は硬化するが、遮光部1b下から外れる部分は、プライマー剤13が届かないため反応が進行しない。
【0084】
一方、図6に示すように、樹脂組成物13中には光重合開始剤34が含まれており、光の照射により、光重合開始剤34はラジカルを発生させ、周囲の反応性成分31の重合反応を開始させる。このように、透光部1a下においては、光を照射することで光重合が進行するが、遮光部1b下においては、光が行き届かないため、光照射による重合は進行しない。
【0085】
なお、このような原理上、樹脂硬化体層のうち、透光部1a下に位置する樹脂硬化体層中の光重合開始剤の濃度は、遮光部1b下に位置する樹脂硬化体層の光重合開始剤の濃度よりも低く、透光部1a下に位置する樹脂硬化体層中のプライマー剤の濃度は、遮光部1b下に位置する樹脂硬化体層のプライマー剤の濃度よりも低くなる。
【0086】
実施形態2
実施形態2は、液晶表示パネルの前方に平面板が配置された平面板付き表示パネルである。図7は、実施形態2に係る平面板付き表示パネルの断面模式図である。図7に示すように、平面板10が、樹脂硬化体層33を介して表示パネル20に貼り付けられている。
【0087】
実施形態2に係る平面板付き表示パネルは、実施形態1と製造方法が異なっているため、樹脂硬化体層中に残存する成分等の点では実施形態1と相違しているが、その基本構成は同じであり、平面板の透光部1a下及び遮光部1b下に関わらず樹脂硬化体層33に未硬化領域が残存していない点や、熱処理等、複雑な工程を行う必要がないという点では、実施形態1と同様である。
【0088】
以下、実施形態2における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程について、詳述する。図8図10は、実施形態2における平面板と表示パネルとの貼り合わせ工程の各段階を示す断面模式図である。
【0089】
まず、図8に示すように、表示パネル20と、一部に遮光層12を有する平面板10とを用意する。実施形態2では、遮光部1bを構成する領域のみならず透光部1aを構成する領域においても、平面板10の表示パネル側の表面の全体にプライマー剤13があらかじめ塗布されている。プライマー剤13の材料としては、実施形態1と同様のものを用いることができる。
【0090】
次に、図9に示すように、表示パネル20の末端と平面板10の遮光層12とが重なるようにそれぞれ位置合わせを行い、これらの間に反応性成分31及び過酸化物成分32を含む樹脂組成物30を配置し、平面板10と表示パネル20とを重ね合わせる。なお、これらを貼り合わせた時点でプライマー剤13は樹脂組成物30内に分散し、過酸化物32と反応を起こしてラジカルを生成するので、平面板10と表示パネル20との貼り合わせの時点から、重合反応は進行する。
【0091】
また、図9に示すように、平面板10と表示パネル20とを貼り合わせると同時に、平面板10と表示パネル20との貼り合わせた部分の側方から、光を露光する。この露光は平面板10と表示パネル20とのアライメントズレを抑える仮硬化のための露光であり、端面付近のみが固まればよく、短時間の照射で充分である。
【0092】
次に、図10に示すように、一定時間放置を行うことで、平面板10の透光部1a下及び遮光部1b下のいずれにも未硬化領域が残存しない樹脂硬化体層33を作製することができる。なお、実施形態2によれば、実施形態1の場合と比べて反応速度の進行は遅いものの、光重合及び熱重合等を別に行う必要がなく、常温での処理が可能である。
【0093】
以上、実施形態1と実施形態2とについて説明を行ったが、これらは適宜組み合わせて用いることができる。すなわち、遮光部下の樹脂組成物に対する硬化は、プライマー剤等を用いた重合を用いる点では共通しているが、透光部下の樹脂組成物に対する硬化については、一部の領域において光重合を利用し、他の一部の領域については、プライマー剤等を用いた重合を利用するといった方法を採用してもよい。
【0094】
実施形態3
実施形態3は、タッチパネル方式の平面板付き表示パネルである。図11は、実施形態3に係る平面板付き表示パネルの断面模式図である。図11に示すように、平面板10と液晶表示パネル20との間には、タッチパネル(中間部材)40が配置されている。タッチパネル40は、樹脂硬化体層33を介して液晶表示パネル20と接着されている。樹脂硬化体層33は、実施形態1又は2と同様の方法を用いて作製することができる。
【0095】
図11に示す例では、実施形態1と同様の方法で樹脂組成物を硬化させたものが示されている。すなわち、透光部1a下に位置する樹脂硬化体層33aについては、平面板10側からの光照射によって光重合開始剤がラジカルを発生し、各反応性成分の重合を進行させるラジカル重合反応によって形成されている。一方、遮光部1b下に位置する樹脂硬化体層33bについては、プライマー剤と過酸化物とを反応させてラジカルを発生させ、各反応性成分の重合を進行させるラジカル重合反応によって形成されている。
【0096】
平面板の遮光部は、該遮光部と重なる領域全体の光を遮断するため、実施形態3を採用しない場合、タッチパネルと液晶表示パネルとの間において未硬化樹脂が残存し、これらの接着に影響を及ぼしうる。
【0097】
実施形態3により、未硬化樹脂が残存しなくなるので、未硬化樹脂が液晶表示パネル20とバックライトユニット51との間、又は、バックライトユニット51の内部に流れ込むことを防止することができる。また、タッチパネル操作をする際に、指の押圧によって表示領域の周辺に未硬化樹脂が浸透し、表示領域の周囲にスジムラが発生してしまうことを防止することができる。
【0098】
実施形態4
実施形態4は、表示パネルの前方に、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルが配置された平面板付き表示パネルである。図12は、実施形態4に係る平面板付き表示パネルの斜視模式図である。図12に示すように、表示パネル70の前方に配置された平面板上に黒色の印刷膜(遮光層)62が配置されており、遮光層62には縦方向の複数のスリットが形成されている。これにより遮光層62は、外周部と複数の縦格子部とを構成要素として有している。各縦格子部同士の間隙は、スリットではなく透明な部材が配置されていてもよい。表示パネル70は、表示領域91と周辺領域92とを有し、表示領域91内には、多数の細かいカラーフィルタ72が画素ごとに設けられている。カラーフィルタ72の色配置としては、一方向に同色が並ぶストライプ配列であり、赤(R)72R、緑(G)72G及び青(B)72Bの3色が用いられている。なお、実施形態4においてカラーフィルタの色の種類、数及び並び方は特に限定されない。
【0099】
図13は、立体表示を実現する原理を示す模式図である。図14は、異なる場所から見たときに異なる表示を実現する原理を示す模式図である。
【0100】
図13及び図14に示すように、平面板60は、透明基板61と遮光層62とで構成されており、遮光層62は透明基板61の表示パネル側の面上に配置されている。図14において表示パネル70は、一対の透明基板71と該一対の透明基板71の間に位置する液晶層とを備える液晶表示パネルである。図13及び図14に示すように、遮光層62は、断面的に見たときにはそれぞれ間隔を空けて点在的に配置される。なお、カラーフィルタ72は、一対の透明基板71の間に配置されるが、液晶層よりも前面側に配置されるか背面側に配置されるかは、特に限定されない。
【0101】
本明細書における「表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネル」とは、表示パネルに対し、図13及び図14に示すように、ある一方向からは表示パネルの一部の画素が視認できるが、他のある一方向からは上記一部の画素が視認することができなくするパネルをいい、スリット状に遮光部を配置した平面板をパネルの前面又は裏面に設置することで用いられる。例えば、立体表示を行うためのパネル、異なる場所から表示パネルを見たときに異なる画像が視認されるタイプのパネル(一部ではデュアルビューパネルとも呼ばれている。)がこれに属する。
【0102】
立体視を可能とするためには、少なくとも2視点、つまり輻輳角をもって見た右目用の画素(R画素)による画像と左目用の画素(L画素)による画像とを、それぞれの目が認識できるように設計することが必要となる。右目用の画像を左目で見る、又は、左目用の画像を右目で見ると、画像が2重像として確認されるため、そのようにならないように各画素をそれぞれの目が区別して視認できるようにする役割を果たしているのが、立体表示パネルの遮光層及びスリットである。
【0103】
図13は、各目に各画素から出た光がどのように届くかを示しており、一方の目に届く画像は、もう一方の目には届かないような構成となっている。図13中、Rで示した画素が右目用の画素であり、Lで示した画素が左目用の画素である。また、横並びに点在的に位置するものが縦格子状の遮光部である。立体表示を行う際には、左右の目の距離を考慮しつつ、右目用及び左目用のそれぞれの画像をそれぞれの目が確認できるようにスリット及び遮光層62が配置される。この場合のスリットのピッチは略画素幅の2倍であり、遮光層62の横幅は、画素の横幅に対して100〜150%である。なお、一般的な人間の両目の間隔は、約60mmであると仮定することができる。
【0104】
一方、図14のように、両目の間隔を広げることと同じ要領でスリットの設計を工夫することで、別の位置から見たときにそれぞれ異なる画像を観察できるディスプレイを作ることもできる。図14に示すように、第一の画像を構成する第一の画素(図14中、「1」で示した画素)と、第二の画像を構成する第二の画素(図14中、「2」で示した画素)とを設け、スリット及び/又は遮光部の間隔を調節することで、ディスプレイの前方にそれぞれのいずれかを観察することが可能な位置を制御することが可能である。このようなタイプの表示形式も、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルの一つである。この場合のスリットのピッチは略画素幅の2倍であり、遮光層62の横幅は、画素の横幅に対して160〜180%である。
【0105】
図14に示す例では、立体表示と異なり第一の画素及び第二の画素を観察者の別々の目が視認する必要はない。観察者は両目で同じ画素を見ることになるため、最適観察位置から第一の画素又は第二の画素の画素群で形成されるいずれかの画像を観察することになる。
【0106】
上記「表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネル」の位置は、例えば、透過型の液晶表示パネルを使うのであれば、原理上、表示パネルの前方に配置されても後方に配置されても構わない。実施形態4では二つの視点の例について述べたが、同様の原理を満たす限り、二以上の視点をもつものであってもよい。
【0107】
実施形態4において上記複数視点の画素を持つ表示パネルの前方(又は後方)に配置されたパネルにおける遮光層及びスリットは、見る位置によって、ある画素からの光の透過又は遮断を制御する役目を果たしている。実施形態4では、このような遮光層を持つパネルは、本発明における樹脂組成物を用いて表示パネルに対して貼り合わされる。このような用途の遮光層は、設計によっては、画素幅の50%〜80%近くを占める場合があり、遮光層と重なる領域においては、表示パネルの前方(又は後方)から光を照射しても光が上記遮光層によって遮られることになるため、樹脂組成物全体のうちの上記割合分は未硬化の樹脂となってしまう。
【0108】
また、図14に示すように、表示パネルに対し一画面で複数の画像表示を行わせるパネルの場合、格子部分の外周が幅の広い遮光部分によって構成される場合があるため、光によって樹脂が硬化する領域は、TVの平面板に用いられる場合と比較して、著しく小さくなりやすい。そのため、場合によっては平面板を保持する接着強度が得られない場合も起こりうる。このような遮光部を有する平面板を、表示パネル又はその他の中間部材に貼り合わせる場合、遮光部下にあらかじめプライマー剤を塗布又は印刷したのち、実施形態1のようにスリットの位置合わせを行い、樹脂組成物の周囲(側面)を光によって仮硬化し、最後に表示領域の全面を平面板側から光照射することで、樹脂組成物の全体を硬化させて、平面板と、表示パネル又はその他の中間部材とを貼り合せることができる。
【0109】
このような場合、遮光部下に塗布されたプライマー剤によって、遮光部で隠される樹脂組成物は硬化されることになるが、例えば、40インチハイビジョンTVで立体表示を行う場合では、画素ピッチが153μm程度となるため、スリット幅は76〜120μm程度、本数は5760となる。したがってこのような例では、格子部毎にプライマー剤を塗布するのは困難である。マスク等を利用して印刷で塗布してもよいが、マスクの位置合わせ等の工程を経る必要がある。このような例では、スリット部分を含む平面板の全面にプライマー剤を塗布し、貼り合わせ後硬化前に位置合わせを実施してもよい。このときはあらかじめ、プライマー濃度と、過酸化物濃度とを調整し、硬化時間を調整することが好ましい。また、平面板の全面にプライマー剤を塗布した場合では、必ずしも光照射は必要ではなくなるが、光吸収剤がその吸収波長帯域によって樹脂中に分散された場合、樹脂に色がつくことがあるため、光透過性を上げる意味でプライマー剤が塗布された位置に重ねて光照射をしてもよい。
【0110】
図15は、立体表示パネルを実現する他の例の表示の原理を示す模式図である。図15において立体表示パネル80は、一対の透明基板81と該一対の透明基板81の間に位置する液晶層を備える液晶表示パネルである。一対の透明基板81間に配置された液晶層は、シール84によって封止されている。また、一対の透明基板81の間には遮光層82が配置されており、該遮光層82は断面的に見たときにはそれぞれ間隔を空けるように点在的に配置される。
【0111】
立体表示ディスプレイにおいては、立体表示を行うために図15に示すように液晶表示パネル80が配置されることがある。この場合、スリット状に透光部と遮光部とが現れるように光の調節を行うことで、立体表示を表現する。この場合、表示領域に実際に遮光層を配置するわけではないため、立体表示を行うように光が調節されていないときに樹脂組成物を硬化させることで、対応すればよい。ところが、立体表示を行うために液晶表示パネル80を利用した場合、液晶表示パネル80を構成する一対の透明基板81を接着するためのシール84が不透明であることがあるため、周辺部においては、遮光部が形成される。このような場合でも、本発明により、シール84下の遮光される部分にプライマー剤を塗布することによって、影となる部分の硬化が可能である。なお、このような立体表示ディスプレイとしては、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC等のモバイル機器に多く、画像表示用の液晶表示パネル(表示装置)70とスリット表示(立体表示)用の液晶表示パネル(平面板)80とが、互いに貼り合わされる。上記立体表示用の液晶表示パネル80は、画像表示用の液晶表示パネル70の前方及び後方のいずれに配置されても構わない。なお、上記のような液晶表示パネルを利用した立体表示により、裸眼で立体表示を観察することができるようになる。
【0112】
更に、そのような平面板としては、立体表示用の液晶表示パネルばかりでなく、タッチパネルのような機能的デバイスであってもよい。また、画像表示用の液晶表示パネルと立体表示用の液晶表示パネルとの間に、実施形態3で示したようにタッチパネルを配置してもよい。このように、遮光部を含むもので、その遮光部下が影となって光硬化できないものとなりうるものに対して、本発明を用いた樹脂による貼り合わせ方法は有用に活用される。
【0113】
評価試験
実施形態1における樹脂硬化体層について、実際に実施形態1の方法(光硬化及びプライマー剤硬化の併用)を用いて作製した各サンプルの成分及び特性について以下に説明する。下記表1は、実施例1〜実施例7で用いたサンプルの配合パターンを示している。また、下記表2は、実施例1〜実施例7及び比較例の各サンプルの成分及び特性を示している。
【0114】
【表1】
【0115】
上記表1において、「%」は全て、樹脂組成物全体を100質量%としたときの質量%を表す。また、オリゴマー、モノマーA、モノマーB、モノマーC、過酸化物A、過酸化物B、及び、光重合開始剤の各数値は、それぞれの質量部を表す。
【0116】
上記表1において、オリゴマーは、イソプレンメタアクリレートオリゴマー(クラレ社製UC−1)、モノマーAは、ジシクロペンテニルオキシメタクリレート(ローム&ハース社製QM−657)、モノマーBは、2−ヒドロキシルブチルメタクリレート(共栄社化学社製ライトエステルHOB)、モノマーCは、イソボルニルメタクリレート(新中村化学社製NKエステルIB)、非反応成分は、ポリブタジエン可塑剤(デグサ社製Poly Oil 110)、過酸化物Aは、Cumene hydroperoxyde(日本化薬社製カヤクメンH)、過酸化物Bは、tert Butyl peroxy−2−ethylhexanoate(日油社製パーブチルO)、光開始剤は、1−Hydroxycyclohexylohexylphenylketone(BASF社製イルガキュア184)、添加剤は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製KBM−503)である。
【0117】
【表2】
【0118】
上記表2において、プライマー剤に含まれる成分は五酸化バナジウム錯体である。プライマー濃度1/1とは未希釈のプライマー剤のことを指し、プライマー成分(五酸化バナジウム錯体)濃度が全体に対して3質量%であるプライマー剤(東亜合成社製AT QUICKA VE3)を意味する。プライマー濃度1/2とは未希釈のプライマー剤を2倍に希釈したものを指し、プライマー成分濃度が全体に対して1.5質量%であるプライマー剤を意味する。プライマー濃度1/10とは未希釈のプライマー剤を10倍に希釈したものを指し、プライマー成分濃度が全体に対して0.3質量%であるプライマー剤を意味する。ここでは、希釈溶媒としてエタノールを用いた。
【0119】
上記表1に示される条件の配合例を使用する場合には、上記表2からわかるように、実施形態1における製造方法を用いれば、良好な樹脂硬化体層を得ることができた。一方で、プライマー剤を用いず、平面板側からの光照射のみで製造を行った場合(比較例)には、充分な硬化性が得られず、良好な樹脂硬化体層を得ることができなかった。
【0120】
図16及び図17は、接着強度と時間との関係を示すグラフであり、図16がプライマー濃度の希釈を行っていない場合の結果を示し、図17がプライマー濃度を1/10に希釈した場合の結果を示している。なお、図16及び図17のグラフは、それぞれ下記表3及び表5に示すデータに基づいている。また、表4及び表6は、過酸化物の反応率と時間との関係を示す表である。表4は、プライマー濃度の希釈を行っていない場合の結果を示し、表6は、プライマー濃度を1/10に希釈した場合の結果を示している。なお、表3〜6、並びに、図16及び17において、過酸化物の「%」は、樹脂組成物全体を100質量%としたときの質量%を表す。
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
表3及び表4に示すように、過酸化物に対する接着強度の変化については、過酸化物濃度が0.3質量%以上であるときに、3時間で接着強度がほぼ飽和している。また、表3及び表4からは、過酸化物濃度が1.0質量%であるときに接着強度が最も高く、最適値であることがわかる。これは、プライマー剤の拡散と関連しており、過酸化物が少ないとき、具体的には、0.1質量%以下であるときには、プライマー剤が拡散したとしても、過酸化物が不足しており、重合反応が充分に進行していないと考えられる。一方、過酸化物が多いとき、具体的には、2.5質量%以上であるときには、過酸化物が過剰に存在しているため、プライマー剤が充分拡散するまでに重合反応が進み、拡散初期段階でプライマー剤を使いすぎてしまった結果、広く拡散したプライマー剤が相対的に少なくなってしまったと考えられる。なお、ここでは接着強度が4N/mm以上であれば、良好な接着機能を果たしていると判断している。
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
表5及び表6に示すように、プライマー濃度を1/10に希釈した場合には、未希釈の場合と比べて接着強度が低い。反応率としては、過酸化物濃度が1.0質量%以上で6時間後に90%を超え、12時間では0.3質量%以上で90%以上であったことから、反応が不充分であったというわけではなく、ゆっくり重合した方が接着強度は低くなると考えられる。
【0127】
表3及び表4の検討結果もあわせて検討すると、プライマー濃度及び過酸化物濃度と、接着強度との立ち上がりには関連性があり、接着強度の立ち上がりに適した組合せがあることがわかる。未希釈では、過酸化物濃度が0.3質量%以上であれば3時間で充分な接着強度が得られる。実際の工程を想定したときに、貼り合わせ後のアライメントの時間、アライメント工程までの待ち時間、アライメント後にリワークが必要であるとわかったときの剥離の必要性等を考慮すると、実用上の接着強度に達するのは3時間後程度であることが好ましい。
【0128】
このことから、プライマー濃度の希釈を行わない場合は、過酸化物濃度2.5質量%の条件はむしろ硬化が早く、リワークができない可能性が出てくる。
【0129】
一方、プライマー濃度が薄い場合、具体的には、プライマー濃度を1/10に希釈したときには、過酸化物濃度を0.3〜0.5質量%に調整することが必要であり、この範囲の濃度以外では充分な接着濃度を得るには時間がかかりすぎ、製造工程での採用は難しい。
【0130】
プライマー剤の塗布方法としては、刷毛塗り、ディスペンサの使用、印刷等が考えられるが、塗布濃度は必ずしも均一になるとは限らないので、過酸化物濃度は0.3〜1.5質量%であることが好ましく、1/10まで希釈されることを考慮すると、0.3〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0131】
なお、本願は、2011年1月18日に出願された日本国特許出願2011−008175号を基礎として、パリ条約ないし移行する国における法規に基づく優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。
【符号の説明】
【0132】
1a、101a:透光部
1b、101b:遮光部
10、110:平面板
11、61、71、81、111:透明基板
12、62、82、112:遮光層
13:プライマー剤
20、70、80、120:(液晶)表示パネル
21、121:基板(アクティブマトリクス基板)
22、122:基板(カラーフィルタ基板)
23、123:液晶層
24、84、124:(封止)シール
25、125:偏光板
30:樹脂組成物
31:反応性成分
32:過酸化物
33:樹脂硬化体層
33a:樹脂硬化体層(光照射由来)
33b:樹脂硬化体層(プライマー剤由来)
33c:樹脂硬化体層(光照射由来)
34:光重合開始剤
40、140:タッチパネル
41、141:透明基板
42、142:周辺配線
43、143:FPC基板
51、151:バックライトユニット
72:カラーフィルタ
72R:カラーフィルタ(赤)
72G:カラーフィルタ(緑)
72B:カラーフィルタ(青)
91:表示領域
92:周辺領域
116:未硬化領域
133:樹脂硬化体層
171:光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図21
図22
図23
図20