(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異なる標的エピトープを有する少なくとも2つの別個の単一ポリペプチド鎖結合タンパク質を発現し、かつ該標的エピトープのうちの少なくとも1つを含む分子の機能に拮抗することのできる細胞を生成する工程であって、前記細胞ライブラリーを該異なる標的エピトープと接触させる工程、および該標的エピトープを認識する結合タンパク質を発現する細胞をスクリーニングかつ選択する工程、および拮抗活性を測定するバイオアッセイを実施する工程を含む、工程
を含む、請求項1記載の方法。
異なる標的エピトープを有する少なくとも2つの別個の単一ポリペプチド鎖結合タンパク質を発現し、かつ該標的エピトープのうちの少なくとも1つを含む分子の機能を活性化できる細胞を生成する工程であって、前記細胞ライブラリーを該異なる標的エピトープと接触させる工程、および該標的エピトープを認識する結合タンパク質を発現する細胞をスクリーニングかつ選択する工程、および活性化活性を測定するバイオアッセイを実施する工程を含む、工程
を含む、請求項1記載の方法。
異なる標的エピトープを有する少なくとも2つの別個の単一ポリペプチド鎖結合タンパク質を含む組成物を作製するための方法であって、結合が対をなさない単一タンパク質ドメインによって媒介され、該工程が、1つの細胞において該結合タンパク質をコードする少なくとも2つの核酸配列を発現させる工程を含み、該核酸配列は、結果として生じる結合タンパク質を同一精製方法によって精製できるように、互いに少なくとも70%相同であり、該核酸配列が、分泌シグナルまたは結果として生じる結合タンパク質を細胞膜に局在化させ且つ固定するためのコード配列を含む、方法。
請求項18〜25のいずれか一項記載の方法によって得ることができる、異なる標的エピトープを有する少なくとも2つの別個の単一ポリペプチド鎖結合タンパク質を含む、組成物。
異なる標的エピトープを有する少なくとも2つの別個の単一ポリペプチド鎖結合タンパク質を含む組成物を作製するための方法であって、結合が対をなさない単一タンパク質ドメインによって媒介され、請求項28記載の細胞を培養する工程、異なる標的エピトープを有する該少なくとも2つの別個の単一ポリペプチド鎖結合タンパク質を該細胞が発現するのを可能にする工程、および異なる標的エピトープを有する該少なくとも2つの別個の単一ポリペプチド鎖結合タンパク質を収集する工程を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の「詳細な説明」では、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
詳細な説明
1. 背景
1.1. 抗体
感染に対する戦いにおいて、免疫系は感染因子と特異的に闘うことができるように細胞性および体液性応答を作り出す。体液性免疫応答は、感染を取り除くために抗原に接触して所定のエフェクター機能を媒介する免疫グロブリン、または抗体に基づいている(Roit, I.M. et al.(1985)および本明細書に記載した全ての参考文献)。免疫系では、抗体はBリンパ球によって生成される。抗体は、多価分子を形成するためにドメイン間対合および鎖間ジスルフィド結合を介して組み立てられた重鎖および軽鎖からなる。IgG(ヒトでは4つのサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)、IgM、IgD、IgAおよびIgEを含む天然抗体の様々なアイソタイプが存在する。IgG分子は、どちらも可変(V)および定常(C)領域を備える2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含有する。典型的なIgG抗体は、2つの重(H)鎖可変(本明細書ではVHと略記する)領域、および2本の軽(L)鎖可変(本明細書ではVLと略記する)領域を含む。VHおよびVL領域はさらに、より保存されている「フレームワーク領域」(FR)と称する領域が差し込まれている「相補性決定領域」(「CDR」)と称する高可変性の領域にさらに分割できる。フレームワーク領域およびCDRの程度については精密に定義されている(参照により本明細書に組み入れられるKabat, E.A., et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242, and(Chothia, C. et al.(1987)J. Mol. Biol. 196:901-917)参照)。
【0035】
一次免疫応答の生成においては、抗体の重鎖および軽鎖可変領域配列の対合は無作為のプロセスである。可変領域遺伝子は最初に、多様な遺伝子プールとしてゲノム内に表示された1セットの無作為に取り出されたV、(D)およびJの遺伝要素を組み換えることによって組み立てられる。次に組み換えられた重鎖および軽鎖可変領域はそれらの各定常領域遺伝子に向かってスプライシングされ、これらの鎖は発現され、組み立てられ、そして免疫グロブリンとして分泌される。このコンビナトリアルライブラリーでは、基本的に、各重鎖は各軽鎖と対合して、再配列プロセス(一部のセグメント接合部でいっそうの多様性をさらに導入する)ならびに重鎖および軽鎖可変領域のコンビナトリアルアセンブリーに由来する多様性を備える極めて広範囲の異なる抗原特異性を作り出す。基本的に、B細胞は、1つの抗体重鎖配列および1つの抗体軽鎖配列によってコードされた1つの抗体特異性しか産生しない。免疫系は、効率的な抗原選択プロセスを介して、特にその抗原が異種であって病原体の一部である場合には、所与の抗原へ結合できる抗体を選択する。
【0036】
天然免疫グロブリンでは、2つのドメインからなる軽鎖は、少なくとも4つのドメインおよび1つのヒンジ領域からなる重鎖と対合する。VHとVLの間、およびCH1とCLの間では非共有相互作用が発生する;後者の間ではジスルフィド架橋が重鎖と軽鎖の共有結合を提供する。さらに、重鎖は相互に、つまりIgG様式で対合することが見いだされており、そしてときどきはJ鎖などの追加のエレメントと(すなわちIgM様式で)さらに結合する。強力な非共有的相互作用はCLおよびCH1ドメイン間で発生し、しばしばこれより弱い相互作用がVLおよびVHの間で存在する。重鎖はヒンジ領域(しばしは一つまたは複数のジスルフィド架橋を介して共有結合している)内ならびにCH2およびCH3ドメイン間で相互作用を介して対合する。
【0037】
1つのB細胞中では、典型的そして通常は1本の軽鎖および1本の重鎖しか発現しないが、他の軽鎖または重鎖が発現する数少ない例では(2つの融合B細胞中のように)、鎖間の誤対合が発生し、抗体調製物のこの分画内では抗原結合が消失する。例えば、従来は、複数の抗体可変ドメインの発現は、クアドローマ(quadroma)または複数の重鎖および/または軽鎖遺伝子を用いてトランスフェクトした細胞中におけるように、典型的には機能的ではない可変領域の対合の大きな分画を産生した。
【0038】
1.2. 治療用MoAb
最新技術の抗体工学技術は、特異性、親和性および定常領域媒介性エフェクター機構に関して「テーラーメイド」抗体の生成を可能にする。その数が増加し続けている承認されたMoAb(モノクローナル抗体)の強力な売り上げの増大はそれらが成功した証拠である。2000年には、ヒトまたはヒト化抗体の総売上高は20億ドルを超え、2005年までに60億ドルを超えると予想されている。癌、自己免疫疾患、臓器移植拒絶および抗ウイルス予防療法を含む様々な疾患を治療するために登録された13種のMoAbを用いて、推定200種の抗体製剤が様々な相で臨床試験中であり、そしておよそ470種の追加の抗体が前臨床試験において開発中であり、MoAbは2002年における新薬の最重要カテゴリーでもあった。例えば、多数の単一特異性抗体がヒト治療薬として承認されている。これらには、CD3抗原を標的とするOrthoclone OKT3;GPIIb/IIIaを標的とするReoPro;CD20を標的とするリツキサン;インターロイキン-2受容体を標的とするゼナパックス(Zenapax)およびシムレクト(Simulect);HER2-受容体を標的とするハーセプチン(Herceptin);腫瘍壊死因子を標的とするレミケード(Remicade);RS(呼吸器合胞体)ウィルスのFタンパク質を標的とするシナジス(Synagis);CD33を標的とするマイロターグ(Mylotarg);ならびにCD52を標的とするキャンパス(Campath)(例えば、Carter(2001)Nature Reviews 1:118-129;Ezzell(2001)Scientific American Oct. 2001, pages 36-41;Garber(2001)Nat.Biotechnol. 19:184-185参照)。
【0039】
最新世代の組み換えヒトMoAbは改良された臨床的作用を達成するためにいっそうの最適化を必要とするという考えは、例えば腫瘍細胞へ高度に毒性の化合物を送達するために抗体の特異性を活用する抗体コンジュゲート:薬物に結合した抗体、毒素もしくは放射性核種の開発を加速してきた。それらの改良された効力にもかかわらず、コンジュゲートした抗体は「裸の」抗体よりはるかに毒性であり、それらの適用可能性を制限してそれらの費用を増大させるより複雑な製造プロセスを必要とする。さらに、コンジュゲートした抗体は、標的細胞を死滅させることが所望の作用機序ではない場合にはMoAbの有効性の欠如に対処できない。
【0040】
裸のMoAbの有効性が欠如することについての重要な理由は、それらが標的(ウイルス、癌細胞、毒素など)上の単一エピトープにしか結合しないことにある。これとは対照的に、自然の抗体反応では、標的上の多数のエピトープへ結合する多数の抗体(ポリクローナル抗体)が生成され、標的のより効率的な排除または無効化を生じさせる。ポリクローナル抗体はMoAbより有効な薬剤であると見なすことができるが、それらの広範な使用は多数の欠点によって妨害される。
【0041】
治療用抗体の分野では、「裸の」ヒトMoAbの現在の優れた技術をポリクローナル抗体に結び付いたより高レベルの臨床有効性と組み合わせる新規のアプローチに対する必要性が存在する。ポリクローナル抗体に固有の有効性を獲得するために、同一実体を標的とするMoAbのカクテルの開発に相当の努力が費やされてきた。研究レベルでは、個別に産生され、引き続いてタンパク質レベルで混合された、または動物モデルへ同時に投与されたMoAbの組み合わせについて、治療有効性への付加的もしくは相乗的作用が証明されている。
【0042】
1.3. ポリクローナル抗体
動物血清から単離されたポリクローナル抗体は、細菌およびウイルス感染を治療するために1世紀を超えて臨床状況において使用されてきており、今なお多数の様々な適応に適用されている。ポリクローナル抗体は、動物またはヒトの血清から精製した抗体の明確には定義されていない混合物からなる。ポリクローナル血清は、事前の免疫または感染によって特異的抗体が富裕である。ヒト起源の生成物は動物起源の生成物より好ましいが、それは動物血清に対する有害反応の発生率が高く、ヒト抗体による方が長期持続性保護が与えられるためである。ポリクローナル抗体は、様々なエピトープを標的とし、それによってより強力な生物活性を付与する複数のMoAbからなるという長所を有する。有効であることは実証されているが、それらの広範囲の使用は、ヒト患者における動物由来タンパク質の免疫原性を含む様々な理由のために限定されてきた。ポリクローナル抗体の調製物には、以下の欠点が備わっている。(1)ポリクローナル抗体は作製するために費用が高くついて大きな労働力を要する。(2)ポリクローナル抗体調製物中の特異的抗体の量は、通常は全抗体タンパク質の極めてわずかな分画(<1%)しか占めておらず、患者における大量の非関連性タンパク質の注射をもたらす。(3)免疫ドナーまたは免疫動物から生成したポリクローナル調製物は、品質を管理するのが困難である。(4)免疫ドナーのプール血清または免疫動物から生成したポリクローナル調製物は、ロット間変動を示す。(5)調製物中の特異的抗体の特異性および親和性は定義されていない。(6)得ることができる抗血清の量は一部の適用に対しては限定される可能性がある。(7)ポリクローナル抗体は血清プールから引き出されるので、感染性因子(ウイルス、プリオン)の伝播の可能性が存在する。だがポリクローナル抗体は、様々なエピトープを標的とし、それによってより強力な生物活性を付与する複数のMoAbからなるという長所を有する。有効であることは実証されているが、それらの広範囲の使用は、ヒト患者における動物由来タンパク質の免疫原性を含む様々な理由のために限定されてきた。一部の場合には、動物起源のポリクローナル抗体はMoAbより有効な可能性があることが明白になっている。最近承認されたウサギ起源のポリクローナル抗体のThymoglobulin(登録商標)は、臓器移植拒絶の治療においてヒト化MoAbであるSimulect(商標)より有効であることを実証した。
【0043】
1.4. タンパク質混合物
この情報から、タンパク質レベルで抗体を結合させることによって調製した3〜5つのMoAbの混合物がMoAbと比較して優れた治療作用を有することは明白であろう。しかし単一生成物を形成するために混合される複数の個々のMoAbの大規模製造は、規制問題、複数のMoAbを平行開発する費用、および生物薬剤のための現行の製造施設の設計に関連する薬学的開発のための克服できない問題をもたらす。同様に、治療用ポリクローナル抗体は、しばしばMoAbより強力ではあるが、単離、安全性および開発に関する重要な問題を提示する。このため結合タンパク質の混合物を作製する方法は、治療法における重大な必要に対応している。
【0044】
これまで機能的モノクローナル抗体の混合物は、タンパク質を個別に発現させて精製する工程、および次にそれらをタンパク質レベルで混合する工程によって作製されてきた。一般に、そのようなタンパク質混合物の生成の基礎には幾つかの他の問題が存在する。最初に個別に発現させ、生成し、そして精製し、次に混合されている結合タンパク質の混合物に基づく第一の問題は、その結合タンパク質を修飾するであろう外部因子に対する各調製物の差別的感受性である。例えば、しばしばエピトープおよび検出/精製タグ(例えばmyc、FLAGもしくはポリ-HISタグまたはプロテインA、プロテインZドメイン、マルトース結合タンパク質およびGSTへの融合など)は発現した結合タンパク質の検出および精製のために提供される。これらは通常結合タンパク質のNまたはC末端に位置するので、それらはタンパク質分解を生じる傾向がある。一方の結合タンパク質のタグが大きく分解して他方の結合タンパク質のタグが分解していない場合は、例えば生成中の広範囲の細菌細胞溶解のために、混合物中の2つのタンパク質はまさにそれらの結合特異性よりも大きな差を提示するであろう。その他の例は、グリコシル化、酸化などの配列非依存性または依存性タンパク質修飾である。真核細胞によるタンパク質のグリコシル化の分布は特に細胞の増殖培地中に存在する、そして培養条件による他の因子に対して感受性である;抗体などの結合タンパク質が同一宿主細胞中で産生した場合でさえ、これはグリコシル化パターンおよび内容物が同一であるという保証にはならないであろう。このために、混合物として使用すべき結合タンパク質間の望ましくない差を排除できる系を有することが望ましいと思われる。
【0045】
個々の構成成分の試料を混合することによってインビトロで組み立てられる極めて多数のタンパク質混合物を試験することに関しては問題もある。各構成成分は、個別に調製し、精製し、そしてその量を正確に決定しなければならないであろう。しばしばタンパク質の精製は冗長なプロセスであり、数百の試料に合わせて機能を向上させるのは容易ではない。タンパク質調製物の活性分画の決定は時間を消費する上に必ずしも可能ではなく、時間の経過に伴って活性が変化する可能性がある(これはしばしばそのタンパク質構成要素がいかに良好に精製されたかの関数でもある)。このために、様々な比率で発現し、精製および濃度決定を全く同一の試料を用いて実施できるような方法で発現する結合タンパク質の混合物を提供する方法を有するのが好ましいであろう。
【0046】
生物活性の最適な組み合わせを見いだし、その後にその最適比率の結合タンパク質構成成分を発現した宿主細胞を生成するために、精製されたタンパク質の混合物のスクリーニングに頼るには第三の問題がある。第一に、多数の細胞株は有効な組み合わせの比率を発現する1つの細胞株を見いだすためにスクリーニングされなければならないが、これは混合物中の異なる結合タンパク質の数が増加するにつれて増大する問題である。第二に、一部の場合には1つの結合タンパク質と他の結合タンパク質との同時の共発現は、細胞生存率および産生レベルについてのタンパク質凝集に予想外の有害な作用をもたらす可能性がある。
【0047】
2. 結合タンパク質の混合物の作製
2.1. 様々な量で発現した結合タンパク質のライブラリー
本発明は、SPCBPの混合物を発現する細胞ライブラリーを生成する方法を記載する。本発明は、インビトロでタンパク質を混合したときに発生するここで言及した問題の少なくとも一部に対処する方法を提供する。本方法は、同一宿主細胞中での同時の発現に起因する、混合物として使用される結合タンパク質間の差を最小限に抑える。本方法は、タンパク質の操作を単純化し、タンパク質を個別に精製する必要を回避する。結合タンパク質がこれらのプロセス中に翻訳後に修飾されると、配列非依存性修飾および変化が出現するが、全結合タンパク質中では同等もしくは類似の頻度で出現する可能性が高いと思われる。例えば、2つの結合タンパク質のN-結合グリコシル化は、これらのタンパク質が2つの別個の宿主細胞中での発現に比較して同一宿主細胞中で発現した場合に区別不能ではない場合は類似である可能性が高い。これはタンパク質特性解析および生物活性の解釈をより容易にするであろう。最後に、1つの宿主細胞によって発現した混合物の直接的スクリーニングは、1つの結合タンパク質が他の発現と不適合である場合を取り除くであろう。さらに、本方法は以下に詳述する多数の追加的長所を有する。
【0048】
同一宿主細胞の内部での複数のタンパク質の発現は、例えば機能的多量体からなるタンパク質を産生するために記載されているが、しかしこれは本明細書で提示するものとは極めて異なるアプローチである。多量体タンパク質は、2本またはそれ以上の、おそらく生物学的および/または生物工学的活性型が異なるポリペプチド鎖からなる。その例には抗体(Wright & Morrison, 1997)、骨形態形成タンパク質(Groeneveld & Burger, 2000)、核ホルモン受容体(Aranda &Pascual, 2001)、ヘテロ二量体細胞表面受容体(例、T細胞受容体(Chan & Mak, 1989))、インテグリン(Hynes, 1999)、および糖タンパク質ホルモンファミリー(絨毛性ゴナドトロピン、下垂体黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ならびに甲状腺刺激ホルモン(Thotakura & Blithe, 1995))が含まれる。これら全ての場合において、発現した異なるポリペプチドが細胞内で1つの機能的タンパク質へ集合した。本発明は、多数の結合タンパク質が発現すること、そしてこれらは非関連性であるために別個のタンパク質として回収可能である点で相違する。そこで1つの結合部位を形成する2本の鎖を有する結合タンパク質は本発明から除外される。アプローチおよび最終結果において主要な相違も存在する。異種系における多量体タンパク質の産生は、化学量論的に平衡した比率で単量体ポリペプチドの産生を達成する際の困難に起因して技術的に困難である(Kaufman, 2000)。単量体の不均衡な発現は細胞培養に使用される費用のかかる資源を浪費し、細胞へ有害な作用を及ぼす可能性がある(組み換えタンパク質を分泌させるために必要とされる細胞因子の捕捉ならびに増殖率の減少およびタンパク質翻訳、またはアポトーシス(プログラムされた細胞死)さえを生じさせるストレス反応の誘導を含む)。そのような有害な作用は生産性および収率の消失ならびにより高額の諸経費をもたらす。このためそのような多量体タンパク質のための多数の記載された発現系は、多量体タンパク質の構成要素である2つまたはそれ以上のポリペプチド単量体の均衡して比例する発現を得ることに焦点が当てられてきた。本発明では、少なくとも2つの結合タンパク質のサブセットを発現する細胞ライブラリーが作製されるように、そして2つの結合タンパク質の発現レベル間の比率が高度に可変性である、各々が故意に異なる比率で異なる結合タンパク質を発現する細胞ライブラリーが作製される。最終的には、適切な生物活性を媒介する比率が決定され、この比率で2つの結合タンパク質の混合物を作製するためにこの比率を産生する細胞株が使用される。
【0049】
2.2. SPCBPの例およびこれらを同定する方法
所与の標的分子を認識する可溶性結合タンパク質の開発は、ライフサイエンスおよび生物工学において極めて重要である。前世紀の間は、この分野は、伝統的には動物の免疫によって生成されていたが、タンパク質工学的方法によって入手可能にもなった抗体が優勢であった。本発明で使用した結合タンパク質は、単一ポリペプチドに基づいている。それらは所定の動物(下記参照)から、またはタンパク質スカフォールドもしくはフォールディングにコンビナトリアルバイオテクノロジーの技術を適用することによって、インビトロで人工結合タンパク質として作製することができる。スカフォールドまたはフォールディングの適用可能性はタンパク質のフォールディングの三次構造を破壊せずに許容的多様性を導入する能力、および多種多様なレパートリーから結合分子を回収する能力にある。通常は、結晶構造を分析した後に一部の露出したアミノ酸残基を無作為化するために現存するスカフォールドが採用される。次にこのスカフォールドの結合変種の回収は、精選リガンド上でのファージ提示法および親和性選択によって達成できる。スカフォールドの特性は、おおむね適用の性質および該スカフォールドの特性によって決定される。現在までに記載された多数のスカフォールドは、小さな球状タンパク質であり、しばしば単一ドメインを含む(したがって、生成、精製および多価もしくは多重特異性試薬中への操作がより容易である)。
【0050】
多くの場合、スカフォールドは以下の基準リストの一部または全部を満たし、結合タンパク質としてのそれらを抗体の魅力的な代替物にする。(1)スカフォールドはライブラリーに適合する宿主(大腸菌およびその他の細菌、酵母細胞、バキュロウイルス感染細胞、真核細胞)中で可溶性タンパク質として発現しなければならない、および大規模スクリーニングまたは提示および選択技術(ファージ、リボソーム、mRNA、細胞提示など)に従順である;(2)スカフォールドの三次構造は多様性の導入によって混乱されてはならない;(3)スカフォールドは安定性でもなければならない;(4)スカフォールドは多数の選択された部位で多様性を導入するための許容ループ、パッチおよび/または表面を有していなければならないが、このとき必要とされる結合表面の性質は適用法に依存する;(5)スカフォールドは、例えば親和性成熟のために、いっそう多様化および再選択される可能性を有するアクセス可能な大きな結合表面を有していなければならない;(6)スカフォールドは、単一特異性/二重特異性/三重特異性、または一般には多重特異性分子を作製するために操作可能でなければならない;(7)スカフォールドはNおよび/またはC末端での融合を許容しなければならない;(8)ヒトにおける治療使用のために、好ましくは非免疫原性およびヒトでなければならない、ならびに(9)スカフォールドはタンパク質分解に対して耐性でなければならない。
【0051】
人工結合タンパク質を構築するためには、多数の非抗体および非免疫グロブリンのフォールディングに基づくスカフォールドが使用されてきた。おそらく、最も進行した開発状態にある1つはZドメインである(Nord, K. et al.(1995)Protein Eng 8:601-608)。その他には、テンダミスタット(McConnell, S.J. et al.(1995)J Mol Biol 250:460-470)、シトクロムb562(Ku, J. et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA 92:6552-6556)、トリプシン阻害剤(Rottgen, P. et al.(1995)Gene 164:243-250)、合成コイルドコイル(Houston, M.E., Jr. et al.(1996)J Mol Biol 262:270-282)、コノトキシン、チオレドキシン、ノッティン(knottin)(Smith, G.P. et al.(1998)J Mol Biol 277:317-332.)、緑色蛍光タンパク質(Abedi, M.R. et al.(1998)Nucleic Acids Res 26:623-630)、フィブロネクチン(Koide, A. et al.(1998)J Mol Biol 284:1141-1151)、およびアンクリン(ankryn)反復タンパク質(Binz, H.K. et al.(2003)J Mol Biol 332:489-503.)が含まれる。小さなスカフォールドドメインのより多数の例には、クニッツ(Kunitz)ドメイン(58アミノ酸、3ジスルフィド結合)、セイヨウカボチャ(Cucurbida maxima)トリプシン阻害剤ドメイン(31アミノ酸、3ジスルフィド結合)、グアニリン関連ドメイン(14アミノ酸、2ジスルフィド結合)、グラム陽性菌由来の熱安定性エンテロトキシンIA関連ドメイン(18アミノ酸、3ジスルフィド結合)、EGFドメイン(50アミノ酸、3ジスルフィド結合)、クリングルドメイン(60アミノ酸、3ジスルフィド結合)、真菌炭水化物結合ドメイン(35アミノ酸、2ジスルフィド結合)、エンドセリンドメイン(18アミノ酸、2ジスルフィド結合)、連鎖球菌G IgG結合ドメイン(35アミノ酸、ジスルフィド結合なし)ならびにSH2、SH3、およびEVHドメインなどの小さな細胞内シグナリングドメインが含まれる。一般に、細胞内または細胞外の、任意のモジュラードメインを使用できる。そこで結合タンパク質は、βシートタンパク質、αヘリックスバンドルタンパク質、これら2つの組み合わせ、免疫グロブリンのフォールディング、および八本鎖βバレルを含む、多数の異なる構造的フォールディングに基づいて引き出すことができる。1つの態様では、スカフォールドドメインは、小さな安定性タンパク質ドメイン、例えば200、150、または120アミノ酸未満のタンパク質である。ドメインは、一つまたは複数のジスルフィド結合を含むことができる、または金属、例えば亜鉛をキレート化することができる。小さなスカフォールドドメインのまた別の例は、例えば3〜25アミノ酸、または4〜10アミノ酸の間のアミノ酸によって分離された1対のシステインによって形成されたいわゆる「システインループ」である。本発明のアミノ酸は、システイン以外の任意のアミノ酸であってよく、システインの場合は、酸化条件下で、システインの対がジスルフィド結合し、介在するアミノ酸のトポロジーを抑制する。
【0052】
天然フォールディングに基づくスカフォールドの使用以外に、SPCBPを作製するために適合するタンパク質スカフォールドは、配列設計および構造予測との間で反復する一般的計算戦略によって新規に同定することもできる。例えば、折り畳まれていて極度に安定性であることが実験によって見いだされたTop7と呼ばれる93残基のα/βタンパク質が設計された;そのX線結晶構造は設計モデルと類似であった(Kuhlman et al, 2003, Science 302:5649およびその中の参考文献)。SPCBP生成のためのスカフォールドとして適合するまた別の天然様タンパク質は、インビトロで新規ドメインおよび構造、ならびに独特の特性を備えるSPCBPを作製できる技術である、非相同タンパク質(Riechmann and Winter 2000, Proc Natl Acad Sci USA. 2000, 97:10068-73)からコンビナトリアルセグメントアセンブリーによって生成できる。
【0053】
2.2.1. 単一ドメイン抗体
考察すべき第1スカフォールドは、天然結合タンパク質である抗体において使用されるスカフォールドである。Fvフラグメントを形成する抗体の2つのドメインは、典型的には抗原親和性および特異性の重大な消失を伴わずに結合活性を保持する抗体の最小単位である。しかし1つのドメインはそれ自体が抗原結合活性も保持することができ、免疫グロブリンのフォールディングに基づいて単一結合タンパク質として存在できる。単一VHドメインに基づく単一ドメイン抗体フラグメントは記載されており(Ward, E.S. et al.(1989)Nature 341:544-546)、そしてラクダ科における天然型分子としても証明されてきた(Hamers-Casterman, C. et al.(1993)Nature 363:446-448.)。さらに、単一VHドメインは、操作されたヒト(Davies, J. et al.(1995)Biotechnology(NY)13:475-479.)またはマウスVHドメイン(Reiter, Y. et al.(1999)J Mol Biol 290:685-698)の多様なファージ提示ライブラリーから選択されてきた。より最近は、単一ヒトVHおよびVLドメインがタンパク質抗原へ結合するように操作されてきた(van den Beucken, T. et al.(2001)J Mol Biol 310:591-601.;Holt, L.J. et al.(2003)Trends Biotechnol 21:484-490.)。
【0054】
2.2.2. アンチカリン
リガンド結合タンパク質のまた別のタイプの1つの例は、スカフォールドとしてのリポカリンを基に構築されたアンチカリンである。このタンパク質構造の中心エレメントは、その開放端で4つのループを支持する、8本のアンチパラレル鎖のβバレル構造である。これらのループはリポカリンの天然結合部位を形成し、広範囲のアミノ酸置換によってインビトロで再構築されてきたので、したがって新規の結合特異性を作り出す(Skerra, A.(2001)J Biotechnol 74:257-275.)。例えば、オオモンシロチョウ(Pieris brassicae)のリポカリンであるビリン結合タンパク質(BBP)は、選択的に突然変異させた16残基を備える無作為ライブラリーを調製するためのモデルシステムとして使用された。細菌ファージミド提示法およびコロニースクリーニング技術を用いて、このライブラリーからフルオレセインまたはジゴキシゲニンのような化合物に対する結合活性を示す数種のリポカリン変種が選択された。アンチカリンは、それらの機能的特性が抗体の機能的特性に類似するように、それらの所定のリガンドに対する高い親和性および特異性ならびに急速結合動態を有すると記載されている。しかし、アンチカリンは、より小さなサイズ、単一ポリペプチド鎖の組成、および遺伝子レベルで容易に操作できる4つの高可変性ループの単純セットを含む幾つかの長所を示す。
【0055】
2.2.3. アフィボディ
タンパク質工学もまた、生成物の回収プロセスにおける親和性リガンドとして使用されるテーラーメイドの生成物特異的結合タンパク質を生成するために使用されてきた(Jonasson, P. et al.(2002)Biotechnol Appl Biochem 35:91-105.)。このプロセスのために特に有用であるのは、ブドウ球菌プロテインAに由来するZドメインの3本ヘリックススカフォールドに基づくタンパク質であるアフィボディなどの操作された結合タンパク質である。アフィボディライブラリーは、ブドウ球菌プロテインAに由来する3本ヘリックスバンドルZドメイン内の残基のコンビナトリアル多様化、およびファージ提示法または類似の技術を用いて選択された関心対象の標的へ結合するアフィボディによって作製される。広範囲の他のタンパク質に対するアフィボディが同定されており、ヒトIgA、第VIII因子、クレノウDNAポリメラーゼおよびウイルスプロテアーゼ3Cなどの標的タンパク質の親和性クロマトグラフィーのために使用されている(Graslund, T. et al.(2002)J Biotechnol 96:93-102.)(Nord, K. et al.(2001)Eur J Biochem 268:4269-4277.)。
【0056】
2.2.4. 抗原反応性SPCBPの単離
SPCBPは、例えば提示法に基づく抗体ライブラリー技術を用いて単離できるが、このとき抗原結合タンパク質はファージの表面、酵母もしくは他の宿主細胞上に提示された1ライブラリーのタンパク質を関心対象の抗原へ露出させる工程と、および抗原調製物へ結合する変種を単離する工程によって選択される。提示ライブラリーは実体の集団である;各実体はアクセス可能なポリペプチド構成成分および該ペプチド構成成分をコードまたは同定する回収可能な構成成分を含む。多数のタンパク質は、バクテリオファージなどの実体の内側にあるタンパク質をコードする遺伝物質を有する実体の表面上で提示されている。この様式は「ファージ提示法」と呼ばれている。ファージ提示法は、例えば、Ladner et al., 米国特許第5,223,409号;Smith(1985)Science 228:1315-1317;WO00/70023;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;WO90/02809;WO00/70023;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al.(1992)Hum Antibody Hybridomas 3:81-85;Huse et al.(1989)Science 246:1275-1281;Griffiths et al.(1993)EMBO J 12:725-734;Hawkins et al.(1992)J Mol Biol 226:889-896;Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628;Gram et al.(1992)PNAS 89:3576-3580;Garrard et al.(1991)Bio/Technology 9:1373-1377;Rebar et al.(1996)Methods Enzymol. 267:129-49;Hoogenboom et al.(1991)Nuc Acid Res 19:4133-4137;およびBarbas et al.(1991)PNAS88:7978-7982において記載されている。ファージ提示法システムは、繊維状ファージ(ファージfl、fd、およびM13)ならびに他のバクテリオファージ(例、T7バクテリオファージおよびλ状ファージに対して開発されている;例えば、Santini(1998)J. Mol. Biol. 282:125-135;Rosenberg et al.(1996)Innovations 6:1-6;Houshmand et al.(1999)Anal Biochem 268:363-370参照)。繊維状ファージ提示法システムは、典型的には第III遺伝子タンパク質などの小さなコートタンパク質、および大きなコートタンパク質である第VIII遺伝子タンパク質などへの融合を使用するが、第VI遺伝子タンパク質、第VII遺伝子タンパク質、第IX遺伝子タンパク質、またはそれらのドメインなどの他のコートタンパク質への融合もまた使用できよう(例えば、WO00/71694参照)。
【0057】
他の提示法様式はペプチド-核酸融合を利用する。RNAおよびRNAによってコードされたポリペプチドは、RNAを翻訳しており、依然として付着したままの発生期ポリペプチドを有するリボソームを安定化させることによって物理的に結び付けることができる。ポリペプチド-核酸融合は、例えばRoberts and Szostak(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12297-12302、および米国特許第6,207,446号に記載されているような共有結合したピューロマイシン基を含むmRNAのインビトロ翻訳によって生成することができる。次にmRNAはDNA内へ逆転写させ、ポリペプチドへ架橋結合させることができる。典型的には、高濃度の二価Mg
2+および低温を使用する。例えば、Mattheakis et al.(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022、およびHanes et al.(2000)Nat Biotechnol. 18:1287-92;Hanes et al.(2000)Methods Enzymol. 328:404-30、およびSchaffitzel et al.(1999)J Immunol Methods. 231(1-2):119-35参照。
【0058】
さらにまた別の提示法様式では、ライブラリーは細胞提示ライブラリーである。タンパク質は、例えば真核細胞もしくは原核細胞のような細胞の表面上に提示される。例示的な原核細胞には、大腸菌細胞、枯草菌(B. subtilis)細胞、胞子が含まれ、例示的な真核細胞にはサッカロミセス・セレビシエ、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)などの酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞が含まれる。酵母表面提示法については、例えばBoder and Wittrup(1997)Nat. Biotechnol. 15:553-557に記載されている。酵母提示法は、SPCBPを単離するために特に適している。1つの態様では、スカフォールド変種をコードする多様化核酸配列が酵母提示法のためにベクター内へクローニングされる。クローニングは、多様化配列をドメイン(または完全)酵母細胞表面タンパク質、例えば好ましくはAga2、Aga1、Flo1、またはGas1と結合させる。これらのタンパク質のドメインは、多様化核酸配列によってコードされたポリペプチドを膜貫通ドメイン(例、Flo1)またはリン脂質二重層(例、Gas1)への共有結合によって固定することができる。
【0059】
さらにまた別の提示法様式は、ポリペプチド構成成分が該ポリペプチドを同定する非核酸タグへ付着されている非生物学的提示法である。例えば、タグはポリペプチドまたは無線周波数タグを提示するビーズへ付着させた化学的タグであってよい(例えば、米国特許第5,874,214号参照)。
【0060】
SPCBPの提示および様々な様式でのライブラリー構築のための方法は、文献において明確に記載されており、当業者には公知である。提示法の代わりに、例えば高スループットによる自動スクリーニング法の抗原反応性クローンの頻度が(免疫ラクダ、ヒトコブラクダまたはラマからのVHH遺伝子のライブラリーにおけるように)相当に高い場合にはSPCBP変種ライブラリーの直接スクリーニングが実現可能なことがある。
【0061】
単一ドメイン抗体は、好ましくはヒトVHもしくはヒトVLレパートリーなどの所定のヒト可変領域フラグメントの単一ドメインレパートリーから作製されたインビトロ提示レパートリーから単離される。また別の態様では、単一ドメイン抗体は自然に軽鎖が欠けている抗体重鎖ドメイン(例、ラクダ、ラマ、または一部のサメ抗体)に基づいて非免疫、免疫または合成VHHレパートリーから単離される。
【0062】
上述したSPCBPの選択およびスクリーニング技術は、当技術分野において明確に確立されている。抗原特異的ポリペプチドは、ライブラリーの直接スクリーニングによって提示ライブラリーから同定できる、または抗原反応性クローンのパーセンテージを増加させるために抗原上で最初に選択することができる。選択プロセスは、表面(例、パニング法におけるようにプラスチック表面)への抗原結合を使用する工程、ビーズ(例、着色ラテックスビーズまたは磁気粒子)の特性に基づいて単離できる固相粒子へ結合した抗原を使用する工程、またはセルソーティング、詳細には蛍光活性化セルソーティング(FACS)を含む当技術分野において周知の様々な技術によって遂行される。当業者には明白であるように、抗原特異的親和性試薬は染料、基質、または粒子へ直接的もしくは(例、二次抗体を介して)間接的に結合される。選択方法は、文献において包括的に記載されている(例えば、Hoogenboom, (1997)Trends Biotechnol. 15:62-70参照)。SPCBPのそれらの各抗原への結合は、当業者には公知である方法にしたがって、例えばELISA法、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学、表面プラズモン共鳴(SPR)分析、親和性クロマトグラフィーなどの抗体に基づくアッセイ技術を用いて実施される(例えば、Sambrook et al., 1989 Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2
nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。これらの方法は、本発明に包含されている「モノクローナル」抗体(特にヒト抗体が必要とされる場合)を単離するための伝統的なハイブリドーマ技術にとっての実行可能な代替法である。
【0063】
2.2.5. SPCBPおよびSPCBPの混合物についての結合アッセイ
以下では、結合アッセイに関する例示的アッセイの考えられる態様について説明する。
【0064】
ELISA
提示ライブラリーによってコードされたポリペプチドは、ELISAアッセイを用いて結合特性についてスクリーニングすることもできる。例えば、各ポリペプチドを、それらの底面が標的、例えば限定量の標的で被覆されているマイクロタイタープレートへ接触させる。このプレートは、非特異的に結合したポリペプチドを除去するためにバッファーで洗浄される。次に、プレートへ結合したポリペプチドの量が、ポリペプチド、例えばタグまたはポリペプチドの一定部分を認識できる抗体を用いてプレートを精査することによって決定される。抗体は、適切な基質が提供されると比色定量生成物を生成するアルカリホスファターゼなどの酵素へ結合される。ポリペプチドは、細胞から精製できる、または例えば繊維状バクテリオファージコートへの融合として提示ライブラリー様式でアッセイすることができる。ELISAアッセイのまた別のバージョンでは、ライブラリーの各ポリペプチドを使用してマイクロタイタープレートの異なるウェルが被覆される。ELISAは次に各ウェルをクエリーするために一定標的分子を用いて進行する。
【0065】
表面プラズモン共鳴法(SPR)
多様性鎖のライブラリーから単離された分子と標的との結合相互作用は、SPRを用いて分析することができる。例えば、試料中に存在する提示ライブラリーメンバーのシーケンシング後、および任意で例えばELISAによって検証した後に、提示されたポリペプチドを大量に生成させ、SPRを用いて標的への結合についてアッセイすることができる。SPRまたは生体分子相互作用分析法(BIA)は、反応体のいずれも標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用を検出する。BIAチップの結合表面での質量変化(結合事象の指標)は表面近くでの光線の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴の光学現象)を生じさせる。屈折力の変化は、生体分子間のリアルタイム反応の指標として測定される検出可能なシグナルを生成する。SPRを使用するための方法は、例えば米国特許第5,641,640号;Raether(1988)Surface Plasmon Springer Verlag;Sjolander and Urbaniczky(1991)Anal. Chem. 63:2338-2345;Szabo et al.(1995)Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705およびBIAcore International AB(スウェーデン国ウプサラ)によって提供されるオンライン資源の中に記載されている。SPRからの情報を使用すると、標的への生体分子を結合させるための平衡解離定数(K
d)の正確かつ定量的尺度、ならびにk
onおよびk
offを含む動態パラメータを提供できる。そのようなデータを使用すると、様々な生体分子を比較できる。例えば、多様性鎖のライブラリーから選択された核酸によってコードされたタンパク質を比較すると、標的に対して高親和性を有する、または緩徐なk
offを有する個体を同定することができる。この情報を使用すると、さらにまた構造-活性関係(SAR)を発生させることもできる。例えば、親タンパク質の成熟バージョンの動態および平衡結合パラメータを親タンパク質のパラメータと比較することができる。特定の結合パラメータ、例えば高親和性および緩徐なk
offと相関する、所与の位置にある変種アミノ酸を同定することができる。この情報は構造的モデリングと結び付けることができる(例えば、相同性モデリング、エネルギー最小化、または結晶学もしくはNMRによる構造決定を用いて)。結果として、タンパク質とその標的との物理的相互作用についての理解を系統立てて、これを使用して他の設計プロセスを誘導することができる。
【0066】
ホモジニアス結合アッセイ
候補ポリペプチドと標的との結合相互作用は、ホモジニアスアッセイを用いて分析できる、すなわちアッセイの全構成成分が添加された後に追加の液体操作を必要としない。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、ホモジニアスアッセイとして使用できる(例えば、Lakowicz et al.,米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulos, et al., 米国特許第4,868,103号参照)。ホモジニアスアッセイのまた別の例は、Alpha Screen(Packard Bioscience社、コネチカット州メリデン)である。Alpha Screenは2つの標識ビーズを使用する。1つのビーズは、レーザーによって励起されると一重項酸素を生成する。他方のビーズは、一重項酸素が第1ビーズから拡散してそれと衝突すると光シグナルを生成する。シグナルは、2つのビーズが近くにある場合にのみ生成される。1つのビーズは提示ライブラリーメンバーへ、他方のビーズは標的へ付着させることができる。結合の程度を決定するために、シグナルが測定される。ホモジニアスアッセイは、候補ポリペプチドが提示ライブラリー媒体、例えばバクテリオファージへ付着される間に実施できる。結合親和性を決定するためのKinexaおよびLuminexに基づく系の使用などの他の方法もまた適している。
【0067】
自動スクリーニング
本明細書に提供した方法および組成物は、抗原反応性を備えるクローンを見いだすための多様性ライブラリーの自動スクリーニングのためにもまた適している。例えば、SPCBPの提示ライブラリーは、標的分子へ結合するメンバーについてスクリーニングすることができる。このライブラリーは、直接的にスクリーニングできる、または抗原上で1回もしくは数回にわたり最初に選択することができる。スクリーニングの第1ラウンドからの結合剤は増幅させて、1回または複数回にわたり再スクリーニングすることができる。第2ラウンド以降からの結合剤は、例えばマルチウェルプレート内で個別に単離される。個々の結合剤各々は、例えばELISA、ホモジニアス結合アッセイ、またはタンパク質アレイを使用して、標的分子への結合についてアッセイすることができる。個々のクローンのこれらのアッセイ法はロボット工学を用いて自動化できる。選択されたクローンの配列は、選択されたクローンの可変領域配列の読み取りを可能にするロボットおよびオリゴヌクレオチドプライマーを用いて決定することができる。アッセイおよびシーケンスの結果はコンピュータシステムに記憶させて、視覚的に、またはソフトウエアを使用して評価して、例えば特定パラメータに(例えば、結合親和性および/または特異性について、および配列相同性について)一致するクローンを同定することができる。
【0068】
2.3. SPCBP混合物のライブラリーの作製
SPCBPは、同一宿主細胞中での共発現により複数の標的へ結合する結合タンパク質の薬学的組成物を作製するために高度に適している。
【0069】
2.3.1. ライブラリー作製のための基本的発現系
関心対象のSPCBP遺伝子を含む発現ベクターは、例えば、関心対象の核酸へ機能的に連結したプロモーターを含む調節配列を含有する。本発明の組み換え構築物を生成するための極めて多数の適合するベクターおよびプロモーターは当業者には公知であり、市販されている。原核および真核生物宿主とともに使用するために適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、その開示が参照により組み入れられるMolecular Cloning:A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, New York(1989)においてSambrookらによって記載されている。例として以下のベクターを提供する。
【0070】
真核生物宿主における高レベル発現のためには、例えば、例示的エンハンサー/プロモーター調節エレメントには、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなどのSV40、CMV、アデノウイルスなどに由来するエレメントが含まれる。例えば、米国特許第5,385,839号参照。真核生物のプロモーターには、CMV即時性、HSVチミジンキナーゼ、ユビキチン、伸長因子-1□、初期および後期SV40、レトロウイルス由来LTR、マウスメタロチオネイン-I、ならびに様々な公知の組織特異的プロモーターが含まれる。真核細胞中での発現を得るために適合するプロモーターは、CAW-プロモーター、哺乳動物EFI-αプロモーター、哺乳動物ユビキチンプロモーター、またはSV40プロモーターである。当業者に周知である方法を使用すると、本発明のポリヌクレオチドならびに適切な転写/翻訳およびその他の調節制御シグナルを含有するベクターを構築することができる。真核細胞発現ベクター(eukaryotic expression vector)には以下の例が含まれる。pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXTI、pSG(Stratagene社)pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(Pharmacia社)。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは選択可能なマーカーを備える他のベクターを用いて任意の所望の遺伝子から選択できる。2つの適切なベクターは、pKK232-8およびpCM7である。
【0071】
本発明において提供される所定の発現ベクターは、内部リボソーム進入部位(IRES)を含有する。IRESは、真核細胞リボソーム(eukaryotic ribosome)が進入し、5'm
7G-キャップ構造以外の位置でmRNAを走査することを可能にする。例えば第1コード領域の3'(またはシストロン)のように内部に位置する場合は、IRESは同一転写産物内の第2コード領域の翻訳を可能にするであろう。第2コード領域は、IRES後に遭遇する第1ATGによって同定される。例示的なIRESエレメントには、ピコルナウイルスIRESおよびカルジオウイルスIRES(例えば、米国特許第4,937,190号参照)などのウイルスIRESならびに5'UTR(例、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質をコードする転写産物のエレメント(BiP)(Macejak, D.G., et al. Nature, 35390-4,1991);ドロソフィラ・アンテナペディア(Drosophila Antennapedia)(Oh, S.K., et al., Genes Dev, 6:1643-53, 1992)およびウルトラバイソラックス(Ultrabithorax)(Ye, X., et al., Mol. Cell Biol., 17:1714-21, 1997);線維芽細胞成長因子2(Vagner, S., et al., Mol. Cell Biol., 15:35-44, 1995);開始因子eIF4G(Gan, et al., J Biol. Chem., 273:5006-12, 1998);癌原遺伝子c-myc(Nanbru, et al., J. Biol. Chem., 272:32061-6, 1995;Stoneley, M., Oncogene, 16:423-8, 1998);ならびに血管内皮成長因子(VEGF)(Stein, I., et al., Mol. Cell Biol., 18:3112-9, 1998)などにおいて見いだされる非ウイルスIRESエレメントが含まれる。
【0072】
その他の調節エレメントはクロマチン制御に関連する。これらには、様々な名称を備えており、長期安定性および導入遺伝子の組織特異的または非組織特異的発現を提供する様々な方法で単離されるエレメントが含まれる。一般に、クロマチン制御配列は、その作用範囲内に配置されている遺伝子の転写を分離するが、これは有害または有益のいずれでも遺伝子発現を混乱させない。例えば、それらは核環境、典型的には染色体環境においてクロマチンおよび隣接配列の調節作用を調節(例、遮断)する。そこで、インスレーターは、染色体の非相同領域内へ組み込まれた配列の持続性および/または適切な調節制御を可能にすることができる。
【0073】
調節エレメントの例は以下のとおりである。境界エレメント(BE)またはインスレーターエレメントはクロマチン内の境界を規定し、インビボでの転写ドメインを規定することに役割を果たす。それらには内因性プロモーター/エンハンサー活性が欠如するが、むしろ周囲のクロマチン内で調節エレメントの転写による影響から遺伝子を保護すると考えられる。S/MARもしくはスカフォールド/マトリックス付着領域はエンハンサーと相互作用して局所的クロマチン接近性を増加させることができ、そして細胞培養系、トランスジェニックマウスおよびトランスジェニック植物における異種遺伝子の発現を増強できる。遺伝子座制御領域であるLCRは、遺伝子座の初期クロマチン活性化およびその後のそれらの自然の位置での遺伝子転写のために必要とされるシス調節エレメントである(Grossveld, 1999による概観)。LCSは、一般に連結遺伝子へ組織特異的発現を付与する。さらにまた同定されていて、CHOなどの工業上重要な宿主細胞中での安定性導入遺伝子発現を増加させる何らかの能力を有する他のエレメント(STARもしくは安定化抗リプレッサーエレメント、ユビキタスクロマチンオープニングエレメントもしくはUCOなど)もある。これらのエレメントの大多数はシスから導入遺伝子において機能するが、MARは導入遺伝子を用いてトランス型へコトランスフェクトされた場合に機能することも報告されている(Zahn-Zabel et al.(2001)J. Biotechnology 87:29-42)。例示的インスレーターには、ニワトリα-グロビン遺伝子座の5'末端を含んだPCT公報第94/23046号に記載されたニワトリ5'構成的高感受性部位に対応するDNAセグメント、Bell et al.(2001)Science 291:447-50に記載されたエレメント、およびChromagenics B.V.社(オランダ国アムステルダム)からのSTARがさらにまた含まれる。
【0074】
哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーターおよびさらに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、ならびに5'フランキング非転写配列を含むであろう。
図1Aは、真核細胞および典型的には哺乳動物細胞中でのベクター主鎖およびSPCBPのための発現カセットの略図を示している。
図1Bは、大腸菌などの原核生物についての同様のものを記載している。発現調節配列は、プロモーター、エンハンサー、スカフォールド付着領域、負の調節エレメント、転写開始部位、調節タンパク質結合部位または該配列の組み合わせを含む。または、生成されたRNAもしくはタンパク質の構造もしくは安定性に影響を及ぼす配列は、置換される、除去される、付加される、さもなければポリアデニル化シグナル、mRNA安定性エレメント、スプライス部位、タンパク質の輸送もしくは分泌特性を強化もしくは修飾するためのリーダー配列、またはタンパク質もしくはRNAiを含むRNA分子の機能もしくは安定性を変化もしくは向上させる他の配列を含むターゲッティングによって修飾される。SPCBPタンパク質をコードする核酸配列に加えて、組み換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例、複製起点)および選択可能なマーカー遺伝子などの追加の配列を有することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、その中にベクターが既に導入されている宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号参照)。これは、典型的には、その存在を細胞中で直接的もしくは間接的に検出できる遺伝子および/またはタンパク質、例えば選択因子を不活性化して宿主細胞をそれら因子の致死的もしくは成長阻害作用から保護する遺伝子および/またはタンパク質(例、抗生物質耐性遺伝子および/またはタンパク質)である。例えば、典型的には選択可能なマーカー遺伝子は、その中にベクターが既に導入されている宿主細胞へG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を用いてdhfr宿主細胞において使用するため)、neo遺伝子(G418選択のため)、ゼオシン耐性選択性マーカータンパク質(zeo)およびブラストサイジン選択性マーカー(bsd)が含まれる。NSO細胞に対してはグルタミンシンテターゼ系が広範に使用されており、増幅系であると考察されている。(Bebbington et al, 1991, Bio/Technology 10:169-175;Barnes et al, Biotechnol Bio eng 73:261)。特に有益である1つの抗生物質はゼオシンであるが、それはゼオシン耐性タンパク質(ゼオシン-R)がこの薬剤に結合してそれを無害にさせることによって作用するからである。このため、高発現因子が生残するのを許容しながら、低レベルのゼオシン-R発現で細胞を死滅させる薬剤量を容易に滴定できる。また別の可能性は、該選択マーカーが蛍光または着色沈着物(例、緑色蛍光タンパク質および誘導体、ルシフェラーゼ、またはアルカリホスファターゼ)を誘導することである。
【0075】
本発明の修飾された抗体、またはその抗原結合部分の組み換え発現のための例示的系においては、少なくとも2つのSPCBP遺伝子をコードする組み換え発現ベクターがリン酸カルシウム媒介性トランスフェクションによってdhfr-CHO細胞内へ導入される。組み換え発現ベクター内では、高レベルの遺伝子の転写を駆動するために、2つのSPCBP遺伝子がエンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなどのSV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する)へ機能的に連結される。組み換え発現ベクターはDHFR遺伝子をさらに有するが、これはメトトレキセート選択/増幅を使用してベクターを用いてトランスフェクトされているCHO細胞の選択を可能にする。2つのSPCBP遺伝子の発現を可能にするためには、選択された形質転換体宿主細胞が培養される。標準分子生物学技術を使用して、組み換え発現ベクターが調製され、宿主細胞がトランスフェクトされ、形質転換体が選択され、宿主細胞が培養され、そして培地から抗体が回収される。
【0076】
多数のSPCBPは、それらのコンパクトなサイズおよび単一ドメイン構造によって、酵母細胞などの単細胞宿主または原核生物宿主を発現させるために理想的である。ラマdAbライブラリーからのフラグメントは、卓越した溶解特性を証明しており(Tanha et al, 2002, J. Immunol. Methods 263:97-969)、さらにマウスおよびヒトの抗体およびVH領域に匹敵し(Ewert et al 2002, Biochemistry 41:3628-36)、そしてVHH抗体フラグメントはサッカロミセス・セレビシエおよびピチア・パストリスにおいて高レベルで産生されている(Thomassen et al, 2002, Enzyme Microb. Technol. 30:273-278;Frenken et al, 2000, J. Biotechnol 78:11-21;Holt et al, 2003, Trends Biotechnol 11:484-90)。原核生物および/または下等真核生物において、異種タンパク質および特にSPCBP様抗体フラグメント、VHHタンパク質、dAb、クニッツドメイン、アフィボディおよびフルオロボディを発現させるために十分な系については記載されている。さらに、これらの宿主内での多量体タンパク質の発現も報告されている。
【0077】
SPCBPを発現する細胞ライブラリーは、細胞内へ1つのベクター、複数のベクターを導入することによって、またはその中に複数のSPCBPをコードする遺伝子がクローニングされている人工染色体(ACE;Cytometry. 1999 Feb 1;35(2):129-33)において生成される。トランスフェクション後のプラスミドが、宿主細胞ゲノム内へ組み込まれる、または独立遺伝子エレメント(例、エピソーム、プラスミド)として存在する。本発明によるベクターは、単一コピーベクターまたはマルチコピーベクターのいずれかである。本発明の好ましいベクターには、酵母発現ベクター、特に2μベクターおよびセントロメアベクターが含まれる。真核生物中で発現させるために好ましいベクターの多数は、1つより多い生物種において複製できるベクターとして当技術分野において公知であるシャトルベクターである。例えば、大腸菌およびサッカロミセス・セレビシエの両方で複製できるシャトルベクターは、大腸菌プラスミド由来の配列を酵母2μプラスミド由来の配列と連結させることにょって構築することができる。
【0078】
本発明の宿主は、酵母またはアスペルギルス属(Aspergillus)などの他の真菌でもある。酵母では、構成性または誘導性プロモーターを含有する多数のベクターが使用される。概論については、Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, Ed. Ausubel et al., Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, Ch. 13(1988);Grant et al., Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Ed. Wu & Grossman, Acad. Press, N.Y. 153:516-544(1987);Glover, DNA Cloning, Vol. II, IRL Press, Wash., D.C., Ch. 3(1986);Bitter, Heterologous Gene. Expression in Yeast, in Methods in Enzymology, Eds. Berger & Kimmel, Acad. Press, N.Y. 152:673-684(1987);およびThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, Eds. Strathern et al., Cold Spring Harbor Press, Vols. I and 11(1982)参照。本発明の宿主は、大腸菌などの原核生物でもある。代表的ではあるが非限定的例として、細菌のために有用な発現ベクターは、周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝的エレメントを含む市販されているプラスミド由来の選択性マーカーおよび細菌複製起点を含むことができる。そのような市販されているベクターには、例えば、pKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals社、スウェーデン国ウプサラ)およびpGEMI(Promega社、米国ウィスコンシン州マディソン)が含まれる。例として、その他の原核細胞発現プラスミド(prokaryotic expession plasmid)を提供する。細菌性:pB、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene社);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia社)。特別な細菌プロモーターには、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、λPおよびtrcが含まれる。SPCBP遺伝子をコードする転写体の発現を駆動させるためには、転写制御配列が使用される。酵母発現のためには、以下の発現プラスミドを例として提供する。酵母において使用するための発現ベクターには、YRp7(Struhl et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 76:1035-1039, 1979)、YEpl3(Broach et al., Gene 8:121-133, 1979)、pJDB248およびpJDB219(Beggs、前記)、ならびにそれらの誘導体が含まれる。そのようなベクターは、一般にtrpl突然変異を有する宿主菌株内での選択を可能にする栄養マーカーTRP1、または富裕培地中で増殖したtpi菌株内での選択を許容するpOT1選択性マーカーを含む(Kawasaki and Bell, EP171,142)。酵母発現ベクターにおいて使用するために好ましいプロモーターおよびターミネーターには、酵母糖分解遺伝子(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255:12073-12080, 1980;Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Genet, 1:419-434, 1982;Kawasaki, U.S. Pat. No. 4,599,311)またはアルコール脱水素酵素遺伝子(Young et al., in Hollaender et al.(eds.), Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals, Plenum, New York, 1982, p.335;およびAmmerer, Meth. in Enzymology 101:192-201, 1983)、ガラクトース誘導性プロモーター、pGAL1、pGALl-10、pGal4、およびpGal10;ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、pPGK;サイトクロムcプロモーター、pCYC1;ならびにアルコール脱水素酵素Iプロモーター、pADH1が含まれる。ピチア属の発現の一例として、Invitrogen社からのプラスミドpPICZを例示として言及する;このプラスミドでは、関心対象のタンパク質のための発現カセットは、P.パストリスのメタノール誘導性AOX1プロモーターによって駆動される。P.パストリスKM71H細胞の形質転換後、導入遺伝子のコピーを安定に組み込んでいた細胞がゼオシンを用いて選択される。
【0079】
リーダーもしくはシグナル配列は、細胞質内のリボソームから小胞体の内腔内へ発生期ポリペプチドを直接的に転移させるために設計されている。典型的には疎水性であるリーダー配列には、真核生物シグナルペプチダーゼによって認識かつ開裂される配列が含まれる。開裂事象は、他のシグナルが欠如した、細胞から分泌される成熟ポリペプチドを生成する。SPCBP遺伝子へ提供できる他の任意のシグナルは、核、植物細胞液胞、ミトコンドリア、ER残留シグナル(例、コード領域のC末端領域でのKDEL)、および細胞の膜内のSPCBPを直接的に固定するための膜貫通領域または同等のGPIアンカーなどの細胞内区画へターゲッティングするためのシグナルである。本発明において機能的である数種のリーダーもしくはシグナル配列は当業者には公知である;Mfα1 prepro、Mfα1 pre、酸性ホスファターゼPho5、酵母中で機能的であるインベルターゼSUC2シグナル配列;大腸菌中で機能的であるpIII、PelB、OmpA、PhoAシグナル配列;昆虫細胞中で機能的であるgp64リーダー;哺乳動物細胞中で機能的であるIgKリーダー、ミツバチメリチン分泌シグナル配列が含まれる。特に好ましい真核生物シグナル配列には、酵母のα-接合因子、酵母のα-アグルチニン、サッカロミセスのインベルターゼ、クルイベロミセスのイヌリナーゼが含まれるが、最も好ましいのはα-アグルチニンのAga2pサブユニットのシグナルペプチドである。
【0080】
宿主細胞内への組み換え構築物の導入は、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション(Wigler et al., Cell 14:725, 1978;Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7:603, 1981;Graham and Van der Eb, Virology 52:456, 1973)、DEAE、デキストラン媒介性トランスフェクション、またはエレクトロポレーション(Neumann, EMBO J. 1:841-845, 1982、およびDavis, L. et al., Basic Methods in Molecular Biology(1986)によって実行することができる。
【0081】
本発明の抗体をコードするDNAは、その開示が参照により組み入れられるMolecular Cloning:A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, New York(1989)においてSambrookらによって記載されているようなクローニング、DNA調製およびシーケンシングのための従来型方法を用いて容易に単離かつシーケンシングすることができる。シーケンシングのためには、遺伝子フラグメントを取り囲んでいるベクター配列へ特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することができ、そしてDNA配列はジデオキシに基づくシーケンシングによって決定できる(Sanger, F. et al.(1977)PNAS 74:5463-5467)。いったん単離されると、SPCBP遺伝子の適切な領域をコードするDNAは、本明細書および以下に記載した一つまたは複数の発現ベクター内へ配置され、これらは次に宿主細胞中へトランスフェクトされる。宿主細胞は哺乳動物細胞などの高等真核宿主細胞、酵母細胞などの下等真核宿主細胞であるか、または宿主細胞は細菌細胞などの原核生物細胞である。
【0082】
1つの好ましい態様では、SPCBPタンパク質のライブラリーが哺乳動物細胞中で作製される。クローン抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを発現させるために好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば(Kaufman, R.J. et al.(1982)J Mol Biol 159:601-621)に記載されたDHFR選択性マーカーとともに使用される(Urlaub, G. et al.(1980)PNAS 77:4216-4220)に記載されたdhfr-CHO細胞を含む)、リンパ球細胞株、例えばNSO骨髄腫細胞およびSP2細胞、C127、3T3、ヒト表皮A431細胞、Jurkat、U937、HL-60、HEK-293細胞、C2C12、マウスL細胞、仔ハムスター腎細胞、COSもしくはCV-1細胞、PER.C6細胞(Pau, M.G. et al.(2001)Vaccine 19:2716-2721)、その他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、ならびに一次組織、一次外植片、および例えばトランスジェニック哺乳動物などのトランスジェニック動物由来の細胞のインビトロ培養由来の株化細胞が含まれる。例えば、細胞は哺乳動物上皮細胞である。発現のため、特に一過性発現のために適合する他の細胞タイプは、サルCOS細胞(Gluzman, Y.(1981)Cell 23:175-182)、ならびに系統293、295Tおよび911(Hek293、295T、911)のヒト胚腎細胞である。
【0083】
また別の態様では、SPCBPタンパク質混合物を発現する細胞ライブラリーは、酵母などの下等真核生物または細菌などの原核生物中で生成される(Simmons, L.C. et al.(2002)J Immunol Methods 263:133-147.)。適合する可能性がある酵母株には、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス株、ハンゼヌラ・ポリモルファ、ピチア・パストリス、カンジダ(Candida)、または非相同タンパク質を発現できる任意の酵母株が含まれる。適合する可能性がある細菌株には、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、または非相同タンパク質を発現できる任意の細菌株が含まれる。
【0084】
一部の適用のためには、機能的タンパク質を得るために、例えば適切な部位のリン酸化またはグリコシル化によって、生成されたタンパク質混合物を修飾することが必要とされる。そのようなタンパク質混合物の共有結合は、公知の化学的または酵素的方法を用いて遂行される。細菌培養において生成された組み換えポリペプチドおよびタンパク質は、通常は細胞ペレットからの初期抽出、その後の1回または複数回の塩析、水性イオン交換もしくはサイズ排除クロマトグラフィー工程によって単離される。一部の態様では、テンプレート核酸はポリペプチドタグ、例えばペンタ-またはヘキサ-ヒスチジンもコードする。次に組み換えポリペプチドの混合物は、親和性クロマトグラフィーを用いて精製できる。タンパク質の発現において使用される微生物細胞は、冷凍-解凍サイクリング、超音波処理、機械的崩壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の便宜的方法によって崩壊させることができる。好ましくは、抗原認識とは無関係の精製方法が使用される。
【0085】
SPCBPのスカフォールドの好ましい態様は、好ましくはヒト抗体生殖細胞系セグメントおよび好ましくはDP47に基づく、ヒトの抗体セグメントを備える単一ドメイン抗体(dAb)、および好ましくは免疫動物由来で、好ましくはヒトに使用される場合は潜在的に免疫原性である部位が除去されているラクダ「重鎖のみ」VHH抗体である。スカフォールドのための他の好ましい態様は、リポカリンに基づくスカフォールドおよびアンクリンに基づくスカフォールドである。好ましくは、スカフォールドは、250アミノ酸以内、好ましくは150アミノ酸以内を備えるコンパクトな球状タンパク質ドメインをコードする。スカフォールドのライブラリーからSPCBPを単離する好ましい方法は、ファージおよび酵母提示法、発現ライブラリースクリーニング、リボソーム提示法および酵素相補性戦略である。
【0086】
2.3.2. SPCBP混合物のライブラリーの作製
1つの態様では、まず異なるSPCBPコード遺伝子の集団が同定され、そしてこれは適切な発現ベクター内へクローニングされる(上記および特定の様式に関する詳細については下記も参照)。SPCBPのライブラリーは、少なくとも2つ、好ましくは20個以下、および好ましくは2個から10個の複数のSPCBPを含有する。次にこのSPCBP遺伝子の集団は、宿主細胞が複数かつ異なるSPCBPを作製するような方法で宿主細胞中へ導入される。
【0087】
導入は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈降法、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを含む、従来型トランスフェクション技術のいずれかを用いて実施される。さらに、生物学的ベクター、例えばレトロウイルスおよびアデノウイルスなどのウイルスベクター(真核細胞に対して)または繊維状ファージもしくはλファージ(大腸菌などの細菌細胞に対して)を使用できる。宿主細胞を形質転換させる、またはトランスフェクトするために適合する方法は、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001)、およびその他の適合する実験マニュアルの中に見いだすことができる。
【0088】
1つの好ましい態様では、真核細胞、好ましくはCHOまたはPER.C6細胞が宿主細胞として使用される。その場合には、トランスフェクションは一過性方法で実施してもよく、細胞ゲノム内への導入遺伝子の安定性組み込みまたはエピソームベクターのいずれかにより、細胞内部に安定に発現ベクターを維持することが同定されたクローンについて実施されうる。SPCBPをコードするDNAの安定に組み込まれたコピーについてトランスフェクトされた細胞株を選択する可能性を備えて安定性トランスフェクションが使用された場合は、関連する抗体は、好ましくは限定的希釈または細胞収集を介してクローニングされる。さらにそのようなトランスフェクションのためには、しばしばトランスフェクタントの数を増加させるために、制限酵素で消化されて線状化されたプラスミドが使用される。
【0089】
図2Aおよび
図3に示した本発明の好ましい態様では、複数のSPCBP遺伝子(3つは
図3に示した)が適切な発現ベクター内へクローニングされ、次に2つのDNAの混合物として宿主細胞内へ導入される。宿主細胞は、宿主のゲノム内へプラスミドを組み込むための選択を可能にする条件下でトランスフェクトされ、増殖される。好ましい態様では、細胞はクローニング工程に供されるが、このとき細胞は、SPCBPをコードする核酸の挿入およびそれらの挿入場所に関して遺伝学的に同一である細胞集団が得られるような方法で操作され、培養される。そこで細胞クローンは、組織培養ウェルがそれらの間に単一クローンを含有し、一部のクローンがSPCBP遺伝子を発現するするような方法で組織培養ウェル内で増大される。
【0090】
抗原特異的SPCBP分泌は、様々な方法、好ましくはELISAまたは各ウェルのタンパク質混合物についての同等の試験によってこれらのクローンおよびウェルの間で決定できる(結合アッセイについての以前の説明も参照)。
図3には、3種の異なる抗原に対する同一上清の反応性を表している3つの異なるELISAプレートを示した-したがって全3種の抗原と反応性であるウェルは、3種のSPCBPを分泌する細胞を含有する。以下ではより広範なスクリーニング方法について記載する。
【0091】
SPCBP混合物の組成は、宿主細胞中で達成される発現レベルおよびその安定性へ経時的に影響を及ぼすパラメータの任意の1つを操作することによって影響される。所与の構成成分の発現レベルは、構成要素の発現を駆動する調節配列、宿主細胞の選択、発現方法(一過性もしくは安定性)、ならびに安定性発現のためにはコピー数および組み込み部位を含む多数の因子の関数である。発現レベルは、転写調節エレメントの選択(プロモーター、エンハンサー、インスレーター、抗リプレッサーなどの選択を含む)を含む多数のパラメーターによってさらに影響を受けることがある。
【0092】
そこで、ライブラリー内での単一または複数のSPCBP遺伝子を発現する細胞クローンの頻度は、導入遺伝子の挿入場所、使用されたDNAの量、同一プラスミド上のSPCBP遺伝子の存在、トランスフェクション頻度などを含む多数のパラメーターに依存するであろう。導入遺伝子は、遺伝子スプライシングのために不活性になり(McBurney et al., 2002)、結果として従来型技術の場合は、一つまたは複数のSPCBPを産生する組み換え宿主細胞の分画を生じさせる高い可能性がある。高レベルで複数のポリペプチドを産生する細胞株を構築するためには、様々な導入遺伝子が一般に独立して組み込まれるが、それはSPCBPを発現する細胞クローンの頻度の減少をもたらすであろう。
【0093】
2つの導入遺伝子が2つの別個のプラスミド上で同時にトランスフェクトされる場合は、高レベルで両方のポリペプチドを産生するであろう細胞の比率は単一導入遺伝子についての比率の積であろう;細胞の33%が所定の選択基準を超える最小設定レベル(例えばELISAにおけるバックグラウンドシグナルの3倍)へ1つの結合タンパク質を発現する場合は、このレベルで2つを発現するのは約10%に過ぎず、3%が設定レベルなどで3つを発現するであろう。ライブラリーを作製するためにはより多くのSPCBP遺伝子を使用するほど、効率的なトランスフェクションプロトコールを使用することがより重要になるであろう。例えば、SPCBP遺伝子を備える発現カセットは、高レベルのトランスフェクション/感染効率および1細胞当たりの複数感染を達成できるようなウイルス系の一部であってもよい。
【0094】
SPCBPを使用することの重要な長所は、これらのタンパク質の多数が限定されたサイズ(100〜130アミノ酸、およびほとんどは200アミノ酸未満の平均サイズ)の単一ドメイン分子である傾向を示すことにある。1つのSPCBPあたり平均300〜400ヌクレオチド(任意のリーダーおよびタグを含まない)であるそのように相当に小さなコード領域を用いると、例えばIgGをコードする抗体遺伝子よりこれらの核酸を組み入れている発現ベクターを構築する方がはるかに容易であろう。後者のためのコード領域は、2本の鎖各々について約600および1400ヌクレオチドであるが、多くの発現ベクターはサイズがいっそう大きいゲノムIg DNAを利用する。そこでSPCBPは1つの発現プラスミド内へ結合するために理想的に適合しており、本発明は1プラスミドあたり2、3、4から10個の異なるSPCBPを用いる態様を記載する。そこで、複数のSPCBPを発現する細胞のライブラリーおよびそれらの組成物を作製するための、様々なSPCBP、調節エレメントおよび方法を結合する一連の可能性が存在する。
【0095】
第1の態様では、より高頻度で発現した複数のSPCBPを備えるライブラリーを得るために、これらのタンパク質をコードする核酸が、安定性組み込みを選択する1つの選択マーカーを有する全く同一のプラスミド内へクローニングされる。
図4A〜Hは、
図1のベクター主鎖または同等のベクター内に適合する、異なる方向付けを備える複数のSPCBP遺伝子を備える適合するタンパク質発現カセットについて記載している。これらのバージョンの一部は、シス型で1つまたは2つの発現制御エレメントを有する。好ましい態様では、「安定化抗リプレッサーエレメント」(STARs, Kwaks et al, 2003. Nat. Biotechnol 21:553)がSPCBP遺伝子の一方または両方の端でクローニングされる(
図4A〜D)。そのようなエレメントは、本引用例およびWO03106674A2およびWO03004704A2に示されたように所与の導入遺伝子の安定性かつ高レベル発現を付与する。本発明では、本発明者らは導入遺伝子の各個別コピーについての安定性かつ高レベル発現を媒介するためのそれらの使用について記載する(以下の2.3.3も参照)。本発明の1つの態様では、これらの発現カセットのいずれかを組み込んでいるベクターは、トランスフェクションのために使用された場合にベクターの混合物が宿主細胞内へ複数のSPCBPコード領域を導入する限り、
図4に列挙した様々な発現カセットの同一物を組み入れるベクターと結合することができる。
【0096】
また別の態様では、各々が異なる選択マーカー(
図2B;3種のマーカーをSelect 1〜3と記載した)、高効率的なトランスフェクション/形質導入/感染法を用いてコトランスフェクトされた細胞を有する様々なベクターが使用される;これは生残する細胞クローンの総数を減少させるが、各生残細胞が3種の結合タンパク質の各々についてのDNAを取り上げることを保証する。選択マーカーについては、上述した項において記載した。また別の態様は、選択性マーカーを同一プラスミド上およびSPCBP遺伝子と同一プロモーターの制御下に配置することであり、後者の配列はジシストロニックもしくはポリシストロニックメッセージとして公知であるものを生成する。好ましい態様では、選択性マーカー遺伝子はSPCBP遺伝子の下流にあるIRES配列を介して連結されている(
図4G〜H)。このSPCBPと選択マーカーとの直接的な遺伝的連鎖は、マーカーのために選択された細胞株がSPCBPタンパク質もまた発現する保証を提供する(Rees et al, Biotechniques 20:102-10にも記載されている)。IRES配列を使用する代わりに、選択的スプライシングを使用できる(Lucas et al, Nucleic Acids Res 1996:24:1774-9)。
【0097】
他の2つの態様では、2つのSPCBPの発現は以下の方法の1つにおいて相互に依存して作製される(
図4Fおよび
図5)。第1の態様では、所与のプロモーター(典型的には強力なCMVプロモーターまたはその他)の制御下にあるように、およびそのコード配列の次に内部リボソーム進入部位(IRES)が来るように、第1SPCBPをコードする核酸が発現カセット内にクローニングされる。この直後には、第2SPCBPコード領域が続く(
図4Fに示したとおり)。これでP1プロモーターはBP-1およびBP-2の発現を駆動し、これらの2種のタンパク質間でおよそ1:1の発現比をもたらすであろう;だがしばしば第2コード領域は発現がわずかに少ない。そこで発現比率を規定レベルに向かって動かさなければならない場合は、IRES配列の使用が特に有用である。この規定レベルは、他の因子の中でも特にIRES配列の性質によって影響を受け、様々なIRES配列が様々な最終比率を媒介するであろう。同様に、3つのSPCBP間の発現比率は、その中では以前に記載したカセットに別のIRESおよびSPCBPコード領域が続くトリシストロニック発現カセットを使用することによって相互に結び付けることができる。トリシストロニック発現系ならびにIRES配列および立体配置の例は、他の系については文献の中で記載されている(Li et al, J. Virol. Methods 115:137-44;When et al, Cancer Gene Therapy 8:361-70;Burger et al 1999, Appl. Microbiol. Biotechnol. 52:345-53)。そこで本発明のライブラリーは、IRES配列の多様化によって生成することもできる。
【0098】
図5に示す、発現比率に影響を及ぼすための第2アプローチでは、第1コード領域として第1SPCBPおよび次にIRES配列を含有するバイシストロニックカセットの次には単純ヘルペスVP16タンパク質(tTa)の活性化ドメインへ融合したtet応答性エレメント(TRE)の転写活性化因子のコード配列が続く。第2SPCBPをコードする核酸は、その発現が誘導性プロモーター、例えば最小CMVプロモーターへ融合した原核細胞テトラサイクリンオペレーター部位の7コピーが存在するtet応答性エレメント(TRE)のような誘導性プロモーターを介して調節されるように、発現カセット内へクローニングされる。両方の発現カセットを同一細胞(同時に、または一方を他方より前に、異なるベクター上または同一ベクター上で)内へ導入する場合は、2つの可変領域の発現間に以下の関連が存在するであろう。例えば構成性プロモーターの制御下にある第1SPCBPの発現は、tTaタンパク質の発現をもたらすであろう。このタンパク質は、第2SPCBPの発現を駆動するであろうTREに基づくプロモーターを活性化する。そこで、第2SPCBPの産生は、現在は第1SPCBPの産生に依存する。また別の態様では、1セットのSPCBPは、また別のセットのSPCBPの作製に依存して作製することができる。この態様では、SPCBP遺伝子の第1集団はTREエレメントの制御下でクローニングされるが、他のSPCBP遺伝子の第2集団は、上述したようにIRESおよびtTa遺伝子を用いて提供される。上述と同様に、発現した各個別SPCBPは、次にまた別のSPCBPの作製を刺激するであろう。このライブラリーは、現在は信頼できる方法で2つの結合タンパク質を発現する細胞ライブラリーである。その他のプロモーター-転写活性化因子系が記載されており、この概念において同様に適用可能である。同一増幅領域において、2つの特定SPCBPの比率が制御または固定される必要がある場合には、2つのSPCBPの発現を結び付けるためにこの依存性発現の方法が使用される。
【0099】
また別の態様では、SPCBP遺伝子は宿主細胞中へ連続的にトランスフェクトされる。少数の結合タンパク質の極めて多数の変種をサンプリングできるように1ライブラリーの限定数(2〜4)のSPCBPを作製する必要がある場合は、以下の方法を使用する。第一に、本発明者らは2つのSPCBPの混合物を生成する細胞ライブラリーについての態様を考察する。細胞は様々なベクター内へクローニングされた2つのSPCBP遺伝子を用いてトランスフェクトされるが、トランスフェクションは適切な時期に連続的に実施される。この態様では、第2SPCBP遺伝子は、第1SPCBP遺伝子を高レベルで既に発現する宿主細胞内へトランスフェクトされる。これは、その中で2つの結合タンパク質の一方だけが多様化されるライブラリーを作製するために有用である。また別のアプローチでは、第1SPCBP遺伝子はトランスフェクトされて、最小量の(しかし可変濃度で)SPCBPタンパク質を発現する細胞の集団以外の1つではない細胞クローンが同定される。次にこれらの細胞は従来どおりに第2SPCBP遺伝子を用いてトランスフェクトされ、複数の比率の2つのSPCBPを発現する細胞クローンが同定される。2つのSPCBPの混合物を作製するために、2つのSPCBPをコードするDNAは同一プラスミド上へコードされうる(以下を参照)。連続的トランスフェクションを実施するこの方法(および適切な場合はその間への組み込みの選択)は、10個までの異なるSPCBPを備える混合物の集団を作製するためにも適している。この態様では、細胞は最高5つのSPCBP遺伝子の第1集団および単離された最小量のSPCBPタンパク質(しかし可変濃度で)を発現する細胞を用いてトランスフェクトされる。複数のSPCBPを発現する細胞クローンの数を増加させるために、遺伝子の集団は好ましくは同一プラスミドに基づいており、これはさらに第1選択マーカーも有している(そのような発現カセットの説明については以下を参照)。選択された細胞集団は、引き続いて最大5つのSPCBP遺伝子の第2集団および第2選択マーカーを含有するプラスミドを用いてトランスフェクトされる(
図6)。生じた細胞は、今度は高度の可変比率および多数の異なる組み合わせで10個までの異なる結合タンパク質のライブラリーを発現する。類似またはより大きな多様性を発現する細胞を作製するための代替態様として、以下の方法を使用する。第一に、以前のとおりに、各々が5つまでの異なるSPCBPを発現し、1つの選択マーカーに基づいて耐性である細胞集団が生成される。平行して、複数の細胞集団は、各々が5つの異なるSPCBP遺伝子および異なる選択マーカー(例えばneo、gpt、zeo、bdlなど)を有するプラスミドを用いて各々をトランスフェクトすることによって生成される。第二に、次にこれらの細胞集団は融合され、そして両方の選択マーカーの存在について選択される。これらのハイブリッド細胞は、10個までの異なるSPCBPを発現する潜在力を有する。同様に、この方法は15または20個のSPCBPの集団を作製しなければならない場合には繰り返すことができる。細胞融合のための方法は、文献において広範に記載されており、当業者には公知である;それらはNorderhaug et al, 2002(Eur. J. Biochem 269:3205-10)に記載された方法に類似するが、その場合にはSPCBP以外のサブユニットは共発現されない。
【0100】
また別の態様では、抗体であるSPCBP遺伝子が、宿主細胞表面上でのアンカーを提供する適切なエレメントへの遺伝的融合によって提供される。上述した提示技術の方法のために記載したアンカーは、同一宿主細胞によって発現かつ固定される複数のSPCBPのためのアンカーとしても適している。好ましくは、アンカーシグナルには、大腸菌表面で提示するためのLpp-OmpA、lambおよびPhoE融合ならびにサッカロミセス・セレビジエ上で提示するためのAga-2pを含む宿主細胞上でタンパク質ライブラリーを提示するために使用して成功が得られる膜に基づくタンパク質、膜関連性タンパク質、ウイルスコートタンパク質および細胞壁成分が含まれる。
【0101】
これは特に、例えばそれらの細胞表面上で複数のSPCBPを発現するように遺伝子組み換えされており、そしてそれ自体がウイルス感染または腫瘍細胞に対して新たにターゲッティングされるヒトリンパ球の養子免疫伝達における細胞療法適用のために特に興味深い。現在は、単一特異性がそのような細胞上に移植されるアプローチが臨床において試験されている(Wang et al, Nat. Med. 1998, 4:168-72)。遺伝的融合を使用する代わりに、結合した細胞表面としての結合タンパク質の分画を得るためには選択的スプライシングを使用できる(ヒト抗体遺伝子について記載したことと同様;およびLucas et al, Nucleic Acids Res 1996:24:1774-9)。この構成は、例えば蛍光標識抗原もしくは標的エピトープもしくはSPCBPミモトープ(下記を参照)でフローサイトメトリーによる宿主細胞表面上の抗原結合についての直接的スクリーニング、または複数の抗原を様々なレベルで発現する細胞の、例えばセルソーティング法による直接的選択も可能にする。
【0102】
多数の適用では、SPCBP遺伝子には定位シグナルが提供される。好ましい態様は、培地(真核細胞のため)または細胞周辺腔(大腸菌などのグラム陰性菌のため)へのタンパク質の分泌を媒介する分泌もしくはリーダーシグナルを提供することである。また別の態様では、細胞の細胞内区画に向けられるSPCBPを発現する細胞ライブラリーが提供される。これは、抗体scFvフラグメントおよび単一ドメイン抗体について記載された方法(Rabbits, Trends Mol Med. 2003, 9:390-6;Marasco, Curr Top Microbiol Immunol. 2001;260:247-70)に類似する方法で、発現カセット内にSPCBPコード領域のどちらかの端で適切な定位シグナルを提供する、またはシグナルを提供しない(サイトゾルについて)ことによって実施される。そのようなライブラリーは、例えば宿主細胞自体内の細胞内標的が一つまたは複数のSPCBPによってノックアウトされる標的同定およびバリデーション試験において特に有用である。例えば、完全または冗長経路をノックアウトするためには、その経路の複数のタンパク質に結合するであろうSPCBPのライブラリーを生成できる。研究用ツールとして特に興味深くはあるが、このアプローチは一つまたは複数の遺伝子産物をノックアウトしなければならない遺伝子療法の研究および適用のために考察することができる。そして本発明の方法を使用すると、この作用を媒介するSPCBPの最適な組み合わせを決定することができる。例えば細胞内標的へSPCBPの特定の組み合わせをターゲッティングすることによって、この分子を隔離する、または複数のSPCBPの結合によってそれを分解してサイトゾルから除去するために標識することができる。例えば細胞にとっての毒性を伴わずにこの作用を媒介できるSPCBPおよびSPCBP間比率の正確な組み合わせは、本発明の方法によるライブラリーを生成することによってしか決定できない。
【0103】
また別の態様では、SPCBPの組み合わせについて初期の機能的試験のために特に有用である一過性の発現プロトコールが使用される。細胞、例えばHekTおよびCOS細胞は、複数のSPCBPをコードするプラスミドDNAを用いてトランスフェクトされる。次に、SPCBP混合物はその中で細胞が増殖される培地から回収される。そのような場合に好ましい態様は、別個のプラスミド上でクローニングされるSPCBP遺伝子を使用することである(例えば、
図2Aおよび
図3に記載したように);インプットプラスミドDNA間の比率は次に発現したSPCBP間の比率へさらに大きく影響を及ぼしてプリセット(preset)する。次にタンパク質混合物のライブラリーは、個別実験において様々な量のプラスミドを細胞内へトランスフェクトして、産物を収集することによって作製される。複数のプラスミドについてはコピー数は長期間にわたり培養するために使用される。
【0104】
一部の場合におけるSPCBPの混合物の発現は、宿主細胞のゲノム内へDNAを組み込まずに達成される。1つの態様では、高等真核生物における発現を検出するための発現プラスミドは、哺乳動物細胞中での長期エピソーム維持を可能にする、エプスタインバー(Epstein Barr)ウイルス由来のori/EBNA-1などのエレメントを備えている(例えば、Bode et al. 2001, Int. J. Gene Ther. Mol. Biol. 6:33-46参照)。1つの態様では、そのようなプラスミドには例えば
図4B〜Fに示した発現カセットを使用して複数のSPCBP遺伝子が備えられる。この場合には、SPCBPコード領域が同一プラスミドへクローニングされるのが好ましい態様である。また別の態様では、複数のSPCBP遺伝子は、宿主細胞ゲノム内へ組み込まれていないが独立して複製する人工染色体内へ導入される。これは、インテグラーゼによるACEターゲッティングベクターからの部位特異的挿入によって達成され、プラスミドが認識部位を組み込むことを必要とする(例えば、Nat Biotechnol. 2003 Jun;21(6):652-9参照)。
【0105】
下等真核生物では、独立してプラスミドを複製できるプラスミドが記載されている。1つの態様では、好ましくは2つまたは3つの発現単位(各一つまたは複数のSPCBPコード領域を用いて)はそのような独立して複製する発現ベクターの1つ、好ましくはpUC19またはpBr322に基づく発現プラスミドの中にクローニングされる。また別の態様では、好ましい2つまたは3つの発現単位のクローニング(一つまたは複数のSPCBPコード領域を用いて)は、異なる適合性群に属する2つの別個のプラスミド内へ実施されるので、したがって干渉されずに宿主細胞中で複製する。好ましい大腸菌に基づくプラスミドは、一方ではpBR322に基づくプラスミド(Col E1 oriを用いて)およびpSC101シリーズからのプラスミドなどの適合性プラスミドである(Manen et al, Gene. 1997 86(2):197-200)。好ましいセットには、例えばpBR322 Col E1 oriおよびpl5A oriのような少ないコピー数を媒介しかつ適合性であるoriを備えるpBLUESCRIPT誘導体が含まれる(Mayer, Gene, 1995, 163(1):41-6)。そのようなプラスミドは、好ましくは様々な選択性マーカー(カナマイシン(KmR)またはテトラサイクリン(TcR))を有している。SPCBP間の変動性は、この場合は異なるコピー数で維持される、したがって発現宿主細胞へ低いまたは高い遺伝子用量を提供するプラスミドを使用することによって達成される。そのようなプラスミド間の組み合わせは、特定SPCBP間の相当に大きな相違が望ましい(10:1以上の比率)場合に好ましい。
【0106】
真核細胞の一過性発現系は、特定比率のSPCBPを備えるSPCBP混合物の活性を迅速に検証するために有用である。SPCBPコード領域は、好ましくは別個のプラスミド内へクローニングされ(
図2Aにおけるように)、異なる結合タンパク質および異なる比率を発現する細胞ライブラリーが次に様々な組み合わせおよび量でプラスミドDNAを混合する工程によって作製される。導入されたDNAの総量は作製されるタンパク質の量に影響を及ぼすであろう。そのような構成は多数の欠点(前記参照)を有しており、SPCBPの大きな集団を作製するためには有用ではない;しかし、一過性発現は所定の結合部位の組み合わせの迅速な生成のためには有用である。
【0107】
1つの態様では、SPCBPコード領域は、宿主細胞ゲノム内への部位特異的組み込みを媒介する配列に挟まれている(
図1)。これらを伴わないと、導入遺伝子の組み込みは無作為に発生し、そして通常は、数コピーの導入遺伝子は時々は頭-尾縦列(head-to-tail tandem)の形状で同時に組み込まれ、組み込み部位および組み込まれるコピー数が1つのトランスフェクトされた細胞と他の細胞との間で変動する。
図1に示した組み換え部位の使用は、組み込みの正確な部位にベクターと宿主細胞ゲノムとの間の相同組み換えによってターゲッティングすることを可能にする。これは、導入遺伝子内にプロモーターを提供する、または組み込み部位に存在するプロモーターを使用する選択肢とともに、コード領域を高い転写活性の部以内へ挿入するための手段を提供する。SPCBPをコードする核酸の無作為または相同組み換え媒介性挿入は、宿主細胞のゲノム内へ、または細胞内器官内の核酸内への、または人工染色体内への任意の挿入を意味する。
【0108】
本明細書に記載した態様の一部では、同一もしくは高度に相同配列を備えたエレメントである、ベクター様式発現カセットが同一プラスミド上で使用される。好ましくは、SPCBP化合物間の最大に可変性の比率を備えるライブラリーを作製するためだけではなく、いったん宿主細胞内へ導入されると構築物全体の安定性に相同配列が及ぼす作用を最小限に抑えるためにも、様々なエレメント(様々なプロモーター、様々なIRES配列など)。必要であれば、そのようなエレメントには、例えばエレメントの失活ピースを置換もしくは削除することによって、非相同領域が提供される。1つの他の態様では、限定されたセットのSPCBPの高度に可変性の比率を備える細胞のライブラリーは、多様化した調節エレメントとこの限定されたセットのSPCBPとを結合することによって作製される。例えば、プロモーターまたはIRES配列内の所定のヌクレオチドが多様化され、これは一部の場合にはそのようなエレメントの制御下にあるSPCBPコード領域の発現変化をもたらすであろう。
【0109】
これらの場合の全てにおいて、極めて多数の細胞株を自動細胞収集装置および細胞選別方法を用いてスクリーニングすることができる。
【0110】
また別の態様では、好ましくは本発明の方法によって得られた少なくとも2つのSPCBPは、対のドメイン、好ましくは対のVHおよびVLドメイン、または対の重鎖Fdおよび軽鎖を備えるFabドメインを備える一本鎖Fvフラグメントを備える抗体と、好ましくはこれらの結合タンパク質が混合物を精製するための単純な経路を提供する類似の特徴を共有するような方法で結合される。また別の態様では、本発明の方法によって得られた1つのSPCBPが対のドメイン、好ましくは対のVHおよびVLドメイン、または対の重鎖Fdおよび軽鎖を備えるFabドメインを備える一本鎖Fvフラグメントとを備える抗体と、好ましくはこれらの結合タンパク質が混合物を精製するための単純な経路を提供する類似の特徴を共有するような方法で結合される。
【0111】
2.3.3. 同一宿主細胞中で複数の結合タンパク質を生成する状況におけるSPCBP遺伝子遺伝子発現の安定性の調節
単一ポリペプチド鎖をコードする核酸は、様々な機能的結合部位の混合物を作製するために同一細胞中で共発現させることができる。しかし、個々の可変領域の発現およびそれらの発現比率を制御することも重要であろうが、それはこれが最終結合タンパク質の混合物の組成に影響を及ぼすからである。
【0112】
発現レベルおよび発現の安定性は、特に導入遺伝子の組み込み部位の関数である。導入遺伝子がアクセス不能なクロマチンの近くまたはその中に組み込まれた場合は、その発現がサイレンシングされる可能性が高い。本発明では、本発明者らは、同一細胞中でのSPCBPの混合物を生成するための、抗体遺伝子を挟んだ場合に発現レベルの予測可能性、収率を増加させ、そして安定性を向上させるであろうエレメントの、使用について記載する。STAR(抗リプレッサーを安定化させる)配列(または抗リプレッサー、もしくはSTARエレメント;これらの用語は本明細書では互換的に使用する)は、導入遺伝子抑制を遮断する能力に基づいて真核生物ゲノムから単離された天然型DNAエレメントである。好ましくは、STARエレメントはヒトゲノムに由来する。STAR配列は、シス型における遺伝子の転写に影響を及ぼす、および/または作用を安定化および/または増強する能力を含む。STARエレメントが導入遺伝子を挟んでいる場合は、無作為に選択された組み換え細胞株の導入遺伝子発現レベルを、導入遺伝子のプロモーターの可能性のある最大発現に近いレベルまで増加させることが証明されている。さらに、導入遺伝子の発現レベルは多数の細胞世代にわたって安定性であり、確率的サイレンシングを発現しない。このため、STAR配列は、従来型トランスジェニック系を用いると容易に可能ではない導入遺伝子上のある程度の位置独立性発現を付与する。この位置独立性は、導入遺伝子のサイレンシングを生じさせるであろうゲノム位置に組み込まれた導入遺伝子が、STARエレメントの保護とともに、転写的に活性な状態で維持されることを意味する。そこで、抗リプレッサーエレメントは、高レベルの発現予測性、高レベルの発現および経時的な安定性発現を提供する(Kwaks et al, 2003. Nat. Biotechnol 21:553)。そのようなエレメントは、この引用例で示されたように所与の導入遺伝子の安定性かつ高レベル発現を付与する。本発明では、本発明者らは複数のSPCBPをコードする導入遺伝子の混合物の各個別コピーについて安定性および高レベル発現を媒介するためのその使用について記載する。類似の結果を達成するための、遺伝子座制御領域(LCR)、クロマチン開放エレメント、人工染色体(例、Chromos Molecular Systems社からのACE技術)、マトリックス付着領域(MAR)、スカフォールド付着領域およびユビキタスクロマチンオープニング(UCO)エレメントを含む様々なそのようなエレメントおよび他の系が当技術分野において同定されている。例えば、LCRは、宿主細胞ゲノム内へ組み込まれたときにシス型で結合された遺伝子上の完全生理学的発現レベルを付与する優性クロマチンリモデリングおよび転写活性化能力を有する転写調節エレメントである。以下の項では、本発明を「抗リプレッサーエレメント」について記載するが、他の例えば上述したエレメントなどの異なる制御エレメントは、それらが複数の遺伝子の高レベル発現を調節する機会を提供する限りは異なるSPCBP遺伝子の制御された発現を達成するために同等に適合する。
【0113】
好ましい態様では、SPCBP遺伝子のうちの少なくとも1つは1つの抗リプレッサーエレメントによって、またはSPCBP遺伝子のどちらかの末端に位置する2つの同一もしくは2つの異なる抗リプレッサーエレメントによって挟まれている(
図4B、C);また別の態様では、1つより多い、もしくはもしかすると発現する必要のあるSPCBP遺伝子の全部が抗リプレッサーエレメントによって挟まれている。1つの態様では、最大5つの異なるSPCBP遺伝子の全部が同一プラスミドに基づいており、また別の態様では、それらは別個のプラスミド上にある。また別の態様ではCHO細胞が宿主として使用される;また別の態様ではPER.C6細胞が使用される。
【0114】
同一細胞株内で発現したSPCBPの混合物の作製は、GMP条件下でさえ作製後に結果として生じるSPCBP混合物が安定性組成を有するような方法で、様々な鎖の安定性比率を必要とするであろう。次にそのような安定性組成は、安定性生物活性および安定性毒性プロファイルへ翻訳することができる。たった1つのSPCBPの発現が変化しても、それは組成に影響を及ぼし、このためにその生物活性も変化させるであろう。より予測可能でコピー数に関連する発現レベルを生み出すエレメントの提供は、さらに安定性レベルの異なるSPCBPを発現する細胞株を構築するためにも重要である。例えばライブラリー内で計5つのSPCBPを発現させなければならない場合は、それらのSPCBP遺伝子と隣接するために抗リプレッサーエレメントを使用し、それらの相対比率はほぼ当モルでなければならない。そのようなエレメントを使用することによって、結果として生じた細胞株の安定性を危うくすることなく極めて多数のSPCBP遺伝子を導入することができる。そこで、複数のSPCBP遺伝子を導入できるが、その場合には各SPCBP遺伝子について組み込まれたコピー数はまたその絶対発現レベルをある程度反映するであろう。そのようなエレメントを用いると、例えばトランスフェクション時にSPCBP遺伝子をコードするDNAの比率を操作する工程によって、SPCBP遺伝子の一部または全部の発現レベルの比率をはるかに容易かつ迅速に変化させる、または事前に決定することができるであろう。
【0115】
これは、SPCBPを発現する細胞ライブラリーを作製するために使用されるベクター内へのそのような抗リプレッサーエレメントの好ましい組み込みについても説明する;好ましくは、挿入される抗リプレッサーエレメントは上述したSTARエレメントである。
【0116】
また別の態様は、発現制御エレメントとしてマトリックス付着領域、もしくはMARを利用する。MARは周辺クロマチンのリモデリングと関連することが証明されており、したがって活性人工転写ドメインの形状で導入遺伝子発現を促進する。MARエレメントは、導入遺伝子カセットが真核宿主細胞の染色体内に共組み込みされた場合だけではなく、導入遺伝子カセットが組み込まれていない場合も高度に活性である。MARは、周辺のクロマチンの作用から近隣の遺伝子を隔離し、それによりコピー数依存性、位置非依存性の遺伝子発現を増加させることによって機能する。この理由から、MARは、タンパク質を発現する独立して形質転換された細胞の数を増加させ、これらの細胞によって極めて多量の組み換えタンパク質が生成されるのを促進する。全体として、MARはクローン単離を加速し、より高い生成率を可能にする。MARの例は、Zahn-Zabel et al.(2001)J. Biotechnology 87:29-42およびWO02074969A2に見いだすことができる。ニワトリリゾチーム5'MARは、CHO細胞中での安定性の導入遺伝子発現を大きく向上させると記載されている。
【0117】
MARおよびSTARは、転写すべきDNA配列の両側に配置することができる。例えば、これらのエレメントは5'ではプロモーターから約200bp〜約1kbに、そして関心対象の遺伝子の3'末端ではプロモーターから少なくとも約1kb〜5kbに配置することができる。さらに、1つより多いエレメントをプロモーターから5'末端に、または導入遺伝子の3'末端に配置することができる。例えば、2つ以上のエレメントはプロモーターから5'末端に配置することができる。導入遺伝子の3'末端にあるエレメントは関心対象の遺伝子の3'末端に、または3'調節配列の3'末端、例えば3'非翻訳領域(UTR)もしくは3'フランキング配列に配置することができる。クロマチンオープニングエレメントは、発現カセットの両側で挟まれていてよい(
図4D)、または発現カセットの5'末端に配置されてよい(
図4C)。特に複数のSPCBP発現カセットならびにSTARおよびUCOなどの複数の調節エレメントを全く同一のプラスミド内へ導入しなければならない場合は、サイズの限界があるので、好ましくはそれらを発現カセットの中央に提供できるようにエレメントの両端に向かう活性を有するエレメントを使用する(
図4C)。MARはさらに導入遺伝子とトランス型でコトランスフェクトされた場合に機能すると報告されているので(Zahn-Zabel et al.(2001)J. Biotechnology 87:29-42)、それらはSPCBP発現カセットと物理的に連結させるためにDNAクローニング段階を必要としないという長所を有している。その場合には、SPCBP発現カセットを有する発現ベクターのMARエレメントのサイズはもはや制限されない。それどころか、1.3kbという小さなMARエレメントが記載されているので、したがってシス型にある複数を包含することが実現可能である。MARはさらにまたシスおよびトランス型の両方で付加できると報告されており、この立体配置ではCHO細胞中での抗体の発現レベルを14倍に増加させる。それらが安定性に及ぼす作用の他にこれらのエレメントの他の1つの機能は、タンパク質を発現する独立して形質転換した細胞数も増加させ、そしてより多量の組み換えタンパク質を促進することにある。クローンの隔離および生成レベルは全体として高くなるので、好ましい態様では、本発明は、複数のSPCBPを生成する細胞株およびそのライブラリーを作製するためにこれらのエレメントを使用することによって実行される。
【0118】
好ましい態様は、ライブラリー構築に使用される発現ベクター1つあたり5つ以下の、および好ましくはベクター1つあたり3つの結合タンパク質コード領域を使用する。好ましくは、1つのプラスミドは3つより多いプロモーターおよび3つより多いIRES配列を含有せず、6つより多いSTARもしくはMARエレメントを含有しない。発現ベクターのサイズを20kbへ制限することが好ましく、5つより多い結合タンパク質が混合物中に必要とされる場合は、これらは2つの異なるプラスミドを使用するために、サイズが20kb未満のプラスミド内で機能的にはコードできない。5つより多い結合タンパク質を備えるライブラリーにとっての好ましい経路は、2セットの発現ベクターを使用することであり、好ましい経路は
図6に示した。
【0119】
ライブラリーを構成するための出発SPCBPは、それらの標的へ結合するために少なくとも1マイクロモル、好ましくは少なくとも100ナノモル、好ましくは少なくとも10ナノモル、および好ましくは0.1〜10ナノモルの親和性値を提示するのが好ましい。SPCBPに対する標的エピトープは、SPCBPによって認識または結合される標的上の領域である。2つ以上のSPCBPは、例えば結合タンパク質が相互に対する結合について競合するが、結合部位での異なるアミノ酸の使用に起因して標的を認識するために異なる結合部位の化学的性質を提示する場合は、重複するが異なる標的エピトープを有することができる。例えば、TNFを認識してこのサイトカインを無毒化してTNFへの結合について相互に競合する2つのSPCBPは、SPCBPの結合部位内または結合部位の近くに位置するアミノ酸が2つのSPCBP間で異なる場合にTNF上で異なる標的エピトープを認識すると定義されている。
【0120】
ライブラリーは、好ましくは5つ未満の異なるプラスミド、好ましくは3〜5つの異なるプラスミド上で存在する好ましくは10個未満の結合タンパク質を含有する。最適の活性について選択された好ましい組成物は、好ましくは10個未満の別個の結合タンパク質を備えるSPCBP混合物を含有する。好ましいのは、少なくとも2つおよび5つ未満の別個の結合タンパク質であり、好ましくは3つの別個の結合タンパク質である。ライブラリーのサイズは、100,000個以下の細胞クローンであり、好ましくは10〜1,000個の細胞クローンである。
【0121】
2.3.4. タンパク質混合物のスクリーニングおよび分析
本発明は、規定された結合特異性を有するタンパク質の混合物をスクリーニングするためにも適している。これらの化合物をコードする遺伝子は上述したように混合物として宿主細胞中へ導入され(
図3には、3つの異なるSPCBPタンパク質の例を示した)、様々な可変領域をコードする遺伝子の数個または多数のコピーを組み込んだ個別クローンが増大した。第1の態様では、これらのライブラリーをスクリーニングするために結合アッセイが使用される。上述した、抗体に適用される方法では、結果として生じた細胞株の上清が、様々な抗原に向かう反応性について、または上述したELISA、SPRなどのバイオアッセイにおいてスクリーニングされる。このために、組織培養およびELISAプレートを操作するためのロボットを使用して極めて多数の細胞株をスクリーニングすることができる。インビトロアッセイにおける結合の他に、SPCBPの混合物が機能活性およびバイオアッセイにおいて試験されることも記載されている。以下のアッセイ法を例として記載するが、このスクリーニング段階には他の多数のアッセイを適用できるであろう。
【0122】
SPCBPの混合物は、インビトロまたはインビボのいずれかで機能活性についてアッセイされる。
【0123】
免疫学的および有効性アッセイ
一部の機能的アッセイは、1群の免疫系に依存する活性を監視することができる。大多数のSPCBPにはFc-媒介性エフェクター機能が欠如しているが、例えばこれらが、スカフォールド自体を遺伝子組み換えすることによって、または他のSPCBP、もしくはFc領域もしくは抗SPCBP抗体と結合することによって提供されると、以下の免疫学的アッセイが実行可能になる。免疫グロブリンエフェクタードメイン活性、例えば細胞毒性活性についてのインビトロアッセイは、SPCBPが標的に対して免疫エフェクター機能を送達する能力を検出するために使用される。例えば、細胞培養アッセイを使用すると、補体依存性細胞毒性(CDC)またはSPCBP混合物によって媒介される抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)をアッセイすることができる。以下では1つのADCCアッセイについて説明する。Cr放出アッセイは、細胞媒介性細胞毒性をアッセイするために使用できる。末梢血リンパ球(PBL)をエフェクター細胞として調製し、他方標的化分子を発現する標的細胞に
51Crを取り付ける。標的細胞を洗浄し、次に平底マイクロタイタープレート内へ播種する。SPCBPと結合した標的細胞へPBLを添加する。標的細胞へTween-20を添加することによって最大放出量を決定し、他方PBLの非存在下で最小放出量を決定する。一晩インキュベーションした後、上清中へ放出された
51Crをシンチレーションカウンターで計数する。インビボアッセイには、動物、例えば疾患状態の動物モデルにSPCBP混合物を注射する工程が含まれる。例えば、動物は、例えば特定組織中で癌遺伝子を発現するトランスジェニック動物であってよい。また別の例では、動物は腫瘍細胞の異種移植片(例、ヒト腫瘍細胞)を備えるマウスである。SPCBP混合物(またはその他のリガンド)の有効性は、未治療または対照治療動物と比較して形成された腫瘍の時間、サイズ、および数を比較することによってアッセイできる。異種移植片が埋植されたマウスがヌードマウスである実施では、マウスには免疫系を再構成するためにヒトPBLを注射できる。免疫原性、クリアランスなどを含む、SPCBP混合物の他の生理学的パラメータもまた監視できる。
【0124】
細胞活性アッセイ
他の細胞活性アッセイには、細胞pHおよびカルシウム流速の評価、ならびに細胞挙動、例えばアポトーシス、細胞移動、細胞増殖、および細胞分化の評価が含まれる。分化および増殖についての多数の細胞培養アッセイは当技術分野において公知である。一部の実施例は以下のとおりである。
【0125】
胚幹細胞分化についてのアッセイ(特に、胚分化血液新生に影響を及ぼすタンパク質を同定する)には、例えば、Johansson et al.(1995)Cellular Biology 15:141-151;Keller et al.(1993)Molecular and Cellular Biology 13:473-486;McClanahan et al.(1993)Blood 81:2903-2915に記載されたアッセイが含まれる。
【0126】
リンパ球生残/アポトーシスについてのアッセイ(特に、スーパー抗原導入後のアポトーシスを防止するタンパク質およびリンパ球ホメオスタシスを調節するタンパク質を同定する)には、例えば、Darzynkiewicz et al., Cytometry 13:795-808, 1992;Gorczyca et al., Leukemia 7:659-670, 1993;Gorczyca et al., Cancer Research 53:1945-1951, 1993;Itoh et al., Cell 66:233 243, 1991;Zacharchuk, Journal of Immunology 145:4037 4045, 1990;Zamai et al., Cytometry 14:891-897, 1993;Gorczyca et al., International Journal of Oncology 1:639-648, 1992に記載されたアッセイが含まれる。
【0127】
T細胞拘束および発達の初期工程に影響を及ぼすタンパク質についてのアッセイには、Antica et al., Blood 84:111-117, 1994;Fine et al., Cellular Immunology 155:111-122, 1994;Galy et al., Blood 85:2770-2778, 1995;Toki et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88:7548-7551, 1991に記載されたアッセイが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0128】
樹状細胞依存性アッセイ(特に、天然T細胞を活性化する樹状細胞によって発現されるタンパク質を同定する)には、Guery et al., J. Immunol. 134:536-544, 1995;Inaba et al., Journal of Experimental Medicine 173:549-559, 1991;Macatonia et al., Journal of Immunology 154:5071-5079, 1995;Porgador et al., Journal of Experimental Medicine 182:255-260, 1995;Nair et al., Journal of Virology 67:4062-4069, 1993;Huang et al., Science 264:961-965, 1994;Macatonia et al., Journal of Experimental Medicine 169:1255-1264, 1989;Bhardwaj et al., Journal of Clinical Investigation 94:797-807, 1994;およびInaba et al., Journal of Experimental Medicine 172:631-640, 1990に記載されたアッセイが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0129】
T細胞または胸腺細胞増殖についてのアッセイには、Current Protocols in Immunology, Ed by J.E. Coligan, A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M. Shevach, W. Strober, Pub. Greene Publishing Associates and Wiley Interscience(Chapter 3, -In vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1-3. 19;Chapter 7, Immunologic studies in Humans);Takai et al., J. Immunol. 137:3494 3500, 1986;Bertagnolli et al., J. Immunol. 145:1706 1712, 1990;Bertagnolli et al., Cellular Immunology 133:327-341, 1991;Bertagnolli, et al., I. Immunol. 149:3778-3783, 1992;Bowman et al., I. Immunol. 152:1756-1761, 1994に記載されたアッセイが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0130】
サイトカイン産生および/または脾細胞、リンパ節細胞または胸腺細胞の増殖についてのアッセイには、Polyclonal T cell stimulation, Kruisbeek, A.M. and Shevach, E.M. In Current Protocols in Immunology. Coligan eds. Vol 1 pp.3.12.1-3.12.14, John Wiley and Sons, Toronto. 1994;およびMeasurement of mouse and human interleukin gamma., Schreiber, R.D. In Current Protocols in Immunology., Coligan eds. Vol 1 pp.6.8.1-6.8.8, John Wiley and Sons, Toronto. 1994に記載されたアッセイが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0131】
造血細胞およびリンパ球産生細胞の増殖および分化についてのアッセイには、Measurement of Human and Murine Interleukin 2 and Interleukin 4, Bottomly, K., Davis, L.S. and Lipsky, P.E. In Current Protocols in Immunology. J.E. e.a. Coligan eds. Vol 1 pp.6.3.1-6.3.12, John Wiley and Sons, Toronto. 1991;de Vries et al., J. Exp. Med. 173:1205 1211, 1991;Moreau et al., Nature 336:690-692, 1988;Greenberger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2931-2938, 1983;Measurement of mouse and human interleukin-6, Nordan, R. In Current Protocols in Immunology. J.E. e.a. Coligan eds. Vol 1 pp.6.6.1-6.6.5, John Wiley and Sons, Toronto. 1991;Smith et al., Proc. Natl. Aced. Sci. U.S.A. 83:1857-1861, 1986;Measurement of human Interleukin-11, Bennett, F., Giannotti, J. Clark, S.C. and Turner, K.J. In Current Protocols in Immunology. Coligan eds. Vol 1 pp.6.15.1 John Wiley and Sons, Toronto. 1991に記載されたアッセイが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0132】
抗原に対するT細胞クローン応答についてのアッセイ(特に、APC-T細胞相互作用に影響を及ぼす、ならびにT細胞作用を指令するタンパク質を、増殖およびサイトカイン産生の測定により同定する)には、Current Protocols in Immunology, Ed by J.E. Coligan, A.M. Kruisbeek, D.H. Margulies, E.M.Shevach, W Strober, Puh. Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience(Chapter 3, In vitro assays for Mouse Lymphocyte Function;Chapter 6, Cytokines and their cellular receptors;Chapter 7, Immunologic studies in Humans);Weinberger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:6091-6095, 1980;Weinberger et al., Eur. J. Immun. 11:405-411, 1981;Takai et al., J. Immunol. 137:3794-3500, 1986;Takai et al., J. Immunol. 140:508-512, 1988に記載されたアッセイが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0133】
その他のアッセイは、例えば、内皮細胞挙動、神経細胞増殖、神経細胞移動、精子形成、卵形成、アポトーシス、血管新生、内分泌シグナリング、糖代謝、アミノ酸代謝、コレステロール代謝、赤血球新生、血小板新生などに関する生物活性を決定することができる。
【0134】
細胞結合アッセイ
SPCBP混合物の機能性は、さらにまた細胞結合アッセイにおいても使用できる。SPCBP混合物は、SPCBP混合物によって認識される標的が存在する細胞を含む細胞集団へ結合させて標識することができる。この集団は、標的が存在しない、またはSPCBP混合物によって識別される関連分子が存在する細胞をさらに含むことができる。
【0135】
第1の例では、FACS分析を用いてSPCBP混合物について試験する。SPCBP混合物を直接的、または二次抗体を用いてのどちらかで蛍光体を用いて標識し、細胞へ結合させる。次に、細胞をFACS装置に通過させてSPCBP混合物に結合した細胞の数を計数する。細胞は異なるチャネルを用いて検出可能な蛍光体を用いて標識した別の抗体と接触させることもできる。混合物の結合は、SPCBP混合物の結合を用いて1つずつの細胞ベースで相関付けることができる(例えば、2D散布図を用いて)。
【0136】
第2の例では、SPCBP混合物は免疫組織化学検査を用いてアッセイする。SPCBP混合物を組織学的切片へ接触させる。切片を洗浄し、結合したSPCBP混合物を、例えば標準方法を用いて検出する。
【0137】
第3の例では、SPCBP混合物を例えば被験者生体のようなインビボでアッセイする。例えばNMR造影試薬または他の追跡可能な試薬を用いてSPCBP混合物を標識する。SPCBP混合物を被験者へ投与し、適切な間隔をあけた後、被験者内の局在位置を、例えば被験者の生体をイメージングすることにより検出する。
【0138】
上述したアッセイのいずれかを使用すると、最大効率を備える混合物、したがってこの混合物を生成する細胞クローンを決定することができる。SPCBPの混合物は、所定のリガンドに対して拮抗性、作動性(または活性化)作用を有しており、作用は個々の構成要素と比較して付加的または相乗的である。混合物は、他のSPCBPによって発揮される陽性作用を無効にするSPCBPを含有する可能性があるので、このため混合物の個々の化合物の活性に付加するよりむしろ正味の機能活性についてスクリーニングすることが重要である。付加的および相乗的作用の存在は、個々の化合物として試験した場合に所定の選択基準を下回っていて、通常は追求されない所定のSPCBPが、他のSPCBPと結合すると強力かつ有意な生物学的作用を示すことを意味する。炎症性および感染性疾患におけるSPCBP混合物の好ましい使用は、この混合物の異なるタンパク質化合物が立体障害に起因する受容体-リガンド相互作用の阻害などの拮抗作用または受容体上のリガンド結合部位もしくはリガンド上の受容体結合部位の干渉などの間接的作用を発揮する適用にある。その他の好ましい使用には、scFv、FabおよびIgG分子などの対のドメインを備える抗体と比較したときに質量当たりでより大きな効力または活性を備えるSPCBP混合物の使用が含まれる;そのような効力の上昇は、混合物の個々の構成成分間の相乗作用に起因する。単一ドメイン抗体は、ウイルスキャニオン部位、詳細には通常は病原体の遺伝的に可変性のコートタンパク質の内側に奥深く隠れている部位を認識するために特に適していると記載されている。このため好ましい適用には、scFv、FabおよびIgG分子などの対のドメインを備える抗体よりSPCBPによる方がはるかに容易に認識されるウイルスおよび病原体の無毒化が含まれる。同様に、酵素の阻害もSPCBPにとって好ましい使用である。免疫グロブリンスカフォールド(dAb、ラクダ抗体)に基づくSPCBPは下等真核生物中ではscFv、Fabおよびダイアボディ(diabody)分子などの対のドメインを備える抗体フラグメントよりも高レベルで生成されるので、そのようなスカフォールドに基づくSPCBP混合物のための好ましい産生宿主は、ピチア・パストリス、ハンゼヌラ・ポリモルファおよびサッカロミセス・セレビシエなどの下等真核生物である。グリコシル化ドメインへ融合しているSPCBPの混合物を生成するためには、好ましい宿主はCHOである。
【0139】
1つの態様では、細胞表面とも結び付いている(前記参照)複数のSPCBPを発現する細胞ライブラリーがFACSソーティングに供される。同様に、細胞選別法は細胞クローンのより迅速なクローニングのためにも使用できる。FACSに関しては、細胞は蛍光活性化セルソーター(例、Becton Dickinson Immunocytometry Systems社(カリフォルニア州サンホセ)から入手できるソーター;米国特許第5,627,037号;同第5,030,002号;および同第5,137,809号も参照)を用いて選別される。各細胞がソーターを通過するにつれて、レーザービームが細胞に付着した蛍光化合物を励起する。検出器は、もし存在すれば、そのような蛍光化合物によって放出された光線量を評価する。各細胞に結合した標識の量が定量され、少なくとも設定レベルの量の標識が検出されると、そのデフォルト経路から細胞を偏向させるために静電場が発生される。偏向した細胞は、そこで分離かつ収集される。結果として、SPCBP発現が低い、または全く伴わない細胞を廃棄し、高レベルのSPCBP発現を示す細胞を収集かつ培養することができる。異なる蛍光標識および多次元分析法を用いると、同一宿主細胞上で複数のSPCBPの発現を検出できる。
【0140】
抗体については、向上した抗体発現レベルを備える細胞株トランスフェクタントを選択するために使用されてきた特徴である、細胞表面のレベルと分泌されたタンパク質との間の相対的な量的相関が記載されている(Brezinsky et al, J. Immunol. Methods 277:141-55)。1つの態様では、CHO細胞などのトランスフェクトされた細胞を低透過性培地中で培養した後に、SPCBP細胞ライブラリーをFACSソーティングに供する。低透過性培地は、ウシ胎児血清を含む、または含まない、約40%ゼラチンを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)であってよい。低透過性培地は、培養内への分泌されたタンパク質の拡散を減少させ、それによって分泌されたタンパク質が、拡散したり他の細胞へ結合せずに発現元のCHO細胞の表面へ結合することを可能にする。次に細胞を低透過性培地から取り除き、細胞の表面に結合していない分泌されたSPCBPの一部分へ選択的に結合する標識された抗体へ曝露させる。標識された(分泌された/表面に関連するSPCBPに結合する)抗体は蛍光体または金属化標識とコンジュゲートさせることができる。細胞は、標識された抗体の検出に基づいて、例えば蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気セルソーティングを各々使用することによって選別する。FACSまたは磁気セルソーティングを用いて、分泌されてCHO細胞へ結合したSPCBPのレベルを検出し、高レベルのSPCBPを分泌する細胞、または特異的な相対比でSPCBPを発現する細胞を選択する。
【0141】
または、このライブラリーの細胞をゲルマイクロドロップの親和性マトリックス内に封入する。第1の場合では、細胞を関心対象の分泌された生成物に対して特異的であるマトリックス内でインキュベートする。分泌された生成物は分泌細胞の表面上の親和性マトリックスへ結合するので、引き続いてフローサイトメトリー分析およびセルソーティングのために特異的蛍光試薬を用いて標識する。マトリックス自体は、例えばアビジン化された特異的捕捉抗体を、事前にビオチン化された細胞表面へ結合させる工程によって作製する。低透過性の培地の使用(前記と同様)は、生成物の栄養共生を防止する(Frykman et al, 1998, Biotechnol Bioeng 59:214-226、およびHolmes and Al-Rubeai, 1999, J. Immunol. Methods 230:141-147)。また別のアプローチでは、ゲルマイクロドロップを使用する(Gray et al, 1995, J. Immunol. Methods 182:155-63におけると同様に)。そのような系では、ライブラリーの細胞は、特異的捕捉試薬を含有するアガロースビーズ中に個別に封入する。細胞は、その間にSPCBPを産生する短期間にわたり増殖させ、ビーズを収集し、フローサイトメーター内で選別する。
【0142】
最適比率を確立した後、この混合物中の別個の結合タンパク質の存在を以下のように決定する。インプットSPCBP遺伝子の全部が様々な標的へ結合するタンパク質をコードし、検査のために標的を得ることができる場合は、SPCBPの同一性を結合アッセイによって解明する。結合アッセイのための標的の一部または全部が欠如する場合は、同一性は宿主細胞ゲノム内のSPCBP遺伝子の存在を、例えばSPCBP特異的プローブおよびオリゴヌクレオチドを各々用いるサザンブロットまたはPCRによって分析することによって決定する。または、SPCBP遺伝子をコードするDNAは全SPCBP遺伝子へ結合するように設計されたオリゴヌクレオチドを用いて増幅させることによって回収し、そしてその物質をクローニングかつシーケンシングすることができる。また別の態様では、SPCBP特異的試薬を作製し(実施例5参照)、この分析のために「代理」結合試験を使用する。そこで本発明は、様々なタンパク質混合物の数百種の混合物を迅速にスクリーニングするための多数の方法を提供する。
【0143】
2.3.4. タンパク質混合物の精製
従来法では、ヒトの治療法に使用する前に、1つの主要分子種からなるタンパク質薬物を発現させ、均質性を得るまで精製する。一部の場合では、療法はタンパク質または他の薬剤と併用するとより効果的である。本発明は、少なくとも2つのSPCBPから構成される、少なくとも2つの主要分子種を含有するタンパク質性混合物を作製する方法を記載する。タンパク質性混合物の大規模製造は、それらを臨床使用するための必要条件であり、そして単純な精製方法は開発プロセスの重要な特徴である。生物薬学的タンパク質および特に抗体を精製するためには、研究用物質はしばしば抗原アフィニティークロマトグラフィーを使用する工程によって精製される。だがこれは工業規模および生物薬学的製造のためには商業的選択肢ではなく、そして特に複数の標的を認識するSPCBP混合物については治療用タンパク質混合物に対して商業的に実行可能な経路ではないであろうから、SPCBP構成成分によって認識される抗原または標的に依存せずに機能する精製方法を使用するのが本発明の好ましい態様である。1つの態様では、2つのタンパク質性化合物の構成成分をコードする遺伝子を同一宿主細胞中で共発現させ、混合物中に存在して機能的結合特異性を有する異なる主要分子種を当技術分野において周知の生化学的/生物理学的方法を用いて精製する。1つの態様では、本方法は選択された比率で規定数の結合タンパク質の混合物を作製するために使用される。1つの態様では、一つまたは複数の異なる結合特異性を含む主要分子種は、それらがコードする遺伝情報の最小部分(例えば、Fc領域、共通タグ、または他の共有するドメインもしくは特徴)を共有する;そのような共有された特徴は、混合物中の個々の化合物を追跡するための共通機構/アッセイを提供するであろう。また別の態様では、主要分子種は様々なSPCBPをコードする核酸間の相同性に起因して発生する類似の生物理学的/生化学挙動に起因して優先的に共精製される。例えば、免疫付着因子などの一部のキメラ分子は他のドメインに対して1つのドメインの異なるpIに起因する荷電双極分子を提示する(Wurm et al, in Antibody Fusion Proteins, p.281;Ed. Wiley, New York, 1999)。そのような分子は、イオン電荷に基づく分離技術では非理想的に挙動するであろう。混合物中のSPCBPは、好ましくは配列によって相互に関連しており、好ましくは同一タンパク質スカフォールドに基づいている。それらの結合部位は異なるであろうが、そのような分子の全体的構造、電荷分布およびサイズは高度に類似するであろう。このため、好ましくはSPCBPコード領域は少なくとも70%の配列相同性を有する。さらに、好ましい態様では、混合物中のSPCBPは、好ましくは2pH単位を超えて相違しないpI値を有する。
【0144】
本発明は、本方法を用いて生成される生物薬学的混合物をさらに提供する。タンパク質の精製方法は当技術分野において周知であり、プロテインA、プロテインG、プロテインL、アルブミンおよびその他の物質のマトリックスに基づくアフィニティークロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC、ヒスチジンタグ付加結合タンパク質に対して)、チオフィリックゲルクロマトグラフィー、分取ゲル濾過法、FPLCおよびHPLC、イオン交換クロマトグラフィーなどが含まれる。さらに、水性の2相抽出による分配または拡張床中でのクロマトグラフィー回収を適用できる。好ましくは、タンパク質性化合物は、それらが同一方法を用いて共精製できるように物理化学的特徴を共有する。この理由は、治療適用のためにはしばしば複数の精製工程が必要とされるので、本発明の好ましい態様は、混合物内の結合タンパク質の全部を精製するために同一の物理化学的精製方法を使用できるように70%の最小配列相同性を有する結合タンパク質を使用することにある。この例は、プロテインA(ヒトVHセグメントを含有する多数のヒトdAbはプロテインAに結合する(Akerstrom, B. et al.(1994)J Immunol Methods 177:151-163))、もしくはプロテインL(ヒトVLドメインに対して(Holt, L.J. et al.(2003)Trends Biotechnol 21:484-490.))、もしくはアルブミン(所定のアフィボディ変種)などの一般的なアフィニティマトリックスリガンドにその全てが結合する結合タンパク質を使用すること、または混合物中の結合タンパク質の全部を認識した特別に選択した抗体またはその他の結合タンパク質を使用することである。結合タンパク質ライブラリーの全メンバー上の一般的な結合リガンド部位を提供する方法は記載されている(WO9920749A1)。
【0145】
結合タンパク質の単一ポリペプチド鎖をコードする核酸間の配列相同性は、タンパク質混合物の活性成分を得るために必要とされる精製工程の回数を減少させ、そして同一組み換え宿主細胞起源から異なる結合タンパク質を同時に回収するための手段を提供する。例えばラクダ由来の可変ドメインなどの単一ドメイン結合ユニットは、上述したように、そしてWO94/25591(Unilever)に記載されるように、特定SPCBP産物に向けて調整された生成および精製システム中で、下等真核生物宿主中で容易かつ便宜的に生成される。1セットのSPCBPのための基本スカフォールドが同一であれば、このスカフォールドによって決定される混合物内の結合タンパク質の多数の特徴が類似になる可能性もまた高い。例えば、多数のVHHは極度に熱安定性であり、これはそのようなVHHの混合物の抗原結合能力の消失を伴わずに低温殺菌または他の熱処理を可能にする。SPCBP間の相同性率(%)が高いほど、タンパク質が類似の物理化学的特性を共有する、そしてこれらのタンパク質を複数の方法で共精製できる可能性が高くなる。好ましくは、タンパク質は70%、より好ましくは80%、好ましくは90%の相同性を共有する。好ましくは、ライブラリー構造内の許容部位として使用されないSPCBPのスカフォールド内の領域は、85%、好ましくは95%相同である。相同性率は、SPCBPコード領域間、もしくはそれらの部分間の核酸における相違をスコア付けする工程による、または例えば1つのSPCBPコード領域もしくはそれらの部分が設定されたストリンジェンシー条件下でそれが他のSPCBPコード領域とハイブリダイズするかどうかを決定するためのプローブとして使用されるハイブリダイゼーション実験によるような経験的方法によるどちらかで決定される。この方法については、当技術分野において幅広く記載されている。
【0146】
単純な精製方法は、多数のバイオアッセイを実施する前にもまた好ましい。これは、ときどきはバイオアッセイを妨害する汚染物質を除去するため、および/またはアッセイの前に混合物中の結合タンパク質を濃縮させるために必要になるであろう。
【0147】
ライブラリーおよび組成のスクリーニングは、特定発現様式に関連するSPCBPの所定の最適混合物およびそのような最適混合物を生成する細胞株を同定する。1つの態様では、本発明の方法および組成物を用いて生成される情報は、例えばSPCBPの同等混合物を生成する細胞株または産生細胞もしくは細胞株を開発するために利用される。また別の態様では、選択された組成を備えるSPCBPを発現する細胞は、全細胞またはそのフラグメントを含有する核酸のどちらかとして、SPCBPコード領域を発現する産生細胞を生成するために使用される。例えば、産生細胞の特徴をSPCBP発現細胞の特徴と結合させるためには、細胞融合が使用される。
【0148】
3. SPCBP混合物の組成物の適用
現在までの大多数の実験は抗体、および特にモノクローナル抗体を用いて実施されてきた。次の項では、MoAbの使用によって例示されるタンパク質の混合物の適用について記載するが、同様にSPCBPの混合物もまた想定できる。多数の治療適用のためには、1つの分子内へ結合された異なるエピトープを認識する結合タンパク質の使用が想定されてきた。例えば、癌細胞およびエフェクターリンパ球などの2つの異なる標的をターゲッティングする分子が癌免疫療法の分野において開発されている(Repp, R. et al.(2003)Br J Cancer 89:2234-2243.)。単一結合タンパク質は、二重特異性試薬を提供するために、直接融合または多量体化ドメインへの融合を用いて組み換え工学技術によって結合されてきた。しかし、特別に組み換え生成された融合タンパク質は、例えばタンパク質分解に起因するそれらの安定性における主要な制約を示しており、そしてしばしば個々の構成成分と比較すると発現レベルの減少を提示する。例えばモノクローナル抗体およびインターフェロンと比較すると、それらの生物薬学的開発はしばしば非常に長期間を要し、よりリスクが高く、はるかに困難なプロセスである。さらに、結合部位間で物理的結合を維持すること、そして混合物中の他の結合タンパク質とは関連しない別個の実体として複数の結合タンパク質を得ることは必ずしも望ましくない。そこで本発明者らの発明は、同一細胞内で生成される個々の結合タンパク質のカクテルを利用する。本発明の1つの適用は、その中で異なる結合タンパク質が標的上の異なるエピトープを認識する、同一標的に向けられた結合タンパク質の集団を構築することである。本発明のまた別の適用は、異なる標的上のエピトープに向けられる結合タンパク質の集団を構築することである。例として、本発明者らは、抗体の混合物が使用される実施例について記載する;抗体混合物と同様に、同一標的もしくは抗原上の異なるSPCBPの混合物、異なる標的もしくは抗原上の異なるSPCBPの混合物、同一もしくは異なる標的もしくは抗原上の異なる標的もしくは抗原上のSPCBPの混合物に対する適用がある。
【0149】
ウイルスの中和
抗ウイルスMoAbの混合物は、MoAb療法と比較して治療の臨床有効性を増加させる。さらに、ウイルス回避変異体(escape mutant)が発生する確率および長期療法に伴うウイルス耐性の可能性が減少する。ウイルスの複数の異なるエピトープまたはサブタイプに結合する抗体が含まれる。コンフォメーション依存性抗体よりも回避変異体の作用を示す傾向の少ない、線状エピトープに向けられた抗ウイルス抗体を使用できる。抗体混合物中に存在する複数の結合特異性の作用は、MoAbを使用した場合に比べてウイルスクリアランスに対する強力なシグナルを提供する。
【0150】
MoAbの混合物は、多数のウイルスの中和および排除において優れた作用を示してきた。
【0151】
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
HIV-1感染症は、未治療のまま放置されると後天性免疫不全症候群(AIDS)の発生をもたらす。HIV-1感染中には、HIV-1エンベロープ糖タンパク質分子gp41およびgp120上の様々なエピトープに対して向けられる中和抗体が発生する。近年、多数のヒトモノクローナル抗HIV抗体が単離され、広範囲に特性解析されてきた。これらのMoAbは、HIVウイルス伝播を遮断することにおけるそれらの有効性について個別に、そして非ヒト霊長類と組み合わせて試験されてきた。1992年に公表された、高力価のHIV中和抗体を含有するHIV-1血清陽性血漿の投与が行なわれた臨床試験では、HIV-1ウイルス血症および多数の日和見感染症の減少が結び付いていた。数例の研究グループは、引き続いてHIV-1血清陽性血漿の投与がAIDSを決定付ける初回事象の遅延および臨床症状の改善を生じさせると発表している。しかし、受動免疫療法に対する熱狂は、抗体がウイルスを排除できないこと、そして患者において中和回避変種の発生を生じさせたことが見いだされて以降に静まった。天然HIV-1感染中に誘導された抗体はウイルスを不良にしか中和できず、HIV-1感染に対する受動免疫療法のために使用される高免疫血清の低力価を生じさせることが証明された。さらに、自然感染中に発生する一部の抗体は感染を増進する可能性さえあることが証明された。HIV-1の抗体療法のためには、強力かつ明確に特性付けられた中和モノクローナル抗体が必要なことが認識された。これらの初期の所見が、HIV-1エンベロープ糖タンパク質に対するヒトモノクローナル抗体の開発に拍車をかけたのである。近年、HIV-1 gp41およびgp120ウイルスコート糖タンパク質に対する多数のヒトモノクローナル抗体が単離され、インビトロでのそれらのウイルス中和能力について特性付けられている。非ヒト霊長類モデルにおいて行なわれたHIV感染および伝播のその後の実験は、異なるHIV-1エンベロープ糖タンパク質エピトープを標的とするヒトモノクローナル抗体を組み合わせて使用すると強力な相乗作用を示すことを証明してきた。ヒト抗HIVモノクローナル抗体の組み合わせはHIV-1に対する受動免疫予防法のために臨床的に利用できることが提案されている。これらの実験は、3〜5つの抗HIV MoAbの混合物が周産期および出生後HIV伝播を効率的に防止することを明確に証明している
V。
【0152】
・狂犬病ウイルス
狂犬病は、中枢神経系の狂犬病ウイルスへの感染によって誘発される急性の神経系疾患である。いったん臨床症状が出現するとほぼ必ず致死性であるので、狂犬病ウイルスは、様々な野生生物種が広範囲の病原体保有者であるためにヒトおよび家畜動物の感染にとって重要な脅威であり続けている。受動免疫療法のためには、狂犬病免疫個体または免疫されたウマのプール血清由来IgGが使用される;抗狂犬病免疫グロブリンは高価であり、供給不足であるか存在しないかのどちらかである。このため、狂犬病感染の受動免疫療法において使用するための、抗体、好ましくはヒト抗体の混合物を生成するための組成物および方法に対する必要がある。3つのヒトMoAbの混合物が、致死的狂犬病感染からマウスを保護する際のヒトポリクローナル抗狂犬病Igと同等に有効であることが証明されている
vi。
【0153】
・B型肝炎ウイルス
組み換えHBVワクチンは、能動免疫法を通して長期免疫性を付与する、HBVを予防するための安全かつ有効な手段を提供する。このワクチン接種後の緩徐な保護の開始とは対照的に、HBVに対する抗体を用いた受動免疫療法はウイルス伝播および感染に対して即時性ではあるが短期間の保護を提供する。抗ウイルス薬を用いた慢性B型肝炎感染の治療は、ウイルスクリアランスの欠如、応答の消失または薬物耐性変異体の発生を特徴とする。持続性ウイルス感染を除去する際の中和抗体の重要性が証明されており、化学療法薬と抗体との併用療法は付加的な治療作用をもたらす。抗体は、HBVが細胞内へ侵入することを遮断することによって感染を阻害すると考えられる。そのような受動免疫療法は、HBV陽性物質(刺切傷害)に曝露した個体およびHBV保菌者である母親の新生児、肝臓移植を受けている患者にとって望ましい。現在、そのような治療は、抗B型肝炎表面抗原抗体陽性のドナーから得た血漿由来のポリクローナル抗体調製物であるB型肝炎免疫グロブリンを用いて実施されている。この血清の入手可能性は限定されており、さらに血液製剤の使用に関する価格および安全性に関する懸念から、代替療法の開発が必要である。ヒトモノクローナル抗体は、長期免疫療法にとって安定性かつ再現性の起源を意味するために有益であろう。しかし、研究は、S抗原に向けられたモノクローナル抗体およびチンパンジーにおけるHBVに対する中和能力はHBV感染を遅延させたが防止はしなかったことを証明している。一部には、これはモノクローナル抗体にもはや結合され得ないS抗原における変異体である回避変種の発生によって引き起こされた可能性がある。同様に、回避変異体は、モノクローナル抗体を用いた臨床試験において肝臓移植後の患者において発生する。このため、単一モノクローナル抗体を用いた治療は非効果的かつ不十分である可能性がある。B型肝炎ウイルス表面抗原に対する2つのヒトMoAbが、慢性B型肝炎感染のマウスおよびチンパンジーモデルにおいて試験された(Eren, R. et al.(2000)Hepatology 32:588-596)。これら2つの抗体の混合物を両方のモデルに投与すると、ウイルス量の即時減少がもたらされた。抗体の組み合わせは、ウイルス量を減少させることと肝臓感染の阻害の両方において、ヒトプール血清由来の市販のポリクローナル抗体調製物よりも良好に機能した。2つの抗体の混合物は、慢性HBV感染症を有する患者において第I相臨床試験で試験されており、安全で、ウイルス量およびB型肝炎表面抗原レベルを減少させることが証明されている(Galun, E.(2000)Hepatology 35:673-679)。
【0154】
・一般にウイルス性疾患に対して、抗ウイルスSPCBPの混合物の機能的アセンブリーは、治療に抵抗性であるウイルス回避変異体の確率を減少させ、そして長期療法に伴うウイルス耐性の可能性を低下させることによって、モノクローナル抗体療法と比較して治療の臨床的有効性を増加させることができる。混合物中には、ウイルスの多数の異なるエピトープへ結合する抗体を含めることができる。より広い患者集団に対して薬物の利用性を広げるために、種々のサブタイプのウイルスに対する抗体を含めることもまた実行可能である。さらに、コンフォメーション依存性SPCBPよりも回避変異体の作用を示す傾向の少ない、線状エピトープに向けられた抗ウイルスSPCBPを追加することができる。SPCBP混合物中に存在する複数の結合特異性の作用は、モノクローナル抗体を使用した場合に比べてウイルスクリアランスに対する強力なシグナルを提供できる。その抗原へ結合するために、異なる精細な特異性を備える本質的に1つの結合部位の混合物に対する適用もある。例えば、多数のウイルス抗原を用いる場合と同様に抗原が突然変異する傾向を示す場合は、治療が進行するにつれて、抗原上のエピトープを第1結合タンパク質の結合が失われる方へ変化させる可能性がある。例えば同一スカフォールドに基づくが最初とはわずかな変化および類似の結合活性を備え、しかし結合部位においてある範囲のアミノ酸変化を提供する混合物を使用した場合は、これらの突然変異は、混合物中の一部の種の結合には影響を及ぼすが、類似の、強度であるが異なる結合化学的性質を備える他の種の結合には影響を及ぼさない。そのような場合は、抗原と相互作用するために別個の結合化学的性質を使用するのが好ましく、したがってSPCBPは配列においてできる限り非関連性であるべきである。
【0155】
毒素の中和
受動免疫は、長年にわたり毒素に対する貴重な予防的および治療的アプローチとして確立されてきた。血漿ドナー間での感染性疾患の罹患率および規制官庁によって製造業者へ課される安全性および有効性の規制要件が高まっているために一般的受容性が減少しているにもかかわらず、従来型のヒト血漿由来ポリクローナル抗体調製物は依然として多くの場合に患者が利用できる唯一の製剤である。
【0156】
・破傷風毒素(Lang, A.B. et. Al.(1993)J. Immunol. 151:466-472)。3つのヒト抗破傷風トキソイドMoAbの混合物は、相乗作用的に作用し、動物モデルではこの毒素に対する完全な保護をもたらすことが証明された。たった0.7mgのヒトモノクローナル抗体混合物のみが、受動免疫のために使用される市販されているヒトポリクローナル抗血清170mgと同一力価を生じた。
【0157】
・ボツリヌス(Botulinum)毒素(Nowakowski, A. et. al. Proc. Natl. Acad. Sci. 2002, 99, 11346-11350)。ボツリヌス毒素はヒト麻痺性疾患であるボツリヌス中毒を誘発し、バイオテロリズムにとって高リスク物質の1つである。この毒素の1つに対して生成された3つの異なるMoAbは、単一物質としてはこの毒素を有意に中和することに失敗した。これとは対照的に、2つのMoAbの組み合わせは、LD50の20倍の用量で完全に遮断した。3つのMoAbの組み合わせは、動物実験においてこの毒素の50%致死量の450,000倍を中和した。これはヒト超免疫グロブリンより90倍高い力価である。重要にも、抗体を混合するとその機能的結合親和力の大きな上昇を誘導することが見いだされた。これらの試験は、自然ポリクローナル免疫反応の力価がたった3つの抗体に帰せられることを証明しており、これは限定された数の抗体しか含んでいないSPCBP混合物から同等に強力な活性を予測できることを示唆している。
【0158】
腫瘍細胞の殺滅
腫瘍細胞の抗体媒介性殺滅は、数多くの様々な機構を包含している。腫瘍細胞表面への抗体の結合は、補体系および/または悪性細胞を攻撃する免疫エフェクター細胞の構成成分を補充する可能性がある。これらの殺滅工程は、細胞表面上の高密度の抗体分子から恩典が得られると想定されている。高密度の細胞表面結合抗体は、腫瘍細胞表面上でアップレギュレートされる分子を標的とする工程によって達成できる。実際に、成功している抗腫瘍MoAbであるハーセプチンおよびリツキシマブ(Rituximab)は高度に発現した腫瘍標的へ結合するが、これはそれらの有効性にとって極めて重要であると考えられる。細胞表面結合抗体の高密度は、腫瘍細胞表面上の複数の分子を標的とする工程によってもまた達成できる。別個の標的は高度に発現している必要はないが、それは複数の標的が高密度の抗体装飾に寄与するためである。そこで、抗体療法にとっては準最適であると見なされてきた腫瘍標的が、結合タンパク質の混合物の状況では有用である。
【0159】
腫瘍細胞表面への抗体の結合は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)などの作用を直接的に発揮することもできる。抗体誘導性アポトーシスを支配するプロセスは、まだ完全には解明されていないが、多数の異なる細胞表面分子のより高次の架橋結合がアポトーシスを誘導することは証明されている。一部の一価抗体フラグメントと同様に、一部のSPCBP混合物もアポトーシスを効率的に誘導する。
【0160】
・乳癌(Spiridon, C.I. et. al. Clin. Can. Res. 2002:8, 1720-1730)。Herceptin(商標)は、Her-2/neu受容体を過剰発現する乳癌を有する女性を治療するために登録されたヒト化MoAbである。前臨床試験では、Her-2/neu受容体の異なるエピトープに対する3つのMoAbの混合物は動物試験において腫瘍増殖を防止することについて別個のMoAbより強力であったことが証明されている。
【0161】
・非ホジキンリンパ腫(NHL)。リツキシマブは、NHLを含むB細胞腫瘍上で過剰発現したCD20分子へ結合するキメラモノクローナル抗体である。最近、Amgen社は、ヒト抗CD22モノクローナル抗体であるエプラツズマブをリツキシマブと結合した第II相臨床試験を開始した。CD20と同様に、CD22はB細胞およびB細胞腫瘍によって発現する細胞表面分子である。この臨床試験はまだ進行中であるが、現在入手できるデータは2つのMoAbの併用療法が安全であり、応答する患者および完全寛解の数を上昇させることを証明している。これらの結果は、2つのMoAbの併用が客観的臨床エンドポイントを用いて測定した抗腫瘍療法の効力を増加させることを示している。
【0162】
サイトカインの中和
前炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、数種の慢性炎症性疾患の病因に決定的に含まれている。TNF-αに対するMoAbは現在、慢性関節リウマチ(RA)およびクローン病の治療のために使用されており、臨床的および商業的の両方の観点から生物工学産業によって作製された、最も成功している生物薬剤に属する。
【0163】
インターロイキン1(Il-1)は、RAの進行を媒介することに主要な役割を果たすまた別のサイトカインである。IL-1は軟骨破壊にとっての主要な原因となると思われ、他方TNF-αは炎症性反応の重要な媒介因子である。動物モデルにおいては、TNF-αまたはIL-1どちらかの遮断はRAを部分的にしか制御しないが、他方抗TNF-αおよび抗IL-1分子の組み合わせはより優れた有効性を達成することが証明されている(Feige, U. et. Al.(2000). Cell. Mol. Life Sci. 57:1457-1470)。そこで、RAなどの慢性炎症性疾患における2つの外見上は独立した病理学的経路を妨害する、TNF-αおよびIL-1またはサイトカインの他の組み合わせを同時に遮断する結合部位の混合物を開発することができる。
【0164】
データはまだ乏しいが、抗TNF MoAbの組み合わせが競合的かつアロステリックなTNF遮断機序の補完的作用を通してTNFを相乗作用的に中和することが証明されている。このように、SPCBP混合物中に存在する協同的抗TNF結合タンパク質は最も効率的に中和し、用量および費用の減少をもたらすであろう。
【0165】
このようにSPCBPの混合物は、HIVおよび狂犬病のようなウイルス、細菌、真菌および寄生虫を含む病原体と闘うのに適している。現在はポリクローナル血清またはγグロブリンが使用されているが規定されたSPCBP混合物と置換することのできる他の例には、狂犬病、肝炎、水疱-帯状疱疹(Varicella-Zoster)ウイルス、ヘルペスまたは風疹などの疾患が含まれる。SPCBP混合物を用いて治療できる細菌性疾患には、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、ヘモフィルス(Hemophilus)属、ナイセリア(Neisseria)属、シュードモナス(Pseudomonas)属および放線菌類によって誘発される疾患である髄膜炎が含まれる。標的には、さらにまたリポ多糖(LPS)、リピドA、腫瘍壊死因子αまたはLPS結合タンパク質などの細菌性敗血症に関係する標的が含まれる。これらの病原体の一部は複数の血清型中で発生するが、様々な血清型を中和するためには1つではなく複数のSPCBPが必要とされる。SPCBPの混合物は、結合特異性の選択によって、極めて広範囲の治療される血清型を提供するので、このために同一SPCBP混合物を用いてより多くの患者を治療できる。これやその他の理由から、この混合物は、患者における疾患または傷害を検出するために適合する診断薬および診断キットの一部を形成することもできる。
【0166】
SPCBPの混合物は、非ホジキンリンパ腫(NHL)ならびに乳癌および大腸癌のような上皮細胞癌などの腫瘍疾患の治療においてもモノクローナル抗体よりはるかに効果的である可能性がある。抗体を用いてNHL上のCD20およびCD22の両方をターゲッティングする工程は、別個の抗体を用いて腫瘍細胞をターゲッティングする工程よりはるかに効果的であることが既に証明されている。腫瘍疾患においてSPCBPの混合物に対して適合する標的抗原は、CD19、CD20、CD22、CD25(IL-2受容体)、CD33、IL-4受容体、EGF受容体、突然変異EGF受容体、胎児性癌抗原、前立腺特異的抗原、ErbB2/HER2、Lewis
y炭水化物、メソテリン(Mesothelin)、ムチン-1、トランスフェリン受容体、前立腺特異的膜抗原、VEGFおよび受容体、EpCAMおよびCTLA-4を含めて多数ある。特にSPCBPの混合物によってターゲッティングされると必ずしも抗体-Fc領域媒介性エフェクター機能に依存することなく調節されうる抗原に対しては、これは有用であろう。例には、複数のリガンド-受容体相互作用、または受容体間相互作用および受容体のEGFRファミリーにおけるような対合の効率的な遮断、または受容体上への作動性作用の誘導、またはアポトーシスの誘導が含まれる。相乗作用は、抗血管新生および抗増殖作用を備えるSPCBPなどの、疾患における異なる標的および経路に結合するSPCBPの混合物を用いた場合に相乗作用を見ることができる。さらにまた、当技術分野においては、全部が1つの標的エピトープに結合するが、抗原への結合については異なる親和性へ翻訳される異なる結合化学的性質を備える本質的に高度に関連するSPCBPの混合物に対する適用がある。この混合物は、例えば変化した(向上または減少した)親和性を備える点突然変異体と結合された1つの単離されたSPCBPである。インビボ充実性腫瘍への浸透の有効性は結合部位障壁に起因して高親和性抗体については限定されるが、それでも腫瘍内での実質的蓄積を達成するためには最小の親和性が必要とされる。本明細書に記載した方法を用いると、SPCBPの混合物を確立できる。そのような混合物を使用すると腫瘍中での蓄積を増加させることができ、そして構成成分およびそれらの発現レベルを選択することによって最良にバランスの取れたカクテルを見いだすことができる。そのような混合物は、好ましくは個々の構成成分より活性であり、相乗作用的に作用する。
【0167】
SPCBPの混合物は、疾患を媒介する、またはその症状を悪化させる際に複数の因子が何らかの方法で関係している例えば炎症性疾患の分野において、複数の異なる標的を中和するのにもさらにまた適している。これらの疾患の例は、慢性関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、インスリン依存型糖尿病、糖尿病および乾癬である。これらの疾患の多数にとって最適な治療は、循環中の病因物質および/または患者における特異的炎症反応において標的とされる細胞表面上の病因物質の中和または阻害を含む。自己免疫および炎症性疾患では、適合する標的は、一般にインターフェロン、サイトカイン、インターロイキン、ケモカインおよび免疫系の細胞上の特異的マーカー、特にα-インターフェロン、α-インターフェロン受容体、γ-インターフェロン、γ-インターフェロン受容体、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子受容体、HLA-クラスII抗原受容体、インターロイキン-1β、インターロイキン-1β受容体、インターロイキン-6、インターロイキン-6受容体、インターロイキン-15、インターロイキン-15受容体、IgEもしくはその受容体、CD4、CD2、およびICAM-1である。
【0168】
混合物は、さらにまたボツリヌス神経毒に由来するクロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、炭疽菌、疱瘡、出血熱ウイルスおよびペスト菌を含む、生物戦争の作用物質によって媒介される作用を中和するのにも適している。本明細書では、1つの例としてボツリヌス毒素の中和について考察する。公知の最も有害な物質であるボツリヌス毒素は、ヒト麻痺性疾患であるボツリヌス中毒を誘発し、バイオテロリズムにとって高リスク物質の1つである。毒素中和抗体は、曝露前もしくは曝露後予防法または治療のために使用できる。少量のウマ抗毒素およびヒトボツリヌス中毒免疫グロブリンの両方が存在しており、現在は成人および乳幼児ボツリヌス中毒を治療するために使用されている。組み換えモノクローナル抗体は、感染性疾患のリスクを全く伴わない抗毒素を無制限に供給することができ、血漿分離交換法のためのヒトドナーを必要としない。1パネルのヒトおよびマウスモノクローナル抗体を超免疫ドナーおよび免疫マウスのBリンパ球から、ファージ抗体提示技術を用いて生成された。単一モノクローナル抗体および組み合わせは、それらが致死量の神経毒からマウスを保護する能力について試験された(Nowakowski, A. et al.(2002)PNAS 99:11346-11350.)。単一モノクローナル抗体は致死量の毒素に対するマウスの有意な保護を示さなかったが、毒素上の異なるエピトープに対するたった3つのモノクローナル抗体の組み合わせは極めて強力な保護を生じた。3つのモノクローナル抗体の組み合わせは、ヒト超免疫グロブリンより90倍高い力価である、ボツリヌス毒素の致死量の450,000倍を中和した。重要にも、モノクローナル抗体混合物の効力は、主として機能的抗体結合親和性における大きな増加に起因した。そこで、ボツリヌス神経毒に対するSPCBPの混合物の費用効果的で、制御された効率的産生を可能にする方法は、ボツリヌス中毒およびその他の病原体ならびに生物学的に脅威をもたらす物質を治療および予防する道を提供する。この試験で証明されたように、ボツリヌス神経毒上の非重複エピトープへ結合した3つの抗体の混合物は、上昇した総合的親和力のために、毒素中和に相乗作用を有した。
【0169】
結合タンパク質の混合物は、結果として類似の結合特異性および親和性を備える、最も単純な形態では同一SPCBPのアミノ酸変異体から同一エピトープに向けられた複数のSPCBPのより複雑な混合物である、全部が同一標的に結合するSPCBPファミリーの複数のイディオタイプを提供する工程によって、患者における抗イディオタイプ反応を遅延させるためにもさらに適用できる。
【0170】
結合タンパク質の混合物は、免疫毒素、イムノリポソーム、放射性同位体標識バージョン、イムノコンジュゲート、プロドラッグ療法のための抗体-酵素コンジュゲート(ADEPT)、イムノポリマー(Allen,(2002)Nat Rev Cancer 2:750-763)を含む、タンパク質混合物の誘導体を開発するためにもさらにまた適用できる。抗体の混合物は、適切な物質を用いて一括して修飾してもよく、またはモノクローナル抗体について当技術分野において記載されているように毒素または酵素またはエフェクターをコードする遺伝子へ遺伝学的に融合させてもよい。
【実施例】
【0171】
実施例:
実施例1:2つのアンチカリンの共発現を指令するための哺乳動物発現ベクター
単一哺乳動物発現ベクターからの発現によって2つのSPCBPを作製するための出発点は、プラスミドpRRV(VHExpressの誘導体であり、US20030224408A1に記載されている)である。pRRV(
図7B)は、単一CMVプロモーターとIRES配列によって分離された2つのコード領域との制御下での軽鎖および重鎖の共発現によってIgG様式における抗体を発現させるために使用されるプラスミドである。このプラスミドは、SPCBP遺伝子をクローニングするための一連の固有の制限部位を含有する。
【0172】
2つのSPCBP遺伝子を、pRRVのApaLI & AscIおよびBssHII & BclI制限部位内へのコード領域の方向性クローニングによってクローニングした。1つの例として、2つのアンチカリンのクローニングについて記載するが、他のSPCBPも同一方法を用いて同等に良好にクローニングすることができる。制限酵素のための内部部位が関心対象のSPCBP遺伝子内で見いだされた場合は、それらは部位特異的突然変異誘発によって迅速に取り除くことができる。2つのアンチカリンは以下のとおりである。AC-1:遺伝子組み換えリポカリンライブラリーから選択された抗フルオレセインアンチカリンであり、抗原との複合体内での構造が解明された遺伝子組み換えリポカリンのフルア(Flua)(pdb(タンパク質データバンク)番号1NOS)である(Korndorfer, I.P. et al.(2003)Proteins 53:121-129.)。AC-2:DigA16は、その天然リガンドポケットの再成形によってオオモンシロチョウ(Pieris brassicae)のリポカリンであるビリン結合タンパク質から引き出された人工ジゴキシゲニン結合タンパク質である。ジゴキシゲニンまたはジギトキシゲニンいずれかの存在下およびアポタンパク質についてのDigA16の結晶構造は、1.9A分解能で決定された(Korndorfer, I.P. et al.(2003)J Mol Biol 330:385-396.)。PCR反応は、テンプレートのAC-1およびAC-2遺伝子を用いて、25サイクルにわたり、94℃で30秒間の変性、50℃で60秒間のアニーリング、および72℃で90秒間の伸長を、5'および3'コード領域へアニーリングするように設計されたプライマーとともにTaq DNAポリメラーゼ(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)を使用して実施したが、後者は最終コドンが翻訳された後に終止コドンも提供した。これらのプライマーは、先ほど言及した制限酵素部位を両端で、およびリーディングフレームがpRRV内への遺伝子の方向性クローニング後に維持されるような方法で遺伝子の5'末端で組み込んでいた(
図7Aに示したように)。生じたAC-1産物を精製し、制限酵素ApaLIおよびAscIを用いて消化し、pRRV内へクローニングするとp2-I-AC-1が生じた。これら2つのAC-2コード領域を次に、BssHII-XbaIフラグメントとしてクローニングのために、テンプレートから増幅させた。PCRのために使用するオリゴヌクレオチドでは、AC-1およびAc-2コード領域が可溶性の別個の産物として正確に翻訳され、ポリ-His抗体を用いて検出できることを保証するために、ポリ-Hisタグおよび終止コドンの両方がACコード領域の後ならびにAscIおよびXbaI位置の前に提供された。これら2つの遺伝子を、最初にベクターp2-I-AC1および次にp2-I-AC1xAC2を産生するために段階的にベクター内へクローニングした。配列の完全性は、アンチカリンをコードするインサートのすぐ隣のベクター主鎖内に基づく特異的プライマーを備えるAmpliTaqsサイクルシーケンシングキット(Perkin-Elmer社、米国フォスターシティ)を用いて確証した;アンチカリンコード領域の正確な配列および発現プラスミドとの接合部を維持するためにインサートのDNA配列をチェックした。
【0173】
実施例2:3つのラクダVHHタンパク質を共発現させるための発現ベクター
本実施例では、ヒトコブラクダ/ラクダ重鎖のみ抗体由来で、全部が異なる種のリゾチームに対する特異性を有する3つの結合タンパク質を同時に発現させるための発現ベクターについて記載する。cAb-1。抗体cAb-Lys3は、鶏卵白リゾチームを阻害する「VHH」であり、抗原との複合体内の構造は結晶学によって決定された(Desmyter, A. et al.(1996)Nat Struct Biol 3:803-811;Transue, T.R. et al.(1998)Proteins 32:515-522.)。cAb-2。第2抗体は、(Conrath, K. et al.(2001)J Biol Chem 276:7346-7350.)に記載されたcAb-TEM02である。cAb-3。第3結合タンパク質は、天然リゾチームおよびそのアミロイド原性変種に対する高特異性を備えるヒトコブラクダ「重鎖」抗体由来のフラグメントであるVHH抗体、クローンcAb-HuL6である(Dumoulin, M. et al.(2002)Protein Sci 11:500-515.)。このタンパク質は、ヒトリゾチームによるアミロイド原線維の形成を阻害することが証明された(Dumoulin, M. et al.(2003)Nature 424:783-788.)。これは、リゾチームに対して8.6×10
5M
-1s
-1のk
a値および5.9×10
-4s
-1のkd値を有した。そのアミノ酸配列をSEQ ID 1に示した。
さらにリゾチームとの複合体内の構造を決定した(pdbにおける構造名は1OP9である)。
【0174】
分泌タンパク質として哺乳動物細胞中でこれらの3つのcAbを発現させるための第1出発点は、US20030224408A1に記載されたVHExpressの誘導体であるプラスミドpBRVである(
図7Aに略図で示した)。これらのプラスミドの混合物を使用するとライブラリーを構築することができた(
図2Aにおけるように)。クローニングは、遺伝子の5'および3'末端で各々ApaLIおよびXbaI部位を付加しながら増幅されるcAbコード領域を用いてpBRVについて実施した。3'末端に基づくプライマーは、ポリ-Hisタグも導入した。これをcAb-1について実施するとプラスミドp1-cAb-1が産生した。このプラスミドは、市販起源の数種のモノクローナル抗体によって認識される、ならびにIMAC精製のために使用できるポリ-Hisタグを有する可溶性cAb1フラグメントの発現を指令した。
【0175】
その他の2つのcAb遺伝子は、2つのコード領域の非IRES結合発現を指令するベクター内へクローニングした。さらに、STARエレメントを導入した。STARエレメントは、コピー数依存性方法で、哺乳動物細胞中のタンパク質の高レベルかつ安定性発現を付与した(Kwaks et. al.(2003), Nat. Biotechnol 21:553-558)。このために使用するベクターpABExpress40は、欧州特許出願第03076671.1号の中で記載されており、
図7Cに示した。pABExpress40はそれらの各転写方向が反対方向に向いている重鎖および軽鎖カセットの両方、ならびに2つの転写単位の中央に配置された抗リプレッサーエレメントの両方を含有する。このプラスミドpABExpress40を、最初に選択された結合タンパク質遺伝子cAb-2のクローニングにおいて最初に使用すると(方向性クローニングのために設計されたオリゴヌクレオチドを用いてcAb-2遺伝子のコード領域へ付加されたApaLIおよびSpeIクローニング部位を用いて、結果として生じた構築物内でベクターのリーダー配列に続く結合タンパク質の遺伝子内のリーディングフレームを維持する)、結果としてpABExpress40-cAb-2を生じた。このプラスミドを使用して、第2結合タンパク質をコードする遺伝子、cAb-3(BssHII-XbaIフラグメントとして)(これら4つの部位全部がpABExpress40内で固有である)を受け入れた;一般に、制限酵素認識部位が結合タンパク質をコードする遺伝子にとって内在性であれば、インビトロ部位特異的突然変異誘発によって最初に除去できる、またはPCR産物をこの酵素による部分消化(および他の酵素による完全消化)に供することができ、次に全長物質をゲル精製し、このフラグメントをクローニングする;さらにこのクローニング実験のためのそれらの使用において等価である他の固有の制限部位をベクター内で利用できる。例えばPersic et al, Gene 187(1997):9-18)の表5参照。PCR反応では、3'末端に基づくオリゴヌクレオチドは、タンパク質を上述したようにIMACによって精製できるように、終止コドンが後に続く6ヒスチジンの伸長をさらに組み込んだ。2つの結合タンパク質遺伝子であるcAb-2およびcAb-3の連続的クローニングの後に、両方のVHH遺伝子を含有するプラスミドをp2-ST-cAb2/3と指名し、制限分析およびシーケンシングによって同定し、トランスフェクション実験のためにそのDNAを調製した。
【0176】
3つの異なる結合タンパク質を発現する細胞ライブラリーを構築するために、またはトリシストロニックベクターを構築することができる。そのようなベクターは他の適用のために記載されており、様々なIRES配列およびクローニング部位を利用する。複数のSPCBP遺伝子のクローニングを加速させるためには、2つの工程で連続的に、または三方向ライゲーションによってより迅速に、3つの異なる遺伝子をそのようなベクター内へ容易にクローニングすることができるように、そのようなベクター内にSPCBPコード領域に隣接している固有の制限酵素部位を提供することが重要である。IL-12(IL-12p40+IL-12p35)およびCD80を共発現するトリシストロニックレトロウイルスベクターおよびアデノウイルスベクターは、3つのcDNAを連結させるために2つの内部リボソーム進入部位(IRES)配列を利用することによって記載された。マウス幹細胞ウイルス(MSCV)に基づくレトロウイルスベクター(MSCV-hIL12.B7)は脳心筋炎ウイルス(EMCV)および口蹄疫ウイルス(FMCV)由来の別個のIRES配列を利用したが、他方Ad5に基づくアデノウイルスベクターは、マウス(AdMhl2.B7)またはヒト(AdHhl2.B7)サイトメガロウイルスプロモーターの制御下で2つのEMCV IRES配列を備える転写単位を含有していた。異なるプロモーターと本明細書および本文中で上記に列挙したようなIRES配列を結合することによって、3つのSPCBPの発現を媒介できるプラスミドを構築することができた。
【0177】
実施例3:異なる比率にある2つおよび3つの異なるcAbを発現する細胞ライブラリーの作製
複数の安定性トランスフェクタントを作製するために、プラスミドp1-cAb1およびp2-ST-cAb2/3を使用した。プラスミドp2-ST-cAb2/3は単独で、またはプラスミドp1-cAb1と組み合わせてトランスフェクトした。選択によって、neo耐性遺伝子ならびに当技術分野において公知の培養およびスクリーニング法を用いると、2つまたは3つのcAbを様々な比率で発現する安定性のPER.C6(商標)に由来する細胞株を得ることができた。本質的には、5×10
6PER.C6(商標)細胞を、製造業者の取扱説明書にしたがってリポフェクタミン、およびこのプラスミドの3μg(または2つをともに使用する場合は2+1μg)のDNAを用いてトランスフェクトした。5時間後、細胞を洗浄し、培地を非選択培地と交換した。翌日、培地を、500μg/mLのG418(Sigma-Aldrich社)を含有する新鮮培地と取り換え、さらにクローンが出現するまで次の2〜3日毎に培地を新鮮なものと取り換えた(播種後15〜20日間)。クローンを収集し、2〜3週間後にクローン細胞株が出現し始めるように、限定希釈条件へクローン化させた。これらをもっと大きなウェルおよびフラスコへ拡大させ、最終的には選択培地を除去した。細胞株の最初の分析は、作製された細胞株内の2つまたは3つの異なるcAb遺伝子の存在について、これらの細胞株のゲノムDNAをcAb-1およびcAb-2およびcAb-3に対する特異的(ベクターおよびコード領域に基づいて)オリゴヌクレオチドを用いて増幅させる工程、そして増幅した物質をシーケンシングすることによって存在を確証する工程によって分析した。発現カセットのコピー数(推定では、cAb-1およびcAb-2の両方についてほぼ同数)は、サザンブロット法または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定した。分泌されたcAb混合物を分析するために、これらの細胞株の上清を収集した。cAbタンパク質は、製造業者の取扱説明書にしたがってIMACによって上清から精製した。cAb混合物を単離し、精製し、一連のアッセイで試験した。第二に、混合物を、SDS-PAGEおよびウェスタンブロット(未精製上清について)ならびにIMAC精製タンパク質を用いるSDS-PAGEおよび等電点電気泳動法を用いて生化学的に特性解析した。第三に、リゾチーム結合およびリゾチーム中和アッセイを、上述したようにELISAアッセイおよびリゾチームについての触媒アッセイによって実施した。cAbは様々な種のリゾチームへ結合するので、混合物中の複数の結合タンパク質の存在はさらにまた鶏卵白およびヒト由来を含む様々な種からのリゾチームを用いて検出した。ゲル上の、またはELISAにおけるシグナルの相対強度によって、様々な細胞株におけるcAbの様々な相対比率が明らかになった。
【0178】
実施例4:様々なタンパク質混合物を産生するCHO細胞ライブラリーの作製
本質的にはPER.C6細胞について記載したように(実施例3)、CHO.K1細胞の2:1コトランスフェクション実験では、プラスミドp2-I-AC1xAC2(実施例1)およびp1-cAb-1(実施例2)を使用した。安定にトランスフェクトされた細胞株は、G418上で細胞を選択し、限定希釈率で得たクローンの上清をアンチカリンまたはcAbの存在について、3種の抗原である被覆抗原としてのジゴキシゲニン、フルオレセインおよびリゾチームを用いる固相ELISAによって試験することによって生成した。ELISAの相対強度は、様々な細胞株におけるACおよびcAbの示差的相対比率を明らかにした。
【0179】
実施例5:ELISAを用いた結合タンパク質の混合物の詳細な分析および結合部位特異的試薬の使用
実施例3の3つのcAbおよびアンチカリンと1つのcAbとの混合物を以下のとおりに、より詳細に分析した。混合物を発現する別個の細胞クローンの培養を拡大させ、IMACを用いてそれらのヒスチジンタグによって結合タンパク質フラグメントを単離した。生じたタンパク質混合物を以下のとおりに分析した。
【0180】
例えば、本発明者らは、各々が異なるエピトープに向けられているが全部が同一標的抗原上に存在する複数の結合タンパク質から構成される混合物(cAb1、2および3の混合物)の場合を考察した。この混合物を分析するためには、以下の方法を利用できる。各結合タンパク質上の結合部位領域は様々なアミノ酸組成を産生し、そして以下の抗原依存性分析を許容する。(1)SDS-PAGEなどのサイズに基づくゲル電気泳動法:実施例1において言及したような相当に小さなサイズの結合タンパク質については、結合部位内または結合部位の近くにある固有のアミノ酸組成によって惹起される分子量の相違をゲル電気泳動法によって明らかにすることができる。高分解能方法(例えば、勾配を備えるゲル)を使用することによって、分子量における小さな差は、移動度の変化を生じさせるので、したがって混合物中の個々の結合タンパク質の存在が明らかになる。(2)等電点電気泳動ゲル分析:この分析は、異なる結合タンパク質についての異なるpI値に依拠している。各分子は固有の等電点を提示するであろう。異なるpIを備えるタンパク質はpH勾配における電気泳動法によって分離される。この方法は半定量的である。混合物中の2つの結合タンパク質がそれらのpI値において極めてわずかな差しか有していない場合は、この試験を用いてそれらを分離するのが困難であるので、本明細書で言及した他の試験を使用する。(3)質量分析法:この分析法は、タンパク質分解酵素を用いた消化後には質量分析においてペプチドの固有のスペクトルを生じさせる、結合タンパク質の示差的アミノ酸組成(または分子量および/または組成を変化させる他の変化)に依拠している。この方法は、多分に定性的ではあるが、他の分析方法と結合することができる。(4)「抗イディオタイプ」抗体に基づく結合分析:この分析は、混合物中の他の結合部位の存在下で1つの結合タンパク質の結合部位を特異的に認識する試薬が利用可能であることを必要とする。この分析のために適合するのは、抗体および抗体のイディオタイプと同等である結合タンパク質上の領域を固有に認識する抗体である「抗イディオタイプ」抗体である。これらの結合タンパク質はアミノ酸配列が相違しているので、それらは他の「イディオタイプ」も有するであろうから、それらを認識する試薬を得ることができる。アンチカリンを用いる実施例では、これらの結合タンパク質は高レベルの配列相同性を共有するので、イディオタイプの固有の特徴は主として最初に多様化された領域によって形成される。抗イディオタイプ抗体は、当業者には公知の方法を用いて結合タンパク質ライブラリーを提示する大きなファージの選択において抗原として個々の結合タンパク質を用いて選択される。典型的には、Fabフラグメントを産生する非免疫抗体ライブラリー(de Haard, H.J. et al.(1999)J Biol Chem 274:18218-18230)、および半合成scFvファージ抗体ライブラリー(de Kruif et al.(1995)J. Mol. Biol. 248:97)を使用する。抗イディオタイプ抗体は、本明細書で言及した非免疫結合タンパク質ライブラリーからの固定化またはビオチン化AC-1およびAC-2結合タンパク質上で選択する。選択のために使用したこれらの2つのタンパク質上の選択されたファージ抗体についてのELISAスクリーニングを用いて、2つの結合タンパク質の一方の「イディオタイプ」を固有に認識する抗イディオタイプ抗体を同定する。これらのライブラリーから選択した各FabおよびscFv試薬を、例えば本明細書の引用文献および‘Antibody Engineering’(2001), Eds. Konterman and Dubel, Springer Lab Manual)に記載されているような標準方法を用いて抗体フラグメントとして発現させて精製する。フラグメントは、定量的アッセイにおいて実施されるELISAにおいて結合タンパク質混合物中にどのイディオタイプが存在するのかを決定するために使用する。AC-1およびAC-2の結合部位に対して特異的な抗イディオタイプ抗体は、さらにまた実施例4において作製した調製物を用いる抗原競合実験においても、結合タンパク質混合物の生物活性への別個の結合部位の寄与を示すために使用される。(5)結合タンパク質結合ペプチドに基づく結合分析:または、個々の結合タンパク質が、例えば狂犬病ウイルス中和抗体Mab 6-15C4について証明された(van der Heijden et al(1993), J. Gen. Virol. 74:1539-45)ようにPepScan分析によって抗原の配列に由来するが、まだ結合タンパク質と反応性である線状またはコンフォメーショナルペプチドであるイディオタイプ関連ペプチドを引き出すために使用される。代替法は、最初の抗原とは非関連性であるが、それでもまだ結合タンパク質の結合部位と関連する配列へ特異的に結合する配列を備えるペプチドミモトープを単離する方法である。混合物中の他の状況において所与の結合タンパク質に対して反応が特異的であることを前提にすると、そのようなペプチドは結合タンパク質混合物の特異的分析にも適している。所与の結合タンパク質に対するそのような固有の反応性を備えるペプチドは、本質的にファージ結合タンパク質ライブラリーのための方法に類似する方法を用いてファージ提示ペプチドライブラリーから選択する。抗イディオタイプ抗体およびペプチドミモトープを用いた結合試験は定性的または定量的であり、そしてELISA、RIA、フローサイトメトリー分析、BIAcoreなどを含む大規模の一連の結合試験が実行可能である。
【0181】
本発明者らはさらにまた、最初の結合タンパク質各々が(実施例4における混合物生成におけるように)異なる抗原に結合する複数の結合タンパク質を含む混合物の分析についても開示する。これは、結合タンパク質が同一抗原または標的を認識する状況に似ており、そして抗イディオタイプ試薬またはペプチド模擬体を利用できる。混合物中の複数の特異性についての分析は、以下のとおりに(抗原が抗イディオタイプと同義語であることを留意しながら)実施した。個々の抗原に対する反応性は、モノクローナル抗体を用いる標準化アッセイおよび定量的IgG ELISA試験を用いて、ELISAにおいて全抗原を個別に試験した。抗原を直接的または間接的に被覆し、結合タンパク質混合物を含むプレートをインキュベートし、結合タンパク質の全部を認識する試薬を用いて結合した結合タンパク質を検出した。例えば、抗タグ抗体、またはタンパク質間の同一性レベルに起因してそれらの間で共有される結合タンパク質内の領域を認識する試薬は、このために特に有用である。これは、結合タンパク質量当たりの相対活性単位での反応性である、調製物の「特異的」活性をもたらした。
【0182】
実施例6:1つの大腸菌宿主細胞中で発現した3つのVHHドメインの混合物
3つのcAb遺伝子であるcAb-1、2および3を、上記のようなクローニング方法を用いて原核細胞発現ベクター内へクローニングした。最初に、コード領域遺伝子を、ヌクレオチド配列の5'および3'末端へハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて増幅させると、クローニングのために適切な制限酵素部位を提供した。標準的クローニング技術は、Sambrook et al., ‘Molecular cloning’, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1987)に記載されている。CAb遺伝子は、当技術分野において周知の方法を用いてポリメラーゼ連鎖反応によって増幅させた。受容体プラスミドは、欧州特許出願第03076671.1号に記載されたpSCFV-3であり、cAbコード領域を挿入するための3つの部位を含有する(
図9)。pSCFV-3は、cAb遺伝子をクローニングするための固有の制限部位を有しており、2つは同一lacZプロモーターの後ろにあって新規リボソーム結合部位(rbs)およびシグナル配列(L)によって分離されており、そして1つはアラビノース誘導性プロモーター、rbsおよびLの後ろにある。これはさらにまたcAbカセット各々に対して1つの異なるタグ、c-myc(配列EQKLISEEDL)、VSVタグ(配列YTDIEMNRLGK)およびインフルエンザ・ヘマグルチニン(influenza Hemagglutinin;HA)タグ(配列YPYDVPDYA)を有しており、これら全部の後には3つのアラニンおよび5つのヒスチジンの伸長鎖が続く。このセットアップは、混合物中で別個の抗体を検出するための方法、および当技術分野において周知の方法を用いる固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に基づいて、精製のための一般的方法を提供する。全3つのcAbコード領域を、細菌リーダー配列の下流のこのプラスミド内、およびタグ配列とともにフレーム単位で連続的にクローニングした。
【0183】
cAbの混合物の発現は以下のとおりに実施した。可溶性cAbフラグメントは、アラビノースプロモーター誘導因子を用いて、および用いずに、pSCFVに基づくプラスミド内でのcAbの発現を駆動するlacZプロモーターからのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて誘導すると発現するので、cAbタンパク質混合物を大腸菌TG1細胞の細胞周辺腔から収集した。個々のcAbの結合を確証するために、鶏卵白およびヒトリゾチームで被覆したPolysorbプレート(Nunc社)を用いてELISAを実施した。IPTGを用いた誘導によって、2つの機能的cAbフラグメントの混合物の発現を達成した。アラビノースを用いてさらに誘導することによって、追加のcAbフラグメントが共発現した。cAbフラグメント各々の混合物中での結合への寄与は、3つの抗タグ抗体(ヒトc-Mycエピトープタグ(abcam, www.abcam.comからの産物コード:ab32)へ結合するマウスモノクローナル抗体9E10、およびHAタグ(ab3413)またはVSVタグ(ab3556)に対するポリクローナル抗体)のうちの1つを用いて確証した。生成が1つの細菌およびその子孫によって行なわれるが、各々が抗体フラグメントの1つを産生する3つのクローンによっては行なわれないかどうかを検証するために、培養を誘導期の4時間後にコロニー精製し、その発現がクローン性であることを確証するために3つの独立クローンについて生成を試験した。
【0184】
詳細な解析のためには、cAb混合物を精製かつ濃縮させた。パーセンテージを正確に決定するためには、最初にIMACを用いてcAb混合物を大腸菌細胞周辺抽出物から精製した。手短には、IPTGおよびアラビノース誘導500mL培養(30℃で4時間保持した)を4℃で20分間にわたり4600×gで回転させ、プロテアーゼ阻害剤(フェニル-メチル-スルホニルフロリドおよびベンズアミジン)を含有するリン酸緩衝食塩液(PBS)中に細菌ペレットを再懸濁させた。この溶液を、超音波ディスインテグレーター(MSE Scientific Instruments社)を用いて24℃で超音波処理し、懸濁液を4℃で30分間にわたり50,000×gで遠心した。上清分画をTALON(商標)樹脂とともに製造業者(Clontech社)の取扱説明書にしたがってインキュベートした。徹底的な洗浄後、100mMイミダゾールを用いてタンパク質を溶出させた。この方法の後に、cAbフラグメントをさらにBiologic装置(Biorad社)へ接続したSuperdex 75カラム(Amersham Pharmacia Biotech社)を用いるゲル濾過によってさらに精製した。CAbの濃度は、ビシンコニン酸キット(Pierce社)を用いて定量した。
【0185】
または1つのプラスミドを使用する代わりに、別個のプラスミド中で3つのcAb発現カセットを、例えばpBR322およびpACYCなどの適合するプラスミド内へクローニングし、誘導前に同一宿主細胞中で維持することもまたできる。
【0186】
実施例7:VLファージライブラリーからの狂牛病ウイルス糖タンパク質に対する単一ドメイン抗体の単離、複数のVLを発現する細胞ライブラリーの作製および最適な中和混合物についての混合物のスクリーニング
狂牛病ウイルス特異的単一ドメインVL抗体フラグメントは、van den Beucken et al.(2001), J. Mol. Biol. 591-601(libraries B and C)に記載されたように、ヒトPBLから単離してDNAシャッフリングによって多様化されたファージ提示レパートリーから選択した。ファージ粒子は、これらの2つのライブラリーの培養から作製した。ヘルパーファージM13-KO7を備えるファージミド粒子の救済は、出発接種物中の各クローンからの少なくとも10個の細菌が存在するのを保証するために、接種用のライブラリーからの代表的な数の細菌を用いて、1Lの規模で(Marks et al.(1991), J. Mol. Biol. 222:581-597)の方法にしたがって実施した。VLを選択するために、狂牛病ウイルス糖タンパク質を使用した。ウイルス精製および糖タンパク質精製については、他の場所で記載されている(Dietzschold et al(1996)Laboratory Techniques in Rabies, Eds Meslin, Kaplan and Korpowski. World Health Organization, Geneva, p.175)。選択のためには、イムノチューブ(Maxisorp tubes、Nunc社)中で被覆された10
13cfu(コロニー形成単位)を10μg/mLの狂牛病ウイルス糖タンパク質または250 nMの可溶性ビオチン化糖タンパク質とともに使用した。抗原は、供給業者の勧告にしたがって抗原1分子当たり1〜5分子のNHS-ビオチン(Pierce社)の比率でビオチン化した。これらのライブラリーを用いて3ラウンドの選択を実施した。ファージ提示ライブラリーを培養および選択するための詳細なプロトコールは他の場所で記載されており(Marks et al.(1991), J. Mol. Biol. 222:581-597におけるように)、当業者は周知である。手短には、ビオチン化抗原を用いた選択は以下のとおりに実施した。ファージ粒子を2% M-PBST(2%脱脂粉乳末および0.1% Tween-20を補給したPBS)中で1時間にわたり回転装置のホイール上でインキュベートした。その間に、100μLのストレプトアビジン結合磁気ビーズ(Dynal社、ノルウェー国オスロ)を2% M-PBST中で2時間にわたり回転装置のホイール上でインキュベートした。事前にインキュベートしたファージへビオチン化抗原を添加し、回転装置のホイール上で30分間インキュベートした。次に、ビーズを添加し、混合物を回転装置のホイール上に15分間放置した。2% M-PBSTで14回洗浄し、さらにPBSで1回洗浄した後、5分間にわたり950μLの0.1Mトリエチルアミンを用いて溶出した。0.5mLのTris-HCl(pH7.5)を添加することにより溶離液を直ちに中和し、対数期大腸菌TG1細胞の感染のために使用した。TG1細胞を37℃で30分間にわたり感染させ、2%ブドウ糖および100μg/mLのアンピシリンを含有する2×TY(1Lあたり、16gのバクト-トリプトン、10gの酵母抽出物および5gのNaCl)寒天プレート上で平板培養した。30℃で一晩インキュベートした後、プレートからコロニーをこすり取り、記載されたようにファージ救済のために使用した(Marks et al.(1991), J. Mol. Biol. 222:581-597)。救済されたファージまたは可溶性VLフラグメントのどちらかを含む個別に選択したクローンの培養上清を、ELISAにおいて、直接的に被覆した抗原または固定化ビオチン化BSA-ストレプトアビジンによって間接的に捕捉されたビオチン化抗原を用いて試験した。本明細書で記載するのは、可溶性VLフラグメントを検出するためのビオチン化抗原を用いる方法である。ビオチン化狂牛病ウイルス糖タンパク質を捕捉するため、最初にビオチン化BSAを37℃で1時間中にPBS中の2μg/mLで被覆した。PBS-0.1%(v/v)Tween-20(PBST)で3回洗浄した後、プレートをストレプトアビジン(PBS中で10μg/mL/0.5%ゼラチン)とともに1時間にわたりインキュベートした(24)。上述したとおりに洗浄した後、4℃で一晩インキュベートするためにビオチン化抗原を3μg/mLの濃度で添加した。プレートをPBS中の2%(w/v)半脱脂粉乳末(Marvel社)とともに室温で30分間にわたりブロッキングした。培養上清をこれらのウェルへ移し、2%(w/v)Marvel/PBS中で1または5倍に希釈し、2時間にわたりインキュベートした;結合したVLは、VL1鎖のカルボキシ末端でmyc-ペプチドタグを認識する抗myc抗体9E10(5μg/mL)、およびウサギ抗マウスHRPコンジュゲート(DAKO社)を用いて検出した。最終インキュベーション後、テトラメチルベンジジン(TMB)および基質としてのH
2O
2を用いて染色を実施し、半量の2N H
2SO
4を添加して停止させた;光学密度を450nmで測定した。ELISAにおいて陽性シグナル(バックグラウンドの2倍を超える)を生じるクローンを、シーケンシングによってさらに分析した。各個別反応性VLクローンを精製し、それらをウイルス中和について個別に試験するのは労力を要する仕事となるであろう。その代わりに、タンパク質Lとも反応性である5つの抗原反応性VL((Holt, L.J. et al.(2003)Trends Biotechnol 21:484-490.)を同定し、そして上記の実施例に記載の方法を用いて混合物を直接的に作製するために収集し、混合物の中和挙動を試験した。タンパク質Lの精製はタグの準備を不要にし、選択された全VLのための一般的な精製スキームを提供した。
【0187】
実施例8:寄生虫中和SPCBPの混合物を発現するCHO細胞のライブラリー
本実験で使用する単一ポリペプチド鎖結合タンパク質は、アフリカトリパノソーム(African trypanosomes)の変種特異的表面糖タンパク質(VSG)二量体へ結合すると記載された5つのラクダ抗体フラグメントである(Stijlemans, B. et al.(2004)J Biol Chem 279:1256-1261)。5つの抗体フラグメントは、精製されたVSG上でパンニングする工程によって免疫したヒトコブラクダの5×10
7個の異なるリンパ球のファージ提示ライブラリーから選択した。5つのタンパク質中の1つのタンパク質cAb-An33は、VSG上に存在する表面に露出したAsn結合炭水化物上の保存されたエピトープへ結合する(Stijlemans, B. et al.(2004)J Biol Chem 279:1256-1261)。この小さな抗体フラグメントは、大きなレクチンまたは従来型の抗体フラグメントとは相違して、複数のVSGクラスに一般的である変種表面糖タンパク質(VSG)へ浸透することができる。
【0188】
これらのSPCBPを様々なレベルで発現する細胞混合物を作製するために、独自の名称cAb-An02、cAb-An33、cAb-An04、cAb-An05およびcAb-An06を備えるクローンを収集した。これらのSPCBPの配列は、各々GenBank(商標)アクセッション番号AY263486、AY263490、AY263487、AY263488およびAY263489に記載されている。
【0189】
cAbコード領域を、それらのテンプレートから、これらのSPCBPに対するNおよびC末端領域をコードするDNA中の同等領域へ結合するオリゴヌクレオチドによって増幅させた。cAb-AN33に対しては、パンニング後に得られるようなcAb-An33遺伝子を含有するプラスミド(Stijlemans, B. et al.(2004)J Biol Chem 279:1256-1261)をプライマー
および
を用いるPCR反応におけるテンプレートとして使用した。これはVHHコード領域を増幅させ、一方のプライマーではこの場合ではコード領域自体の外側でクローニングのために制限部位(この場合ではBssHII)を付加し、そして他方のプライマーでは自然固有制限部位(BstEII)に依存した。クローニングのためのこれらやその他のプライマーのためのプライマーの設計は、リーディングフレームが先行する真核細胞リーダー配列(eukaryotic leader sequence)、およびその後に続くタグをコードする配列とともに維持されるように実施した。
【0190】
3つのcAbであるcAb-An02/33および04を、3つのSPCBPの発現を媒介する1つのプラスミド内へ数工程でクローニングした。最初にcAb-An33を増幅させ、pAn33を産生するためにpABExpress40内へのBssHII-BstEIIフラグメントとしてpAbExpress内へクローニングした(
図7C)。第二に、PCRフラグメントを、5'末端でBstEII部位を付加させながらこのプラスミド内のIRES配列を増幅させるためにpRRVから調製すると、その後にAn33コード領域の3'末端をコードする配列が続き、その後に「taa」終止コドンであるpHEN1などの多数のファージ提示ベクター(Hoogenboom et al, Nucl. Acids Res. 1991)において使用されるようなmycタグをコードする配列が続き、IRESエレメントの5'アニーリング配列である35ヌクレオチドが続いた(これは全部が以下のとおりに開始する1つのプライマーを備える。
(mycタグをコードする領域は下線が引かれており、この配列の後にはIRESに基づく35ヌクレオチドが続く)。IRES増幅のための3'末端プライマーは、ヒト定常領域CH1ドメインに基づいていた。この増幅は、BstEIIおよびBssHIIを用いて切断されたPCRフラグメントを含有するIRESを産生した。このフラグメントを、それ自体が以下の2つのプライマー
および
(制限部位は下線を引いた)を用いたcAb-An04テンプレートの増幅によって作製されるBssHII-XbaI消化PCRフラグメントを用いてともにライゲーションした。これら2つのDNAフラグメントを、3方向ライゲーション工程においてBstEII-XbaI消化pAn33内へライゲーションした。IRESおよびcAb-An04の両方を挿入したクローンを同定し、配列確認後のクローンをpAn33xO4と指名した。最後に、5'末端でApaLI部位ならびに3'末端で終止コドンおよびAscI制限部位を付加する2つのプライマーを備えるそのテンプレートからcAb-An02を増幅させた(プライマー
および
を用いて)。ApaLIおよびAscIを用いてPCRフラグメントを消化し、同様に消化したpAn33x04内へクローニングして、今度は3つのラクダSPCBPである、その中でcAb-An02が2つの他のcAbコード領域とは別個のCMVプロモーターcAb33-An04の制御下にあり、そしてこれら2つの後者のコード領域の発現がIRES配列によって連結しているpAn02x33x04を備えるプラスミドを産生した。cAbの1つであるcAb-An33は、このタンパク質の発現を迅速に検出するためのmycタグもまた装備している。このプラスミドを、
図8に略図で示した。
【0191】
このプラスミドを実施例3および4で記載したようにCHO細胞のトランスフェクションのために使用し、限定希釈によって得、細胞クローンをneo選択マーカーによって単離した。少なくとも1つのcAbを発現する細胞を、被覆したVSG物質を使用してELISAによって同定した。VSGは以下のとおりに調製した。各VSGを発現するブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei brucei)血流寄生虫の冷凍スタビラートをラット(Charles River)の感染によって拡大させた。全身性寄生虫血症(典型的には感染4〜5日後)を有するラットに放血させ、寄生虫をDEAE-セルロース(DE52、Whatman社)クロマトグラフィーによってヘパリン加血液から精製した。次にVSGをイオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過によって単離した((Stijlemans, B. et al.(2004)J Biol Chem 279:1256-1261)におけるように)。ELISAのためにVSG(1μg/mL(0.1M NaHCO
3)、pH8.2で)を96ウェルプレートへ被覆して一晩おく(4℃)。PBS中の5% FCSを用いてブロッキング(2時間、室温)した後、細胞上清を1:2の連続希釈で装填し、マウス抗mycタグ抗体(9E10、Roche社、コード番号1667149)およびホースラディッシュペルオキシダーゼへ共役結合させたヤギ抗マウスIgG抗体を用いて結合したcAb-An33を検出した。ペルオキシダーゼ基質を添加して30分後、0.1N H
2SO
4を用いて反応を停止させ、光学密度を450nmで測定した。9E10抗体と反応性であり、したがって少なくともcAb-An33を発現するクローン細胞を混合し、その後のトランスフェクションのために増大させた。他の2つのcAbの発現を分析するよりむしろ、細胞プールを直接使用してまた別のプラスミドトランスフェクションによって追加のcAbを導入した。
【0192】
CAbであるAn-05および-06は、適切なクローニング部位を備えるPCRフラグメントの方向性クローニングによって上述したようにクローニングした。今度のクローニングベクターはpRRVzeoであり、neo選択マーカーが新規の選択マーカーを選択できるようにpEM7-zeo(Invitrogen社)からのzeo選択マーカーと交換されているpRRVである。この場合では、両方のcAbに6ヒスチジンの伸長鎖を備えるタグcAb-An05(既に全cAbに対するタグとしてファージ提示選択プラスミドによって提供されている)、およびHAタグ(ヘマグルチン)を備えるcAb-An06が提供された。これらのタグの両方に対する抗体は、商業的供給業者(Roche、Pharmacia社)によって入手できた。cAb-An05およびcAb-An06の両方を有する結果として生じるプラスミドは、p05x06と指名した。cAb 33/02および04のセットを発現する細胞プールを、p05x06を用いてトランスフェクトし、クローンをzeo耐性について選択したが、その間にそれらを最初の3つのcAbコード領域の存在について選択するためにG418含有培地上でも増殖させた。限定希釈後に同定した複数の安定性クローンを増大させた。抗原結合は上記のように実施したが、検出は、今度は3つの異なる抗体である抗myc(cAb-An33の検出)、抗His(cAb-An05の検出)および抗HA(cAb-An06の検出)を用いて平行して実施した。ELISAの結果は、これらの細胞中いずれが少なくとも1、2または3つのcAbを発現するのかを示している(
図3に略図により示した)。その他のcAbの存在を分析するためには、 。また別の実験は最初に、タンパク質群をIMACによって精製かつ分析できるように、ヒスチジンタグを全SPCBPコード領域へ導入することができる(上記の実施例で実施したように)。これは、複数かつ5つまでの異なるSPCBPの発現を確証するであろう。
【0193】
配列表: