特許第5685276号(P5685276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685276
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】鋸身のバックテーパ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/17 20060101AFI20150226BHJP
   B23D 65/00 20060101ALI20150226BHJP
   B24B 3/36 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   B24B7/17 Z
   B23D65/00
   B24B3/36 F
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-5566(P2013-5566)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136276(P2014-136276A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2013年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】594171366
【氏名又は名称】株式会社野水機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】今井 道郎
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−147201(JP,A)
【文献】 特開2006−116634(JP,A)
【文献】 特開2005−217326(JP,A)
【文献】 特開平10−000543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/00 − 7/30
B23D 65/00 −65/04
B24B 3/00 − 3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸の鋸身の両側面を回転砥石で研削してこの鋸身の背部側を刃部側よりも薄くし被切断物の切断面との摩擦抵抗を軽減させるバックテーパを前記鋸身に形成する鋸身のバックテーパ加工装置であって、前記鋸身を立設状態に保持し、この立設状態に保持した鋸身を前記回転砥石に対してこの鋸身の長さ方向である前後方向及びこの長さ方向と直交する方向である上下方向に相対移動させる前後方向及び上下方向に移動自在に構成した鋸身移動機構と、前記鋸身の前記刃部若しくは前記背部に当接してこの鋸身を支持する鋸身支持部とを備え、前記鋸身移動機構によって移動する前記鋸身の両側面側に前記回転砥石を対向状態に配設し、この回転砥石は夫々、カップ状若しくはリング状の砥石であってリング状先端面を当接させて研削するカップ形砥石を採用し、このカップ形砥石を前記鋸身の両側面に対して傾斜状態に配設して、前記鋸身の側面をこの鋸身の厚さ方向に円弧状に研削するように構成すると共に、前記傾斜状態に配設したカップ形砥石の前記リング状先端面の前記鋸身の側面に最も近い部分が、前記鋸身の中心部より背部側寄りに当接するようにして前記研削によりこの当接位置が最も薄くなるように構成し、且つ回転砥石移動機構により前記鋸身に接近し当接して前記鋸身の両側面を同時に所定量研削するように構成し、前記カップ形砥石の間に、前記鋸身の側面を支持して研削時の前記鋸身の振れを抑制する振れ止め支持部を設け、立設状態に配設した前記鋸身の長さ方向一側を前記鋸身移動機構で保持し、この鋸身移動機構で一側を保持した前記鋸身の長さ方向他側を前記振れ止め支持部で挟持状態に支持し、この振れ止め支持部で支持される位置よりも前記鋸身移動機構側の前記鋸身の下端に前記鋸身支持部を当接させてこの鋸身を下方側から支持し、この鋸身支持部と前記振れ止め支持部とで支持した間に位置する前記鋸身の両側面に前記カップ形砥石が当接するように構成したことを特徴とする鋸身のバックテーパ加工装置。
【請求項2】
前記鋸身支持部は、先端部にローラ部を設けた構成とし、このローラ部を前記鋸身の下端に当接させて、前記鋸身移動機構によって移動している前記鋸身を下方側から支持するように構成したことを特徴とする請求項1記載の鋸身のバックテーパ加工装置。
【請求項3】
前記鋸身支持部を上下方向に移動自在に設けた構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置。
【請求項4】
前記鋸身移動機構により立設状態に保持した前記鋸身を、この鋸身移動機構側に引動しながら前記カップ形砥石で前記鋸身の両側面を同時に切削するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置。
【請求項5】
前記鋸身移動機構は、前記鋸身を立設状態に保持する鋸身保持部と、この鋸身保持部で保持した状態の前記鋸身の長さ方向となる前後方向及び前記長さ方向と直交する方向となる上下方向に移動自在に設けた移動部と、この移動部の移動を制御し、この移動部を前記鋸身の形状に合わせて直線的或いは曲線的に移動させる移動制御部とで構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置。
【請求項6】
前記回転砥石移動機構は、前記カップ形砥石のリング状先端面の位置を測定する砥石摩耗量検出センサを有し、検出した砥石摩耗量に応じて前記カップ形砥石の前記鋸身の両側面への移動量を自動補正するように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置。
【請求項7】
前記振れ止め支持部は、対向状態に配設した前記カップ形砥石間に配設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置。
【請求項8】
前記カップ形砥石は、前記回転砥石移動機構により、前記鋸身の両側面に対する傾斜角度を自在に調整し得るように構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋸の鋸身にバックテーパ加工を施す際に用いる鋸身のバックテーパ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋸で被切断物を切断する際、鋸身の側面が被切断物の切断面に接触し摩擦抵抗が生じて切断作業に支障をきたさないようにするために、鋸身の背部側の厚みを刃部側の厚みよりも薄くする必要がある。
【0003】
従来、この鋸身の背部側の厚みを刃部側の厚みよりも薄くするために、アサリ出しと言われる鋸目立を行った後に鋸刃部を左右側方に向けて折り曲げて、刃部を背部よりも広くする方法、若しくはバックテーパ加工と言われる鋸の背部側の両側面を、砥石を有する研削装置で研削し刃部側よりも背部側の厚みを薄くする方法が用いられていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アサリ出しを施した鋸で被切断物を切断すると、切断面に筋状の切削痕が付き、切断面が滑らかに仕上がらず見た目(出来栄え)が悪くなり、更に、この切削痕が見た目を低下させるだけでなく品質も低下させる要因になり得るという問題があった。
【0005】
また、従来のバックテーパ加工は、鋸身形状に形成した板材を一枚毎治具に取り付けてバックテーパ加工装置で一方の側面を研削し、この片側の研削が終了したら、板材を別の治具に取り付けてもう一方の側面を研削していた。そのため、作業効率が悪く、また、片面ずつ研削すると板材の応力のバランスが崩れて板材が加工中に反ってしまい、精度よく加工することが困難であった。
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑み、鋸身のバックテーパ加工において、作業効率が良く、また、加工精度に優れ左右対称精度を格段に向上させることができる実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
鋸の鋸身1の両側面を回転砥石2で研削してこの鋸身1の背部側を刃部側よりも薄くし被切断物の切断面との摩擦抵抗を軽減させるバックテーパを前記鋸身1に形成する鋸身のバックテーパ加工装置であって、前記鋸身1を立設状態に保持し、この立設状態に保持した鋸身1を前記回転砥石2に対してこの鋸身1の長さ方向である前後方向及びこの長さ方向と直交する方向である上下方向に相対移動させる前後方向及び上下方向に移動自在に構成した鋸身移動機構3と、前記鋸身1の前記刃部若しくは前記背部に当接してこの鋸身1を支持する鋸身支持部4とを備え、前記鋸身移動機構3によって移動する前記鋸身1の両側面側に前記回転砥石2を対向状態に配設し、この回転砥石2は夫々、カップ状若しくはリング状の砥石であってリング状先端面5を当接させて研削するカップ形砥石2を採用し、このカップ形砥石2を前記鋸身1の両側面に対して傾斜状態に配設して、前記鋸身1の側面をこの鋸身1の厚さ方向に円弧状に研削するように構成すると共に、前記傾斜状態に配設したカップ形砥石2の前記リング状先端面5の前記鋸身1の側面に最も近い部分が、前記鋸身1の中心部より背部側寄りに当接するようにして前記研削によりこの当接位置が最も薄くなるように構成し、且つ回転砥石移動機構6により前記鋸身1に接近し当接して前記鋸身1の両側面を同時に所定量研削するように構成し、前記カップ形砥石2の間に、前記鋸身1の側面を支持して研削時の前記鋸身1の振れを抑制する振れ止め支持部7を設け、立設状態に配設した前記鋸身1の長さ方向一側を前記鋸身移動機構3で保持し、この鋸身移動機構3で一側を保持した前記鋸身1の長さ方向他側を前記振れ止め支持部7で挟持状態に支持し、この振れ止め支持部7で支持される位置よりも前記鋸身移動機構3側の前記鋸身1の下端に前記鋸身支持部4を当接させてこの鋸身1を下方側から支持し、この鋸身支持部4と前記振れ止め支持部7とで支持した間に位置する前記鋸身1の両側面に前記カップ形砥石2が当接するように構成したことを特徴とする鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【0009】
また、前記鋸身支持部4は、先端部にローラ部8を設けた構成とし、このローラ部8を前記鋸身1の下端に当接させて、前記鋸身移動機構3によって移動している前記鋸身1を下方側から支持するように構成したことを特徴とする請求項1記載の鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【0010】
また、前記鋸身支持部4を上下方向に移動自在に設けた構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【0011】
また、前記鋸身移動機構3により立設状態に保持した前記鋸身1を、この鋸身移動機構3側に引動しながら前記カップ形砥石2で前記鋸身1の両側面を同時に切削するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【0012】
また、前記鋸身移動機構3は、前記鋸身1を立設状態に保持する鋸身保持部9と、この鋸身保持部9で保持した状態の前記鋸身1の長さ方向となる前後方向及び前記長さ方向と直交する方向となる上下方向に移動自在に設けた移動部10と、この移動部10の移動を制御し、この移動部10を前記鋸身1の形状に合わせて直線的或いは曲線的に移動させる移動制御部とで構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【0013】
また、前記回転砥石移動機構6は、前記カップ形砥石2のリング状先端面5の位置を測定する砥石摩耗量検出センサ11を有し、検出した砥石摩耗量に応じて前記カップ形砥石2の前記鋸身1の両側面への移動量を自動補正するように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【0014】
また、前記振れ止め支持部7は、対向状態に配設した前記カップ形砥石2間に配設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【0015】
また、前記カップ形砥石2は、前記回転砥石移動機構6により、前記鋸身1の両側面に対する傾斜角度を自在に調整し得るように構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋸身のバックテーパ加工装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、バックテーパ加工において、作業効率が良く、また、加工精度に優れ左右対称精度を格段に向上させると共に、様々な形状の鋸身に対して容易にバックテーパ加工を施すことができる実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0017】
また、請求項記載の発明においては、鋸身の刃部を形成する下端を、キズ付けずに移動する鋸身を支持することができると共に、スムーズに移動させることができ、これにより鋸身移動時の抵抗が低減され、より一層加工精度を向上させることができる画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0018】
また、請求項3記載の発明においては、様々な形状の鋸身に対して一層容易にバックテーパ加工を施すことができる一層実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0019】
また、請求項記載の発明においては、鋸身移動機構側に鋸身を引動することで、この鋸身を長さ方向に引っ張る引っ張り付勢がこの鋸身に生じ、この引っ張り付勢により、研削時の鋸身の振れが一層抑制され、より一層加工精度が向上し仕上がりの美しいバックテーパ加工を施すことができる画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0020】
また、請求項記載の発明においては、単に一定な幅(高さ)の直線的形状に形成された鋸身だけでなく、湾曲形状に形成された鋸身や幅が一定でない形状、例えば徐々に幅が幅広になる形状に形成された鋸身等、様々な形状の鋸身に対して容易に所定位置にバックテーパ加工を施すことができる画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0021】
また、請求項記載の発明においては、砥石摩耗量検出センサによりカップ形砥石の摩耗量を検知して、この検知した摩耗量に応じてカップ形砥石の移動位置を自動的に調整して、研削量が常に所定の研削量となるように研削することができるので、高精度で安定したバックテーパ加工を連続で行うことができ、より一層効率的且つ高精度にバックテーパ加工を施すことができる実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0022】
また、請求項記載の発明においては、鋸身の長さ方向一側を保持する鋸身移動機構と、鋸身の長さ方向他側を支持する振れ止め支持部との間隔を狭めることができ、この二点間を狭めることで、より安定的に鋸身を支持することができ、これにより研削時の鋸身の振れが一層抑制され、より一層加工精度が向上し仕上がりの美しいバックテーパ加工を施すことができる画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0023】
また、請求項記載の発明においては、バックテーパのR形状や深さを容易に変更することができ、これにより、様々な形状の鋸身に対して所望のバックテーパ加工を容易に施すことができる実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施例を示す平面図である。
図2】本実施例のカップ形砥石を示す説明平面図である。
図3】本実施例の鋸身支持部及び振れ止め支持部を示す説明側面図である。
図4】本実施例の要部を示す説明平面図
図5】本実施例で加工した鋸身の加工前後の形状を示す説明断面図である。
図6】本実施例の回転砥石移動機構を示す説明平面図である。
図7】本実施例の回転砥石移動機構を示す説明側断面図である。
図8】本実施例の鋸身移動機構を示す説明側断面図である。
図9】本実施例の振れ止め支持部を示す説明正面図である。
図10】本実施例の振れ止め支持部の別例を示す説明側面図である。
図11】本実施例を用いてバックテーパ加工を行った際の鋸身の移動軌跡を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0026】
本発明は、鋸身移動機構3によって立設状態に保持された鋸身1の両側面側に回転砥石2を対向状態に配設し、これらを回転砥石移動機構6により鋸身1に接近させ当接させて鋸身1の両側面を同時に所定量研削する構成としたので、作業効率が格段に向上し、更に、鋸身1の厚さ方向のバランスが崩れず加工中に反りが生じることも無く、加工精度も格段に向上する。
【0027】
また、本発明は、回転砥石2に、リング状先端面5を当接させて研削するカップ形砥石2を採用し、このカップ形砥石2を鋸身1の側面に対して傾斜状態(平面視八字状)に設けたことで、平形砥石を採用して円弧状に研削する場合に比して小径の砥石で鋸身1の側面を径大な円弧状に研削することができることとなり、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0028】
また、研削中の鋸身1は、この鋸身1の長さ方向一側を鋸身移動機構3で保持され、この鋸身移動機構3で保持された側と反対側の長さ方向他側を振れ止め支持部7で挟持状態に支持され、更に、この振れ止め支持部7で支持された位置よりも鋸身移動機構3側の鋸身1の下端に鋸身支持部4が当接して下方側から支持された状態となり、これにより、研削時の振れが抑制され、より一層精度良く研削することができることとなる。
【0029】
また更に、本発明は、この鋸身支持部4と振れ止め支持部7とで支持した間に位置する鋸身1の両側面にカップ形砥石2が当接して研削するように構成したので、研削位置の前後が支持され、これにより、一層研削時の鋸身1の振れが抑制され、しかも、本発明は、この鋸身1を支持する振れ止め支持部7をカップ形砥石2の間に配設したので、鋸身の長さ方向一側を保持する鋸身移動機構3と、鋸身の長さ方向他側を支持する振れ止め支持部7との間隔を狭めることができると共に、研削位置の前後を支持する鋸身支持部4と振れ止め支持部7との二点間も狭まり、より安定的に鋸身1を支持することができ、これにより研削時の鋸身の振れが一層抑制され、より一層加工精度が向上し仕上がりの美しいバックテーパ加工を施すことができる。
【0030】
このように、本発明は、極めて作業効率が良く、また、加工精度に優れ左右対称精度を格段に向上させることができる実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【実施例】
【0031】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0032】
本実施例は、鋸の鋸身1の両側面を回転砥石2で研削してこの鋸身1の背部側を刃部側よりも薄くし被切断物の切断面との摩擦抵抗を軽減させるバックテーパを鋸身1の両側面に同時に形成することができる鋸身のバックテーパ加工装置である。
【0033】
具体的には、本実施例は、図1図3に示すように、対向状態に配設した一対の回転砥石2と、鋸身1を立設状態に保持しこの立設状態に保持した鋸身1を前後方向及び上下方向に移動させる鋸身移動機構3と、この鋸身移動機構3で立設状態に保持した鋸身1の刃部側となる下端(下縁)に当接して立設状態の鋸身1を下方側から支持する鋸身支持部4と、鋸身1の鋸身移動機構3で保持した側と反対側を側方から支持し研削時の鋸身1の振れを抑制する振れ止め支持部7とを備えた構成としている。
【0034】
以下に、本実施例のバックテーパ加工装置に係る構成各部について詳細に説明する。
【0035】
本実施例の回転砥石2は、図4に示すように、リング状先端面5を当接させて研削する一対のカップ形砥石2を採用し、夫々のリング状先端面5を内方に向けて対向状態に設けた構成としている。
【0036】
また、夫々のカップ形砥石2は、後述する鋸身移動機構3に立設状態に保持された鋸身1の側面に対して傾斜状態、具体的には、一対のカップ形砥石2が平面視八の字状となるような傾斜状態に配設した構成とし、より具体的には、図4に示すように、一対のカップ形砥石2が、鋸身移動機構3と反対側方向に幅広となるような平面視八の字状の傾斜状態となるように配設した構成としている。
【0037】
即ち、本実施例は、この一対のカップ形砥石2を鋸身1の側面に対して夫々傾斜状態に配設することで、夫々のカップ形砥石2のリング状先端面5が、鋸身1の側面に対して上方側若しくは下方側から徐々に接近し当接して研削し、研削方向に進むに連れ研削深さが増し、所定位置で最もこの研削深さが深くなり、この所定位置を過ぎると徐々に鋸身1の側面から離反する方向に移動してゆき研削深さが浅くなってゆく円弧状の研削軌道を描き、この鋸身1の側面を、図5に示すように、厚さ方向対して円弧状に研削するように構成している。
【0038】
また、この鋸身1の側面に対して傾斜状態に配設した一対のカップ形砥石2は、夫々のリング状先端面5を図2に示すようにテーパー状に形成して、鋸身1の側面に当接する面積を広くし、効率良く研削し得る構成としている。
【0039】
尚、本実施例のカップ形砥石2とは、砥石部がカップ形のものだけでなく、リング形のもの含むものとして、これらを総じてカップ形砥石2と称している。
【0040】
また、この傾斜状態に配設した一対のカップ形砥石2は夫々、回転砥石移動機構6により、この鋸身1の両側面に対する傾斜角度を自在に調整し得るように構成すると共に、このカップ形砥石2の回転軸の軸方向に進退自在に移動し得る構成としている。
【0041】
この回転砥石移動機構6は、具体的には、カップ形砥石2を支持するカップ形砥石支持部12と、このカップ形砥石支持部12が回動移動するカップ形砥石移動用基台部14と、カップ形砥石2のリング状先端面5の位置を測定する砥石摩耗量検出センサ11と、この砥石摩耗量検出センサ11及びカップ形砥石支持部12の移動を制御するNC装置とで構成しており、夫々のカップ形砥石2に独立して設けた構成としている。
【0042】
より具体的に説明すると、カップ形砥石支持部12は、図6に示すように、このカップ形砥石支持部12の回動移動の際の回動支点となる回動支点部16に枢着する枢着部17と、カップ形砥石支持部12を回動移動させるための駆動部18aとボールネジ18bとで構成した砥石支持部用駆動機構18と連接する駆動機構連接部19とを設けた構成とし、枢着部17を鋸身1に対してカップ形砥石2が研削する位置の真下に配設した回動支点部16に枢着し、駆動機構連接部19を砥石支持部用駆動機構18に連接して、この砥石支持部用駆動機構18の駆動により駆動機構連接部19を押引動することによって、カップ形砥石移動用基台部14上を回動移動するように構成している。
【0043】
尚、砥石支持部用駆動機構18は、駆動部18aを使用せず、手動でボールネジ18bを操作するように構成したものでも良い。
【0044】
また、本実施例のカップ形砥石支持部12は、この砥石支持部用駆動機構18によって回動移動させて角度調整した後、固定具15(ボルト、ナット)にてカップ形砥石移動用基台部14に固定する構成としている。
【0045】
尚、図中符号13は、固定具15のボルトを挿通するためのボルト挿通孔である。
【0046】
また更に、このカップ形砥石支持部12は、上部にカップ形砥石2を載置するカップ形砥石載置部20を設けた構成とし、このカップ形砥石載置部20は、カップ形砥石支持部12に対して、このカップ形砥石載置部20に設けたカップ形砥石2の軸方向に進退移動自在に設けた構成としている。
【0047】
具体的には、このカップ形砥石載置部20は、図7に示すように、底部にスライドレール部21を設けた構成とし、このスライドレール部21をカップ形砥石支持部12に設けたスライドガイド部22に係合させ、このスライドガイド部22に沿って前後方向に進退移動自在に設けた構成とし、このカップ形砥石載置部20は、駆動部23aとボールネジ23bとで構成した砥石載置台用駆動機構23によって移動する構成としている。
【0048】
また、砥石摩耗量検出センサ11は、非接触式エアセンサを採用し、図2に示すように、回動自在に設けて角度調整自在な構成として、カップ形砥石2の使用面となるリング状先端面5に対してこの砥石摩耗量検出センサ11の先端部11aが直交状態となるように配設してカップ形砥石2のリング状先端面5の位置を測定する構成としている。
【0049】
具体的には、所定位置、例えばカップ形砥石2の待機位置(ゼロポジション)における砥石摩耗量検出センサ11の先端部11aと、カップ形砥石2のリング状先端面5との間隔を測定し、この間隔の変動からカップ形砥石2の摩耗量を算出し、このカップ形砥石2の摩耗量に応じてカップ形砥石2の鋸身1の両側面への移動量、即ちカップ形砥石2を研削位置に移動させるためにこのカップ形砥石2を載置したカップ形砥石載置部20を鋸身1側に移動させる際の移動量を自動補正し、研削量にバラツキが生じないようにし、高精度に安定してバックテーパ加工を連続加工し得るように構成している。
【0050】
尚、この砥石摩耗量検出センサ11によるカップ形砥石載置部20の移動量の自動補正はNC装置によって制御される構成としている。
【0051】
また、鋸身移動機構3は、鋸身1を立設状態に保持する鋸身保持部9と、この鋸身保持部9で保持した状態の鋸身1の長さ方向となる前後方向及び鋸身1の長さ方向と直交する方向となる上下方向に移動自在に設けた移動部10と、この移動部10の移動を制御し、この移動部10を鋸身1の形状に合わせて直線的或いは曲線的に移動させる移動制御部とで構成している。
【0052】
具体的には、鋸身保持部9は、図8に示すように、シリンダ機構によって開閉動作自在に構成した開閉挟持部9aを先端部に設けた構成とし、この開閉挟持部9aで鋸身1の柄部側を挟持して、この鋸身1を立設状態に保持するように構成している。
【0053】
また、移動部10は、図8に示すように、底部に鋸身移動用基台部24上に設けたスライドレール部25と係合するスライダー部26を設けた構成とし、このスライダー部26を鋸身移動用基台部24のスライドレール部25に係合させてこのスライドレール部25に沿って進退移動自在に設けた構成とし、本実施例では、この移動部10は、駆動部27aとボールネジ27bとで構成した移動部用駆動機構27によって移動する構成としている。
【0054】
また更に、この移動部10は、正面部に上述した鋸身保持部9を取り付ける鋸身保持部取付部28を設けた構成とし、この鋸身保持部取付部28は、移動部10に対して、この移動部10の高さ方向となる上下方向に移動自在に設けた構成としている。
【0055】
具体的には、この鋸身保持部取付部28は、正面部に鋸身保持部9を連設する連設部29を設け、背面部に移動部10の正面部に設けたスライドレール部30と係合するスライダー部31を設けた構成とし、このスライダー部31を移動部10に設けたスライドレール部30に係合させてこのスライドレール部30に沿って上下移動自在に設けた構成とし、本実施例では、この鋸身保持部取付部28は、駆動部32aとボールネジ32bとで構成した鋸身保持部用駆動機構32によって移動する構成としており、この鋸身保持部取付部28の上下移動及び移動部10の進退移動は、いずれもNC装置によって制御される構成としている。
【0056】
また、本実施例の移動部10は、このNC装置の制御によって、移動部10の前後方向への移動と、鋸身保持部取付部28の上下方向への移動とを同時行う複合動作が可能であり、この前後方向への移動と上下方向への移動との複合移動動作で鋸身保持部9に保持した鋸身1を斜め方向に直線的に移動させたり、弧を描くように曲線的に移動させたりすることができ得るように構成している。
【0057】
また、鋸身支持部4は、図3に示すように、上部にローラ部8を設けた構成とし、このローラ部8を鋸身1の刃部側となる下端に当接させて下方側から鋸身1を支持する構成とし、この鋸身1の背部側から刃部側に向かって研削することで下方側へ移動付勢が生じる鋸身1の下方側への移動を抑制し、研削基準位置(研削最深部の高さ方向の位置)が位置ずれしない構成としている。
【0058】
尚、本実施例では、このローラ部8は、遊転自在に設けた構成としているが、例えば、鋸身移動機構3、具体的には移動部10の進退移動に連動して回転駆動する構成としても良い。
【0059】
また、このローラ部8の代わりに板状の超硬チップを設けた構成としても良い。
【0060】
また、この鋸身支持部4は、上下動自在に設けた支持台部33に設けられ、この支持台部33の上下動により上下方向に移動自在に設けて高さ調整自在に設けた構成としている。
【0061】
また更に、本実施例では、この鋸身支持部4を、鋸身移動機構3で保持した鋸身1の柄部側と、カップ形砥石2が鋸身1に当接し研削する位置との間に配設した構成とし、この鋸身支持部4をカップ形砥石2寄りに配設して鋸身1の研削位置の近傍を支持することで、研削時の鋸身1の振れの抑制効果の向上を図った構成としている。
【0062】
尚、この支持台部33は、駆動部34aとボールネジ34bとで構成した支持台用駆動機構34によって移動する構成としており、この支持台用駆動機構34の上下動は、他の駆動機構と同様に、NC装置によって制御される構成としている。
【0063】
また、振れ止め支持部7は、図3及び図9に示すように、シリンダ機構によって開閉動作自在に構成した開閉挟持部35と、遊転自在に構成した補助ローラ部36を設けた構成とし、この開閉挟持部35で鋸身1を両側面側から挟持するように支持し、補助ローラ部36でこの開閉挟持部35で支持した部分の手前側を下方側から鋸身支持部4の補助的役割として支持するように構成している。
【0064】
具体的には、鋸身1を支持する開閉挟持部35と補助ローラ部36とが対向状態に配設したカップ形砥石2間に位置するように配設して鋸身1のカップ形砥石2で研削する研削位置の先端側(柄部側と反対側)を支持するように構成すると共に、鋸身支持部4を設けた支持台部33上に設けて、鋸身支持部4同様、この支持台部33の上下動により上下方向に移動自在に設けて高さ調整自在に設けた構成としている。
【0065】
即ち、本実施例は、この振れ止め支持部7と上述した鋸身支持部4とを同じ支持台部33上に設けて、この支持台部33の上下動作により、同時に上下方向に移動して鋸身支持部4のローラ部8と、振れ止め支持部7の補助ローラ部36との位置関係(高さ関係)が変動しないように構成して、この振れ止め支持部7で鋸身1の研削位置よりも先端側を支持し、上述した鋸身支持部4で鋸身1の研削位置よりも柄部側を支持して、鋸身1の研削位置を挟んだ二点を常に下方側から支持して鋸身1の下方側への移動付勢を受け止めると共に上下方向の鋸身1の振れを抑制し、更に振れ止め支持部7で鋸身1を両側面側から支持して左右方向の振れを抑制して、研削時の振れによる加工精度の低下を抑制すると共に、この鋸身1の振れが発生することで生じるカップ形砥石2の偏摩耗を防止し得る構成としている。
【0066】
尚、図3に示す振れ止め支持部7は、鋸身1の形状が直線的な形状の場合に用いる振れ止め支持部7を示したものであり、振れ止め支持部7の開閉挟持部35が鋸身1の移動方向と同方向の水平状態となるように、この開閉挟持部35を取り付ける取付け部37の形状を直角形状に形成した構成とし、また、図10の振れ止め支持部7は、鋸身1の形状が湾曲している曲線的な形状の場合に用いる振れ止め支持部7を示したものであり、振れ止め支持部7の開閉挟持部35が鋸身1の移動方向と同方向の傾斜状態となるように、この開閉挟持部35を取り付ける取付け部37の形状をくの字形状(への字形状)に形成した構成としている。
【0067】
また、本実施例は、図示していないが、バックテーパ加工を無人化するためのストッカ部、鋸身供給機構、鋸身排出機構を備えた構成としている。
【0068】
上述のように構成した本実施例の作用・効果を、本実施例を用いたバックテーパ加工手順に沿って説明する。
【0069】
先ず、カップ形砥石2を所望の角度調整し、調整後、固定具15で位置決め固定する。
【0070】
次に、砥石摩耗量検出センサ11で夫々のカップ形砥石2のリング状先端面5の位置を測定すると共に、鋸身移動機構3の鋸身保持部9で鋸身1の非研削部である柄部側を挟持し、この鋸身1を立設状態に保持する。
【0071】
この鋸身移動機構3に鋸身1を保持させたことによって、鋸身1はカップ形砥石2に対してこの鋸身1の長さ方向である前後方向及び前記長さ方向と直交する方向である上下方向に自在に移動可能となり、更に、前後方向と上下方向へ複合的に移動することによって、斜め方向に直線的に移動したり、弧を描くように曲線的に移動したりすることも可能になり、これによって、一定な幅(高さ)の直線的形状に形成された鋸身だけでなく、湾曲形状に形成された鋸身や幅が一定でない形状、例えば徐々に幅が幅広になる形状に形成された鋸身等、様々な形状の鋸身に対して容易に所定位置にバックテーパ加工を施すことができることとなる。
【0072】
この立設状態に保持した鋸身1を、NC装置で制御する鋸身移動機構3によって研削位置まで移動する。
【0073】
この研削位置に移動した鋸身1は、カップ形砥石2が鋸身1の側面を研削する位置の前後方向の下端を夫々、鋸身支持部4のローラ部8と振れ止め支持部7の補助ローラ部36で支持され、更に、先端側を振れ止め支持部7の開閉挟持部35で両側面側から挟持状態に支持された状態となる。
【0074】
また、この鋸身1を支持する鋸身支持部4と振れ止め支持部7は、この鋸身1を支持する前、若しくは支持した状態で、傾斜状態に配設した各カップ形砥石2のリング状先端面5の鋸身1の側面に最も近い部分が、図11の一点鎖線で示すように、鋸身1の中心部(背部側と刃部側との中間位置)よりも背部側寄りに当接するように高さ調整される。
【0075】
この研削位置に移動し鋸身支持部4と振れ止め支持部7とで支持した鋸身1に対して、砥石摩耗量検出センサ11で測定した結果に基づいて、左右に鋸身1の側面に対して傾斜状態に配設した夫々のカップ形砥石2が回転しながら所定量移動しこの鋸身1の両側面に同時に当接して鋸身1の両側面を同時に研削し始める。
【0076】
この際、本実施例は、上述したようにカップ形砥石2を鋸身1の側面に対して傾斜状態に設けたことにより、カップ形砥石2は鋸身1の側面を、カップ形砥石2の回転軌道となる円弧状に研削することとなり、これにより研削した鋸身1は図5に示すような形状になり、しなやかで丈夫な腰の強い鋸身1となる。
【0077】
また、上述したように本実施例は一対のカップ形砥石2で鋸身1の両側面を同時に研削するので、作業効率が格段に向上し、更に、鋸身1の厚さ方向のバランスが崩れず加工中に反りが生じることも無く、加工精度も格段に向上することとなる。
【0078】
また、この研削開始と共に鋸身移動機構3が後方に移動し、鋸身1は引動方向に移動しながら研削される。
【0079】
本実施例は、この引動方向に移動する鋸身1の先端側を振れ止め支持部7で挟持状態に支持しているので、この鋸身1を引動方向に移動することによって、この鋸身1の長さ方向に引っ張り付勢が生じ、この引っ張り付勢によって、より一層研削時の振れが抑制され加工精度が向上することとなる。
【0080】
尚、鋸身1の形状が湾曲形状の場合や長さ方向で幅(高さ方向)が変化するような形状の鋸身1は、鋸身移動機構3は後方に移動しながら鋸身1の形状に合わせて上下方向にも移動する。
【0081】
また、鋸身1の研削中は、カップ形砥石2が鋸身1の背部側から刃部側に向かって研削(回転)するため、鋸身1には下方側への移動付勢が生じるが、本実施例では、この下方側に移動付勢が生じている鋸身1を下方側から鋸身支持部4と振れ止め支持部7の補助ローラ部36とで支持しているので、鋸身1が下方側に位置ズレすることがなく、高さ方向の基準位置が保持される。
【0082】
また、この研削中は、鋸身1に振れ(振動)が生じるが、本実施例では、この下方側への移動付勢によって鋸身1は鋸身支持部4や振れ止め支持部7の補助ローラ部36に押圧状態となり、これによって、上下方向の振れが抑制され、更に、振れ止め支持部7の開閉挟持部35で鋸身1を両側面側から挟持状態に支持することで左右方向の振れ(振動)が抑制されることとなる。
【0083】
即ち、本実施例は、上述した引っ張り付勢による振れの抑制と、鋸身支持部4及び振れ止め支持部7による振れの抑制との相互作用により、可及的に研削中の鋸身1の振れの発生を抑制する構成とし、これにより、振れによる研削精度の低下が起こらず従来装置に比して格段に加工精度が向上し、しかも、この振れを抑制することでカップ形砥石2の偏摩耗も防止できるので、カップ形砥石2の寿命の延命化も図れることとなる。
【0084】
また、本実施例では、この鋸身支持部4及び振れ止め支持部7を上下方向に移動自在に設けた構成としたので、この鋸身支持部4及び振れ止め支持部7を鋸身移動機構3の上下動作に合わせて上下動させて、一定な幅(高さ)の直線的形状に形成された鋸身だけでなく、湾曲形状に形成された鋸身や幅が一定でない形状、例えば徐々に幅が幅広になる形状に形成された鋸身等、様々な形状の鋸身に対して常に鋸身1を下方側から支持することができることとなるので、鋸身1の形状の変化に関わらず良好に鋸身1の振れを抑制することができ、良好な加工精度を維持することができる実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0085】
また更に、本実施例は、この鋸身1の研削中の振れを抑制する振れ止め支持部7を対向状態に配設した一対のカップ形砥石2間に配設した構成としたので、装置のコンパクト化を図ることができ、しかも、鋸身支持部4と振れ止め支持部7との間隔を狭めることができ、これらで支持する二点の間隔を狭めることで、鋸身1の研削位置に近い個所を集中的に支持することができ、これにより研削時の鋸身の振れが一層抑制され、より一層加工精度が向上し仕上がりの美しいバックテーパ加工を施すことができる画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0086】
また、本実施例は、この鋸身1を下方側から支持する鋸身支持部4をローラ部8で支持する構成としたので、鋸身1の刃部を形成する下端をキズ付けずに鋸身1を支持しながら引動方向に移動させることができると共に、よりスムーズに鋸身1を移動させることができ、これにより鋸身1が移動する(引動される)際の鋸身支持部4に対する接触抵抗が低減され、抵抗による振れなどが生じず、より一層加工精度を向上させることができる画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0087】
このように、本実施例は、極めてバックテーパ加工の作業効率が良く、また、加工精度に優れ左右対称精度を格段に向上させることができ、しかも、様々な形状の鋸身1に対しても容易にバックテーパ加工を施すことができる実用性に優れた画期的な鋸身のバックテーパ加工装置となる。
【0088】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0089】
1 鋸身
2 回転砥石,カップ形砥石
3 鋸身移動機構
4 鋸身支持部
5 リング状先端面
6 回転砥石移動機構
7 振れ止め支持部
8 ローラ部
9 鋸身保持部
10 移動部
11 砥石摩耗量検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11