特許第5685282号(P5685282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5685282免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685282
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20150226BHJP
【FI】
   E04B1/68 100A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-80500(P2013-80500)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-202008(P2014-202008A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2013年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】512209760
【氏名又は名称】和田装備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171354
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 隆
(72)【発明者】
【氏名】和田 忠夫
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−041668(JP,A)
【文献】 特開2000−104395(JP,A)
【文献】 特開平02−176049(JP,A)
【文献】 特開2007−070958(JP,A)
【文献】 特開2013−019267(JP,A)
【文献】 特開平11−324136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物と建物との躯体間に設けられた間隙部を塞ぐための床用エキスパンションジョイントにおいて、該建物と建物との躯体間上面には一対の凹部形状面を構成し、該一対の凹部形状面には夫々金属製のベースプレートを敷設し、該金属製のベースプレート上には夫々前記凹部形状面の立上がり部分において立上がり斜部を有するエキスパンションジョイント床摺動部を構成し、該一対の凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には前記間隙部を塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材を架設し、該エキスパンションジョイント床部材の両側先端部には前記ベースプレート上の凹部形状面の立上がり斜部に対向した逆傾斜面を設け、該エキスパンションジョイント床部材の両側先端部に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を滑性材装着管に嵌着して任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の両側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の両側端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしていることを特徴とする免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置。
【請求項2】
建物と建物との躯体間に設けられた間隙部を塞ぐための床用エキスパンションジョイントにおいて、該建物と建物との躯体間上面には夫々形状の異なる凹部形状面を構成し、該片側の凹部形状面にはL字型金属製ベースプレートを敷設し他方の金属製ベースプレートには前記凹部形状面の立上がり部分において立上がり斜部を有するエキスパンションジョイント床摺動部を構成し、前記形状の異なる凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には前記間隙部を塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材を架設し、該架設されたエキスパンションジョイント床部材の片側はL字形金属製ベースプレート側で複数個のウイング用アイボルトやウイング用丁番で回動可能に固定されており、また、架設されたエキスパンションジョイント床部材の他方には前記凹部形状面の立上がり斜部に対向した逆傾斜面を設け、該エキスパンションジョイント床部材の片側に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を滑性材装着管に嵌着して任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の片側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の片側先端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしていることを特徴とする免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置。
【請求項3】
前記エキスパンションジョイント床部材の両側または片側に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を滑性材装着管に嵌着して任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が夫々前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており、また、前記エキスパンションジョイント床部の底辺部には非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を凹部形状面に対して任意間隔で突出して設けており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の両側及び片側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の底辺部が凹部形状面を滑動可能であり、前記両側または片側先端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置。
【請求項4】
前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面やエキスパンションジョイント床部材の底辺部に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材はエキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面やエキスパンションジョイント床部材の底辺部に固着された滑性材装着管に嵌着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置。
【請求項5】
前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材はエキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面にビス等の固着手段により突出して固着されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建造物と非免震建造物との躯体間に設けられた間隙部を覆うエキスパンションジョイント床部材の滑動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免震建造物においては、建物が地震可動時に大変形を生じることに対する建築的な対応が最重要事項である。この大変形は地盤と建物の間に生じる変形で、この場合に生じる免震建造物と非免震建造物間の相互移動に対応した間隙部(クリアランス)を確保する必要がある。
【0003】
即ち、外溝部や非免震建物の外部から免震建物への人や車の出入りに相当する動線上において、躯体間の相互移動に対応した間隙部を確保すると同時に該間隙部を覆い免震建造物と非免震建造物間に装架され地震時の相互移動に対応できる免震エキスパンションジョイント床が必要となる。
【0004】
そして、最近の建物は、免震化の影響で免震建造物と非免震建造物との躯体間の間隙部(クリアランス)は広がる傾向にあり、前記躯体間の間隙部を覆うための免震エキスパンションジョイント床部材は、その間隙部を覆うために幅寸法が大きくなり、大型で重量のある堅牢なものが必要となってきた。
【0005】
斯して、免震建造物と非免震建造物間に装架されて間隙部を覆い地震時における躯体間の大きな変形に対応できることが要求されるエキスパンションジョイント床部材は、地震時の相互移動に対して円滑に追従して装架された間隙間で滑動が可能な滑動機構が必要となり、また、前記滑動機構は構造が簡単で安価に製造することができ、且つ、取付作業やメンテナンスが容易であることや、地震による可動時や揺れがおさまった時に免震建造物側においてエキスパンションジョイント床部材と、該床部材を架設する凹設部の床目地枠間との隙間を広げることなく最少寸法に維持して保全できる免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置の具現化が必要である。
【0006】
而して、免震建造物と非免震建造物との躯体間のクリアランスを塞ぐ構成の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動機構の従来例として、特開平9−184204号公報(以下、特許文献1と称する。)が開示されている。
【0007】
特許文献1に開示された従来例では、左右の建物が地震等で揺れ動いた場合、その揺れ動きにスムーズに追従して移動し、揺れが停止した場合には元の状態に自動的に戻すことができる床用目地装置を提供するものである。
【0008】
そして、特許文献1の発明は、目地部を介して離間された左右の建物の床部分の目地部寄りの部位に該目地部に開口するように形成された一対の凹部と、この一対の凹部にそれぞれ固定された一対の固定金具と、この一対の固定金具あるいは前記左右の建物の床部分の躯体に両端部が固定された少なくとも2個以上のパンタグラフ状の伸縮リンクと、前記一対の凹部を覆うように上部両側に左右の床面を覆うフランジを有する両側壁が傾斜面に形成された目地カバーと、この目地カバーの両側壁と接触するように前記一対の固定金具にそれぞれ所定間隔で取付けられた複数個のローラーと、前記目地カバーを常時前記ローラーと接触するように付勢する前記伸縮リンクに取付けられた付勢機構とを備えることを特徴とする床目地装置である。
【0009】
然しながら、最近の免震エキスパンションジョイント床部材は、免震建物への人や車の出入りに利用され、且つ、免震化の影響で免震建造物と非免震建造物との躯体間の間隙部(クリアランス)は広がる傾向にあり、前記躯体間の間隙部を覆うための免震エキスパンションジョイント床部材は、その間隙部を覆うために幅寸法が大きくなり、大型で重量のある堅牢なものが必要となってきており、特許文献1の発明の如く両面壁が傾斜面に形成された目地カバーと、この目地カバーの両側壁と接触するように前記一対の固定金具にそれぞれ所定間隔で取付けられた複数個のローラーが設けられている構造では、前記複数個のローラーを軸支する回転軸が破損しやすく、経年により1箇所のローラー回転軸が破損すると並列設置されている免震エキスパンションジョイント床に軋みが生じて人や車が通る度にガタガタと騒音を発したり、所定間隔で取付けられた他のローラー回転軸も連鎖的に破損させてしまう欠点がある。
【0010】
また、特許文献1の発明は、目地カバーの両面壁と接触するように設けられた固定金具内に回転軸を介して取付けられたローラー(第1の実施形態)や目地カバーの両面壁内面に回転軸を介して取付けられたローラー(第3の実施形態)により構成されており、前記ローラーは耐荷重や大きさを考慮して選択して複数個取付けなくてはならず免震エキスパンションジョイントの製造コストを高い物にする原因を有してしまい、また、狭い場所に取付けられるローラー機構は、地震による揺れが終息した場合の免震エキスパンションジョイントのメンテナンスにおいてローラー回転軸の軸支機構点検やローラーの交換等大きな負担を生じせしめている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−184204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、免震建造物と非免震建造物との躯体間に設けられた間隙部を覆うエキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供するものである。
【0013】
最近の免震エキスパンションジョイント床部材は、免震建物への人や車の出入りに利用され、且つ、免震化の影響で免震建造物と非免震建造物との躯体間の間隙部(クリアランス)は広がる傾向にある。そして、躯体間の間隙部を覆うための免震エキスパンションジョイント床部材は、その間隙部を覆うために幅寸法が大きくなり、大型で重量のある堅牢なものが必要となってきており、特許文献1の発明の如く両面壁が傾斜面に形成された目地カバーと、この目地カバーの両側壁と接触するように前記一対の固定金具にそれぞれ所定間隔で取付けられた複数個のローラーが設けられている構造では、前記複数個のローラーを軸支する回転軸が破損しやすく、経年により1箇所のローラー回転軸が破損すると並列設置されている免震エキスパンションジョイント床部材に軋みが生じて人や車が通る度にガタガタと騒音を発したり、所定間隔で取付けられた他のローラー回転軸も連鎖的に破損させてしまう欠点があり、本発明では、従来装置の上記欠点を解消する。
【0014】
また、特許文献1の発明は、目地カバーの両面壁と接触するように設けられた固定金具内に回転軸を介して取付けられたローラーや目地カバーの両面壁内面に回転軸を介して取付けられたローラーにより構成されており、前記ローラーは耐荷重や大きさを考慮して選択して複数個取付けなくてはならず免震エキスパンションジョイントの製造コストを高い物にする原因を有してしまい、また、狭い場所に取付けられるローラー機構は、地震による揺れが終息した場合の免震エキスパンションジョイントのメンテナンスにおいてローラー回転軸の軸支機構点検やローラーの交換等大きな負担を生じせしめており、本発明では、価格の高いローラー機構等を使用することなく製造コストを削減でき、また、機構を簡単にすることにより、メンテナンスを大幅に軽減できるエキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、課題を解決するための手段として、建物と建物との躯体間上面には一対の凹部形状面を構成し、該一対の凹部形状面には夫々金属製のベースプレートを敷設し、該金属製のベースプレート上には夫々前記凹部形状面の立上がり部分において立上がり斜部を有するエキスパンションジョイント床摺動部を構成し、該一対の凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には前記間隙部を塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材を架設し、該エキスパンションジョイント床部材の両側先端部には前記ベースプレート上の凹部形状面の立上がり斜部に対向した逆傾斜面を設け、該エキスパンションジョイント床部材の両側先端部に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の両側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の両側端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしている免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、建物と建物との躯体間に設けられた間隙部を塞ぐための床用エキスパンションジョイントにおいて、該建物と建物との躯体間上面には夫々形状の異なる凹部形状面を構成し、該片側の凹部形状面にはL字型金属製ベースプレートを敷設し他方の金属製ベースプレートには前記凹部形状面の立上がり部分において立上がり斜部を有するエキスパンションジョイント床摺動部を構成し、前記形状の異なる凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には前記間隙部を塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材を架設し、該架設されたエキスパンションジョイント床部材の片側はL字形金属製ベースプレート側で複数個のウイング用アイボルトやウイング用丁番で回動可能に固定されており、また、架設されたエキスパンションジョイント床部材の他方には前記凹部形状面の立上がり斜部に対向した逆傾斜面を設け、該エキスパンションジョイント床部材の片側に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の片側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の片側先端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしている免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供するものである。
【0017】
更に、本発明において、前記エキスパンションジョイント床部材の両側、または片側に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材は任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が夫々前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており、また、前記エキスパンションジョイント床部の底辺部には非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を凹部形状面に対して任意間隔で突出して設けており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の両側及び片側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の底辺部が凹部形状面を滑動可能であり、前記両側または片側先端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしている免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供するものである。
【0018】
そして、本発明における前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面や底辺部に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材は、エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面や底辺部に固着された滑性材装着管に嵌着されている。
【0019】
また、本発明において、前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面や底辺部に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材は、エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面に装着され、また、前記エキスパンションジョイント床部材の凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には非金属製の摩擦係数の少ない滑性プレートを介してエキスパンションジョイント床部材が架設されている。
【0020】
更に、本発明において、前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材は、エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面にビス等の固着手段により突出して固着されている。
【発明の効果】
【0021】
斯くして、本発明は、従来装置に比較して安価な構成部材を採用して製造コストを大幅に削減することが可能である。
【0022】
また本発明は、従来装置に比較して免震エキスパンションジョイント床部材を滑動させる機構が単純化されて破損しにくくなり、経年にも耐える免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供することができる。
【0023】
更に、本発明は地震による揺れが終息した場合のメンテナンスにおいて、滑性材部品の点検交換が容易であり、メンテナンス費用を大幅に削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施場所を説明する平面図。
図2図1の側断面図。
図3】(A)本発明の動作を説明する断面図で間隙部が狭くなった状態を示す。 (B)本発明の動作を説明する断面図で間隙部が広くなった状態を示す。
図4】(A)本発明の実施例1を説明する要部拡大断面図。 (B)本発明の他の実施例を説明する要部拡大断面図。(C)本発明の他の実施例を説明する要部拡大断面図。
図5】本発明の実施例2を説明する平面図。
図6図5の側断面図。
図7】(A)実施例2の動作を説明する断面図で間隙部が狭くなった状態を示す。 (B)実施例2の動作を説明する断面図で間隙部が広くなった状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、免震建造物と非免震建造物との躯体間に設けられた間隙部を覆うエキスパンションジョイント床部材の滑動装置に関するものである。
【0026】
免震建造物においては、建物が地震可動時に大変形を生じることに対する建築的な対応が最重要事項である。この大変形は地盤と建物の間に生じる変形で、この場合に生じる免震建造物と非免震建造物間の相互移動に対応した間隙部(クリアランス)を確保する必要がある。
【0027】
即ち、外溝部や非免震建物の外部から免震建物への人や車の出入りに相当する動線上において、躯体間の相互移動に対応した間隙部を確保すると同時に該間隙部を覆い免震建造物と非免震建造物間に装架され地震時の相互移動に対応できる免震エキスパンションジョイント床部材が必要となる。
【0028】
そして、最近の建物は、免震化の影響で免震建造物と非免震建造物との躯体間の間隙部(クリアランス)は広がる傾向にあり、前記躯体間の間隙部を覆うための免震エキスパンションジョイント床部材は、その間隙部を覆うために幅寸法が大きくなり、大型で重量のある堅牢なものが必要となってきた。
【0029】
斯して、免震建造物と非免震建造物間に装架されて間隙部を覆い地震時における躯体間の大きな変形に対応できることが要求されるエキスパンションジョイント床部材は、地震時の相互移動に対して円滑に追従して装架された間隙間で滑動が可能な滑動機構が必要となり、また、前記滑動機構は構造が簡単で安価に製造することができ、且つ、取付作業やメンテナンスが容易であることや、地震による可動時や揺れがおさまった時に免震建造物側においてエキスパンションジョイント床部材と、該床部材を架設する凹設部の床目地枠間との隙間を広げることなく最少寸法に維持して保全できる免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置の具現化が必要である。
【0030】
斯くして、最近の免震エキスパンションジョイント床部材は、免震建物への人や車の出入りに利用され、且つ、免震化の影響で免震建造物と非免震建造物との躯体間の間隙部(クリアランス)は広がる傾向にある。そして、躯体間の間隙部を覆うための免震エキスパンションジョイント床部材は、その間隙部を覆うために幅寸法が大きくなり、大型で重量のある堅牢なものが必要となってきており、特許文献1の発明の如く両面壁が傾斜面に形成された目地カバーと、この目地カバーの両側壁と接触するように前記一対の固定金具にそれぞれ所定間隔で取付けられた複数個のローラーが設けられている構造では、前記複数個のローラーを軸支する回転軸が破損しやすく、経年により1箇所のローラー回転軸が破損すると並列設置されている免震エキスパンションジョイント床部材に軋みが生じて人や車が通る度にガタガタと騒音を発したり、所定間隔で取付けられた他のローラー回転軸も連鎖的に破損させてしまう欠点があり、本発明では、従来装置の上記欠点を解消するためのものである。
【0031】
また、特許文献1の発明は、目地カバーの両面壁と接触するように設けられた固定金具内に回転軸を介して取付けられたローラーや目地カバーの両面壁内面に回転軸を介して取付けられたローラーにより構成されており、前記ローラーは耐荷重や大きさを考慮して選択して複数個取付けなくてはならず免震エキスパンションジョイントの製造コストを高い物にする原因を有してしまい、また、狭い場所に取付けられるローラー機構は、地震による揺れが終息した場合の免震エキスパンションジョイントのメンテナンスにおいてローラー回転軸の軸支機構点検やローラーの交換等大きな負担を生じせしめており、本発明では、価格の高いローラー機構等を使用することなく製造コストを削減でき、また、機構を簡単にすることにより、メンテナンスを大幅に軽減できるエキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供するものである。
【0032】
斯して、本発明は、建物と建物との躯体間に設けられた間隙部を塞ぐための床用エキスパンションジョイントにおいて、該建物と建物との躯体間上面には一対の凹部形状面を構成し、該一対の凹部形状面には夫々金属製のベースプレートを敷設し、該金属製のベースプレート上には夫々前記凹部形状面の立上がり部分において立上がり斜部を有するエキスパンションジョイント床摺動部を構成し、該一対の凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には前記間隙部を塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材を架設し、該エキスパンションジョイント床部材の両側先端部には前記ベースプレート上の凹部形状面の立上がり斜部に対向した逆傾斜面を設け、該エキスパンションジョイント床部材の両側先端部に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の両側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の両側端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしていることが好ましい。
【0033】
また、本発明は、建物と建物との躯体間に設けられた間隙部を塞ぐための床用エキスパンションジョイントにおいて、該建物と建物との躯体間上面には夫々形状の異なる凹部形状面を構成し、該片側の凹部形状面にはL字型金属製ベースプレートを敷設し他方の金属製ベースプレートには前記凹部形状面の立上がり部分において立上がり斜部を有するエキスパンションジョイント床摺動部を構成し、前記形状の異なる凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には前記間隙部を塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材を架設し、該架設されたエキスパンションジョイント床部材の片側はL字形金属製ベースプレート側で複数個のウイング用アイボルトやウイング用丁番で回動可能に固定されており、また、架設されたエキスパンションジョイント床部材の他方には前記凹部形状面の立上がり斜部に対向した逆傾斜面を設け、該エキスパンションジョイント床部材の片側に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の片側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の片側先端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしていることが好ましい。
【0034】
更に、本発明は、前記エキスパンションジョイント床部材の両側または片側に設けた逆傾斜面に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材は任意間隔で突出して設け、該滑性材の表面が夫々前記ベースプレート上の立上がり斜部に対向して設けられており、また、前記エキスパンションジョイント床部の底辺部には非金属製の摩擦係数の少ない滑性材を凹部形状面に対して任意間隔で突出して設けており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材の両側及び片側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材の底辺部が凹部形状面を滑動可能であり、前記両側または片側先端部に設けた逆傾斜面が金属製のベースプレートの立上がり斜部を滑動可能にしていることが好ましい。
【0035】
そして、本発明は、前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面や底辺部に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材はエキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面や底辺部に固着された滑性材装着管に嵌着されている免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置であることが好ましい。
【0036】
また、本発明は、前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面や底辺部に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材はエキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面に装着され、また、前記エキスパンションジョイント床部材の凹部形状面に敷設された金属製ベースプレート上には非金属製の摩擦係数の少ない滑性プレートを介してエキスパンションジョイント床部材が架設されている免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置であることが好ましい。
【0037】
更に、本発明は、前記エキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材はエキスパンションジョイント床部材の逆傾斜面にビス等の固着手段により突出して固着されている免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置であることが好ましい。
【0038】
斯くして、上記構成により本発明は、従来装置に比較して安価な構成部材を採用して製造コストを大幅に削減することが可能である。
【0039】
また本発明は、従来装置に比較して免震エキスパンションジョイント床を滑動させる機構が単純化されて破損しにくくなり、経年にも耐える免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供することができる。
【0040】
更に、本発明は地震による揺れが終息した場合のメンテナンスにおいて、滑性材部品の点検交換が容易であり、メンテナンス費用を大幅に削減することが可能である。
【実施例1】
【0041】
本発明の実施例1を図1乃至図4(A)に基づいて説明する。図1は、本発明を実施する場所を説明する平面図であり、図2は、図1の側断面図を示している。また、図3(A)(B)は実施例1の動作を説明する断面図で、図3(A)は、実施例1の動作説明断面図で間隙部が狭くなった状態を示しており、図3(B)は同様に間隙部が広くなった状態説明図であり、図4(A)は実施例1の要部拡大断面図を示している。
【0042】
図1乃至図4(A)において、1は免震建造物(以下、建物1と称する)、2は非免震建造物(以下、建物2と称する)、Cは建物1と建物2との躯体3、4間に設けられた間隙部であり、躯体3、4間の上面には凹設された凹部形状面5と凹部形状面6が設けられており、該凹部形状面5と凹部形状面6には夫々金属製のベースプレート7、8が敷設されており、エキスパンションジョイント床部材9、9a、9b、9c・・・は前記凹部形状面5と凹部形状面6間に夫々ベースプレート7、8を介して架設され、前記間隙部Cを塞ぐように載置され免震エキスパンションジョイント10を構成している。
【0043】
尚、図1において11a、11b、11cは夫々のエキスパンションジョイント床部材9、9a、9b、9c・・・に設けられた免震エキスパンションジョイント床部材の定位置維持機構部であり、12a、12bは前記エキスパンションジョイント床部材の先端部に回動自在に取付けられた保護カバー材、13a、13bは床面を示している。
【0044】
次に、図2において本発明の床用エキスパンションジョイントを説明する。図2において、前記エキスパンションジョイント床部材9の構成は、スチールやステンレスからなる金属製の床目地枠材14、側面枠材15を外周部に有する床箱16を形成しており、該床箱16の底部には補強材17が装着されており、該補強材17の表面にコンクリートモルタルを充填して石材やタイル等の化粧材18を貼着してエキスパンションジョイント床部材9を構成している。尚、図2において19は前記エキスパンションジョイント床部材9の底辺部を示している。
【0045】
また、図2において、建物1と建物2との躯体3、4間の上面には一対の凹部形状面5、6を構成し、該一対の凹部形状面5、6には夫々金属製のベースプレート7、8を敷設し、該金属製のベースプレート7、8上には夫々前記凹部形状面5、6の立上がり部分において立上がり斜部20、21を有するエキスパンションジョイント床摺動部22、23を構成し、該一対の凹部形状面5、6に敷設された金属製ベースプレート7、8上には前記間隙部Cを塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材9を架設している。
【0046】
そして、前記エキスパンションジョイント床部材9の両側先端部には前記ベースプレート7、8上の凹部形状面5、6が立上がり斜部20、21に対向した逆傾斜面24、25を設け、該エキスパンションジョイント床部材9の両側先端部に設けた逆傾斜面24、25に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26、27を夫々任意間隔で突出して設け、該滑性材26、27の表面が前記ベースプレート7、8上の立上がり斜部20、21に対向して設けられている。
【0047】
斯くして、本発明は、地震により建物1と建物2間の変形が大きく例えば間隙部Cが狭まった場合には図3(A)に示す如くエキスパンションジョイント床部材9の両側先端部が床面13a、13b上に突出して乗り上げる動作をするものであり、前記エキスパンションジョイント床部材9の両側端部に設けた逆傾斜面24が金属製のベースプレートの立上がり斜部20、21を滑動可能にしている免震エキスパンションジョイント床部材9の滑動装置である。尚、図3(B)は、図3(A)とは反対に地震により建物1と建物2間の変形が大きく間隙部Cが広がった場合を示しており、大きな地震の場合には、建物1と建物2間の動きは静止状態を示す図2の状態より図3(A)と図3(B)の状態を繰り返して図2の静止状態に戻るか、図2の静止状態に近い状態に戻る動きをするので、地震可動時にエキスパンションジョイント床部材9の金属摩擦音が軽減できる他、本発明の目的である従来装置に比較して安価な構成部材を採用して製造コストを大幅に削減することが可能である。
【0048】
また、図4(A)(B)(C)は本発明の上記実施例1において、エキスパンションジョイント床部材9の各種滑動機構の具体例を片側のみ拡大して表示し説明している。図4(A)において、前記エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26は、エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に固着された滑性材装着管28に嵌着されている構成の免震エキスパンションジョイント床部材9の滑動装置である。尚、前記滑性材装着管28は丸パイプ形状または角パイプ形状でもよく、該滑性材装着管28に嵌着される滑性材26は容易にその形状に合わせることが可能である。
【0049】
そして、図4(B)において、前記エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26は、エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に装着され、また、前記エキスパンションジョイント床部材9の凹部形状面6に敷設された金属製ベースプレート8上には非金属製の摩擦係数の少ない滑性プレート29を介してエキスパンションジョイント床部材9が架設されている構成の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置である。図4(B)の実施例では、地震可動時における金属摩擦音が軽減できるほか、地震可動時おいて凹部形状面6に敷設されたベースプレート8とエキスパンションジョイント床部材9の間で金属摩擦による破損や傷の発生が防止できる。
【0050】
更に、図4(C)において、前記エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性板30はエキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24にビス31等の固着手段により突出して固着されている構成の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置である。
【0051】
更にまた、実施例1の他の例を図2により説明すると、前記エキスパンションジョイント床部材9の両側、または片側に設けた逆傾斜面24、25に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26、27は任意間隔で突出して設け、該滑性材26、27の表面が夫々前記ベースプレート7、8上の立上がり斜部20、21に対向して設けられており、また、前記エキスパンションジョイント床部9の底辺部19には、図2想像線により示す如く非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26a、27aを凹部形状面に対して任意間隔で突出して設けており地震による建物と建物間の変形が大きくエキスパンションジョイント床部材9の両側及び片側先端部が床面上に突出して乗り上げる際に前記エキスパンションジョイント床部材9の底辺部19が凹部形状面5、6を滑動可能であり、前記両側または片側先端部に設けた逆傾斜面24、25が金属製のベースプレート7、8の立上がり斜部を滑動可能にした免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供することも可能である。
【0052】
斯くして、上記構成により本発明は、従来装置に比較して安価な構成部材を採用して製造コストを大幅に削減することが可能である。
【0053】
また本発明は、従来装置に比較して免震エキスパンションジョイント床を滑動させる機構が単純化されて破損しにくくなり、経年にも耐える免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供することができる。
【0054】
更に、本発明は地震による揺れが終息した場合のメンテナンスにおいて、滑性材部品の点検交換が容易であり、メンテナンス費用を大幅に削減することが可能である。
【実施例2】
【0055】
本発明の実施例2を図5乃至図7(A)(B)に基づいて説明する。図5は、本発明を実施する場所を説明する平面図であり、図6は、図5の側断面図を示している。また、図7(A)(B)は実施例2の動作を説明する断面図で、図7(A)は、実施例2の動作説明断面図で間隙部が狭くなった状態を示しており、図7(B)は同様に間隙部が広くなった状態説明図である。
【0056】
図5乃至図7(A)において、1は免震建造物(以下、建物1と称する)、2は非免震建造物(以下、建物2と称する)、Cは建物1と建物2との躯体3、4間に設けられた間隙部であり、躯体3、4間の上面には凹設された凹部形状面5と凹部形状面6が設けられており、該凹部形状面5と凹部形状面6には夫々金属製のベースプレート32、33が敷設されており、エキスパンションジョイント床部材9、9a、9b、9c・・・は前記凹部形状面5と凹部形状面6間に夫々ベースプレート32、33を介して架設され、前記間隙部Cを塞ぐように載置され免震エキスパンションジョイント10を構成している。
【0057】
尚、図5において11a、11b、11c・・は夫々のエキスパンションジョイント床部材9、9a、9b、9c・・・に設けられた免震エキスパンションジョイント床部材9の定位置維持機構部であり、12aは前記エキスパンションジョイント床部材の先端部に回動自在に取付けられた保護カバー材、13a、13bは床面を示している。
【0058】
次に、図6において本発明の床用エキスパンションジョイント10を説明する。図6において、前記エキスパンションジョイント床部材9の構成は、スチールやステンレスからなる金属製の床目地枠材14、側面枠材15を外周部に有する床箱16を形成しており、該床箱16の底部には補強材17が装着されており、該補強材17の表面にコンクリートモルタルを充填して石材やタイル等の化粧材18を貼着してエキスパンションジョイント床部材9を構成している。
【0059】
また、前記建物1と建物2との躯体3、4間の上面には夫々形状の異なる凹部形状面5と凹部形状面6を構成し、該片側の凹部形状面5にはL字型金属製ベースプレート32を敷設し他方の金属製ベースプレート33には前記凹部形状面6の立上がり部分において立上がり斜部20を有するエキスパンションジョイント床摺動部22を構成し、前記形状の異なる凹部形状面5、6間に敷設された金属製ベースプレート32、33上には前記間隙部Cを塞ぐためのエキスパンションジョイント床部材9を架設している。
【0060】
そして、架設されたエキスパンションジョイント床部材9の片側はL字形金属製ベースプレート32側で複数個のウイング用ボルト34a、34b、34c・・・やウイング用丁番で回動可能に固定されており、また、架設されたエキスパンションジョイント床部材9の他方には前記凹部形状面の立上がり斜部20に対向した逆傾斜面24を設け、該エキスパンションジョイント床部材9の片側に設けた逆傾斜面24に非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26を任意間隔で突出して設け、該滑性材26の表面が前記ベースプレート33上の立上がり斜部20に対向して設けられた構成を有している。
【0061】
従って、実施例2は、地震により建物1と建物2間の変形が大きく例えば間隙部Cが狭まった場合には、図7(A)に示す如くエキスパンションジョイント床部材9の両側先端部が床面13a上に突出して乗り上げる動作をするものであり、前記エキスパンションジョイント床部材9の片側先端部に設けた逆傾斜面24が金属製のベースプレート33の立上がり斜部20を滑動可能にしている免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置である。尚、図7(B)は、図7(A)とは反対に地震により建物1と建物2間の変形が大きく間隙部Cが広がった場合を示しており、大きな地震の場合には、建物1と建物2間の動きは静止状態を示す図6の状態より図7(A)と図7(B)の状態を繰り返して図6の静止状態に戻るか、図6の静止状態に近い状態に戻る動きをするので、地震可動時にエキスパンションジョイント床部材9の金属摩擦音が軽減できる他、本発明の目的である従来装置に比較して安価な構成部材を採用して製造コストを大幅に削減することが可能である。
【0062】
また、図4(A)(B)(C)は本発明の上記実施例2において、エキスパンションジョイント床部材9の各種滑動機構の具体例を拡大して表示し説明している。図4(A)において、前記エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26は、エキスパンションジョイント床部材9の逆斜面24に固着された滑性材装着管28に嵌着されている構成の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置である。尚、前記滑性材装着管28は丸パイプ形状または角パイプ形状でもよく、該滑性材装着管28に嵌着される滑性材26は容易にその形状に合わせることが可能である。
【0063】
そして、図4(B)において、前記エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材26は、エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に装着され、また、前記エキスパンションジョイント床部材9の凹部形状面6に敷設された金属製ベースプレート8上には非金属製の摩擦係数の少ない滑性プレート29を介してエキスパンションジョイント床部材9が架設されている構成の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置である。図4(B)の実施例では、地震可動時における金属摩擦音が軽減できるほか、地震可動時おいて凹部形状面6に敷設されたベースプレート8とエキスパンションジョイント床部材9の間で金属摩擦による破損や傷の発生が防止できる。
【0064】
更に、図4(C)において、前記エキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24に設けられる非金属製の摩擦係数の少ない滑性材30はエキスパンションジョイント床部材9の逆傾斜面24にビス31等の固着手段により突出して固着されている構成の免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置である。
【0065】
斯くして、上記構成により本発明は、従来装置に比較して安価な構成部材を採用して製造コストを大幅に削減することが可能である。
【0066】
また本発明は、従来装置に比較して免震エキスパンションジョイント床を滑動させる機構が単純化されて破損しにくくなり、経年にも耐える免震エキスパンションジョイント床部材の滑動装置を提供することができる。
【0067】
更に、本発明は地震による揺れが終息した場合のメンテナンスにおいて、滑性材部品の点検交換が容易であり、メンテナンス費用を大幅に削減することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 建物(免震建造物側)
2 建物(非免震建造物側)
3 躯体
4 躯体
5 凹部形状面
6 凹部形状面
7 ベースプレート
8 ベースプレート
9、9a、9b、9c・・・ エキスパンションジョイント床部材
10 免震エキスパンションジョイント
11a、11b、11c・・・ 定位置維持機構部
12a、12b 保護カバー材
13a、13b 床面
14 床目地枠材
15 側面枠材
16 床箱
17 補強材
18 化粧材
19 エキスパンションジョイント床の底辺部
20 立上がり斜部
21 立上がり斜部
22 エキスパンションジョイント床摺動部
23 エキスパンションジョイント床摺動部
24 逆傾斜面
25 逆傾斜面
26、26a 滑性材
27、27a 滑性材
28 滑性材装着管
29 滑性プレート
30 滑性板
31 ビス
32 ベースプレート
33 ベースプレート
34a、34b、34c、・・・ウイング用ボルト
C 間隙部(クリアランス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7