(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂成分が、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、酢酸ビニル系樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の発泡成形品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の発泡成形品は、樹脂成分を含む形成材料を含む発泡体を有し、前記発泡体のアスカーC硬度が、10以上であり、前記発泡体の、ひずみ0%における弾性係数(E0)に対するひずみ40%における弾性係数(E40)の比E(40/E0)が、0.5以上である。
本発明によれば、使用感に優れたシューズを提供できる。
【0017】
以下、本発明の発泡成形品、発泡ソール及びシューズについて、具体的に説明する。
なお、本明細書において、「XXX〜YYY」という表記は、「XXX以上YYY以下」を意味する。
また、本明細書において、ひずみ0%における弾性係数を、単に「E0」と、ひずみ40%における弾性係数を、単に「E40」と、ひずみ0%における弾性係数に対するひずみ40%における弾性係数の比を、単に「E40/E0」と、それぞれ略記する場合ある。
【0018】
[本発明の発泡成形品の用途]
本発明の発泡成形品は、任意の用途に使用できる。
本発明の発泡成形品の用途としては、例えば、ソールなどのシューズの構成部材;テニスラケットなどの打撃具のグリップ、サポーター、プロテクターなどの運動用具の構成部材;などが挙げられる。
好ましくは、本発明の発泡成形品は、シューズの構成部材として使用される。シューズの構成部材としては、例えば、アウトソール、ミッドソール及びインソールなどのソール;アッパーなどのシューズ本体;シャンクなどの補強部などが挙げられる。
また、本発明の発泡成形品は、シューズの構成部材の一部分であってもよい。この場合、履き心地をコントロールできることから、前記発泡成形品を、大きな荷重が加わるシューズ部分に使用することが好ましい。例えば、前記発泡成形品は、ソールの前足部(母趾球直下部など)やソールの踵部などに好適に使用される。また、前記発泡成形品は、他の材料と組み合わせて使用することもできる。例えば、前記発泡成形品は、他の材料との積層構造(その構造中に発泡成形品が1層以上含まれる)として好適に使用される。
【0019】
好ましくは、本発明の発泡成形品は、発泡ソールとして使用される。
本発明の発泡ソールは、例えば、シューズのアウターソールとして使用され、シューズ本体の下面に設けられる。また、本発明の発泡ソールは、シューズのミッドソールとして使用され、例えば、シューズ本体とアウターソールの間に配置される。
本発明の発泡ソールは、シューズ本体の下面の全体的に設けられる。また、前記発泡ソールを、シューズ本体の下面の一部分に設けてもよい。
また、本発明の発泡ソールは、上述したようなアウターソールやミッドソールとして使用される場合に限られず、例えば、シューズのシャンクのような補強部として用いることも可能である。前記シャンクは、土踏まず部分に配置される底部材である。
【0020】
前記発泡ソールは、任意の形状に形成される。例えば、前記発泡ソールは、ほぼ板状、ほぼ凸状(例えば、円錐台状等)、凹凸形状が形成された板状などに形成される。上述したミッドソール、アウターソール又はシャンクなどの用途に応じて、発泡成形品を所定形状に形成することにより、本発明の発泡ソールが得られる。
【0021】
前記発泡ソールは、例えば、接着剤などの取り付け手段を用いて、シューズ本体に固定的に取り付けられる。
接着剤としては、特に限定されず、従来公知の溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、レーザー接着剤、感熱接着剤などが挙げられる。前記溶剤型接着剤は、有機溶剤中にバインダー樹脂を溶解又は分散させた接着剤であり、前記エマルジョン型接着剤は、水中にバインダー樹脂を分散させた接着剤である。レーザー接着剤は、レーザー光の照射によって接着性を発現する接着剤である。感熱接着剤は、加熱することによって接着性を発現する接着剤である。
【0022】
前記発泡ソールは、取り付け手段を用いてシューズ本体に取り付ける場合に限られない。例えば、発泡ソールの一部をレーザー溶融させて接着力を発揮させ、その発泡ソール自体の接着力によって、発泡ソールがシューズ本体に取り付けられていてもよい。
また、前記発泡ソールは、固定的に取り付けられる場合に限られない。例えば、発泡ソールを所定形状に形成し、これをシューズ本体に嵌め込むことによって、発泡ソールがシューズ本体に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0023】
[本発明のシューズの構成及び用途]
図1及び
図2は、本発明のシューズの第1の実施形態を示す。
このシューズ1aは、シューズ本体2aと、シューズ本体2aの下面に設けられたミッドソール3aと、ミッドソール3aの下面に配置されたアウターソール5aと、を備えている。ミッドソール3aは、シューズ本体2aの下面形状とほぼ同じ形状に形成され、アウターソール5aは、ミッドソール3aの下面形状とほぼ同じ形状に形成されている。アウターソール5aの下面には、
図2に示すように、所望の凹凸が形成されている。もっとも、アウターソール5aの下面が平坦状に形成されていてもよい(図示せず)。
【0024】
ミッドソール3aの上面は、接着剤などを用いてシューズ本体2aの下面に接着され、アウターソール5aの上面は、接着剤などを用いてミッドソール3aの下面に接着されている(接着剤は、図示していない)。このシューズ1aを使用した際には、アウトソール5aの下面が地面に接する。
【0025】
前記シューズ1aのアウターソール5aとして、本発明の発泡ソールが用いられる。或いは、前記シューズ1aのミッドソール3aとして、本発明の発泡ソールが用いられる。或いは、前記シューズ1aのミッドソール3a及びアウターソール5aとして、本発明の発泡ソールがそれぞれ用いられる。
【0026】
図3は、本発明のシューズの第2の実施形態を示す。
このシューズ1bは、シューズ本体2bと、シューズ本体2bの下面に設けられたミッドソール3bと、ミッドソール3bの下面前方に配置された第1アウターソール51bと、ミッドソール3bの下面後方に配置された第2アウターソール52bと、を備えている。ミッドソール3bは、シューズ本体2bの下面形状とほぼ同じ形状に形成され、第1アウターソール51b及び第2アウターソール52bは、それぞれミッドソール3bの下面形状よりも小さな形状に形成されている。
【0027】
ミッドソール3bの上面は、接着剤などを用いてシューズ本体2bの下面に接着され、第1及び第2アウターソール51b,52bの上面は、接着剤などを用いてミッドソール3bの下面にそれぞれ接着されている(接着剤は、図示していない)。このシューズ1bを使用した際には、第1及び第2アウトソール51b,52bの各下面が地面に接し、ミッドソール3bの下面の一部分が地面に接し得る。
【0028】
前記シューズ1bの第1アウターソール51b及び/又は第2アウターソール52bとして、本発明の発泡ソールが用いられる。或いは、前記シューズ1bのミッドソール3bとして、本発明の発泡ソールが用いられる。或いは、前記シューズ1bのミッドソール3b並びに第1及び第2アウターソール51b,52bとして、本発明の発泡ソールがそれぞれ用いられる。
【0029】
前記ミッドソール3a及び3bの各厚みは特に限定されない。適切なクッション性をシューズに付与するために、ミッドソール3a及び3bの各厚みは、例えば、2mm以上であり、好ましくは2mm〜10mmである。
上記アウトソール5a、第1アウターソール51b及び第2アウターソール52bの各厚みは、特に限定されない。適切なクッション性をシューズに付与するために、アウトソール5a、第1アウターソール51b及び第2アウターソール52bの各厚みは、例えば、2mm以上であり、好ましくは2mm〜20mmである。
なお、本発明のシューズは、図示したように、シューズ本体が足の甲のほぼ全体を保護する構造に限られず、シューズ本体が足の甲の一部を保護するような構造(例えば、サンダルなど)でもよい。
【0030】
本発明のシューズの用途は、特に限定されない。本発明のシューズは、例えば、サッカーシューズ、ラグビーシューズなどの各種球技用シューズ;ジョギングシューズ、マラソンシューズなどのランニング用シューズ;陸上競技用シューズ;一般運動用シューズ;ウォーキング用シューズ;ビーチサンダルなどに用いることができる。
本発明によれば、比較的比重の小さい発泡ソール(つまり、軽量な発泡ソール)を提供できる。かかる発泡ソールを備える本発明のシューズは、球技用シューズ、ランニング用シューズ、陸上競技用シューズ又はウォーキング用シューズとして好適である。
【0031】
[発泡成形品(発泡ソール)の特徴]
本発明の発泡成形品は、樹脂成分を含む形成材料を発泡することによって得られた発泡体を、所定形状に形成することによって得られる。
前記発泡体は、アスカーC硬度が10以上で、且つ、ひずみ0%における弾性係数(E0)に対するひずみ40%における弾性係数(E40)の比(E40/E0)が、0.5以上である。
好ましくは、前記発泡体は、アスカーC硬度が60以下である。さらに、前記発泡体は、比重が0.7以下である。
また、前記樹脂成分を含む形成材料の、周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率は、好ましくは15MPa以下である。
【0032】
前記各弾性係数(E0)及び(E40)は、発泡体の応力−ひずみ曲線から算出できる。発泡体の応力−ひずみ曲線は、測定対象の発泡体を直径10mm×高さ10mmの円柱形状に形成して得られたサンプル片を、ひずみ速度0.01mm/秒にて圧縮することによって得ることができる。
前記アスカーC硬度は、JIS K 7312に準拠して、23℃下で測定できる。
前記比重は、JIS K 7311に準拠して、23℃下で測定できる。
前記周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率は、JIS K 7244−4に準拠して測定できる。
具体的な測定方法は、下記実施例を参照されたい。
【0033】
前記形成材料の、周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率は、好ましくは13MPa以下であり、より好ましくは10MPa以下である。このような貯蔵弾性率を有する形成材料を発泡させることにより、柔軟性に優れた発泡成形品を得ることができる。
前記形成材料の貯蔵弾性率の下限値は、理論上、零である。もっとも、現実的には、その貯蔵弾性率は0を超えている。実際に市場で入手できる形成材料は、その貯蔵弾性率が、例えば0.01MPa以上のものである。
【0034】
本発明の発泡体は、0.5以上の弾性係数の比(E40/E0)を有し、好ましくは、0.5〜3.5の弾性係数の比(E40/E0)を有し、より好ましくは、0.5〜3.0の前記比を有し、特に好ましくは、0.5〜2.7の前記比を有する。
ひずみ0%は、圧縮変形の初期ひずみ量に相当する。ひずみ40%は、実際の使用時に想定される、圧縮変形のひずみ量に相当する。弾性係数の比(E40/E0)は、初期時の弾性係数と、実際の使用時の弾性係数との変化を指標している。
【0035】
前記発泡体は、無荷重時に、10以上のアスカーC硬度を有し、好ましくは、10〜60のアスカーC硬度を有し、より好ましくは、15〜60のアスカーC硬度を有し、特に好ましくは、20〜50のアスカーC硬度を有する。
上記発泡体は、アスカーC硬度が10以上なので、適度な柔らかさを有する(柔らか過ぎることがない)。特に、アスカーC硬度が10〜60の発泡体は、シューズの発泡ソールとして適切な柔らかさを有する。
アスカーC硬度が10以上で且つ前記弾性係数の比(E40/E0)が0.5以上の発泡体は、適度な柔らかさを有し、その使用時における柔らかさの変化が小さい。かかる発泡体を発泡ソールとして用いることにより、使用者に良好な使用感を与えることができるシューズを提供できる。
【0036】
本発明の特徴について、より具体的に説明すると、次の通りである。
理論上、あらゆるひずみ量に対応した各弾性係数が一定である発泡体は、硬度変化(柔らかさの変化)がないと言える。
しかしながら、一般的な発泡体は、
図4に示すような、応力−ひずみ曲線を示し、ひずみ量に応じて弾性係数が様々に変化する。
理論的には可能としても、現実的に、あらゆるひずみ量における各弾性係数が一定である発泡体を製造することはできない。
【0037】
このような考えの下、本発明者らは、無荷重時のひずみ量に対応する弾性係数(E0)と、使用時に想定される大きな荷重がかかった時のひずみ量に対応する弾性係数(E40)とに、着目した。
【0038】
一方、前記弾性係数の比だけでは、発泡体の硬度変化が小さくならないことも重要である。これは、発泡体の内部に無数の気泡(セル)が存在し、発泡体に荷重が加わったときに、そのセルが潰れるからである。セルが潰れた発泡体は、弾力性を失い、硬度が上がってしまう。
このような事項から、本発明者らは、発泡体のE40/E0を0.5以上とし、無荷重時の発泡体のアスカーC硬度を10以上とすることにより、使用時において、硬度変化が大きくならないことを見出した。
さらに、無荷重時のアスカーC硬度が60以下の発泡体は、適度な柔らかさを有し且つ硬度変化の小さい発泡体を構成できる。かかる発泡体を有する発泡成形品は、シューズのソールとして好適に利用できる。
【0039】
[発泡成形品の形成材料]
本発明の発泡成形品(発泡ソール)は、前記樹脂成分を含む形成材料を発泡成形することよって得られる。
本発明の発泡成形品の形成材料は、前記樹脂成分を含み且つ発泡性を有するものであれば特に限定されない。好ましくは、前記形成材料の貯蔵弾性率は15MPa以下である。前記形成材料の貯蔵弾性率が15MPa以下である場合には、発泡体の弾性係数の比(E40/E0)を0.5以上に制御しやすくなる。
【0040】
前記形成材料は、樹脂成分と、必要に応じて、任意の適切な他の成分と、を含む。
前記樹脂成分としては、例えば、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、ゴムなどが挙げられる。
【0041】
前記熱可塑性エラストマーの種類としては、例えば、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)などのスチレン系エラストマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体系エラストマー;オレフィン系エラストマー;スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、ウレタン系エラストマー;エステル系エラストマー;フッ素系エラストマー;シリコーン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;などが挙げられる。任意の部位が水素化されている熱可塑性エラストマーを用いてもよい。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。
【0042】
前記熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの酢酸ビニル系樹脂;ポリスチレン、スチレンブタジエン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂;エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのαオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのエステル系樹脂;6−ナイロンなどのアミド系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;などが挙げられる。任意の部位が水素化されている熱可塑性樹脂を用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を併用できる。
【0043】
前記ゴムの種類としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレン(CR)などの合成ゴム;天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などの共重合体ゴム;などが挙げられる。これらのゴムは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。
【0044】
前記樹脂成分の配合量は、形成材料全量を100質量部とした場合、例えば、30質量部〜99質量部であり、好ましくは、50質量部〜99質量部である。樹脂成分の量が余りに少ないと、実使用に耐えうる強度を有する発泡成形品が得られないおそれがある。
【0045】
必要に応じて、前記樹脂成分に、軟化剤を添加することができる。前記樹脂成分だけで、貯蔵弾性率が15MPa以下の形成材料を得ることができない場合、その樹脂成分に軟化剤を添加することにより、前記貯蔵弾性率の形成材料を容易に調製できる。
前記軟化剤は、特に限定されず、従来公知の樹脂用又はゴム用の軟化剤を用いることができる。軟化剤としては、例えば、ナフテン系のプロセス油、パラフィン系のプロセス油などの鉱物油;ひまし油、綿実油、あまみ油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、パインオイル、オリーブ油などの植物油;などが挙げられる。これらの軟化剤は、1種単独で、または2種以上を併用できる。
これらの鉱物油及び植物油は、その平均分子量が500〜5,000程度であることが好ましい。
【0046】
前記軟化剤が添加される場合、その軟化剤の配合量は、特に限定されないが、形成材料全量を100質量部とした場合、例えば、0を超え70質量部未満であり、好ましくは、0質量部を超え50質量部未満である。軟化剤の量が余りに多いと、軟化剤がブリードするおそれがある上、相対的に樹脂成分の量が減るので、実使用に耐えうる強度を有する発泡成形品が得られないおそれがある。
【0047】
前記形成材料の他の成分として、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、各種の添加剤などを添加してもよい。架橋剤によって樹脂成分を架橋することにより、適度な柔軟性を有しつつ機械的強度に優れた発泡成形品を得ることができる。
【0048】
本発明の発泡成形品を得る方法としては、特に限定されず、公知の方法が利用できる。中でも、高い機械強度を有する発泡成形品を形成できることから、押出発泡法、プレス発泡法又はインジェクション発泡法を用いることが好ましい。これらの方法を採用する場合、必要に応じて、発泡後、成形品が所定の比重になるように、熱プレス等で圧縮してもよい。
【0049】
発泡には、化学的方法や物理的方法等がある。前記各々の方法にて製造する場合、無機系発泡剤又は有機系発泡剤などの化学的発泡剤、物理的発泡剤などの発泡剤を形成材料に添加などすることにより、前記材料内部に気泡が分布した成形品を得ることができる。
【0050】
前記無機系発泡剤としては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム、金属粉などが挙げられる。
前記有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどが挙げられる。
前記物理的発泡剤としては、ペンタン、ブタン、ヘキサンなどの炭化水素;塩化メチル、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;窒素、空気などのガス;トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素化炭化水素;などが挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
また、物理的方法によって発泡成形品を製造する場合には、成形品の形成材料に適切な中空フィラーや熱膨張型マイクロバルーンなどを含めてもよいし、或いは、その形成材料をガス混練してもよい。
【0052】
発泡を促進させるため、発泡剤と共に発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤としては、尿素、尿素誘導体などが挙げられる。
前記発泡剤の配合量は、特に限定されず、適宜設計される。前記発泡剤の配合量は、形成材料全量を100質量部とした場合、例えば、0.1質量部〜10質量部である。
【0053】
前記架橋剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。架橋剤としては、例えば、有機過酸化物;硫黄;ジスルフィド類などの加熱により硫黄を生じる化合物;酸化マグネシウムなどの金属酸化物;などが挙げられる。好ましくは、有機過酸化物が用いられる。
有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1−ジーt−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジ−tーブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステルなどのパーオキシケタール類;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;などが挙げられる。
さらに、架橋を促進するため、架橋剤と共に公知の架橋促進剤を添加してもよい。
架橋剤の配合量は、特に限定されず、適宜設計される。前記架橋剤の配合量は、形成材料全量を100質量部とした場合、例えば、0.1質量部〜5質量部である。
【0054】
前記添加剤としては、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、耐電防止剤、増粘剤、充填剤、ステアリン酸などが挙げられる。
【0055】
[発泡成形品(発泡ソール)の製造]
前記樹脂成分を含む形成材料を、発泡成形する。
具体的には、前記樹脂成分、及び、必要に応じて、前記軟化剤、発泡剤、架橋剤、及び添加剤を所定量配合し、これを100℃〜150℃に加熱しながら、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などを用いて混練する。
十分に混練した形成材料を、プレス金型内に充填し、例えば、150℃〜170℃に加熱しながら所定時間加圧することにより、樹脂成分を加硫させ且つ発泡剤を発泡させる。
【0056】
発泡倍率は、特に限定されないが、例えば、1.2倍〜10倍であり、好ましくは、1.5倍〜7倍である。
前記発泡倍率は、発泡倍率=形成材料の発泡前の密度÷形成材料の発泡後の密度、により求められる。
前記形成材料を発泡させることにより、発泡体が得られる。得られた発泡体のアスカーC硬度は、60以下が好ましく、さらに、55以下がより好ましい。このような硬度を有する発泡成形品は、柔らかく使用感に優れている。
軽量化の観点から、前記発泡体の比重は、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.6以下であり、さらに好ましくは0.55以下である。また、発泡体の比重の下限は、出来るだけ小さいことが好ましい、発泡体の比重は、理論的には0を超える。一般的には、発泡体の比重は、0.1以上であり、好ましくは0.2以上である。
【0057】
前記のように発泡させた発泡体をそのまま本発明の発泡成形品としてもよいし、或いは、前記発泡体を所望の形状に成形し、それを本発明の発泡成形品としてもよい。
本発明の発泡成形品の形状を、アウターソールなどの形状に適合するように2次加工することにより、本発明の発泡ソールを得ることができる。
また、前記発泡成形品の形状が発泡ソールの形状に合致している場合には(例えば、前記金型の形状がアウターソールなどの形状である場合)、前記発泡成形品をそのまま本発明の発泡ソールとして使用できる。
【0058】
前記発泡ソールは、接着剤などを用いてシューズ本体に接着される。
接着剤として溶剤型接着剤又はエマルジョン型接着剤を用いた場合には、例えば、60℃〜80℃の熱風に曝して、前記接着剤を乾燥する。接着剤としてレーザー接着剤又は感熱接着剤を用いた場合には、前記接着剤をレーザー又は加熱装置によって加熱溶融させた状態で発泡ソールをシューズ本体に接着する。
また、前記発泡ソールは、シューズ本体に接着して使用する場合に限られず、着脱可能なシューズ用の部材として使用することもできる。例えば、前記発泡ソールをシューズのインソールとして用い、この発泡シールをシューズ本体に嵌め入れてもよい。
このようにして、本発明のシューズを得ることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例、比較例及び参考例に使用した材料]
SBBS:スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「タフテック MP10」)。スチレン量30質量%、ブタジエン及びブチレン量70質量%。
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名「ウルトラセン634」)。MFR=4.3。
鉱油:パラフィンオイル(出光興産(株)製、商品名「PW90」)。
加工助剤:ステアリン酸。
発泡剤:アゾジカルボンアミド。
発泡助剤:酸化亜鉛。
架橋剤:ジクミルパーオキサイド。
【0061】
[実施例1]
表1に示す割合で、樹脂成分、鉱油、加工助剤、発泡剤、発泡助剤及び架橋剤を配合した。これらの各材料を、加圧ニーダー、ミキシングロールを用いて混練し、プレス金型内に充填し、約160℃に加熱しながら所定時間加圧することにより、縦200mm、横200mm、高さ10mmの直方体状の発泡体を作製した。
ただし、表1の各数値は、質量部表示である。
【0062】
【表1】
【0063】
[実施例2乃至12、14乃至19及び参考例13]
表1に示す割合で、各材料を配合したこと以外は、上記実施例1と同様にして、発泡体を作製した。
【0064】
[比較例1乃至比較例9]
表1に示す割合で、各材料を配合したこと以外は、上記実施例1と同様にして、発泡体を作製した。
【0065】
上記各例で用いた形成材料の貯蔵弾性率、並びに、各例で作製された発泡体のそれぞれの、比重、ひずみ0%における弾性係数(表2においてE0と表示)、ひずみ40%における弾性係数(表2においてE40と表示)、及びアスカーC硬度(表2においてH0と表示)を、下記測定方法により、測定した。その結果を表2に示す。表2のE40/E0は、測定されたE40及びE0を、割り算した値である。
【0066】
[比重の測定方法]
発泡体の比重は、JIS K 7311に準拠し、電子比重計(アルファーミラージュ(株)製、製品名「MD−300S」)を用いて、23℃下で測定した。
【0067】
[貯蔵弾性率の測定方法]
各例の発泡体の形成材料から発泡剤を除いたもの(つまり、樹脂成分、鉱油、加工助剤、発泡助剤及び架橋剤)を、表1に示す割合で配合した。これらの各材料を、加圧ニーダー、ミキシングロールを用いて混練し、150℃〜180℃に加熱しながら30分間プレス成形し、約2mm厚の樹脂シートを作製した。この樹脂シートを、下記サンプル形状に裁断した。この樹脂シートの貯蔵弾性率を、JIS K 7244−4に準拠し、下記条件で動的粘弾性を測定することにより算出した。かかる樹脂シートは、発泡体の気泡壁と同等の材料物性を有すると考えられるので、その樹脂シートの貯蔵弾性率を発泡体の形成材料の貯蔵弾性率として採用した。
測定機器:(株)ユービーエム製、動的粘弾性測定装置 Rheogel−E4000。
サンプル形状:長さ33±3mm、幅5±0.3mm、厚さ2±0.3mmの短冊状。
測定モード:正弦波歪みの引張モード。
チャック間距離:20±0.2mm。
温度:23℃。
周波数:10Hz。
荷重:自動静荷重。
動歪み:3〜5μm。
【0068】
[E0及びE40の測定方法]
発泡体のひずみ0%における弾性係数(E0)及びひずみ40%における弾性係数(E40)は、発泡体の応力−ひずみ曲線を得た後、その曲線のひずみ0%に対応する点における接線の傾き及びその曲線のひずみ40%に対応する点における接線の傾きから求めた。E40/E0は、E40÷E0から算出し、小数点4桁目を四捨五入した。
前記発泡体の応力−ひずみ曲線は、発泡体を直径10mm×高さ10mmの円柱形状に裁断し、そのサンプル片を、オートグラフ精密万能試験機((株)島津製作所製、製品名「AG−50kNIS MS型」)を用いて、23℃下で、ひずみ速度0.01mm/秒にて圧縮することによって得た。
【0069】
[アスカーC硬度の測定方法]
発泡体のアスカーC硬度は、JIS K 7312に準拠し、C型硬度計(高分子計器(株)、製品名「アスカーゴム硬度計C型」)を用いて、23℃下で測定した。なお、測定サンプルは、(発泡体を裁断せず)直方体状の発泡体をそのまま用いた。このアスカーC硬度の測定は、無荷重時の発泡体の硬度の測定であり、その測定値は、表2のH0である。
【0070】
【表2】
【0071】
[硬さ試験]
一般に、シューズの履き心地は、着用時に使用者が足底に感じる硬さで指標できる。
シューズの使用者として、一般成人男性(体重60kg)と児童(体重20kg)を想定し、それらの使用者の体重がシューズのソールに加わった場合を考える。前記一般成人男性が静止して立った状態のときに、前記ソールに加わる最大圧縮応力は、体重を踵部の面積で除した値から約0.1MPa(約1kgf/cm
2)である。一方、前記児童は、体重が軽いことに加えて、足底(土踏まず)が未発達であり、足底の接地面積が大きい。これらの理由から、前記児童が静止して立った状態のときには、シューズのソールに加わる最大圧縮応力は、前記一般成人男性に比べて極めて小さい(成人男性の1/10程度)。
【0072】
このようなことから、成人男性がシューズを着用したときには、そのソールに0.1MPaの荷重が加わり、児童がシューズを着用したときには、そのソールに実質的に荷重が加わらないと仮定した。そして、異なる使用者(成人男性と児童)が感じるシューズの履き心地を検証するため、下記硬さ試験を行った。
【0073】
前記成人男性がシューズを着用した場合を想定し、上記各例で作製された発泡体(シューズのソールと仮定)に、0.1MPaの荷重をかけて硬さを測定した。
具体的には、発泡体を、C型硬度計の加圧面と同面積(高さ10mm)に裁断して、サンプル片を得た。このサンプル片の上からC型硬度計(高分子計器(株)、製品名「アスカーゴム硬度計C型」)の加圧面を載せ、前記サンプル片の全体に0.1MPa(約1kgf/cm
2)の荷重を加えてこれを圧縮した。その圧縮時のサンプル片のアスカーC硬度を、前記C型硬度計を用いて、23℃下で測定した。
その結果を表2に示す。なお、表2のH1は、前記圧縮時のアスカーC硬度を示す。
【0074】
上述のとおり、前記児童がシューズを着用した場合には、ソールに実質的に荷重が加わらないと仮定した。このため、児童がシューズを着用した場合に想定される発泡体の硬さは、無荷重の状態における発泡体のアスカーC硬度に相当する。この無荷重の状態における発泡体のアスカーC硬度は、表2のH0である。
【0075】
各発泡体の前記圧縮時の硬度(H1)と、非圧縮時の硬度(H0)と、の差が小さいほど、硬度変化(つまり、柔らかさの変化)が小さい。
表2に、H1−H0の値を明示している。
【0076】
[評価]
H1−H0が±20の範囲内であれば、使用感が良好と判断した。つまり、体重60kgの人が乗ったと仮定したときの硬度(H1)と、体重20kgの人が乗ったと仮定したときの硬度(H0)と、の差(H1−H0)が、±20の範囲内であれば、大きな硬度変化ではない。このような発泡体をシューズのソールに使用したときには、各使用者のそれぞれの使用感に大きな差が生じないと言える。
実施例1乃至12、14乃至19の発泡体は、H1−H0が±20の範囲内にあり、これらの発泡体は、荷重の相違によって大きな硬度変化が生じなかった。なお、例えば、体重30kgの人や40kgの人を仮定した場合でも、実施例1乃至12、14乃至19の発泡体は、同様に大きな硬度変化が生じないと推定できる。
【0077】
実施例1及び5並びに参考例13の発泡体は、荷重の相違によって大きな硬度変化が生じなかった。しかし、これらの実施例の発泡体は、無荷重時及び荷重時の何れもアスカーC硬度が60を超えている。シューズのソールとして使用する場合には、実施例2乃至4、6乃至12及び14乃至19の発泡体のように、無荷重時のアスカーC硬度が10〜60の範囲内であることが好ましい。
【0078】
他方、比較例1乃至比較例9の発泡体は、H1−H0が±20の範囲外にあり、これらの発泡体は、荷重の相違によって大きな硬度変化が生じた。
比較例1乃至3、8及び9の発泡体は、E40/E0が0.5未満であるので、大きな硬度変化が生じた。
比較例4乃至7の発泡体は、E40/E0が0.5以上であるが、H0が10未満であるので、大きな硬度変化が生じた。これは、H0(無荷重時のアスカーC硬度)が10未満の発泡体は、荷重が加わったときに発泡体内のセルが潰れることによって、硬くなってしまうことが原因と推定される。
なお、E40/E0が0.5未満で且つH0が10未満である発泡体については、データを取得していないが、このような発泡体も比較例1乃至9の発泡体と同様な結果になると推定される。
【0079】
なお、本発明者らは、各例のE0及びE40の測定と同時に、それらのひずみ20%における弾性係数(E20)、ひずみ30%における弾性係数(E30)、及びひずみ50%における弾性係数(E50)の測定値も得た。
そして、E20/E0が0.2以上、E30/E0が0.3以上及びE50/E0が0.8以上である場合に、体重60kgの人が乗ったと仮定したときの硬度(H1)と、体重20kgの人が乗ったと仮定したときの硬度(H0)と、の差(H1−H0)が、±20の範囲内であった。
このことからも、各ひずみ量における弾性係数の比とシューズの使用感には、所定の相関関係があることが判る。
それらの弾性係数の比の中で、本発明者らは、一般的な成人男性のシューズ実使用時にソールに生じるひずみ量である「ひずみ40%」を用いた弾性係数の比(E40/E0)を採用した。