【実施例】
【0032】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、添加部数は、固形分換算の値である。
【0033】
(実施例1)
バインダーとしてのポリアミドイミド樹脂をγ‐ブチロラクトンに溶解したポリアミドイミドワニス(商品名HPC5030、日立化成社製)(固形分濃度32質量%)を、ポリアミドイミド樹脂換算で50質量部と、エポキシ樹脂15質量部と、固体潤滑剤として二硫化モリブデン15質量部、ポリテトラフルオロエチレン10質量部及びグラファイト10質量部と、を配合して混合した。この混合物を固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンを用いて希釈し、フッ素系界面活性剤と沈降防止剤とを配合してポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。ここで、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比は、70:30とした。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、50:50とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0035】
(
参考例3)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、95:5とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0036】
(
参考例4)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、90:10とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、80:20とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0038】
(実施例6)
実施例1において、エポキシ樹脂を配合しない以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0039】
(比較例1)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンと、メチルイソブチルケトンと、メチルエチルケトンとの体積比は、60:20:20とした。
【0040】
(比較例2)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン、メチルイソブチルケトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとメチルイソブチルケトンとの体積比は、70:30とした。
【0041】
(比較例3)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びメチルエチルケトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとメチルエチルケトンとの体積比は、70:30とした。
【0042】
(比較例4)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びアセトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとアセトンとの体積比は、70:30とした。
【0043】
(比較例5)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びエタノールとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとエタノールとの体積比は、70:30とした。
【0044】
(比較例6)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びジアセトンアルコールとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとジアセトンアルコールとの体積比は、70:30とした。
【0045】
(比較例7)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、35:65とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0046】
(比較例8)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、30:70とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0047】
(比較例9)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、100:0とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
【0048】
(比較例10)
バインダーとしてのポリアミドイミド樹脂をN‐メチルピロリドンに溶解したポリアミドイミド樹脂ワニス(商品名HPC6000‐26、日立化成社製)(固形分濃度26質量%)を、ポリアミドイミド換算で55質量部と、エポキシ樹脂10質量部と、固体潤滑剤として二硫化モリブデン15質量部、ポリテトラフルオロエチレン10質量部及びグラファイト10質量部と、を配合して混合した。この混合物を固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてN‐メチルピロリドン、o‐キシレン、N,N‐ジメチルアセトアミド及び1,4‐ジオキサンを用いて希釈してポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。ここで、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のN‐メチルピロリドン及び希釈に使用したN‐メチルピロリドンの合計体積と、o‐キシレンの体積と、N,N‐ジメチルアセトアミドの体積と、1,4‐ジオキサンの体積との比は、20:10:20:50とした。
【0049】
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料について、次の方法で評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(塗料性)
実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料の配合及び分散工程において、固体潤滑剤の分散状態及びポリアミドイミド樹脂の溶解性を、目視にて観察し、塗料性を確認した。ポリアミドイミド樹脂の溶解性は、塗料を目視で観察し、ポリアミドイミド樹脂の凝集の有無を確認した。評価基準は次のとおりである。
○:分散工程中及び完成塗料中に凝集物がなく、ポリアミドイミド樹脂が溶解し均一である(実用レベル)。
△:途中分散工程で均一分散していないが、最終工程までには、塗料中に凝集物がなく、ポリアミドイミド樹脂が溶解し均一である(実用下限レベル)。
×:溶解性低下からポリアミドイミド樹脂が凝集によりゲル化を引き起こす(実用不適)。
【0052】
(塗装性)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料を90℃に予熱し、銅合金円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmとなるように塗装条件を固定してスプレー塗装した。この時の塗装面の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。
○:塗装面が均一で良好である(実用レベル)。
×:塗装面が不均一で、うねり及びムラがある(実用不適)。
【0053】
(乾燥性)
塗装性評価で得られた塗装面を90℃で10分間乾燥し、更に190℃で1時間焼成して塗膜を形成した。JIS K5600‐3‐3「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第3節:硬化乾燥性」に従って試験を行った。評価基準は次のとおりである。
○:表面に傷又は跡がない(実用レベル)。
×:表面に傷又は跡がある(実用不適)。
【0054】
(貯蔵安定性)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料100mlを試料ビンに密封し、雰囲気温度25℃及び雰囲気湿度50%で30日間放置した後、目視で塗料の状態を確認した。評価基準は次のとおりである。
◎:ゲル化物及び沈殿物がなく、均一な状態で、粘度も変化無し(実用レベル)。
○:沈殿物が見られるが、再度分散させると均一な状態にもどり、粘度も変化無し(実用レベル)。
×:ゲル化物及び沈殿物が見られ、再度分散させても均一な状態にならない。(実用不適)。
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
【0055】
(摺動特性‐耐摩耗性)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料を、90℃に予熱した銅合金円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmとなるようにスプレー塗装した。その後、90℃で10分間乾燥し、更に190℃で1時間焼成して塗膜を形成した。この塗膜試験片をSUJ2ボールを相手材として往復動摩耗試験を行った。摺動試験条件は、15mm/sで100サイクルとした。摺動試験後、塗膜の摩耗深さを測定した。評価基準は次のとおりである。
◎:最も摩耗している部分の摩耗深さが3μm以下である(実用レベル)。
○:最も摩耗している部分の摩耗深さが3μmを超え5μm未満である(実用レベル)。
△:最も摩耗している部分の摩耗深さが5μmを超え7μm未満である(実用下限レベル)。
×:最も摩耗している部分の摩耗深さが7μm以上である(実用不適)。
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
【0056】
(摺動特性‐摩擦係数)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料を、90℃に予熱した銅合金円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmとなるようにスプレー塗装した。その後、90℃で10分間乾燥し、更に190℃で1時間焼成して塗膜を形成した。この塗膜試験片をSUJ2ボールを相手材として往復動摩耗試験を行った。摺動試験条件は、15mm/sで100サイクルとし、各サイクル毎に摩擦係数を測定した。比較例10の平均摩擦係数(A)を算出し、実施例及びその他の比較例の塗膜の平均摩擦係数(B)の値との差(B−A)を算出した。評価基準は次のとおりである。
◎:B−Aが ±0.003以下である(実用レベル)。
○:B−Aが0.003超え0.005未満である(実用レベル)。
△:B−Aが0.005超え0.01未満である(実用下限レベル)。
×:B−Aが0.01以上である(実用不適)。
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
【0057】
(密着性)
JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に従って、1mm×1mmの碁盤目状の切込みを100個入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準についても同規格に準じて評価を行った。
0:(実用レベル)
1〜5:(実用不適)
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
【0058】
実施例1〜実施例6のポリアミドイミド系皮膜用塗料は、いずれもN‐メチルピロリドン、N‐エチルピロリドンなどの規制が懸念される物質及び規制物質を含まず、ポリアミドイミド樹脂の溶解性が良好で、塗料性に優れており、従来塗料と同様の工法で塗膜を形成することができた。さらに、得られた塗膜は、塗装性、乾燥性、貯蔵安定性、摺動特性及び密着性に優れていた。実施例1と実施例6とについて耐摩耗性を比較すると、実施例1のほうが優れており、エポキシ樹脂を配合することで、耐摩耗性を向上できることが確認できた。比較例10は、従来塗料であるが、実施例1〜実施例5のポリアミドイミド系皮膜用塗料で形成した塗膜は、比較例10の塗料で形成した塗膜と比較して同等以上の特性を示した。
【0059】
比較例1〜比較例6は、溶媒としてシクロペンタノンに替えてその他の有機溶媒とγ‐ブチロラクトンとを使用したため、ポリアミドイミド樹脂が凝集してゲル化を引き起こし、塗料性及び塗装性に劣った。また、シクロペンタノンを含有しなかったため、乾燥性に劣った。比較例7及び比較例8は、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が50体積%未満であったため、ポリアミドイミド樹脂の溶解性が劣り、塗料性に劣った。比較例9は、シクロペンタノンを含有せず、γ‐ブチロラクトンだけを使用したため、塗料性及び塗装性に劣った。