(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685502
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】コネクタ及び半導体試験装置
(51)【国際特許分類】
H01R 24/44 20110101AFI20150226BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20150226BHJP
【FI】
H01R24/44
H01R12/71
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-162278(P2011-162278)
(22)【出願日】2011年7月25日
(65)【公開番号】特開2013-26145(P2013-26145A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(73)【特許権者】
【識別番号】390015244
【氏名又は名称】日本モレックス合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】我田 浩隆
(72)【発明者】
【氏名】崎山 伸
(72)【発明者】
【氏名】濱 博之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 照仁
(72)【発明者】
【氏名】矢島 裕之
(72)【発明者】
【氏名】水村 晶範
【審査官】
楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/034620(WO,A1)
【文献】
特開2010−212022(JP,A)
【文献】
特開2009−016072(JP,A)
【文献】
実開昭57−062389(JP,U)
【文献】
特開2011−243414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00〜12/91
H01R 13/6473
H01R 24/00〜24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延伸する本体部と、前記本体部の延伸方向の各側に設けられる、相手方導体に接触するための接触片と、を有するシグナル端子と、
前記シグナル端子の本体部を囲むように配置される絶縁部材と、
前記絶縁部材を囲むように配置される筒状の筒状本体と、前記筒状本体の軸心方向の各側に設けられる、相手方導体に接触するための接触片と、を有するグランド端子であって、前記筒状本体は、半筒状の第1の半筒部及び第2の半筒部を含み、前記第1の半筒部及び前記第2の半筒部は、周方向の両端部が互いに重なるように組立てられることで全体として筒状を為すグランド端子と、
前記シグナル端子、前記絶縁部材及び前記グランド端子の組立体が挿入される挿入穴が形成された筐体と、
を備え、
前記第1の半筒部は、周方向の両端部の間隔が広がるように弾性変形した状態で前記絶縁部材と嵌め合わされ、
前記第2の半筒部は、周方向の両端部の間隔が広がるように弾性変形した状態で、前記第1の半筒部が嵌め合わされた前記絶縁部材と嵌め合わされ、
前記筐体の前記挿入穴の内側には、前記組立体の挿入が進むに従って、前記第1の半筒部及び前記第2の半筒部の周方向の中央部同士の間隔が狭まるように前記第1の半筒部及び前記第2の半筒部の少なくとも一方を案内するスロープが設けられる、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記スロープは、前記第1の半筒部に接触し、前記第1の半筒部を前記第2の半筒部に向けて案内する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記筐体の前記挿入穴の内側には、前記第2の半筒部の前記第1の半筒部に向かう移動を規制するストッパが設けられる、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2の半筒部の周方向の両端部には、前記ストッパに食い込む爪部が設けられる、
請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記接触片は、前記第1の半筒部の前記第2の半筒部と重なる部分に設けられ、径方向の外側に弾性変形可能である、
請求項1ないし4の何れかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記絶縁部材の外周面及び前記第1の半筒部の内周面の一方に設けられた凸部が他方に設けられた凹部に嵌め合わされる、
請求項1ないし5の何れかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記絶縁部材は、前記シグナル端子と一体的に成型される、
請求項1ないし6の何れかに記載のコネクタ。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかに記載のコネクタを備えるパフォーマンスボード。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れかに記載のコネクタを備えるマザーボード。
【請求項10】
請求項1ないし7の何れかに記載のコネクタを備える半導体試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及び半導体試験装置に関し、特には、シグナル端子及びグランド端子による同軸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸ケーブルを回路基板に接続するためのコネクタが知られている。この種のコネクタは、同軸ケーブルのシグナル導体に接続されるシグナル端子と、同軸ケーブルのグランド導体に接続されるグランド端子と、を有している。特許文献1には、シグナル端子がグランド端子に囲まれ、それらの間に絶縁部材が配置された同軸構造を有するコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−16072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコネクタでは、製造誤差などの要因により、シグナル端子と絶縁部材との間に形成される隙間の大きさや、グランド端子と絶縁部材との間に形成される隙間の大きさに、ばらつきが生じるおそれがある。その場合、各シグナル端子のインピーダンスにばらつきが生じるため、信号伝達特性が劣化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、信号伝達特性の向上を図ることが可能なコネクタ及び半導体試験装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のコネクタは、シグナル端子と、絶縁部材と、グランド端子と、筐体と、を備える。前記シグナル端子は、一方向に延伸する本体部と、前記本体部の延伸方向の各側に設けられる、相手方導体に接触するための接触片と、を有する。前記絶縁部材は、前記シグナル端子の本体部を囲むように配置される。前記グランド端子は、前記絶縁部材を囲むように配置される筒状の筒状本体と、前記筒状本体の軸心方向の各側に設けられる、相手方導体に接触するための接触片と、を有する。前記筒状本体は、半筒状の第1の半筒部及び第2の半筒部を含む。前記第1の半筒部及び前記第2の半筒部は、周方向の両端部が互いに重なるように組立てられることで全体として筒状を為す前記筐体には、前記シグナル端子、前記絶縁部材及び前記グランド端子の組立体が挿入される挿入穴が形成される。前記第1の半筒部は、周方向の両端部の間隔が広がるように弾性変形した状態で前記絶縁部材と嵌め合わされる。前記第2の半筒部は、周方向の両端部の間隔が広がるように弾性変形した状態で、前記第1の半筒部が嵌め合わされた前記絶縁部材と嵌め合わされる。前記筐体の前記挿入穴の内側には、前記組立体の挿入が進むに従って、前記第1の半筒部及び前記第2の半筒部の周方向の中央部同士の間隔が狭まるように前記第1の半筒部及び前記第2の半筒部の少なくとも一方を案内するスロープが設けられる。
【0007】
また、本発明のパフォーマンスボードは、上記本発明のコネクタを備える。また、本発明のマザーボードは、上記本発明のコネクタを備える。また、本発明の半導体試験装置は、上記本発明のコネクタを備える。
【0008】
本発明によると、グランド端子と絶縁部材との間に形成される隙間の大きさを低減すると共に、隙間の大きさのばらつきを抑制することが可能である。これにより、インピーダンスのばらつきを抑制し、信号伝達特性を向上させることが可能である。
【0009】
また、本発明の一態様において、前記スロープは、前記第1の半筒部に接触し、前記第1の半筒部を前記第2の半筒部に向けて案内する。これによると、第2の半筒部の周方向の両端部の間隔がさらに広がることを抑制しつつ、グランド端子と絶縁部材との間に形成される隙間の大きさを低減することが可能である。
【0010】
また、本発明の一態様において、前記筐体の前記挿入穴の内側には、前記第2の半筒部の前記第1の半筒部に向かう移動を規制するストッパが設けられる。これによると、第2の半筒部を基準に各部材の位置が決まるので、シグナル端子及びグランド端子の位置精度を向上させることが可能である。
【0011】
また、本発明の一態様において、前記第2の半筒部の周方向の両端部には、前記ストッパに食い込む爪部が設けられる。これによると、第2の半筒部が挿入穴から抜け出ることを抑制することが可能である。
【0012】
また、本発明の一態様において、前記接触片は、前記第1の半筒部の前記第2の半筒部と重なる部分に設けられ、径方向の外側に弾性変形可能である。これによると、接触片が径方向の内側に弾性復帰する力を向上させることが可能である。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記絶縁部材の外周面及び前記第1の半筒部の内周面の一方に設けられた凸部が他方に設けられた凹部に嵌め合わされる。これによると、絶縁部材及び第1の半筒部の一方が筐体の挿入穴から抜け出ることを抑制することが可能である。
【0014】
また、本発明の一態様において、前記絶縁部材は、前記シグナル端子と一体的に成型される。これによると、シグナル端子に絶縁部材を密着させて、それらの間に隙間を形成しないことが可能である。これにより、インピーダンスのばらつきを抑制し、信号伝達特性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図2A】上記コネクタに含まれる筐体の斜視図である。
【
図2B】上記コネクタに含まれる筐体の断面図である。
【
図3】上記コネクタに含まれるシグナル端子の斜視図である。
【
図4A】上記コネクタに含まれるシグナル端子及び絶縁部材の斜視図である。
【
図4B】上記コネクタに含まれるシグナル端子及び絶縁部材の平面図である。
【
図4C】上記コネクタに含まれるシグナル端子及び絶縁部材の側面図である。
【
図5A】上記コネクタに含まれる第1の半筒部の斜視図である。
【
図5B】上記コネクタに含まれる第1の半筒部の平面図である。
【
図5C】上記コネクタに含まれる第1の半筒部の側面図である。
【
図6A】上記コネクタに含まれる第2の半筒部の斜視図である。
【
図6B】上記コネクタに含まれる第2の半筒部の平面図である。
【
図6C】上記コネクタに含まれる第2の半筒部の側面図である。
【
図7A】上記コネクタに含まれる組立体の組立てを表す斜視図である。
【
図7B】上記コネクタに含まれる組立体の組立てを表す斜視図である。
【
図7C】上記コネクタに含まれる組立体の組立てを表す斜視図である。
【
図8】上記コネクタにおける組立体の挿入を表す断面図である。
【
図9】上記コネクタにおける組立体の挿入を表す正面図である。
【
図10A】本発明の第2実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図11A】上記コネクタに含まれる組立体の組立てを表す斜視図である。
【
図11B】上記コネクタに含まれる組立体の組立てを表す斜視図である。
【
図12A】上記コネクタにおける組立体の挿入を表す断面図である。
【
図12B】上記コネクタにおける組立体の挿入を表す断面図である。
【
図12C】上記コネクタにおける組立体の挿入を表す断面図である。
【
図13】本発明の半導体試験装置を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態に係るコネクタ1について説明する。
図1A及び
図1Bは、コネクタ1の斜視図及び分解斜視図である。
図2A及び
図2Bは、筐体2の斜視図及び断面図である。
図3は、シグナル端子4の斜視図である。
図4A〜
図4Cは、シグナル端子4及び絶縁部材5の斜視図、平面図及び側面図である。
図5A〜
図5Cは、第1の半筒部6の斜視図、平面図及び側面図である。
図6A〜
図6Cは、第2の半筒部7の斜視図、平面図及び側面図である。
図7A〜
図7Cは、組立体3の組立てを表す斜視図である。
図8は、組立体3の挿入を表す断面図である。
図9は、組立体3の挿入を表す正面図である。
【0017】
これらの図では、組立体3の挿入方向を前方向とし、その逆方向を後方向とし、シグナル端子4に対して第2の半筒部7が配置される方向を上方向とし、第1の半筒部6が配置される方向を下方向とする。
【0018】
図1A及び
図1Bに示されるコネクタ1は、複数の挿入穴2aが形成された筐体2と、各々の挿入穴2aに挿入される組立体3と、を備えている。コネクタ1の前側には、各々の組立体3と接続される同軸ケーブル9が取り付けられる。コネクタ1の後側には、複数の組立体3と接続される不図示の回路基板が取り付けられる。第1実施形態では、コネクタ1の後面と不図示の回路基板の表面とが向かい合うようにコネクタ1が配置される。
【0019】
組立体3は、前後方向に延伸するシグナル端子4と、シグナル端子4を囲むように配置される絶縁部材5と、絶縁部材5を囲むように配置される筒状のグランド端子8と、を備えている。グランド端子8は、組立てられることで全体として筒状を為す半筒状の第1の半筒部と第2の半筒部とを含んでいる。
【0020】
図2A及び
図2Bに示される筐体2は、絶縁性の樹脂材料で成形されている。筐体2には、前後方向に貫通する複数の挿入穴2aが千鳥状に配列している。挿入穴2aの内部空間の前半部には、円筒状の保持部21が挿入穴2aの内壁から離れて配置されている。保持部21にも、前後方向に貫通する挿入穴2bが形成されている。保持部21は、上方に設けられた連結部22によって挿入穴2aの内壁と連結されている。
【0021】
挿入穴2aの内壁のうち下方の面には、前方に向かうに従ってやや上方に向かうように傾斜したスロープ23が設けられている。すなわち、スロープ23は、前方に向かうに従って挿入穴2aの中心軸に近づくように傾斜している。スロープ23は、保持部21の後面よりも後方に位置している。
【0022】
挿入穴2aの内壁のうち左右の各面には、前後方向に延伸する拡張溝2cが形成されており、その両脇に角部25,26が設けられている。このうち、下側の角部25は、上側の角部26よりも挿入穴2aの内側に張り出している。
【0023】
図3に示されるシグナル端子4は、導電性の金属材料からなり、打ち抜かれた金属板が折り曲げられることによって成型される。シグナル端子4は、前後方向に延伸する本体部41と、本体部41の前側に設けられる一対の接触片43と、本体部41の後側に設けられる接触片45と、を備えている。前側に設けられた一対の接触片43は、互いに離れる方向に弾性変形可能とされ、
図1A及び
図1Bに示される同軸ケーブル9のシグナル導体と接触する。各々の接触片43の中途部には、上下に張り出した爪部43aが設けられている。後側に設けられた接触片45は、上方かつ後方に延伸しており、不図示の回路基板の表面に設けられた導体と接触する。
【0024】
図4A〜
図4Cに示される絶縁部材5は、絶縁性の樹脂材料からなり、オーバーモールド工法によってシグナル端子4と一体的に成形されている。絶縁部材5は、シグナル端子4の本体部41を囲む柱状に形成されており、その軸心方向が前後方向を向いている。第1実施形態では、絶縁部材5は八角柱状に形成されている。絶縁部材5には、成形時にシグナル端子4を支持することによってできる上穴5aと下穴5bとが形成されている。また、絶縁部材5の下面の前端部には、凹部5cが形成されている。
【0025】
図5A〜
図5Cに示される第1の半筒部6は、導電性の金属材料からなり、打ち抜かれた金属板が折り曲げられることによって成型される。第1の半筒部6は、軸心方向が前後方向を向き、上方に向かって開放された半筒状に形成されており、グランド端子8の筒状本体の下半部を構成する。第1実施形態では、第1の半筒部6は、絶縁部材5の外周面に沿うように半八角筒状に折り曲げられている。
【0026】
第1の半筒部6の前側には、前方に向かって延伸する一対の接触片63が設けられており、
図1A及び
図1Bに示される同軸ケーブル9のグランド導体と接触する。これら接触片63は、第1の半筒部6のうち周方向の両端部61bの前側に設けられており、互いに離れる方向に弾性変形可能となっている。第1の半筒部6の後側には、L字状に折れ曲がった接触片65が設けられており、不図示の回路基板の表面に設けられた導体と接触する。
【0027】
第1の半筒部6の周方向の中央部61aには、上方に向けて突出した凸部67aと、下方に向けて突出した凸部67bと、が設けられている。凸部67aは、前後方向の中央付近に設けられており、絶縁部材5が配置される上方に向けてやや折れ曲がっている。凸部67bは、凸部67aの後方に設けられており、下方に向けてやや折れ曲がっている。また、第1の半筒部6の周方向の両端部61bには、前後方向の中央付近に、左右外方に向けて突出した凸部67cが設けられている。
【0028】
図6A〜
図6Cに示される第2の半筒部7は、導電性の金属材料からなり、打ち抜かれた金属板が折り曲げられることによって成型される。第2の半筒部7は、軸心方向が前後方向を向き、下方に向かって開放された半筒状に形成されており、グランド端子8の筒状本体の上半部を構成する。第1実施形態では、第2の半筒部7は、絶縁部材5の外周面に沿うように半八角筒状に折り曲げられている。
【0029】
第2の半筒部7の周方向の中央部71aには、前端から後方に向けて延伸するスリット71cが形成されている。第2の半筒部7の後側には、L字状に折れ曲がった接触片75が設けられており、不図示の回路基板の表面に設けられた導体と接触する。第2の半筒部7の周方向の両端部71bには、面内方向に張り出した複数の爪部77aが設けられている。また、両端部71bの前後方向の中央付近には、板厚方向に貫通する穴部77cが設けられている。
【0030】
図7A〜
図7Cは、組立体3の組立てを表す斜視図である。絶縁部材5の下半部に第1の半筒部6が組み付けられる第1のステップと、絶縁部材5の上半部に第2の半筒部7が組み付けられる第2のステップと、を得ることで組立体3が完成する。
【0031】
第1のステップでは、
図7Bに示されるように、第1の半筒部6は、周方向の両端部61bの間隔が広がるように弾性変形した状態で絶縁部材5と嵌め合わされる。絶縁部材5の左右方向の幅は、通常状態における第1の半筒部6の周方向の両端部61bの間隔よりも大きく設定されている。このため、第1の半筒部6の内側に絶縁部材5が押し込まれるとき、絶縁部材5は両端部61bを左右外方に押し広げるように第1の半筒部6を弾性変形させる。これにより、第1の半筒部6は、両端部61bにより絶縁部材5を左右内方に挟み込むように弾性復帰力を生じる。
【0032】
このとき、第1の半筒部6の周方向の中央部61aに設けられた、上方に向けて突出した凸部67a(
図5Bを参照)は、絶縁部材5の下面に設けられた凹部5c(
図4Cを参照)に係合する。
【0033】
第2のステップでは、
図7Cに示されるように、第2の半筒部7は、周方向の両端部71bの間隔が広がるように弾性変形した状態で、第1の半筒部6が嵌め合わされた絶縁部材5と嵌め合わされる。このとき、第2の半筒部7の両端部71bは、第1の半筒部6の径方向の外側に重ねられる。絶縁部材5と嵌め合わされた第1の半筒部6の左右方向の幅は、通常状態における第2の半筒部7の周方向の両端部71bの間隔よりも大きく設定されている。このため、第2の半筒部7の内側に絶縁部材5及び第1の半筒部6が押し込まれるとき、これらは両端部71bを左右外方に押し広げるように第2の半筒部7を弾性変形させる。これにより、第2の半筒部7は、両端部71bにより絶縁部材5及び第1の半筒部6を左右内方に挟み込むように弾性復帰力を生じる。
【0034】
このとき、第1の半筒部6の周方向の両端部61bに設けられた、左右外方に向けて突出した凸部67cは、第2の半筒部7の周方向の両端部71bに設けられた穴部77cに係合する。
【0035】
また、前側に一対の接触片43が設けられた、第1の半筒部6の周方向の両端部61bには、第2の半筒部7の周方向の両端部71bが径方向の外側に重ねられている。このため、一対の接触片43の付け根付近が補強され、弾性復帰力が高められる。
【0036】
図8は、組立体3の挿入を表す断面図である。組立体3が筐体2の挿入穴2aに挿入される途中、組立体3の下側に配置された第1の半筒部6は、挿入穴2aの内壁の下側に設けられたスロープ23と接触する。組立体3の挿入が進むに従って、第1の半筒部6はスロープ23により上方に向けて案内され、これにより、第1の半筒部6の周方向の中央部61aと第2の半筒部7の周方向の中央部71aとの間隔が狭められる。なお、この態様に限られず、第2の半筒部7の側にスロープ23が設けられてもよい。
【0037】
また、組立体3が筐体2の挿入穴2aに挿入されるとき、シグナル端子4の前側に設けられた一対の接触片43は、筐体2の挿入穴2aの内側に設けられた保持部21の挿入穴2bに挿入される。このとき、接触片43に設けられた爪部43aは、保持部21の内壁に食い込む。これにより、シグナル端子4及びこれと一体的に設けられた絶縁部材5の抜けが抑制される。
【0038】
また、第1の半筒部6に設けられた凸部67aが絶縁部材5に設けられた凹部5cと係合しているため、シグナル端子4及び絶縁部材5の抜けが抑制されることに伴って、第1の半筒部6の抜けも抑制される。また、絶縁部材5とは逆方向に突出した第1の半筒部6の凸部67bは、筐体2の挿入穴2aの内壁と接触することで、第1の半筒部6の傾きを抑制する。
【0039】
また、組立体3が筐体2の挿入穴2aに挿入されるとき、組立体3の上側に配置された第2の半筒部7は、挿入穴2aの内壁の上側と接触しながら前方に進む。
図9に示されるように、第2の半筒部7の周方向の中央部71aは、挿入穴2aの内壁の上側と接触し、一方で、第2の半筒部7の周方向の両端部71bは、挿入穴2aの内壁に設けられた角部25に突き当たる。第2の半筒部7は、ストッパとして機能する角部25によって下方への変位が抑制される。これにより、第2の半筒部7は、上下に変位することなく、挿入穴2aに挿入される。
【0040】
また、第2の半筒部7の周方向の両端部71bに設けられた爪部77aは、角部25に食い込む。これにより、第2の半筒部7の抜けが抑制される。また、第2の半筒部7の周方向の中央部71aに設けられたスリット71cには、挿入穴2aの内壁と保持部21とを繋ぐ連結部22が挿入される。
【0041】
以上に説明した第1実施形態によると、グランド端子8と絶縁部材5の間に形成される隙間のうち、絶縁部材5に対して左右の部分は、第1の半筒部6及び第2の半筒部7の弾性復帰力によって低減されるとともに、大きさのばらつきを抑制することが可能である。また、グランド端子8と絶縁部材5の間に形成される隙間のうち、絶縁部材5に対して上下の部分は、筐体2の挿入穴2aの内壁に設けられたスロープ23によって低減されるとともに、大きさのばらつきを抑制することが可能である。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係るコネクタ10について説明する。第1実施形態と対応する構成については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
図10A及び
図10Bは、コネクタ10の斜視図及び分解斜視図である。
図11A及び
図11Bは、組立体3の組立てを表す斜視図である。
図12A〜
図12Cは、組立体3の挿入を表す断面図である。
【0043】
第2実施形態では、不図示の回路基板のエッジ部分にコネクタ10が取り付けられる。シグナル端子4、第1の半筒部6及び第2の半筒部7の後側にそれぞれ設けられた接触片43、65、75は、不図示の回路基板の両面に設けられた複数の導体にそれぞれ接触するように折り曲げられている。絶縁部材5は、下半部が矩形状の六角柱状に形成されており、第1の半筒部6及び第2の半筒部7は、絶縁部材5の外周面に沿うように折り曲げられている。
【0044】
第2実施形態においても、グランド端子8と絶縁部材5の間に形成される隙間のうち、絶縁部材5に対して左右の部分は、第1の半筒部6及び第2の半筒部7の弾性復帰力によって低減され、絶縁部材5に対して上下の部分は、筐体2の挿入穴2aの内壁に設けられたスロープ23によって低減される。
【0045】
次に、第1実施形態のコネクタ1及び第2実施形態のコネクタ10を備える半導体試験装置100について説明する。
図13は、半導体試験装置100を模式的に表す図である。
【0046】
試験対象となる半導体101は、パフォーマンスボード103上に配置されるデバイスソケット102に装着される。パフォーマンスボード103の下面には、複数のコネクタ1が取り付けられている。半導体試験装置100は、複数の同軸ケーブル9を含むマザーボード104を備えている。マザーボード104の上部には、複数のホルダ114が設けられている。各ホルダ114は、同軸ケーブル9のシグナル導体及びグランド導体を保持している。パフォーマンスボード103がマザーボード104上に配置されたとき、コネクタ1に同軸ケーブル9のシグナル導体及びグランド導体が挿入される。また、マザーボード104の下部には、複数のホルダ116が配置されている。各ホルダ116は、同軸ケーブル9のシグナル導体及びグランド導体を保持している。半導体試験装置100は、複数の試験モジュール106を有するテストヘッド105を備えている。各試験モジュール106の縁にはコネクタ10が取り付けられており、マザーボード104がテストヘッド105上に配置されたときには、各コネクタ10に、同軸ケーブル9の下端に設けられたシグナル導体及びグランド導体が挿入される。各試験モジュール106は、試験装置本体107に繋がっており、試験装置本体107から受ける指示に応じて試験信号を生成し、半導体101に対して出力する。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【0048】
なお、上記実施形態では、第2の半筒部7の両端部71bが第1の半筒部6の径方向の外側に重ねられていたが、これに限られず、第1の半筒部6の両端部61bが第2の半筒部7の径方向の外側に重ねられてもよい。また、接触片63や、凸部67a,67b,67c、スリット71c、爪部77a等は、第1の半筒部6と第2の半筒部7とのどちらに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,10 コネクタ、2 筐体、2a,2b 挿入穴、2c 拡張溝、21 保持部、22 連結部、23 スロープ、25 角部(ストッパの一例)、26 角部、3 組立体、4 シグナル端子、41 本体部、43a 爪部、43,45 接触片、5 絶縁部材、5a 上穴、5b 下穴、5c 凹部、6 第1の半筒部、61a 中央部、61b 端部、63,65 接触片、67a,67b,67c 凸部、7 第2の半筒部、71a 中央部、71b 端部、71c スリット、75 接触片、77a 爪部、77c 穴部、8 グランド端子、9 同軸ケーブル、100 半導体試験装置、101 半導体、102 デバイスソケット、103 パフォーマンスボード、104 マザーボード、105 テストヘッド、106 試験モジュール、107 試験装置本体、114,116 ホルダ。