特許第5685506号(P5685506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5685506回転電機の回転子、回転電機および回転子の端面部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685506
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】回転電機の回転子、回転電機および回転子の端面部材
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20150226BHJP
【FI】
   H02K1/28 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-179385(P2011-179385)
(22)【出願日】2011年8月19日
(65)【公開番号】特開2013-42635(P2013-42635A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2013年3月15日
【審判番号】不服2014-3879(P2014-3879/J1)
【審判請求日】2014年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】船越 健二
(72)【発明者】
【氏名】松浦 賢司
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−229767(JP,A)
【文献】 特開2010−4739(JP,A)
【文献】 特開昭59−194652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を積層して形成され、端面を有する回転子コアと、
前記回転子コアを貫いて設けられる回転軸と、
前記回転軸に対して所定の傾きを有し前記回転軸が圧入される圧入部と、前記端面へ接する側へ向いた曲げを有する外周部と、前記圧入部と前記外周部との間であって前記端面から離れる方向に勾配を設けた中央部とを有し、前記端面へ前記圧入部を介して取り付けられる端面部材と
を備えることを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項2】
前記端面部材は、
外周部が複数個に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記回転軸は、
外周面に当該回転軸の軸方向に沿った溝である軸方向溝を有し、
前記圧入部は、
前記軸方向溝と嵌合する嵌合爪を有することを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記回転軸は、
外周面に当該回転軸の周方向に沿った溝である周方向溝を有し、
前記圧入部は、
前記周方向溝と嵌合する嵌合爪を有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記圧入部は、
複数個に分割されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記請求項1〜のいずれか一つに記載の回転電機の回転子
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
回転電機の回転子に用いられる端面部材であって、
前記回転子は、板材を積層して形成され、端面を有する回転子コアと、前記回転子コアを貫いて設けられる回転軸と、を有し、
前記端面部材は、前記回転軸に対して所定の傾きを有し前記回転軸が圧入される圧入部と、前記端面へ接する側へ向いた曲げを有する外周部と、前記圧入部と前記外周部との間であって前記端面から離れる方向に勾配を設けた中央部とを有し、前記端面へ前記圧入部を介して取り付けられることを特徴とする回転子の端面部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の回転子、回転電機および回転子の端面部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機や発電機などの回転電機に用いられる回転子が知られている。かかる回転子は、薄板状の磁性鋼材を積層して円筒状に形成された回転子コアと、かかる回転子コアを貫通して固定された回転軸とを有している。
【0003】
また、回転子コアの端面には、環状のエンドリングが取り付けられる(たとえば、特許文献1参照)。かかるエンドリング(以下、「端面部材」と記載する場合もある)は、回転子コアの剛性を確保する役割等を果たす。
【0004】
なお、端面部材は、ネジやテーパーピンを介して回転子コアへ固定されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−307340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の回転子を組み立てる場合、上述のように端面部材の取り付けにネジやテーパーピンを用いるため、作業効率が悪いという問題があった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、効率よく組み立てることができる回転電機の回転子、回転電機および回転子の端面部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する回転電機の回転子は、一つの態様において、板材を積層して形成され、端面を有する回転子コアと、前記回転子コアを貫いて設けられる回転軸と、前記回転軸に対して所定の傾きを有し前記回転軸が圧入される圧入部と、前記端面へ接する側へ向いた曲げを有する外周部と、前記圧入部と前記外周部との間であって前記端面から離れる方向に勾配を設けた中央部とを有し、前記端面へ前記圧入部を介して取り付けられる端面部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する回転電機の回転子の一つの態様によれば、効率よく組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例に係る回転電機の構成を示す縦断面図である。
図2A図2Aは、実施例に係るエンドリングの外観図である。
図2B図2Bは、実施例に係るエンドリングの正面図である。
図2C図2Cは、実施例に係るエンドリングの側面図である。
図2D図2Dは、図2Cに示すM1部の拡大図である。
図3図3は、回転子コアの断面図である。
図4A図4Aは、回転子コアの端面へエンドリングを取り付けた場合の正面図である。
図4B図4Bは、エンドリングの取り付け前後の様子を示す側面図である。
図5A図5Aは、第1の変形例に係るエンドリングの側面図である。
図5B図5Bは、図5Aに示すM2部の拡大図である。
図6図6は、第2の変形例に係るエンドリングの正面図である。
図7A図7Aは、第3の変形例に係るエンドリングの正面図である。
図7B図7Bは、第3の変形例に係るエンドリングの側面図である。
図8図8は、第4の変形例に係るエンドリングとシャフトとの嵌合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する回転電機の回転子、回転電機および回転子の端面部材の実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
まず、実施例に係る回転電機の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施例に係る回転電機1の構成を示す縦断面図である。なお、図1には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明において用いる他の図面でも示す場合がある。
【0013】
また、以下では、複数個で構成される構成要素については、複数個のうちの1個の部材にのみ符号を付し、その他の各部材については符号の付与を省略する場合がある。かかる場合、各部材の構成は同様であるものとする。
【0014】
図1に示すように、実施例に係る回転電機1は、フレーム2と、ブラケット3と、軸受4と、固定子5と、回転子6と、検出器7と、カバー8とを備える。
【0015】
フレーム2は、筒状に形成されており、その内周面に固定子5の外周が固着される。ブラケット3は、略円盤状に形成されており、外周部においてフレーム2の開口端に取り付けられ、内周部において軸受4を保持する。
【0016】
固定子5は、固定子コア51と、コイル52と、ボビン53とを備える。固定子コア51は、薄板状の電磁鋼材(電磁鋼板)を複数枚積層して形成される。なお、以下では、電磁鋼板を「板材」と記載する場合がある。
【0017】
かかる固定子コア51は、コイル52が巻回されたボビン53が装着された状態で、フレーム2の内周面に焼き嵌めなどによって固定される。また、固定子コア51、コイル52およびボビン53は、モールド樹脂5aによってモールドされる。
【0018】
また、固定子5の内周側には、所定の空隙を介して回転子6が対向配置される。回転子6は、回転子コア61と、シャフト62と、エンドリング63とを備える。
【0019】
回転子コア61は、薄板状の磁性鋼材(電磁鋼板)などを複数枚積層して筒状に形成される。なお、かかる積層において、磁性鋼材同士はカシメなどによって接合される。また、回転子コア61には、界磁用の永久磁石(図示せず)が、一例として埋め込まれて配置される。かかる点については、図3を用いて後述する。
【0020】
シャフト62は、回転子6の回転軸であり、回転子コア61を図中のX方向へ貫いて設けられる。かかるシャフト62の外周面は、焼き嵌めなどによって回転子コア61の内周面に固着される。
【0021】
なお、外径が回転子コア61の内径よりも小さいシャフト62を回転子コア61に挿入し、接着剤によって、シャフト62を回転子コア61に固着してもよい。この場合、シャフト62の外周面と回転子コア61の内周面との間には隙間が形成され、かかる隙間に接着剤が存在することになる。また、この場合、後述するエンドリング63によって回転子コア61の位置決めが可能となる。
【0022】
また、外径が回転子コア61の内径よりも小さいシャフト62を回転子コア61に挿入し、エンドリング63のみによって、シャフト62と回転子コア61とを固定してもよい。この場合、シャフト62の外周面と回転子コア61の内周面との間には隙間が形成されるが、エンドリング63が、回転子コア61の位置決めになり、かつ、シャフト62と回転子コア61との固定を行う部材となる。
【0023】
エンドリング63は、回転子コア61の端面へ取り付けられる端面部材である。ここで、エンドリング63は、シャフト62を圧入する圧入部63aを有しており、かかる圧入部63aを介して回転子コア61の端面へ取り付けられ、シャフト62に対して固定される。
【0024】
すなわち、エンドリング63は、ネジやテーパーピンなどを用いることなく取り付けることができるので、回転子コア61に対してネジやテーパーピンの貫入孔を設けるといった加工を施す必要がない。したがって、組み立て作業の低コスト化および高効率化を図ることができる。かかるエンドリング63の詳細については、図2A以降を用いて後述する。
【0025】
なお、シャフト62は、その軸心がフレーム2の中心軸AX上に位置付くように軸受4を介して支持される。すなわち、かかるシャフト62を含む回転子6は、中心軸AXまわりに回転可能に支持される。
【0026】
また、シャフト62の負荷側となる一端には、たとえば、外部装置(図示せず)などの負荷が連結される。一方、反負荷側となる他端には、検出器7が接続される。
【0027】
検出器7は、シャフト62の回転位置を検出する機器であり、ロータリーエンコーダやレゾルバなどが用いられる。かかる検出器7の検出結果は、所定の制御装置(図示せず)などに出力される。また、検出器7は、カバー8によって被覆される。
【0028】
なお、実施例に係る回転電機1は、電動機や発電機として用いることができる。たとえば、回転電機1を電動機とする場合、固定子5のコイル52へ電流を流すことにより固定子5の内側に回転磁界が発生する。
【0029】
そして、かかる回転磁界と回転子6の永久磁石が発生する磁界との相互作用によって回転子6が回転し、かかる回転子6の回転にともなってシャフト62が回転することとなる。
【0030】
また、回転電機1を発電機とする場合、電動機の場合とは逆の動作をする。すなわち、シャフト62の回転にともなって回転子6が回転し、固定子5のコイル52へ電流を発生させることとなる。
【0031】
なお、図1のA−A’線断面は、後述する図3を用いた説明において示すこととする。
【0032】
以下、図1を用いて説明した実施例に係るエンドリング63について主に説明してゆく。まず、図2A図2Dを用いて、実施例に係るエンドリング63の構成について具体的に説明する。
【0033】
図2Aは、実施例に係るエンドリング63の外観図であり、図2Bは、実施例に係るエンドリング63の正面図であり、図2Cおよび図2Dは、実施例に係るエンドリング63の側面図である。なお、図2Dは、図2Cに示すM1部の拡大図に対応する。
【0034】
また、以下では、図1に示した反負荷側(すなわち、検出器7側)のエンドリング63を例に挙げて説明するが、負荷側のエンドリング63についても同様に適用することができる。ただし、負荷側のエンドリング63について適用する場合、以下に示すX軸の正負方向は逆にみなすこととなる。
【0035】
図2Aに示すように、エンドリング63は、環状の部材であり、圧入部63aと、中央部63bと、外縁部63cとを有する。ここで、圧入部63aは中央部63bと、中央部63bは外縁部63cと、それぞれ連接している。すなわち、エンドリング63は、一枚板をプレスすることによって成形することができる。なお、エンドリング63の中央に穿設された孔については、以下、「圧入孔」と記載する。
【0036】
圧入部63aは、図2Aおよび図2Bに示すように、エンドリング63の内周部を複数個の切り欠き63aaによって複数個に分割された部材であり、X軸の正方向側へ所定の傾きを有している。かかる傾きは、シャフト62(図1参照)の挿入方向を決定する。すなわち、シャフト62は、圧入孔に対し、X軸の負方向から正方向へ向けて挿入される。
【0037】
また、図2Bに示すように、かかる傾きは、圧入部63aの先端部が形成する、中心軸AXを中心とする円の径2rが、シャフト62の径よりも小となるように設けられている。したがって、シャフト62は、圧入孔に対して挿入される際に「圧入」されることとなる。
【0038】
すなわち、かかるシャフト62の圧入によって加わる荷重に対して、圧入部63aは、弾性変形し、かかる弾性変形に対する復元力によってエンドリング63をシャフト62へ固定する。この点は、後述する図4Bを用いた説明においても触れる。
【0039】
なお、このとき、複数個に分割された部材である圧入部63aは、中心軸AXへ向けて多方向から復元力を加えることとなるので、エンドリング63とシャフト62との固定を、剛性の高い安定したものにすることができる。
【0040】
なお、図2Bには、圧入部63aが7個設けられている例を示しているが、圧入部63aの個数を特に限定するものではない。
【0041】
また、図2Aおよび図2Bに示すように、エンドリング63の内周部には、さらにキー63abが設けられている。キー63abは、シャフト62に対して軸方向に沿って設けられる軸方向溝であるキー溝(図示せず)と嵌合する嵌合爪である。
【0042】
かかるキー63abとキー溝とを、シャフト62を圧入孔に対して圧入する際に嵌合させることによって、シャフト62とエンドリング63とが回転方向についてずれることを防ぐことができる。
【0043】
中央部63bは、図2Cおよび図2Dに示すように、所定の勾配iを有しており、径方向について、回転子コア61(図1参照)の端面と接する向きとは逆向きの凹みを形成している。
【0044】
これにより、エンドリング63が回転子コア61の端面へ取り付けられた場合に、かかる端面との間に空間Sを形成することができるので、端面上のカシメ突起などを、かかる空間Sへ逃がすことができる。
【0045】
外縁部63cは、図2Aおよび図2Bに示すように、エンドリング63の外周部を複数個の切り欠き63caによって分割された複数個の部材である。かかる外縁部63cは、エンドリング63が回転子コア61の端面へ取り付けられた場合に、端面と接し、かかる端面を押圧する。
【0046】
また、外縁部63cは、図2Cおよび図2Dに示すように、特に、回転子コア61の端面へ接する側へ向いた曲げBを有している。これにより、エンドリング63が回転子コア61の端面へ取り付けられた場合に、積層形成されたことで「めくれ」や「たおれ」の生じやすい回転子コア61の端面の周縁を特に押圧することができ、かかる「めくれ」や「たおれ」を防いで回転子コア61の剛性を確保することができる。
【0047】
また、このとき、複数個の部材である外縁部63cは、図2Bに示すように、中心軸AXから放射状にのびる多方向でそれぞれ回転子コア61の端面の周縁を押圧するので、前述の「めくれ」や「たおれ」が一様でない場合であっても、かかる「めくれ」や「たおれ」を個別に防いで回転子コア61の剛性を確保することができる。
【0048】
なお、図2Bには、外縁部63cが8個設けられている例を示しているが、外縁部63cの個数を特に限定するものではない。
【0049】
また、上述した切り欠き63aaおよび切り欠き63caは、回転子6全体のバランス調整を行う際に、かかるバランス調整用のバランスパテを充填するスペースとして利用することができる。
【0050】
ここで、回転子コア61の構成について説明しておく。図3は、回転子コア61の横断面図である。なお、図3は、図1のA−A’線断面図に対応する。
【0051】
図3に示すように、X軸の正方向からみた場合、回転子コア61は、環状に成形されており、その内周部にはキー61abを有している。キー61abは、上述したエンドリング63のキー63ab(図2B参照)と同様に、シャフト62に対して軸方向に沿って設けられる軸方向溝であるキー溝(図示せず)と嵌合する嵌合爪である。
【0052】
また、図3に示すように、回転子コア61は、周方向に沿って複数個の永久磁石61aを配設している。ここで、1個の永久磁石61aは、回転子コア61の積層方向であるX方向に沿って連接している。すなわち、永久磁石61aは、積層形成された回転子コア61の積層方向に沿って埋め込まれている。
【0053】
なお、図3には、永久磁石61aが、中心軸AXを中心として放射状に配置されている例を示しているが、配置方向を限定するものではない。また、図3では、永久磁石61aが、回転子コア61へ埋め込まれて配置されている例を示しているが、配置位置を限定するものではない。
【0054】
また、図3では、永久磁石61aが、X軸の正方向からみた場合に矩形である例を示しているが、永久磁石61aの形状を限定するものではない。
【0055】
次に、回転子コア61の端面へエンドリング63を取り付けた場合について、図4Aおよび図4Bを用いて説明する。図4Aは、回転子コア61の端面へエンドリング63を取り付けた場合の正面図であり、図4Bは、エンドリング63の取り付け前後の様子を示す側面図である。
【0056】
図4Aに示すように、回転子コア61の端面およびエンドリング63の大きさは、略同一である。したがって、図4Aに示すように、回転子コア61の端面へエンドリング63を取り付けた場合、回転子コア61の端面は、エンドリング63によって被覆されることとなる。
【0057】
これにより、回転時の遠心力などによって、永久磁石61aが、回転子コア61の端面から突出するのを防止することができる。この点は、図4Aに示すように、永久磁石61aが、分割された外縁部63cと1対1に対応付くように配置されることで、より効果を上げることができる。
【0058】
また、図4Bに示すように、回転子コア61の端面へエンドリング63を取り付けた場合、圧入部63aは、取り付け前と比較して、さらに反るように弾性変形する。
【0059】
そして、圧入部63aは、かかる弾性変形に対する復元力をもって、シャフト62へエンドリング63を固定する。
【0060】
なお、図4Bに示すように、エンドリング63は、X軸方向に沿って、外縁部63cの曲げが回転子コア61の端面の周縁に押し返されて反るほどの力で押圧可能な位置に固定されることが好ましい。
【0061】
すなわち、かかる押圧力で負荷側および反負荷側の双方から回転子コア61を挟み付けることによって、前述の「めくれ」や「たおれ」を防止するだけでなく、回転子コア61全体の形状を整えることができるからである。
【0062】
ところで、これまでは、実施例に係るエンドリング63の外縁部63cが所定の曲げを有する場合について説明したが、これに限られるものではない。そこで、この点に関する変形例を第1の変形例として、図5Aおよび図5Bを用いて説明する。
【0063】
図5Aおよび図5Bは、第1の変形例に係るエンドリング63Aの側面図である。なお、図5Bは、図5Aに示すM2部の拡大図に対応する。
【0064】
図5Aおよび図5Bに示すように、エンドリング63Aの外縁部63cは、曲げを有することなく平らとすることができる。かかる場合であっても、回転子コア61(図1参照)の端面の周縁を含め、外縁部63cが接する部分すべてを一様に押圧することができるので、前述の「めくれ」や「たおれ」を防止することができる。
【0065】
また、外縁部63cに曲げを形成する必要がないので、エンドリング63Aは、容易に成形することができる。
【0066】
また、これまでは、実施例に係るエンドリング63の外縁部63cが複数個に分割されている場合について説明したが、これに限られるものではない。そこで、この点に関する変形例を第2の変形例として、図6を用いて説明する。
【0067】
図6は、第2の変形例に係るエンドリング63Bの側面図である。図6に示すように、エンドリング63Bの外縁部63cは、分割されることなくひと繋がりとすることができる。
【0068】
かかる場合であっても、外縁部63cが接する部分すべてをX軸方向に沿って一様に押圧することができるので、回転子コア61の端面の周縁が一様にめくれやすい場合などに効果的となる。
【0069】
また、外縁部63cに切り欠き63ca(図2B参照)を形成する必要がないので、エンドリング63Bは、容易に成形することができる。
【0070】
また、これまでは、実施例に係るエンドリング63の外縁部63cが所定の曲げを有する場合について説明したが、かかる曲げとは逆向きの折り返しを設けてもよい。そこで、この点に関する変形例を第3の変形例として、図7Aおよび図7Bを用いて説明する。
【0071】
図7Aは、第3の変形例に係るエンドリング63Cの正面図であり、図7Bは、第3の変形例に係るエンドリング63Cの側面図である。
【0072】
図7Aおよび図7Bに示すように、エンドリング63Cの外縁部63cは、回転子コア61の端面へ接する側とは逆向きの折り返しを有することができる。
【0073】
かかる折り返しを設けた場合、たとえば、上述したバランス調整用のバランスパテが、回転時の遠心力などによって回転電機1のフレーム2(図1参照)内に飛散することを防止することができる。すなわち、バランスパテの飛散に基づく回転電機1の故障などを防ぐことができる。さらに、かかる折り返しによって、エンドリング63Cの剛性も高めることができる。
【0074】
また、これまでは、実施例に係るエンドリング63が、内周部にキー63ab(図2B参照)を有し、シャフト62に対して軸方向に沿って設けられるキー溝と嵌合する場合について説明したが、シャフト62の周方向に沿った溝である周方向溝を、周方向に対するキーのキー溝として設けてもよい。
【0075】
そこで、この点に関する変形例を第4の変形例として、図8を用いて説明する。図8は、第4の変形例に係るシャフト62Aとエンドリング63との嵌合を示す図である。
【0076】
図8に示すように、第4の変形例に係るシャフト62Aの外周面には、周方向に沿った周方向溝であるキー溝62aを設けることができる。そして、エンドリング63は、回転子コア61の端面に取り付けられる際に、圧入部63aの先端をキー溝62aへ嵌合させる。すなわち、このときの圧入部63aの先端は、キー溝62aと嵌合する嵌合爪となる。
【0077】
このように、圧入部63aの先端をキー溝62aと嵌合させた場合、エンドリング63とシャフト62AとがX軸方向に沿ってずれるのを防ぐことができるので、エンドリング63は、つねに所定の押圧力をもって回転子コア61の端面を押圧することが可能となる。すなわち、回転子コア61の剛性を安定して確保することができる。
【0078】
上述したように、実施例に係る回転電機の回転子は、板材を積層して形成される回転子コアと、かかる回転子コアを貫いて設けられる回転軸であるところのシャフトと、かかるシャフトが圧入される圧入部を有し、かかるシャフトが突出する上記の回転子コアの端面へ上記の圧入部を介して取り付けられる端面部材であるところのエンドリングとを備える。
【0079】
したがって、実施例に係る回転電機の回転子、かかる回転子を備える回転電機およびかかる回転子の端面部材によれば、効率よく組み立てることができる。
【0080】
ところで、上述した実施例および各変形例では、回転子を構成する各構成要素がとりうる形状などについて説明したが、これらの形状を適宜組み合わせることとしてもよい。
【0081】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 回転電機
2 フレーム
3 ブラケット
4 軸受
5 固定子
5a モールド樹脂
6 回転子
7 検出器
8 カバー
51 固定子コア
52 コイル
53 ボビン
61 回転子コア
61a 永久磁石
61ab キー
62 シャフト
63 エンドリング
63a 圧入部
63aa 切り欠き
63ab キー
63b 中央部
63c 外縁部
63ca 切り欠き
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8