特許第5685536号(P5685536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5685536電池の電極板、該電極板の形成方法および該電極板を備えた電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685536
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】電池の電極板、該電極板の形成方法および該電極板を備えた電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20150226BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20150226BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20150226BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20150226BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20150226BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20150226BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20150226BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01M4/04 Z
   H01M4/139
   H01M4/13
   H01M10/0566
   H01M10/0587
   H01M10/0525
   H01M10/04 W
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-524170(P2011-524170)
(86)(22)【出願日】2009年8月27日
(65)【公表番号】特表2012-501052(P2012-501052A)
(43)【公表日】2012年1月12日
(86)【国際出願番号】CN2009073582
(87)【国際公開番号】WO2010022669
(87)【国際公開日】20100304
【審査請求日】2011年4月21日
(31)【優先権主張番号】200810142086.6
(32)【優先日】2008年8月27日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】200810181816.3
(32)【優先日】2008年11月14日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】12/341,704
(32)【優先日】2008年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2008/073678
(32)【優先日】2008年12月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505327398
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ハン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャンピン
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−303622(JP,A)
【文献】 国際公開第98/048466(WO,A1)
【文献】 特開2006−024710(JP,A)
【文献】 特開2001−102051(JP,A)
【文献】 特開2007−194130(JP,A)
【文献】 特開平08−273698(JP,A)
【文献】 特開2001−313062(JP,A)
【文献】 特開2006−012835(JP,A)
【文献】 特開2007−173178(JP,A)
【文献】 特開平07−153444(JP,A)
【文献】 特開平10−092418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62、10/00−10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部の部位に電極物質が塗布された矩形状の集電体を備え、
前記集電体の前記電極物質が塗布された部位に、
第1の膜厚領域;
前記第1の膜厚領域の膜厚よりも薄い膜厚を有する第2の膜厚領域;
及び、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって膜厚が漸減する遷移領域を有し、
前記集電体が圧延されてなり、
前記圧延された方向に平行な方向を長さ方向とし、前記長さ方向に垂直な方向を幅方向とする場合、
前記集電体は、前記幅方向において、前記第1の膜厚領域、前記遷移領域、前記第2の膜厚領域、タブ領域の順に並
前記タブ領域は、電極物質が塗布されず、前記第2の膜厚領域の前記遷移領域から遠ざかる側面に形成された、
電極板。
【請求項2】
前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かう方向において、
前記第1の膜厚領域の幅は、1〜10mmであり、
前記第2の膜厚領域の幅は、1〜10mmである、
請求項1に記載の電極板。
【請求項3】
前記遷移領域の膜厚は、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって漸減するとともに、
前記第1の膜厚領域の前記電極物質の膜厚は、20〜350μmであり、
前記第2の膜厚領域の前記電極物質の膜厚は、10〜250μmである、
請求項2に記載の電極板。
【請求項4】
前記第2の膜厚領域の前記電極物質の膜厚に対する前記第1の膜厚領域の前記電極物質の膜厚の比率は、2:1〜10:1の範囲にある、
請求項3に記載の電極板。
【請求項5】
前記遷移領域の前記電極物質の膜厚の下降勾配は、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって、5〜300μm/mmであり、
前記第1の膜厚領域と前記第2の膜厚領域の前記電極物質は、前記電極板の厚さ方向において、それぞれ均一な膜厚を有する、
請求項1に記載の電極板。
【請求項6】
記タブ領域は、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって、10〜100mmの幅を有する、
請求項1に記載の電極板。
【請求項7】
少なくとも前記遷移領域および前記第2の膜厚領域にある電極物質を被覆する絶縁層をさらに備える、
請求項1に記載の電極板。
【請求項8】
集電体上に電極物質のスラリーを塗布するステップと、
前記スラリーが塗布された前記集電体を乾燥し、圧延して、電極板とするステップと、を有する電池の電極板の形成方法において、
前記集電体を圧延する前に、薄膜化ステップを実行して、
第1の膜厚領域、第2の膜厚領域、および、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって膜厚が漸減する遷移領域を、前記第1の膜厚領域の膜厚を前記第2の膜厚領域の膜厚より大きくなるように、形成し、
前記集電体を圧延する方向に平行な方向を長さ方向とし、前記長さ方向に垂直な方向を幅方向とする場合、
前記集電体は、前記幅方向において、前記第1の膜厚領域、前記遷移領域、前記第2の膜厚領域、タブ領域の順に並
前記タブ領域は、電極物質が塗布されず、前記第2の膜厚領域の前記遷移領域から遠ざかる側面に形成された、
電池の電極板の形成方法。
【請求項9】
前記薄膜化ステップは、
前記集電体に塗布された前記電極物質を削り取る、
あるいは、前記第1の膜厚領域、前記遷移領域および前記第2の膜厚領域がそれぞれ形成される前記集電体への直接塗布によって実行される、
請求項8に記載の電池の電極板の形成方法。
【請求項10】
前記集電体に電極物質のスラリーを塗布するステップにおいて、
前記電極物質は、前記第1の膜厚領域と前記第2の膜厚領域にそれぞれ均一に塗布され、前記遷移領域は、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって膜厚が滑らかに漸減し、その下降勾配は5〜300μm/mmである、
請求項9に記載の電池の電極板の形成方法。
【請求項11】
外殻と、前記外殻に封入される芯部および電解液からなる電池において、
前記芯部は、正極板、負極板および前記正極板と前記負極板の間に配置されたセパレータとで構成され、
少なくとも前記正極板は、請求項1に記載の電極板、または請求項8に記載の方法で形成された電極板から作成される、
電池。
【請求項12】
前記芯部は、前記正極板、前記セパレータおよび前記負極板を順に重ねたものを巻き付けて形成され、
前記セパレータは、その巻き終わり端が前記正極板および前記負極板の巻き終わり端よりも少なくとも1巻き分は長くなるような長さを有する、
請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記芯部は、周回方向において、湾曲領域を少なくとも1個有して形成されて、
前記正極板の巻き終わり端および/または前記負極板の巻き終わり部は、前記湾曲領域において終了する、
請求項12に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の分野に関し、より詳細には、リチウム二次電池に適した電池の電極板、該電極板の形成方法および該電極板を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度を有し、サイクル寿命が長く、開回路電圧が高いことに加え、安全であり環境に優しい。そのため、リチウムイオン電池は、ノートパソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、PDA、MP3、ブルートゥース(登録商標)、PMPに加えて、通信または娯楽用の他のパーソナル電子機器の電源として広範に用いられている。また、リチウムイオン電池の利用は、電動自転車または電気自動車の分野にまで徐々に広がっている。最近では、リチウムイオン電池の市場占有率は、90%を上回っている。今日、リチウムイオン電池は、競争力が最も高い既に商品化された新規な次世代の電力供給源である。
【0003】
しかしながら、先行技術のリチウムイオン電池においては、加工された電極板を圧延すると、電極物質領域の端部が若干伸びる上に、加工された部分と集電体自体との伸張率が異なるので、前記電極板の端部に襞が形成され、電極板を巻回している間に、前記電極板が割れて、電池の性能に深刻な影響が及ぶ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この観点から、本発明は、先行技術に存在する問題を少なくとも1つ解決することを目的とする。そのために、本発明には、圧延している間に襞あるいは皺が生じず、歩留まり率が改善された電池の電極板を提供することが要求される。さらに、このために、電池の電極板を形成する方法と該電極板を備える電池を提供することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、少なくとも一部の部位に電極物質が塗布された矩形状の集電体を備える電池の電極板が提供される。前記集電体の前記電極物質が塗布された部位は、第1の膜厚領域と、前記第1の膜厚領域の膜厚よりも薄い膜厚を有する第2の膜厚領域と、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって膜厚が漸減する遷移領域と、を有する。
【0006】
本発明の別の実施形態によれば、集電体に電極物質のスラリーを塗布するステップと、前記スラリーが塗布された前記集電体を乾燥し、圧延して、電極板とするステップと、を有する電池の電極板の形成方法が提供される。該集電体を圧延する前に、塗布された電極物質に、薄膜化ステップが実行されて、第1の膜厚領域、第2の膜厚領域および前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって膜厚が漸減する遷移領域が形成されるようにしてもよい。塗布された電極物質において、前記第1の膜厚領域の電極物質の厚さを、前記第2の膜厚領域の電極厚さよりも大きくしてもよい。
【0007】
本発明のさらに別の実施形態によれば、外殻、芯部および電解液からなり、前記芯部と前記電解液が前記外殻で覆われている電池が提供される。前記芯部は、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板の間に配置されたセパレータから形成される。少なくとも前記正極板は、先述の電極板から形成されてもよいし、先に述べた方法で形成されてもよい。
【0008】
本発明の集電体は、圧延している間に割れたり、襞が出来たり皺が寄ったりしない。その結果、電極板の歩留まりは改善され、大規模な工業生産に適用することができる。さらに、本発明に係る電池は、改善された安全性能を有する。
【0009】
先述した本発明の特徴および利点と、本発明の追加の特徴および利点が、後述する実施形態についての詳細な説明を下記の図面と合わせて検討すれば、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電池の電極板を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る電池の芯部を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る電池の芯部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先述した本発明の特徴および利点と、本発明の追加の特徴および利点が、後述する実施形態についての詳細な説明を下記の図面と合わせて検討すれば、より理解されるであろう。
【0012】
本発明によれば、矩形状の集電体と、前記集電体に塗布された電極物質からなる電池の電極板が開示される。集電体の電極物質が塗布された部位には、第1の膜厚領域と、第2の膜厚領域を備える。前記第1の膜厚領域に塗布した電極物質の厚さは、前記第2の膜厚領域よりも厚くなっている。前記第1の膜厚領域と前記第2の膜厚領域の間には、遷移領域がある。前記遷移領域では、前記電極物質の厚さは、前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって徐々に減少、あるいは、テーピングしている。
【0013】
本発明では、第1の膜厚領域、遷移領域、第2の膜厚領域およびタブ領域は、集電体に平行な方向を長さ方向とし、前記長さ方向に垂直な方向を幅方向に取って、分割される。集電体上にある電極物質領域は、幅方向において、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域の順に並ぶ。
【0014】
集電体は、当該技術分野において公知のあらゆる材料で作成できる。例えば、リチウム二次電池の場合、正極集電体はアルミニウム箔であってもよいし、負極集電体は銅箔であってもよい。
【0015】
電極物質は、当該技術分野において公知である。例えば、リチウム二次電池の場合、正極物質は、正極接着剤と、正極活性物質と、正極導電剤から構成される。正極接着剤、正極活性物質および正極導電剤の中身は、従来のものである。
【0016】
本発明では、正極活性物質について特に要求されることはなく、前記正極活性物質は当該技術分野において公知である。前記正極活性物質は、市場で入手可能であり、例えば、LiFePO、Li(PO、LiMn、LiMnO、LiNiO、LiCoO、LiVPOF、LiFeO、または三元系のLi1+a1−b−cがある。ここで、−0.1≦a≦0.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦b+c≦1であり、L、M、Nは、Co、Mn、Ni、Al、Mg、Gaおよび3d遷移金属元素の中から選ばれる1または複数の元素である。
【0017】
正極導電剤には、当該技術分野で公知のあらゆる正極導電剤を用いることができる。例えば、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンブラック、金属粉末および金属ファイバーの中から選ばれる1または複数の導電剤を用いることができる。該正極物質は溶媒と混合されて正極スラリーになる。溶媒には、当該技術分野において公知のあらゆるものを用いることができる。例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、水およびアルコールの中から選ばれる1または複数の溶媒を用いることができる。前記正極スラリーを前記正極集電体上に塗布できるように、適量の溶媒が使用される。
【0018】
本発明において、負極物質は特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知のあらゆる負極物質を用いることができる。通常、負極物質は、負極活性物質と、負極接着剤と、負極導電剤から構成される。負極活性物質は、市場で入手可能であり、例えば、グラファイトおよびチタン酸リチウム(LiTiO)などがある。負極導電剤には、ニッケル粉末および/または銅粉末を用いることができる。負極接着剤には、当該技術分野で公知であって、リチウム二次電池で用いられるあらゆる接着剤を用いることができる。例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロールナトリウム(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)の中から選ばれる1または複数の化合物を用いることができる。
【0019】
第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かう方向、つまり、幅方向では、遷移領域の幅は約1〜10mmであり、第2の膜厚領域の幅は約1〜10mmである。本発明の一実施形態では、遷移領域の幅は約3〜8mmであり、第2の膜厚領域の幅は約3〜8mmである。
【0020】
遷移領域の電極物質の厚さは、第1の膜厚領域における電極物質の厚さより大きくない。第2の膜厚領域の電極物質の厚さは、遷移領域の電極物質の厚さより大きくない。
【0021】
遷移領域は、第1の膜厚領域および第2の膜厚領域と滑らかに接続される。第1の膜厚領域の電極物質の厚さは、約20〜350μmである。遷移領域の電極物質の厚さは、約15〜300μmである。第2の膜厚領域の電極物質の厚さは、約10〜250μmである。本発明の一実施形態では、遷移領域の電極物質の最大厚さは、第1の膜厚領域の電極物質の厚さに等しく、遷移領域の電極物質の最小厚さは、第2の膜厚領域の電極物質の厚さに等しい。本発明の一実施形態では、第2の膜厚領域の電極物質の厚さに対する第1の膜厚領域の電極物質の厚さの比率を、約2:1〜10:1にすることができる。
【0022】
集電体に襞が出来たり皺が寄ったりするのを防止して、本発明の利点を十分に発揮するために、遷移領域の電極物質の厚さの下降勾配は、約5〜300μm/mmである。本発明の一実施形態では、前記下降勾配は、10〜150μm/mmにしてもよい。前記下降勾配の計算方法は、以下の通りである。
【0023】
【数1】
【0024】
第1の膜厚領域および第2の膜厚領域の電極物質の厚さは、電池の電極板の厚さ方向でそれぞれ均一であり、下降勾配も均一になっている。
【0025】
電池の電極板は、電極物質が塗布されないタブ領域をさらに備える。前記タブ領域は、第2の膜厚領域の遷移領域から離れる側面に形成される。前記第2の厚さ領域は、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かう方向に、実質的に10〜100mmの幅を有する。本発明の一実施形態では、該遷移領域の幅は、実質的に20〜70mmである。
【0026】
本発明の電極板を説明する例として、正極板を取り上げる。該正極板は、以下のように作成できる。つまり、正極活性物質、導電剤、接着剤および溶媒を混合し、前記混合物を撹拌し、正極スラリーを得る。正極活性物質、導電剤、接着剤および溶媒には、先述したものと同じものを用いるので、詳細な説明については、記載を簡潔にするために、ここでは省略する。
【0027】
さらに、本発明では、電池の電極板の形成方法が開示される。前記形成方法は、電極物質のスラリーを集電体に塗布すること、塗布後の集電体を乾燥し圧延して電極板を得ることから構成される。圧延する前に、塗布後の電極物質に薄膜化ステップが施されて、第1の膜厚領域、第2の膜厚領域および前記第1の膜厚領域から前記第2の膜厚領域に向かって漸減する遷移領域が形成され、第1の膜厚領域の電極物質の厚さを第2の膜厚領域の電極物質の厚さより大きくしている。
【0028】
第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を形成するために、薄膜化ステップとしては、電極物質を削り取り、あるいは直接塗布することがある。
【0029】
薄膜化方法が、電極物質を直接塗布して第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を形成することである場合、本実施形態で開示される方法には、電極スラリーを集電体に塗布して、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を形成することが含まれる。第1の膜厚領域の電極物質の厚さは、第2の膜厚領域の電極物質の厚さより大きく、前記電極物質の厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かって漸減している。そして、スラリーを塗布された集電体は乾燥され、圧延されて、電極板が得られる。
【0030】
上述の電極スラリーを集電体に塗布して、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を形成する方法は、集電体を長さ方向に移動させながら、スラリーの流量を制御して、スラリーを幅方向に塗布することである。第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域に対応する幅ごとに、スラリーの流量は異なる。第1の膜厚領域に対応する幅では、スラリーの流量は一定を保つ。第2の膜厚領域に対応する幅でも、スラリーの流量は一定を保つ。遷移領域に対応する幅では、スラリーの流量は、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域まで漸減する。具体的な流量は集電体の移動速度に関係し、第1の膜厚領域の電極スラリーの厚さを第2の膜厚領域の厚さより大きくするようにする。電極スラリーの厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かって漸減する。
【0031】
また、上述の電極スラリーを集電体に塗布して、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を形成する方法は、スラリーを塗布する際に、電極板の出口に、邪魔板を設置するようにしてもよい。邪魔板の下部は、電極板から所定の間隔を空けて配置される。所定の間隔とは、電極板上での電極スラリーの厚さのことである。集電体は、集電体の長さ方向に移動し、邪魔板は集電体の幅方向に設置される。第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域に対応する幅方向において、邪魔板の下部と電極板の間の距離は、電極スラリーに要求される厚さに対応する。この方法を用いれば、邪魔板の下部と電極板の間の距離を制御することによって、電極スラリーの厚さと遷移領域厚さの漸減傾向を制御でき、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を備える電極板を得ることができる。
【0032】
本発明の一実施形態では、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域に要求される幅に応じて、集電体上における場所が選ばれる。次に、第1の膜厚領域の電極スラリーが、第2の膜厚領域の電極スラリーよりも厚くなり、前記スラリーの厚さが第1の膜厚領域から第2の膜厚領域まで漸減するように、第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所および第2の膜厚領域の場所に、スラリーが塗布される。次に、スラリーを塗布された集電体は乾燥され、圧延されて、所望の電池の電極板が得られる。
【0033】
本発明において、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域は、本発明で提供される電池の電極板上にある電極物質または電極スラリーを意味している。第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所および第2の膜厚領域の場所は、前記電極物質またはスラリーが、本発明で提供される電極板上において、それぞれ占有する場所を意味している。
【0034】
薄膜化ステップが削り取りである場合、その詳細な方法は、まず、電極スラリーを集電体に塗布し、次に、塗布されたスラリーを削り取って、第1の膜厚領域、遷移領域、第2の膜厚領域を形成することである。第1の膜厚領域の電極物質の厚さは、第2の膜厚領域の電極物質の厚さより大きく、電極物質の厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かって徐々に減少している。次に、スラリーが塗布された集電体を乾燥し、圧延すると、電池の電極板が得られる。
【0035】
本発明の一実施形態では、上記の方法は以下のようにする。まず、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域の場所をそれぞれ選び、次に、第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所および第2の膜厚領域の場所にスラリーを塗布して、塗布厚さを第1の膜厚領域に望ましい厚さにして、次に、遷移領域の場所と第2の膜厚領域の場所において、電極スラリー削り取って、遷移領域と第2の膜厚領域を形成する。第1の膜厚領域における電極スラリーの厚さは、第2の膜厚領域における電極スラリーのそれよりも大であり、遷移領域におけるスラリーの厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かって、漸減し、あるいは徐々に減少する。そして、スラリーが塗布された集電体は、乾燥され、圧延されて、電池の電極板が得られる。
【0036】
前記方法は、さらに以下のように、つまり、乾燥後、圧延する前に、電極物質を削り取って、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を形成してもよい。第1の膜厚領域における電極スラリーは、第2の膜厚領域における電極スラリーの厚さより大であり、スラリーの厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域の間で下降している。そして、スラリーが塗布された集電体を乾燥し、圧延すると、電池の電極板が得られる。
【0037】
上記方法は、以下のように、つまり、電極スラリーを集電体上に塗布した後、電極スラリーを削り取って、遷移領域を形成してもよい。遷移領域の電極スラリーの厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域の間で漸減している。次に、第2の膜厚領域が遷移領域に滑らかに接続されるように、電極スラリーが第2の膜厚領域に塗布される。スラリーが塗布された集電体を乾燥し、圧延すると、電池の電極板が得られる。
【0038】
本発明の一実施形態では、上述の方法は以下のように、つまり、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域の場所を選び、電極スラリーを第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所に塗布してもよい。塗布厚さは、第1の膜厚領域に要求される厚さにされる。そして、遷移領域の場所において、電極スラリーを削り取って、遷移領域を形成する。遷移領域のスラリーの厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かって下降あるいは漸減する。次に、電極スラリーを第2の膜厚領域に塗布して、第2の膜厚領域を形成する。塗布厚さは、第2の膜厚領域に要求される厚さにされる。そして、スラリーが塗布された集電体は乾燥され圧延されて、電池の電極板が得られる。
【0039】
また、前記方法は、以下のように、つまり、乾燥後、圧延する前に、電極物質を削り取って、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域を形成してもよい。第1の膜厚領域の電極スラリーの厚さは、第2の膜厚領域の電極スラリーのそれより大であり、スラリーの厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域まで下降している。そして、スラリーが塗布された集電体は乾燥され圧延されて、電池の電極板が得られる。
【0040】
本発明の一実施形態では、上述の方法は以下のように、つまり、第1の膜厚領域、遷移領域および第2の膜厚領域の場所を選び、電極スラリーを第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所および第2の膜厚領域の場所に塗布することである。塗布厚さは、第1の膜厚領域に要求される厚さにされる。スラリーが塗布された集電体は乾燥される。遷移領域の場所と第2の膜厚領域の電極スラリーは削り取られて、遷移領域および第2の膜厚領域が形成される。第1の膜厚領域の電極スラリーの厚さは、第2の膜厚領域の電極スラリーのそれより大であり、遷移領域のスラリーの厚さは、第1の膜厚領域から第2の膜厚領域に向かって下降している。スラリーが塗布された集電体は圧延されて、所望の電池の電極板が得られる。
【0041】
削取方法は、先行技術におけるあらゆる方法、例えば、ブレードを使った削取方法を用いることができる。該削取方法は、手動で行ってもよいし、機械で行ってもよい。遷移領域における電極物質の下降勾配を一定に保つ必要があれば、前記第1の膜厚領域と前記第2の膜厚領域がそれぞれ、前記遷移領域に接する2本の線に沿って、前記遷移領域を削り取ってもよい。
【0042】
上述の方法に従って形成された電池の電極板では、第1の膜厚領域の電極物質の厚さは、約20〜350μmである。第2の膜厚領域の電極物質の厚さは、約10〜250μmである。遷移領域の電極物質の下降勾配は、約5〜300μm/mmである。
【0043】
乾燥方法は、先行技術において用いられるありふれた方法、例えば、100℃以下で乾燥する方法である。圧延方法も、当該技術分野において公知の方法、例えば、約2.0MPaの圧力の下での圧延方法である。
【0044】
圧延した後で、各領域の電極材料の厚さおよび/または幅は、僅かに変化するが、厚さ、幅の値はなお上述の範囲内にある。本発明の一実施形態では、電極板を形成する際に、つまり、圧延する前では、第1の膜厚領域の電極物質または電極スラリーの厚さは、約25〜350μmであり、第2の膜厚領域の電極物質または電極スラリーの厚さは、約15〜250μmである。前記形成方法は、電極スラリーを上述の厚さに直接塗布して実施できる。上記方法に従って作成された電極板は、襞や皺が形成される危険性が小さいので、前記電極板を備えた電池の安全性能を改善できる。
【0045】
電池の芯部を作成する場合、正極板と負極板は、長さ方向の一端を基準にして並べられ、互いに重ねられ、両者は、正極および負極の電極物質が塗布されていないタブ領域を外部に曝すように互いにずらして、幅方向に配置される。セパレータは、正極板と負極板の間に配置される。負極板上の電極物質部分は、正極板上の電極物質部分を完全に覆っている。そして、重ねられた電極板とセパレータが巻かれて、芯部が得られる。
【0046】
前記セパレータは、本技術分野で公知のセパレータ、例えば、ポリエチレンからなる。
【0047】
また、本発明によれば、電極材料をさらに絶縁層で覆う。前記絶縁層は、少なくとも遷移領域と第2の膜厚領域を覆う。本発明者らは、絶縁層を設けた結果、負極物質が正極物質を覆うように配置されても、正極板と負極板の負極物質が直に接触する可能性を避けることができ、電池内部での内部短絡を低減できることを見出した。電池の安全性能を改善できる。
【0048】
絶縁層の厚さは、比較的広範囲で変更することができる。本発明の一実施形態では、絶縁層の厚さは、約5〜150μmである。
【0049】
絶縁物質には、本技術分野において一般的に用いられる物質なら何でも、例えば、ポリフェニレンスルファイド、ポリウレタン、ポリエチレンおよびポリプロピレンの中から選ばれる1または複数の物質を用いることができる。
【0050】
絶縁層は、上述の物質からなる接着テープを直接貼り付けることによって、あるいは上述の接着剤を直接塗布することによって形成できる。通常、正極板の遷移領域と第2の厚さ領域上だけに絶縁層の形成が要求される。本発明の一実施形態では、接着テープを貼り付けることが選ばれる。接着テープは、市場で購入可能である。
【0051】
上記方法に従って作成された電池は、電池の安全性能を高めることができる。
【0052】
さらに、本発明によれば、外殻、芯部および電解液からなる電池が開示される。芯部と電解液は、外殻内に封止されている。芯部は、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板の間に配置されるセパレータからなる。少なくとも正極板は、本発明において提供される電極板か、あるいは本発明の方法に従って形成される電極板である。
【0053】
先述の電極板を用いることによって、電池の安全性能を高めることができる。
【0054】
本発明で提供される電池の作成方法は、当該技術分野において公知である。前記方法は、正極板、負極板および両板の間にあるセパレータを巻いて芯部を形成し、芯部を外殻内に配置し、外殻内に電解液を注入し、外殻を封止することからなる。ここで、正極は、集電体と該集電体に塗布される正極物質からなり、正極物質は、正極活性物質と、導電剤と、接着剤からなる。巻く方法と封止方法は、当該技術分野において公知である。電解液の量は、従来の量である。
【0055】
芯部は、まず、正極板とセパレータと負極板を重ねて、次に、重ねられた両板とセパレータを巻くことにより形成される。セパレータの長さは、セパレータの巻き終わりが、正極板および負極板の巻き終わりよりも長くなるようにしてもよい。セパレータは、正極板と負極板の巻き終わりから、さらに少なくとも1回りするようにしてもよい。
【0056】
本発明の一実施形態では、セパレータは、正極板と負極板を巻き終えた後さらに、1〜10回り巻かれるようにしてもよい。本発明の一実施形態では、セパレータは、正極板と負極板を巻き終えた後さらに、2〜6回り巻かれるようにしてもよい。
【0057】
発明者らは、芯部の外側にあるセパレータの環状部は、電解液が浸透する間あるいは充放電の間のいずれの場合も膨張し、その膨張率は芯部の膨張率と一致するので、電池の襞を低減でき、安全性能を改善できることを見出した。また、前記方法によれば、電解液の浸透を高め、電池の性能を維持できる。
【0058】
製作過程において、正極板、セパレータおよび負極板を、前記正極板と負極板の巻き終わりまで巻き重ね、前記セパレータの自由端はさらに、前記芯部を少なくとも1回り巻き囲んで、前記芯部が完成する。最外層は、少なくとも1回り周回された前記セパレータである。本方法によって電池を製作すれば、製造工程の簡略化ができ、組み立て効率が向上し、人手と費用を節約できる。
【0059】
本発明では、芯部は、正極板、セパレータおよび負極板を重ねて、巻いて形成され、周縁線の少なくとも一部は円弧状をなしている。正極板のおよび/または負極板の巻き終わり端は、芯部の円弧状領域内にある。具体的に言うならば、芯部は、周縁方向において湾曲した部分を少なくとも備えるように形成され、前記正極板および/または負極板の巻き終わり端は、その湾曲部で途切れる。湾曲領域は、円弧状または半円状に形成されてもよく、正極板と負極板の巻き終わり端は、同一の湾曲領域に位置してもよい。
【0060】
前記周縁線は、前記芯部を巻き付ける方向における端部がなす線である。前記円弧線には、直線以外の線が含まれる。湾曲領域は、前記芯部の表面の領域であって、前記円弧線が置かれた領域である。
【0061】
本発明の一実施形態では、前記正極板と前記負極板の巻き終わり端が、同一の円弧領域にある。つまり、湾曲領域が、円弧状あるいは半円状に形成されて、前記正極板と前記負極板の巻き終わり端は、同一の湾曲領域に位置してもよい。
【0062】
また、充放電中に前記電極板が膨張し、前記芯部の厚さが増し、そして前記芯部が前記外殻を押圧すると、それに応じて前記外殻が前記芯部を押し返すことを、本願発明者は発見した。前記巻き終わり端には、厚さ勾配と前記厚さ勾配に沿って分布する反力があって、該反力によって前記巻き終わり端には応力集中が生じ、前記巻き終わり端に襞や皺が生じるので、前記電池の安全性能に影響が及ぶ場合がある。これに対し、ある実施形態においては、前記正極板の巻き終わり端および/または前記負極板の巻き終わり端および/または前記セパレータの巻き終わり端は、前記芯部の湾曲領域の中にある。湾曲領域は電池の外殻に密接せず、該湾曲領域と外殻の間にはなおある程度の空隙があるので、電池の芯部が膨張する際に、前記湾曲領域と前記外殻の間の空隙によって緩衝作用が生じ、前記円弧領域における応力集中が回避され、使用中に、芯部に襞や皺が生じることを防止できる。加えて、電池の芯部に襞を有する電池を充放電すると、その間に、前記正極板と前記負極板の前記襞がある部位の空隙が拡大し、充放電が不均一になる。この不均一な充放電は、リチウムデンドライトの発生を助勢する。そのため、多量のリチウムデンドライトが、襞領域の内部で成長し、前記電池の安全性能に影響が及ぶことがある。正極板の巻き終わり端および/または負極板の巻き終わり端および/またはセパレータの巻き終わり端を、前記芯部の湾曲領域に置けば、前記リチウムデンドライトによる好ましくない効果を低減することができる。
【0063】
上述の処理を行えば、電池の使用中に、襞や皺が生じることを防げるので、安全性能が大きく向上する。
【実施例】
【0064】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳述される。
【0065】
(実施例1)
実施例1では、本発明の実施形態に係る電池の電極板、および該電極板を用いた電池について説明する。
【0066】
正極物質、導電剤、接着剤および溶媒を撹拌し混合して、正極スラリーを調製する。
【0067】
上述の方法によって、集電体は、第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所、第2の膜厚領域の場所およびタブ領域に分けられる。遷移領域の場所の幅は約4mmである。第2の膜厚領域の場所の幅は約4mmである。タブ領域の厚さは約30mmである。正極スラリーが、第1の膜厚領域の場所と遷移領域の場所に均一に塗布される。正極スラリーの厚さは約100μmである。遷移領域の正極スラリーは、機械を制御することによって、ブレードを使って徐々に薄くされ、正極スラリーの最大厚さが約100μm、最小厚さが25μm、下降勾配が約18.75μm/mmとなる遷移領域が得られる。次に、スラリーが第2の膜厚領域の場所に塗布される。第2の膜厚領域の正極スラリーの厚さは約25μmである。
【0068】
次に、スラリーが塗布された集電体が乾燥され圧延されて、正極板が出来上がる。
【0069】
負極物質、導電剤、接着剤および溶媒を混合し撹拌して、負極スラリーを調製する。
【0070】
負極スラリーは、タブ領域が負極集電体上において幅方向に25mmの幅を維持するように、負極集電体の非タブ領域に均一に塗布される。塗布されるスラリーの厚さは約90μmであり、スラリーが塗布された集電体は、乾燥され、圧延されて、負極板が出来上がる。
【0071】
正極板、セパレータおよび負極板は、正極のタブ領域が負極のタブ領域に対して相対的に配置され、負極板上の電極物質が正極板上の電極物質を完全に覆うように重ねられ、次に、重ねられた両板とセパレータが巻かれて、芯部が出来上がる。
【0072】
そして、芯部は外殻内に配置され、芯部内に該電解液が注入され、外殻は封止される。そして出来た電池を、符号A1で表示することにする。
【0073】
(実施例2)
実施例2は、本発明の実施形態に係る電池の電極板と電池を説明するのに使用される。
【0074】
その製造方法は、実施例1と同じであり、巻く前に、約80μmの厚さを有するポリフェニレンスルフィドのテープを、遷移領域の正極物質と第2の膜厚領域に取り付けることだけが異なっている。そして出来た電池を、符号A2で表示することにする。
【0075】
(実施例3)
実施例3は、本発明の実施形態に係る電池の電極板および該電極板を用いた電池について説明している。
【0076】
正極物質、導電剤、接着剤および溶媒を撹拌し混合して、正極スラリーを調製する。
【0077】
上述の方法によって、集電体は、第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所、第2の膜厚領域の場所およびタブ領域に分けられる。遷移領域の場所の幅は約6mmである。第2の膜厚領域の場所の幅は約6mmである。タブ領域の厚さは約50mmである。正極スラリーが、第1の膜厚領域の場所および遷移領域の場所で均一に塗布される。正極スラリーの厚さは約90μmである。遷移領域の正極スラリーは、機械を制御することによって、ブレードを使って徐々に薄くされ、正極スラリーの最大厚さが約90μm、最小厚さが30μm、下降勾配が約10μm/mmとなる遷移領域が得られる。次に、スラリーが、第2の膜厚領域の場所に塗布され、第2の膜厚領域の正極スラリーの厚さは、約30μmになる。
【0078】
そして、スラリーが塗布された集電体は乾燥され圧延されて、正極板が出来上がる。
【0079】
負極物質、導電剤、接着剤および溶媒を混合し撹拌して、負極スラリーを調製する。
【0080】
負極板を作成する方法は、基本的に、前述の正極板の方法と同じであるが、以下の点が異なる。すなわち、遷移領域の場所の幅が約5mmである。第2の厚さ領域の場所の幅が約5mmである。タブ領域の幅が約40mmである。負極スラリーの厚さが約100μmである。遷移領域における負極スラリーは、機械を制御することによって、ブレードを使って徐々に薄くされ、負極スラリーの最大厚さが約100μm、最小厚さが約20μm、下降勾配が16μm/mmとなる遷移領域が得られる。次に、スラリーが、第2の膜厚領域の場所に塗布され、第2の膜厚領域の負極板の厚さは約20μmになる。次に、スラリーを塗布された集電体が乾燥され圧延されて、負極板が出来上がる。
【0081】
絶縁層を取り付ける方法、巻く方法および電池の組み立て方法は、第2の実施形態と同じである。出来上がった電池を、符号A3で表示することにする。
【0082】
(比較例1)
比較例では、従来技術に係る電池の電極板と該電極板を用いた電池について説明する。
【0083】
電極板と電池を作成する方法は、実施例1と同じであり、電極板を薄くしない点だけが異なる。出来上がった電池は、符号D1で表示することにする。
【0084】
(実施例4)
実施例4では、本発明の実施形態に係る電池が説明される。
【0085】
電池の組み立て方法は、基本的に実施例3と同じであるが、巻く前に、約50μmの厚さを有するポリフェニレンスルフィドのテープを、遷移領域と第2の膜厚領域の正極物質上に取り付ける点だけが異なる。
【0086】
前記電池の芯部を作成する際は、前述の正極板、プロピレンセパレータおよび負極を巻いて、巻物状の芯にする。前記正極板と負極板が巻き終わっても、前記セパレータの自由端は芯部に1回り巻き続けられ、前記正極板と負極板の外側にセパレータ層が形成される。そして、該セパレータは、図2に示すように、粘着テープで固定される。
【0087】
上述の方法に従って電池を作成し、作成した電池を、符号A4で表示することにする。
【0088】
(実施例5)
実施例5では、本発明の実施形態に係る電池が説明される。
【0089】
正極板および負極板の作成方法と電池の組み立て方法は、基本的には実施例3と同じであるが、次の点だけが異なる。すなわち、前述の正極板、プロピレンセパレータ及び負極板を巻いて、巻物状の芯にして芯部を作成する際に、前記正極板、負極板およびセパレータの巻き終わり端が、芯部の湾曲領域で終了する点で異なる。
【0090】
上記方法に従って作成して得られた電池を、符号A5で表示することにする。
【0091】
(比較例2)
本比較例は、本発明の一実施形態に係る電池について説明する。
【0092】
正極板および負極板の作成方法と電池を組み立てる方法は、基本的には実施例5と同じであるが、正極板、負極板およびセパレータの巻き終わり端が、芯部の湾曲領域で終了しない点だけが異なる。
【0093】
上記方法に従って作成して得られた電池を、符号D2で表示することにする。
【0094】
(実施例6)
本実施例では、本発明の一実施形態に係る電池について説明する。
【0095】
正極板および負極板の作成方法と電池の組み立て方法は、基本的には第1の実施例と同じであるが、以下の点だけが異なる。すなわち、正極スラリーが第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所および第2の膜厚領域の場所において均一に塗布され、正極スラリーの厚さは約100μmである。遷移領域および第2の膜厚領域の正極スラリーは、機械で制御することによって、ブレードを使って徐々に薄くされる。得られた遷移領域において、正極スラリーは、100μmの最大厚さ、25μmの最小厚さおよび約18.75μm/mmの下降勾配を有する。スラリーが塗布された電極板は、乾燥され圧延されて、正極板が出来上がる。
【0096】
得られた正極板は、第1の膜厚領域の幅が4mmであり、正極物質の厚さが約90μmである。遷移領域の幅は約4mmであり、正極物質の最大厚さは90μmであり、最小厚さは21μmである。第2の膜厚領域の正極物質の厚さは、約21μmである。
【0097】
上述の方法に従って作成された電池を、符号A6で表示することにする。
【0098】
(実施例7)
本実施例では、本発明の一実施形態に係る電池について説明する。
【0099】
正極板および負極板の作成方法および電池の組み立て方法は、基本的には実施例6と同じであるが、以下の点だけが異なる。正極スラリーは、第1の膜厚領域の場所、遷移領域の場所および第2の膜厚領域の場所で均一に塗布される。塗布された正極スラリーの厚さは約100μmである。そして、スラリーが塗布された集電体は乾燥される。遷移領域および第2の膜厚領域の正極スラリーは、機械で制御することによって、ブレードを使って徐々に薄くされる。得られた遷移領域において、正極スラリーの最大厚さは約100μmであり、最小厚さは約25μmであり、下降勾配は約18.75μm/mmであり、第2の膜厚領域の厚さは約25μmである。スラリーが塗布された電極板は乾燥され圧延されて、正極板が得られる。
【0100】
正極板を得るために、第1の膜厚領域の幅は約4mmにされ、正極物質の厚さは約88μmにされる。遷移領域の幅は約4mmであり、正極物質の最大厚さは88μm、最小厚さは20μmである。第2の膜厚領域における正極物質の厚さは約20μmである。
【0101】
上記方法に従って作成された電池を、符号A7で表示することにする。
【0102】
(性能試験)
1.歩留まり試験
上記実施例1〜5および比較例1に従って、正極板A11、A21、A31、A41、A51およびD11をそれぞれ100個ずつ作成し、歩留まりを試験した。試験方法は、得られた板を観察し、襞や割れなどの有無を判定した。
【0103】
【数2】
【0104】
2.安全性能試験
上記で作成された電池A1〜A5およびD1について、以下のように試験を行った。安全性試験規格は、QC/T743−2006に従った。試験結果を以下の表1に示した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示すように、本発明に係る電極板は歩留まりが高く、その安全性能は大幅に改善されている。また、遷移領域と第2の膜厚領域の上に絶縁層を加えることは、電池の安全性能に対して有益である。
【0107】
3.電池のコアの性能試験
上記実施例1〜実施例5、および比較例1、比較例2に係る電池を作成し、A1、A2、A3、A4、A5およびD1、D2をそれぞれ100個ずつ得た。電池は、一定電流3.2Aの条件で充電される。充電電圧の上限は3.8V、下限は2.2V、カットオフ電流は0.2Aとし、10分間蓄電した。次に、カットオフ電圧を2.0Vに設定して、電池を一定電流8Aで放電した。電池の充放電は、10サイクル行った。次に、電池の芯部に、襞または肉眼で見えるデンドライトあるいは合金が発生しているかを判定するために、電池を分解した。
【0108】
【数3】
【0109】
本発明では、デンドライト比率は、芯部にデンドライトまたは合金が発生した確率を示すために使用される。つまり、以下の通りである。
【0110】
【数4】
試験結果を以下の表2に示した。
【0111】
【表2】
【0112】
表2に示すように、芯部を作成する際に、セパレータが芯部の別の円弧を取り巻いていれば、あるいは、電極板および/またはセパレータの巻き終わり端が湾曲領域にあれば、このように充放電される間の襞、デンドライトあるいは合金の発生率が、電池の安全性能をさらに高める。
【0113】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明に変形および修正がなされることは、当業者にとって明白である。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきでなく、修正例および他の実施形態を、添付の請求項の範囲内に含むことを意図していることを理解されたい。本明細書では、特定の用語が用いられているが、これらは、一般的かつ記述された意味で用いられているだけであって、限定することを意図したものではない。
【0114】
本願は、以下の出願についての優先権の利益を主張する。
1)2008年11月14日出願の中国特許出願第200810181816.3号
2)2008年8月27日出願の中国特許出願第200810142086.6号
3)2008年12月24日出願の国際特許出願番号PCT/CN2008/073678号
4)2008年12月22日出願の米国特許出願第12/341704号
上記で列挙した特許出願は、その全体がここに参照されて包含される。
【符号の説明】
【0115】
1 第1の膜厚領域
2 遷移領域
21 正極タブ
22 負極タブ
3 第2の膜厚領域
4 タブ領域
5 電極の集電体
6 セパレータ
7 正極板の巻き終わり端
8 負極板の巻き終わり端
図1
図2
図3