特許第5685771号(P5685771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5685771健常者用のイヤフォンとしても使用できる耳穴式骨伝導レシーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685771
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】健常者用のイヤフォンとしても使用できる耳穴式骨伝導レシーバ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20150226BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20150226BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   H04R1/10 104Z
   H04R1/00 317
   H04R17/00
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-162916(P2010-162916)
(22)【出願日】2010年7月20日
(65)【公開番号】特開2012-28852(P2012-28852A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】506308460
【氏名又は名称】株式会社WECOM研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】506412206
【氏名又は名称】押野 喜代太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 透
(72)【発明者】
【氏名】押野 喜代太
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−005787(JP,U)
【文献】 特開平10−085250(JP,A)
【文献】 特開2007−228508(JP,A)
【文献】 特開2008−177705(JP,A)
【文献】 特開2006−332861(JP,A)
【文献】 特開2010−004368(JP,A)
【文献】 特開2009−260883(JP,A)
【文献】 特開2010−199818(JP,A)
【文献】 特開2008−104062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00 − 1/08
H04R 1/10
H04R 5/00 − 5/04
H04R 17/00
H04R 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の圧電振動子と、
該圧電振動子に電気信号を伝える信号線と、
前記圧電振動子の振動を伝える側の筐体であり、前記圧電振動子を覆う形状をしたフロントケースと、
該フロントケースと前記圧電振動子とに仕切られ、密閉されてなる圧力部屋と、前記圧電振動子の振動を伝える側とは反対側の筐体であり、前記圧電振動子を覆う形状をしたリアカバーと、
前記フロントケースも中央部に設けられ、前記圧電振動子に対して垂直に伸び、中心部に小穴を有し、先端部の外部が耳穴挿入に適した形状を有する円筒状のパイプと、
前記圧電振動子のリヤカバーに近い面の中央部分から偏心した位置に設けた音調ウェイトとからなり、
前記圧力部屋は、前記圧電振動子の周縁部を前記フロントケース内側に当接せしめ、密封することにより形成し、
該パイプから耳穴周辺の軟骨に骨伝導により振動を伝えるとともに、パイプ中央の小穴から気道を通じて鼓膜に空気を介した音響により振動を伝える耳穴式骨伝導レシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳穴式骨伝導レシーバ、すなわち人体の耳穴(外耳道のうち耳介に近いあたり)に挿入して用いる骨伝導レシーバに関し、とりわけ、健常者のイヤフォンとしても使用できるそれに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耳穴装着に適した骨伝導レシーバが開示されている。圧電振動子と、それを覆うベース、ウェイトカバーと、制振ダンパーと、ベースの中央部に設けられ垂直に延びるロッドと、その先端に設けられたイヤーピースとからなる。圧電振動子の中心をベースに当接せしめる。ベースの周辺部を薄くしてエッジ部を設ける。ロッドに音波誘導孔を設ける。音波誘導孔に開閉チューブを設ける。ウェイトカバーは、所定の重量を持つ。接着又は圧接により、圧電振動子の中心をベースに当接せしめる。圧電振動子は円板状又は長方形の形状の電極板の表面にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛重合体)の薄膜を形成してなる。
【0003】
特許文献2には、軟骨伝導スピーカが開示されている。電極板の表裏両面にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛重合体)の薄膜を形成してなる2枚の圧電振動子と、該2枚の圧電振動子を互いに平行に所定の間隔を保ちつつその周辺を連結するスペーサと、前記2枚の圧電振動子に互いに逆動作させるべく、二つの極性を持つ電気信号のうち、一方を前記圧電振動子の電極板に、もう一方を前記圧電振動子のPZT薄膜部分に伝える導線と、前記2枚の圧電振動子のうち、一方を弾性部材を介して使用者の耳近傍の軟骨に接触させる接触パッドからなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−087810号公報
【特許文献2】特開2008−148086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の発明者は、2年前に特許文献1の発明を行った。耳穴装着に適した骨伝導レシーバである。耳穴近傍の軟骨に音を伝導させることを実現したものであった。
その後、本発明の発明者は、耳穴に装着することが、本来健常者用のイヤフォン、すなわち、気道を通じて空気振動により鼓膜に音を伝達させるイヤフォンに適した構造であることに鑑み、骨伝導と健常者用のイヤフォンとを兼用する構造を提供できないかと、思案をめぐらした。その結果、一つの解決策を見出したものである。
本発明の目的は、健常者のイヤフォンとしても使用できる耳穴式骨伝導レシーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る耳穴式骨伝導レシーバは、板状の圧電振動子と、該圧電振動子に電気信号を伝える信号線と、前記圧電振動子の振動を伝える側の筐体であり、前記圧電振動子を覆う形状をしたフロントケースと、該フロントケースと前記圧電振動子とにより仕切られ、密閉されてなる圧力部屋と、前記圧電振動子の振動を伝える側とは反対側の筐体であり、前記圧電振動子を覆う形状をしたリアカバーと、前記フロントケースの中央部に設けられ、前記圧電振動子の面に対して垂直に伸び、中心部に小穴を有し、先端部の外部が耳穴挿入に適した形状を有する円筒状のパイプと、からなる。
前記圧電振動子の周縁部を前記フロントケース内側に当接せしめ、密封することにより前記圧力部屋を形成する。
前記圧電振動子のリヤカバーに近い側の中央部分に音調ウエイトを設ける。
前記圧電振動子のリヤカバーに近い側の面全体に制振塗料を塗った面を設ける。
前記パイプの中心部に設けた小穴は、直径が0.5ミリ以上1.0ミリ以下であり、長さが10ミリ以上15ミリ以下である。
前記圧電振動子は、電極版の表面にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛重合体)の薄膜を形成してなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耳穴式骨伝導レシーバは、以上のように構成されているから、圧力部屋の働きにより音質の改善がなされた。圧電振動子を音響周波数の信号電圧を加えて振動させたとき、周波数と振幅の大小に応じ圧力部屋において圧力の変化が生ずる。その圧力は振動子に振動と逆方向に力を与えクッションの働きを生ずる。したがって、圧電振動子にダンパー作用と寄生振動防止用の制振作用が期待できる。
さらに圧電振動子に音調ウエイトを取り付けることにより、周波数の低減のレベルアップすることができる。
圧力部屋正面に小穴をもつパイプを設けて、圧力変化の音響出力を通常イヤフォン(気道を通じて空気振動により鼓膜をふるわすイヤフォン)に取り出せる。
そして、圧力部屋正面の振動をパイプを通じて取り出し、骨伝導イヤフォンとしても機能する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、耳穴式骨伝導レシーバの構造を示す図である。図1(a)は、背面外観(リカーカバー側から見た外観)を示す図である。図1(b)は、振動伝達方向で切った断面図である(実施形態)。
図2図2は、耳穴式骨伝導レシーバの構造を実施例について示す図である。図2(a)は、振動伝達方向の断面図である。図2(b)は、背面外観である。(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る耳穴式骨伝導レシーバの形状及び構造に関する。板状の圧電振動子(電気信号を音声信号に変換する圧電セラミックス振動子)を用いて骨伝導レシーバを提供できることは、特許文献1及び2に開示されている。耳穴式骨伝導レシーバについては、特許文献1にて開示した。本発明では、骨伝導のみならず、気道を介した鼓膜振動をも実現し、従来の音響イヤフォンの機能をも併せ持つ骨伝導レシーバについて開示するものである。
【0010】
図1は、耳穴式骨伝導レシーバの構造を示す図である。図1(a)は、背面外観(リカーカバー側から見た外観)を示す図である。図1(b)は、振動伝達方向で切った断面図である。本発明では、板状の圧電振動子10をフロントケース20とリアカバー30とで挟みこむ。このとき、圧電振動子10とフロントケース20とはその周囲をすべて密封し、それらの間に圧力部屋15を形成する。さらに、フロントケース20の中央部に垂直にパイプを立てて、そのパイプを介して耳穴(さらにいうと、耳穴周辺の軟骨)に振動を伝える。フロントケース20とパイプ25とは一体的に成型することができる。
【0011】
パイプ25の先端部には、その外形の周囲にくぼみを設けて、耳穴への挿入の際に落ちにくくしてある。パイプ25は、その中心部に小穴26を有する。小穴26は、内径が0.5ミリメートルから1.0ミリメートル、望ましくは0.8ミリメートルであって、長さが10ミリメートルから15ミリメートル程度のものである。したがって、このパイプ25は、円筒状というよりはむしろ円柱状のものの真ん中に細い穴が開いているというイメージに近いものである。
【0012】
この骨伝導レシーバを組み立てるには、まず圧電振動子に信号線を取り付けたもの(必要に応じて、背面に制振塗料を塗った面を設け、また、音調ウエイトを背面中央部に取り付けたもの)を、パイプ付きフロントケース(パイプとフロントケースとを一体的に成型したもの、以下、単にフロントケース20という)の内側に取り付け、周囲を密封する。信号線取り出し口から信号線を取り出すことに注意しつつ、リアカバー30を嵌める。フロントケース20及びリアカバー30は、ABS樹脂などにより成型することができる。
【実施例1】
【0013】
以下、図2を参照しつつ、実施例1について説明する。圧電振動子10は、円板状の金属板である電極板の表裏、両面にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛重合体)の薄膜を形成せしめたものであり、圧電振動子10に電気信号を伝える信号線12がつながれる。ここで、電極板は、直径18ミリメートル、厚さが25マイクロメートルの42Nを一枚用いている。PZTは、直径15ミリメートル、厚さ50マイクロメートルのものを合計2枚とし、電極板の両面にそれぞれ設けてある。
【0014】
圧電振動子10を包みこむ筐体は、フロントケース20とリアカバー30とにより形成される。前述したようにフロントケース20は、パイプ25と一体的に成型される。フロントケース20からパイプ25を除外した部分は、皿に似た形状であり、リアカバー30もまた、同様に皿に似た形状をしている。フロントケース20とリアカバー30とは、嵌め合わせることができ、それらを嵌め合わせてできた空間に圧電振動子10が収納され、外の衝撃から保護される。
【0015】
本発明にあっては、圧電振動子10は、フロントケース20との間に密封空間である圧力部屋15を形成する。圧電振動子10を音響周波数の信号電圧を加えて振動させたとき、この圧力部屋には、周波数と振幅の大小に応じて圧力の変化が生ずる。その圧力は圧電振動子10にダンパー作用と寄生振動防止用の制振作用を与えるものと考えられる。
【0016】
圧電振動子10は、その周辺部においてフロントケース20に固定され、密封空間である圧力部屋15を形成する。その固定の方法の一つとして接着がある。また、フロントケース20とリアカバー30とを嵌合する際に、圧着することにより密封することとする方法もある。
【0017】
音調ウエイト31は、円柱状のおもりである。ここでは直径が5ミリメートル、厚さが1.5ミリメートルの鉄の素材を用いている。この音調ウエイトの働きにより、圧電振動子10で起こる振動は、背面ではなく、パイプ25の向きに伝わることが担保され、周波数の低域の音質をレベルアップすることが可能となる。
【0018】
図2(a)に示すように、音調ウエイト31を全くの中央部ではなく、若干偏心させて取り付けることも考えられる。信号線12を取り付ける位置からみて遠い側にずらすという意義がある。また、パイプの小穴26との位置関係からみてずらすという意義もある。
【0019】
図2(a)に示すように、実施例1にあっては、制振塗料16を圧電振動子の背面全体に塗布し、制振塗料面を設けてある。これは、音調ウエイト31とあいまって、制振作用をもたらすと期待できる。塗布して乾燥硬化後、硬度30以下となるように塗布する。
【0020】
リアカバー30とフロントケース20との境目に信号線取り出し口が設けられる。信号線取り出し口は、信号線12が何らかの力で引っ張られた場合であっても、信号線12と圧電振動子10との電気的接続が阻害されないよう必要な強度で信号線12を把持する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の耳穴式骨伝導レシーバは、気道を介して音響による鼓膜振動もできるので、健常者にも用いることができる。また、鼓膜による聴覚機能をある程度もっている聴覚障害者が用いることもできる。
【符号の説明】
【0022】
10 圧電振動子
12 信号線
15 圧力部屋
16 制振塗料
20 フロントケース
25 パイプ
26 小穴
30 リヤカバー
31 音調ウエイト
33 イヤフォンコード
図1
図2