(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記圧縮機の吐出行程の途中で、上記吐出ポートが完全に塞がれてしまうと、上記圧縮室が閉鎖された状態で容積が収縮するため、上記圧縮室で流体の過圧縮が生じてしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏心回転式ピストン機構を備えた圧縮機において、流体の再膨張と過圧縮の両方を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、圧縮機構(30)と該圧縮機構(30)を駆動する駆動機構(20)とを備え、上記圧縮機構(30)が、略円環状のシリンダ(32)と、該シリンダ(32)の中空部に収容されて該シリンダ(32)の内周面(35)に対向する外周面(3)を有するピストン(2)と、該ピストン(2)の外周面(3)と上記シリンダ(32)の内周面(35)との間に形成されるシリンダ室(36)を吸入室(36b)及び圧縮室(36a)に区画する
ようにピストン(2)の外周面(3)から径方向外方へ突出するブレード(4)と、上記シリンダ(32)の端面開口部を閉塞する端板(31)を厚さ方向に貫通する吐出ポート(1)と、上記シリンダ(32)の内周面(35)と外周面(37)との間を貫通する吸入ポート(42)とを有する圧縮機を前提としている。
【0008】
そして、上記圧縮機において、上記圧縮機構(30)は、上記ピストン(2)の公転運動によって上記吸入ポート(42)を通じて上記吸入室(36b)へ流体を吸入する吸入行程と、上記圧縮室(36a)で流体を圧縮する圧縮行程と、上記吐出ポート(1)を通じて上記圧縮室(36a)から流体を吐出する吐出行程とを連続的に繰り返し行うように構成され、
上記ピストン(2)の外周面と上記シリンダ(32)の内周面(35)との間には、該ピストン(2)の外周面の一部をカットすることにより、上記圧縮室(36a)の端部に該圧縮室(36a)の死容積となる隙間部(c)が形成される一方、上記吐出ポート(1)は、
上記吐出行程の終了段階で上記圧縮室(36a)が隙間部(c)だけになるときに、上記吐出ポート(1)と上記吸入ポート(42)とが非連通となり且つ上記吐出ポート(1)と上記隙間部(c)とが連通する中間行程を上記圧縮機構(30)が行える位置に設けられ
るとともに、上記隙間部(c)の少なくとも一部に開口していることを特徴としている。
【0009】
第1の発明では、上記圧縮機構(30)において、上記吐出行程が終了してから次の吸入行程が始まるまでの間の少なくとも一時期に上記中間行程、つまり、上記吐出ポート(1)と上記吸入ポート(42)とを非連通とし且つ上記吐出ポート(1)と上記隙間部(c)とを連通する行程を行えるような位置に、上記吐出ポート(1)が形成されて
いる。
【0010】
第1の発明では、上記ピストン(2)の外周面(3a)と上記シリンダ(32)の内周面(35)との間に上記隙間部(c)が形成されている場合、この隙間部(c)に開口するように上記吐出ポート(1)を形成している。この隙間部(c)は、上述したように、圧縮室(36a)の死容積となる空間であり、上記圧縮機構(30)の中間行程時に、上記圧縮室(36a)が隙間部(c)だけになるときがある。そして、この隙間部(c)に上記吐出ポート(1)を開口させることで、上記圧縮室(36a)で圧縮された流体が、上記隙間部(c)を通って上記吐出ポート(1)から流出するようになる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記吐出ポート(1)は、上記シリンダ(32)の内周面(35)よりも内側に位置していることを特徴としている。
【0012】
第2の発明では、上記シリンダ(32)の内側に上記吐出ポート(1)を配置することにより、上記吐出ポート(1)が上記端板(31)の端面で塞がれることがない。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、上記吐出ポート(1)は、軸方向からの断面視で略長円形状であることを特徴としている。
【0014】
第3の発明では、上記吐出ポート(1)を上記シリンダ(32)と上記偏心部(25)との間に配置する場合に、上記吐出ポート(1)を円形状にした場合に比べて、上記吐出ポート(1)の開口面積を大きくできる。
【0015】
第4の発明は、第1の発明において、上記吐出ポート(1)の内周面が、上記シリンダ(32)の内周面(35)に沿う曲面形状を含んでいることを特徴としている。
【0016】
第4の発明では、上記吐出ポート(1)を上記シリンダ(32)の内周面(35)へ近づけることができるようになる。上記吐出ポート(1)が上記シリンダ(32)の内周面(35)へ近づいた分だけ、上記吐出ポート(1)の開口面積を大きくできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記圧縮機構(30)は、上記吐出行程が終了してから次の吸入行程が始まるまでの間の少なくとも一時期に上記中間行程、つまり、上記吐出ポート(1)と上記吸入ポート(42)とを非連通とし且つ上記吐出ポート(1)と上記隙間部(c)とを連通する行程を行うことができる。そして、この上記中間行程において、上記圧縮室(36a)を閉鎖することなく、圧縮室(36a)と吸入室(36b)との間を非連通にすることができる。上記圧縮室(36a)が閉鎖されないことで流体の過圧縮を防止することができ、圧縮室(36a)と吸入室(36b)とを非連通にすることで流体の再膨張を防止することができる。
【0018】
また、上記
本発明によれば、上記吐出ポート(1)を上記圧縮室(36a)の隙間部(c)に開口させることにより、上記圧縮室(36a)を確実に閉塞させないようにすることができる。これにより、上記圧縮室(36a)で冷媒が過圧縮するのを確実に防止することができる。
【0019】
また、上記
第2の発明によれば、上記吐出ポート(1)を上記シリンダ(32)の内側に配置することにより、上記端板(31)の端面で上記吐出ポート(1)が塞がれることがない。これにより、上記圧縮室(36a)から上記吐出ポート(1)へ流れる流体の流路面積を縮小させないようにすることができる。
【0020】
また、上記
第3の発明によれば、上記吐出ポート(1)を略長円形状にすることにより、該吐出ポート(1)を円形状にした場合に比べて、該吐出ポート(1)の開口面積を大きくすることができる。これにより、上記圧縮室(36a)から上記吐出ポート(1)へ流入する流体の流動抵抗を小さくすることができる。
【0021】
また、上記
第4の発明によれば、上記吐出ポート(1)の内周面の一部を上記シリンダ(32)の内周面(35)に沿う曲面形状にすることにより、上記吐出ポート(1)を上記シリンダ(32)の内周面(35)へ近づけることができる。これにより、上記吐出ポート(1)の開口面積をさらに大きくすることができ、上記圧縮室(36a)から上記吐出ポート(1)へ流入する流体の流動抵抗をより一層小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の実施形態に係る圧縮機は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続されるものである。
【0024】
《圧縮機の全体構造》
図1は、本実施形態に係る圧縮機(10)の縦断面図である。この圧縮機(10)は、ケーシング(11)と電動機(駆動機構)(20)と偏心回転式ピストン機構部(圧縮機構)(30)とを備えている。
【0025】
〈ケーシング〉
上記ケーシング(11)は、両端を閉塞した縦長円筒状の密閉容器で構成されており、円筒状の胴部(12)と該胴部(12)の上端側を閉塞する上部鏡板(13)と該胴部(12)の下端側を閉塞する下部鏡板(14)とを備えている。上記胴部(12)には、該胴部(12)の下側部分を貫通してインレットチューブ(15)が取り付けられている。又、上部鏡板(13)の上側部分を貫通して吐出管(16)が取り付けられている。
【0026】
このケーシング(11)に、上記電動機(20)及び上記偏心回転式ピストン機構部(30)が収容されている。又、下部鏡板(14)の底部には、油溜め部(17)が形成されている。この油溜め部(17)には、上記偏心回転式ピストン機構部(30)の摺動部分を潤滑する潤滑油が貯留される。
【0027】
〈電動機〉
上記電動機(20)は、共に円筒状に形成されたステータ(21)及びロータ(22)を備えている。上記ステータ(21)は、上記ケーシング(11)の胴部(12)に固定されている。このステータ(21)の中空部に上記ロータ(22)が配置されている。このロータ(22)の中空部には、該ロータ(22)を貫通するように回転軸(駆動軸)(23)が固定されており、ロータ(22)と回転軸(23)が一体で回転するようになっている。
【0028】
この回転軸(23)は、上下に延びる主軸部(24)を有し、この主軸部(24)の下端寄りに偏心部(25)が一体に形成されている。この偏心部(25)は、主軸部(24)よりも大径に形成されている。又、上記偏心部(25)の軸心は、主軸部(24)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。
【0029】
又、主軸部(24)の下端部には遠心ポンプ(26)が設けられている。この遠心ポンプ(26)は、上記油溜め部(17)の潤滑油に浸漬している、そして、上記回転軸(23)の回転に伴い潤滑油を回転軸(23)内の給油路(図示省略)へ汲み上げた後で、偏心回転式ピストン機構部(30)および電動機(20)の各摺動部へ供給する。
【0030】
〈偏心回転式ピストン機構部〉
上記偏心回転式ピストン機構部(30)は、
図1に示すように、下側から上側に向かって、リアヘッド(33)、シリンダ(32)及びフロントヘッド(端板)(31)の順で積層され、これらの部材(31,32,33)が、上下方向へ延びる複数のボルト(34)で締結されてなる。
【0031】
−リアヘッド−
上記リアヘッド(33)の中心部分には、該リアヘッド(33)を厚さ方向へ貫通する貫通孔部が形成されている。この貫通孔部の内周面が上記回転軸(23)の主軸部(24)を回転支持するすべり軸受を構成する。
【0032】
−シリンダ−
上記シリンダ(32)の中心部分には、該シリンダ(32)を厚さ方向へ貫通する略円形状の貫通孔部が形成されている。このシリンダ(32)の上端面開口部がフロントヘッド(31)で閉塞され、上記シリンダ(32)の下端面開口部がリアヘッド(33)で閉塞されることにより、上記シリンダ(32)における貫通孔部の部分が閉空間となる。この閉空間がシリンダ室(36)を構成する。このシリンダ室(36)には、上記回転軸(23)の偏心部(25)に外嵌する揺動ピストン(2)が収容されている。尚、この揺動ピストン(2)の形状については、詳しく後述する。
【0033】
上記シリンダ(33)には、
図2に示すように、平面視で一部がシリンダ室(36)に開口するブッシュ溝(40)が形成されている。このブッシュ溝(40)は円形状の溝であり、このブッシュ溝(40)に半月状に形成された一対のブッシュ(41)が内嵌している。
【0034】
尚、このブッシュ(41)の円弧面はブッシュ溝(40)の内周面に対して摺接可能であり、この円弧面の反対側のフラット面は、後述する上記揺動ピストン(2)に形成されたブレード(4)の側面に対して摺接可能である。
【0035】
又、上記シリンダ(33)には、該シリンダ(33)における内周面(35)と外周面(37)との間を径方向へ貫通する吸入ポート(42)が形成されている。この吸入ポート(42)に、上記インレットチューブ(15)の端部が挿入固定されている。
【0036】
−フロントヘッド−
上記フロントヘッド(31)の中心部分には、該フロントヘッド(31)を厚さ方向へ貫通する貫通孔部が形成されている。この貫通孔部の内周面が上記回転軸(23)の主軸部(24)を回転支持するすべり軸受を構成する。又、上記フロントヘッド(31)の中心部分よりも外側寄りを厚さ方向に貫通する吐出ポート(1)が形成されている。この吐出ポート(1)については、詳しく後述する。
【0037】
上記フロントヘッド(31)の上面には、リード弁(43)が取り付けられている。そして、このリード弁(43)の上方に弁押さえ板(48)が設けられている。上記リード弁(43)は可撓性の薄板部材であり、その一端が締付ボルトでフロントヘッド(31)に固定されている。そして、このリード弁(43)の他端で吐出ポート(1)の流出口を開閉する。又、上記弁押さえ板(48)は、上記リード弁(43)の開き過ぎを抑制するためのものである。
【0038】
又、上記フロントヘッド(31)の上面には、上記吐出ポート(1)の流出口を覆うマフラカバー(44)が設けられている。このマフラカバー(44)の内側に吐出空間部(45)が形成されている。又、このマフラカバー(44)には、該マフラカバー(44)を貫通して吐出空間部(45)と上記ケーシング(11)の内部空間とを連通する貫通孔(47)が形成されている。
【0039】
−揺動ピストン−
上記揺動ピストン(2)は、
図2に示すように、該揺動ピストン(2)の厚さ方向へ貫通する貫通孔部が形成されている。この貫通孔部に上記駆動軸(23)の偏心部(25)が摺動自在に内嵌している。
【0040】
上記揺動ピストン(2)は、該揺動ピストン(2)の外周面(3)から径方向外方へ突出するブレード(4)を備えている。上述したように、このブレード(4)が、上記一対のブッシュ(41)の間に進退自在に挟み込まれている。そして、このブレード(4)により、上記シリンダ室(36)が圧縮室(36a)及び吸入室(36b)に区画される。この吸入室(36b)に吸入ポート(42)が開口する。
【0041】
この揺動ピストン(2)には、上記ブレード(4)の両側面の加工精度を向上させるため、該ブレード(4)の付け根部に、いわゆるヌスミ加工が施されている。
【0042】
本実施形態では、このヌスミ加工により、上記揺動ピストン(2)の外周面(3)の一部がカットされている。このカットにより、上記外周面(3)におけるブレード(4)の付け根部の周辺に平面部(3a)が形成される。そして、この平面部(3a)を臨む位置に上記圧縮室(36a)の死容積となる隙間部(c)が形成される。尚、上記揺動ピストン(2)の外周面において、この平面部(3a)以外の部分は円筒面(3b)である。
【0043】
ここで、上記揺動ピストン(2)の運動は、この揺動ピストン(2)における円筒面(3b)の一部とシリンダ(32)における内周面(35)の一部とが、常に実質的に圧接した状態(厳密にはミクロンオーダーの微小な隙間があるが、その微小な隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)で行われている。
【0044】
−吐出ポート−
上記吐出ポート(1)は、上述したように、上記フロントヘッド(31)に形成されている。この吐出ポート(1)の開口形状は、
図2に示すように略長円形状である。
【0045】
図2は、上記ブレード(4)の圧縮室(36a)側で互いに圧接する上記揺動ピストン(2)及び上記シリンダ(32)が、互いに離反する直前の状態を示している。この状態のとき、上記圧縮室(36a)の容積は最小である。そして、この最小容積の部分が隙間部(c)である。
【0046】
図3は、
図2の状態から上記揺動ピストン(2)の回転角が進み、上記ブレード(4)の吸入室(36b)側で上記揺動ピストン(2)及び上記シリンダ(32)が互いに圧接した直後の状態を示している。この状態のとき、上記圧縮室(36a)の容積は最大である。
【0047】
図2及び
図3からわかるように、上記吐出ポート(1)は、上記シリンダ(32)の内周面(35)と上記偏心部(25)の外周面との間に設けられている。尚、この位置に上記吐出ポート(1)を設けることにより、上記偏心回転式ピストン機構部(30)の吐出行程が終了してから次の吸入行程が始まるまでの間の少なくとも一時期に、上記偏心回転式ピストン機構部(30)が中間行程を行うことができるようになる。ここで、この中間行程とは、上記吐出ポート(1)と上記吸入ポート(42)とが非連通となり且つ上記吐出ポート(1)と上記隙間部(c)とが連通する行程である。
【0048】
又、
図2からわかるように、上記吐出ポート(1)は、その一部が上記圧縮室(36a)の隙間部(c)に開口する位置に設けられている。
【0049】
《圧縮機の運転動作》
次に、上記圧縮機(10)の運転動作について説明する。
【0050】
上記電動機(20)が通電されると、上記ロータ(22)とともに回転軸(23)が回転し、上記揺動ピストン(2)が上記ブッシュ(41)を支点として揺動する。この揺動運動によって、上記圧縮室(36a)及び吸入室(36b)の容積が周期的に増減することで、上記圧縮機(10)による冷媒の吸入行程、圧縮行程及び吐出行程が連続的に繰り返し行われる。以下、具体的な運転動作の説明において、上記回転軸(23)の回転角が0°と360°のときに上記揺動ピストン(2)が上死点(ブレード(4)がシリンダ室(36)から後退した位置)に位置し、180°のときに下死点(ブレード(4)がシリンダ室(36)側へ進出した位置)に位置する。
【0051】
上記回転軸(23)が、回転角0°の状態から僅かに回転して、上記ピストン(2)と上記シリンダ室(25)との圧接部分が、上記吸入ポート(42)の開口部を通過すると、該吸入ポート(42)が開放される。これにより、上記吸入ポート(42)を通じて吸入室(36b)へ冷媒が吸入され始める(
図3を参照)。
【0052】
その後、上記回転軸(23)の回転が進み、該回転軸(23)の回転角が360°、つまり一回転して上記揺動ピストン(2)が上死点の位置に戻ったときに、上記吸入ポート(42)が閉鎖状態となる。これにより、上記吸入室(36b)への冷媒の吸入行程が完了する。
【0053】
その後、上記回転軸(23)の回転角が360°の状態から僅かに回転すると、吸入室(36b)が圧縮室(36a)となって、該圧縮室(36a)が収縮し始める。このとき、圧縮室(36a)と吐出ポート(1)とは連通しているが、上記圧縮室(36a)の圧力が所定圧力に達していないので、上記リード弁(43)は閉じたままである。したがって、上記圧縮室(36a)から冷媒は吐出されない。
【0054】
さらに、上記回転軸(23)の回転角が進むにつれて、上記圧縮室(36a)の容積が縮小していき、該圧縮室(36a)の冷媒が圧縮される。そして、この圧縮室(36a)の圧力が所定圧力に達すると、上記リード弁(43)が開き、圧縮室(36a)から冷媒が吐出される。そして、この冷媒の吐出行程の終了後に、上記圧縮室(36a)の圧力が下がることで、上記リード弁(43)が吐出ポート(1)を閉じる。
【0055】
ここで、上記吐出行程が終了してから上記リード弁(43)が該吐出ポート(1)を閉じ切るまでの間に、上記圧縮室(36a)の収縮が進んで上記圧縮室(36a)が隙間部(c)だけになる場合において、この隙間部(c)に上記吐出ポート(1)を開口させることで、上記圧縮室(36a)で圧縮された流体が、上記隙間部(c)を通って上記吐出ポート(1)から流出するようになる。尚、上記吐出行程が終了してから上記リード弁(43)が該吐出ポート(1)を閉じ切るまでの間に、上記吐出ポート(1)と上記吸入ポート(42)とは非連通状態である。これが、上述した中間行程である。
【0056】
以上の動作が繰り返されることにより、上記圧縮機(10)による冷媒の吸入、圧縮及び吐出が連続的に行われる。
【0057】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、上記偏心回転式ピストン機構部(30)は、上記吐出行程が終了してから上記リード弁(43)が該吐出ポート(1)を閉じ切るまでの間に上記中間行程、つまり、上記吐出ポート(1)と上記吸入ポート(42)とを非連通とし且つ上記吐出ポート(1)と上記隙間部(c)とを連通する行程を行うことができる。そして、この上記中間行程において、上記圧縮室(36a)を閉鎖することなく、圧縮室(36a)と吸入室(36b)との間を非連通にすることができる。上記圧縮室(36a)が閉鎖されないことで流体の過圧縮を防止することができ、圧縮室(36a)と吸入室(36b)とを非連通にすることで流体の再膨張を防止することができる。
【0058】
尚、本実施形態では、上記吐出行程が終了してから上記リード弁(43)が該吐出ポート(1)を閉じ切るまでの間が、上記吐出行程が終了してから次の吸入行程が始まるまでの間の少なくとも一時期に対応する。
【0059】
又、本実施形態によれば、上記吐出ポート(1)を上記圧縮室(36a)の隙間部(c)に開口させることにより、上記圧縮室(36a)を確実に閉塞させないようにすることができる。これにより、上記圧縮室(36a)で冷媒が過圧縮するのを確実に防止することができる。
【0060】
又、本実施形態によれば、上記吐出ポート(1)を上記シリンダ(32)の内側に配置することにより、上記フロントヘッド(31)の端面で上記吐出ポート(1)が塞がれることがない。これにより、上記圧縮室(36a)から上記吐出ポート(1)へ流れる流体の流路面積を縮小させないようにすることができる。
【0061】
又、本実施形態によれば、上記吐出ポート(1)を略長円形状にすることにより、該吐出ポート(1)を円形状にした場合に比べて、該吐出ポート(1)の開口面積を大きくすることができる。これにより、上記圧縮室(36a)から上記吐出ポート(1)へ流入する流体の流動抵抗を小さくすることができる。
【0062】
−実施形態の変形例−
図4に示す上記実施形態の変形例は、上記実施形態とは違い、上記吐出ポート(1)の内周面が、上記シリンダ(32)の内周面(35)に沿う曲面形状を含んでいる。
【0063】
この変形例では、上記吐出ポート(1)の内周面の一部を上記シリンダ(32)の内周面(35)に沿う曲面形状にすることにより、該内周面(35)が平面形状の場合に比べて、上記吐出ポート(1)を上記シリンダ(32)の内周面(35)へ近づけることができる。これにより、上記吐出ポート(1)の開口面積をさらに大きくすることができ、上記圧縮室(36a)から上記吐出ポート(1)へ流入する流体の流動抵抗をより一層小さくすることができる。
【0064】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としても
よい。
【0065】
上記実施形態では、上記吐出ポート(1)が略長円形状であったが、これに限定されず、例えば、楕円形状であってもよい。この場合でも、本発明と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。