特許第5685941号(P5685941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5685941-CaSRアゴニスト 図000037
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5685941
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】CaSRアゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/04 20060101AFI20150226BHJP
   C07C 309/51 20060101ALI20150226BHJP
   C07F 9/40 20060101ALI20150226BHJP
   C07F 9/38 20060101ALI20150226BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20150226BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20150226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150226BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20150226BHJP
   A61K 31/27 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   C07C237/04 CCSP
   C07C237/04 Z
   C07C309/51
   C07F9/40 C
   C07F9/38 C
   A61K31/198
   A61K31/662
   A61P43/00 111
   A61P1/12
   A61K31/27
【請求項の数】6
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2010-531940(P2010-531940)
(86)(22)【出願日】2009年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2009067342
(87)【国際公開番号】WO2010038895
(87)【国際公開日】20100408
【審査請求日】2012年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2008-258003(P2008-258003)
(32)【優先日】2008年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】杉木 正之
(72)【発明者】
【氏名】岡松 亨
(72)【発明者】
【氏名】朝里 さやか
(72)【発明者】
【氏名】河戸 弥生
(72)【発明者】
【氏名】畑中 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】矢野 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】関 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】宮村 直宏
(72)【発明者】
【氏名】長崎 浩明
(72)【発明者】
【氏名】江藤 譲
(72)【発明者】
【氏名】安田 礼子
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−164499(JP,A)
【文献】 特開昭56−158745(JP,A)
【文献】 特開昭53−111793(JP,A)
【文献】 特開平06−172287(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/055393(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/055388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 237/04
C07C 309/51
C07F 9/38
C07F 9/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
(式中、R1及びR3〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、-NH2、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基ら選択される基であり、
2は、ニトロ基、スルホン酸基、又は基
【化2】
若しくは
【化3】
から選択される基であり、かつ
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基であり、
Xはメチレン基又は酸素原子である)
で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩、
但し、以下の(i)〜(iv)の化合物を除く:
(i)Xがメチレン基であり、R2がスルホン酸基であり、かつR1及びR3〜R6がいずれも水素原子である化合物、
(ii)Xがメチレン基であり、R2がスルホン酸基であり、R1及びR4〜R6がいずれも水素原子であり、かつR3がニトロ基である化合物、
(iii)Xがメチレン基であり、R2がニトロ基であり、かつR1及びR3〜R6がいずれも水素原子である化合物、並びに
(iv)Xがメチレン基であり、R2が、基
【化4】
であり、R1及びR4〜R6がいずれも水素原子であり、R3が水素原子、ニトロ基、ヒドロキシル基又は-NH2であり、かつR7が水素原子又はメチル基である化合物。
【請求項2】
1及びR3〜R5が、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、-NH2、置換基を有していても良い炭素数1〜3のアルキル基又は置換基を有していても良い炭素数1〜3のアルコキシ基ら選択される基であり、
2が、ニトロ基、スルホン酸基、又は基
【化5】
若しくは
【化6】
から選択される基であり、かつ
6及びR7が、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である、
請求項1記載のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項3】
1及びR3〜R5が、それぞれ独立して、水素原子、クロロ基若しくはブロモ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、-NH2、メチル基又はメトキシ基から選択される基であり、
2が、ニトロ基、スルホン酸基又は基
【化7】
若しくは
【化8】
から選択される基であり、
6が、水素原子又はメチル基であり、
7が水素原子であり、かつ、
Xがメチレン基である、
請求項1又は2記載のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項4】
2がスルホン酸基、カルボン酸基又はホスホン酸基である、請求項1〜3のいずれか1項記載のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩。
【請求項5】
下記の化合物から選択される、請求項1記載のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩。
N5-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-3-スルホフェニル)-L-グルタミン(化合物No.7);
N5-(2-ヒドロキシ-3-スルホフェニル)-L-グルタミン(化合物No.10);
3-(L-γ-グルタミルアミノ)-2-ヒドロキシ安息香酸(化合物No.15);
3-ブロモ-5-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸(化合物No.16);
N5-(3-ホスホノフェニル)-L-グルタミン(化合物No.18);
N5-(3-クロロ-4-メチル-5-スルホフェニル)-L-グルタミン(化合物No.21);
N5-(3-クロロ-2-メチル-5-スルホフェニル)-L-グルタミン(化合物No.22);
2,5-ジクロロ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸(化合物No.24);
5-クロロ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸(化合物No.32);
O-{[(3-クロロ-4-メチル-5-スルホフェニル)アミノ]カルボニル}-L-セリン(化合物No.33);
3-({[(2S)-2-アミノ-2-カルボキシエトキシカルボニル}アミノ)-5-クロロ-2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸(化合物No.34);
O-{[(3-クロロ-2-メチル-5-スルホフェニル)アミノ]カルボニル}-L-セリン(化合物No.35);又は
N5-(2-クロロ-5-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.37)
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項記載のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CaSRアゴニスト活性を有するグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩、並びに当該誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分として含有するCaSRアゴニスト剤、医薬組成物、下痢の予防若しくは治療剤及びコク味付与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムセンシング受容体(Calcium Sensing Receptor:CaSR)は、カルシウム受容体とも呼ばれるが、当該受容体シグナルは種々の生体内機能を調節し、CaSRアゴニスト活性を有する物質は種々の疾患の治療若しくは予防に有用である可能性、及びコク味付与剤として有用である可能性が存在する。特許文献1には、コク味付与物質のスクリーニング方法、及び当該方法により得られたコク味付与物質を含有するコク味付与剤が開示されている。そして、種々の低分子ペプチドにCaSRアゴニスト活性があることが見出され、これにより、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味で表される5基本味だけでは表せず、厚み・ひろがり・持続性・まとまりなど上記基本味の周辺の味をも増強した味覚である「コク味」を付与することのできるコク味付与剤が提供できたことが記載されている。
【0003】
一方、γ−グルタミルアニリド誘導体は、γ−グルタミルトランスフェラーゼの基質となることから、酵素活性測定に用いることができることが古くから知られている(非特許文献1、特許文献2)。しかしながら、本発明の特徴である「カルシウムセンシング受容体(CaSR)若しくはG蛋白共役受容体」、「コク味」、「下痢(症)若しくは副甲状腺機能亢進症」との関係について記載する文献はない。本発明において、特に好ましい3-スルホン酸、3-カルボン酸、3-ニトロ誘導体の内の一部の公知化合物においても、それらの用途の大部分は、γ−グルタミルトランスフェラーゼの酵素活性測定における基質としての用途であり、抗菌剤や抗アレルギー剤としての用途(非特許文献2、特許文献3)や、質量分析用の分析試薬としての用途(非特許文献3)が、他の用途として僅かに知られるのみである。また、CaSRを活性化する化合物としては、Cinacalcetや類縁の合成低分子化合物の他、グルタチオンをはじめとするγ−グルタミルペプチド誘導体が知られているが(特許文献4、非特許文献4)、本発明のグルタミン酸誘導体とは構造的に異なる化合物である。
【0004】
従って、CaSRアゴニスト活性を有するより多くのバリエーション化合物を探索してより優れたコク味付与剤を提供すると共に、CaSRアゴニスト剤、医薬組成物、及び下痢の予防若しくは治療剤を提供することが求められている。
【0005】
【特許文献1】WO2007/055393A1公報
【特許文献2】US特許第4087331号公報
【特許文献3】特開平06−172287号公報
【特許文献4】WO2007/055388A2公報
【非特許文献1】Clinical Chemistry, 22, 2051 (1976)
【非特許文献2】Journal of Medicinal Chemistry (1965), 8(3), 398-400
【非特許文献3】Analytica Chimica Acta (2004), 519(2), 181-187
【非特許文献4】Journal of Biological Chemistry (2006), 281(13), 8864-70
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、CaSRアゴニスト活性を有する多くのバリエーション化合物を探索し、当該化合物を含有する、CaSRアゴニスト剤、医薬組成物、下痢の予防若しくは治療剤及びコク味付与剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、CaSRアゴニスト活性を有する化合物を探索した結果、驚くべきことに、種々のγ−グルタミン酸誘導体ならびにその類縁体(以下、「グルタミン酸誘導体」という。)が優れたCaSRアゴニスト活性を有することを見出した。さらに、見出されたCaSRアゴニスト活性を有するグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩が、有用なCaSRアゴニスト剤、医薬組成物、下痢の予防若しくは治療剤またはコク味付与剤となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を提供する;
下記一般式(I):
【化1】
【0009】
(式中、R1及びR3〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のモノ若しくはジアルキルアミノ基から選択される基であり、
2は、ニトロ基、スルホン酸基、又は基
【化2】
【0010】
若しくは
【化3】
【0011】
から選択される基であり、かつ
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基であり、
Xはメチレン基又は酸素原子である)
で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩、
但し、以下の(i)〜(iv)の化合物を除く:
(i)Xがメチレン基であり、R2がスルホン酸基であり、かつR1及びR3〜R6がいずれも水素原子である化合物、
(ii)Xがメチレン基であり、R2がスルホン酸基であり、R1及びR4〜R6がいずれも水素原子であり、かつR3がニトロ基である化合物、
(iii)Xがメチレン基であり、R2がニトロ基であり、かつR1及びR3〜R6がいずれも水素原子である化合物、並びに
(iv)Xがメチレン基であり、R2が、基
【化4】
【0012】
であり、R1及びR4〜R6がいずれも水素原子であり、R3が水素原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ジエチルアミノ基又はジ-n-プロピルアミノ基であり、かつR7が水素原子又はメチル基である化合物。
【0013】
また、本発明は、以下のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩をも提供する。
下記一般式(I):
【化5】
(式中、R2、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のモノ若しくはジアルキルアミノ基から選択される基であり、
1及びR3のいずれかはスルホン酸基であり、かつ、他方は水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のモノ若しくはジアルキルアミノ基から選択される基であり、
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基であり、
Xはメチレン基又は酸素原子である)
グルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩、
但し、以下の化合物を除く:
Xがメチレン基であり、R1がスルホン酸基であり、R2〜R6がいずれも水素原子である化合物。
【0014】
また、本発明は、以下のグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩をも提供する;
下記一般式(I):
【化6】
(式中、R1及びR3〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のモノ若しくはジアルキルアミノ基から選択される基であり、
2は、ニトロ基、スルホン酸基、又は基
【化7】
若しくは
【化8】
から選択される基であり、かつ
6は、ヒドロキシル基であり、
7は、水素原子又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基であり、
Xはメチレン基又は酸素原子である)
で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩。
【0015】
また、本発明は、下記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物を提供する。:
【化9】
(式中、R1及びR3〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のモノ若しくはジアルキルアミノ基から選択される基であり、
2は、ニトロ基、スルホン酸基、又は基
【化10】
若しくは
【化11】
から選択される基であり、かつ
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基であり、
Xはメチレン基又は酸素原子である)
グルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩、
但し、以下の化合物を除く:
Xがメチレン基であり、R2が、基
【化12】
であり、R1及びR3〜R6がいずれも水素原子であり、かつR7が水素原子又はメチル基である化合物)
【0016】
また、本発明は、下記一般式(I):
【化13】
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のモノ若しくはジアルキルアミノ基、スルホン酸基、又は基
【化14】
若しくは
【化15】
から選択される基であり、ただし、R1〜R3のいずれかは、ニトロ基、スルホン酸基、又は基
【化16】
若しくは
【化17】
から選択される基であり、かつ
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基であり、
Xはメチレン基又は酸素原子である)
で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有するCaSRアゴニスト剤、コク味付与剤又は下痢治療若しくは予防剤を提供する。
また、本発明は、下記一般式(I):
【化18】
【0017】
(式中、R1及びR3〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のモノ若しくはジアルキルアミノ基から選択される基であり、
2は、ニトロ基、スルホン酸基、又は基
【化19】
【0018】
若しくは
【化20】
【0019】
から選択される基であり、かつ
6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していても良い炭素数1〜6のアルキル基であり、
Xはメチレン基又は酸素原子である)
で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を含有するCaSRアゴニスト剤、コク味付与剤又は下痢治療若しくは予防剤を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れたCaSRアゴニスト活性を有する種々の化合物を提供すると共に、それらの化合物を含有するCaSRアゴニスト剤、医薬組成物、下痢の予防若しくは治療剤及びコク味付与剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の上記一般式(I)において、本発明のグルタミン酸誘導体としては、R1及びR3〜R5は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜3のアルコキシ基又は置換基を有していても良い炭素数1〜3のモノ若しくはジアルキルアミノ基から選択される基である。より好ましくは、R1及びR3〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、クロロ基若しくはブロモ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、メチル基又はメトキシ基から選択される基である。
【0022】
本発明の上記一般式(I)中、R2は、好ましくは、スルホン酸基、カルボン酸基又はホスホン酸基である。
あるいは、R1またはR3のうち、いずれか1つの基は、スルホン酸基であってもよく、その際、R4はハロゲノ基であることも好ましい。
【0023】
本発明の上記一般式(I)中、R6及びR7は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。より好ましくは、R6は、水素原子又はメチル基であり、R7は、水素原子である。また、R6については、ヒドロキシル基も好ましい。
本発明の上記一般式(I)中、Xは、好ましくは、メチレン基である。
【0024】
本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩としては、R1〜R3のいずれかは、スルホン酸基、カルボン酸基又はホスホン酸基であることが好ましい。中でも、R2は、スルホン酸基、カルボン酸基又はホスホン酸基であることが好ましく、特にスルホン酸基が好ましい。
特に、上記一般式(I)中、R2がスルホン酸基である場合には、R1が水素原子又はヒドロキシル基であり、R3が水素原子、クロロ基、ヒドロキシル基、メチル基又はメトキシ基であり、R4が水素原子、クロロ基又はニトロ基であり、R5が水素原子、ヒドロキシル基、メチル基又はメトキシ基であり、R6が水素原子又はメチル基であり、Xがメチレン基又は酸素原子であるものが好ましい。上記一般式(I)中、R2がスルホン酸基である場合には、R1が水素原子又はヒドロキシル基であり、R3が水素原子、クロロ基又はメチル基であり、R4が水素原子又はクロロ基であり、R5が水素原子、ヒドロキシル基又はメチル基であり、R6が水素原子であり、Xがメチレン基であるものが最も好ましい。
【0025】
本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩としては、特に、上記一般式(I)中、R2がカルボン酸基である場合には、R1が水素原子又はヒドロキシル基であり、R3が水素原子であり、R4が水素原子又はブロモ基であり、R5が水素原子であり、R6が水素原子であり、Xがメチレン基であるものが最も好ましい。
本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩としては、特に、上記一般式(I)中、R2が−PO(OCH3)OH基又は−PO(OH)2基で有る場合には、R1が水素原子であり、R3が水素原子であり、R4が水素原子であり、R5が水素原子であり、R6が水素原子であり、Xがメチレン基であるものが最も好ましい。
本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩としては、特に、上記一般式(I)中、R2がニトロ基ある場合には、R1が水素原子であり、R3が水素原子であり、R4が水素原子であり、R5が水素原子であり、R6が水素原子であり、Xがメチレン基であるものが最も好ましい。
また、本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体としては、特に、実施例に記載の化合物が好ましく、中でも、化合物1、7、10、21、22、24、32、33、34、35及び37が好ましい。特に、化合物7、10、21、22、24、32、33、34、35及び37が好ましい。
【0026】
上記一般式(I)中に存在するアルキル基、アルコキシ基及びモノ若しくはジアルキルアミノ基は、各々置換基を有していてもよいが、置換基としては、ハロゲン、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、カルボキシル基及びスルホン酸基が挙げられるが、これらに限定されない。また、当該置換基としてのアルコキシ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基は、各々、低級アルコキシ基、低級モノ若しくはジアルキルアミノ基であることが好ましい。ここで、低級とは、置換基全体の炭素数が1〜3のものを意味する。
【0027】
本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩は、市販品を用いることも可能である。また、(1)化学的に合成する方法、又は(2)酵素的な反応により合成する方法等の公知手法を適宜用いることによって取得することができる。特に、本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩は、本明細書の実施例で示されるような化学的手法により合成する方法が簡便である。化学的に合成する方法としては、液相合成法や固相合成法が挙げられる。
合成したグルタミン酸誘導体は通常の手段、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーや再結晶などの手段によって精製することができる。このような化学合成法、およびそれに続く精製はこの技術分野においてよく知られたものである。
【0028】
本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体は、その医薬的に許容しうる塩の形態であってもよい。本発明の上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体の医薬的に許容しうる塩としては、可食性の塩が含まれ、例えば、該式中のカルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基に対しては、アンモニウム塩、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びジシクロヘキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン及びリジン等の塩基性アミノ酸との塩を挙げることができる。該式中に塩基性基が存在する場合の該塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸及び臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸及びリンゴ酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩を挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「CaSR」とは、カルシウムセンシング受容体(Calcium Sensing Receptor)を意味し、7回膜貫通型受容体のクラスCに属するものであり、カルシウム受容体とも呼ばれる。本明細書において「CaSRアゴニスト」とは、上記CaSRに結合し、CaSRを活性化するものをいい、「CaSRアゴニスト剤」とは上記CaSRに結合し、CaSRを活性化する剤もしくは物質を意味する。また、本明細書において、「CaSRを活性化する」とは、CaSRにリガンドが結合し、グアニンヌクレオチド結合タンパク質を活性化して、シグナルを伝達することを意味する。また、CaSRに結合し、CaSRを活性化する性質を「CaSRアゴニスト活性」という。
【0030】
CaSRアゴニスト活性を有する化合物をスクリーニングする方法を具体的に示すが、これらのステップに限定されるものではない。
1)CaSR活性を測定するためのCaSR活性測定系に被検物質を添加して、CaSR活性を測定する。
2)被検物質を添加したときのCaSR活性と、被検物質を添加しなかったときのCaSR活性を比較する。
3)被検物質を添加したときにCaSRアゴニスト活性を示す被検物質を選択する。
【0031】
CaSR活性の測定は、例えば、CaSRを発現する細胞を用いた測定系を用いて行うことができる。上記細胞は、CaSRを内在的に発現する細胞であっても、外来的にCaSR遺伝子を導入した組み換え細胞であってもよい。上記CaSR活性測定系は、上記CaSRを発現する細胞に、CaSRに特異的な細胞外リガンド(活性化物質)を加えたときに、活性化物質とCaSRとの結合(反応)を検出することができるか、又は、活性化物質とCaSRとの結合(反応)に応答して細胞内に検出可能なシグナルを伝達するものであれば、特に制限なく用いることができる。被検物質との反応によりCaSR活性が検出された場合、当該被検物質はCaSR刺激活性を有すると判定される。
【0032】
上記CaSRとしては、GenBank Accession No. NM_000388で登録されているヒトCaSR遺伝子によってコードされるヒトCaSRが好ましく例示できる。尚、CaSRは、上記配列の遺伝子によってコードされるタンパク質に制限されず、CaSR機能を有するタンパク質をコードする限りにおいて、上記配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の相同性を有する遺伝子によってコードされるタンパク質であってもよい。なお、CaSR機能はこれらの遺伝子を細胞に発現させ、カルシウム添加時の電流の変化や細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定することによって調べることができる。
上記CaSRは、その由来は特に制限されず、上記ヒトのCaSRのみならず、マウス、ラット、イヌなどを含むあらゆる動物由来のCaSRが挙げられる。
【0033】
上述の如く、CaSR活性は、CaSR又はその断片を発現した生きた細胞、CaSR又はその断片を発現した細胞膜、CaSR又はその断片のタンパク質を含むインビトロの系などを利用して確認することができる。
以下に生きた細胞を用いた一例を示すが、これに限定されるものではない。
CaSRは、アフリカツメガエル卵母細胞やハムスター卵巣細胞やヒト胎児腎臓細胞等の培養細胞に発現させる。これは外来遺伝子を保持するプラスミドにCaSR遺伝子をクリーニングしたものを、プラスミドの状態もしくはそれを鋳型にしたcRNAを導入することで可能となる。反応の検出には電気生理学的手法や細胞内カルシウム上昇の蛍光指示試薬を用いることができる。
CaSRの発現は、初めにカルシウムもしくは特異的活性化剤による応答で確認する。
5mM程度の濃度のカルシウムに対して、細胞内電流が観察された卵母細胞もしくは蛍光指示試薬の蛍光が観察された培養細胞を使用する。カルシウムの濃度を変えて濃度依存性を測定する。次に、被検物質を1μM〜1mM程度に調製し、卵母細胞もしくは培養細胞に添加し、上記被検物質存在下でのCaSR活性を測定することで、上記被検物質のCaSRアゴニスト活性を測定する。
【0034】
本発明のCaSRアゴニスト剤は、上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体に包含されるあらゆるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を単独で又は任意の2種又は3種以上を組み合わせて含有してもよく、さらに、医薬的、生理学的、実験的、食品的に許容しうるあらゆる固体又は液体の担体、添加物等を含有させてもよい。
【0035】
上記担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ゼラチン、アルブミン、アミノ酸、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、本発明のCaSRアゴニスト剤に、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0036】
上記添加物としては、目的に応じて当該目的に対して通常用いられるものであれば特に制限されないが、具体的には、例えば、香料、糖類、甘味料、食物繊維類、ビタミン類、グルタミン酸ナトリウム(MSG)などのアミノ酸類、イノシン一リン酸(IMP)などの核酸類、塩化ナトリウムなどの無機塩類、水などが挙げられる。
本発明のCaSRアゴニスト剤は、乾燥粉末、ペースト、溶液などの物性に制限なしにあらゆる形態で用いることができる。また、本発明のCaSRアゴニスト剤は、医薬、医薬部外品、食品、試薬等に用いることができる。
【0037】
本発明のCaSRアゴニスト剤の使用量は、それぞれの目的に応じて適宜調節されるが、例えば、経口投与で対象に投与される場合には、式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩の合計量として、1回の投与において体重1kgあたり、0.01g〜10gが好ましく、体重1kgあたり、0.1g〜1gがより好ましい。
投与回数は特に制限されず、1日あたり1回〜数回投与することができる。
また、本発明のCaSRアゴニスト剤を、食品又は試薬に用いる場合には、1処方あたり0.000001g〜10gが好ましく、1処方あたり0.00001g〜1gがより好ましい。
【0038】
本発明のCaSRアゴニスト剤中の式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩の含有量は、上記使用量に適したものであれば特に制限されず、好ましくは、乾燥重量あたり0.000001質量%〜99.9999質量%、より好ましくは、0.00001質量%〜99.999質量%、特に好ましくは、0.0001質量%〜99.99質量%である。
【0039】
本発明のCaSRアゴニスト剤は、さらに、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質を1種又は2種以上含むものであってもよい。
上記のCaSRアゴニスト活性を有する既知の物質としては、カルシウム及びガドリニウム等のカチオン、ポリアルギニン、ポリリジン等の塩基性ペプチド、プトレッシン、スペルミン、スペルミジン等のポリアミン、プロタミン等のタンパク質、フェニルアラニン等のアミノ酸、グルタチオン等のペプチド、シナカルセットの類縁化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明のCaSRアゴニスト剤は、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質以外にも、その目的に応じて、あらゆる既知の物質を含むものであってもよい。
【0040】
本明細書において「コク味」とは、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味で表される5基本味では表せない味を意味し、基本味だけではなく、厚み・ひろがり・持続性・まとまりなど基本味の周辺の味をも増強した味をいう。また、「コク味付与剤」とは、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味で表される5基本味の少なくとも1つの味の増強と、それに伴う厚み・ひろがり・持続性・まとまりなど基本味の周辺の味を付与することができる剤又は物質をいう。従って、本発明のコク味付与剤は、味質改善を伴う、甘味増強剤、塩味増強剤、酸味増強剤、苦味増強剤またはうま味増強剤としても使用することができる。
コク味付与効果は、本発明の実施例に記載されるようなヒトによる味覚試験などの方法によって確認することができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明のコク味付与剤は、上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体に包含されるあらゆるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を単独で又は任意の2種又は3種以上を組み合わせて含有してもよく、さらにその他の各種添加物等を任意に添加してもよい。
【0042】
上記添加物としては、調味料、食品、飲料等の飲食物に添加配合できることが知られているものであれば特に限定されることはなく用いることができる。そのような添加物としては、例えば、香料、糖類、甘味料、食物繊維類、ビタミン類、グルタミン酸ナトリウム(MSG)などのアミノ酸類、イノシン一リン酸(IMP)などの核酸類、塩化ナトリウムなどの無機塩類、水などが挙げられる。
【0043】
また、本発明は、上記式(I)で表されるグルタミン酸誘導体を含有する飲食品をも提供する。本発明の上記式(I)で表されるグルタミン酸誘導体若しくはその医薬的に許容しうる塩又はコク味付与剤の飲食品に対する使用量は、コク味の付与に有効な量であればよく、用途に応じて適宜調節されうるが、例えば、調味料、食品又は飲料の場合、本発明の上記式(I)で表されるグルタミン酸誘導体若しくはその医薬的に許容しうる塩又はコク味付与剤の合計量として、調味料、食品又は飲料中に、1質量ppb〜99.9質量%であり、好ましくは10質量ppb〜99.9質量%である。
従って、本発明の上記式(I)で表されるグルタミン酸誘導体若しくはその医薬的に許容しうる塩又はコク味付与剤の1種または2種以上を、飲食品に対して、1質量ppb〜99.9質量%、好ましくは、10質量ppb〜99.9質量%含有させるように添加することで、コク味が付与された飲食品を製造することができる。
【0044】
また、本発明の上記式(I)で表されるグルタミン酸誘導体若しくはその医薬的に許容しうる塩又はコク味付与剤の1種または2種以上を、1質量ppb〜99.9質量%含有してなる上記コク味が付与された調味料を、飲食品に対して0.01〜10質量%、好ましくは、0.1〜10質量%含有させるように添加することでも、コク味が付与された飲食品を製造することができる。
【0045】
本発明のコク味付与剤は、さらに、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質を1種又は2種以上含むものであってもよい。
上記のCaSRアゴニスト活性を有する既知の物質としては、カルシウム及びガドリニウム等のカチオン、ポリアルギニン、ポリリジン等の塩基性ペプチド、プトレッシン、スペルミン、スペルミジン等のポリアミン、プロタミン等のタンパク質、フェニルアラニン等のアミノ酸、グルタチオン等のペプチド、シナカルセットの類縁化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明のコク味付与剤は、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質以外にも、その目的に応じて、あらゆる既知の物質を含むものであってもよい。
【0046】
本発明の上記式(I)で表されるグルタミン酸誘導体若しくはその医薬的に許容しうる塩又はコク味付与剤を、飲食品に添加する際の形態としては、乾燥粉末、ペースト、溶液などの物性に制限はない。
【0047】
本発明の医薬組成物は、上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体に包含されるあらゆるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を単独で又は任意の2種又は3種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0048】
本発明の医薬組成物の使用量は、それぞれの目的に応じて適宜調節されるが、例えば、経口投与で対象に投与される場合には、式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩の合計量として、1回の投与において体重1kgあたり、0.01g〜10gが好ましく、体重1kgあたり、0.1g〜1gがより好ましい。投与回数は特に制限されず、1日あたり1回〜数回投与することができる。
また、本発明の医薬組成物を、食品又は試薬に用いる場合には、1処方あたり0.001g〜10gが好ましく、1処方あたり0.01g〜1gがより好ましい。
【0049】
本発明の医薬組成物の式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩の含有量は、上記使用量に適したものであれば特に制限されず、好ましくは、乾燥重量あたり0.000001質量%〜99.9999質量%、より好ましくは、0.00001質量%〜99.999質量%、特に好ましくは、0.0001質量%〜99.99質量%である。
【0050】
本発明の医薬組成物は、さらに、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質を1種又は2種以上含むものであってもよい。
上記のCaSRアゴニスト活性を有する既知の物質としては、カルシウム及びガドリニウム等のカチオン、ポリアルギニン、ポリリジン等の塩基性ペプチド、プトレッシン、スペルミン、スペルミジン等のポリアミン、プロタミン等のタンパク質、フェニルアラニン等のアミノ酸、グルタチオン等のペプチド、シナカルセットの類縁化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明のCaSRアゴニスト剤は、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質以外にも、その目的に応じて、あらゆる既知の物質を含むものであってもよい。
【0051】
本発明の医薬組成物の適用方法としては、特に制限されず、経口投与あるいは注射等を利用したあらゆる侵襲的又は非侵襲的投与が利用可能であり、坐薬投与あるいは経皮投与を採用してもよい。有効成分を経口、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用担体と共に、慣用の医薬製剤の形態で投与することが出来る。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤の形態、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤の形態、凍結乾燥剤等の形態が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。さらに、本発明の医薬組成物には、医薬的、生理学的に許容しうるあらゆる固体又は液体の担体、添加物等を任意に添加してもよい。
【0052】
上記担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ゼラチン、アルブミン、アミノ酸、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、本発明の医薬組成物に、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0053】
本明細書において、下痢とは、過敏性腸症候群、機能性下痢、炎症性腸疾患、憩室炎、細菌性下痢、消化不良等あらゆる種類の下痢を包含する。
本発明の下痢治療若しくは予防剤は上記一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体に包含されるあらゆるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩を単独で又は任意の2種又は3種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0054】
本発明の下痢治療若しくは予防剤の使用量は、それぞれの目的に応じて適宜調節されるが、例えば、経口投与で対象に投与される場合には、式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩の合計量として、1回の投与において体重1kgあたり、0.01g〜10gが好ましく、体重1kgあたり、0.1g〜1gがより好ましい。投与回数は特に制限されず、1日あたり1回〜数回投与することができる。
また、本発明の下痢治療若しくは予防剤を、食品又は試薬に用いる場合には、1処方あたり0.001g〜10gが好ましく、1処方あたり0.01g〜1gがより好ましい。
【0055】
本発明の下痢治療若しくは予防剤中の式(I)で表されるグルタミン酸誘導体又はその医薬的に許容しうる塩の含有量は、上記使用量に適したものであれば特に制限されず、好ましくは、乾燥重量あたり0.000001質量%〜99.9999質量%、より好ましくは、0.00001質量%〜99.999質量%、特に好ましくは、0.0001質量%〜99.99質量%である。
【0056】
本発明の下痢治療若しくは予防剤は、さらに、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質を1種又は2種以上含むものであってもよい。
上記のCaSRアゴニスト活性を有する既知の物質としては、カルシウム及びガドリニウム等のカチオン、ポリアルギニン、ポリリジン等の塩基性ペプチド、プトレッシン、スペルミン、スペルミジン等のポリアミン、プロタミン等のタンパク質、フェニルアラニン等のアミノ酸、グルタチオン等のペプチド、シナカルセットの類縁化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本発明のCaSRアゴニスト剤は、CaSRアゴニスト活性を有する既知の物質以外にも、その目的に応じて、あらゆる既知の物質を含むものであってもよい。
【0057】
本発明の下痢治療若しくは予防剤の適用方法としては、特に制限されず、経口投与あるいは注射等を利用したあらゆる侵襲的又は非侵襲的投与が利用可能であり、坐薬投与あるいは経皮投与を採用してもよい。有効成分を経口、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用担体と共に、慣用の医薬製剤の形態で投与することが出来る。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤の形態、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤の形態、凍結乾燥剤等の形態が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。さらに、本発明の下痢治療若しくは予防剤には、医薬的、生理学的に許容しうるあらゆる固体又は液体の担体、添加物等を任意に添加してもよい。
【0058】
上記担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ゼラチン、アルブミン、アミノ酸、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、本発明の下痢治療若しくは予防剤に、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0059】
本発明のCaSRアゴニスト剤、コク味付与剤、下痢治療若しくは予防剤は、また、それぞれの効果を有する飲食品あるいはサプリメントとして用いることもできる。例えば、容器や包装に下痢に対する治療効果や予防効果がある旨を表示した飲食品とすることができる。飲食品の形態としては特に制限されず、CaSRアゴニスト活性を有する化合物を配合すること以外は、通常の食品と同様の材料を用いて、同様の製法で製造することができる。食品としては、例えば、調味料;ジュース、牛乳等の飲料;菓子;ゼリー;健康食品;農産物加工品;牛乳、チーズ等の畜産物加工品;食品補助剤等が挙げられる。
【0060】
(一般式(I)で表されるグルタミン酸誘導体の代表的な合成法)
以下に本発明化合物の代表的な製造法を説明する。
なお、以下の製造法において、官能基の種類によっては、当該官能基を原料ないし中間体の段階で適当な保護基、すなわち容易に当該官能基に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。しかるのち、必要に応じて保護基を除去し、所望の化合物を得ることができる。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等を挙げることができ、それらの保護基としては例えば、アミノ基の保護基としてt-ブトキシカルボニル(Boc)やベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)など、カルボキシル基の保護基としてt−ブチル(tBu)やベンジル(BnまたはBzl)など、Protective Groups in Organic Synthesis 第3版(T.W.Green、P.G.M.Wuts著、JOHN WILLY & SONS,INC.発行)に記載の保護基等を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。保護基の導入および脱保護は当該参考書記載の方法を適時適応できる。例えば下記製造法1,2中に記したProt1, Prot2の様に記した官能基が保護基として用いられている事を示すが、これに限定されるものではない。
(製造法1)
【化21】
【0061】
製造法1は、化合物(II)と化合物(III)を用いて、カルボン酸とアミンの縮合反応により化合物(I)を得る反応である。
本反応は化合物(II)とアミン誘導体(III)とを当量或いは一方を過剰量用いて、縮合剤の存在下、常法に従って行えばよい。縮合剤としては、例えばN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC),1−エチル−3−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDCIまたはWSC)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU),カルボニルジイミダゾール(CDI)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)4−メチルモルホリニウム クロリド(DMTMM)、2−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HATU)等を好適に用いることができる。これら縮合剤は、カルボン酸に対して当量、或いは過剰量用いて行われる。溶媒としては、反応に関与しない溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジメトキシエタン(DME)、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)やこれらの混合溶媒などが用いることができるが、原料や縮合剤の種類などにより適宜選択するのが好ましい。トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基存在下で、あるいはこれら塩基を溶媒として反応させることで反応が円滑に進行する場合がある。前記反応は通常、冷却〜室温にて行うが、縮合反応の条件によっては加熱下で実施する方が好ましい場合がある。
【0062】
また、化合物(I)は、カルボン酸を活性誘導体に導いた後にアミンと縮合させる方法によっても製造できる。この場合、化合物(II)とアミン誘導体(III)とを当量或いは一方を過剰量用いて反応を行う。カルボン酸の活性誘導体としては、p−ニトロフェノール等のフェノール系化合物、または1−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)もしくは7−アザ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt)等のN−ヒドロシキアミン系の化合物と反応させて得られる活性エステル、炭酸モノアルキルエステル、有機酸と反応させて得られる混合酸無水物、塩化ジフェニルホスホリルおよびN−メチルモルホリンを反応させて得られるリン酸系混合酸無水物、エステルをヒドラジン及び亜硝酸アルキルと逐次反応させて得られる酸アジド、酸塩化物もしくは酸フッ化物等の酸ハロゲン化物、並びに対象型酸無水物等が挙げられる。
カルボン酸の活性誘導体を合成する際の活性化試薬は化合物(II)に対して当量又は、過剰量用いて実施される。この場合の反応条件以外でも、アミド結合を形成する反応であれば、いずれの反応も用いることができる。
【0063】
(製造法2)
【化22】

化合物(IIa)から中間体を得て、得られた中間体に化合物(III)を作用させることで化合物(I)を得る反応である。
本反応は化合物(IIa)と例えば当量あるいは小過剰のN,N−カルボニルジイミダゾールやホスゲン、トリホスゲン、クロロ蟻酸ベンジル、炭酸メチルなど試薬を、作用させることで中間体を得ることができる。この際反応に関与しない溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジメトキシエタン(DME)、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)やこれらの混合溶媒などを用いて、実施することが好ましい。また本反応は、通常冷却下〜室温にて行うが、試薬および化合物の種類により加熱する事が望ましい場合がある。得られた中間体は、必要に応じて好ましい溶媒へ置換する工程を経つつ、当量または中間体か化合物(III)のどちらかを小過剰になるように、反応を行う。本反応は、例えばトリエチルアミンの様な有機塩基、炭酸カリウムなどの無機塩基を共存させることも可能である。本反応は、通常冷却下〜100℃程度の加熱条件下で反応を行うが、化合物の種類によっては、更なる加熱条件が必要な場合がある。上記の方法以外にも、カルバマートを形成する反応であれば、いずれの反応も用いることができる。
【0064】
(製造法3)
このようにして製造された本発明化合物は、遊離のまま或いはその塩として、当該分野における慣用の化学操作、例えば、抽出、沈殿、分画クロマトグラフィー、分別結晶化、再結晶等により単離、精製することができる。また、当該化合物の塩は、遊離の本発明化合物を通常の造塩反応に付すことにより製造できる。
また、本発明化合物が不斉炭素を有する場合には光学異性体が存在する。これら光学異性体は、光学活性な酸もしくは塩基とのジアステレオマー塩に導いた後、分別結晶化する手法、カラムクロマトグラフィー等の常法により光学分割する手法、或いは光学活性な原料化合物を用いて合成する手法等により製造することができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本明細書において、常法とは、分液操作、乾燥、濾過、濃縮に代表される化学操作として一般的に用いられる手法を言う。
本明細書において、精製工程Aとは、常法を用いて得られた粗製物をオクタドデシル基化学結合型シリカゲル(ODS)を充填剤とする逆相高速液体クロマトグラフィーに付し、トリフルオロ酢酸を0.1%含有する(v/v)、水とアセトニトリルの混合溶液で溶出し、目的のフラクションを濃縮、凍結乾燥する方法をいう。
以下に、表1に示す代表的な本発明の化合物の合成について、実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明の化合物はこれらの実施例に限定されるものではない。
【表1】
【0066】
実施例I
(合成例1) N5-(3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.1)
Boc-Glu-OtBu(75mg, 0.247mmol)、HATU(112mg, 0.296mmol)、HOAt(41mg, 0.296mmol)をDMF 1 mlに溶解し、トリエチルアミン(52 μl)を加え、室温で10分撹拌した。そこへ、3-スルホアニリン(43mg, 0.247mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて精製を行い、得られた中間体をトリフルオロ酢酸2 mlに溶解し、3時間室温で撹拌した後、溶媒を留去した。生成物を精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量 30.8mg(0.10mmol) 収率 41%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.89 (s, 1H), 7.67-7.62 (m, 2H), 7.58-7.53 (m,1H), 3.99 (t, 1H, J=6.4Hz), 2.73-2.66 (m, 2H), 2.33-2.25 (m, 2H)
ESI(m/z):303[M+H]+,301[M-H]-
【0067】
(合成例2) N5-(4-メトキシ-3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.2)
合成例1の3−スルホアニリンの代わりに、p-アニシジン−3−スルホン酸を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量24.7mg 収率23%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.96 (s, 1H), 7.53 (d, 1H), 7.04 (d, 1H), 3.98 (t, 1H), 3.78 (s, 3H), 2.63-2.52 (m, 2H), 2.30-2.05 (m, 2H)
ESI(m/z):333[M+H]+
【0068】
(合成例3) N5-(2-メトキシ-5-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.3)
合成例1の3−スルホアニリンの代わりに、o−アニシジン−5−スルホン酸を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量75.7mg 収率69%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.65 (s, 1H), 7.45 (d, 1H), 7.04 (d, 1H), 3.96 (t, 1H), 3.79 (s, 3H), 2.80-2.50 (m, 2H), 2.25-2.10 (m, 2H)
ESI(m/z):333[M+H]+
【0069】
(合成例4) N5-(2,4-ジメチル-5-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.4)
合成例1の3−スルホアニリンの代わりに、2,4−ジメチルアニリン−5−スルホン酸ナトリウム塩を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量70.3mg 収率64%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.55 (s, 1H), 7.17 (s, 1H), 3.97 (t, 1H), 2.67-2.55 (m, 2H), 2.43 (s, 3H), 2.30-2.15 (m, 2H),2.08 (s, 3H)
ESI(m/z):331[M+H]+
【0070】
(合成例5) N5-(4-メチル-3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.5)
合成例1の3−スルホアニリンの代わりに、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量79.3mg 収率76%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.76 (s, 1H), 7.34 (d, 1H), 7.24 (d, 1H), 3.93 (t, 1H), 2.60-2.45 (m, 2H), 2.44 (s, 3H), 2.30-2.00 (m, 2H)
ESI(m/z):317[M+H]+
【0071】
(合成例6) N5-(2-ヒドロキシ-3-ニトロ-5-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.6)
合成例1の3−スルホアニリンの代わりに、3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−ニトロベンゼンスルホン酸を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量73.8mg 収率62%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 8.37 (s, 1H), 8.24 (s, 1H), 3.94 (t, 1H), 2.64-2.70 (m, 2H), 2.09-2.23 (m, 2H)
ESI(m/z):364[M+H]+
【0072】
(合成例7) N5-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.7)
Boc-Glu-OtBu(100mg, 0.33mmol)、HOBt1水和物(65.6mg, 0.43mmol)をDMF 2mlに溶解し、トリエチルアミン(0.137ml)を加えた。0℃に冷却した後、ジイソプロピルカルボジイミド(66.4μl, 0.43mmol)、2−アミノ−4−クロロフェノール−6−スルホン酸(73.7mg、0.33mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて精製し、得られた中間体をTFA 2mlに溶解し、室温にて2時間撹拌した。塩化メチレン2mlを加え、析出物を濾取することで、表題化合物を得た。
収量 16.8mg 収率 14.4%
1H-NMR (DMSO-d6, 300 MHz):δ 11.07 (s, 1H), 9.39 (s, 1H), 8.20-8.40(br, 2H), 8.02 (s, 1H), 7.14 (s, 1H), 3.95 (t, 1H, J=6.4Hz), 2.64 (m, 2H), 2.07 (m, 2H)
ESI(m/z):353 [M+H]+
【0073】
(合成例8) N5-(2-ヒドロキシ-5-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.8)
合成例7の2−アミノ−4−クロロフェノール−6−スルホン酸の代わりに、2-アミノフェノール4−スルホン酸を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量 31.5mg 収率 30%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.77 (s, 1H), 7.44 (d, 1H), 6.94 (d, 1H), 4.00-3.85 (m, 1H), 2.65-2.57 (m, 2H), 2.19-2.10 (m, 2H)
ESI(m/z): 319 [M+H]+
【0074】
(合成例9) N5-(4-クロロ-3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.9)
合成例7の2−アミノ−4−クロロフェノール−6−スルホン酸の代わりに、4−クロロアニリン−3−スルホン酸(68.4mg)を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量 47.8mg 収率 43%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.91 (s, 1H), 7.50-7.45 (m, 2H), 4.00-3.85 (m, 1H), 2.60-2.40 (m, 1H), 2.25-2.15 (m, 2H)
ESI(m/z):337 [M+H]+
【0075】
(合成例10) N5-(2-ヒドロキシ-3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.10)
Z-Glu-OBn(371mg, 1mmol)を塩化メチレン(1ml)に溶解し、CDI(180mg, 1.1mmol)を加えて30分室温で撹拌した。そこへ 2−アミノ−4−クロロフェノール−6−スルホン酸(223mg, 1mmol)、THF (1ml)を加え、終夜室温で撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて精製を行った。得られた中間体を、メタノール−水混合溶媒に溶解し、触媒量のPd/Cを加え、水素雰囲気下、終夜室温で撹拌した。触媒を濾別した後、溶媒を留去し、精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量120 mg(0.40mmol) 収率40%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.67 (d, 1H, J=7.9Hz), 7.62 (d, 1H, J=8.2Hz), 7.07 (dd, 1H, J=7.9Hz, 8.2Hz), 3.92-3.97 (m, 1H), 2.59-2.64 (m, 2H), 2.25-2.20 (m, 2H)
ESI(m/z):303[M+H]+
【0076】
(合成例11) N5-(4-ヒドロキシ-3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.11)
Boc-Glu-OtBu(100mg, 0.33mmol)を塩化メチレン(1ml)およびTHF(1ml)に溶解し、CDI(65mg, 1.1mmol)を加えて30分室温で撹拌した。そこへ5−アミノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(77mg, 0.33mmol)を加え、終夜室温で撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて精製を行った。得られた中間体を、TFA 2mlに溶解し,3時間室温で撹拌した後、溶媒を留去し、精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量2mg
ESI(m/z):319[M+H]+
【0077】
(合成例12) N5-メチル-N5-(3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.12)工程1 3- [(2-ニトロフェニル)スルホニル]アミノベンゼンスルホン酸の合成
3-アミノベンゼンスルホン酸(346.3mg, 2mmol)を塩化メチレン2.5mlに件濁させ、0℃に冷却した後、2−ニトロフェニルベンゼンスルホニルクロリド(443.2mg, 2mmol)、N,Nジイソプロピルエチルアミン(697μl, 4mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、溶媒を留去し、精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量 460mg(1.29mmol) 収率 64 %
1H-NMR (DMSO-d6, 300MHz):δ 7.02-7.83 (m, 8H)
ESI(m/z):359 [M+H]+
工程2 N5-メチル-N5-(3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成
工程1で得られた化合物 (230mg, 0.65mmol)に炭酸カリウム(177mg, 1,28mmol)、DMF(2ml)、MeI(60μl)を加え40℃で6時間撹拌した。炭酸カリウム(44.3mg)、MeI(40μL)を追加し、終夜撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用い、3-{メチル[(2-ニトロフェニル)スルホニル]アミノ}ベンゼンスルホン酸の粗生成物(160mg)を得た。この粗生成物(144mg, 0.39mml)をDMF(3ml)に溶解し、炭酸セシウム(126mg, 0.39mmol)、チオフェノール(40μl, 0.39mmol)を加え、50℃で終夜撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて3-(メチルアミノ)ベンゼンスルホン酸の粗生成物(84.1mg)を得た。
合成例1の3-スルホアニリンの代わりに、3-(メチルアミノ)ベンゼンスルホン酸の粗生成物を用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量 5.14mg
ESI(m/z):317 [M+H]+
【0078】
(合成例13) O-{[(3-スルホフェニル)アミノ]カルボニル}-L-セリンの合成 (化合物No.13)
Boc-Ser-OtBu(200mg, 0.77mmol)を塩化メチレン3mlに溶解し、0℃に冷却した。N,N'-カルボニルジイミダゾール(124mg, 0.77mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を留去し、3−アミノベンゼンスルホン酸(132.6mg, 0.77mmol)、DMF 2ml,ジイソプロピルエチルアミン0.4mlを加え70℃で終夜撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて、精製し、中間体を得た。得られた中間体をTFA1mlに溶解し、室温で2時間撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量1.39mg 収率0.6%
ESI(m/z):304 [M+H]+
【0079】
(合成例14) 3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成 (化合物No.14)
Boc-Glu-OtBu(100mg, 0.33mmol)、HATU(150.4mg, 0.40mmol)をDMF 2 mlに溶解し、トリエチルアミン(68.5 μl)を加え、10分撹拌した。そこへ、3-アミノ安息香酸エチル (49.2mg, 0.33mmol)を加え、終夜撹拌した。酢酸エチル、1M 水酸化ナトリウム水溶液を用いて分液操作をした後、有機層を1M 水酸化ナトリウム水溶液、1M塩酸、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をTHF 2ml、エタノール1ml、水1mlに溶解し、水酸化リチウム1水和物(13.5mg, 0.32mmol)を加えた。5時間撹拌した後、水酸化リチウムを4.5mg加え、終夜撹拌した。反応終了を確認した後、1M塩酸で反応液をpH=2に調整し、溶媒を留去した。得られた残渣にTFA 3mlを加え、室温で5時間撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量54.17mg 収率61%
1H-NMR (D2O, 300MHz) :δ 7.92 (s, 1H), 7.72 (d, 1H, J=7.5Hz), 7.55 (d, 1H, J=9Hz), 7.42 (dd, 1H, J=7.5, 9.0Hz), 4.00-3.80 (m, 1H), 2.58-2.54 (m, 2H), 2.20-2.15 (m, 2H)
ESI(m/z):267 [M+H]+
【0080】
(合成例15) 3-(L-γ-グルタミルアミノ)-2-ヒドロキシ安息香酸の合成 (化合物No.15)
合成例14の3-アミノ安息香酸エチルの代わりに、3−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸エチルエステルを用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量34.1mg 収率37%
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.70-7.60 (m, 2H), 6.87 (t, 1H), 3.91 (t, 1H), 2.63-2.55 (m, 2H), 2.20-2.10 (m, 2H)
ESI(m/z):283[M+H]+
【0081】
(合成例16) 3-ブロモ-5-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成 (化合物No.16)
合成例14の3-アミノ安息香酸エチルの代わりに、3−アミノ−5−ブロモ安息香酸メチルを用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量 16.8 mg
1H-NMR (D2O, 300MHz):δ 7.80-7.85 (s*2, 2H), 3.75-3.90 (m, 1H), 2.45-2.55 (m, 2H), 2.10-2.20 (m, 2H)
ESI(m/z):345, 347 [M+H]+
【0082】
(合成例17) N5-{3-[ヒドロキシ(メトキシ)ホスホリル]フェニル}-L-グルタミンの合成 (化合物No.17)
1−ヨード−3−ニトロベンゼン(249mg, 1mmol)をアセトニトリル10mlに溶解し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(58mg, 3mol%)、亜リン酸ジメチル(0.138ml, 1.5mmol)、トリエチルアミン(0.28ml, 2mmol)を加え、70℃で終夜撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aで精製し、(3−ニトロフェニル)ホスホン酸モノメチルエステル、およびジメチルエステルの混合物を(0.222g)を得た。得られたホスホン酸モノメチルをメタノール10mlに溶解し、触媒量のPd/Cを加え、水素雰囲気下終夜撹拌した。触媒を濾別した後、溶媒を留去し(3−アミノフェニル)ホスホン酸モノメチルエステルおよびジメチルエステルの混合物を得た。
Boc-Glu-OtBu(303mg, 1mmol)、HOAt(136mg, 1mmol)、HATU(380mg, 1mmol)をDMF 1mlに溶解し、トリエチルアミン(0.278ml)を加えた。10分後、(3−アミノフェニル)ホスホン酸モノメチルエステルおよびジメチルエステルの混合物を加え、室温で終夜撹拌した。
溶媒を留去したのち、精製工程Aを用い精製し、表題化合物を得た。
収量11.5mg
1H-NMR(D2O, 300MHz) :δ 7.50-7.90 (m, 4H), 4.14-4.18 (m, 1H), 3.56 (s, 1.5H), 3.52 (s, 1.5H), 2.68-2.74 (m, 2H),2.280-2.37 (m, 2H)
ESI(m/z):317 [M+H]+
【0083】
(合成例18) N5-(3-ホスホノフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.18)
合成例17で中間体として得られる(3−ニトロフェニル)ホスホン酸モノメチルエステルおよびジメチルエステルの混合物(170mg)に、DMF4ml、トリメチルシリルブロミド(1ml)を加え、60℃で2時間撹拌した。溶媒を留去した後、水、メタノール混合溶媒に溶解し、触媒量のPd/Cを加え水素雰囲気下で終夜撹拌した。触媒を濾別、溶媒を留去して(3−アミノフェニル)ホスホン酸の粗生成物を得た。
Boc-Glu-OtBu (236mg, 0.78mmol)、HOAt (127mg, 0.936mmol)、HATU (356mg, 0.936mmol)をDMF 1mlに溶解し、トリエチルアミン(0.21ml)を加えた。10分後、(3−アミノフェニル)ホスホン酸の粗生成物を加え、室温で終夜撹拌した。溶媒を留去したのち、精製工程Aを用い精製し、表題化合物を得た。
収量2.5 mg
ESI(m/z):303[M+H]+
【0084】
(合成例19) N5-(3-ニトロフェニル)-L-グルタミンの合成 (化合物No.19)
合成例1の3−スルホアニリンの代わりに、3−ニトロアニリンを用い、同様に実施することで表題化合物を得た。
収量 61.6 mg 収率 93%
1H-NMR (DMSO-d6, 300MHz):δ 10.5 (s, 1H) , 8.66 (s, 1H), 7.86-7.93 (m, 2H), 7.61 (t, 1H, J=8.2Hz), 3.99 (t, 1H, J=6.2Hz), 2.50-2.70 (m, 2H), 2.06-2.16 (m, 2H)ESI(m/z):268 [M+H]+
【0085】
(合成例20)N−γ−グルタミル-アニリン(化合物No.20)
化合物No.20はBachem社より購入したものを用いた。
【0086】
以下に、表2に示す他の代表的な本発明の化合物の合成について、実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明の化合物はこれらの実施例に限定されるものではない。
【表2】
【0087】
(合成例21)
N5-(3-クロロ-4-メチル-5-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.21)
Boc-Glu-OtBu塩酸塩303 mg(1 mmol)、CDI 180 mg(1.1 mmol)に塩化メチレン1 ml、THF 1 mlを加え、5-アミノ-3-クロロ-2-メチルベンゼンスルホン酸221 mgを加え、室温で終夜撹拌した。精製工程Aを用いて精製し、目的物の保護体を得た。得られた保護体をトリフルオロ酢酸5mlに溶解し、2時間撹拌した。溶媒を留去したのち、精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
1H-NMR(D2O)δ:7.71(d, 1H), 7.60(d, 1H), 3.93(t, 1H), 2.50-2.57(m, 2H), 2.47(s, 3H), 2.10-2.20(m, 2H)
ESI-MS:349[M-H]-,351[M+H]+
【0088】
(合成例22)
N5-(3-クロロ-2-メチルl-5-スルホフェニル)-L-グルタミン の合成(化合物No.22)
Boc-Glu-OtBu塩酸塩303 mg (1 mmol)、3-アミノ-5-クロロ-4-メチルベンゼンスルホン酸221mg (1 mmol)、HOAt 160 mg(1.3 mmol)、HATU 410 mg(1.3 mmol)にDMF 2 ml、DIEA 0.52 ml (3 mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を水−アセトニトリルで希釈し、精製工程Aを用いて精製し、目的物の保護体を得た。得られた保護体をトリフルオロ酢酸5mlに溶解し、2時間撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量:150 mg
1H-NMR(D2O)δ:7.81(d, 1H),7.61(d, 1H), 4.10(t, 1H), 2.74-2.81 (m, 2H), 2.24-2.37(m, 5H)
ESI-MS:349[M-H]-,351[M+H]+
【0089】
(合成例23)
N5-(2-ヒドロキシ-5-ニトロ-3-スルホフェニル)-L-グルタミン の合成(化合物No.23)
合成例22の3-アミノ-5-クロロ-4-メチルベンゼンスルホン酸を3-アミノ-2-ヒドロキシ-5-ニトロベンゼンスルホン酸に置き換えて、同様の操作を行うことで表題化合物を得た。
収量:185mg
1H-NMR(D2O)δ:8.55(d, 1H, J=2.4Hz), 8.29(d, 1H, J=2.7Hz), 3.95(t, 1H, J=6.3Hz), 2.66(t, 2H, J=7.2Hz), 2.10-2.30(m, 2H)
ESI-MS:362[M-H]-,364[M+H]+
【0090】
(合成例24)
2,5-ジクロロ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成(化合物NO.24)
(工程1)
2,5-ジクロロ-3-アミノ安息香酸206 mg (1.0 mmol)をアセトン4 mlに溶解し、トリメチルシリルジアゾメタン2.0 Mヘキサン溶液0.7 ml (1.4 mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。溶媒を留去し、2,5-ジクロロ-3-アミノ安息香酸メチルを得た。
収量:220mg
【0091】
(工程2)
2,5-ジクロロ-3-アミノ安息香酸メチル110 mg (0.5 mmol)にHATU 190 mg(0.5 mmol)、HOAt 70 mg (0.5 mmol)、Boc-Glu-OtBu塩酸塩152 mg(0.5 mmol)、トリエチルアミン0.21 ml (1.5 mmol)、ジクロロメタン2 mlを加え、室温で一晩攪拌した。
溶媒を留去し酢酸エチル-水を用いて抽出を行ない、有機層を飽和食塩水で処理した後硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾去し、溶媒を留去した後、1N水酸化ナトリウム溶液5 mlを加え、室温で2時間攪拌した。続けてトリフルオロ酢酸5mlを加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を留去したのち、精製工程Aで精製し、表題化合物を得た。
収量:6.6mg
1H-NMR(CD3OD)δ:8.08(s,1H), 7.56(s,1H), 3.95-4.01(m,1H), 2.76-2.82(m,2H), 2.20-2.30(m,2H)
ESI-MS:333[M-H]-, 335[M+H]+
【0092】
(合成例25)
2-クロロ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸 の合成(化合物No.25)
合成例24(化合物No.24の合成)で使用した安息香酸誘導体を、2-クロロ-3-アミノ安息香酸に置き換え、同様に操作することで、表題化合物を得た。
収量:4.0mg
1H-NMR(D2O)δ:7.47-7.56(m,1H), 7.39-7.46(m,1H), 7.27-7.32(s,1H), 3.81-387(m,1H), 2.59-2.65(m,2H), 2.12-2.21(m,2H)
ESI-MS:299[M-H]-,301[M+H]+
【0093】
(合成例26)
4-クロロ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成(化合物No.26)
合成例24(化合物NO.24の合成)で使用した安息香酸誘導体を、4-クロロ-3-アミノ安息香酸に置き換え、同様に操作することで、表題化合物を得た。
収量:5.3mg
1H-NMR(D2O)δ:8.03(s,1H), 7.76-7.79(m,1H), 7.52-7.55(m,1H), 3.78-3.84(m,1H), 2.59-2.65(m,2H), 2.12-2.22(m,2H)
ESI-MS:299[M-H]-,301[M+H]+
【0094】
(合成例27)
2-メトキシ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成(化合物No.27)
2-メトキシ-3-アミノ安息香酸メチル36mg(0.2mmol)にHATU 84mg(0.2mmol)、HOAt 30mg(0.2mmol)、Boc-Glu-OtBu塩酸塩61mg(0.2mmol)、トリエチルアミン0.084ml(0.6mmol)、ジクロロメタン1mlを加え、室温で一晩攪拌した。
溶媒を留去し酢酸エチル-水を用いて抽出を行ない、有機層を飽和食塩水で処理した後硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾去し、溶媒を留去した後、1N水酸化ナトリウム溶液5mlを加え、室温で2時間攪拌した。続けてトリフルオロ酢酸5mlを加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を留去したのち、精製工程Aで精製し、表題化合物を得た。
収量:6.5mg
1H-NMR(D2O)δ:7.69-7.71(m,1H), 7.56-7.59(m,1H), 7.13-7.18(m,1H), 3.87-3.93(m,1H), 3.68(s,3H), 2.60-2.66(m,2H), 2.12-2.22(m,2H)
ESI-MS:295[M-H]-, 297[M+H]+
【0095】
(合成例28)
6-ヒドロキシ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成(化合物No.28)
合成例27(化合物No.27の合成)で使用した安息香酸誘導体を、6-メトキシ-3-アミノ安息香酸に置き換え、同様に操作することで、6-メトキシ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸を合成した。これを精製工程Aで精製し、合成過程で副生成物として得られた表題化合物を得た。
収量:2.1mg
ESI-MS:280[M-H]-, 282[M+H]+
【0096】
(合成例29)
4-メチル-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸 の合成(化合物No.29)
4-メチル-3−ニトロ安息香酸500mgにメタノール5ml、4N塩化水素含有のジオキサン溶液10mlに溶解した。2日間室温で撹拌した後、溶媒を留去し、粗製物を得た。得られた粗製物をメタノール10mlに溶解し、水素雰囲気下触媒量のPd/Cを室温で終夜、作用させた。触媒をろ別し、溶媒を留去し粗製物を得た。得られた粗製物165mg、Boc-Glu-OtBu塩酸塩303mg(1mmol)、HATU400mg(約1.3mmol)をDMF 1mlに溶解し、DIEA0.26mlを加え、終夜撹拌した。反応液を水-アセトニトリルで希釈し、精製工程Aを用いて精製し、目的物の保護体0.31gを得た。得られた保護体にTHF3ml、メタノール1.5ml、水1.5mlを加え、水酸化リチウム1水和物26mg(0.82mmol)を加えた。2時間撹拌した後、溶媒を留去し、再びTHF3ml、メタノール1.5ml、水1.5mlを加え、水酸化リチウム1水和物26mg(0.82mmol)を加え、2時間撹拌した。酢酸エチル2mlを加えた後、溶媒を留去し、続けてトリフルオロ酢酸3mlを加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を留去した後、精製工程Aで精製し、表題化合物を得た。
1H-NMR(D2O)δ:7.74-7.77(m,1H), 7.30-7.36(m,1H), 3.75-3.81(m,1H), 2.55-2.62(m,2H), 2.10-2.20(m,5H)
ESI-MS:279[M-H]-, 281[M+H]+
【0097】
(合成例30)
5-ヒドロキシ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成(化合物No.30)
合成例27(化合物No.27の合成)で使用した安息香酸誘導体を、5-メトキシ-3-アミノ安息香酸に置き換え、同様に操作することで、5-メトキシ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸を合成した。これを精製工程Aで精製し、合成過程で副生成物として得られた表題化合物を得た。
収量:7.5mg
ESI-MS:280[M-H]-, 282[M+H]+
【0098】
(合成例31)
3-(L-γ-グルタミルアミノ)-2-メチル安息香酸の合成(化合物No.31)
合成例29(化合物No.29の合成)で使用した安息香酸誘導体を、2−メチル−3−ニトロ安息香酸に置き換え、同様に操作することで、表題化合物を得た。
収量:37mg
1H-NMR(D2O)δ:7.56(dd,1H), 7.30(dd,1H), 7.23(t,1H), 3.82(t,1H), 2.5-2.62(m,2H), 2.21(s,3H), 2.10-2.29(m,2H)
ESI-MS:279[M-H]-,281[M+H]+
【0099】
(合成例32)
5-クロロ-3-(L-γ-グルタミルアミノ)安息香酸の合成(化合物No.32)
(工程1)
5-クロロ-1,3ジ安息香酸メチル228mg(1mmol)、水酸化カリウム56mg(1mmol)にメタノール8ml、THF 2mlを加え、室温で一晩攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、トルエン4ml、トリエチルアミン0.12ml(0.85mmol)、ジフェニルホスホリルアジド0.19ml(0.88mmol)を加え、50℃で1時間攪拌した。続けてt-ブチルアルコール 0.19ml(2mmol)、トルエン2mlを加え、80℃で一晩攪拌した。室温に冷却した後、酢酸エチル-水を用いて抽出を行ない、有機層を飽和食塩水で処理した後硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾去し、溶媒を留去した後、精製工程Aで精製し、5-クロロ-3-アミノ安息香酸メチル-トリフルオロ酢酸塩を得た。
収量:30mg
【0100】
(工程2)
5-クロロ-3-アミノ安息香酸メチル30mg(0.1mmol)にHATU 38mg(0.1mmol)、HOAt 14mg(0.1mmol)、Boc-Glu-OtBu塩酸塩30mg(0.1mmol)、トリエチルアミン0.014ml(0.1mmol)、ジクロロメタン1mlを加え、室温で一晩攪拌した。
溶媒を留去し酢酸エチル-水を用いて抽出を行ない、有機層を飽和食塩水で処理した後硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾去し、溶媒を留去した後、1N水酸化ナトリウム溶液5mlを加え、室温で2時間攪拌した。続けてトリフルオロ酢酸5mlを加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を留去したのち、精製工程Aで精製し、表題化合物を得た。
収量:1.0mg
1H-NMR(D2O)δ:7.54(s,1H), 7.48(s,1H), 7.45(s,1H), 3.96-4.00(m,1H), 2.50-2.56(m,2H), 2.12-2.20(m,2H)
ESI-MS:299[M-H]-, 301[M+H]+
【0101】
(合成例33)
O-{[(3-クロロ-4-メチルl-5-スルホフェニル)アミノ]カルボニル}-L-セリンの合成(化合物No.33)
Boc-Ser-OtBu 100mg(0.38mmol)、5−アミノ−3−クロロ−2−メチルベンゼンスルホン酸86mg(0.38mmol)、トリホスゲン37mg(0.0127mmol)を塩化メチレン1mlに懸濁させ、DIEA 66μl(0.76mmol)を加えた。室温で終夜撹拌した後、溶媒を留去した。精製工程Aを用いて精製し、表題化合物の保護体を得た。得られた保護体をトリフルオロ酢酸2mlに溶解し、2時間撹拌した後溶媒を留去し、精製工程Aで精製し、表題化合物を得た。
収量:15.5mg
1H-NMR(D2O)δ:7.67(d,1H), 7.57.(d,1H), 4.51(t,2H), 4.15(dd,1H) 2.47(s, 3H)
ESI-MS:351[M-H]-,353[M+H]+
【0102】
(合成例34)
3-({[(2S)-2-アミノ-2-カルボキシエトキシカルボニル}アミノ)-5-クロロ-2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の合成(化合物No.34)
合成例33(化合物No.33の合成)で使用したベンゼンスルホン酸誘導体を3−アミノ−5−クロロ−2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸に置き換え、同様の操作を行い、ついで1当量の0.1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、凍結乾燥することで、表題化合物を得た。
収量:15.1mg
1H-NMR(D2O)δ:7.70(s, 1H),7.37(d, 1H, J=2.6Hz),4.37-4.55(m, 2H), 3.98(dd, 1H, J=3.0, 5.3Hz),
ESI-MS:353[M-H]-,355[M+H]+
【0103】
(合成例35)
O-{[(3-クロロ-2-メチル-5-スルホフェニル)アミノ]カルボニル}-L-セリンの合成(化合物No.35)
合成例33(化合物No.33の合成)で使用したベンゼンスルホン酸誘導体を3−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼンスルホン酸に置き換え同様の操作を行うことで表題化合物を得た。
収量:3.9mg
1H-NMR(D2O)δ:7.60-7.64(m,2H), 4.42-4.54(m,2H), 4.03(dd,1H,J=3.2, 4.8Hz)
ESI-MS:351[M-H]-,353[M+H]+
【0104】
(合成例36)
O-{[(5-クロロ-2-メトキシ-3-スルホフェニル)アミノ]カルボニル}-L-セリンの合成(化合物No.36)
合成例14(化合物No.14の合成)中で得られる保護体30mgにアセトン2mlを加え、2Mトリメチルシリルジアゾメタン含有のヘキサン溶液1ml、トリエチルアミン100μl加えた。20分撹拌した後、溶媒を留去し、精製工程Aを用いて精製し、メチル化体を得た。得られたメチル化体をトリフルオロ酢酸2mlに溶解し、室温で3時間撹拌した。溶媒を留去した後、水を加え凍結乾燥することで表題化合物を得た。
収量:1.48mg
1H-NMR(D2O)δ:7.64(brs,1H), 7.27(d,1H,J=2.6Hz), 4.25-4.22(m,2H), 3.80(dd, 1H,J=3.1, 5.0 Hz), 3.52(s, 3H)
【0105】
(合成例37)
N5-(2-クロロ-5-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.37)
4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(1 mmol)にメタノール2 ml、水3 mlを加え、触媒量の2%Pt-S/Cを加え、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。触媒をろ別し、十分に乾燥した後、Boc-Glu-OtBu塩酸塩303 mg (1 mmol)、HOAt 163 mg (1.2 mmol), HATU 456 mg (1.2 mmol)、DMF 2 ml、DIEA 0.35 mlを加え、室温で終夜撹拌した。反応液を水―アセトニトリルで希釈し精製工程Aを用いて精製し、表題化合物の保護体を得た。得られた保護体をトリフルオロ酢酸3mlに溶解し、室温で2時間撹拌した後、溶媒を留去した。精製工程Aを用いて精製し、表題化合物を得た。
収量:69.9mg
1H-NMR(D2O)δ:7.85(brs,1H), 7.50-7.55(m,2H), 4.03(t,1H), 2.66(t,2H,J=7.1Hz), 2.10-2.30(m,2H)
ESI-MS:335[M-H]-,337[M+H]+
【0106】
(合成例38)
N5-(3-クロロ-4-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.38)
工程1
発煙硫酸4mlに3-クロロアニリン0.4mlをゆっくり加え、室温で終夜撹拌した。0度に冷却しながら水に反応液を入れ、析出した固体をろ別した。ろ別した固体を2規定水酸化ナトリウム水溶液にに溶解し、ついで濃塩酸を加え、液性を酸性にした。析出した固体をろ別し、4−アミノ−2−クロロベンゼンスルホン酸の粗製物を得た。
収量:80mg
【0107】
工程2
合成例21(化合物No.21の合成)で使用したベンゼンスルホン酸誘導体を工程1で得られた4−アミノー2−クロロベンゼンスルホン酸の粗製物に置き換え、同様の操作を行うことで表題化合物を得た。
収量:40mg
1H-NMR(D2O)δ:7.80(d, 1H), 7.63(d,1H), 7.33(dd,1H), 3.94(t,1H), 2.50-2.60(m,2H), 2.10-2.22(m,2H)
ESI-MS:337[M+H]+,335[M-H]-
【0108】
(合成例39)
N5-(3-ブロモ-4-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.39)
合成例18(化合物No.18の合成)工程1で使用したアニリン誘導体を3−ブロモアニリンに置き換え、工程1、工程2を同様に行い、表題化合物を得た。
収量:9.9mg
ESI−MS:429[M+H]+,427[M-H]-
【0109】
(合成例40)
N5-(3-ヨード-4-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.40)
合成例38(化合物No.38の合成)工程1で使用したアニリン誘導体を3−ヨードアニリンに置き換え、工程1、工程2を同様に行い、表題化合物を得た。
収量:
1H-NMR(D2O)δ:8.12(s,1H),7.84(d,1H), 7.44(dd,1H), 3.75-3.90(m,1H), 2.50-2.60(m,2H), 2.00-2.20(m,2H)
ESI−MS:429[M+H]+,427[M-H]-
【0110】
(合成例41)
N5-(5-ヨード-2-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.41)
合成例40の合成において、位置異性体として得た。
収量:
1H-NMR(D2O)δ:8.11(d,1H),7.63-7.66(m,1H), 7.48(d,1H),3.80-3.90(m,1H), 2.58-2.66(m,2H), 2.10-2.24(m,2H)
ESI−MS:429[M+H]+,427[M-H]-
【0111】
(合成例42)
N5-ヒドロキシ-N5-(3-スルホフェニル)-L-グルタミンの合成(化合物No.42)
亜鉛粉末270mg(4.3mmol)、塩化アンモニウム106mg(2mmol)をメタノール:水(1:1)混合溶媒2ml中に懸濁させ、2-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩450mg(2mmol)をゆっくり加えた。65℃に加熱し1時間撹拌した後、不溶物をろ過、得られたろ液を留去し、ヒドロキシルアミン誘導体の粗生成物を得た。Boc-Glu-OtBu塩酸塩450 mg (1.5 mmol)、HOAt 230 mg (1.7 mmol)、HATU 646 mg (1.7 mmol)にDMF 5ml、DIEA 0.35 mlを加え、10分撹拌した。その溶液を先ほど得られた粗生成物に加え、終夜撹拌した。精製工程Aを用いて精製し、表題化合物の保護体を得た。得られた保護体にTFA4mlを加え、2時間撹拌し、TFAを除去した後、精製工程Aを用いて精製することで、表題化合物を得た。
収量:135mg
1H-NMR(DMSO)δ:10.65 (s,1H), 10.04 (s,1H), 7.20-8.40 (m, 7H), 3.90-4.10(m,1H), 2.60-3.00(m,2H), 1.90-2.20(m,2H)
ESI-MS:317[M-H]-,319[M+H]+
【0112】
(合成例43)
O-{[ヒドロキシ(3-スルホフェニル)アミノ]カルボニル}-L-セリンの合成(化合物No.43)
Boc-Ser-OtBu 1mmol、合成例42で得られたヒドロキシルアミンの粗製物、トリホスゲン100mg(0.33mmol)に塩化メチレン2ml、DIEA 0.35mlを加え、室温で終夜撹拌した。溶媒を留去し、得られた残渣を精製工程Aで精製し、表題化合物の保護体を得た。得られた保護体をTFA4mlに溶解し、室温で3時間撹拌した後、TFAを留去、精製工程Aで精製し表題化合物を得た。
収量:6.6mg
1H-NMR(D2O)δ:7.78-7.80 (m,1H), 7.43-7.60 (m,4H), 4.56-4.58(m,2H), 4.10-4.15(m,1H)
ESI-MS:319[M-H]-,321[M+H]+
【0113】
実施例 II CaSR遺伝子の調製
CaSRの遺伝子の調製は以下のように行った。NCBIに登録されたDNA配列(CaSR(カルシウム受容体):NM_000388、配列番号1、2)を元に、PCRに使う合成オリゴDNA(フォワードプライマー(配列番号3:ACTAATACGACTCACTATAGGGACCATGGCATTTTATAGCTGCTGCTGG)、及びリバースプライマー(配列番号4:TTATGAATTCACTACGTTTTCTGTAACAG)を合成した。
ヒト腎臓由来のcDNA(Clontech社製)を材料として、前記プライマー、及びPfu Ultra DNA Polymerase(Stratagene社製)を用い、以下の条件でPCRを実施した。94℃で3分の後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で2分を35回繰り返した後、72℃で7分反応させた。PCRによって増幅がなされたか否かをアガロース電気泳動を行い、DNA染色試薬で染色した後、紫外線照射によって検出した。同時に電気泳動したサイズ既知のDNAマーカーと比較することで、PCR産物の鎖長を確認した。プラスミドベクターpBR322を制限酵素EcoRV(Takara社製)によって切断した。その切断部位にPCRによって増幅された遺伝子断片をLigation kit(Promega社製)を用いて連結した。この反応溶液でエシェリヒア・コリDH5α株を形質転換し、PCR増幅産物がクローニングされたプラスミドを保持する形質転換体を選抜した。DNA塩基配列解析によってPCR増幅産物がCaSR遺伝子を含むことを確認した。この組換えプラスミドを用いてヒトCaSR発現プラスミドhCaSR/pcDNA3.1を作製した。
【0114】
実施例III CaSRアゴニスト活性の評価
(CaSRアゴニスト評価法)
293E細胞(EBNA1発現HEK293細胞、ATCC No.CRL-10852)は250μg/mlのG418存在下、10%のウシ胎児血清を含むDMEM(1.0g/ml Glucose含有Dulbecco's modified Eagle medium、ナカライテスク)にて培養した。1.8×106ceells/15mlで直径10cmシャーレに撒き、CO2インキュベータ(5%CO2、37℃)に24時間静置した後、トランスフェクション試薬Mirus TransIT 293(タカラバイオ)にてヒトCaSR発現プラスミドhCaSR/pcDNA3.1をトランスフェクションした。CO2インキュベータに24時間置いた後、細胞を10%ウシ胎児血清含有DMEMにて回収し、15,000cells/wellでpoly-D-lysine coat 384well plate(Falcon)に播種した。CO2インキュベータにて24時間静置した後、培地を除去し、Assay Buffer (146mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mg/ml Glucose、20mM HEPES(pH 7.2)、1.5mM CaCl2)に溶解したCa2+蛍光指示薬Calcium 4 Assay Kit(Molecular Devices)を50μl/well添加し、37℃で1時間、次いで室温で30分静置し指示薬を取り込ませた。前記384well plateをFLIPR(Molecular Devices)に移し、0.1%BSA含有Assay Bufferに溶解した化合物を12.5μl/well添加し、3分間蛍光強度変化を測定した。なお、化合物No.20はBachem社より購入した。
【0115】
(EC50算出法)
化合物添加前後の蛍光強度の最大値と最小値の差(RFU(Max-Min))をFLIPRの自動計算にて求めた。化合物最大濃度添加時のRFU(Max-Min)を100%、化合物の代わりに同濃度のDMSOを添加時のRFU(Max-Min)を0%と定義した活性率を計算し、表計算ソフトXfitにてカーブフィッティングし、活性率50%時の化合物濃度であるEC50値を求めた。表1及び表2に示した化合物についての結果を表3及び表4に示す。
【表3】

【表4】
【0116】
実施例IV ラット大腸ループ法における水分吸収に対するCaSRアゴニストの影響(1)
(方法)
ペントバルビタール麻酔下にて雄性SD(IGS)ラットの腹部より盲腸、大腸を取り出し、盲腸直下から5cmを結紮し大腸ループを作製した。ループ作製直後にPGE2(4μg/mL/kg、SIGMA)を腹腔内投与し、30分後に作製したループ内へ2mLのタイロード溶液(NaCl 136.9mM、KCl 2.7 mM、CaCl2・2H2O 1.8 mM、MgCl2・6H2O 1.04 mM、NaH2PO4・2H2O 0.04 mM、グルコース 5.55 mM、NaHCO3 11.9 mM)を注入した。1時間後にループ重量、ループ内の液を除いた重量とループ面積を測定することで、ループ内に残存した単位面積当たりの液重量を計算した。
試験化合物は、タイロード溶液に溶解した(薬液は、pH 6.5〜7.5に調整)して試験に供した。
下記式:
単位面積当たりの残存液量(g/cm2)=(ループ重量−液を除去したループ重量)/ループの面積
により、単位面積当たりの残存液量(g/cm2)を計算した。
水分吸収は、次式から抑制率を計算して評価した。
抑制率(%)=100−(薬物による単位面積当たりの残存液量−ベースの単位面積当たりの平均残存液量)/(ビークルの単位面積当たりの平均残存液量−ベースの単位面積当たりの平均残存液量)×100。
結果を図1に示した。表1のNo.1の化合物は、用量依存的に水分吸収を促進し、下痢治療若しくは予防剤として有用であることが示唆された。
【0117】
実施例V ラット大腸ループ法における水分吸収に対するCaSRアゴニストの影響(2)
実施例IVに記載の方法と同様に、化合物No.7について同様に試験を行った。結果を図2に示した。表1のNo.7の化合物は、用量依存的に水分吸収を促進し、下痢治療若しくは予防剤として有用であることが示唆された。
【0118】
実施例VI(試験例1)コク味評価
<本発明に用いられる化合物類(化合物No.1、No.7のナトリウム塩)のコク味付与活性>カルシウム受容体活性化作用が見出された化合物類(化合物No.1、No.7、No.21のナトリウム塩)について定量的な官能評価試験によりコク味付与活性の強度を調べた。なお、化合物は、実施例I、合成例1記載の化合物No.1 525mgを蒸留水5mlに溶解後、0.1M水酸化ナトリウム溶液16.4mlを加えてpH6.5〜7に調節し、凍結乾燥してNa塩として調製したものを使用した。また実施例I、合成例7記載の化合物No.7 500mgを蒸留水5mlに懸濁させ、0℃で1M 水酸化ナトリウム 1.61ml、2M 塩酸を0.8ml順番に加え、析出した固体を濾取し、40℃で減圧乾燥し、426mgの化合物No.7を得た。得られた固体を蒸留水10mlに懸濁させ、1M 水酸化ナトリウムを1.2ml加え、凍結乾燥してNa塩として調整したものを使用した。化合物 No.21は、実施例I、合成例21記載の化合物No.21を同様にして調製したNa塩を使用した。
定量的官能評価試験は以下のように実施した。グルタミン酸ナトリウム(0.05g/dl)、イノシン酸一リン酸(0.05g/dl)、塩化ナトリウム(0.5g/dl)を含有する蒸留水に、試料として化合物類(No.1-Na塩)を0.000001〜0.1g/dlにて混合した場合の、コク味付与活性の強度を測定した。参照に既知コク味付与成分のγGlu-Cys-Gly、γGlu-Val-Glyを用いた。試料溶解後に無添加コントロールに対し酸性を呈したサンプルについては、NaOHで無添加コントロールに対しpH±0.2の幅に合わせて使用した。官能評点について、コントロール:0点、強い:3点、非常に強い:5点として、n=4で実施した。尚、「先中味」とは、先味と中味を合わせたものである。上記添加濃度で幅広くコク味付与活性を示したが、代表的な濃度での結果を表5に示した。
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1】化合物No.1についての下痢予防活性を示す図である。
図2】化合物No.7についての下痢予防活性を示す図である。
図1
図2
【配列表】
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