特許第5686106号(P5686106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5686106
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】車両の車体下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20150226BHJP
   B62D 35/02 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
   B62D35/02
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-29997(P2012-29997)
(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2013-166432(P2013-166432A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】野島 隆哉
(72)【発明者】
【氏名】三崎 利次
(72)【発明者】
【氏名】吉村 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】登里 卓也
【審査官】 鹿角 剛二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−265677(JP,A)
【文献】 特開2002−120769(JP,A)
【文献】 実開平01−081389(JP,U)
【文献】 特開2009−029334(JP,A)
【文献】 特開2006−160000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア下を覆うアンダーカバーを備える車両の車体下部構造であって、
前記アンダーカバーは、その車幅方向外側の側端部が、車輪の車両前方側において当該車輪と車両前後方向で重なるよう設けられ、
前記アンダーカバーの前記側端部は、前記車両の前方側の部分が当該アンダーカバーの他の部分よりも車両上方側に窪んだ凹部で構成されており、
前記凹部は、車両前方側が開放され、車両後方側の端面が車両後方斜め下方側に傾斜されていることを特徴とする車両の車体下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の車体下部構造であって、
前記凹部の前記車両後方側の端面は、その延長線が前記車輪よりも下側となるように傾斜していることを特徴とする車両の車体下部構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の車体下部構造であって、
前記凹部の前記車両後方側の端面が、前記車輪から所定距離だけ前方に離れた位置に設けられていることを特徴とする車両の車体下部構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両の車体下部構造であって、
前記凹部の前記車両後方側の端面は、外側が凸となる曲面で構成されていることを特徴とする車両の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部における車体下部構造に関し、特に、車体の下面を覆って設けられるアンダーカバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の車体下部構造として、車両の下部にフロア下を覆うアンダーカバーが装着されたものがある。アンダーカバーを装着することで車両の下面を平坦にして、車両の走行時の空力特性の高め、車両の高速安定性や燃費の向上を図っている。
【0003】
さらに近年は、アンダーカバーの形状によって、車体下面下を後方に流れる走行風を整流することにより、車体の空力特性を向上した構造が提案されている。具体的には、例えば、アンダーカバーの表面から下方に突出する整流突出部を後輪サスペンションの前方に設けるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
このような構成により、車体下面下を流れる走行風とサスペンション要素との衝突が低減され、車体下面下において車幅中央を流れる走行風の後輪サスペンションによる乱れが小さくなるという作用効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−265677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体下面下を流れる走行風が走行中(回転中)の後輪に衝突することによっても走行風に乱れが生じて、車両の空力特性に大きく影響することが知られている。走行風と後輪との衝突は、基本的に避けられるものではないが、本件出願人は、誠意研究を重ねた結果、後輪に対して走行風をできるだけ下方側へ整流してやることで空力特性が改善されることを知見した。
【0007】
特許文献1のような整流突出部を後輪の前方に設けることで、空力特性が向上されることが予測できる。
【0008】
しかしながら、特許文献1のように、アンダーカバーの表面から下方に突出して設けられる整流突出部は、多少なりとも走行風に対する抵抗となり、車両の空力性能に悪影響を及ぼす虞がある。
【0009】
また、アンダーカバー表面の高さ(路面との間隔)や整流突出部の大きさ(形状)は、車種等によって最も効果を発揮する状態が異なるが、整流突出部が下方側に出ている分、最低地上高の制約の影響を受けやすい。場合によっては、整流突出部の大きさやアンダーカバーの高さなどのレイアウトに制限を受けることとなるため、アンダーカバーによる整流効果を充分に発揮できない虞がある。
【0010】
なお特許文献1に係る発明は、あくまでサスペンション機構への走行風の衝突を抑えることを目的とするものであり、走行風の後輪への衝突に起因する乱れに関する言及はない。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、最低地上高の制約による影響を受けにくい構成で、車輪との衝突による走行風の乱れを抑制し、空力特性を向上することができる車両の車体下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両のフロア下を覆うアンダーカバーを備える車両の車体下部構造であって、アンダーカバーは、その車幅方向外側の側端部が、車輪の車両前方側において当該車輪と車両前後方向で重なるよう設けられ、アンダーカバーの側端部は、車両の前方側の部分が当該アンダーカバーの他の部分よりも車両上方側に窪んだ凹部で構成されており、凹部は、車両前方側が開放され、車両後方側の端面が車両後方斜め下方側に傾斜されていることを特徴とする車両の車体下部構造にある。
【0013】
かかる第1の態様では、車輪に対する走行風の衝突が低減されることで走行風の乱れが抑制される。またアンダーカバーの表面から下方に突出する部分がないため、最低地上高の制約による影響を受けにくく、また走行風に対する抵抗を増加させることもない。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様の車両の車体下部構造であって、凹部の車両後方側の端面は、その延長線が車輪よりも下側となるように傾斜していることを特徴とする車両の車体下部構造にある。
【0015】
かかる第2の態様では、車輪に対する走行風の衝突がより確実に低減される。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様の車両の車体下部構造であって、凹部の車両後方側の端面が、車輪から所定距離だけ前方に離れた位置に設けられていることを特徴とする車両の車体下部構造にある。
【0017】
かかる第3の態様では、車輪に対する走行風の衝突がより確実に低減される。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れか一つの態様の車両の車体下部構造であって、凹部の車両後方側の端面は、外側が凸となる曲面で構成されていることを特徴とする車両の車体下部構造にある。
【0019】
かかる第4の態様では、車輪に対する走行風の衝突がより確実に低減される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、走行風に対する抵抗を増加させることなく、車輪に対する走行風の衝突を極力低減して走行風の乱れを効率よく抑制することができる。したがって、車両の空力特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の車体下部の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るフロアアンダーカバーを示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るフロアアンダーカバーを示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るフロアアンダーカバーを示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るスロープ部を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係るスロープ部の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る車両の車体下部の概略構成を示す斜視図であり、図2はフロアアンダーカバーの構成を示す平面図である。図3は、フロアアンダーカバーの構成を示す側面図であり図2のA−A′矢視図である。図4は、フロアアンダーカバーの構成を示す側面図であり図2のB−B′矢視図である。
【0024】
図1図4に示すように、自動車である車両10の車体11の下部前方には、エンジンルーム12やフロントバンパー13の下面を覆うフロントアンダーカバー14が設けられている。このフロントアンダーカバー14の後方には、車両10のフロア(車室)15の下面を覆うフロアアンダーカバー16が設けられている。本実施形態では、エンジンルーム12から車両後方に延びる排気管17、マフラー18等が車両10の左右方向における車体11の下面中央部に設置されている。このためフロアアンダーカバー16は、これら排気管17等の左右両側にそれぞれ独立して設けられている。
【0025】
ここで、フロアアンダーカバー16は、車両前後方向で車輪19(前輪19a及び後輪19b)に重なる領域(図2中一点鎖線よりも外側の領域)を覆って設けられている。すなわちフロアアンダーカバー16は、車両前後方向で車輪19に重なる領域まで連続的に設けられ、車両10の左右幅方向における車両外側の側端部16aが後輪19bの車両前方側において車輪19に重なる上記領域を覆っている。
【0026】
このフロアアンダーカバーの側端部16aは、車両前方側の部分がフロアアンダーカバー16の他の部分よりも車体11側(上方側)に窪んだ凹部20となっている。凹部20は、その車両前方側および車幅方向外側が開放されている。つまりフロアアンダーカバーの側端部16aの車両前方側の部分が段状に形成されている。そして、結果的にフロアアンダーカバー16の側端部16aは、車両後方側の部分が凹部20よりも相対的に下方側に突出した凸部21となっている。この凸部21は、フロアアンダーカバー16の表面から突出することなく設けられている。そして、この凹部20の車両後方側の端面、つまり凹部20と凸部21との境界となる端面22は、車両後方斜め下方側に傾斜している。すなわちフロアアンダーカバー16の端面22は、車体11の下面に対して所定角度θで車両後方かつ下方に傾斜するスロープ部23を構成する。
【0027】
このような車両10の車体下部構造では、フロアアンダーカバー16の側端部16aの下側を通過する走行風は、図4中に実線で示すように、フロアアンダーカバー16のスロープ部23(端面22)に沿ってスムーズに下方に向かい、フロアアンダーカバー16から離れた低位置を後方に流れる。これにより、走行風の後輪19bへの衝突が大幅に低減され、走行風の後輪19bへの衝突に起因する乱れを抑制することができる。したがって、車両10の空力特性を向上することができる。なお図4中に点線で示すように、フロアアンダーカバー16の側端部16aに凹部及びスロープ部が設けられていない場合、走行風はフロアアンダーカバー16の表面近くを流れるため、後輪19bに衝突して乱れが生じ易い。
【0028】
さらに本発明では、フロアアンダーカバー16に凹部20を設け、車両後方斜め下方に傾斜するスロープ部23を形成することで走行風を整流している。つまりフロアアンダーカバー16の表面から下方に突出する突起部を設けることなく、走行風の流れを所望の向きに整流することができる。したがって、走行風に対する抵抗に悪影響を及ぼすことなく、車両10の空力性能をより効果的に高めることができる。
【0029】
また、フロアアンダーカバー16には、余分な突起物がないので、最低地上高の影響により、フロアアンダーカバー16の表面の高さ(表面と路面との間隔)や形状等のレイアウトの制約を受けにくく、空力特性を充分に発揮させることができる。
【0030】
なお、走行風を整流するスロープ部23(端面22)の傾斜角度θは特に限定されないが、直角に近い角度とすると抵抗が大きくなり走行風に乱れが生じて悪影響を与えてしまう虞があるため、スロープ部23は、できるだけ鋭角に設定することが好ましい。一方、傾斜角度θを小さくし過ぎると、走行風の後輪19bへの衝突を十分に抑制することができなくなる虞があるため、スロープ部23は、図5に示すように、その延長線が後輪19bよりも下側となる角度で傾斜していることが好ましい。すなわちスロープ部23の傾斜角度θがθ1以上で、極力θ1に近い角度となっていることが好ましい。
【0031】
またスロープ部23は、後輪19b(例えば、後輪19bの中心)から所定距離だけ離れた位置に設けられていることが好ましい。すなわちスロープ部23の位置は、後輪19bとの関係で規定されていることが好ましい。例えば、本実施形態では、スロープ部23を構成する端面22の下端から後輪19bの中心までの距離d1が1000mm程度となるようにしている。これにより、走行風の後輪19bへの衝突をより確実に抑制することができる。
【0032】
さらに、スロープ部23を構成する端面22は、平坦であってもよいが、例えば、図6に示すように、外側が凸となる曲面で構成されていてもよい。これにより、走行風がスロープ部23に沿ってよりスムーズに流れるため、車両10の空力特性をより確実に向上することができる。なおスロープ部23を構成する端面22が曲面となっている場合にも、スロープ部23の延長線(端面22の上端と下端とを結ぶ線の延長線)が後輪19bよりも下側となる角度で傾斜していることが好ましい。すなわちスロープ部23の傾斜角度θがθ1以上となっていることが好ましい。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、勿論、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0034】
10 車両
11 車体
12 エンジンルーム
13 フロントバンパー
14 フロントアンダーカバー
16 フロアアンダーカバー
16a 側端部
17 排気管
18 マフラー
19 車輪
20 凹部
21 凸部
22 端面
23 スロープ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6