【文献】
Data Sheet of DISPERBYK-110,[online],2008年,[検索日 2014.06.12], インターネット<http://www.byk.co.jp/datasheet/data/pdf/W216.pdf>
【文献】
TECHNICAL DATA SHEET of SOLTHIX 250,[online],2006年,[検索日 2013.07.24], インターネット<URL:http://www.lubrizol.com/WorkArea/DownloadAsset.aspx?id=21408>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位と、を含む請求項1又は2記載の塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第一の本発明は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、二酸化チタン、分散剤、及び、有機溶媒を含み、上記分散剤は、酸基を有する化合物(但し、不飽和基を有するものを除く)であることを特徴とする塗料組成物である。このため、長期の貯蔵安定性に優れ、塗布スジ、ムラ、ブツがない硬化塗膜を形成することができる。また、得られた硬化塗膜は紫外線遮蔽性に優れる。
【0016】
酸基を有する分散剤を使用することにより、塗料組成物中の二酸化チタンの凝集を防止し、塗料組成物の貯蔵安定性を長期間維持できるのは、分散剤の酸基が二酸化チタン表面に吸着し、高分子樹脂層による立体安定化作用を発揮する事によるものであるためと推測される。
【0017】
第一の本発明の塗料組成物に含まれる分散剤は、酸基を有する(但し、不飽和基を有するものを除く)化合物である。
上記酸基としては、リン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。なかでも、より長期にわたり顔料の凝集を防止し、塗料の貯蔵安定性に優れる点で、リン酸基及びカルボン酸基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基がより好ましい。
上記分散剤はまた、不飽和基を有しない化合物からなる。不飽和基を有しないため、紫外線曝露による化合物の変性が生じにくい。
【0018】
上記分散剤は、重量平均分子量が300〜1000000であることが好ましい。300未満であると、吸着樹脂層の立体安定化が不十分で、二酸化チタンの凝集を防止できないおそれがある。1000000を超えると、色別れや、耐候性の低下をまねくおそれがある。上記重量平均分子量は1000以上であることがより好ましく、100000以下であることがより好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0019】
上記分散剤は、二酸化チタン表面に効果的に吸着する点で、酸価が3〜2000mgKOH/gであることが好ましい。酸価は、5mgKOH/g以上がより好ましく、10mgKOH/g以上が更に好ましく、1000mgKOH/g以下がより好ましく、500mgKOH/g以下が更に好ましい。
酸価は、塩基性物質を用いた酸塩基滴定法により測定することができる。
【0020】
上記分散剤は、更に、塩基を有していてもよい。上記塩基としては、例えば、アミノ基等が挙げられる。
【0021】
上記分散剤の塩基価は、分散剤の長期の貯蔵安定性が良好となる点で、15mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/g以下がより好ましい。上記分散剤の酸価が15mgKOH/g以下である場合、塩基価は5mgKOH/g未満であることが更に好ましい。
上記分散剤は、実質的に塩基を含まないことが更に好ましい。なお、実質的に塩基を含まないとは、コンタミネーション、反応残査、測定誤差等を考慮し、測定値として塩基価が0.5mgKOH/g以下をいう。
塩基価は、酸性物質を用いた酸塩基滴定法により測定することができる。
【0022】
上記分散剤として、市販品を使用してもよい。
本発明における分散剤として適用可能な市販品としては、例えば、ディスパロン2150、ディスパロンDA−325、DA−375、DA−1200(商品名、楠本化成社製)、フローレンG−700、G−900(商品名、共栄社化学社製)、SOLSPERSE26000、32000、36000、36600、41000、55000(商品名、日本ルーブリゾール社製)、DISPERBYK−102、106、110、111、140、142、145、170、171、174、180(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)等を挙げることができる。
なかでも、長期の貯蔵安定性が良好となる点で、ディスパロンDA−375、フローレンG−700、SOLSPERSE36000が好ましく、ディスパロンDA−375がより好ましい。
【0023】
第一の本発明の塗料組成物中における上記分散剤の含有量は、二酸化チタン100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、顔料沈降防止効果が得られないおそれがある。100質量部を超えると、色別れや、耐候性の低下をまねくおそれがある。上記分散剤の含有量は、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0024】
また、第一の本発明の塗料組成物は、後述する第二の本発明の塗料組成物に使用される流動性改善剤を更に含んでいてもよい。
【0025】
第二の本発明は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、二酸化チタン、流動性改善剤、及び、有機溶媒を含み、上記流動性改善剤は、酸基及び塩基を有する会合型アクリル系ポリマーであることを特徴とする塗料組成物である。このため、長期の貯蔵安定性に優れ、塗布スジ、ムラ、ブツがない硬化塗膜を形成することができ、更に、得られた硬化塗膜は紫外線遮蔽性に優れる。
【0026】
酸基及び塩基を有する会合型アクリル系ポリマーである流動性改善剤を使用することにより、塗料組成物中の二酸化チタンの凝集を防止し、塗料組成物の貯蔵安定性を長期間維持できるのは、酸基が二酸化チタン表面に吸着し、更にポリマー鎖が水素結合あるいは電気的相互作用による部分的吸着等により溶媒中で会合することで構造粘性を発揮するためと推測される。
【0027】
第二の本発明の塗料組成物に含まれる流動性改善剤は、酸基及び塩基を有する会合型アクリル系ポリマーからなる。
上記会合型アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマー鎖に含有される極性基が、ポリマー鎖内、あるいはポリマー鎖間の水素結合あるいは電気的相互作用による部分的吸着等により、構造を形成し、結果、液の粘度を増加させる効果を持つものである。
【0028】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、主たるモノマー成分として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートからなる共重合体が挙げられる。
なお本発明明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを含む。
【0029】
上記酸基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基が好ましい。なかでも、より長期にわたり顔料の凝集を防止し、塗料の貯蔵安定性を維持できる点で、カルボン酸基が好ましい。
上記塩基としては、アミノ基が挙げられる。
【0030】
また、流動性改善剤は、カルボン酸と、ヒドロキシアミンもしくはヒドロキシイミンの窒素含有化合物との反応物であっても良い。
反応させるカルボン酸と窒素含有化合物の比率は、1:1が最も好ましい。
カルボン酸としては、ジカルボン酸、酸無水物が挙げられる。
ヒドロキシアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン等の1級、2級、3級アルカノールアミンやその混合物を挙げることができる。
ヒドロキシイミンとしては、例えば、オキサゾリン構造をもつもの、具体的には、Alkaterge T(商品名、Angus Chemical社製)等を挙げることができる。
【0031】
上記流動性改善剤は、重量平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、会合による構造形成が不十分で二酸化チタンの沈降を防止できないおそれがある。1000000を超えると、液の粘度が増加し過ぎ、塗装性を損なうおそれがある。上記重量平均分子量は5000以上であることがより好ましく、100000以下であることがより好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0032】
上記流動性改善剤として、市販品を使用してもよい。
本発明における流動性改善剤として適用可能な市販品としては、例えば、SOLTHIX250(商品名、日本ルーブリゾール社製)等を挙げることができる。
【0033】
上記流動性改善剤の含有量は、塗料組成物中0.05〜20質量%であることが好ましい。0.05質量%未満であると、二酸化チタンの沈降を防止できないおそれがある。20質量%を超えると分離や色別れのおそれがある。上記流動性改善剤の含有量は、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
【0034】
第二の本発明の塗料組成物は、上述した第一の本発明の塗料組成物に使用される分散剤を更に含んでいてもよい。
【0035】
第一及び第二の本発明の塗料組成物は、上述した分散剤又は流動性改善剤の他に、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、二酸化チタン及び有機溶媒を含む。これらについて、以下に説明する。また、本明細書において、「第一の本発明の塗料組成物」と「第二の本発明の塗料組成物」とをあわせて「本発明の塗料組成物」ともいう。
【0036】
本発明の塗料組成物は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを含む。硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを含むことにより、耐候性、耐湿性、耐熱性及び絶縁性に優れた塗膜を形成することができる。
【0037】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ポリマーに硬化性の官能基を導入したポリマーが挙げられる。なお、含フッ素ポリマーには明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
【0038】
含フッ素ポリマーに硬化性を与える官能基としては、例えば水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基等があげられ、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択される。なかでも、硬化反応性が良好な点から水酸基、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、シリル基が好ましく、特にポリマーの入手が容易な点や反応性が良好な点から水酸基が好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、含フッ素単量体と硬化性官能基含有単量体とを共重合することにより含フッ素ポリマーに導入される。
【0039】
硬化性官能基含有単量体としては、例えば、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことが好ましく、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことがより好ましい。
【0040】
上記硬化性官能基含有単量体としては、例えば次のものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。なお、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
(1−1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。これらのなかでも水酸基含有ビニルエーテル類、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
【0042】
他の水酸基含有単量体としては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等が例示できる。
なお、後述するカルボキシル基含有単量体は、上記水酸基含有単量体には含まれないものとする。
【0043】
(1−2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、例えば一般式(1):
【0045】
(式中、R
3、R
4及びR
5は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、アリール基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基;nは0または1である)で表わされる不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステル等の不飽和カルボン酸類;または一般式(2):
【0047】
(式中、R
6及びR
7は同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基;nは0または1;mは0または1である)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体等が挙げられる。
【0048】
上記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸類の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル等が挙げられる。それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステルが、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから好ましい。
【0049】
上記一般式(2)で表されるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、例えば3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸等の1種または2種以上が挙げられる。これらの中でも3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等が、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であり、好ましい。
【0050】
上記カルボキシル基含有単量体としては、上記一般式(1)又は(2)で表されるもの以外にも、例えば、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等の、多塩基カルボン酸のアルケニルエステル等を用いることができる。
【0051】
(1−3)酸無水物単量体:
酸無水物単量体としては、例えば、マレイン酸無水物等の、不飽和ジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0052】
(1−4)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、例えばCH
2=CH−O−(CH
2)
x−NH
2(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH
2=CH−O−CO(CH
2)
x−NH
2(x=1〜10)で示されるアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0053】
(1−5)シリコーン系ビニル単量体:
シリコーン系ビニル単量体としては、例えばCH
2=CHCO
2(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3SiCH
3(OC
2H
5)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
2H
5(OCH
3)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(CH
3)
2(OC
2H
5)、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3Si(CH
3)
2OH、CH
2=CH(CH
2)
3Si(OCOCH
3)
3、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
2H
5(OCOCH
3)
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiCH
3(N(CH
3)COCH
3)
2、CH
2=CHCO
2(CH
2)
3SiCH
3〔ON(CH
3)C
2H
5〕
2、CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
3SiC
6H
5〔ON(CH
3)C
2H
5〕
2等の(メタ)アクリル酸エステル類;CH
2=CHSi[ON=C(CH
3)(C
2H
5)]
3、CH
2=CHSi(OCH
3)
3、CH
2=CHSi(OC
2H
5)
3、CH
2=CHSiCH
3(OCH
3)
2、CH
2=CHSi(OCOCH
3)
3、CH
2=CHSi(CH
3)
2(OC
2H
5)、CH
2=CHSi(CH
3)
2SiCH
3(OCH
3)
2、CH
2=CHSiC
2H
5(OCOCH
3)
2、CH
2=CHSiCH
3〔ON(CH
3)C
2H
5〕
2、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が例示される。
【0054】
含フッ素単量体、すなわち、硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーを形成するための単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、及び、フルオロビニルエーテルを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及び、ビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、テトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0055】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、該ポリマーを構成する重合単位に応じて、例えば次のものが例示できる。
【0056】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー:
具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、または、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等との共重合体、更にはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0057】
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテル等のフッ素系単量体等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0058】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系ポリマーが、顔料分散性や耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0059】
具体的な硬化性官能基含有パーフルオロオレフィン系ポリマーとしては、例えばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等があげられ、特にTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が好ましい。
【0060】
TFE系の塗料用硬化性ポリマー組成物としては、例えばダイキン工業(株)製のゼッフルGKシリーズ等が例示できる。
【0061】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー:
具体例としては、例えばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。
【0062】
CTFE系の塗料用硬化性ポリマー組成物としては、例えば旭硝子(株)製のルミフロン、DIC(株)製のフルオネート、セントラル硝子(株)製のセフラルコート、東亜合成(株)製のザフロン等が例示できる。
【0063】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー:
具体例としては、例えばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。
【0064】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー:
具体例としては、例えばCF
3CF
2(CF
2CF
2)
nCH
2CH
2OCOCH=CH
2(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0065】
フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、例えばダイキン工業(株)製のユニダインやエフトーン、デュポン社製のゾニール等が例示できる。
【0066】
これらのうち、耐候性、防湿性を考慮すると、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0067】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、例えば、特開2004−204205号公報に開示される方法により製造することができる。
【0068】
本発明の塗料組成物中の上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの含有量は、塗料組成物中の不揮発分の総量100質量%に対し、20〜90質量%であることが好ましい。
【0069】
本発明の塗料組成物は、二酸化チタンを含む。
上記二酸化チタンとしては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、ルチル型、アナターゼ型のいずれであってもよいが、耐候性の面からルチル型が好ましい。
また、上記二酸化チタンとして、二酸化チタン微粒子の表面を無機処理した二酸化チタンや有機処理した二酸化チタン、あるいは無機および有機の両方で処理した二酸化チタンであってもよい。
無機処理した二酸化チタンとしては、例えば、二酸化チタン微粒子の表面をアルミナ(Al
2O
3)又はシリカ(SiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)で被覆したものが挙げられる。有機処理した二酸化チタンとしては、シランカップリング剤により表面処理されたものや、有機シロキサンにより表面処理されたもの、有機ポリオールにより表面処理されたもの、アルキルアミンにより表面処理されたもの等が挙げられる。
更に、二酸化チタンは、滴定法により得られる塩基価が酸価よりも高いものが、好ましい。
【0070】
本発明の塗料組成物に適用可能な二酸化チタンの市販品としては、例えば、D−918(商品名、堺化学工業社製)、R−960、R−706、R−931(デュポン社製)、PFC−105(石原産業社製)等が挙げられる。
【0071】
本発明の塗料組成物における二酸化チタンの含有量としては、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー100質量部に対して1〜500質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、紫外線を遮蔽できないおそれがある。500質量部を超えると、紫外線による黄変、劣化のおそれがある。
上記二酸化チタンの含有量としては、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下が更に好ましい。
【0072】
本発明の塗料組成物における有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;キシレン、トルエン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類;カルビトールアセテート等のジエチレングリコールエステル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;これらの混合等が挙げられる。
これらは、単独でまたは2種以上を併用してもよい。
なかでも、エステル類が好ましく、酢酸ブチルがより好ましい。
【0073】
本発明の塗料組成物は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤を含むことにより、本発明の塗料組成物を用いて硬化塗膜を形成することができる。
上記硬化剤は、硬化性ポリマーの官能基に応じて選択され、例えば、水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用される。
【0074】
上記硬化剤としては、中でも、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物、並びに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0075】
硬化剤として、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネート(以下、イソシアネート(i)ともいう。)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(I)ともいう。)を用いることにより、本発明の塗料組成物から得られる硬化塗膜が、太陽電池モジュールの封止材との密着性に優れたものとなる。更に、上記硬化塗膜を有する太陽電池モジュールのバックシートが、巻き取り工程等において該硬化塗膜が接触する面に対する耐ブロッキング性に優れたものとなる。
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、例えば、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、上記イソシアネート(i)からなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、上記イソシアネート(i)からなるビウレットを挙げることができる。
【0076】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(3):
【0078】
(式中、R
1は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
2は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(3)中のR
1は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記R
2がフェニレン基である場合、1,2−フェニレン基(o−フェニレン基)、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)、及び、1,4−フェニレン基(p−フェニレン基)のいずれであってもよい。中でも、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)が好ましい。また、上記一般式(3)中の全てのR
2が同じフェニレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記R
2がシクロヘキシレン基である場合、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、及び、1,4−シクロヘキシレン基のいずれであってもよい。中でも、1,3−シクロヘキシレン基が好ましい。また、上記一般式(3)中の全てのR
2が同じシクロヘキシレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0079】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【0081】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(5):
【0083】
(式中、R
2は、一般式(3)中のR
2と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0084】
上記ビウレットは、下記一般式(6):
【0086】
(式中、R
2は、一般式(3)中のR
2と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、上記イソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0087】
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、中でも、上記アダクト、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるものであることが好ましい。
【0088】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0089】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるキシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−キシリレンジイソシアネート)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−キシリレンジイソシアネート)が挙げられるが、中でも、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)が好ましい。
【0090】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)としては、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられるが、中でも、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0091】
キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0092】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(7):
【0094】
(式中、R
8は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)で表わされる化合物、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、トリメチロールプロパン(TMP)と、を付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
上記一般式(7)中のR
8で表されるフェニレン基又はシクロヘキシレン基については、上記一般式(3)におけるR
2について述べたとおりである。
【0095】
上記一般式(7)で表されるポリイソシアネート化合物の市販品としては、タケネートD110N(三井化学株式会社製、XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.8%)、タケネートD120N(三井化学株式会社製、H6XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.0%)等が挙げられる。
【0096】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、イソシアヌレート構造体である場合の具体例としては、タケネートD121N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、NCO含有量14.0%)、タケネートD127N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、H6XDIの3量体、NCO含有量13.5%)等が挙げられる。
【0097】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート(以下、単にブロックイソシアネートともいう。)を用いることにより、本発明の塗料組成物が充分なポットライフ(可使時間)を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(II)ともいう。)をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物(II)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0098】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(8):
【0100】
(式中、R
9は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(8)中のR
9は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0101】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【0103】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(9):
【0106】
上記ビウレットは、下記一般式(10):
【0108】
で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0109】
上記ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0110】
このように、上記ブロックイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物をブロック化剤で反応させて得られるものであり、上記ブロック化剤は、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0111】
上記ブロックイソシアネートを得るためのポリイソシアネート化合物(II)が、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0112】
上記ポリイソシアネート化合物(II)と反応させる、活性水素を有する化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトンオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;アセト酢酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物;3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等のピラゾール化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、活性メチレン化合物、オキシム類が好ましく、活性メチレン化合物がより好ましい。
【0113】
上記ブロックイソシアネートの市販品としては、デュラネートK6000(旭化成ケミカルズ株式会社製、HDIの活性メチレン化合物ブロックイソシアネート)、デュラネートTPA−B80E(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネートMF−B60X(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ株式会社製)、コロネート2507(日本ポリウレタン工業株式会社製)、コロネート2513(日本ポリウレタン工業株式会社製)、コロネート2515(日本ポリウレタン工業株式会社製)、スミジュールBL−3175(住化バイエルウレタン株式会社製)、LuxateHC1170(オリン・ケミカルズ社製)、LuxateHC2170(オリン・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0114】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(III)ともいう。)を用いることもできる。ポリイソシアネート化合物(III)としては、ポリイソシアネート化合物(II)として上述したものが挙げられる。
【0115】
ポリイソシアネート化合物(III)の具体例としては、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体、NCO含有量21.1%)、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、タケネートD170N(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)等が挙げられる。
【0116】
硬化剤として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(IV)ともいう。)を用いることにより、本発明の塗料組成物から得られる硬化塗膜を有する太陽電池モジュールのバックシートが、巻き取り工程等において該硬化塗膜が接触する面に対する耐ブロッキング性に優れたものとなる。
【0117】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、例えば、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、イソホロンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0118】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(11):
【0120】
(式中、R
10は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
11は、下記一般式(12):
【0122】
で表される基である。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(11)中のR
10は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0123】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【0125】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、イソホロンジイソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(13):
【0127】
(式中、R
11は、一般式(11)中のR
11と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、イソホロンジイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0128】
上記ビウレットは、下記一般式(14):
【0130】
(式中、R
11は、一般式(11)中のR
11と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、イソホロンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0131】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、中でも、上記アダクト及び上記イソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記ポリイソシアネート化合物(IV)は、イソホロンジイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるアダクト、及び、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0132】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)が、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0133】
イソホロンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0134】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(15):
【0136】
(式中、R
12は、下記一般式(12):
【0138】
で表される基である。)で表される化合物、すなわち、イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパン(TMP)とを付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0139】
上記一般式(12)で表されるポリイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネートのTMPアダクト体)の市販品としては、タケネートD140N(三井化学社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0140】
イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体の市販品としては、デスモジュールZ4470(住化バイエルウレタン株式会社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0141】
なかでも、上記硬化剤としては、タケネートD140N(三井化学社製、NCO含有量11%)、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)がより好ましい。
【0142】
本発明の塗料組成物における硬化剤の含有量は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー中の硬化性官能基1当量に対して0.1〜5当量であることが好ましく、0.5〜1.5当量であることがより好ましい。
【0143】
本発明の塗料組成物は、更に、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、他の樹脂や添加剤が挙げられ、上記添加剤としては、例えば、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等を挙げることができる。
【0144】
硬化促進剤としては、例えば有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛等が挙げられる。
【0145】
硬化促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の配合割合は硬化性官能基含有含フッ素ポリマー100重量部に対して1.0×10
−6〜1.0×10
−2重量部程度が好ましく、5.0×10
−5〜1.0×10
−3重量部程度がより好ましい。
【0146】
本発明の塗料組成物は、更に紫外線吸収剤を含んでいても良い。
紫外線吸収剤としては、有機系、無機系のいずれの紫外線吸収剤も用いることができる。有機系では、例えばサリチル酸エステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられ、無機系では酸化亜鉛、酸化セリウム等のフィラー型無機系紫外線吸収剤等が好ましい。
【0147】
本発明の塗料組成物は、上述した硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、二酸化チタン、分散剤又は流動性改善剤、及び、必要に応じて他の成分を、有機溶媒に混合または分散することにより調製することができる。
上記混合及び分散は、特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うことができる。
本発明の塗料組成物の固形分濃度は、特に限定されず、使用方法に応じて適宜調整するとよい。
【0148】
本発明の塗料組成物を使用して硬化塗膜を形成する方法としては、特に限定されないが、通常、基材上に硬化剤を配合した本発明の塗料組成物を塗装し、硬化させて硬化塗膜を形成する。
上記塗装は、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビアコート等が挙げられる。
上記硬化は、塗料組成物の成分に応じて、乾燥、加熱又は放射線照射等から適宜選択して行うとよい。
【0149】
このように本発明の塗料組成物は、特定の分散剤又は流動性改善剤を含むものである。このため、長期の貯蔵安定性に優れる。また、本発明の塗料組成物を用いれば、塗布ムラ、スジ、ブツのない硬化塗膜を形成することでき、かつ紫外線遮蔽性に優れる硬化塗膜を形成することができる。
【0150】
本発明はまた、基材と、上記基材の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層とを有し、上記フッ素樹脂層は、上述した塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜であることを特徴とする太陽電池モジュールのバックシートでもある。このため、表面に塗膜形成時のムラ、スジ、ブツがなく外観が良好で、紫外線遮蔽性にも優れる。
【0151】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、基材と、上記基材の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層とを有する。
上記基材としては、一般に太陽電池モジュールのバックシートに使用される樹脂シートが挙げられる。
上記樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエステルウレタン、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミド等のポリマーからなるシートが挙げられる。
なかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0152】
上記基材はまた、水不透過性シートであってもよい。水透過性シートを用いることにより、本発明のバックシートを用いて太陽電池モジュールとした場合に、封止材や太陽電池セルに水分が透過するのを防ぐことができる。
上記水不透過性シートとしては、例えば、PETシート、シリカ蒸着PETシート、アルミニウムやステンレススチール等の金属シート等が挙げられる。
なかでも、軽量、低価格、可とう性に富む点で、シリカ蒸着PETシートが好ましい。
【0153】
また、上記基材上のフッ素樹脂層又は他の層やシート等との接着性を向上させるために、上記基材は、表面処理をしたものであってもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、金属シートの場合はブラスト処理等が例示できる。いずれの処理も従来公知の方法を採用してよい。
上記表面処理は、基材の一方の面に形成されてもよく、両面に形成されてもよい。
【0154】
上記基材は、厚みが10〜500μmであることが好ましく、50〜300μmであることがより好ましい。
【0155】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、上記基材上の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層を有する。上記フッ素樹脂層は、上述した本発明の塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜である。
上記フッ素樹脂層の形成は、上述した本発明の塗料組成物を用いて硬化塗膜を形成する方法と同様に行うことができる。
上記基材への塗装は、上記塗料組成物を基材に直接塗布することにより行ってもよいし、またプライマー層等を介して塗布することにより行ってもよい。
上記プライマー層の形成は、従来公知のプライマー用塗料を用いて、常法により行うとよい。プライマー用塗料としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0156】
上記フッ素樹脂層の膜厚は5μm以上とすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上である。上限は、余り厚くすると軽量化効果が得られなくなるので、1000μm程度が好ましく、100μmがより好ましい。膜厚としては、特に10〜40μmが好ましい。
【0157】
上記フッ素樹脂層は、アセトンによるソックスレー抽出からゲル分率として計算される架橋度が90〜100%であることが好ましく、95〜100%であることがより好ましく、98〜100%であることが更に好ましい。
【0158】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートはまた、上記基材の両面に上記フッ素樹脂層を有していてもよい。基材の両面にフッ素樹脂層を有する場合、これらの2つのフッ素樹脂層は、上述した範囲に含まれる成分から形成されたものであればよく、同成分からなるフッ素樹脂層であっても、異なる成分からなるフッ素樹脂層であってもよい。
また、他の層との接着性を向上させるために、上記フッ素樹脂層に表面処理を施しても良い。
表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、シランカップリング剤等のコーティング処理が例示できる。
【0159】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、上述した基材とフッ素樹脂層以外に、他の材料層を有してもよい。上記バックシートが他の材料層を有する場合、他の材料層、基材、フッ素樹脂層の順に積層されていることが好ましい。
上記他の材料層としては、接着剤からなる接着剤層、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシート又はポリエステル塗料の塗膜(他のシート又は塗膜)が挙げられる。これらの層は、プライマー層等を介して積層されていてもよい。
【0160】
上記接着剤層としては、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ナイロン系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤等の公知の接着剤からなる層が挙げられる。
【0161】
上記硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜としては、例えば特開2004−214342号公報に記載されているPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配合した塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/CTFE共重合体とアルコキシシラン単位含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/HFP共重合体と水酸基含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/HFP共重合体にアミノシランカップリング剤を配合した塗料の硬化塗膜等が挙げられる。膜厚は、通常、5〜300μmとすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0162】
上記含フッ素ポリマーシートとしては、PVdFシートやPVFシート、PCTFEシート、TFE/HFP/エチレン共重合体シート、TFE/HFP共重合体(FEP)シート、TFE/PAVE共重合体(PFA)シート、エチレン/TFE共重合体(ETFE)シート、エチレン/CTFE共重合体(ECTFE)シート等、現在のバックシートに使用されている含フッ素ポリマーシートが挙げられる。膜厚は、通常、5〜300μmとすることが、耐候性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0163】
上記ポリエステルシートとしては、従来のバックシートで使用されているものがそのまま使用でき、その水不透過性シートへの接着はアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤等によって行うことができる。膜厚は、通常5〜300μmとすることが、耐候性、コスト、透明性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0164】
上記ポリエステル塗料としては、多価カルボン酸と多価アルコール等とを用いた飽和ポリエステル樹脂を用いたもの、無水マレイン酸、フマル酸等とグリコール類とを用いた不飽和ポリエステル樹脂を用いたもの等があげられ、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート等の塗装方法により塗膜を形成できる。膜厚は、5〜300μmとすることが隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0165】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、上記基材上に、上述した方法で上記塗料組成物を用いてフッ素樹脂層を形成したり、上記他の材料層を形成したり、シートを積層して製造するとよい。また公知の方法により、所望の層構成となるよう製造するとよい。
【0166】
本発明はまた、上述した太陽電池モジュールのバックシートを備えることを特徴とする太陽電池モジュールでもある。
本発明の太陽電池モジュールは、上述したバックシート、及び、上記バックシートの上に形成された封止材層を有することが好ましい。
封止材層は、太陽電池セルを封止するための層であり、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等で構成されることが好ましい。なかでも、EVAが好ましく用いられる。
【0167】
本発明の太陽電池モジュールの好ましい実施態様の一例の概略模式図を
図1及び
図2に示す。
図1に示される第1の構造において、太陽電池セル1は、封止材層2に封止されており、封止材層2は、表面層3とバックシート4とで挟まれている。バックシート4は、基材5とフッ素樹脂層6とから構成され、フッ素樹脂層6が最外層となるように備えられている。
【0168】
表面層3は、太陽電池モジュールの受光面を保護するための層であり、通常ガラス板が用いられるが、樹脂シート等のフレキシブルな材料を用いてもよい。
【0169】
図2に示される第2の構造において、バックシート4は、基材5の一方の面に他の材料層7を有し、他方の面にフッ素樹脂層6を有する3層構造のものであり、フッ素樹脂層6が最外層となるように備えられている。
【0170】
本発明の太陽電池モジュールは、更に、ジャンクションボックスを有していてもよい。上記ジャンクションボックスは、太陽電池セルからの出力電力を取り出すための電極や配線(太陽電池セルと接続された電極や配線)や、出力電力を太陽電池モジュールの外部に取り出すためのケーブルが接続される端子を収納する箱体である。
ジャンクションボックスは、太陽電池モジュールのバックシート側面に接着層を介して設けられることが好ましい。上記接着層は、公知の接着剤からなる層でよい。
【0171】
以上のように、本発明によれば、長期間の貯蔵安定性に優れた塗料組成物を得ることができる。また、本発明の塗料組成物を用いれば、スジ、ムラ、ブツがなく、優れた紫外線遮蔽性を有する硬化塗膜を形成することができる。このため、本発明の塗料組成物を用いて基材上に形成された硬化塗膜は、太陽電池モジュールのバックシートとして好適に適用することができる。
【実施例】
【0172】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0173】
<酸価の測定>
酸価は、塩基性物質を用いた酸塩基滴定法により測定した。
【0174】
<塩基価の測定>
塩基価は、酸性物質を用いた酸塩基滴定法により測定した。
【0175】
(実施例1)
硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570、固形分65質量%、水酸基価60mgKOH/g、溶剤:酢酸ブチル)202質量部、白色顔料として二酸化チタン(堺化学工業社製のD918)263質量部、分散剤a(楠本化成社製のディスパロンDA−375)26.3質量部、酢酸ブチル167質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを632質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を283質量部、酢酸ブチル85質量部加えて塗料組成物1を調製した。
【0176】
(実施例2)
実施例1において、分散剤として、分散剤a(楠本化成社製のディスパロンDA−375)を18.4質量部用いた点以外は、実施例1と同様にして塗料組成物2を調製した。
【0177】
(実施例3)
実施例1において、分散剤として、分散剤a(楠本化成社製のディスパロンDA−375)を10.5質量部用いた点以外は、実施例1と同様にして塗料組成物3を調製した。
【0178】
(実施例4)
実施例1において、分散剤として、分散剤aの代わりに分散剤b(日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE36000)を26.3質量部用いた点以外は、実施例1と同様にして塗料組成物4を調製した。
【0179】
(実施例5)
実施例1において、分散剤として、分散剤aの代わりに分散剤b(日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE36000)を10.5質量部用いた点以外は、実施例1と同様にして塗料組成物5を調製した。
【0180】
(実施例6〜8)
実施例1において、分散剤として、分散剤aの代わりに表1に記載の分散剤をそれぞれ用いた点以外は、実施例1と同様にして塗料組成物6〜8を調製した。
【0181】
(実施例9)
硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570、固形分65質量%、水酸基価60mgKOH/g、溶剤:酢酸ブチル)202質量部、白色顔料として二酸化チタン(堺化学工業社製のD918)263質量部、酢酸ブチル167質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを632質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を283質量部、酢酸ブチル85質量部加えて塗料組成物を調製した。
この塗料組成物に流動性改善剤f(日本ルーブリゾール社製のSOLTHIX250)を7質量部添加し、顔料分散機にて10分間分散させ、塗料組成物9を調製した。
【0182】
(比較例1)
実施例1において、分散剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様にして塗料組成物10を調製した。
【0183】
(比較例2)
実施例9における、流動性改善剤fの代わりに流動性改善剤g(楠本化成社製のディスパロンPFA−131)を30g用いた点以外は、実施例9と同様にして塗料組成物11を調製した。
【0184】
なお、表1中の分散剤は、以下のとおりである。
分散剤a:ディスパロンDA−375(商品名、ポリエーテルリン酸エステル、楠本化成社製)
分散剤b:SOLSPERSE36000(商品名、リン酸基含有、多官能櫛型ポリマー、日本ルーブリゾール社製)
分散剤c:フローレンG−700(商品名、分岐ポリカルボン酸共重合物の部分エステル、楠本化成社製)
分散剤d:SOLSPERSE32000(商品名、リン酸基含有、多官能櫛型ポリマー、日本ルーブリゾール社製)
分散剤e:ディスパロンDA−325(商品名、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩、楠本化成社製)
流動性改善剤f:SOLTHIX250(商品名、酸基及び塩基を有する会合型ポリマー、日本ルーブリゾール社製)
流動性改善剤g:ディスパロンPFA−131(商品名、アマイドワックス、楠本化成社製)
【0185】
得られた塗料組成物1〜11について、下記の方法で貯蔵安定性、塗装性及び紫外線遮蔽性を評価した。結果を表1に示す。
<塗料の貯蔵安定性>
JIS K5600−2−7に準じて行った。すなわち、上記で得られた塗料組成物1〜11を容積50mlのスクリュー管容器に入れて密閉し、室温にて静置し、静置開始から40日、60日、90日、180日経過後の塗料組成物の様子を評価した。
顔料が容器の底面に沈着していなければ「○」とし、沈着が認められれば「×」と判定した。
【0186】
<塗装性>
上記で得られた塗料組成物1〜11を、上記貯蔵安定性の評価方法と同様にして、40日又は90日静置した。静置後の各塗料組成物の100質量部にイソシアネート系硬化剤(住化バイエルウレタン(株)製のスミジュールN3300)6.5質量部を配合して、白色塗料を調製した。
バックシート基材としてPETシート(東レ(株)製のルミラーS10、厚さ250μm)を使用し、このシートの片面に調製した白色塗料を乾燥膜厚が10μmになるようにバーコーターにて塗装し、120℃で2分間、乾燥硬化させた。
得られた白色硬化塗膜表面を目視で観察し、スジ、ブツ、ムラの有無を調べた。
【0187】
<紫外線遮蔽性>
上記で得られた塗料組成物1〜11を、上記貯蔵安定性の評価方法と同様にして、40日又は90日静置した。静置後の各塗料組成物の100質量部にイソシアネート系硬化剤(住化バイエルウレタン(株)製のスミジュールN3300)6.5質量部を配合して、白色塗料を調製した。評価用基材としてPCTFEフィルム(ダイキン工業(株)製、ネオフロンPCTFEフィルム、厚さ25μm)を使用し、このフィルムの片面に、調製した白色塗料を乾燥膜厚が10μmになるようにバーコーターにて塗装し、120℃で2分間、乾燥硬化させた。
分光光度計(日立社製、U−4100)を用いて、得られた塗装フィルムの390nm波長の紫外線の透過率を測定した。
【0188】
【表1】