(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1カバー層のゴム材料または第2カバー層のゴム材料の一方が黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色の何れかであり、他方が白色、灰色または黒色の何れかである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の建造物用の積層ゴム支承。
前記第1及び第3カバー層のゴム材料または第2カバー層のゴム材料の一方が黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色の何れかであり、他方が白色、灰色または黒色の何れかである
ことを特徴とする請求項2に記載の建造物用の積層ゴム支承。
前記第1カバー層のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して、20%以上異なる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の建造物用の積層ゴム支承。
前記第1及び第3カバー層のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して、20%以上異なる
ことを特徴とする請求項2に記載の建造物用の積層ゴム支承。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記積層ゴム支承では、積層体のゴムは天然ゴム(NR)やブタジエンゴム(BR)から成るので、積層体を構成する天然ゴムやブタジエンゴムのオゾンや紫外線による劣化を防止するため、積層体の側面がエチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)やクロロプレンゴム(CR)から成るカバー層によって覆われている。
【0005】
このように、前記積層ゴム支承では、オゾンや紫外線による積層体の劣化をカバー層によって防止するように構成し、カバー層がオゾンクラックの発生し難いゴム材料から形成されているが、長期に亘る使用により、カバーゴム層にも硬化劣化、オゾンクラック、その他外力によるクラックが発生する。また、カバー層にクラックが発生した場合は、安全性を考慮し、積層ゴム支承の修理や交換等のメンテナンスが行われている。
【0006】
しかしながら、積層ゴム支承は橋桁と橋脚との間やビルと地面との間に配置されているので、積層ゴム支承の外観検査は容易ではなく、また、積層ゴム支承はその側面の面積が大きいことから、外観検査を積層ゴム支承の全体に亘って正確に行うことが難しい。
【0007】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外観検査及びメンテナンスを容易且つ正確に行うことのできる積層ゴム支承を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するため、複数の補強板とゴムとを上下方向に積層してなる積層体を備えた建造物用の積層ゴム支承において、ゴム材料から成り、前記積層体の積層方向と直
交する方向の面である該積層体の側面を覆う第1カバー層と、第1カバー層と異なる色のゴム材料から成り、第1カバー層の外周面を覆う第2カバー層とを少なくとも備えている。
【0009】
これにより、第1カバー層のゴム材料の色と第2カバー層のゴム材料の色とが異なることから、例えば第2カバー層にクラックが発生してそのクラックが第1カバー層まで伸展すると、第2カバー層と異なる色のゴム材料から成る第1カバー層が外観上見えることになり、クラックが第1カバー層まで伸展していることを容易且つ明確に視認できる。
【0010】
また、第1カバー層は積層体の側面を覆うように設けられ、第2カバー層は第1カバー層の外周面を覆うように設けられていることから、第2カバー層にクラックが発生してそのクラックが第1カバー層にまで伸展しても、クラックが第1カバー層を貫通するまではクラックは積層体には到達しない。このため、積層体にクラックが伸展する前に積層ゴム支承の修理や交換を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明は、複数の補強板とゴムとを上下方向に積層してなる積層体を備えた建造物用の積層ゴム支承において、ゴム材料から成り、前記積層体の積層方向と直
交する方向の面である該積層体の側面を覆う第1カバー層と、第1カバー層と異なる色のゴム材料から成り、第1カバー層の外周面を覆う第2カバー層と、第2カバー層と異なる色のゴム材料から成り、第2カバー層の外周面を覆う第3カバー層とを少なくとも備えている。
【0012】
これにより、第2カバー層のゴム材料の色と第3カバー層のゴム材料の色とが異なることから、例えば第3カバー層にクラックが発生してそのクラックが第2カバー層まで伸展すると、第3カバー層と異なる色のゴム材料から成る第2カバー層が外観上見えることになり、クラックが第2カバー層まで伸展していることを容易且つ明確に視認可能となる。
【0013】
また、第2カバー層に達したクラックが第1カバー層まで伸展すると、第1カバー層のゴム材料の色と第2カバー層のゴム材料の色とが異なることから、第2カバー層と異なる色のゴム材料から成る第1カバー層が外観上見えることになり、クラックが第1カバー層まで伸展していることを容易且つ明確に視認可能となる。
【0014】
また、第1カバー層は積層体の側面を覆うように設けられ、第2カバー層は第1カバー層の外周面を覆うように設けられ、第3カバー層は第2カバー層の外周面を覆うように設けられていることから、第3カバー層及び第2カバー層にクラックが発生してそのクラックが第1カバー層にまで伸展しても、クラックが第1カバー層を貫通するまではクラックは積層体には到達しない。このため、積層体にクラックが伸展する前に積層ゴム支承の修理や交換を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層ゴム支承によれば、クラックが内部のカバー層まで伸展していることを容易且つ明確に視認可能であることから、積層ゴム支承の外観検査を容易且つ正確に行うことができ、また、クラックが発生してそのクラックが第1カバー層にまで伸展しても、クラックが第1カバー層を貫通するまではクラックは積層体には到達しないので、積層体にクラックが伸展する前に積層ゴム支承の修理や交換を行うことが可能であり、積層ゴム支承のメンテナンスを適切に行う上で極めて有利である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1実施形態の積層ゴム支承を
図1〜
図8を参照しながら説明する。この積層ゴム支承は橋桁1と、橋脚等の支持体2との間に配置されるものである。また、例えば橋桁1は上面に自動車用道路が設けられ、橋軸直角方向Yに並ぶように設けられた複数の積層ゴム支承によって支持体2に支持されている。
【0018】
この積層ゴム支承は、
図1及び
図2に示すように、上端側が橋桁1に取付けられたソールプレート10に取付けられ、下端側が支持体2に取付けられたベースプレート20に取付けられる。
【0019】
ソールプレート10は鉄鋼材料から成る矩形の板状部材であり、複数のアンカーボルト10aによって橋桁1に取付けられている。ソールプレート10の下面における略中央部には凹状部10bが設けられ、凹状部10bは水平方向の断面が円形状となるように形成されている。
【0020】
ベースプレート20は鉄鋼材料から成る矩形の板状部材であり、複数のアンカーボルト20aによって支持体2に取付けられている。ベースプレート20の上面における略中央部には凹状部20bが設けられ、凹状部20bは水平方向の断面が円形状となるように形成されている。
【0021】
また、この積層ゴム支承は、
図2及び
図3に示すように、ソールプレート10の下面に取付けられた上沓30と、ベースプレート20の上面に取付けられた下沓40と、上沓30と下沓40との間に配置された積層体50と、積層体50の橋軸方向Xの側面50a及び橋軸直角方向Yの側面50bを覆う第1カバー層60と、第1カバー層60の外周面を覆う第2カバー層70とを備えている。
【0022】
上沓30は鉄鋼材料から成る矩形の板状部材であり、複数のボルト30aによってソールプレート10に取付けられている。また、上沓30の略中央部には貫通孔30bが設けられ、貫通孔30bは水平方向の断面が円形状となるように形成されている。
【0023】
下沓40は鉄鋼材料から成る矩形の板状部材であり、複数のボルト40aによってベースプレート20に取付けられている。また、下沓40の略中央部には貫通孔40bが設けられ、貫通孔40bは水平方向の断面が円形状となるように形成されている。
【0024】
積層体50は、上沓30に取付けられた上側補強板51と、下沓40に取付けられた下側補強板52と、上側補強板51と下側補強板52との間に互いに上下方向に間隔をおいて設けられた複数の補強板53と、各補強板51,52,53と加硫接着によって接着しているゴム54とを有する。
【0025】
上側補強板51は鉄鋼材料から成る矩形の板状部材であり、複数のボルト51aによって上沓30に取付けられている。また、上側補強板51の上面の略中央部には凹状部51bが設けられ、凹状部51bは水平方向の断面が円形状となるように形成されている。凹状部51bにはキー部材51cが挿入され、キー部材51cの上端側は上沓30の貫通孔30bを挿通してソールプレート10の凹状部10bに挿入されている。
【0026】
下側補強板52は鉄鋼材料から成る矩形の板状部材であり、複数のボルト52aによって下沓40に取付けられている。また、下側補強板52の下面の略中央部には凹状部52bが設けられ、凹状部52bは水平方向の断面が円形状となるように形成されている。凹状部52bにはキー部材52cが挿入され、キー部材52cの下端側は上沓40の貫通孔40bを挿通してベースプレート20の凹状部20bに挿入されている。
【0027】
各補強板53は鉄鋼材料から成る矩形の板状部材であり、上側補強板51及び下側補強板52よりも薄く形成されている。
【0028】
ゴム54は、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(BR−IIR,Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)のうち一種のポリマー、または複数種類のポリマーを混合したものに、カーボンブラック、加硫剤、可塑剤、安定剤、老化防止剤、加工助剤等のゴム配合剤を適宜配合したものを加硫して成る。尚、カーボンブラックの代わりに他の補強剤を用いることも可能である。
【0029】
第1カバー層60は、例えば白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色の何れかのゴム材料から成る。第1カバー層51は、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(BR−IIR,Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)のうち一種のポリマー、または複数種類のポリマーを混合したものに、シリカ等のホワイトカーボン、加硫剤、可塑剤、安定剤、老化防止剤、加工助剤、顔料、カーボンブラック等を適宜配合したものを加硫して成る。例えば、顔料を用いない場合は第1カバー層60が白色となり、少量のカーボンブラックを配合する場合は第1カバー層60が灰色となり、顔料を用いる場合は第1カバー層60が顔料の色に応じた色となる。
【0030】
第2カバー層70は、例えば黒色のゴム材料から成る。第2カバー層70は、天然ゴムやイソプレンゴムやスチレンブタジエンゴムよりも耐候性に優れている例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(BR−IIR,Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)、シリコンゴム(Q)のうち一種のポリマー、または複数種類のポリマーを混合したものに、カーボンブラック、加硫剤、可塑剤、安定剤、老化防止剤、加工助剤、顔料等のゴム配合剤を適宜配合したものを加硫して成る。尚、カーボンブラックの代わりに他の補強剤を用いることも可能である。
【0031】
本実施形態の積層ゴム支承は、下側補強板52、ゴム54を成形するための未加硫ゴムシート、補強板53、ゴム54を成形するための未加硫ゴムシート、補強板53、…ゴム54を成形するための未加硫ゴムシート、上側補強板51の順に積層した後、ゴム54を成形するための複数の未加硫ゴムシートと各補強板51,52,53とが積層された未加硫積層物の側面に第1カバー層60を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付け、さらに第1カバー層60を成形するための未加硫ゴムシートの外周面に第2カバー層70を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付け、これを所定の加硫用金型内で圧力及び温度を加えて加硫することにより成形される。この場合、各補強板51,52,53の表面にはゴム54との加硫接着のための接着剤が適宜塗布されているので、各補強板51,52,53とゴム54とが接着される。また、加硫用金型内で加硫成形することにより、積層体50のゴム54と第1カバー層60とが加硫によって結合し、第1カバー層60と第2カバー層70とが加硫によって結合する。
【0032】
以上のように構成された積層ゴム支承は、橋桁1を上下方向及び/または水平方向に支持する。また、例えば温度の変化によって橋梁が橋軸方向Xに伸縮する場合、積層ゴム支承は
図4に示すように橋軸方向Xに弾性変形することになる。また、積層ゴム支承に上下方向の荷重が加わる場合、各補強板51,52,53の間のゴム54が水平方向の外側に押出され、
図5に示すように押出されたゴム54によって積層体50の側面が突出し、その突出に応じて各カバー層60,70が変形する。
【0033】
また、ゴムは引張変形が生じた状態でオゾンや紫外線にさらされると、比較的表面の劣化が早く、表面にオゾンクラック等のクラックが発生し易い。また、橋桁1の下は紫外線やオゾンの影響を比較的受け易い場所である。このため、
図4のように積層ゴム支承が橋軸方向Xに弾性変形した状態や
図5のように上下方向の荷重が加わった状態は、積層ゴム支承のゴムの表面にオゾンクラック等のクラックが発生し易い状況と言える。
【0034】
ここで、本実施形態の積層ゴム支承は、第1カバー層60のゴム材料の色と第2カバー層のゴム材料の色とが異なり、例えば第1カバー層60のゴム材料の色が白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色であり、第2カバー層60のゴム材料の色が黒であることから、
図6に示すようにクラックCが発生し、これを
図6におけるA方向から見た場合に、第2カバー層70と異なる色の第1カバー層60が外観上見えることになり、クラックCが第1カバー層60まで伸展していることを容易且つ明確に視認可能となる。
【0035】
また、第1カバー層60は積層体50の側面50a,50bを覆うように設けられ、第2カバー層70は第1カバー層60の外周面を覆うように設けられていることから、
図6に示すように第2カバー層70にクラックが発生してそのクラックが第1カバー層60にまで伸展しても、クラックが第1カバー層60を貫通するまではクラックが積層体50に到達しない。このため、積層体50のゴム54にクラックが伸展する前に積層ゴム支承の修理や交換を行うことが可能となる。
【0036】
このため、第1実施形態の積層ゴム支承は、積層ゴム支承の外観検査を容易且つ正確に行うことができ、また、積層体50のゴム54にクラックが伸展する前に積層ゴム支承の修理や交換を行うことが可能であり、積層ゴム支承のメンテナンスを適切に行う上で極めて有利である。
【0037】
ここで、第1カバー層60のゴム材料の色と第2カバー層70のゴム材料の色の組合せは前記に限られるものではなく、例えば、第1カバー層60のゴム材料の色が黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色であり、第2カバー層70のゴム材料の色が白色、灰色または黒色である場合でも、前述と同様の作用効果を達成可能である。また、第1カバー層60のゴム材料の色が黒色であるとともに、第2カバー層70のゴム材料の色が白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色である場合や、第1カバー層60のゴム材料の色が白色、灰色または黒色であり、第2カバー層70のゴム材料の色が黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色である場合でも、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0038】
また、この他にも、第1カバー層60のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層70の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上異なる場合は、前述と同様の作用効果を達成可能である。例えば、
図7及び8は様々な色のゴム材料の表面(平面部分)の色をコニカミノルタ社製の分光反射率計(CM−700d)を用いて約23℃雰囲気で測定した結果である。この中で、黒色、灰色及び白色のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差は5%以下であり、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色及び青色のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差は25%以上である。即ち、第1カバー層60のゴム材料の色が青色であり、第2カバー層70のゴム材料が黒色である場合は、第1カバー層60のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層70の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して20%以上となり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0039】
また、この他にも、第1カバー層60のゴム材料の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層70の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上異なる場合は、前述と同様の作用効果を達成可能である。即ち、第1カバー層60のゴム材料の色が緑色や黄色や桃色であり、第2カバー層70のゴム材料が黒色や灰色や白色である場合は、第1カバー層60のゴム材料の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層70の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して15%以上となり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0040】
また、この他にも、第1カバー層60のゴム材料の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層70の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上異なる場合は、前述と同様の作用効果を達成可能である。即ち、第1カバー層60のゴム材料の色が緑色や黄色や桃色や赤色であり、第2カバー層70のゴム材料が黒色や灰色や白色である場合は、第1カバー層60のゴム材料の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層70の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して15%以上となり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0041】
尚、カーボンブラックはゴムを補強する上でホワイトカーボンと比較して優れていることから、第2カバー層70の引張強度や引裂き強度等の機械的強度、耐オゾン性、耐紫外線性等を向上し、積層ゴム支承の耐久性の向上を図るために、第2カバー層70のゴム材料の色は黒であることがより好ましい。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態の積層ゴム支承を第9〜10を参照しながら説明する。第2実子形態の積層ゴム支承は、第1実施形態と同等の上沓30、下沓40、及び積層体50とを備え、さらに、積層体50の橋軸方向Xの側面50a及び橋軸直角方向Yの側面50bを覆う第1カバー層80と、第1カバー層80の外周面を覆う第2カバー層90と、第2カバー層90の外周面を覆う第3カバー層100とを備えている。
【0043】
第1カバー層80は、例えば黒色のゴム材料から成る。第1カバー層80は、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(BR−IIR,Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)のうち一種のポリマー、または複数種類のポリマーを混合したものに、カーボンブラック、加硫剤、可塑剤、安定剤、老化防止剤、加工助剤、顔料等のゴム配合剤を適宜配合したものを加硫して成る。尚、カーボンブラックの代わりに他の補強剤を用いることも可能である。
【0044】
第2カバー層90は、例えば白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色の何れかのゴム材料から成る。第2カバー層90は、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(BR−IIR,Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)のうち一種のポリマー、または複数種類のポリマーを混合したものに、シリカ等のホワイトカーボン、加硫剤、可塑剤、安定剤、老化防止剤、加工助剤、顔料、カーボンブラック等を適宜配合したものを加硫して成る。例えば、顔料を用いない場合は第2カバー層90が白色となり、少量のカーボンブラックを配合する場合は第2カバー層90が灰色となり、顔料を用いる場合は第2カバー層90が顔料の色に応じた色となる。
【0045】
第3カバー層100は、例えば黒色のゴム材料から成る。第3カバー層100は、天然ゴムやイソプレンゴムやスチレンブタジエンゴムよりも耐候性に優れている例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(BR−IIR,Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)、シリコンゴム(Q)のうち一種のポリマー、または複数種類のポリマーを混合したものに、カーボンブラック、加硫剤、可塑剤、安定剤、老化防止剤、加工助剤、顔料等のゴム配合剤を適宜配合したものを加硫して成る。尚、カーボンブラックの代わりに他の補強剤を用いることも可能である。
【0046】
本実施形態の積層ゴム支承の積層部50は、下側補強板52、ゴム54を成形するための未加硫ゴムシート、補強板53、ゴム54を成形するための未加硫ゴムシート、補強板53、…ゴム54を成形するための未加硫ゴムシート、上側補強板51の順に積層した後、ゴム54を成形するための複数の未加硫ゴムシートと各補強板51,52,53とが積層された未加硫積層物の側面に第1カバー層80を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付け、さらに第1カバー層80を成形するための未加硫ゴムシートの外周面に第2カバー層90を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付け、さらに第2カバー層90を成形するための未加硫ゴムシートの外周面に第3カバー層100を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付け、これを所定の加硫用金型内で圧力及び温度を加えて加硫することにより成形される。加硫用金型内で加硫成形することにより、積層体50のゴム54と第1カバー層80とが加硫によって結合し、第1カバー層80と第2カバー層90とが加硫によって結合し、第2カバー層90と第3カバー層100とが加硫によって結合する。
【0047】
以上のように構成された積層ゴム支承は、第1実施形態と同様に、例えば温度の変化によって橋梁が橋軸方向Xに伸縮する場合、積層ゴム支承が橋軸方向Xに弾性変形し、また、積層ゴム支承に上下方向の荷重が加わる場合、各補強板51,52,53の間のゴム54が水平方向の外側に押出され、
図10に示すように押出されたゴム54によって積層体50の側面が突出し、その突出に応じて各カバー層80,90,100が変形する。
【0048】
ここで、本実施形態の積層ゴム支承は、第2カバー層90のゴム材料の色と第3カバー層100のゴム材料の色とが異なり、例えば第2カバー層90のゴム材料の色が白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色であり、第3カバー層100のゴム材料の色が黒であることから、第3カバー層100にクラックが発生し、そのクラックが第2カバー層90に達する場合に、第3カバー層100と異なる色の第2カバー層90が外観上見えることになり、クラックが第2カバー層90まで伸展していることを容易且つ明確に視認可能である。
【0049】
また、第1カバー層80のゴム材料の色と第2カバー層90のゴム材料の色とが異なり、例えば第1カバー層80のゴム材料の色が黒であり、第2カバー層90のゴム材料の色が白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色であることから、
図10に示すようにクラックCが発生し、これを
図10におけるA方向から見た場合に、第2カバー層90と異なる色の第1カバー層80が外観上見えることになり、クラックCが第1カバー層80まで伸展していることを容易且つ明確に視認可能となる。
【0050】
ここで、
図10におけるA方向からクラックCを見る場合、クラックCが第2カバー層90まで伸展している場合は
図11(a)のように視認され、クラックCが第1カバー層80まで伸展している場合は
図11(b)のように視認される。このため、第1カバー層80が黒色のゴム材料から成る場合であっても、クラックCの口が開いた状態では、黒以外のゴム材料から成る第2カバー層90の中央に黒色の部分があることが明確に視認されるので、クラックCが第1カバー層80まで伸展していることを容易且つ明確に視認可能である。
【0051】
また、第1カバー層80は積層体50の側面50a,50bを覆おうように設けられ、第2カバー層90は第1カバー層80の外周面を覆うように設けられ、第3カバー層100は第2カバー層90の外周面を覆うように設けられていることから、
図10に示すように第2カバー層90にクラックが発生してそのクラックが第1カバー層80にまで伸展しても、クラックが第1カバー層80を貫通するまではクラックが積層体50に到達しないので、積層体50のゴム54にクラックが伸展する前に積層ゴム支承の修理や交換を行うことが可能となる。
【0052】
以上のように、第2実施形態の積層ゴム支承は、積層ゴム支承の外観検査を容易且つ正確に行うことができ、また、積層体50のゴム54にクラックが伸展する前に積層ゴム支承の修理や交換を行うことが可能であり、積層ゴム支承のメンテナンスを適切に行う上で極めて有利である。
【0053】
また、第1、第2及び第3カバー層80,90,100を有し、隣り合うカバー層のゴム材料の色が異なることから、2層の場合と比較してカバー層に発生するクラックの深さの確認をより詳細に行うことが可能であり、積層ゴム支承のメンテナンスを適切に行う上で極めて有利である。
【0054】
ここで、第1カバー層80のゴム材料の色と第2カバー層90のゴム材料の色と第3カバー層90のゴム材料の色の組合せは前記に限られるものではなく、例えば、第1カバー層80のゴム材料の色が黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色であり、第2カバー層90のゴム材料の色が白色、灰色または黒色であり、第3カバー層80のゴム材料の色が黄色、橙色、赤色、桃色、緑色または青色である場合でも、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0055】
また、この他にも、第1カバー層80及び第3カバー層100のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層90の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上異なる場合は、前述と同様の作用効果を達成可能である。即ち、第1カバー層80のゴム材料の色が黒色であり、第2カバー層90のゴム材料が桃色であり、第3カバー層100のゴム材料の色が黒色である場合は、第1カバー層60のゴム材料の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層70の400〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して20%以上となり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0056】
また、この他にも、第1カバー層80及び第3カバー層100のゴム材料の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層90の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上異なる場合は、前述と同様の作用効果を達成可能である。即ち、第1カバー層80及び第3カバー層100のゴム材料の色が緑色や黄色や桃色であり、第2カバー層90のゴム材料が黒色や灰色や白色である場合は、第1カバー層80及び第3カバー層100のゴム材料の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層90の500〜600nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して15%以上となり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0057】
また、この他にも、第1カバー層80及び第3カバー層100のゴム材料の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層90の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上異なる場合は、前述と同様の作用効果を達成可能である。即ち、第1カバー層80及び第3カバー層100のゴム材料の色が緑色や黄色や桃色や赤色であり、第2カバー層90のゴム材料が黒色や灰色や白色である場合は、第1カバー層80及び第3カバー層100のゴム材料の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差が、第2カバー層90の500〜700nmの波長領域における分光反射率の最大値と最小値との差に対して15%以上となり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0058】
尚、カーボンブラックはゴムを補強する上でホワイトカーボン等と比較して優れていることから、第3カバー層100の引張強度や引裂き強度等の機械的強度、耐オゾン性、耐紫外線性等を向上し、積層ゴム支承の耐久性の向上を図るために、第3カバー層100のゴム材料の色は黒であることが好ましい。即ち、第3カバー層100のゴム材料の色が黒であり、第2カバー層90のゴム材料の色が白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色、青色等であることが好ましい。
【0059】
さらに、カーボンブラックはゴムを補強する上でホワイトカーボンと比較して優れていることから、第1カバー層80の引張強度や引裂き強度等の機械的強度、耐オゾン性、耐紫外線性等を向上し、クラックが第3カバー層100まで伸展した際でも、そのクラックが容易に積層体50のゴム54まで伸展しないように、第1カバー層80のゴム材料の色は黒であることが好ましい。即ち、第1カバー層80のゴム材料の色が黒であり、第2カバー層90のゴム材料の色が白色、灰色、黄色、橙色、赤色、桃色、緑色、青色等であることが好ましい。
【0060】
また、第1カバー層は、耐引き裂き性に優れた天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(BR−IIR,Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)のうち一種のポリマー、または複数種類のポリマーを混合したポリマーを用いることが好ましい。これにより、第1カバー層100に到達したクラックの伸展を遅らせることができるので、積層ゴム支承の耐久性を向上する上で極めて有利である。
【0061】
尚、本実施形態では、複数の未加硫ゴムシートと各補強板51,52,53とが積層された未加硫積層物の側面に第1カバー層80を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付けた後に、所定の加硫用金型で加硫成形することにより、第1カバー層80を形成したものを示した。これに対し、各補強板51,52,53の間に配置するゴム54を成形するための未加硫ゴムシートの量を増やすとともに、複数の未加硫ゴムシートと各補強板51,52,53とが積層された未加硫積層物の側面に第2カバー層90を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付け、さらに第2カバー層90を成形するための未加硫ゴムシートの外周面に第3カバー層100を成形するための未加硫ゴムシートを全周に亘って巻付け、これを所定の加硫用金型内で圧力及び温度を加えて加硫することにより、積層部50を成形することも可能である。この場合、
図12のように、各補強板51,52,53の間の未加硫ゴムが溢れ、その溢れたゴムによって第1カバー層80が形成され、第1カバー層80のゴム材料はゴム54のゴム材料と同一となる。
【0062】
尚、本実施形態では、第1〜第3カバー層80,90,100を設けるものを示した。これに対し、第3カバー層100の外周面にさらに1層または複数層のカバー層を設け、各カバー層のゴム材料の色を隣り合うカバー層のゴム材料の色と異ならせることも可能である。この場合、カバー層に発生するクラックの深さをより定量的に視認することが可能となる。
【0063】
尚、第1及び第2実施形態では、積層体50の橋軸方向Xの両側面50a及び橋軸直角方向の両側面50bに第1及び第2カバー層60,70または第1、第2及び第3カバー層80,90,100を設けたものを示した。これに対し、積層体50の4つの側面のうちクラックの発生し易い1側面にのみ第1及び第2カバー層60,70または第1、第2及び第3カバー層80,90,100を設けることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0064】
また、第1及び第2実施形態では、第1カバー層60,80を積層体50の側面50a,50bに加硫によって結合したものを示した。これに対し、積層体50のみを所定の加硫用金型内で加硫成形し、加硫成形された積層体50の側面に加硫成形されたゴムシートを接着剤によって貼付けることにより、第1カバー層60,80を積層体50の側面に結合することも可能であり、第2及び第3カバー層を同様に構成することも可能である。
【0065】
尚、第1及び第2実施形態では橋桁1を支持する積層ゴム支承を示したが、ビルやその他の大型建造物の積層ゴム支承に本実施形態と同等の構成を適用することも可能である。