【実施例1】
【0027】
以下、本発明に係るビス止め用治具の好ましい第1の実施形態について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1、
図2は本実施例に係るビス止め用治具の参考斜視図であり、
図3、
図4は本実施例に係るビス止め治具の参考縦断面図である。(1)はビス止め用治具、(2)は第一筒状部材、(3)は第二筒状部材、(4)は連結用弾性部材、(5)はドライバービット、(6)はビット連結用ワッシャ、(7)はナット、(8)はビス挿入孔、(9)はドライバービット先端、(10)は第一筒状部材上端、(11)は第一筒状部材下端、(12)は第二筒状部材上端、(13)は第二筒状部材下端、(14)は電動器具取り付け部、(15)連結用弾性部材スリット、(16)はビット狭着用リング、(17)はドライバービット後端、(18)は円盤状部材である。
【0028】
本実施例に係るビス止め用治具(1)は、主に第一筒状部材(2)、第二筒状部材(3)、連結用弾性部材(4)、ドライバービット(5)からなる。また、ドライバービットを第一筒状部材(2)に回転可能なように固定するために、ナット(7)とビット連結用ワッシャ(6)とビット狭着用リング(16)を用いている。
【0029】
図3に示すように、第一筒状部材(2)及び第二筒状部材(3)は細長い円筒状の部材である。第一筒状部材は治具の上部に位置し、第二筒状部材は治具の下部に位置する。また、第二筒状部材の外径は第一筒状部材の内径よりも若干小さい。
本実施例に係るビス止め用治具では、第一筒状部材の直径は約12mmであり、第二筒状部材の直径は約10mmである。ただし、これは使用するビスの頭の直径によって適宜変更すべきものであり、この大きさに限定されるわけではない。頭の直径がより大きなビスを用いる場合は、ビスが入るように筒状部材の直径をビスの頭の直径よりもやや大きいものとすればよい。
各筒状部材の長さは任意であるが、本実施例では約6cm程度のビスを用いることを想定しているため、第一筒状部材の長さは約4cm、第二筒状部材の長さは約5cmとしている。
【0030】
本実施例に係るビス止め用治具では、第一筒状部材をアルミで構成し、第二筒状部材を透明なプラスティックで構成している。第二筒状部材内の空洞にはビスが入るため内部が外から見えることが好ましく、透明なプラスティックを用いており、第一筒状部材内は特に内部が見えなくともよいので、より強度が高いアルミを用いている。
ただしそれぞれの材質はこれらに限定されるものではなく、両方を透明な樹脂素材又は金属素材で構成してもよい。
【0031】
図3に示すように、本実施例に係るビス止め用治具(1)では、第一筒状部材(2)の下端(11)内の空洞に、第二筒状部材(3)の上端(12)が数ミリ程度(5mm程度)挿入された状態で、筒状部材連結用の弾性部材(4)により連結される。
弾性部材は円筒状の部材であり、第一筒状部材と第二筒状部材の表面を覆う形で設けられる。従って、弾性部材の内径は第一筒状部材の外径よりやや大きく、本実施例では約14mm程度である。素材は弾性ゴムを用いている。
ただし素材は弾性ゴムに限定されるわけではなく、可撓性があり、かつ曲げると元の形状に戻ろうとする力が働く素材であればどのようなものでもよい。熱可塑性エラストマーなどを用いてもよい。
【0032】
また、連結用弾性部材(4)の長さは第一筒状部材(2)に第二筒状部材(3)を数ミリ挿入した状態の第一筒状部材上端(10)から第二筒状部材下端(13)までの長さに略等しい。
そして、弾性部材の上端が第一筒状部材の上端(10)表面と固着され、弾性部材の下端が第二筒状部材の下端(13)表面と固着される。
【0033】
図1に示すように、連結用弾性部材(4)には長手方向に所定間隔でスリット(切り目)(15)が入っている。スリットは上端近傍から下端近傍にかけて入っている。スリット数は任意であるが、本実施例では等間隔で6本スリットを入れている。
【0034】
以上の工夫により、
図1、
図3に示すように、第二筒状部材(3)が第一筒状部材(2)の空洞内に数ミリ挿入された状態で各筒状部材の連結状態が維持される。そして第二筒状部材(3)を第一筒状部材(2)の空洞内へと力を加えて押し込むことで、
図2及び
図4に示すように、連結用弾性部材(4)はスリットにより分離し帯状となって外側へと湾曲して拡がる。
図2に示すように、この状態ではスリットの間から第二筒状部材(3)の内部を視認することができる。
【0035】
次に、連結用弾性部材(4)は弾性ゴムでできているため、湾曲すると、元の延伸した状態に戻ろうとする力が働く。そのため、第二筒状部材を第一筒状部材内部に押し込む力を外すと、弾性部材は元の延伸した状態に自動的に戻り、それに連動して第二筒状部材も第一筒状部材内部から外へと押し出され、元の状態に戻る。
【0036】
本実施例に係るビス止め用治具(1)では、筒状部材内にドライバービットが回転可能な状態で設けられる。ドライバービットが筒状部材内に回転可能に設けられるのであればどのような方法を用いても構わないが、本実施例では主にビット狭着用リング(16)、ビット連結用ワッシャ(6)、ナット(7)を用いている。
【0037】
まず、
図3に示すようにナット(7)が第一筒状部材上端(10)に固着される。固着方法は接着剤を用いる、溶接加工を施すなど既存の任意の方法によればよい。該ナットの上側には薄い円盤状の部材(18)が固着されている。この円盤状部材は回転・移動等、動くことはない。
そして、この円盤状部材を内包してワッシャ(6)が取り付けられる。円盤状部材とワッシャとは完全には固着されず遊着され、ワッシャはナットの上部で回転する。
【0038】
一方、ビット狭着用リング(16)の中心部分にドライバービット(5)が貫通する。ビット狭着用リングはドライバービットを固定できればどのような素材でもよいが、本実施例ではビット狭着用リングに円盤状の弾性ゴムを使用している。ビットを貫通させた部分において弾性ゴムが収縮する力を利用して、ドライバービットがビット狭着用リングに固定され動かないようにしている。
【0039】
そしてドライバービットをビット連結用ワッシャ(6)及びナット(7)に通し、ビット狭着用リング下面とビット連結用ワッシャ上面とを強力接着剤で固着している。
【0040】
以上の仕組みにより、ナット(7)、筒状部材(2、3)及び連結用弾性部材(4)を固定した状態で、ドライバービット(5)、及びドライバービットを保持したビット狭着用リング(16)とビット連結用ワッシャ(6)が回転自在となる。
ドライバービットの先端(9)の位置は用いるビスの長さによって任意に設定すればよいが、第一筒状部材(2)と第二筒状部材(3)とのおよそ中間に位置するように調整することが好ましい。
【0041】
なお、本実施例に係るビス止め用治具では電動ドライバーなどの電動器具の先端に設置して用いることを想定しているため、ドライバービットの後端(17)には電動器具に取り付け可能な取り付け部(14)を設けている。
【0042】
以下、主に
図5から
図7を参照して本実施例に係るビス止め用治具の使用例につき説明する。
図5及び
図6は本実施例に係るビス止め用治具の使用態様を示す参考断面図であり、
図7は本実施例に係るビス止め用治具の使用時の参考平面図である。(V)はビス、(W)は壁面である。なお、ビス止め用治具のドライバービット後端の電動器具取り付け部(14)には予め図示しない電動ドライバー本体などの電動器具が取り付けられている。
【0043】
まず、ビス(又はネジ等)を第二筒状部材(3)の端部に設けられたビス挿入孔(8)から挿入する。ビスの長さは任意であり、2cm以下の短いビスから5cmを超える長いビスまで利用可能である。
次にビスを筒状部材の空洞内に挿入した状態で、床や天井、壁などビスを打ち込む場所にビスの先端を当てる。
図5及び
図6では壁面(W)にビスを打ち込む様子を示している。
図5に示すように壁面にビスの先端を当てた後、電動器具を作動させ、ドライバービット(5)を回転させる。この回転によりビスが壁面内部に螺入される。
このとき、ビス挿入孔は壁面と並行に位置し、第一筒状部材と第二筒状部材は壁面と垂直に位置するため、ビス挿入孔(8)が壁面に接触した後は、筒状部材がガイドとなってビスを垂直に打ち込むことができる。
【0044】
また、第二筒状部材(3)の外径は第一筒状部材(2)の内径よりも小さいことから、
図6に示すようにビスの打ち込みに応じて第二筒状部材は第一筒状部材の空洞内に押し込まれることとなる。
そして最終的にビスが完全に壁面(W)内部に打ち込まれると、そのままビス止め用治具を外せばよい。第一筒状部材と第二筒状部材とを連結する弾性部材(4)が元の状態に戻ろうとして延伸するため、第二筒状部材は自動的に第一筒状部材から押出され、
図1、3、5で示す元の使用状態に戻ることとなる。
【0045】
本実施例に係るビス止め用治具における大きな特徴及び利点の一つに、ビスを壁などに打ち込む際、平面視、すなわちドライバービット後端(17)側から見た場合に、連結用弾性部材(4)が放射状に広がる点が挙げられる。
上述の通り連結用弾性部材は円筒状に構成されており、かつ長手方向に一定間隔でスリットが入っているため、弾性部材の両端が接近するにつれてスリット間の弾性部材が外側に湾曲する。本実施例に係るビス止め治具では等間隔で6本のスリットが入っていることから、弾性部材は6枚の帯状平板に分かれて均等に放射状に湾曲することとなる。
【0046】
図7(a)から(c)は、ビスを打ち込む際のビス止め用治具を平面から見た図面である。
図7(a)に示すように、ビスを打ち込む前は連結用弾性部材(4)は延伸しているため、ビット狭着用リング(16)に遮られて平面からは見えない。
一方、ビスの打ち込みに対応して弾性部材は湾曲し、放射状に広がり始める。
図7(b)は第二筒状部材が半分程度第一筒状部材に挿入された状態を示している。平面から見ると弾性部材は6つの帯状平板に分かれて放射状に伸びている。
そして最終的にビスを完全に打ち込み、第二筒状部材が限界まで第一筒状部材に挿入されると、
図7(c)に示すように弾性部材は大きく湾曲し、平面から見た場合に大きく放射状に伸びることとなる。
【0047】
以上の通り、ビス打ち込み作業において平面視、すなわちドライバービット後端側から見るだけで、連結用弾性部材(4)の拡がり具合を確認することで、およそどの程度第二筒状部材が第一筒状部材内に挿入され、どの程度ビスが壁面や天井等に打ち込まれているのか判断することができる。
【0048】
ビスの打ち込みにおいては、ビスを途中まで挿入したい場合や慎重にビスを挿入する必要がある場合など、ビスがどの程度打ち込まれているのか認識できることが好ましい。一方で、従来技術に係る工具や治具等では、横方向から見ない限り、どの程度ビスが挿入されているのか把握できなかった。また、天井や壁の細いスリット内にビスを打ち込まなければならない場合など、横方向からビスを視認できないこともあった。
本実施例に係るビス止め用治具を用いることで、横方向から見なくとも、平面から、すなわちドライバービット後端方向から連結用弾性部材(4)の拡がり具合を見ることで、ビスの打ち込み具合を把握することが可能となる。
【0049】
なお、上記実施形態の記述は本発明をこれに限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。