特許第5686306号(P5686306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5686306スケール付着防止機能を持つ隔膜式液面計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5686306
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】スケール付着防止機能を持つ隔膜式液面計
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/14 20060101AFI20150226BHJP
   G01L 19/06 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   G01F23/14
   G01L19/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-13887(P2014-13887)
(22)【出願日】2014年1月29日
【審査請求日】2014年8月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312012726
【氏名又は名称】植松 康行
(72)【発明者】
【氏名】植松 康行
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4866772(JP,B2)
【文献】 実開昭59−52421(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/
G01L 19/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱形状の隔膜取付け部と隔膜取付け部の先端面に取付けた隔膜を有し、隔膜の先端面を水平方向に延長した第一平面の投影面である第二平面において隔膜取付け部の外周に空隙を有するように本体を設けたノズルを、低圧側検出ノズルとして槽内の液面より上部でかつ槽外に、高圧側検出ノズルとして槽内の液面より下部でかつ槽外に設け、低圧及び高圧側検出ノズルの隔膜の変化から槽内の液面位置を検出する差圧伝送器と、差圧伝送器に接続したフランジを低圧及び高圧側検出ノズルに取付けた隔膜式液面計であって、低圧及び高圧側検出ノズルの空隙から槽内に向けて第一平面を通過するリンス媒体を供給するリンス媒体供給部を設けたことを特徴とするスケール付着防止機能を持つ隔膜式液面計。
【請求項2】
低圧又は高圧側検出ノズルの前記第二平面における空隙に多孔質分散材を設けたことを特徴とする、請求項1記載の隔膜式液面計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや装置産業の反応器等の槽内の液面制御に用いられる隔膜式液面計に関するものであり、隔膜部分に成長するスケール付着防止機能を持つものである。
【背景技術】
【0002】
従来の装置産業の反応器等の槽内の液面制御では液面計測をするにあたり、隔膜式液面計が用いられる。
隔膜式液面計は導圧管を使用しないで槽本体の十分に深い場所のノズルフランジに直接取り付けられるようにしたものであり、測定液には直接触れない微薄な隔膜を有した低圧側検出ノズル、槽本体壁面に測定液に直接触れる微薄な隔膜を有した高圧側検出ノズルにより、測定液の液層の深さから生ずるガス層との圧力差を微薄な隔膜の変化で読み取り液面に換算して表示するものである。
隔膜式液面計を使用すると導圧管を使用しなくて済むのでスラリーや高粘度の液体又は腐食性の高い液体の液面計測に威力を発揮する。
【0003】
しかし、微薄な隔膜の変化を検出する隔膜面が汚れたりスケールが付着したりすると液面指示に誤差が生じ、液面制御が乱れ運転が困難となるため、定期的に装置を停止して隔膜式液面計を取り外して、スケールを剥ぎ落とすか、きれいに磨いた予備の隔膜式液面計に交換して対処している。
【0004】
そこで槽本体壁面に短管が連接され、該短管の先端に液面検出用の隔膜を設け、隔膜よりも槽本体又は配管側の空間に清水を供給して隔膜の汚染防止をした例がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、各種隔膜式液面計として商品化されている。(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
放射線管理者、立ち入り禁止区域等の管理が厳しく、取り扱いに困難を来すものであるが、スケールが成長するのを前提に容器の外部より非接触で少々のスケールは透過して液面を検出する放射線液面計もある。(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008―249533号 公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】横河電機(株)カタログ ダイヤフラムシ−ル付差圧電送器
【非特許文献2】一般社団法人 日本電気計測器工業会(JEMI)γ線レベル計放射線測定:技術解説(1/1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のような従来の隔膜式液面計は以下の課題を有する。
【0010】
微薄な隔膜の変化を検出する隔膜面が汚れたりスケールが付着したりすると液面指示に誤差が生じ、液面制御が乱れ運転が困難となるため、定期的に装置を停止して隔膜式液面計を取り外して、スケールを剥ぎ落とすか、きれいに磨いた予備の隔膜式液面計に交換して対処している。
そのため液面制御により運転しているプラント等において隔膜式液面計の取り外しや交換により稼働率が低下する。かつ液面制御を正確に行うことができない。
【0011】
以上から、液面制御により運転しているプラント等において隔膜式液面計の取り外しや交換による稼働率低下を防止でき、かつ液面制御を正確に行うことができる隔膜式液面計を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するために、本発明に係る隔膜式液面計は以下の手段を有する。
【0013】
第1の手段として、柱形状の隔膜取付け部と隔膜取付け部の先端面に取付けた隔膜を有し、隔膜の先端面を水平方向に延長した第一平面の投影面である第二平面において隔膜取付け部の外周に空隙を有するように本体を設けたノズルを、低圧側検出ノズルとして槽内の液面より上部でかつ槽外に、高圧側検出ノズルとして槽内の液面より下部でかつ槽外に設け、低圧及び高圧側検出ノズルの隔膜の変化から槽内の液面位置を検出する差圧伝送器と、差圧伝送器に接続したフランジを低圧及び高圧側検出ノズルに取付けた隔膜式液面計であって、低圧及び高圧側検出ノズルの空隙から槽内に向けて第一平面を通過するリンス媒体を供給するリンス媒体供給部を設けたことを特徴とする。
【0014】
第2の手段として、低圧又は高圧側検出ノズルの前記第二平面における空隙に多孔質分散材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る隔膜式液面計によれば、低圧側(低圧側検出ノズル及び低圧検出ノズル側フランジ)及び高圧側(高圧側検出ノズル及び高圧検出ノズル側フランジ)に、それぞれの検出ノズルの隔膜取付け部とノズル本体との間の空隙からリンス媒体を槽内よりも高い圧力で槽内に供給するリンス媒体供給部を設けることで、リンス媒体を空隙から槽内に円環状に噴出させることができ、隔膜へのスケール付着を防止することができる。
よって、液面制御により運転しているプラント等において隔膜式液面計の取り外しや交換による稼働率低下を防止でき、かつ液面制御を正確に行うことができる。
【0016】
本発明の請求項2に係る隔膜式液面計によれば、低圧側検出ノズルまたは高圧側検出ノズルの空隙に多孔質分散材を設けることで、リンス媒体を多孔質分散材から外周である空隙に向けて放射状に放出させながら槽内に円環状に噴出させることにより、リンス媒体の特定方向への偏流を防止することができる。
よって、請求項1に係る隔膜式液面計よりも隔膜へのスケール付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の請求項1に係る隔膜式液面計の構成図である。
図2】本発明の請求項1に係る隔膜式液面計の構成を示す詳細図である。
図3】本発明の請求項1に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の別の実施形態を示す図である。
図4】本発明の請求項1に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の更に別の実施形態を示す図である。
図5】本発明の請求項2に係る隔膜式液面計の構成図である。
図6】本発明の請求項2に係る隔膜式液面計の構成を示す詳細図である。
図7】本発明の請求項2に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の別の実施形態を示す図である。
図8】本発明の請求項2に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の更に別の実施形態を示す図である。
図9】本発明の請求項1または2に係る隔膜式液面計を用いた液面制御方法を示す図である。
図10】従来技術における隔膜式液面計の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る隔膜式液面計の実施の形態を図1〜10に基づいて説明する。
【0019】
尚、本記載は特許請求の範囲を示した例であり、特許請求の範囲を本記載に限定することを意味するものではない。
【0020】
最初に、従来技術における隔膜式液面計を図10に基づいて説明する。
図10は従来技術における隔膜式液面計の構成図である。
【0021】
槽1の内部には液層2からなる液があり、液層2の液面3の上方向(天井方向)には液層2の深さから生じるガス層4がある。槽1としては、例えば化学プラントや装置産業の反応容器等があげられる。
【0022】
液面3の制御を行うために隔膜式液面計が用いられる。
隔膜式液面計は、低圧側検出ノズル5、高圧側検出ノズル6及び差圧伝送器7から構成される。
【0023】
低圧側検出ノズル5は、柱形状の隔膜取付け部5Aと、隔膜取付け部5Aの先端面である隔膜取付け部先端面5Bに取付けた隔膜5Cを有し、隔膜取付け部5Aの外周に空隙5Dを有するように本体5Eが設けられている。隔膜取付け部5Aは柱形状であれば、円柱形状でも直方体形状でもかまわない。
本体5Eの一部は、後述の差圧伝送器7に接続された低圧検出ノズル側フランジ7Bに適合するノズル側フランジ5Fとなっている。
低圧検出ノズル側フランジ7Bとノズル側フランジ5Fの間には、互いの隙間を埋めて密着させるためのガスケット5Gが設けられる。
低圧側検出ノズル5は液面3より上部でかつ槽1の外部に設ける。槽1の外部に設けるとは、本体5Eを槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に設けるものではないという意味である。具体的には図10に示すように、本体5Eは槽1の上面(天井面)に接続される。
【0024】
高圧側検出ノズル6は低圧側検出ノズル5と同じ構成であり、柱形状の隔膜取付け部6Aは柱形状の隔膜取付け部5Aに、隔膜取付け部6Aの先端面である隔膜取付け部先端面6Bは隔膜取付け部先端面5Bに、隔膜6Cは隔膜5Cに、空隙6Dは空隙5Dに、本体6Eは本体5Eに、ノズル側フランジ6Fはノズル側フランジ5Fに、ガスケット6Gはガスケット5Gに対応する。
隔膜取付け部6Aも隔膜取付け部5Aと同様に柱形状であれば、円柱形状でも直方体形状でもかまわない。
ノズル側フランジ6Fに適合する高圧検出ノズル側フランジ7Cは、低圧検出ノズル側フランジ7Bに対応するものであり、これも後述の差圧伝送器7に接続される。
高圧側検出ノズル6は液面3より下部でかつ槽1の外部に設ける。槽1の外部の意味は前述の低圧側検出ノズル5と同じである。ただし、高圧側検出ノズル6は液面3より下部に設けるため、図10に示すように本体6Eは槽1の側面に接続される。
【0025】
差圧伝送器7は、符号を付していない本体、キャピラリーチューブ7A及び信号配管7Dから構成される。
差圧伝送器7には前述のように、低圧検出ノズル側フランジ7B及び高圧検出ノズル側フランジ7Cが接続される。低圧検出ノズル側フランジ7Bは低圧側検出ノズル5の隔膜取付け部5Aが接続され、高圧検出ノズル側フランジ7Cは高圧側検出ノズル6の隔膜取付け部6Aが接続される。
これらの構成により、低圧側検出ノズル5の隔膜5C及び高圧側検出ノズル6の隔膜6Cの変化が差圧伝送器7に伝達され、差圧伝送器7にて液面3の位置が検出される。検出された液面3の位置は信号配管7Dにより、図示しない制御装置等に伝達される。
【0026】
次に、本発明の請求項1に係る隔膜式液面計を図1〜4に基づいて説明する。
【0027】
図1は本発明の請求項1に係る隔膜式液面計の構成図である。
請求項1に係る隔膜式液面計は、従来技術における隔膜式液面計にリンス媒体供給部を追加したものである。リンス媒体供給部は、低圧側(低圧側検出ノズル5及び低圧検出ノズル側フランジ7B)と高圧側(高圧側検出ノズル6及び高圧検出ノズル側フランジ7C)に設ける。図1においてリンス媒体供給部は、低圧側に設けるものはリンス媒体供給部5H、高圧側に設けるものはリンス媒体供給部6Hと記載している。
【0028】
低圧側に設けるリンス媒体供給部5Hについて説明する。
リンス媒体供給部5Hは、リンス媒体5H1が格納されたリンス媒体供給源5H2、リンス媒体5H1の供給配管であるリンス媒体供給ライン5H3、リンス媒体5H1の低圧側の供給口であるリンス媒体供給口5H4及びリンス媒体警報付流量計5H5から構成される。リンス媒体警報付流量計5H5の意味は後述する。
リンス媒体供給部5Hは、この構成により低圧側検出ノズル5の空隙5Dから槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に向けて、隔膜5Cへのスケールの付着を防止するために、リンス媒体5H1を供給するものである。
【0029】
リンス媒体供給源5H2から供給されたリンス媒体5H1は、リンス媒体供給源5H2とリンス媒体供給口5H4を結ぶリンス媒体供給ライン5H3を通り、低圧検出ノズル側フランジ7Bに設けたリンス媒体供給口5H4まで供給される。
リンス媒体供給口5H4は低圧検出ノズル側フランジ7Bを上下方向に貫通する形状であり、例えば溝または円柱形状のくり抜きがある。
貫通する形状により、リンス媒体供給口5H4に供給されたリンス媒体5H1は、隔膜取付け部5Aの外周と本体5Eとの間にある空隙5Dを通り、槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に供給される。
これにより、隔膜5Cへのスケールの付着を防止することができる。
【0030】
リンス媒体5H1をガス層4の圧力より高い圧力で槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に向けて供給するために、リンス媒体供給ライン5H3にリンス媒体警報付流量計5H5を設ける。
リンス媒体警報付流量計5H5は何らかの理由で所定の流量を確保できなくなり、ガス層4のガスが隔膜5Cに接触する前に流量ダウンの警報を出し、所定の流量を確保、調整することで、リンス媒体5H1をガス層4の圧力より高い圧力で供給することができる。
流量の調整は詳細には、図示しないガス層4の圧力を測定する圧力計、リンス媒体5H1の圧力を測定する圧力計、これら圧力計の信号を取り込む制御装置を用いて行う。
ガス層4の圧力より高い圧力で槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に供給することで、リンス媒体5H1は空隙5Dから円環状に噴出し、隔膜5Cへのスケールの付着を防止することができる。
リンス媒体5H1を供給する圧力は、リンス媒体5H1が空隙5Dから円環状に噴出するのであれば、ガス層4の圧力よりどの程度高くてもかまわない。若干高い程度が好ましい。
【0031】
リンス媒体5H1は不活性ガスまたは溶媒を用いる。ただし溶媒を用いると液層2からなる液の濃度が変化するため、不活性ガスを用いることが好ましい。
【0032】
高圧側に設けるリンス媒体供給部6Hについて説明する。
リンス媒体供給部6Hは低圧側に設けるリンス媒体供給部5Hと同じ構成であり、リンス媒体6H1はリンス媒体5H1に、リンス媒体供給源6H2はリンス媒体供給源5H2に、リンス媒体供給ライン6H3はリンス媒体供給ライン5H3に、リンス媒体供給口6H4はリンス媒体供給口5H4に、リンス媒体警報付流量計6H5はリンス媒体警報付流量計5H5に対応する。
【0033】
高圧検出ノズル側フランジ7Cに設けたリンス媒体供給口6H4は、高圧検出ノズル側フランジ7Cを上下方向(図における左右方向)に貫通する形状であり、例えば溝または円柱形状のくり抜きがある。
これにより、リンス媒体供給源6H2から供給されたリンス媒体6H1は、リンス媒体供給ライン6H3、リンス媒体警報付流量計6H5、リンス媒体供給口6H4及び空隙6Dを通り、槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に供給される。
【0034】
リンス媒体警報付流量計6H5は何らかの理由で所定の流量を確保できなくなり、液層2の液が隔膜6Cに接触する前に流量ダウンの警報を出し、所定の流量を確保、調整することで、リンス媒体6H1は液層2の圧力より高い圧力で槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に空隙6Dから円環状に噴出する。よって、隔膜6Cへのスケールの付着を防止することができる。
流量の調整は詳細には、図示しない液層2の圧力を測定する圧力計、リンス媒体6H1の圧力を測定する圧力計、これら圧力計の信号を取り込む制御装置を用いて行う。
【0035】
リンス媒体6H1は不活性ガスまたは溶媒を用いる。ただし隔膜6Cが液層2に触れているため、不活性ガスよりは溶媒を用いたほうが隔膜6Cへのスケールの付着を防止する効果が大きい。
【0036】
本発明の請求項1に係る隔膜式液面計を図2に基づいて更に詳細に説明する。
図2は本発明の請求項1に係る隔膜式液面計の構成を示す詳細図である。
(a)は低圧側(低圧側検出ノズル5及び低圧検出ノズル側フランジ7B)の詳細を示したものである。
(a)において、隔膜5Cの先端面(槽1の内部方向を向く面)を水平方向(図における左右方向)に延長した仮想面を第一平面、第一平面を矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))に投影した仮想面を第二平面と称する。第一及び第二平面は2点鎖線で記載している。
第二平面は、隔膜取付け部5A(隔膜取付け部先端面5B)、隔膜5C、空隙5D及び本体5Eの位置関係を示したものである。
(b)は矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面を示したものである。
前述のように、(b)において隔膜取付け部5Aの外周に、空隙5Dを有して本体5Eが設けられている。
【0037】
請求項1に係る隔膜式液面計は第一平面の投影面である第二平面において、(b)に示すように隔膜取付け部5Aの外周に、空隙5Dを有して本体5Eが設けられていることを特徴としている。
この特徴を有していれば、隔膜5Cと本体5Eの最下部の上下方向(高さ)の関係はどのような状態でもよい。これを(a)、(c)、(d)により説明する。
【0038】
(a)は隔膜5Cと本体5Eの最下部の上下方向(高さ)が同じ場合を示している。この場合、矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面は(b)のようになる。
(c)は隔膜5Cと本体5Eの最下部の上下方向(高さ)について、隔膜5Cが本体5Eの最下部よりも低い場合(槽1の内部方向にある場合)を示している。この場合でも、矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面は(b)のようになる。
(d)は隔膜5Cと本体5Eの最下部の上下方向(高さ)について、隔膜5Cが本体5Eの最下部よりも高い場合(上方向(天井方向)にある場合)を示している。この場合でも、矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面は(b)のようになる。
【0039】
請求項1に係る隔膜式液面計は、空隙5Dから槽1の内部に向けて第一平面を通過するリンス媒体5H1を供給するリンス媒体供給部5Hを設けたことを特徴としている。
この特徴を有していれば、隔膜5Cと本体5Eの最下部の上下方向(高さ)の関係が(a)、(c)、(d)のどのような状態でも、隔膜5Cの先端面(槽1の内部方向を向く面)を水平方向(図における左右方向)に延長した仮想面である第一平面をリンス媒体5H1が通過するので、隔膜5Cへのスケールの付着を防止することができる。
【0040】
図2は低圧側(低圧側検出ノズル5及び低圧検出ノズル側フランジ7B)の詳細を示したものである。高圧側(高圧側検出ノズル6及び高圧検出ノズル側フランジ7C)は図面の記載はないが、図2と同じ構成である。
すなわち図2において、低圧側検出ノズル5を高圧側検出ノズル6に、隔膜取付け部5Aを隔膜取付け部6Aに、隔膜取付け部先端面5Bを隔膜取付け部先端面6Bに、隔膜5Cを隔膜6Cに、空隙5Dを空隙6Dに、本体5Eを本体6Eに、ノズル側フランジ5Fをノズル側フランジ6Fに、ガスケット5Gをガスケット6Gに、リンス媒体供給口5H4をリンス媒体供給口6H4に、低圧検出ノズル側フランジ7Bを高圧検出ノズル側フランジ7Cに、置き換えればよい。
【0041】
本発明の請求項1に係る隔膜式液面計を図3及び4に基づいて更に詳細に説明する。
前述のように本発明の請求項1に係る隔膜式液面計は、低圧側(低圧側検出ノズル5及び低圧検出ノズル側フランジ7B)にリンス媒体供給部5H、高圧側(高圧側検出ノズル6及び高圧検出ノズル側フランジ7C)にリンス媒体供給部6Hを設け、リンス媒体供給部5H及び6Hにはリンス媒体5H1及び6H1の供給口であるリンス媒体供給口5H4及び6H4を設ける。
図1に示すように、リンス媒体供給口5H4を低圧検出ノズル側フランジ7Bに、リンス媒体供給口6H4を高圧検出ノズル側フランジ7Cに設ける。
【0042】
リンス媒体供給口5H4及び6H4はリンス媒体5H1及び6H1を空隙5D及び6Dに供給するものであり、設ける位置は低圧検出ノズル側フランジ7B及び高圧検出ノズル側フランジ7Cに限定する必要はない。
【0043】
図3は本発明の請求項1に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の別の実施形態を示す図である。
図に示すようにリンス媒体供給口5H4を本体5Eに設ける。リンス媒体供給口5H4は本体5Eを横方向(図における左右方向)に貫通する形状であり、例えば溝または円柱形状のくり抜きがある。同様にリンス媒体供給口6H4も本体6Eに設ける。
この場合も貫通する形状により、リンス媒体供給口5H4及び6H4に供給されたリンス媒体5H1及び6H1は、空隙5D及び6Dに供給される。
【0044】
図4は本発明の請求項1に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の更に別の実施形態を示す図である。
図に示すようにリンス媒体供給口5H4をノズル側フランジ5Fに設ける。リンス媒体供給口5H4はノズル側フランジ5Fを横方向(図における左右方向)に貫通する形状であり、例えば溝または円柱形状のくり抜きがある。同様にリンス媒体供給口6H4もノズル側フランジ6Fに設ける。
この場合も貫通する形状により、リンス媒体供給口5H4及び6H4に供給されたリンス媒体5H1及び6H1は、空隙5D及び6Dに供給される。
【0045】
次に、本発明の請求項2に係る隔膜式液面計を図5〜8に基づいて説明する。
【0046】
図5は本発明の請求項2に係る隔膜式液面計の構成図であり、請求項1に係る隔膜式液面計の構成図(図1)を基礎としている。
前述のように請求項1に係る隔膜式液面計は、空隙5D(6D)から槽1の内部(液層2及びガス層4のある側)に向けて第一平面を通過するリンス媒体5H1(6H1)を供給することで、隔膜5C(6C)へのスケールの付着を防止することができる。
【0047】
請求項1に係る隔膜式液面計は、リンス媒体5H1(6H1)が均一でなく特定方向に偏流する可能性がある。
そのため請求項2に係る隔膜式液面計は、リンス媒体5H1(6H1)の特定方向への偏流を防ぎ、請求項1に係る隔膜式液面計よりも隔膜5C(6C)へのスケールの付着を防止する効果を大きくしようとするものである。
【0048】
具体的には請求項1に係る隔膜式液面計において、低圧側検出ノズル5の空隙5Dに多孔質分散材5H6を、または高圧側検出ノズル6の空隙6Dに多孔質分散材6H6を設ける。図5は空隙5D及び6Dに、多孔質分散材5H6及び6H6を設けた場合を示している。
【0049】
本発明の請求項2に係る隔膜式液面計を図6に基づいて更に詳細に説明する。
図6は本発明の請求項2に係る隔膜式液面計の構成を示す詳細図であり、請求項1に係る隔膜式液面計の構成を示す詳細図(図2)を基礎としている。
(a)に示すように空隙5Dに多孔質分散材5H6を設けている。
(b)は矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面を示したものであるため、図に示すように空隙5Dに多孔質分散材5H6が含まれることになる。
多孔質分散材5H6を設けることで、リンス媒体供給口5H4から空隙5Dに供給されたリンス媒体5H1は、多孔質分散材5H6から外周(空隙5D)に向けて放射状に放出されながら槽1の内部に向けて円環状に噴出するので、特定方向に偏流するのを防ぐことができる。
多孔質分散材5H6としては、リンス媒体5H1が外周(空隙5D)に向けて放射状に放出されるものであれば特定する必要はない。例えば多孔質焼結体、多孔質セラミックス等がある。
【0050】
請求項2に係る隔膜式液面計は第二平面において、(b)に示すように空隙5Dに多孔質分散材5H6が設けられていることを特徴としている。
この特徴を有していれば、隔膜5Cと多孔質分散材5H6の最下部の上下方向(高さ)の関係はどのような状態でもよい。これを(a)、(c)、(d)により説明する。
【0051】
(a)は隔膜5Cと多孔質分散材5H6の最下部の上下方向(高さ)が同じ場合を示している。この場合、矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面は(b)のようになる。
(c)は隔膜5Cと多孔質分散材5H6の最下部の上下方向(高さ)について、隔膜5Cが多孔質分散材5H6の最下部よりも高い場合(上方向(天井方向)にある場合)を示している。この場合でも、矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面は(b)のようになる。
(d)は隔膜5Cと多孔質分散材5H6の最下部の上下方向(高さ)について、隔膜5Cが多孔質分散材5H6の最下部よりも低い場合(槽1の内部方向にある場合)を示している。この場合でも、矢視A−A(上方向(天井方向)から下方向(槽1の内部方向))から見た第二平面は(b)のようになる。
【0052】
請求項2に係る隔膜式液面計は、第二平面において空隙5Dに多孔質分散材5H6を設けたことを特徴としている。
この特徴を有していれば、隔膜5Cと多孔質分散材5H6の最下部の上下方向(高さ)の関係が(a)、(c)、(d)のどのような状態でも、隔膜5Cの先端面(槽1の内部方向を向く面)を水平方向(図における左右方向)に延長した仮想面である第一平面を、リンス媒体5H1が多孔質分散材5H6から外周(空隙5D)に向けて放射状に放出されながら通過する。
よって、請求項1に係る隔膜式液面計よりも隔膜5Cへのスケールの付着を防止することができる。
【0053】
図6は低圧側(低圧側検出ノズル5及び低圧検出ノズル側フランジ7B)の詳細を示したものである。高圧側(高圧側検出ノズル6及び高圧検出ノズル側フランジ7C)は図面の記載はないが、図6と同じ構成である。
すなわち図6において、低圧側検出ノズル5を高圧側検出ノズル6に、隔膜取付け部5Aを隔膜取付け部6Aに、隔膜取付け部先端面5Bを隔膜取付け部先端面6Bに、隔膜5Cを隔膜6Cに、空隙5Dを空隙6Dに、本体5Eを本体6Eに、ノズル側フランジ5Fをノズル側フランジ6Fに、ガスケット5Gをガスケット6Gに、リンス媒体供給口5H4をリンス媒体供給口6H4に、低圧検出ノズル側フランジ7Bを高圧検出ノズル側フランジ7Cに、置き換えればよい。
【0054】
本発明の請求項2に係る隔膜式液面計を図7及び8に基づいて更に詳細に説明する。
前述のように、請求項1に係る隔膜式液面計においてリンス媒体供給部5Hのリンス媒体供給口5H4は、低圧検出ノズル側フランジ7B、本体5E、ノズル側フランジ5Fのいずれに設けてもかまわない。リンス媒体供給部6Hのリンス媒体供給口6H4も、高圧検出ノズル側フランジ7C、本体6E、ノズル側フランジ6Fのいずれに設けてもかまわない。これらは請求項2に係る隔膜式液面計においても同様である。
【0055】
図6はリンス媒体供給口5H4を低圧検出ノズル側フランジ7Bに設けた場合を示している。
図7は本発明の請求項2に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の別の実施形態を示す図面であり、リンス媒体供給口5H4を本体5Eに、リンス媒体供給口6H4を本体6Eに設けた場合を示している。
図8は本発明の請求項2に係る隔膜式液面計のリンス媒体供給部の更に別の実施形態を示す図面であり、リンス媒体供給口5H4をノズル側フランジ5Fに、リンス媒体供給口6H4をノズル側フランジ6Fに設けた場合を示している。
なおリンス媒体供給口5H4及び6H4は、請求項1に係る隔膜式液面計測と同じ貫通形状であり、例えば溝または円柱形状のくり抜きがある。
【0056】
最後に、本発明の隔膜式液面計の使用方法を図9に基づいて説明する。
図9は本発明の請求項1または2に係る隔膜式液面計を用いた液面制御方法を示す図である。
【0057】
図において槽1の内部には液層2からなる液があり、液は液供給部11から槽1に供給される。液供給部11は、供給液11Aが格納された供給源11B、供給液11Aの供給配管である供給ライン11Cから構成される。槽1の底部には液を攪拌するための攪拌機12があり、攪拌機12はモーター13により駆動する。
槽1の液は液循環移送部14により槽1への循環または他機器への移送が行われる。液循環移送部14は槽1から抜出し液14Aを抜出すための抜出しライン14D、抜出し液14Aを循環液14Bとして槽1に循環させる循環ライン14F、抜出し液14Aを移送液14Cとして他機器へ移送させる移送ライン14Gから構成される。抜出しライン14Dには抜出しポンプ14Eを設ける。移送ライン14Gには、隔膜式液面計を構成する差圧伝送器7の信号配管7Dが接続された液面制御弁14Hを設ける。
【0058】
この構成における通常の運転としては、抜出し液14Aを循環ライン14Fにより循環液14Bとして槽1に戻す一方、移送ライン14Gにより移送液14Cとして他機器に移送することが行われる。その際に槽1の液面3を所望の高さに制御するために隔膜式液面計が用いられる。
すなわち隔膜式液面計により検出した液面3の位置信号により、液面制御弁14Hの開閉を行う。具体的には、液面3が所望の高さより低い場合は液面制御弁14Hを閉じることとで液面3の高さを上昇させ、液面3が所望の高さより高い場合は液面制御弁14Hを開くことで液面3の高さを下降させる。
【0059】
このような運転を行うにあたり、隔膜式液面計の隔膜5Cまたは6Cにスケールが付着した場合は、液面3の高さが正確に検出できないため、液面3の高さを所望の高さに制御できない。
しかし本発明の請求項1または2に係る隔膜式液面計を用いれば、スケールの付着を防止することができるため、液面3の高さを所望の高さに制御することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 槽
2 液層
3 液面
4 ガス層
5 低圧側検出ノズル
5A 隔膜取付け部
5B 隔膜取付け部先端面
5C 隔膜
5D 空隙
5E 本体
5F ノズル側フランジ
5G ガスケット
5H リンス媒体供給部
5H1 リンス媒体
5H2 リンス媒体供給源
5H3 リンス媒体供給ライン
5H4 リンス媒体供給口
5H5 リンス媒体警報付流量計
5H6 多孔質分散材
6 高圧側検出ノズル
6A 隔膜取付け部
6B 隔膜取付け部先端面
6C 隔膜
6D 空隙
6E 本体
6F ノズル側フランジ
6G ガスケット
6H リンス媒体供給部
6H1 リンス媒体
6H2 リンス媒体供給源
6H3 リンス媒体供給ライン
6H4 リンス媒体供給口
6H5 リンス媒体警報付流量計
6H6 多孔質分散材
7 差圧伝送器
7A キャピラリーチューブ
7B 低圧検出ノズル側フランジ
7C 高圧検出ノズル側フランジ
7D 信号配管
11 液供給部
11A 供給液
11B 供給源
11C 供給ライン
12 攪拌機
13 モーター
14 液循環移送部
14A 抜出し液
14B 循環液
14C 移送液
14D 抜出しライン
14E 抜出しポンプ
14F 循環ライン
14G 移送ライン
14H 液面制御弁
【要約】
【課題】液面制御により運転しているプラント等において隔膜式液面計の取り外しや交換による稼働率低下を防止でき、かつ液面制御を正確に行うことができる隔膜式液面計を提供する。
【解決手段】低圧側(低圧側検出ノズル及び低圧検出ノズル側フランジ)及び高圧側(高圧側検出ノズル及び高圧検出ノズル側フランジ)に、それぞれの検出ノズルの隔膜取付け部とノズル本体との間の空隙からリンス媒体を槽内よりも高い圧力で槽内に供給するリンス媒体供給部を設けることで、リンス媒体を空隙から槽内に円環状に噴出させる。低圧側検出ノズルまたは高圧側検出ノズルの空隙に多孔質分散材を設けることで、リンス媒体を多孔質分散材から外周である空隙に向けて放射状に放出させながら槽内に円環状に噴出させることにより、リンス媒体の特定方向への偏流を防止する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10