【実施例】
【0032】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0033】
〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕
<実施例1>
以下の方法で、着色剤液1を調製した。
CVL(クリスタルバイオレットラクトン、ロイコ染料、山田化学社製) 1質量部
ヘキサフルオロビスフェノールA(顕色剤、融点約130℃、熱容量60J/g、東京化成社製) 1質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、融点60℃、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の着色剤液を80℃で2時間加熱した。
【0034】
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、着色剤液1(平均粒子径130nm)を調製した。
この着色剤液1における顕色粒子は、融点70℃、熱容量31J/gであった。
【0035】
次に、以下の方法で、消色液1を調製した。
コール酸メチル(コレステロール誘導体、和光純薬工業社製) 2質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の消色液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、消色液1(平均粒子径150nm)を調製した。
この消色液1における消色粒子は、融点68℃、熱容量35J/gであった。
【0036】
上記着色剤液1及び消色液1を用いて、以下の方法で、感熱消色性インキ組成物1を調製した。
着色剤液1 50質量部
消色液1 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
【0037】
<実施例2>
以下の方法で、着色剤液2を調製した。
RED−500(ロイコ染料、山田化学社製) 1質量部
ヘキサフルオロビスフェノールA(顕色剤、東京化成社製) 1質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の着色剤液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、着色剤液2(平均粒子径140nm)を調製した。
この着色剤液2における顕色粒子は、融点70℃、熱容量33J/gであった。
【0038】
上記着色剤液2及び実施例1の消色液1を用いて、以下の方法で、感熱消色性インキ組成物2を調製した。
着色剤液2 50質量部
消色液1 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
【0039】
<実施例3>
以下の方法で、着色剤液3を調製した。
BLACK−202(ロイコ染料、山田化学社製) 1質量部
ヘキサフルオロビスフェノールA(顕色剤、東京化成社製) 1質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の着色剤液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、着色剤液3(平均粒子径140nm)を作製した。
この着色剤液3における顕色粒子は、融点70℃、熱容量30J/gであった。
【0040】
上記着色剤液3及び実施例1の消色液1を用いて、以下の方法で、感熱消色性インキ組成物2を調製した。
着色剤液3 50質量部
消色液1 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
【0041】
<実施例4>
実施例1の着色剤液1と以下の方法で調製した消色液2を用いて感熱消色性インキ4を調製した。
以下の方法で、消色液2を調製した。
テストステロン(コレステロール誘導体、東京化成工業社製) 2質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の消色液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、消色液2(平均粒子径160nm)を調製した。
この消色液2における消色粒子は、融点69℃、熱容量41J/gであった。
【0042】
実施例1の着色剤液1及び上記消色液2を用いて、以下の方法で、感熱消色性インキ組成物4を調製した。
着色剤液1 50質量部
消色液2 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
【0043】
<実施例5>
実施例2の着色剤液2と以下の方法で調製した消色液3を用いて感熱消色性インキ4を調製した。
以下の方法で、消色液3を調製した。
メチルテストステロン(コレステロール誘導体、東京化成工業社製) 2質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の消色液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、消色液1(平均粒子径160nm)を調製した。
この消色液3における消色粒子は、融点68℃、熱容量33J/gであった。
【0044】
実施例2の着色剤液2及び上記消色液3を用いて、以下の方法で、感熱消色性インキ組成物4を調製した。
着色剤液2 50質量部
消色液3 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
【0045】
<比較例1〜3>
上記実施例1〜3の着色剤液1〜3のみを単独でインキとして用い、感熱消色性インキ6〜8とした。
【0046】
<比較例4>
以下の方法で、感熱消色性インキ9を得た。
パイロット社製の「フリクションボール黒」のリフィールからインキを取り出し、精製水にて50%に希釈することで低粘度化し、感熱消色性インキ9とした。
【0047】
<比較例5>
以下の方法で、感熱消色性インキ10を得た。
パイロット社製の「フリクションラインブルー」の中綿からインキを取り出し、感熱消色性インキ10とした。
【0048】
上記で得られた実施例1〜5の感熱消色性インキ1〜5及び比較例1〜5の感熱消色性インキ6〜10を用いた筆記具〔三菱鉛筆社製のコレクター式水性ボールペン(UB−150、製品名ユニボールアイ)〕に充填し、下記各評価方法で発色性、経時安定性、消色性、及び消色描線の耐復元性の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0049】
〔発色性の評価方法〕
前記筆記具で、普通紙に手書き筆記し、その筆記描線の色相を目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:かすれなく筆記可能。色相濃度も高い。
△:カスレあり。一部消色している部分がある。
×:筆記不可。
【0050】
〔経時安定性の評価方法〕
前記筆記描線を、40℃条件下に一週間保存し、その筆記描線の色相を目視にて下記評価基準で比較評価した。
評価基準:
○:色相変化なし
△:一部消色。もしくは全体的に色相低下。
×:消色。描線を認識できない。
【0051】
〔消し具による擦過での加熱による消色性、及び−50℃下での再復元性の評価方法〕
筆記描線を下記製法で作製した消し具にて筆記描線を擦過し、下記の評価基準で評価した。また、この消し具で消去した箇所を含む紙面を−50℃の冷凍庫の中に3時間保存して後の再復元性を下記評価基準で評価した。
(消し具の作製法)
ポリプロピレン樹脂(J−728、三井化学社製)25質量部と、熱可塑性エラストマー(アクティマー、LQA9770N、リケンテクノス社製)75質量部とを加熱溶融してニーダーで十分混練した後、冷却、粉砕したものを押し出し成形機により溶融押し出しして冷却したものを切断して消し具(大きさ12×5×20mm)を得た。
【0052】
加熱による消色性の評価基準:
○:消色でき、描線が認識されない。
△:一部消色しない。もしくは全体的に薄く色相が残る。
×:消色不可。描線に変化無し。
−50℃下での消色描線の耐復元性の評価基準:
○:消色描線は、変化無し。復元しない。
△:一部復元部分がある。もしくは全体的に薄く色相が復元する。
×:描線が復元する。筆記描線が認識できる。
−:加熱によって消色しなかったため、消色描線の耐復元性は未評価。
【0053】
【表1】
【0054】
上記表1の結果から明らかなように、実施例1〜5のインキの筆記描線は、上記消し具による擦過で、直ちに消色し、−50℃の冷凍庫の中に3時間保存しても、再発色することがなく、しかも、発色性、経時安定性に優れていることが判った。
これに対して、比較例1〜3のインキの筆記描線は、上記消し具による擦過で、ほんの一瞬は消色するが、擦過を止めると直ちに再発色することがわかった。
また、比較例4及び5は、発色性、経時安定性、消色性は、問題がなかったが、−50℃の冷蔵庫の中に3時間保存することで、消色させた描線の色相が復元することがわかったので、消色描線の安定性に課題があるものとなった。
以上のことより、本発明による感熱消色性インキは、筆記描線を擦過の熱により消色することができ、さらに極低温に保存しても再発色せず、発色性、経時安定性にも優れていることがわかった。