【実施例】
【0039】
実施例1
乾燥履歴のないメタ−アラミドフィブリッドの水性分散体を、0.5%のコンシステンシー(水中に0.5重量パーセントの固体材料)で製造した。パルパー内で、パラ−アラミドパルプを0.2%のコンシステンシーで5分間分散させた。その後、フィブリッド分散体を有するタンク内にパルプ分散体を添加した。10分連続して攪拌した後、メタ−アラミドフロックを添加した。更に5分間攪拌した後、水を添加して、0.2%の最終コンシステンシーが得られた。固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 74%
メタ−アラミドフィブリッド − 17%
メタ−アラミドフロック − 9%
であった。
【0040】
パラ−アラミドパルプは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプタイプ1F361(デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(デュポン)(E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont))により商品名ケブラー(KEVLAR(登録商標))で販売)であった。メタ−アラミドフィブリッドは、米国特許第3,756,908号明細書に記載されるように、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)から製造した。メタ−アラミドフロックは、初期モジュラスが約800cN/テックスであり、0.22テックス(2.0デニール)の線密度および0.64cmの長さのポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)フロック(デュポンにより商品名ノーメックス(NOMEX(登録商標))で販売)であった。得られた分散体を供給チェスト(supply chest)にポンプで送り、そこからフォードリニアマシンへ供給して、47.5g/m
2の坪量の紙を製造した。紙の他の特性は以下の表1に記載される。
【0041】
実施例2
実施例1と同様にスラリーを調製した。40.7g/m
2の坪量の紙をフォードリニアで形成した。紙の他の特性は以下の表1に記載される。
【0042】
比較例3
実施例1と同様にスラリーを調製したが、組成物にフロックを添加しなかった。固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 80%
メタ−アラミドフィブリッド − 20%
であった。
【0043】
得られた分散体を、供給チェストにポンプで送り、そこからフォードリニアへ供給して、47.5g/m
2および60g/m
2の坪量の紙を製造した。しかしながら、頻繁な破断が発生し、連続シートを調製することは不可能であった。
【0044】
比較例4
実施例1で使用したパラ−アラミドパルプをパルパーにおいて0.2%のコンシステンシーで5分間分散させた。得られた分散体を供給チェストにポンプで送り、そこからフォードリニアへ供給して、50g/m
2および60g/m
2の坪量の紙を製造した。しかしながら、頻繁な破断が発生し、連続シートを調製することは不可能であった。
【0045】
実施例5
実施例1からの紙を、約300℃の温度および約1200N/cmの線圧で、ロール直径約20cmの金属−金属カレンダのニップに通過させた。最終紙の特性は表1に示される。
【0046】
実施例6
実施例2からの紙を、約300℃の温度および約1200N/cmの線圧で、ロール直径約20cmの金属−金属カレンダのニップに通過させた。
【0047】
最終紙の特性は表1に示される。
【0048】
実施例7
実施例1からの紙を、約304℃の温度および約3.45MPaの圧力で、プラテンプレス内で2分間圧縮した。
【0049】
最終紙の特性は表1に示される。
【0050】
実施例8
実施例1からの紙を、約327℃の温度および約10.8MPaの圧力で、プラテンプレス内で5分間圧縮した。
【0051】
最終紙の特性は表1に示される。
【0052】
実施例9
1.5g(乾燥重量に基づく)のパラ−アラミドパルプを、800mlの水と共にワーリングブレンダー(Waring Blender)に入れ、3分間攪拌した。その後、34.5gの水性の乾燥履歴のないメタ−アラミドフィブリッドスラリー(0.58%のコンシステンシーおよびショッパーリーグラー(Shopper−Riegler)の自由度(freeness)330ml)、ワーリングブレンダーから調製したパラ−アラミドパルプの水分散体、および0.3gのメタ−アラミドフロックを一緒に、実験室用ミキサー(英国製パルプ評価装置)に約1600gの水と共に入れて1分間攪拌した。
【0053】
スラリー中の固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 75%
メタ−アラミドフロック − 15%
メタ−アラミドフィブリッド − 10%
であった。
【0054】
パラ−アラミドパルプ、メタ−アラミドフロックおよびメタ−アラミドフィブリッドは、実施例1で記載したものと同じであった。分散体を8リットルの水と共に、約21×21cmのハンドシート型(handsheet mold)に注ぎ、ウェットレイドシートを形成した。シートを2枚の吸い取り紙の間に置き、ローリングピンにより手でクーチングし、そして190℃のハンドシート乾燥器で乾燥させた。
【0055】
乾燥後、シートを、約270℃の温度および約3000N/cmの線圧で、ロール直径約20cmの金属−金属カレンダのニップに通過させた。
【0056】
最終紙は、56.6g/m
2の坪量を有した。
【0057】
紙の他の特性は以下の表1に記載される。
【0058】
実施例10〜13
実施例9に記載されるように紙を調製したが、3つの成分(パラ−アラミドパルプ、メタ−アラミドフロック、およびメタ−アラミドフィブリッド)の割合を変化させた。
【0059】
紙組成物の成分の割合およびその特性は、表1に示される。
【0060】
実施例14
1.2g(乾燥重量に基づく)のパラ−アラミドパルプを、800mlの水と共にワーリングブレンダーに入れ、3分間攪拌した。その後、調製したパラ−アラミドパルプの水分散体、0.3gのポリ(ビニルアルコール)フロック、および0.5gのメタ−アラミドフロックを一緒に、実験室用ミキサー(英国製パルプ評価装置)に約1600gの水と共に入れて1分間攪拌した。
【0061】
スラリー中の固体材料は、
パラ−アラミドパルプ − 60%
メタ−アラミドフロック − 25%
ポリ(ビニルアルコール)フロック − 15%
であった。
【0062】
パラ−アラミドパルプおよびメタ−アラミドフロックは、実施例1で記載したものと同じであった。ポリ(ビニルアルコール)フロックは、線密度0.11テックスおよびカット長3mmのタイプVPB105−1(クラレ社(KURARAY Co.)により商品名クラロン(Kuralon)VPで販売)であった。R.W.モンクリーフ(Moncrieff)、人造繊維(Man−Made Fibres)、ウィリー国際事業部(Wiley International Division)、1970、488ページにおいて見出されるように、その初期モジュラスは、530cN/テックスよりも低かった。
【0063】
分散体を8リットルの水と共に、約21×21cmのハンドシート型に注ぎ、ウェットレイドシートを形成した。シートを2枚の吸い取り紙の間に置き、ローリングピンにより手でクーチングし、そして190℃のハンドシート乾燥器で乾燥させた。乾燥後、約304℃の温度および約10.8MPaの圧力で、シートをプラテンプレス内で5分間圧縮した。
【0064】
最終紙の特性は表1に示される。
【0065】
実施例15〜16
実施例14と同様に紙を調製したが、3つの成分(パラ−アラミドパルプ、メタ−アラミドフロックおよびポリ(ビニルアルコール)フロック)の割合を変化させた。
【0066】
紙組成物の成分の割合およびその特性は、表1に示される。
【0067】
実施例17
組成物の全重量を基準として5重量パーセントの量で水溶性樹脂を紙組成物に添加したことを除いて、実施例14と同様に紙を調製した。水溶性樹脂は、ハーキュリーズ(Hercules)により販売されるカイメン(KYMENE)557LXであった。紙組成物および特性は表1に示される。
【0068】
実施例18
組成物の全重量を基準として5重量パーセントの量で水溶性樹脂を紙組成物に添加したことを除いて、実施例15と同様に紙を調製した。樹脂は、実施例23の場合と同じであった。紙組成物および特性は表1に示される。
【0069】
実施例19
実施例5からの紙を溶媒ベースのフェノール樹脂(デュレズ・コーポレーション(Durez Corporation)からのプリオフェン(PLYOPHEN)23900)で含浸させた後、吸い取り紙で表面から過剰の樹脂を除去し、次のように:
室温から82℃まで加熱してこの温度を15分維持し、温度を121℃に上昇させてこの温度を更に15分間維持し、そして温度を182℃に上昇させこの温度を60分間維持して温度を上昇させてオーブン内で硬化させることによって、複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0070】
実施例20
実施例6からの紙を使用したことを除いて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0071】
比較例21
ケブラー(KEVLAR(登録商標))1.8N636紙としてデュポンにより販売される、ケブラー(KEVLAR(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくパラ−アラミド紙を使用したことを除いて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0072】
比較例22
ケブラー(KEVLAR(登録商標))2.8N636紙としてデュポンにより販売される、ケブラー(KEVLAR(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくパラ−アラミド紙を使用した点を変えて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0073】
比較例23
ノーメックス(NOMEX(登録商標))2T412紙としてデュポンにより販売される、ノーメックス(NOMEX(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくメタ−アラミド紙を使用した点を変えて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0074】
比較例24
ノーメックス(NOMEX(登録商標))3T412紙としてデュポンにより販売される、ノーメックス(NOMEX(登録商標))フロックおよびノーメックス(NOMEX(登録商標))フィブリッドに基づくメタ−アラミド紙を使用したことを除いて、実施例19に記載されるように複合体を調製した。複合体の特性は表2に示される。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表2から分かるように、本発明の紙の剛性は、p−アラミドフロックに基づく市販の紙(すなわち、比較例21および22)の剛性よりも低く、また更にm−アラミドに基づく紙(すなわち、比較例23および24)よりも低い。
【0078】
しかしながら、本発明の紙に基づく複合体は非常に堅く、これは、大部分の複合体用途のために望ましい。その剛性はp−アラミド紙に基づく複合体の剛性に非常に近く、m−アラミド紙に基づく複合体よりもはるかに堅い。これは、複合体とそれの基礎となるそれぞれの紙との比剛性の比率によって、更に実証される。比率は、比較紙に対して本発明の紙でははるかに高く、「より柔らかい」(すなわち、あまり堅くない)紙によって、最終複合構造体へのより容易な転化が提供されることが実証される。
【0079】
更に、本発明の紙および対応する複合体は、非常に良好な寸法安定性を有する。指示された温度変化では、本発明の紙はそれ自体、p−アラミドフロックに基づく市販の紙よりも良好な寸法安定性を有し、そして市販のm−アラミド紙よりもはるかに良好である。本発明の紙に基づく最終複合構造体の寸法安定性は、p−アラミドフロックを有する紙に基づく複合体に非常に近く、アラミド紙に基づく複合体の寸法安定性と比較してはるかに良好である。
【0080】
以下、本発明の態様を示す。
1.50〜95重量パーセントのp−アラミドパルプと、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有する5〜50重量パーセントのフロックとを含んでなるアラミド紙。
2.前記p−アラミドパルプが、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)パルプである上記1に記載のアラミド紙。
3.前記フロックが、メタ−アラミドである上記1に記載のアラミド紙。
4.前記メタ−アラミドフロックが、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)フロックである上記3に記載のアラミド紙。
5.全組成物の重量を基準として20重量パーセント未満の量のポリマーバインダー材料を含んでなる上記1に記載のアラミド紙。
6.前記ポリマーバインダー材料の少なくとも一部が、フィブリッドの形態である上記5に記載のアラミド紙。
7.前記フィブリッドが、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)から製造される上記6に記載のアラミド紙。
8.前記ポリマーバインダーが、乾燥およびカレンダ加工よりなる群のうちの1つによって溶融可能である上記5に記載のアラミド紙。
9.前記ポリマーバインダー材料の少なくとも一部が、紙の乾燥またはカレンダ加工中に溶融可能な樹脂バインダー材料である上記5に記載のアラミド紙。
10.前記樹脂バインダー材料の少なくとも一部が、熱可塑性フロックである上記9に記載のアラミド紙。
11.前記樹脂バインダー材料の少なくとも一部が、水溶性樹脂である上記9に記載のアラミド紙。
12.前記紙の坪量が、70g/m
2未満である上記1に記載のアラミド紙。
13.20〜100℃の温度間隔における平面の紙の熱膨張係数の絶対値が、4ppm/C未満である上記1または5に記載のアラミド紙。
14.70〜95重量パーセントのp−アラミドパルプを含んでなる上記1または5に記載のアラミド紙。
15.上記1または5に記載の紙の1つもしくはそれ以上の層を含んでなるプリント配線板。
16.上記1または5に記載の紙の1つもしくはそれ以上の層を含んでなる電気絶縁材料。
17.樹脂が含浸された上記1または5に記載のアラミド紙を含んでなる複合構造体。
18.前記樹脂がフェノールである上記17に記載の複合構造体。
19.上記17に記載の複合構造体を含んでなるプリント配線板または電気絶縁材料。
20.上記1または5に記載のアラミド紙を含んでなる構造材料。
21.前記アラミド紙が、ハニカム構造のセルに組み込まれる上記20に記載の構造材料。
22.前記アラミド紙が、サンドイッチパネルの仕上げ面に組み込まれる上記20に記載の構造材料。
23.p−アラミドパルプを水中に分散させ、
パルプ/水スラリーを、3000cN/テックス未満の初期モジュラスを有するフロックとブレンドし、ここで前記パルプおよび前記フロックの固形分中の重量パーセントがそれぞれ50〜95および5〜50であり、
最終スラリーから水を排出して湿った紙組成物をもたらし、
前記湿った紙組成物を乾燥させること
を含んでなるアラミド紙の製造方法。
24.乾燥の前に、前記湿った紙組成物を湿式加圧することを含んでなる上記23に記載の方法。
25.乾燥の後に、前記紙を加熱処理することを含んでなる上記24に記載の方法。
26.前記パルプ/水スラリーを前記フロックとブレンドした後に、ポリマーバインダー材料を全固形分の20重量パーセント未満の量で添加することを含んでなる上記23に記載の方法。
27.乾燥の後に、前記紙を加熱処理することを含んでなる上記26に記載の方法。
28.前記乾燥した紙を高密度化することを含んでなる上記23に記載の方法。
29.前記高密度化が、カレンダのニップ内における圧力の印加およびプレス内での圧力の印加よりなる群のうちの1つを選択することによって実行される上記28に記載の方法。
30.前記高密度化の後に、前記紙を加熱処理することを含んでなる上記28に記載の方法。