(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5686908
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】二重歯車ポンプの回路分離を検査する方法
(51)【国際特許分類】
F04C 11/00 20060101AFI20150226BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20150226BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20150226BHJP
F04C 2/10 20060101ALI20150226BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
F04C11/00 C
B60T17/00 D
B60T17/22 Z
F04C2/10 341A
G01M17/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-550774(P2013-550774)
(86)(22)【出願日】2011年1月31日
(65)【公表番号】特表2014-510864(P2014-510864A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2011051305
(87)【国際公開番号】WO2012103921
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ブロシュ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】アラゼ,ノルベルト
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102006014269(DE,A1)
【文献】
特表2011−503428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 11/00
B60T 17/00
B60T 17/22
F04C 2/10
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重歯車ポンプ(1)の回路分離を検査するための方法であって、前記二重歯車ポンプ(1)が2つの歯車ポンプ(2,2′)を備え、該2つの歯車ポンプ(2,2′)が、ポンプケーシング(9)内に配置されており、共通のポンプシャフト(3)を備え、該ポンプシャフト(3)が、回転可能に、密閉された状態で、前記2つの歯車ポンプ(2,2′)の間に配置された隔壁(14)を貫通する、二重歯車ポンプ(1)の回路分離を検査するための方法において、
増圧のために、前記2つの歯車ポンプ(2,2′)のいずれか一方の歯車ポンプのポンプ出口を閉じ、前記一方の歯車ポンプを加圧し、増圧後に前記一方の歯車ポンプ(2,2′)のポンプ入口をも閉じ、他方の歯車ポンプ(2′,2)のポンプ入口およびポンプ出口を閉じ、前記他方の歯車ポンプ(2′,2)内の圧力を測定し、前記他方の歯車ポンプ(2′,2)内の圧力が上昇したか否かを検査することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記二重歯車ポンプ(1)が二重‐内歯車ポンプ(1)であり、前記2つの歯車ポンプ(2,2′)が内歯車ポンプ(2,2′)である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記2つの歯車ポンプ(2,2′)のいずれか一方の歯車ポンプによって発生可能な最大圧力を測定し、該最大圧力を目標値と比較する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
増圧時の圧力経過および/または増圧後の圧力低下を測定し、目標値と比較する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記二重歯車ポンプ(1)の前記2つの歯車ポンプ(2,2′)が、スリップ制御装置(26)を備える液圧式の2系統‐車両ブレーキ装置(15)の2つのブレーキ回路I,II内の液圧ポンプである方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記車両ブレーキ装置(15)が、ブレーキマスタシリンダ(16)と前記歯車ポンプ(2,2′)のポンプ出口との間に遮断弁(17)を備え、該遮断弁(17)のうち少なくとも1つの遮断弁を検査のために閉じる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の特徴を備える二重歯車ポンプの回路分離を検査するための方法に関する。「回路分離検査」とは、二重歯車ポンプの2つの歯車ポンプの間の密閉性の検査もしくは一方の歯車ポンプから他方の歯車ポンプへの漏出の検査を意味する。「回路分離検査」という言葉は、スリップ制御された液圧式車両ブレーキ装置で二重歯車ポンプが使用され、このような液圧式車両ブレーキ装置で、2つの歯車ポンプのそれぞれが1つのブレーキ回路に割り当てられており、これらの歯車ポンプが液圧的に互いに分離されており、分離されている必要があることに由来する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ国特許出願公開第102007054808号明細書は、互いに同軸的に配置され2つの内歯車ポンプを備える二重内歯車ポンプを開示しており、2つの内歯車ポンプは駆動のために共通のポンプシャフトを備える。2つの内歯車ポンプは1つのポンプケーシング内に配置されている。ポンプシャフトは隔壁を通って回転可能に案内されており、この隔壁はポンプケーシング内で2つの内歯車ポンプの間に配置されおり、2つの内歯車ポンプを互いに分離している。既知の二重歯車ポンプでは、隔壁は、ポンプケーシング内に挿入された固有の構成部材を備え、この構成部材はポンプケーシングの一部と捉えることもできる。ポンプケーシングまたはポンプケーシングの一部と一体的に隔壁を形成することも可能である。
【0003】
隔壁内で、ポンプシャフトは軸線方向に離間された2つのシールによってシールされている。2つのシールの間に開口している漏出通路は、1つまたは両方のシールに漏れがある場合に生じ得る漏出液を2つの内歯車ポンプのうちいずれか一方の内歯車ポンプのポンプ入口へ導出する。
【0004】
既知の二重内歯車ポンプは、ABS、ASR、ESPおよび/またはFDRなどのスリップ制御装置を備える液圧式の2系統車両ブレーキ装置のために構成されている。2つの内歯車ポンプはそれぞれ液圧的に2つのブレーキ回路のいずれかに配置されている。安全な機能のためには、いわゆる「回路分離」が不可欠である。「回路分離」とは、2つのブレーキ回路の液圧的な分離を意味する。2つの内歯車ポンプの漏れにより互いに液圧的に接続された場合に、二重歯車ポンプにおける回路分離が無効化される場合がある。このようなことは絶対に防止されるべきである。二重内歯車ポンプのポンプケーシングの隔壁内でポンプシャフトをシールしている2つのシールにより、少なくとも2つのシールのいずれかがシールされている場合には回路分離が保障されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102007054808号明細書
【発明の概要】
【0006】
請求項1に記載の特徴を備える本発明による方法では、二重歯車ポンプの2つの歯車ポンプのいずれか一方の歯車ポンプに圧力が加えられ、2つの歯車ポンプの少なくともいずれか一方の歯車ポンプ内の圧力を測定する。ここでの「内の」という言葉は、測定場所を示すのではなく、どのような圧力が測定されるのか、すなわち、2つの歯車ポンプのいずれか一方の歯車ポンプの内部に形成された圧力が測定されることを示す。圧力センサは、歯車ポンプの外部に設けられていてもよい。加圧は、歯車ポンプ自体によって行ってもよいし、または別の形式で行ってもよい。他方の歯車ポンプ内で圧力が上昇したか否かを測定することができ、このことは、2つの歯車ポンプの間のシールに漏れがあることの徴となる。圧力測定は、歯車ポンプの内部または歯車ポンプの外部で、すなわち、例えば歯車ポンプが割り当てられているブレーキ回路内にいずれにせよ提供されている圧力センサによって行ってもよい。有利には、歯車ポンプは、例えば、(電磁)弁の閉鎖によってブレーキ回路から液圧的に分離され、これにより、2つの歯車ポンプの間の漏出は、それ自体は加圧されていない歯車ポンプの内部の圧力上昇をもたらさない。ブレーキ回路で測定が行われる場合には、ブレーキ回路は、圧力上昇が得られるように弁の閉鎖により遮断されている。
【0007】
回路分離検査のためには、加圧された歯車ポンプ内または歯車ポンプで圧力を測定することができる。例えば、歯車ポンプが配置されたブレーキ回路の弁は液圧が逃れることができないように閉じられ、弁の閉鎖前後に圧力が増大される。圧力が低下した場合、これは歯車ポンプ間の漏出、または場合によっては他の箇所における漏出の示唆となる。回路分離検査のためには、圧力上昇速度および/または達成可能な圧力レベルの測定も可能である。標準値からのずれ、特に遅い増圧または低い達成可能圧力レベルは、漏れを示唆する。検査可能性は包括的に列挙されたわけではない。
【0008】
液圧式の2系統車両ブレーキ装置の二重歯車ポンプで使用した場合、本発明は簡単で安価な回路分離検査の可能性を提供する。構成変更のための措置は一般には不要である。本発明は、隔壁を通るポンプシャフトの案内部が1つのシールのみによって密閉されている二重歯車ポンプを使用することを可能にする:第2のシールは省略することもできる。さらなる利点は、漏れを検出する可能性である。
【0009】
従属請求項は、請求項1に記載した本発明の有利な構成および実施形態を対象としている。
【0010】
本発明は、回転可能に、密閉された状態で隔壁を貫通する共通のポンプシャフトを備える二重‐歯車ポンプのために一般に適用可能であり、すなわち、(外)歯車ポンプのためにも内歯車ポンプのためにも適用可能である。本発明は、2つの内歯車ポンプを備える二重‐内歯車ポンプが小型に構成される。本発明は、基本的には、3つ以上の歯車ポンプを備える多重‐歯車ポンプのためにも使用可能である。「二重歯車ポンプ」という概念は、一般化して「多重‐歯車ポンプ」という意味でも理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】二重‐内歯車ポンプの軸線方向断面図である。
【
図2】2系統車両ブレーキ装置の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示した本発明による二重‐内歯車ポンプ1は、液圧的に互いに分離された2つの内歯車ポンプ2,2′を備え、これらの内歯車ポンプ2,2′は駆動のために共通のポンプシャフト3を備える。内歯車ポンプ2,2′は、スリップ制御装置(ABS,ASR,ESP,FDR)を備える、
図2に示した液圧車両ブレーキ装置の2つのブレーキ回路のための液圧ポンプとして設けられている。このような液圧ポンプは循環ポンプとも呼ばれ、通常はピストンポンプとして形成されており、ここに示すように内歯車ポンプ2,2′としては形成されていない。本発明は、同様に(外)歯車ポンプのためにも使用可能である。2つの内歯車ポンプ2,2′は、ポンプシャフト3に対して互いに平行な半径方向平面に、互いに軸線方向の間隔をおいて配置されており、内歯車ポンプ2,2′の間には、内歯車ポンプ2,2′を空間的および液圧的に分離するための隔壁14が設けられている。ポンプシャフト3は隔壁14の貫通孔部4を貫通し、そこでシール5によって密閉されている。2つの内歯車ポンプ2,2′は、(外)歯車と呼ぶこともできるピニオン6,6′を備える。ピニオン6,6′はポンプシャフト3に回動不能に固定されており、共通のポンプシャフト3に基づいて、互いに同軸的に固定されている。ピニオン6,6′はリングギア7,7′によって取り囲まれており、リングギア7,7′は、ポンプシャフト3およびピニオン6,6′に対して偏心的に配置され、周の1箇所もしくは1領域でピニオン6,6′と噛み合う。この実施形態では、リングギア7,7′は反対方向の偏心性を備え、すなわち周方向に180°のずれを有している。
【0014】
2つの内歯車ポンプ2,2′は、ポンプケーシング9の、直径が段付けされた止まり穴8に配置されており、ポンプケーシング9はケーシングカバー10によって閉じられている。リングギア7,7′は、ポンプケーシング9もしくはケーシングカバー10内に回動可能に収容されている。ポンプシャフト3は、ポンプケーシング9およびケーシングカバー10の内部で、内歯車ポンプ2,2′の両側で軸受11,11′によって回動可能に支承されている。ポンプケーシング9内の止まり穴8の段部には隔壁14が配置されている。本発明の実施形態では、ポンプケーシング9は、
図2に示した車両ブレーキ装置のスリップ制御装置の液圧ブロックによって形成される。スリップ制御された液圧式車両ブレーキ装置のためのこのような液圧ブロックは既知であり、液圧ブロック内には、二重‐内歯車ポンプ1の他に、電磁弁、逆止弁および液圧蓄積器などの液圧的な構成部材が挿入されており、液圧接続のための孔部によって互いに接続されている。液圧部ブロックは、ブレーキマスタシリンダに液圧接続されており、液圧ブロックには車輪ブレーキが液圧接続されている。しかしながら、本発明は、二重‐内歯車ポンプのためにも、または一般に、固有のポンプケーシングを備える二重‐歯車ポンプのために適用可能である。
【0015】
2つの内歯車ポンプ2,2′のピニオン6,6′とリングギア7,7′との間には、鎌形部材12,12′が、ピニオン6,6′とリングギア7,7′とが噛み合う箇所で向かい合うピン13,13′に沿って旋回可能に配置されている。鎌形部材12,12′は、所定の長さだけ周方向に延在しており、鎌形部材12,12′の内周に沿ってピニオン6,6′の歯先が接触し、外周に沿ってリングギア7,7′の歯が接触する。鎌形部材12,12′は、周におけるピニオン6,6′の歯とリングギア7,7′の歯との間の中間室を閉じており、これにより、ブレーキ液または一般に液体または流体を圧送することが可能となる。したがって、内歯車ポンプ2,2′は、いわば「鎌形ポンプ」であり、この場合、本発明はこの構成形式に限定されておらず、例えば、歯付きリングポンプを備えていてもよい(図示しない)。
【0016】
図2に示した本発明による液圧車両ブレーキ装置15は、ブレーキマスタシリンダ16に接続された2つのブレーキ回路I,IIを備える2系統ブレーキ装置として形成されている。それぞれのブレーキ回路I,IIは、遮断弁17を介してブレーキマスタシリンダ16に接続されている。遮断弁17は、通電されていない基本位置で開かれた2ポート2位置方向制御電磁弁である。遮断弁17には、ブレーキマスタシリンダ16から車輪ブレーキ18へ貫流されるそれぞれ1つの逆止弁20が液圧的に並列に接続されている。それぞれのブレーキ回路I,IIの遮断弁17には、ブレーキ増圧弁21を介して車輪ブレーキ18が接続されている。ブレーキ増圧弁21は、通電されていない基本位置で開かれた2ポート2位置方向制御電磁弁である。これらの弁には、車輪ブレーキ18からブレーキマスタシリンダ16の方向に貫流される逆止弁22が並行に接続されている。
【0017】
それぞれの車輪ブレーキ18にはブレーキ減圧弁23が接続されている。これらの車輪ブレーキ18は、循環ポンプとも呼ばれる液圧ポンプの吸込側もしくはポンプ入口に共に接続されている。液圧ポンプは、
図1に示した二重‐内歯車ポンプ1の内歯車ポンプ2,2′である。ブレーキ減圧弁23は、通電されていない基本位置で閉じられた2ポート2位置方向制御電磁弁として形成されている。内歯車ポンプ2,2′の加圧側もしくはポンプ出口は、ブレーキ増圧弁21と遮断弁17との間に接続されている。すなわち、内歯車ポンプ2,2′のポンプ出口は、ブレーキ増圧弁21を介して車輪ブレーキ18に接続されており、遮断弁17を介してブレーキマスタシリンダ16に接続されている。ブレーキ増圧弁21およびブレーキ減圧弁23は、より良好に開ループ制御および閉ループ制御を行うことができるので、比例弁である。
【0018】
2つのブレーキ回路I,IIはそれぞれ内歯車ポンプ2,2′を備え、これらの内歯車ポンプは、ポンプモータ24(電動モータ)を備えるポンプシャフト3を介して共に駆動可能である。内歯車ポンプ2,2′のポンプ入口は、ブレーキ減圧弁23に接続されている。内歯車ポンプ2,2′の入口側には、スリップ制御の際にブレーキ減圧弁23の開放により車輪ブレーキ18から流出したブレーキ液を収容し、一時蓄積するための液圧蓄積器25が設けられている。
【0019】
ブレーキ増圧弁21およびブレーキ減圧弁23は、内歯車ポンプ2,2′が駆動されている場合に、既知の形式で、およびここに説明していない形式でスリップ制御のために車輪毎のブレーキ圧制御を可能とする、車輪ブレーキ圧を変調する弁装置を形成している。遮断弁17は、スリップ制御の際には閉じることができる。すなわち、車両ブレーキ装置15は、ブレーキマスタシリンダ16から液圧的に分離される。
【0020】
ブレーキマスタシリンダ16が操作されていない場合に迅速に増圧を行うために、車両ブレーキ装置15はそれぞれのブレーキ回路I,IIに吸込弁29を備え、吸込弁29により、内歯車ポンプ2,2′のポンプ入口とブレーキマスタシリンダ16とが接続可能である。吸込弁29は、通電されていない基本位置で閉じられた2ポート2位置方向制御電磁弁として形成されている。
【0021】
ブレーキ増圧弁21、ブレーキ減圧弁23、遮断弁17、吸込弁29、およびポンプモータ24によって駆動可能な内歯車ポンプ2,2′は、車両ブレーキ装置15のスリップ制御装置26(アンチロック・ブレーキ・システムABS、トラクションコントロールシステムASR、エレクトロニック・スタビリティプログラムFDR,ESP)の構成部品である。スリップ制御装置26によって、すなわち、内歯車ポンプ2,2′によって、ブレーキマスタシリンダ16が操作されていない場合にも車輪ブレーキ18で車輪ブレーキ圧を発生し、ブレーキ増圧弁21およびブレーキ減圧弁23によって車輪毎に制御することができる。
【0022】
電磁弁、逆止弁、液圧蓄圧器、および内歯車ポンプ2,2′を備える二重‐内歯車ポンプ1は、液圧ブロック(図示しない)に組み込まれており、液圧ブロックによって互いに接続されている。液圧ブロックはブレーキマスタシリンダ16に接続されており、ブレーキマスタシリンダ16には車輪ブレーキ18が液圧接続されている。
【0023】
ブレーキ操作は、従来のように(フット)ブレーキペダル27を踏み込むことにより筋力によって得られ、ハンドブレーキであれば、(ハンド)ブレーキレバーが引かれる。スリップ制御装置26の機能は専門家には既知であり、ここでは詳述しない。安全性に基づいて、2つのブレーキ回路I,IIが液圧的に分離されていることが重要である。なぜなら、確実な液圧的分離によってのみ、他方のブレーキ回路II,Iが故障している場合、例えば、他方の回路II,Iにおける漏れにより増圧が不可能である場合に一方のブレーキ回路I,IIの機能が確保されるからである。2つのブレーキ回路I,IIの液圧的な分離、いわゆる「回路分離」のためには、二重‐内歯車ポンプ1の2つの内歯車ポンプ2,2′の液圧的な分離が重要であり、内歯車ポンプ2,2′は、隔壁14を通るポンプシャフト3の案内部でシールリング5によって互いにシールされている。
【0024】
したがって、隔壁14を通るポンプシャフト3の案内部のシールの密閉性は検査可能である必要がある。本発明によれば、このために、2つの内歯車ポンプ2,2′のうちいずれか一方の内歯ピストンは液圧的に圧力を加えられ、加圧された内歯車ポンプ2,2′および/または他方の内歯車ポンプ2′,2内の圧力が測定される。例えば、増圧の経過、例えば、所定圧力が得られるまでの時間が測定および検査されるか、または最大発生可能圧力が測定される。測定値は、隔壁14を通るポンプシャフト3の案内部のシールが密閉されており、車両ブレーキ装置15の回路分離が損なわれていない場合に内歯車ポンプ2,2′が示す目標値と比較される。目標値とのずれ、特に遅い増圧または低い最大圧力は、漏れの示唆となる。他の、または付加的な可能性は、加圧されていない内歯車ポンプ2′,2内の圧力を測定することである。一方の内歯車ポンプ2,2′内の圧力が増大された場合に、それ自体は加圧されていない他方の内歯車ポンプ2′,2内にわずかな増圧が生じたことも、隔壁14を通るポンプシャフト3の案内部のシールの漏れ、または二重‐内歯車ポンプ1または車両ブレーキ装置15の他の箇所において2つのブレーキ回路I,IIの液圧的な分離が損なわれていることを示す。
【0025】
増圧は、内歯車ポンプ2,2′がポンプモータ24によって駆動されることによって、内歯車ポンプ2,2′自体によって行うことができる。増圧のためには、遮断弁17、ひいては加圧された内歯車ポンプ2,2′のポンプ出口が閉じられ、他の内歯車ポンプ2′,2の遮断弁17は、内歯車ポンプ2′,2に増圧が生じないように開放状態に保持される。ブレーキ減圧弁23は閉鎖状態に保持され、これにより、ポンプ出口も閉じられている。少なくとも1つのブレーキ増圧弁21は開放状態に保持され、これにより、それぞれの車輪ブレーキ18に接続された車輪ブレーキ圧力センサ19によって内歯車ポンプ2,2′の圧力が測定可能である。2つのブレーキ増圧弁21を閉じることにより、内歯車ポンプ2,2′をポンプ出口で直接に閉じることができ、これにより、測定結果が改善されるが、しかしながら、車輪ブレーキ圧力センサ19による内歯車ポンプ2,2′の圧力の測定は除外される。ブレーキ増圧のために、内歯車ポンプ2,2′は、ポンプ入口で液圧蓄圧器25からのブレーキ液を吸い込むか、または吸込弁29の開放によりブレーキマスタシリンダ16からブレーキ液を吸い込む。
【0026】
一方の内歯車ポンプ2,2′内で増圧が行われた場合には、他方の内歯車ポンプ2′,2では遮断弁17が開放状態に保持され、したがって、他方の内歯車ポンプ2′,2内では増圧はおこなわれない。一方の内歯車ポンプ2,2′で圧力が増大された後にようやく他方の内歯車ポンプ2′、2の遮断弁17は閉じられ、これにより、二重‐内歯車ポンプ1のシールリング5の漏れに起因して場合によって生じる増圧が車輪ブレーキ圧力センサ19によって測定可能である。本発明による方法は、特に、車両ブレーキ装置15に提供されている構成要素によって実施可能であり、構成の変更を行う必要がないという利点を有する。本発明の別の利点は、隔壁14を通るポンプシャフト3の案内部のシールをシールリング5によって可能にしていることであり、これにより、場合によって生じる、漏れを突き止めることができる。さもなければ、回路分離、すなわち、2つのブレーキ回路I,Iの液圧的な分離を保障するために、二重のシールが不可欠となるであろう。本発明による方法は、車両ブレーキ装置15の2つのブレーキ回路I,IIが互いに分離されているか否かの検査を可能にするので、回路分離検査と呼ぶこともできる。