(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワイヤ繰出工程において、前記ボンディングツールを前記第1の高さから前記第2地点に向かって所定の曲線を描くように移動させる、請求項1記載のバンプ形成方法。
前記ワイヤ整形工程後であって前記ワイヤ切断工程前において、前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを上昇させる工程をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のバンプ形成方法。
前記バンプ形成工程において、ワイヤクランパによって前記ワイヤを拘束させた状態で、前記ボンディングツールをさらに上昇させることによって前記ワイヤを前記薄肉部において切断する、請求項7記載のバンプ形成方法。
前記薄肉部形成工程において、前記ワイヤの前記薄肉部の厚さが前記ワイヤの直径の略半分となるように前記ワイヤを押圧する、請求項1から9のいずれか一項に記載のバンプ形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の発明においては、バンプの高さが一定以上となった場合、ワイヤのネック部を直立させることが難しく、またボンディングツールによる操作によってワイヤを切断することが難しい場合があった。また、その他の従来技術として、複数のバンプを積み重ねたスタックドバンプの形成方法が知られているが、この方法においては、各バンプをスタックさせること自体が煩雑かつ時間を要してしまうことや、あるいはバンプの位置ずれの発生や所望のバンプの強度が得られないといった課題があった。
【0005】
他方、昨今、TSV(Through Silicon Via)やPOP(Package On Package)などの3次元実装形態が主流になりつつあるところ、このような実装形態においては、ある程度制限された狭ピッチ間隔に一定以上の高さを有するバンプを形成することが求められ、このようなバンプを、より簡便で効率的に形成することに対する需要が高まっている。
【0006】
そこで、本発明は、上記した課題を解決することができるバンプ形成方法、バンプ形成装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るバンプ形成方法は、ワイヤが挿通されたボンディングツールを用いて半導体装置用のバンプを形成する方法であって、ボンディングツールを基準面の第1地点に向かって下降させて、ボンディングツールの先端から延出したワイヤの先端を第1地点にボンディングするボンディング工程と、ボンディングツールの先端からワイヤを繰り出してボンディングツールを第1地点から離れる方向に移動させるワイヤ繰出工程と、基準面の第2地点においてボンディングツールでワイヤの一部を押圧することによって、ワイヤに薄肉部を形成する薄肉部形成工程と、ボンディングツールをワイヤの薄肉部とともに移動させて、第1地点にボンディングされたワイヤを基準面から立ち上がるように整形するワイヤ整形工程と、ワイヤを薄肉部において切断することによって、第1地点に基準面から立ち上がる形状を有するバンプを形成するバンプ形成工程と、を含む。
【0008】
上記構成によれば、ボンディングツールによってワイヤに薄肉部を形成し、第1地点にボンディングされたワイヤを基準面から立ち上がるように整形した後、ワイヤを薄肉部において切断することによって、第1地点に基準面から立ち上がる形状を有するバンプを形成する。したがって、所望の高さを有するバンプをより簡便で効率的に形成することができる。
【0009】
上記バンプ形成方法において、ワイヤ繰出工程において、ボンディングツールを基準面に対して垂直方向に沿って所定の高さまで移動させ、所定の高さを維持して第2地点に向かって平行方向に沿って移動させ、かつ、第2地点に向かって基準面に対して垂直方向に沿って移動させることも可能である。
【0010】
上記バンプ形成方法において、ワイヤ繰出工程において、ボンディングツールを基準面に対して垂直方向に沿って所定の高さまで移動させ、かつ、第2地点に向かって所定の曲線を描くように移動させることも可能である。
【0011】
上記バンプ形成方法において、ワイヤ繰出工程において、ボンディングツールを第2地点の上方に向かって所定の曲線を描くように所定の高さまで移動させ、かつ、第2地点に向かって基準面に対して垂直方向に沿って移動させることも可能である。
【0012】
上記バンプ形成方法において、ワイヤ整形工程において、ボンディングツールを基準面の第3地点の上方に向かって移動させ、第3地点は、第2地点と第1地点とを結ぶ直線上の地点であって、第3地点と第2地点との間に第1地点が配置される関係にある地点とすることも可能である。
【0013】
上記バンプ形成方法において、ワイヤ整形工程において、ボンディングツールを基準面に対して垂直方向に沿って所定の高さまで移動させ、かつ、所定の高さを維持して第3地点に向かって平行方向に沿って移動させることも可能である。
【0014】
上記バンプ形成方法において、ワイヤ整形工程において、ボンディングツールを第3地点の上方に向かって所定の曲線を描くように所定の高さまで移動させることも可能である。
【0015】
上記バンプ形成方法において、ワイヤ整形工程後であってワイヤ切断工程前において、ボンディングツールの先端からワイヤを繰り出してボンディングツールを上昇させる工程をさらに含むことも可能である。
【0016】
上記バンプ形成方法において、バンプ形成工程において、ワイヤクランパによってワイヤを拘束させた状態で、ボンディングツールをさらに上昇させることによってワイヤを薄肉部において切断することも可能である。
【0017】
上記バンプ形成方法において、ボンディング工程前に、ワイヤの先端をボール状にする工程をさらに含むことも可能である。
【0018】
上記バンプ形成方法において、薄肉部形成工程において、ワイヤの薄肉部の厚さがワイヤの直径の略半分となるようにワイヤを押圧することも可能である。
【0019】
本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、上記バンプ形成方法を含む。
【0020】
本発明の一態様に係るバンプ形成装置は、ワイヤが挿通されたボンディングツールを用いて半導体装置用のバンプを形成するバンプ形成装置であって、ボンディングツールの動作を制御する制御部を備え、制御部が、ボンディングツールを基準面の第1地点に向かって下降させて、ボンディングツールの先端から延出したワイヤの先端を第1地点にボンディングするボンディング工程と、ボンディングツールの先端からワイヤを繰り出してボンディングツールを第1地点から離れる方向に移動させるワイヤ繰出工程と、基準面の第2地点においてボンディングツールでワイヤの一部を押圧することによって、ワイヤに薄肉部を形成する薄肉部形成工程と、ボンディングツールをワイヤの薄肉部とともに移動させて、第1地点にボンディングされたワイヤを基準面から立ち上がるように整形するワイヤ整形工程と、ワイヤを薄肉部において切断することによって、第1地点に基準面から立ち上がる形状を有するバンプを形成するバンプ形成工程と、を実行するように構成されている。
【0021】
上記構成によれば、ボンディングツールによってワイヤに薄肉部を形成し、第1地点にボンディングされたワイヤを基準面から立ち上がるように整形した後、ワイヤを薄肉部において切断することによって、第1地点に基準面から立ち上がる形状を有するバンプを形成する。したがって、所望の高さを有するバンプをより簡便で効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、所望の高さを有するバンプをより簡便で効率的に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0025】
図1は、本実施形態に係るバンプ形成装置の構成図である。このバンプ形成装置は、例えばワイヤボンディングの技術分野で用いられるボンディング装置である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係るバンプ形成装置1は、制御部10、基台11、XYテーブル12、ボンディングヘッド13、トーチ電極14、キャピラリ15、超音波ホーン16、ワイヤクランパ17、ワイヤテンショナ18、回転スプール19、ボンディングステージ20、ヒータ21、操作部40、ディスプレイ41、およびカメラ42等を備えて構成される。
【0027】
以下の実施形態では、ボンディング対象となる半導体デバイス(例えば半導体ダイ)やリードフレームに平行な平面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ方向とする。キャピラリ15の先端位置は、X座標、Y座標、およびZ座標で表される空間座標(X,Y,Z)で特定される。
【0028】
基台11は、XYテーブル12を摺動可能に載置して構成されている。XYテーブル12は、制御部10からの駆動信号に基づいてキャピラリ15をXY平面で所定の位置に移動可能な移動装置である。
【0029】
ボンディングヘッド13は、ボンディングアーム(図示しない)と一体に形成されており、制御部10からの駆動信号に基づいて超音波ホーン16をZ方向に移動可能に保持する移動装置である。ボンディングヘッド13は軽量な低重心構造を備えており、XYテーブル12の移動に伴って発生する慣性力によるキャピラリ15の動きを抑制可能に構成されている。
【0030】
超音波ホーン16は、末端から先端にかけて、末端部、フランジ部、ホーン部、および先端部の各部で構成された棒状部材である。末端部は、制御部10からの駆動信号に応じて振動する超音波発振器161が配置されている。フランジ部は超音波振動の節となる位置でボンディングアームを介してボンディングヘッド13に共振可能に取り付けられている。ホーン部は、末端部の径に比べて長く延在するアームであり、超音波発振器161による振動の振幅を拡大して先端部に伝える構造を備えている。先端部はキャピラリ15を交換可能に保持する取付部となっている。超音波ホーン16は全体として超音波発振器161の振動に共鳴する共振構造を備えており、共振時の振動の節に超音波発振器161およびフランジが位置し、振動の腹にキャピラリ15が位置するような構造に構成されている。これらの構成により、超音波ホーン16は電気的な駆動信号を機械的な振動に変換するトランスデューサとして機能する。
【0031】
キャピラリ15は、ボンディングに用いられるボンディングツールの一部位である。キャピラリ15には、挿通穴が設けられており、ボンディングに使用するワイヤwが挿通され繰り出し可能に構成されている。キャピラリ15はバネ力等により交換可能に超音波ホーン16に取り付けられている。
【0032】
ワイヤクランパ17は、制御部10の制御信号に基づいて開閉動作を行う圧電素子を備えており、所定のタイミングでワイヤwを把持したり解放したりすることが可能なように構成されている。
【0033】
ワイヤテンショナ18は、ワイヤwを挿通し、制御部10の制御信号に基づいてワイヤwに対する張力を自在に変更することにより、ボンディング中のワイヤwに適度な張力を与えることが可能に構成されている。
【0034】
回転スプール19は、ワイヤwが巻き回されたリールを交換可能に保持しており、ワイヤテンショナ18を通じて及ぼされる張力に応じてワイヤwを繰り出すように構成されている。なお、ワイヤwの材料は、加工の容易さと電気抵抗の低さから選択される。通常、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)等が用いられる。
【0035】
トーチ電極14は、図示しない放電安定化抵抗を介して図示しない高電圧電源に接続されており、制御部10からの制御信号に基づいてスパーク(放電)を発生し、スパークの熱によってキャピラリ15の先端から繰り出されているワイヤwの先端にボールを形成可能に構成されている。また、トーチ電極14の位置は固定されており、放電時にはキャピラリ15がトーチ電極14から所定の距離まで接近し、ワイヤwの先端とトーチ電極14との間で適度なスパークを発生するようになっている。
【0036】
ボンディングステージ20は、バンプを形成するためのワーク30(例えば基板又は半導体ダイなど)を加工面に載置するステージである。ボンディングステージ20の加工面の下部にはヒータ21が設けられており、ワーク30をボンディングに適する温度にまで加熱可能に構成されている。
【0037】
操作部40は、トラックボール、マウス、ジョイスティック、タッチパネル等の入力手段を備え、オペレータの操作内容を制御部10に出力する入力装置である。カメラ42は、ボンディングステージ20の加工面に載置されたワーク30を撮影可能に構成されている。ディスプレイ41は、カメラ42で撮像された画像をオペレータに視認可能な所定の倍率で表示するようになっている。オペレータはディスプレイ41に表示されるワーク30を観察しながら操作部40を操作してキャピラリ15の軌跡を設定していく。
【0038】
制御部10は、所定のソフトウェアプログラムに基づきバンプ形成装置1を制御する各種制御信号を出力可能に構成されている。具体的には、制御部10は限定のない例示として以下の制御を行う。
【0039】
(1)図示しない位置検出センサからの検出信号に基づいてキャピラリ15の先端の空間位置(X,Y,Z)を特定し、上記プログラムにより規定される空間位置へキャピラリ15を移動させる駆動信号をXYテーブル12およびボンディングヘッド13に出力すること。
【0040】
(2)ボンディング点へのボンディング時に超音波振動を発生させる制御信号を超音波ホーン16の超音波発振器161に出力すること。
【0041】
(3)上記プログラムにより規定されるワイヤwの繰り出し状況となるようにワイヤクランパ17の開閉動作を制御する制御信号を出力すること。具体的にワイヤwを繰り出す際にはワイヤクランパ17を解放状態とし、ワイヤwに屈曲点を形成する場合または切断する場合にはワイヤクランパ17を拘束状態とする。
【0042】
(4)ワイヤwの先端にボールを形成する時にトーチ電極14に放電させるための制御信号を出力すること。
(5)カメラ42からの画像をディスプレイ41に出力すること。
(6)操作部40の操作内容に基づいてボンディング点、屈曲点等の空間座標を特定すること。
【0043】
なお、上記バンプ形成装置1の構成は例示であり、上記に限定されない。例えば、X方向、Y方向、またはZ方向に移動させる移動装置はボンディングステージ20側に設けてもよく、またバンプ形成装置1側およびボンディングステージ20側の双方に設けることもできる。
【0044】
次に、本実施形態に係るバンプ形成方法について説明する。
【0045】
図2(A)〜(E)及び
図3(A)〜(C)は、本実施形態に係るバンプ形成方法を示したものであり、
図4は、本実施形態に係るバンプ形成方法のタイミングチャートを示したものである。ここで、
図4において、縦軸はキャピラリの高さ(すなわちキャピラリの先端のZ座標)を示し、横軸はキャピラリの位置(すなわちキャピラリの中心軸のX座標)を示す。また、
図4に記載された時刻t1〜t8は、本実施形態に係るバンプ形成方法について実行開始からの時間経過を示したものである。また、
図2(B)〜(E)は
図4の時刻t1〜t4に対応し、
図3(A)及び(B)は
図4の時刻t5及びt6に対応し、
図3(C)は
図4の時刻t8に対応している。
【0046】
まず、バンプ形成装置1の基本的な動作について説明する。
【0047】
最初にすべきことは、制御部10に、キャピラリ15の先端15aの軌跡(
図4参照)を設定することである。キャピラリ15の移動方向を変更する変更点(すなわちXYZ座標)を設定することにより、キャピラリ15を所定の軌跡に沿って移動させることが可能となる。
【0048】
オペレータはカメラ42で撮像された画像をディスプレイ41にて観察しながら操作部40を操作して、軌跡の変更点を設定していく。具体的には、操作部40から座標情報を入力したりディスプレイ41に表示されるマーカを所望の点に位置させて入力したりすることで、その点のX座標およびY座標を設定する。ワーク30の基準面(例えばワーク30の表面)からのZ方向の変位を操作部40から数値入力することで、Z座標を設定する。
【0049】
これらから形成する総てのバンプに対して上記変更点の空間座標の設定を行ってからボンディング動作を開始させる。制御部10は、設定された変更点の順番に従ってキャピラリ15を、ワークの基準面に対して相対的に移動させ、ワイヤクランパ17による解放および把持を繰り返しながら設定された軌跡に沿ってキャピラリ15を移動させてボンディング動作を実行する。
【0050】
以下、
図2〜
図4を参照しつつ、本実施形態のバンプ形成方法の一例について説明する。以下の例では、ワークとして電極52を有する基板50を用い、当該電極52上にバンプ60を形成する場合について説明する。なお、以下の例では、キャピラリ15の移動方向は、Y方向において座標を固定している。
【0051】
まず、
図2(A)(時刻t0)に示すように、ワイヤwの先端にフリーエアーボールfabを形成する。すなわち、キャピラリ15の先端15aから延出したワイヤの一部に所定の高電圧に印加されたトーチ電極14(
図1参照)を近づけて、当該ワイヤの一部とトーチ電極14との間で放電を発生させる。こうして、当該ワイヤの先端が表面張力によって溶融したフリーエアーボールfabを形成する。ワイヤwの先端にフリーエアーボールfabを形成したら、キャピラリ15を、基板50の基準面の第1地点X1(例えば電極52の中心点)に向かって下降させる。なお、
図4において、
図2(A)の時刻t0におけるキャピラリの軌跡は省略してある。
【0052】
次に、
図2(B)(時刻t1)に示すように、ワイヤwのフリーエアーボールfabを基準面の第1地点X1、すなわち基板50の電極52にボンディングする。キャピラリ15が下降することによって、時刻t1において、フリーエアーボールfabが電極52に当接するとともに、キャピラリ15に付与されている荷重により、キャピラリ15の先端15aによってフリーエアーボールfabが変形する。キャピラリ15の先端15aは、キャピラリ15の挿通穴の開口端部である。
【0053】
第1地点X1でのボンディングのとき、制御部10は超音波ホーン16に制御信号を供給して超音波発振器161に超音波振動を発生させ、超音波ホーン16及びキャピラリ15を介して、フリーエアーボールfabに超音波振動を加える。また、基板50の電極52は、ヒータ21により所定の熱が加えられているので、フリーエアーボールfabに加えられている荷重、超音波振動、及びヒータ21により加えられている熱の相互作用によって、フリーエアーボールfabが電極52にボンディングされる。こうして、ワイヤからなるボール部62が形成される。
【0054】
なお、
図4に示すように、このボンディング時点(時刻t1)におけるキャピラリ15の高さはZ0であり、実質的に基板50の基準面の高さと同じである(厳密には、キャピラリ15の先端15aは、ボール部62の一部の高さ分だけ基準面よりも若干高い。)。
【0055】
次に、
図2(C)(時刻t2)に示すように、キャピラリ15の先端からワイヤwを繰り出してキャピラリ15を第1地点から離れる方向に移動させる。例えば、
図4における時刻t1からt2までのキャピラリ15の軌跡に示すように、キャピラリ15を、第1地点X1においてZ0からZ1まで、基準面に対して垂直な方向に上昇させる。キャピラリ15のZ0からZ1までの移動距離に応じて、キャピラリ15の先端15aから所定の長さのワイヤwが繰り出されることになる。
【0056】
そして、
図2(D)(時刻t3)に示すように、キャピラリ15の先端からさらにワイヤwを繰り出しながらキャピラリ15を基準面の第2地点X2の方向へ移動させる。具体的には、
図4における時刻t2からt3までのキャピラリ15の軌跡に示すように、キャピラリ15を、高さZ1において第1地点X1から第2地点X2の方向へ、基準面に対して平行な方向に移動させる。キャピラリ15のX1からX2までの移動距離に応じて、キャピラリ15の先端15aから所定の長さのワイヤwがさらに繰り出されることになる。なお、第2地点X2は、基板50の電極52の外側の位置、及び/又は電極52上に設けられるワイヤwのボール部62の外側の位置に設定される。
【0057】
その後、
図2(E)(時刻t4)に示すように、基準面の第2地点X2において、キャピラリ15によってワイヤwの一部を基板50の基準面上で押し潰す。具体的には、
図4における時刻t3からt4までのキャピラリ15の軌跡に示すように、キャピラリ15を、第2地点X2においてZ1からZ0まで、基準面に対して垂直な方向に下降させる。キャピラリ15が下降することによって、時刻t4において、キャピラリ15の先端15aが、ワイヤwのうち、ボール部62からキャピラリ15の挿通穴まで延出した部分の一部に当接するとともに、キャピラリ15に付与されている荷重により、キャピラリ15の先端15aによって、ワイヤwの当該一部が変形する。このとき同時に、ヒータ21によってワイヤwにおけるキャピラリ15の先端15aによって押し潰された部分に熱を加えることもできる。
【0058】
第2地点X2におけるキャピラリ15によるワイヤwの押圧力は、第1地点X1におけるキャピラリ15によるワイヤwの押圧力よりも小さくすることもできる。また、第2地点X2における押圧力は、通常のワイヤボンディングにおけるセカンドボンディングの押圧力よりも小さくすることもできる。なお、第2地点X2における押圧のときに、必要に応じて、超音波及び/又はスクラブ動作を作動させることも可能である。
【0059】
こうして、第2地点X2において、ワイヤwの薄肉部64が形成される。この薄肉部64は、キャピラリ15の挿通穴の中心軸よりも僅かに第1地点X1に近い位置に設けられる。例えば薄肉部64はキャピラリ15の先端15aによるツール痕である。ワイヤwの薄肉部64は、ワイヤwの直径よりも小さい厚みに構成される。薄肉部64の厚さは、例えばワイヤwの直径の50%程度であってもよい。なお、時刻t4においては、ワイヤwは、薄肉部64によってはまだ切断されてはおらず、ボール部62からキャピラリ15の挿通穴の内部にかけて一体的に延出した状態となっている。
【0060】
次に、
図3(A)(時刻t5)に示すように、キャピラリ15をワイヤwの薄肉部64とともに移動させる。例えば、
図4における時刻t4からt5までのキャピラリ15の軌跡に示すように、キャピラリ15を、第2地点X2においてZ0からZ2まで、基準面に対して垂直な方向に上昇させる。時刻t5におけるキャピラリ15の高さZ2は、時刻t2及びt3におけるキャピラリ15の高さZ1よりも高くてもよいし、あるいは実質的に同じであってもよい。なお、
図3(A)に示すように、ワイヤwの薄肉部64は、必ずしもキャピラリ15の先端15aに接触した状態で上昇させる必要はなく、キャピラリ15の先端15aから離れた状態でキャピラリ15とともに上昇させることも可能である。
【0061】
その後、
図3(B)(時刻t6)に示すように、キャピラリ15を第2地点X2から第3地点X3の方向へ移動させ、第1地点X1にボンディングされたワイヤw(ボール部62を含む)を基準面から立ち上がるように整形する。例えば、
図4における時刻t5からt6までのキャピラリ15の軌跡に示すように、キャピラリ15を、高さZ2において第2地点X2から第3地点X3の方向へ、基準面に対して平行な方向に移動させる。第3地点X3は、第2地点X2と第1地点X1とを結ぶ直線上の地点であって、第3地点X3と第2地点X2との間に第1地点X1が配置される関係にある地点である。
図3(B)に示すように、キャピラリ15の先端15aにおける第2地点X2側の部分(
図3(B)の紙面の右側部分)が、第1地点X1の上方付近に位置するように、第3地点X3を設定することもできる。言い換えれば、キャピラリ15の挿通穴の中心軸が、第1地点X1を基準として第2地点X2とは反対側の位置にあるように、第3地点X3を設定することもできる。すなわち、キャピラリ15の中心軸が第1地点X1にボンディングされたワイヤwの中心軸(X1と一致する)を超えるように、キャピラリ15を移動させることによって、第1地点X1上にボンディングされたワイヤwが基準面から垂直に立ち上がるように、ワイヤwの癖を矯正することができる。
【0062】
次に、
図4の時刻t6からt7までの軌跡に示すように、キャピラリ15を基準面に対して垂直な方向に高さZ3まで上昇させる。このとき、ワイヤクランパ17(
図1参照)によってワイヤwを解放状態とし、キャピラリ15の移動量に伴いキャピラリ15の先端から所定量のワイヤwを繰り出す。すなわち、時刻t6からt7までの繰り出し量が、次のバンプ形成のためのワイヤテールとなる。その後、ワイヤクランパ17によってワイヤwを拘束させた状態で、
図4の時刻t7からt8までの軌跡に示すようにキャピラリ15を基準面に対して垂直な方向に高さZ4までさらに上昇させる。こうして、ワイヤwに強制的に引っ張り応力を加え、
図3(C)に示すようにワイヤwを薄肉部64において切断する。なお、ワイヤクランパ17は、時刻t7からt8までの期間においてワイヤwを拘束状態とし、それ以前の期間である少なくとも時刻t1からt6までの期間においてワイヤwを解放状態とする。
【0063】
こうして、基板50の電極52上に、基準面から立ち上がる形状(所定の高さ)を有するバンプ60を形成することができる。基板50に複数のバンプを形成する場合、上記した各工程を電極ごとに繰り返し行う。
【0064】
図3(C)に示すように、本実施形態に係るバンプ形成方法によって形成されたバンプ60は、基準面にボンディングされたボール部62と、ボール部62上に基準面から立ち上がって形成されたネック部66とを含む。ネック部66の高さは、
図4に示す高さZ1と高さZ0の差分に略等しい。ネック部66は、上記した薄肉部64がキャピラリ15の移動によって切断された先端部65を有している。
図5(A)に示すように、ネック部66の先端部65は、先端方向にかけてネック部66の幅がより幅広となるような形状を有する。また、
図5(B)に示すように、ネック部66の先端部65は、キャピラリ15によって押し潰されてなる傾斜面を有し、先端にかけて先細りとなるような形状を有している。
【0065】
以上のとおり、本実施形態に係るバンプ形成方法によれば、ボンディングツール(キャピラリ15)によってワイヤwに薄肉部64を形成し、第1地点X1にボンディングされたワイヤwを基準面から立ち上がるように整形した後、ワイヤwを薄肉部64において切断することによって、第1地点X1に基準面から立ち上がる形状を有するバンプを形成する。したがって、所望の高さを有するバンプ60をより簡便で効率的に形成することができる。
【0066】
上記したバンプ形成方法を用いて半導体装置を製造することができる。この半導体装置は、上記各工程によって形成したバンプ60を備える。バンプ60は、ある程度制限された狭ピッチ間隔に一定以上の高さが求められる用途に特に好適である。
【0067】
図6に示すように、本実施形態に係るバンプ160をPOP(Package On Package:パッケージオンパッケージ)の実装形態を有する半導体装置100に適用することもできる。この半導体装置100は、半導体ダイ112及び基板114がワイヤ116を介して電気的に接続されて構成された第1のパッケージ110と、半導体ダイ122及び基板124がワイヤ126を介して電気的に接続されて構成された第2のパッケージ120とを備え、第1のパッケージ110上に第2のパッケージ120が積層されている。第1のパッケージ110は、基板114上にバンプ160が形成されており、バンプ16は、基板114上に搭載された半導体ダイ112や、ワイヤ116よりも高く構成されている。これによって、所定のピッチ間隔を保ちながらパッケージ110の上面に外部との電気的な接続部を提供することができる。 なお、本実施形態に係るバンプ形成方法によって形成された半導体装置用バンプは、上記した半導体装置の例に限るものではなく、他の様々な態様に適用することができる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
【0069】
ボンディングツール(キャピラリ15)の移動の軌跡は、
図4の矢印に示す態様に限るものではなく様々な態様を採ることができる。
【0070】
ここで、
図7〜
図10は、キャピラリ15の移動の軌跡の変形例を示したものである。なお、キャピラリ15の空間座標及びそれによる処理内容は、上記実施形態の説明と同様である。以下の変形例では、第1地点X1においてワイヤをボンディングした後から第1地点X1においてワイヤを立ち上げ整形するまでの間のキャピラリ15の移動の軌跡が
図4に示す例と異なっている。
【0071】
例えば、
図7に示すように、時刻t1からt2にかけて、キャピラリ15を第2地点X2の上方に向かって所定の曲線(例えば図示するように基準面側が凹状をなす向きの曲線)を描くように高さZ1まで移動させることもできる。すなわち、キャピラリ15を半円状の軌跡を描くように移動させることもできる。これによれば、第1地点X1における高さZ1の座標を経由することなくキャピラリ15を第2地点X2の上方に配置することができるため、キャピラリの移動距離を短くしてより効率的にバンプを形成することができる。また、第1地点X1にボンディングされたワイヤの形状を損なうことなくキャピラリ15を移動させることができる。なお、
図7における時刻t2〜t7までのキャピラリ15の移動の軌跡は、
図4における時刻t3〜t8について説明したとおりである。
【0072】
あるいは、
図8に示すように、
図7の例と同様に時刻t1からt3までキャピラリ15を移動させた後、時刻t3からt4にかけて、キャピラリ15を第3地点X3の上方に向かって所定の曲線(例えば図示するように基準面側が凹状をなす向きの曲線)を描くように高さZ2まで移動させることもできる。これによれば、第1地点X1における高さZ2の座標を経由することなくキャピラリ15を第3地点X3の上方に配置することができるため、キャピラリの移動距離を短くしてより効率的にバンプを形成することができる。また、第1地点X1にボンディングされたワイヤの形状を損なうことなくキャピラリ15を移動させることができる。なお、
図8における時刻t4〜t6までのキャピラリ15の移動の軌跡は、
図4における時刻t6〜t8について説明したとおりである。
【0073】
あるいは、
図9に示すように、
図4の例と同様に時刻t1からt2までキャピラリ15を移動させた後、時刻t2からt3にかけて、キャピラリ15を第2地点X2に向かって所定の曲線(例えば図示するように基準面側が凹状をなす向きの曲線)を描くように移動させることもできる。これによれば、第2地点X2における高さZ1の座標を経由することなくキャピラリ15を第2地点X2に配置することができるため、キャピラリの移動距離を短くしてより効率的にバンプを形成することができる。また、第1地点X1にボンディングされたワイヤの形状を損なうことなくキャピラリ15を移動させることができる。なお、
図9における時刻t3〜t7までのキャピラリ15の移動の軌跡は、
図4における時刻t4〜t8について説明したとおりである。
【0074】
あるいは、
図10に示すように、
図9の例と同様に時刻t1からt3までキャピラリ15を移動させた後、
図8の例と同様に時刻t3からt4にかけてキャピラリ15を移動させることもできる。なお、
図10における時刻t4からt6までのキャピラリ15の移動の軌跡は、
図4における時刻t6〜t8について説明したとおりである。
【0075】
また、上記実施形態では、最初に、
図2(A)に示すようにワイヤwの先端にボールfabを形成する例を説明したが、上記ボール形成工程は省略することもできる。例えば、ワイヤの材料としてアルミニウムを用いた場合はボールを形成することなく、ワイヤの一部を第1地点X1にボンディングすることもできる。
【0076】
また、上記実施形態では、キャピラリ15を、第1地点X1を基準として第2地点X2とは反対側の位置である第3地点X3まで移動させることによってワイヤwの形状を整形する例を説明したが、ワイヤwが第1地点X1上に立ち上がる形状に整形できれば、キャピラリの移動態様はこれに限定されるものではない。例えば、キャピラリ15を、Y座標を固定して第2地点X2から第1地点X1まで移動させることもできる。また、この場合、Y座標を変動させることもできる。本実施形態に係るバンプ形成方法において、第1地点X1上に立ち上がる形状を有するバンプを形成するためのキャピラリ15の移動態様は、ワイヤの材質、ワイヤの押圧力、キャピラリ15が描く軌跡によってワイヤに加えられる負荷等に基づいて様々に変形可能である。
【0077】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【解決手段】ワイヤが挿通されたボンディングツール15を基準面の第1地点X1に向かって下降させて、ツール15の先端から延出したワイヤの先端を第1地点X1にボンディングする工程と、ツール15の先端からワイヤを繰り出してツール15を第1地点X1から離れる方向に移動させるワイヤ繰出工程と、基準面の第2地点X2においてツール15でワイヤの一部を押圧することによって、ワイヤに薄肉部64を形成する工程と、ツール15をワイヤの薄肉部64とともに移動させて、第1地点X1にボンディングされたワイヤを基準面から立ち上がるように整形する工程と、ワイヤを薄肉部64において切断することによって、第1地点X1に基準面から立ち上がる形状を有するバンプ60を形成する工程と、を含む。