(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱要素は、定着器ロール、加圧ロール、及び、剥離剤を前記定着器ロールに供給するドナーロールのうちの1つ又はそれ以上の外表面の一部分であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0004】
電子写真技術を採用する画像形成装置は一般に、静電潜像を潜像受容体の表面に形成し、帯電トナーを受容体の表面に接触させてトナー画像を形成することができる。このトナー画像は受像基材に転写することができ、そこで画像は熱及び/又は圧力により定着され、それにより画像が得られる。このような装置においては、互いに当接する定着器ロール及び加圧ロールを備えた定着システムを用いて、トナーを受像基材に定着させることができる。具体的には、定着器ロールと加圧ロールの間にニップを形成することができ、それにより、受像基材がニップに入ったときに熱及び圧力でトナーを定着させることができる。
【0005】
定着システムは、定着プロセス中に加熱することができる熱生成要素を有することができる。定着システムにおいて、熱生成要素をトナーの融解及び定着操作に十分高い温度まで加熱するのに要するウオームアップ時間を短くすることが、エネルギー節約及び画像化装置の使用中にユーザを待たせないことの見地から望ましい。さらに、定着システム内の電気的及び電子的ハードウェアのコストを削減することができ、システム設計を簡単にすることができ、ウオームアップ時間の短縮の結果としてシステム効率を向上させることができる。
【0006】
誘導加熱技術はウオームアップ時間を短縮するのに利用することができる。これらの技術において、熱生成要素に近接位置に磁場を生成するのに電気コイルを用いることができる。磁場は、導電性の熱生成要素中に引き起こされる渦電流と呼ばれる電流を生じることができる。この渦電流は熱を生成することができ、熱生成要素中に熱の形態で消散される電力は渦電流損失として知られる。熱生成要素は、渦電流損失を引き起こして熱を生成することができる導電性サセプタ層を含むことができる。小さな電気的出力で大きな渦電流損失を引き起こすことが望ましい。
【0007】
本発明の実施形態において、熱生成要素内の導電性サセプタ層は不織カーボンナノチューブ(CNTs)及び/又は他の炭素ベースの材料を含むことができる。不織CNTsはシートを含むことができ、要素を目標温度まで加熱するのに要する電流を最少にし、システム設計を簡単にし、システム内の電気的及び電子的ハードウェアのコストを最少にすることができる。さらに、CNTsから作られるテキスタイルは高抗張力及び高熱伝導性を有し、これにより、このテキスタイルが望ましいベルト材料になる。従って、サセプタ層としてCNT不織シートを用いるとより効率的な定着システムが可能になる。さらに本発明の実施形態において、サセプタ層は、熱生成量を最適化することができる抵抗率及び厚さの組合せを有することができる。最適の抵抗率及び厚さの組合せを実現するためには、サセプタ層はCNT材料に限定する必要はなく他の炭素ベース又は金属材料を含むことができることを理解されたい。
【0008】
本明細書で用いるとき、そして別に明記しない限り、用語「ナノチューブ」及び「CNTs」は、約100ナノメートル又はそれ以下の少なくとも1つの短寸法、例えば幅又は直径を有する細長い材料(有機及び無機材料を含む)を指す。ナノチューブは不織シートとすることができ、整列させないか又は溶媒処理若しくは機械的引張りにより整列させることができる。ナノチューブは本質的に全て炭素から成るシートとすることができるが、デバイス製造プロセスの結果として少量の高分子材料を含むこともあり得る。
【0009】
様々な実施形態において、ナノチューブは内径及び外径を有することができる。例えば、内径は約0.5乃至約20ナノメートルの範囲とし、一方外径は約1乃至約80ナノメートルの範囲にすることができる。ナノチューブは、例えば約1乃至約10000の範囲のアスペクト比を有することができる。さらに、ナノチューブの長さは約100nm乃至約0.5cmの範囲にすることができる。
【0010】
用語「ナノチューブ」及び「CNTs」はまた、単一壁カーボンナノチューブ(SWCNTs)のような単一壁ナノチューブ、二重壁ナノチューブ、又は多重壁カーボンナノチューブ(MWCNTs)のような多重壁ナノチューブを含むことができ、それらの種々の機能化及び誘導体化された小繊維がナノファイバなどを形成する。用語「ナノチューブ」及び「CNTs」はさらに、SWCNTs及び/又はMWCNTsを含んだカーボンナノチューブを含むことができる。さらに用語「ナノチューブ」及び「CNTs」は、上述の全ての可能なナノチューブ及びそれらの組合せから改良したナノチューブを含むことができる。ナノチューブの改良には物理的及び/又は化学的改良を含めることができる。
【0011】
ナノチューブは導電性材料又は半導体材料で形成することができる。実施形態においてナノチューブは、低及び/又は高純度乾燥紙形態で得ることができ、或は種々の溶媒中で購入することができる。他の実施形態においてナノチューブは、製造されたままの未精製状態で入手でき、その場合には後で精製プロセスを行うことができる。
【0012】
ナノチューブは非常に優れた望ましい機能、例えば、機械的、電気的(例えば導電率)、及び熱的(例えば熱伝導率)機能をコーティング組成物及びコーティングされた物品にもたらすことができる。さらにナノチューブは、様々な物理的及び/又は化学的改良により、制御された及び/又は強化された機械的、電気的又は熱的特性を有する改良/機能化されたナノチューブとすることができる。
【0013】
本発明の実施形態においては、誘導技術を定着システムの任意の適切な部材に適用することができる。例えば、熱生成要素を、ロール型部材、例えば、定着器ロール、加圧ロール、又は定着器ロール及び加圧ロールのどちらか又は両方の代りとしてのエンドレスベルト(定着器ベルト)のような部材のいずれかに、加熱部材として付けることができる。さらに、例えば電気コイルを、定着器システムの部材のいずれか、例えば、定着器ロール、加圧ロール、及び/又は定着器ベルトなどの近傍に配置することができる。さらにまた、電気コイルは、磁場又は対応する渦電流損失を生成することが可能な任意の様式又は形態に構成することができる。例えば、誘導システムは、各々の開示全体が全体として引用により本明細書に組み入れられる特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載のシステム及び方法の何れかに従って構成することができる。
【0014】
図1は定着器ベルトシステム内の誘導加熱式定着器ベルトの例示的な方法及びシステムを示す。この例示的な定着器ベルトシステムは、例えばレーザプリンタのような静電画像化装置内に配置することができる。
【0015】
本発明の実施形態において、定着ステーション100は、定着器ロール105、支持ロール110、加圧ロール112、及び基材移送機構115により構成することができる。定着器ロール105、支持ロール110及び加圧ロール112の上の矢印は、各ロールの回転方向を表すことができる。定着器ロール105は低い熱伝導率を有することができ、随意にシリコンゴムでコーティングすることができる。支持ロール110は、支持ロール110を温度上昇から保護するための断熱層114を有することができる。加熱ベルト125は、支持ロール110と定着器ロール105の間で所定の張力により回転浮遊させることができる。加熱ベルト125は支持ロール110及び定着器ロールと共に117で示した方向に回転することができる。リブ(図示せず)を支持ロール110及び定着器ロール105の両端に配置して加熱ベルト125がそれぞれのロールから外れないようにすることができる。加熱ベルト125は、本明細書で説明する実施形態による誘導的に熱を生成することができる熱生成要素142を含むことができる。実施形態において加熱ベルトは、本明細書の
図3に記したように複数の層を含むことができる。
【0016】
加圧ロール112は加熱ベルト125を介して定着器ロールと圧力下で接触させることができ、その結果加熱ベルト125と加圧ベルトの間にニップ108を形成することができる。基材移送機構115は、転写されたトナー粉末画像を有する受像基材を矢印120で示す方向に沿ってニップ108を通過するように方向付けることができる。加熱ベルト125からの熱及びニップ108による圧力により、トナー粉末画像を融解させ受像基材に定着させることができる。
【0017】
定着ステーション100は、支持ロール110及び加熱ベルト125の近傍に配置することができる励起ユニット138を、励起コイル135と共に形成することができるリアコア130を有するように構成することができる。リアコア130は、磁気的又は他の方法で結合することができる中央コア140とU型コア145を含むことができる。中央コア140は、励起コイル135の中心軸を通過することができ、U型コア145と共に、支持コイル110及び定着器ロール105の中心線上に配置することができる。リアコア130は、例えばフェライトのような高透磁率を有する材料で作成することができる。しかし、多少低い透磁率を有する材料も同様に用いることができる。さらにリアコア130は、定着ステーション100の至る所で消散しないように電磁気層を遮蔽することができる。実施形態において、励起ユニット138は、中央コア140がない実施形態を含めて、本明細書で説明するように定着ステーション100内で誘導加熱を可能にするような任意の様式で構成することができる。
【0018】
励起コイル135は様々なコイル密度を有することができ、励起回路150又は励起コイル135を通して電流を伝送することができる任意の電源から生成される電流を伝導することができる。励起回路150はAC電源とすることができ、可変の電流及び周波数で動作することができる。例えば、励起回路150は、約25キロヘルツ(kHz)乃至約700kHzの範囲の周波数又は任意のそれらの組合せにおいて、約0.5アンペア(A)乃至約10Aの範囲の電流を出力することができる。しかし、励起回路150は種々異なる値の電流を出力できることを理解されたい。励起回路150が励起コイル135を通る電流を出力するとき、励起コイル135に近接する領域に磁場が生成される。この磁場は渦電流を引き起こすことができ、加熱ベルト125の熱生成要素142中に熱を生成することができる。従って、熱生成要素142は渦電流から生じた熱を、加熱ベルト125と励起コイル135の間になんらの物理的接触もなしに、放散させることができる。
【0019】
熱生成要素142からの熱は加熱ベルト125に放散させることができ、この加熱ベルト125は定着器ロール105、支持ロール110、及び加圧ロール112と共に回転し、転写されたトナー粉末画像を受像基材に定着させるのに十分な熱を供給することができる。より具体的には、加熱ベルト125は受像基材がニップ108にあるときに転写されたトナーを加熱してトナーを基材に付着させることができる。
【0020】
図2は、定着器ロールシステム内の誘導加熱式定着器ロールの例示的な方法及びシステムを示す。この例示的な定着器ロールシステムは、例えばレーザプリンタのような静電画像化装置内に配置することができる。
【0021】
本発明の実施形態において、定着ステーション200は定着器ロール205、加圧ロール210、基材移送機構215を含むことができる。基材移送機構215は転写されたトナー粉末画像を有する受像基材を矢印220で示す方向に沿って、定着器ロール205と加圧ロール210の間のニップ208を通過するように方向付けることができる。定着器ロール205及び加圧ロール210の上の矢印は、各ロールの回転方向を示すことができ、定着器ロール205は加圧ロール210と共に回転することができる。加圧ロール210は圧力下で定着器ロール205と接触させることができ、その結果定着器ロールと加圧ロール210の間にニップ208を形成ですることができる。定着ステーション200内で生成される熱及びニップ208からの圧力により、トナー粉末画像を融解させて受像基材に定着させることができる。
【0022】
定着システム200は、ドナーロール225、計量ロール230、及びリザーバ235をさらに含むことができる。ドナーロール225及び計量ロール230は、矢印で示す方向に回転できるように取り付けることができる。ドナーロール225は定着器ロール205と共に回転するように配置することができ、計量ロール230はドナーロール225と共に回転するように配置することができる。リザーバ235は剥離剤を保持し、これを計量ロールに供給することができる。計量ロール230はドナーロール225の表面に剥離剤を供給することができる。ドナーロールが定着器ロール205と接触して回転するとき、ドナーロール225上の剥離剤の薄膜を定着器ロール205に移動させることができ、剥離剤の薄い部分がドナーロール225上に残り、定着器ロール205上の滞留トナー及び汚染物質の除去を促進する。
【0023】
定着器ロール205は、ドナーロール225から剥離剤を受け取ることができる外表面232を含むことができる。外表面232は、本明細書で説明する実施形態により誘導的に熱を生成できる熱生成要素234を含むことができる。実施形態において外表面232は、本明細書の
図3で説明するように、複数の層を含むことができる。さらに、実施形態において外表面232は、定着ステーション200内で誘導的に熱を生成するように、定着器ロール205、ドナーロール225、及び/又は加圧ロール210の如何なる組合せの上にも配置することができる。
【0024】
定着ステーション200は、定着器ロール205の近傍に配置することができる励起ユニット240を、励起コイル242と共に形成することができるリアコア244を有するように構成することができる。実施形態において励起ユニット240は、定着器ロール205、ドナーロール225、及び/又は加圧ロール210の如何なる組合せに対しても近傍に配置することができる。リアコア244は、磁気的に又は他の方法により結合することができる、中央コア248及びU型コア246を備えることができる。中央コア248は励起コイル242の中心軸を通過することができ、U型コア246と共に、定着器ロール205の中心線上に配置することができる。リアコア244は、例えばフェライトのような高透磁率を有する材料で作成することができる。しかし、多少低い透磁率を有する材料も同様に用いることができる。さらに、リアコア244は、定着ステーション200の至る所で消散しないように電磁気層を遮蔽することができる。実施形態において励起ユニット240は、中央コア248がない実施形態を含めて、本明細書で説明するように定着ステーション200内で誘導加熱を可能にするような任意の様式で構成することができる。
【0025】
励起コイル242は様々なコイル密度を有することができ、励起回路250又は励起コイル242を通して電流を伝送することができる任意の電源から生成される電流を伝導することができる。励起回路250はAC電源とすることができ、可変の電流及び周波数で動作することができる。例えば、励起回路250は、約25キロヘルツ乃至約700kHzの範囲の周波数又は任意のそれらの組合せにおいて、約0.5A乃至約10Aの範囲の電流を出力することができる。しかし、励起回路250は種々異なる値の電流を出力できることを理解されたい。励起回路250が励起コイル242を通る電流を出力するとき、励起コイル242に近接する領域に磁場が生成される。この磁場は渦電流を引き起こすことができ、外層232の熱生成要素234中に熱を生成することができる。従って、熱生成要素234は渦電流から生じた熱を、外層232と励起コイル242の間になんらの物理的接触もなしに、放散させることができる。
【0026】
熱生成要素234からの熱は外層232に放散することができ、この外層232は定着器ロール205及び加圧ロール210と共に回転し、転写されたトナー粉末画像を受像基材に定着させるのに十分な熱を供給することができる。より具体的には、外表面232は受像基材がニップ208にあるときに転写されたトナーを加熱してトナーを基材に付着させるようにすることができる。
【0027】
図3は、本明細書で説明するシステム及び方法による、例示的な励起ユニット302及び誘導加熱要素300の例示的な断面を示す。励起ユニット302は、本明細書で説明するように、中央コア140、U型コア145、及び励起コイル135を備えることができる。さらに励起コイル135は、本明細書で説明するシステム及び方法により、様々な厚さ及び密度のコイルを含むことができる。実施形態において励起ユニット302は、電流及びそれによる磁気フラックスを生成することができる任意の要素とすることができる。誘導加熱要素300は、
図1に関して説明したように加熱ベルト125、又は
図2に関して説明したように外表面232、又は定着システム内に熱を放散することができる任意の他の要素とすることができる。誘導加熱要素300は、励起ユニット302から近接距離304に配置することができる。近接距離304は約10μm乃至約100μmの範囲にすることができる。誘導加熱要素300は単に例示的なものであり、本明細書で示し説明するように、種々異なる組合せ、材料、及び構成層の厚さを含むことができる。
【0028】
図3に示すように、誘導加熱要素300は、剥離層305及びシリコーン層310を含むことができる。剥離層305は、誘導加熱要素300の外層とすることができ、
図1に示すようにニップ108において、受像基材と接触することができる。実施形態において剥離層305は、トナー定着段階中に、トナーが剥離層305に付着しないようにする材料を含むことができる。実施形態において剥離層305は、
図2に関連して説明したように、トナー剥離剤を受け取りトナーの滞留をさらに防ぐことができる。剥離層305は約10μm乃至約50μmの範囲の厚さ、又は他の値の厚さを有することができる。シリコーン層310は剥離層305を支持することができ、約100μm乃至約3mmの範囲の厚さ、又は他の値の厚さを有することができる。
【0029】
誘導加熱要素300は、第1のサセプタ層315及び第2のサセプタ層320をさらに含むことができる。実施形態において誘導加熱要素300は、単一のサセプタ層を含むことができる。サセプタ層315及び320は、導電性材料とすることができ、電磁エネルギーを吸収してそのエネルギーを熱に変換することができる。具体的には、励起ユニット302内の電流により生成される磁場が存在すると、サセプタ層315及び320は、渦電流を誘起して渦電流による熱を放散することができ、サセプタ層315及び320内の熱の放散により渦電流損失が生じ得る。サセプタ層315及び320内の放散熱は、誘導加熱要素300の他の層の各々又はいずれかを加熱することができる。
【0030】
本発明の実施形態において、第1のサセプタ層315及び第2のサセプタ層320は、各々、カーボンナノチューブ(CNTs)及び/又は炭素ベースの材料を含むことができる。CNTsを用いると、サセプタ層315及び320を加熱するのに要する励起ユニット302内のコイル電流を最少にすることができ、そして高電流に付随する電流損失を最少にすることができる。さらに、CNTsは高引張強度及び高熱伝導率を有し、それによりCNTsは、定着器ベルトの寿命を長くするため、及び誘導加熱システムの効率を向上させるためのそれぞれの、望ましい材料となり得る。実施形態においてサセプタ層315及び320は各々、約10μm乃至約100μmの範囲の厚さ、又は他の値の厚さを有することができる。さらに実施形態において、第1のサセプタ層315及び第2のサセプタ層320は各々、約0.0001ohm・cm乃至約0.002ohm・cmの範囲の抵抗率を有することができる。従って、サセプタ層315及び320は、約0.025ohm・cm/cm乃至約2.0ohm・cm/cmの範囲の抵抗率/厚さを有することができる。本明細書で開示する値の範囲は、例えば、配置、配列、並びに、サセプタ層315及び320及び対応する要素の幾何学的形状に応じて変更できることを認識されたい。
【0031】
誘導加熱要素300は、ベース層325及び電磁層330をさらに含むことができる。ベース層325はサセプタ層315及び320を支持することができ、約30μm乃至約150μmの範囲の厚さ、又は他の値の厚さを有することができる。電磁層330は電磁波からシステム内の要素を遮蔽することができ、約20μm乃至約50μmの範囲の厚さ、又は他の値の厚さにすることができる。さらに電磁層330は、
図1に示した加熱ベルト125の一部分として支持ロール110及び定着器ロール105に接触することができる。さらに、定着器ロール誘導加熱システムの実施形態において電磁層330は、
図2に示した外表面232の一部分とすることができ、定着器ロール205に接触することができる。
【0032】
図4は、厚さが等しい種々の材料のスセプタ層内の渦電流加熱を示すグラフである。
図4に含めたテストケース1〜8の測定値は、周波数400kHzで5Aの電流を誘導コイルに印加して取得した。各々のテストケース1〜8に対して、
図3に関して説明した2つのサセプタ層の渦電流加熱を、ワット/メートル(W/m)単位で測定した。初めの3つ(テストケース1、2、及び3)並びに最後の2つ(テストケース7及び8)のテストケースにおいては、通常の金属材料をサセプタ層として使用した。具体的には、テストケース1では両方のサセプタ層としてニッケルを用い、テストケース2では両方のサセプタ層として銅を用い、テストケース3では両方のサセプタ層として銀を用い、テストケース7ではニッケルのサセプタ層の上に銅のサセプタ層を用い、テストケース8では銅のサセプタ層の上にニッケルのサセプタ層を用いた。
【0033】
テストケース4、5、及び6においては、CNTsをサセプタ層として用いた。具体的には、テストケース4では両方のサセプタ層として0.0001ohm・cmの抵抗率を有する軸方向に導電性のCNTsを用い、テストケース5では両方のサセプタ層として0.00025ohm・cmの抵抗率を有する軸方向に整列させたCNTsを用い、テストケース6では両方のサセプタ層として0.0008ohm・cmの抵抗率を有する整列させないCNTsを用いた。
【0034】
図4に示すように、通常の金属材料のテストケース(テストケース1、2、3、7、及び8)においては、サセプタ層の渦電流加熱は約100W/m乃至約200W/mの範囲であった。対照的に、CNT材料のテストケース(テストケース4、5、及び6)においては、サセプタ層の渦電流加熱は約1,250W/m乃至約2,350W/mの範囲であり、最高のケースは軸方向に整列させたCNTs(テストケース5)であった。全体の結果は、同じ印加電流に対して、CNTsのサセプタ層が通常の金属のサセプタ層より大きな渦電流加熱を生成したことを示す。従って、同量のエネルギー出力に対してより多くの熱が生成され、このことがより効率的な全体システムをもたらすことができる。
【0035】
図5は、軸方向に整列させた種々の厚さのCNTsのサセプタ層内の、種々の印加周波数による渦電流加熱を示すグラフである。
図5に含めた測定値は、種々の周波数で5Aの電流を誘導コイルに印加し、対応するサセプタ層内に渦電流を引き起こしたときに取得されたものである。3つのテストケース、即ち、厚さ10μmのCNTサセプタ層、厚さ20μmのCNTサセプタ層、及び厚さ40μmのCNTサセプタ層、を示した。さらに、各テストケースに対して印加電流の周波数を変化させた。具体的には、50kHz、100kHz、200kHz、及び400kHzの周波数の電流を各々のテストケースに対して印加した。
【0036】
図5に示すように、各々のテストケースにおいて渦電流加熱は印加周波数の増加と共に増加した。さらに
図5に示すように、それぞれのCNTサセプタ層の厚さは、周波数400kHzでの40μm厚のCNTサセプタ層の場合を除いて、種々の印加周波数にわたって渦電流加熱には実質的に影響しなかった。従って、一般にCNTサセプタ層の厚さは、特に印加周波数が50kHz、100kHz、及び200kHzの場合には、印加周波数と結果の渦電流加熱との間の実質的に直線的関係には、実質的には影響を及ぼさなかった。
【0037】
図6は、種々の印加電流にわたるCNTサセプタ層内の渦電流加熱を示すグラフである。
図6に含めた測定値は、種々の周波数で種々の電流を誘導コイルに印加して厚さ20μmの軸方向整列CNTサセプタ層内に渦電流を引き起こしたときに取得した。異なる周波数の4つのテストケースを実施した。具体的には、印加周波数が、それぞれ、50kHz、100kHz、200kHz、及び400kHzである場合の4つのテストケースを実施した。さらに、各テストケースに対して、誘導コイルに印加する電流を変化させた。具体的には、1.0A、2.0A、3.0A、4.0A、及び5.0Aの電流を、各テストケースに対して印加した。
【0038】
図6に示すように、渦電流加熱は、各テストケースにおいて印加電流が増加するにつれて増加した。さらに、
図6に示すように、測定された渦電流加熱は、テストケースの印加周波数が増加するにつれて増加した。具体的には、印加電流5Aで50kHzのテストケースにおいて測定された渦電流加熱は138W/mであり、一方印加電流5Aで400kHzのテストケースにおいて測定された渦電流加熱は2322W/mであった。またさらに、
図6に示すように、各テストケースにおいて測定された渦電流加熱は、電流が1.0Aから5.0Aまで増加するにつれて大幅に増加した。
図6に示した結果は、
図4のグラフと組み合せて、CNTサセプタ層を用いたケースは、通常のサセプタ層のものと近似的に等しい渦電流加熱を、より低い周波数及び/又は印加電流において達成できることを示す。具体的には、ニッケルのサセプタ層は誘導コイルに400kHzで5Aを印加したとき、約200W/mの渦電流を達成したが、一方CNTのサセプタ層は、誘導コイルに200kHzで2Aを印加したとき、211.93W/mの渦電流を達成した。従って、CNTサセプタ層を用いる定着システムは、従来のサセプタ層を用いた定着システムよりも、少ない電気的出力及びコストによってより効率的となり得る。
【0039】
図7は、種々の厚さ及び抵抗率のサセプタ層内での渦電流加熱を示すグラフである。
図7に示すテストケースの測定値は、誘導コイルに1MHzの周波数で5Aの電流を印加したときに取得した。各テストケースに対して、
図3に関連して説明したサセプタ層の、単位長さ当たりの渦電流加熱(W/m)を算出した。
【0040】
テストケースにおけるサセプタ層は様々な抵抗率及び厚さを有した。
図7のX軸は、各テストケースに対する抵抗率/厚さを、ohm・cm/cm単位で示す。例えば、サセプタ層が20μmの厚さ及び0.001ohm・cmの抵抗率を有する場合、このサセプタ層は5.00E−01又は0.5ohm・cm/cmの抵抗率/厚さを有する。幾つかのテストケースにおいては、複数のCNT(CNTs)をサセプタ層として用いた。類似の抵抗率/厚さにおいてサセプタ層の最適の渦電流加熱は、本明細書で論じた最適の抵抗率/厚さの比を有する他の材料、例えば、他の炭素ベースの又は従来の金属材料又は任意の他の材料のサセプタ層を用いて達成できることを認識されたい。
【0041】
図7に示すように、種々のサセプタ層の組合せを用いて抵抗率/厚さを約0.0ohm・cm/cmから約2.0ohm・cm/cmまで変化させた。さらに、
図7に示すように、渦電流加熱はサセプタ層の抵抗率/厚さが約0.0ohm・cm/cmから約0.4ohm・cm/cmまで増加するにつれて急速に増加し、抵抗率/厚さが約0.5ohm・cm/cmのときに渦電流加熱は約6700W/mのピークに達した。さらに、
図7に示すように、抵抗率/厚さが約0.5ohm・cm/cmから約2.0ohm・cm/cmまで増加するにつれて、渦電流加熱は約3300W/mまで徐々に減少した。全体の結果は、1MHzの印加周波数において、サセプタ層の抵抗率/厚さが約0.4ohm・cm/cm乃至約0.8ohm・cm/cmの範囲にあるとき、サセプタ層が最適の渦電流加熱を有したことを示す。
【0042】
図8は、最大の渦電流加熱が達成されたサセプタ層の抵抗率/厚さを電源周波数の関数として示すグラフである。
図8に示したテストケースにおける測定値は、様々な周波数の電流を誘導コイルに印加したときに取得した。さらに、テストケースにおけるサセプタ層は様々な抵抗率及び厚さを有した。
【0043】
図8に示した各々のテストケースに対して、印加周波数(X軸、kHz単位)と抵抗率/厚さ(Y軸、ohm・cm/cm単位)の組合せを当てはめて、
図3に関連して説明したサセプタ層の単位長さ当たりの最大渦電流加熱(W/m)を決定した。例えば、
図8に示すように、400kHzの印加周波数において0.2ohm・cm/cmの抵抗率/厚さを有するサセプタ層により、サセプタ層内の最大渦電流加熱が達成された。更なる例として、
図8に示すように、1000kHzの印加周波数において0.5ohm・cm/cmの抵抗率/厚さを有するサセプタ層により、サセプタ層内の最大渦電流加熱が達成された。全体の結果は、サセプタ層の最適の抵抗率/厚さの比は印加周波数に依存することを示す。より具体的には、印加周波数と最適の抵抗率/厚さの比との組合せにより、直線的に最大渦電流加熱が達成される。