【実施例】
【0053】
(実施例1)
5−デセンの合成:1−ヘキセンの自己メタセシス
図9Aを参照して、乾燥した2Lの丸底フラスコに、225g(2.67mol)の1−ヘキセン(95%以上の純度のものがアモコから入手できる)と磁気撹拌子とを加えた。該フラスコに10分間窒素を散布した。触媒823(2.2g, 2.7mmol)を加え、反応系を室温で18時間撹拌した。反応系からエチレンガスが放出されるのが観察された。200gのJ.T.Baker Silica Gel 60−200メッシュを1.5インチ×22インチのクロマトグラフィーカラムにつめたものに反応系を通してろ過し、使用した触媒を除去した。該カラムを、300mLの石油エーテル(沸点38℃〜55℃)ですすいだ。減圧下で前記溶媒と未反応の1−ヘキセンを除去し、115g(0.81mol)の5−デセンが生成した。この生成物を、更に精製することなく、次の反応に用いた。
【0054】
5−デセニルアセテートの合成:5−デセンと5−ヘキセニルアセテートとのクロスメタセシス
図9Bを参照して、乾燥した1Lの丸底フラスコに、115g(0.81mol)の5−デセンと、22.5g(0.158mol)の5−ヘキセニルアセテート(98%以上の純度のものが、酢酸5−ヘキセニルエステルの名でTCIアメリカから入手できる)と、磁気撹拌子とを加えた。該フラスコに5分間窒素を散布し、触媒823を1.33g(1.6mmol)加え、該フラスコを8mmHgの真空下で16時間管理した。16時間後、真空ポンプを外し、反応系を更に12時間窒素雰囲気下で撹拌した。GC分析は、87%の5−デセニルアセテートと、12%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンと、1%未満の5−ヘキセニルアセテーとを示した。
【0055】
上記反応混合物の約半分を500gのJ.T.Baker Silica Gelを1.5インチ×22インチのクロマトグラフィーカラムにつめたものに通してろ過し、5−デセニルアセテートの精製されたサンプルを得た。該カラムを、1Lの石油エーテルですすぎ、引き続き石油エーテル中で10%のジエチルエーテル溶液1Lですすいだ。200mLの区分を収集した。該データを以下にまとめる。
【0056】
GCの結果
区分番号 5−デセン 5−デセニルアセテート 1,10−ジアセトキシ−5−デセン1 0 0 0
2 100 0 0
3 91 9 0
4 0 100 0
5 0 100 0
6 0 100 0
7 0 100 0
8 0 0 0
9 0 0 100
10 0 0 100
11 0 0 0
【0057】
区分4、5、6、及び7を合わせ、減圧下で濃縮すると、99.4%の化学純度で且つ81:19のトランス:シス異性体比のものが10.6g(53.5mmol)生成した。5−デセニルアセテートのこのサンプルは、オレゴンのベンドのConsep, Inc.から入手できる5−デセニルアセテートのサンプルと実質的に区別できなかった。E−5−デセニルアセテート及びZ−5−デセニルアセテートは、それぞれ500mg当り$54.60($109.20/g)及び500mg当り$55.00($110.00/g)でシグマ(セントルイス、MO)から市販されている。
【0058】
(実施例2)
5−デセンの合成:1−ヘキセンの自己メタセシス
再び
図9Aを参照して、空気入りーバーヘッド撹拌機(−10℃の循環冷却液を伴った高効率還流コンデンサー)に連結された汚れの無い72Lの丸底フラスコに、48L(384mol)の1−ヘキセン(99%以上の純度のものがアモコから入手でき、更に精製することなく使用できる)を加えた。撹拌を開始し、該溶液に窒素を表面下から15分間散布した。触媒823(10g, 0.018mol)を加え、窒素雰囲気下で18〜24時間撹拌した。エチレンが、前記高効率コンデンサーを通して排気ダクトの中に排出された。
【0059】
24時間後、GC分析は、1−ヘキセンから5−デセンへの転化率が60〜70%であることを示した。この反応混合物を2.5Kgのシリカゲル(Fisher 170−400メッシュ、60Å)に通してろ過し、使用した触媒を除去した。
【0060】
当業者なら、中間体化合物を精製することなく前記物質を次の反応に送ることができることが分かるであろう。しかしながら、精製を望む場合は、中間体を分離することができ、例えば、前記5−デセンを蒸留又は別の方法で精製することができる。
【0061】
5−デセニルアセテートの合成:5−デセンと5−ヘキセニルアセテートとのクロスメタセシス
再び
図9Bを参照して、汚れの無い72Lの丸底フラスコに60Lの5−デセン(60%〜70%の純度)を仕込み、空気入りーバーヘッド撹拌機と真空蒸留設備に連結した。該真空蒸留設備は、3
´´×36
´´記号の蒸留カラムと高効率熱交換機と、22Lの受けフラスコに通じる1
´´の取り出しヘッドとを備える。2つの真空トラップを、22Lの受けフラスコの後と高容量真空ポンプの前とに挿入した。
【0062】
触媒823(100g, 0.122mol)を上記丸底フラスコに加え、撹拌を開始し、真空にし、加熱マンテルを設定2にした。反応混合物の温度を45℃以下に維持し、真空圧を調節して5−デセンが72Lのフラスコから蒸発するのを防いだ。5−ヘキセニルアセテート(純度99%、12L, 76mol)を5時間以上加えた。添加終了の後、加熱マンテルを切り、反応系を10mmHgの真空下で撹拌した。12時間後、真空トラップが空になり、ドライアイスで再びパックし、再び真空にした。
【0063】
当業者なら、上記メタセシス反応を、反応系を引っ張る真空度に応じて、約25℃〜60℃の間で実施するのが好ましく、約10mmHgで約25℃〜35℃の間で実施するのが最も好ましいことが分かるであろう。
【0064】
前記メタセシス反応のGC分析は、0.1%の1−ヘキセン、64.9%の5−デセン、0.08%の5−ヘキセニルアセテート、30.8%の5−デセニルアセテート(82%のトランスと18%のシスの異性体)、及び4.1%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンを示す。
【0065】
54〜83%の範囲の収率が、12Kgの規模で得られた。該収率は、5−デセンのヘキセニルアセテートに対する比を変えることで操作できる。1−ヘキセンを強真空下で除去するので、5−デセンの比の増加が5−デセニルアセテートの収率を増加させる。しかしながら、この増加した比は、処理能力を減少させ、即ち、実施により製造される5−デセニルアセテートのKg数を減少させる。12Kgスケールでは、75:25〜50:50の比の5−デセン:1−ヘキセンが、99%の5−ヘキセニルアセテートを5−デセニルアセテート及び1,10−ジアセトキシ−5−デセンに転換するのに作用するだろう。
【0066】
真空下で反応を実施することにより、出発物質の生成物への転化率が高まることは予期せぬことであった。真空の適用はエチレンを除去して転化率を約75%まで高める目的で試みたにもかからず、1−ヘキセンの除去で、5−ヘキセニルアセテートの転化率が99%以上になったのは全く予想外であった。
【0067】
好ましい実施態様では、同規模の材料と同タイプの装置で、合成ステップが4から2に減少し、最終生成物を合成するのに要する合計時間が20日以上から2日に減少した。このことは、10の要因により時間が短縮することを示している。実施例2の手法を用いれば、当業者は、83:17のトランス:シス比の5−デセニルアセテート12Kgを48時間以下で製造することができる。この製造時間には、メタセシス反応と触媒の除去が含まれるが、最後の蒸留は含まれない。
【0068】
より都合の良い方法であることに加えて、本方法は、5−デセニルアセテートの製造コストも減少させる。例えば、本方法は、好適なトランス:シス比の5−デセニルアセテートを、概ねグラム当り$0.40未満のコストで製造できることを明らかにした。廃溶媒及び廃棄生成物が無いことが、溶媒の購入及び廃棄物の処分コストを含めた反応のコストを実質的に低減する。更なる利点は、1−ヘキセン及び5−ヘキセニルアセテート等の出発物質が市販されていることである。
【0069】
触媒除去手法
前記メタセシス触媒を、
図10Aに示すトリスヒドロキシメチルフォスフィン(THMP)等の水溶性フォスフィンにより除去する。THMPが好ましく、該THMPはJ.W.EllisらのInorg. Chem. (1992) 31, 3026及びN.J.GoodwinらのChem. Commun. (1996) 1551に記載のようにして、テトラキスヒドロキシメチルフォスフォニウムクロライド(TKC)から製造することができる。TKCは、80%の水溶液である。より良い手法は、100mmolのテトラキスヒドロキシメチルフォスフォニウムクロライド(CytecからのPyroset TKCとしても知られている)を100mLのイソプロパノールに加え、窒素で10分間脱気し、100mmolの水酸化カリウムのペレットを加え、15分間又は該水酸化カリウムが溶解するまで撹拌することである。生成物は、更に精製することなく使用でき、又は必要となるまで該生成物を冷蔵庫中で撹拌することができる。
【0070】
この手法は、一般にポリヒドロキシアルキルフォスフィン又はポリヒドロキシアリールフォスフィンを対応するポリヒドロキシアルキル−ヒドロキシメチルフォスフォニウムハライド塩又はポリヒドロキシアリール−ヒドロキシメチルフォスフォニウムハライド塩と、等モル量の塩基、好ましくは水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムとから製造するのに使用できる。塩基が最初にホルムアルデヒドの形でヒドロキシメチルを除去して上記フォスフィンを生成させるので、塩基とヒドロキシメチルフォスフォニウム誘導体とのモル比が実質的に等しいことが、所望のポリヒドロキシアルキルフォスフィン又はポリヒドロキシアリールフォスフィンを生成させるのに不可欠である。如何なる余剰の塩基もフォスフィンと反応してポリヒドロキシアルキルフォスフィンオキサイド又はポリヒドロキシアリールフォスフィンオキサイドを生じ、それらはメタセシス触媒に対して不活性であり、反応混合物からメタセシス触媒を除去しないであろう。
【0071】
図10Bは、他の好適な非環式水溶性フォスフィンの一般構造式を示し、式中、qは0又は1であり、R
aa、R
bb、及びR
ccはH;CH
3;CH
2OH;CH
2OCH
3;CH
2CH
2OCH
3;(CH
2CH
2O)
xx(ここでxxは1から20である);アミン;カルボキシレート;スルフォネート等から選ばれる。
図10Cは、4〜40の炭素原子と3〜20の酸素原子とを有する好適な環系の水溶性フォスフィンの一般構造式を示す。
【0072】
上記実施例2からのメタセシス反応混合物(約0.041molのメタセシス触媒を含む20L)を空気入りーバーヘッド撹拌機に連結された22Lのフラスコに加え、砂温度浴中に設置し、室温より高い温度、好ましくは約55℃に加熱した。THMP溶液を加え、反応系を勢い良く12〜24時間撹拌した。窒素を散布した水(2L)を加え、1時間勢い良く撹拌した。撹拌を止め、界面を分離した。明るいオレンジの水相を除去し、水を更に2L加え、30分間勢い良く撹拌した。再び界面を分離し、水相を除去した。この手法を、水相が無色になるまで繰り返したが、通常は3〜4回の洗浄である。有機相を1Lの4M HClで30分間(好ましくはpH<1で)洗浄し除去した。飽和炭酸水素ナトリウム水(1L)を加え、15分間(好ましくはPH>7で)勢い良く撹拌した。該水相を分離し、除去した。
【0073】
勢い良く撹拌した5−デセニルアセテート溶液に、400gの無水硫酸ナトリウムを加えた。2時間撹拌の後、400gの炭酸カリウムを加え、該フラスコを約55℃で10〜12時間撹拌した。
【0074】
12時間後、撹拌を止め、5−デセニルアセテート混合物をフェノール樹脂でライニングされた55ガロンのドラムに移し、IPA中1MのKOHで安定化し、0.1%溶液を製造した。ドラムがいっぱいになったら、船積みして精製のための真空蒸留会社に送った。
【0075】
この触媒除去手法又はシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、5−デセン又は5−デセニルアセテート反応混合物からメタセシス触媒を、所望に従い小規模又は大規模工程で除去することができる。
【0076】
5−デセノールヘの転換
上記5−デセニルアセテートの一部を取り出し、次の手法手法に従い対応するアルコールに転換することができ、規模は必要に応じて調整することができる。15.0g(67mmol)の5−デセニルアセテート、35mLのメタノール及び34mLの2M水酸化ナトリウムを250mLの丸底フラスコに加える。この混合物を室温で3時間撹拌する。3時間後、加水分解が終了し、次に10mLのヘキサンを加え、溶液を10mLの1M HCl、10mLの飽和NaHCO
3水及び10mLの塩水で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ヘキサンを減圧下で除去し、9.4gの5−デセノールを生成させる。GC分析は、5−デセノールの異性体比が維持されていることを示す。
【0077】
最後に、PTBフェロモンを、9.4g(60.2mmol)の上記5−デセノールと79.5g(402mmol)の上記5−デセニルアセテートとを混合して合成し、83:17モルのアセテートとアルコールとの混合物を製造した。
【0078】
(実施例3)
触媒848を用いた5−デセニルアセテートの合成
図9Aを再び参照して、上記実施例1又は2に従い、或いは触媒848(
図5A)を触媒823の代わりに用いて、5−デセンを製造した。
【0079】
図9Bを再び参照して、磁気撹拌子及び真空アダプターを含んだ100mLの丸底フラスコに、10g(70.4mmol)の5−ヘキセニルアセテート及び30g(214mmol)の5−デセンを加えた。反応系に窒素を5分間散布し、次に、20mg(0.023mmol)の触媒848を加え、10mmHgの真空下で45分間撹拌した。
【0080】
前記のようにしてメタセシス触媒を除去し、透明な液体を生成させた。GC分析は、5−ヘキセニルアセテートから5−デセニルアセテートへの転化率が78%であり、E:Zの異性体比が82:18であることを示した。
【0081】
(実施例4)
触媒848を用いた5−デセニルアセテートの合成
図11は、触媒848の存在下の5−デセニルアセテートの1段階合成で、5−デセニルアセテートが80:20〜84:16のトランス:シス比で生成することを示す。
図6を参照して、磁気撹拌子及び還流コンデンサーを含んだ100mLの丸底フラスコに10g(70.4mmol)の5−ヘキセニルアセテート及び17g(210mmol)の1−ヘキセンを加えた。反応フラスコに窒素を5分間散布し、次に(触媒823に代えて)24mg(0.028mmol)の触媒848を加え、窒素雰囲気下、室温で6〜8時間撹拌した。反応が進むに従い、エチレンを含む揮発ガスがフードの中に排気された。
【0082】
上記メタセシス触媒を除去して、透明な液体を生成させた。模範的実施においては、GC分析は、5−ヘキセニルアセテートの5−デセニルアセテートへの転化率が65%であり、E:Zの異性体比が78:22であることを示した。
【0083】
この合成は、1−ヘキセンの5−デセンへの自己メタセシス反応を排除し、余剰の出発物資、大量の触媒、及び余剰の反応時間を伴う。更に、この反応は、真空にすることなく実施可能であり、実施例1又は2中の何れか1つの工程よりも時間が短く、それらの実施例の何れかで使用された触媒より100倍少ない触媒を使用する。
【0084】
代替の好適な実施態様は、1)アルコールが保護された5−ヘキセン−1−オール、又は限定されるものではないが、テトラヒドロピラニル(THP)エーテル、トリメチルシリル(TMS)エーテル、又はエチルビニルエーテル(EVE)エーテル、又はアセテート、又はベンゾエート及びプロピオネートエステル、又は当業者にとって容易に明らかである他の類似した誘導体等の前記アルコールが保護された5−ヘキセン−1−オールの誘導体を使うこと;2)メチリデンルテニウム錯体の形成を防止することが出発物質の生成物への転化率を高めるので、メチリデンルテニウム錯体の形成を防止する条件下(即ち、揮発性末端オレフィンが形成されるのに合わせて、該揮発性末端オレフィンを除去し)でクロスメタセシス反応を実行すること;及び3)反応において上記の条件を用いて高いトランス:シス異性体比を得ることを含む。
【0085】
例えば、5−ヘキセン酸又は5−ヘキセン酸のエステル(例えば、メチル5−ヘキセノエート、エチル5−ヘキセノエート等)を1−ヘキセンの代わりに用いることができるが、該合成は、カルボン酸又はエステルのアルコールへの還元を伴い、その後アセチル化される。これらの合成を、それぞれ
図12及び13に示す。
図12及び13を参照して、触媒823の存在下且つ真空下で、5−ヘキセン酸又は5−ヘキセノエートが5−デセンと反応して、それぞれ5−デセン酸又は5−デセノエートが生成する。生成した5−デセン酸又は5−デセノエートを還元及びアセチル化すると5−デセニルアセテートが生成する。更に、5−デセン酸の塩を再結晶化するとトランス異性体が増加してトランス−5−デセン酸が90%以上になり、次に還元及びアセチル化するとトランス−5−デセニルアセテートが90%以上になるので、5−デセン酸を合成することは有益である。
【0086】
図14は、5−デセニルアセタートの他の合成方法を示す。この方法は、1,10−ジアセトキシ−5−デセンと5−デセンのクロスメタセシスを伴う。末端オレフィンが存在しない(すなわち、1−ヘキセンおよび5−ヘキセニルアセタートである)場合、反応は実施例1および2で説明した反応と同じ転換率およびトランス:シス比となるであろう。5−ヘキセニルアセタートの1,10−ジアセトキシ−5−デセンへの転換は、エチレンを除去し、高い転換率(例えば98%より大きい)を得るために、真空下で行うことが好ましい。
【0087】
5−デセンと1,10−ジアセトキシ−5−デセンの比が1:1であるクロスメタセシスにより、統計上25%の5−デセン、50%の5−デセニルアセタートおよび25%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンが得られるが、この経路の利点は、出発材料から生成物への処理能力が最大となる点である。5−デセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンは、次のクロスメタセシス反応に再循環される。
【0088】
図15は、5−デセニルアセタートの他の合成を示す。この中で、4−塩化ペンテニルは、自己メタセシスして1,8−ジクロロ−4−オクテンを生成し、これと5−デセンとをメタセシスして8−塩化ノネニルを作る。次いで、塩化ノネニルを5−デセニルアセタートに転換する。
【0089】
ホウ酸ビニルアルキルまたはアリールエステルと内部または末端オレフィンとのクロスメタセシス ホウ酸ビニルアルキルまたはアリールエステルと内部または末端オレフィンとのクロスメタセシスにより、合成的に価値のある中間体が得られる。この中間体は、ホウ酸ビニルアルキルと、オルガノアルキルまたはオルガノアリール剤とのパラジウム触媒を用いた結合により、トランスもしくはシスハロビニル中間体、またはトランスオレフィンもしくはシスオレフィンに転換される。このホウ酸ビニル クロスメタセシス製法は、穏やかかつ費用効率がよいので、この製法により多くの新しい機会が開かれた。
【0090】
従来、ホウ酸ビニルアルキルエステルの合成は、液体臭素を用いて臭化した後、液体アンモニア中でナトリウムアミドを用いてデヒドロハロゲン化することにより、末端オレフィンを末端アセチレンに転換することを伴う。次いで、高価なボラン剤(例えば、9−BBN、カテコールボラン、ピナコールボラン等)を加えて、支配的なトランス臭化ビニル中間物が得る。これらの反応工程は、分子内の官能基または他のオレフィンに対して修正できない。この合成経路は、費用のかかるプロセスであり、所望の生成物を経済的に魅力のないものにしてしまう。
【0091】
しかし、この発明は、内部オレフィン(すなわち5−デセン)とホウ酸ビニルとをクロスメタセシスしてシスおよびトランスホウ酸ヘキセニルを得るだけでなく、単純な真空蒸留またはカラムクロマトグラフィーによりシスおよびトランスホウ酸ヘキセニルを分離して純粋なシスおよびトランス異性体を得るためのものである。純粋なホウ酸異性体が得られると、これを、構造を保持したままヨウ化ビニル中間体に転換するか、または構造を反転して臭化ビニル中間体に転換する。(すなわち、反応条件によっては、トランスホウ酸ヘキセニルピナコールエステルをトランス1−ヨウ化−1−ヘキセンまたはシス1−臭化ヘキセンに転換することができる。)次いで、トランス1−ヨウ化−1−ヘキセンまたはシス1−臭化ヘキセンを種々の有機金属アルキルまたは有機金属アリール剤と結合させて、異性体的に純粋な生成物を得る。この方法は、ウィティヒおよびホーナー・エモンズ化学反応を直接的に補完し、かつこれと匹敵する。
【0092】
シスおよびトランスオレフィンを分離する従来の方法は、硝酸銀を含浸したシリカゲルを用いる。この方法は、材料が少量の研究量(すなわち、100mg未満)である場合にはうまく働くが、大規模(10kgより大きい)で実用するには費用がかかりすぎ、かつ扱いが面倒である。単純真空蒸留、カラムクロマトグラフィー、または再結晶により容易にシスおよびトランスホウ酸ビニルアルキルを分離する利点は、この方法が非常に強力かつ効率的なものになる点である。さらに、ホウ酸ビニルとシスおよびトランス5−デセンとのクロスメタセシスは、トランス5−デセン異性体が非常に過剰に存在する場合にも、シス5−デセンを選択的に消耗する点である。
【0093】
表7および8は、異なる反応条件下でのクロスメタセシス反応から得られた結果を示す。これらの結果により、この方法の有用性および選択性が明らかである。
【0094】
[表7]
5−デセンはトランス82.3%、シス17.7%の異性体混合物として開始した。HBPEはホウ酸ヘキセニルピナコールエステルである。
【0095】
[表8]
5−デセンはトランス82.3%、シス17.7%の異性体混合物として開始した。HBPEはホウ酸ヘキセニルピナコールエステルである。
【0096】
表7において、クロスメタセシス反応は迅速に進行して終了し、600%過剰の5−デセンを用いたにもかかわらず、この反応により5−デセンのトランス比が82.3%から86.7%に増加した。また、ホウ酸ヘキセニルピナコールエステルの異性体比も高いトランス選択性を保持しており、開始1分後には94%であったものが、9時間後には90%となっている。
【0097】
表8において、過剰のホウ酸ビニルピナコールエステルを用いた場合、反応は遅延し、かつホウ酸ヘキセニルピナコールエステル(HBPE)の収率は低い(すなわち、20.0%)。しかし、E−5−デセン異性体純度およびHBPE異性体純度は、5−デセンを非常に過剰な量で用いた場合(表7、9時間のデータ)とほぼ同じ値に達した。
【0098】
図16は、触媒823を用いて、ホウ酸ビニルピナコールエステルと5−ヘキセノールTHPエーテル(または5−デセンの1,10−ジTHPエーテル)とをクロスメタセシスして(Matheson、D.S J Am Chem Soc (1960)82、4228−4233)、1−ボロヘキセン−6−オールTHPエーテルのピナコールエステルを得ることを伴う5−デセニルアセタートの合成を示している。この生成物を、Miycuira(Org Syn 8 p.532)により説明されるスズキ条件下でブチルリチウムおよび塩化亜鉛と結合し、E−5−デセノールTHPエーテルをE:Z異性体比91:9で得た。この材料をカラムクロマトグラフィーで精製し、次いでアセタート化して5−デセニルアセタートをE:Z異性体比=91:9で得た。
【0099】
図17は、触媒823を用いて、ホウ酸ビニルピナコールエステルと5−ヘキセニルアセタート(または1,10−ジアセトキシ−5−デセン)とをクロスメタセシスして(Matheson、D.S J Am Chem Soc (1960)82、4228−4233)、1−ボロヘキセン−6−イルアセタートのピナコールエステルを得ることを伴う5−デセニルアセタートの合成を示している。この生成物は、水酸化ナトリウムおよび水により触媒され、ヘキセン−6−オールの1−ボロン酸を生じた。この生成物を、Miycuira(Org Syn 8 p.532)により説明されるスズキ条件下でブチルリチウムおよび塩化亜鉛と結合し、E−5−デセノールを98%より大きいE異性体比で得た。この材料をカラムクロマトグラフィーで精製し、アセタート化して5−デセニルアセタートを98%より大きい異性体比で得た。
【0100】
図18は、コナガ(Diamondback Moth:DBM)フェロモンの類似物質である9−ギ酸テトラデセニルの合成を示す。再び
図9Aを参照して、前記の実施例1または2と同様に、あるいは触媒848を触媒823に置換して5−デセンを作った。
図18を参照して、5−デセンを真空下かつ触媒823の存在下で9−デセノールとクロスメタセシスし、1−ヘキセンが発生するのでこれを反応から除去しながら、9−テトラデセノール(図示せず。)を生成した。次いで、酢酸ホルミルを9−テトラデセノールと反応させ、9−ギ酸テトラデセニルを生成した。
【0101】
(実施例6)
11−テトラデセニルアセタートの合成
図19は、雑食ハマキ(Omnivorous Leafroller:OLR)のフェロモンである、11−テトラデセニルアセタートの合成を示す。
図19を参照して、10g(44.2ミリモル)の11−ドデセニルアセタートおよび11.2g(133ミリモル)の3−ヘキセンを、マグチック撹拌子および還流冷却器を含む100ml丸底フラスコに加えた。窒素を5分間噴霧し、次いで12mg(0.014ミリモル)の触媒848を加え、室温の窒素雰囲気下で8時間撹拌した。反応が進行するにつれて、1−ブテンを含む揮発性気体をドラフトに排気した。
【0102】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−ドデセニルアセタートの70%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、80:20のE:Z異性体比となることが示された。
【0103】
(実施例7)
11−テトラデセニルアセタートの合成
再び
図19を参照して、10g(44.2ミリモル)の11−ドデセニルアセタートと3−ヘキセンの代わりに15g(268ミリモル)の1−ブテンとを、マグチック撹拌子およびドライアイス冷却器を含み、−15℃の冷却バス中に入れた100ml丸底フラスコに加えた。窒素を1分間噴霧し、次いで24mg(0.028ミリモル)の触媒848を加え、15℃の窒素雰囲気下で8時間撹拌し、その後、一晩放置して室温にした。反応が進行するにつれて、1−ブテンを含む揮発性気体をドラフトに排気した。
【0104】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−ドデセニルアセタートの55%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、66:34のE:Z異性体比となることが示された。
【0105】
(実施例7a)
11−テトラデセニルアセタートの合成
図20を参照して、10g(31.2ミリモル)の11−エイコセニルアセタートおよび15g(179ミリモル)の3−ヘキセンを、マグチック撹拌子および還流冷却器を含む100ml丸底フラスコに加えた。ホホバ油として知られる、安価な日用品の種油から11−エイコセニルアセタートを分離する。窒素を1分間噴霧し、次いで50mg(0.059ミリモル)の触媒848を加え、35℃の窒素雰囲気下で8時間撹拌した。
【0106】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−エイコセニルアセタートの69%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、83:17のE:Z異性体比となることが示された。溶媒としてシクロヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより11−テトラデセニルアセタートを分離し、3.86g(15.1ミリモル)を収率48%で得た。
【0107】
図21は、トマト蟯虫(Tomato Pinworm:TPW)フェロモンの主成分である、E−4−トリデセニルアセタートの合成を示す。
図12を参照して、1−デセンを触媒823の存在下、真空中で4−ペンテニルアセタートとクロスメタセシスして、E−4−トリデセニルアセタートを生成し、かつエチレンが発生するのでこれを溶液から除去する。
【0108】
図22は、E−4−トリデセニルアセタートの他の合成を示す。
図22を参照して、1−デセニルは自己メタセシスして9−オクタデセンを形成する。4−ペンチルアセタートは自己メタセシスして1,8−ジアセトキシ−4−オクテンを生じる。触媒823の存在下、真空を用いずに、9−オクタデセンと1,8−ジアセトキシ−4−オクテンをクロスメタセシスして、4−トリデセニルアセタートを得る。2つの内部オレフィンを用いることにより、真空を用いずに得られる4−テトラデセニルアセタートの転換および収率を高くできる。
【0109】
図23は、コドリンガ(Codling Moth:CM)のフェロモンであるE,E−8,10−ドデカジエノールの合成を示す。
図23を参照して、触媒823の存在下、真空中で、ペンテニル誘導体と8−ノネノールとをクロスメタセシスして、Xで表される離脱基をC−10位置に有するE−8−ドデセニル誘導体を生成する。エチレンが発生するので、これを反応混合物から取り除く。次いで、反応混合物を酸または塩基で処理して、E,E−8,10−ドデカジエノールを得る。
【0110】
図24Aおよび
図24Bは、E,E−8,10−ドデカジエノールの他の合成を示す。
図24Aを参照して、触媒801を用い、1,10−ジアセトキシ−5−デセンおよび1,6−ジクロロ−3−ヘキセンのクロスメタセシスして、8−クロロ−5−オクテン−1−イルアセタートを得、これを還元および脱アセチル化して、8−クロロオクタン−1−イルアセタートを合成した。
図24Bを参照して、トルエン中2当量の亜リン酸トリエチルを用いて、8−クロロオクタン−1−イルアセタートを4時間還流し、オクタノールホスフィット中間体を得た。混合物をアルゴン下で−40℃まで冷却した。リチウムジイソプロピルアミンを加え(ホスホン酸の2.3モル当量)、室温まで徐々に温めた。蒸留したばかりのクロトンアルデヒド(2モル当量)を加え、室温で4時間撹拌した。8,10−ドデカジエノールが得られるまで混合物を加工した。
【0111】
8−ハロオクタン−1−オールに対する従来の方法と比較した、8−ハロオクタン−1−オールへのメタセシス経路の利点 オメガ−ハロアルカノールは、合成中間物、特に昆虫フェロモンの合成における中間物として用いられてきた、高価な化合物である(Mori 1992)。こうした化合物を調製する従来の方法は、水の除去を連続して(Pattison、FLM;JB Sothers;RG Woolford J.Am.Chem.Soc.(1956)78、2255〜2259)、または連続せずに(Chong、JM;MA Heuft;およびP Rabbat 「アルファ、オメガ−ジオールのモノブロム化の溶媒効果:オメガブロモアルカノールの従来の調製」J.Org.Chem.(2000)65、5837〜5838)、不活性溶媒中でアルファ、オメガ−ジオールをHClまたはHBr水溶液と共に加熱して行う。これらの方法は、研究量の材料に対しては適度に働くが、大規模な合成に対しては不都合である。しかし、これらの反応は、通常低濃度(例えば0.3M)で行われ、高い転換率を得るのに最大96時間を必要とし、最大で60%のジハライドまたは未反応の出発ジオールで汚染され、蒸留により用意に純粋なオメガ−ハロアルカノールを分離することができず、中程度(典型的には35%〜85%)の収率が得られる。ジオールのいくつかは、商業プロセスで用いるには非常に高価であるという点がもうひとつの制限である。
【0112】
これらの不足を克服する新しい方法は、アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンおよびアルファ−オメガ−ジハライドのクロスメタセシスを用いて、オメガ−ハロアルケノールを得る。(ここでの命名において、アルコールを最初の炭素原子として開始して、オメガは分子の最終炭素原子を表す。)オメガ−ハロアルケノールは、それ自体高価な合成中間体であり、従来の水素化法下で容易にオメガ−ハロアルカノールに転換する。この方法の利点は、4つの異なる対称なアルファ、オメガ−ジハライド(すなわち、W−(CH
2)
n−Wであり、式中、Wは塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシラート、トシラートまたはこれらの誘導体から選択され、nは4、6、8または10に等しい。)を4つの異なる対称なアルファ、オメガ−ジアセトキシアルケン(すなわち、AcO−(CH
2)
n−OAcであり、式中、n=4、6、8または10である。)とクロスして、7つの異なるオメガ−ハロアルケノール(すなわち、AcO−(CH
2)
nCH=CH(CH
2)
m−Wであり、式中、n=1、2、3または4、m=1、2、3または4である。)を生じる。これらのオメガ−ハロアルケノールは、水素化条件下でオメガハロアルカノールに転換される。
【0113】
これらのメタセシス反応は、通常同モル比の対称ジハライドおよびジアセトキシ化合物で円滑に行われ、未反応の出発物質は、次のメタセシス反応に再循環される。収率は、典型的には50%程度の反応器体積効率である。(すなわち、反応器体積の50%が生成物である。)出発対称ジハライドおよびジアセトキシ化合物は、通常商業的供給者から、またはアルコールをハライドに容易に転換することにより入手可能である。また、出発物質とオメガ−ハロアルケノール生成物の沸点の違いに基づいて出発物質を選択する等の、オメガ−ハロアルケノールから出発物質を分離するのが非常に簡単となるように、これらを選択することが好ましい。例えば、1,6−ジブロモ−3−ヘキセンと1,10−ジアセトキシ−5−デセンとの間のクロスメタセシス反応から8−ブロモ−5−オクテニルアセタートを得る際、沸点の違いが大きいという理由でこれらの出発物質を選択した。1,6−ジブロモ−3−ヘキセンのBpt
1.0mmHgは84〜85℃であり、8−ブロモ−5−オクテニルアセタートのBpt
1.0mmHgは110〜112℃であり、1,10−ジアセトキシ−5−デセンのBpt
1.0mmHgは158〜162℃である。
【0114】
(
実施例:8−ブロモオクタン−1−オールの合成の比較)
8−ブロモオクタン−1−オールは、昆虫フェロモンの合成において有用な出発物質であるが、大量に市販されていないので広範には使用されていない。TCI(オレゴン州ポートランド)は、8−ブロモオクタン−1−オールを25gで191.30ドル(7652ドル/kg)で販売している。1,8−オクタンジオールから出発することもまた高価である。TCIは、1,8−オクタンジオールを498ドル/kgで販売している。このように高価であること、およびこの材料をオメガ−アルカノールに転換する際に前記した欠点により、このような方法が商業的に発展できなくなっている。
【0115】
図25を参照して、しかしながら、オレフィンメタセシスは、8−ブロモオクタン−1−オールを生成する安価な方法を提供する。対称1,6ジブロモ−3−ヘキセンを、1−ブロモ−3−ヘキセンにより作る(揮発性3−ヘキセンを真空下で除去する)。1−ブロモ−3−ヘキセンを、40ドル/kg未満で販売されている市販のリーフアルコール(Bedoukian、コネチカット州ダンブリー)から調製する。1,10−ジアセトキシ−5−デセンをヘキセニルアセタートのクロスメタセシスにより調製する。ヘキセニルアセタートは、従来の方法により、ヘキセノールから調製する。5−ヘキセノールは、45ドル/kg未満で販売されており、ニュージャージー州サマセットのDegussa−Hulsから入手可能である。
【0116】
同モル量の1,6ジブロモ−3−ヘキセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンをクロスメタセシスして、収率40〜50%の8−ブロモ−5−オクテニルアセタートを得る(この反応条件下での最大収率は50%である)。オメガ−ブロモ−5−オクテニルアセタートを単純真空蒸留により分離し、還元およびジアセチル化して8−ブロモオクタン−1−オールを作る。この方法のコストは最終生成物1kg当たり300ドル未満である。
【0117】
蚊産卵誘引フェロモン(Mosquito Oviposition Attractant Pheromon:MOP):(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドの合成
(実施例8)
メドウホーム油および1−ドデセンのクロスメタセシス
図26は、植物名Limnanthes Albaとしても知られているメドウホーム油の化学構造を示す(CAS Number:153065−40−8;EINES Numvber:310−127−6)。メドウホーム油は、Natural Plant Products LLC,2767 19
th St SE、PO Box 4306、Salem,OR 97302、から入手可能であり、現在、キログラム当り約$12の値段である。
【0118】
図27は、メドウホーム油及び1−ドデセンのクロスメタセシスを用いたMOPについて合成スキームを示す。
図26及び
図27に関して、3.0g(3.0mmol)メドウホーム油及び6.1g(36mmol)1−ドデセンを乾燥した50mL丸底フラスコに加えた。フラスコを窒素で20分間浄化し、ついで、0.025gの触媒823を添加し、混合物を18時間、35℃で10mmHg真空下で攪拌した。メタセシス触媒を0.037g(0.30mmol)のトリスヒドロキシメチルホスフィン及び5mLのトリエチルアミンを添加することによって除去した。混合物を50℃で12時間攪拌した。3回の100ml洗浄を水で行って、ついで、1MHClの1×50mL洗浄及びNaHCO
3飽和水の1×50mL洗浄を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。
【0119】
上述由来のメタセシス生成物を、“Epoxidation of Olefins by Hydorogen perocide−Acetonitorile: cis−Cyclohexesne Oxide”、におけるBach等によって記述されたように、すなわち、m−クロロペルオキシベンゾイン酸でエポキシドへ酸化した。グリセリドエステルを加水分解し、エポキシドを2MKOH及び20mLのイソプロパノールアルコール(IPA)において60℃へ6時間加温することによって、エポキシドをジオールへ開環した。溶液を濃縮し、50mLの1MHClで洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。ラクトン化を次の手順を用いて行った。すなわち、重ジオール(2.9g、9.0mmol)を50mgのトルエンスルホン酸を含む50mlの無水トルエンの中へ溶解し、100℃へ6時間加熱した。混合物を室温へ冷却し、50mLのNaHXO
3飽和水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。乾燥させた溶液を1.8g(0.018mmol)の無水酢酸及び5mLのトリエチルアミンでアセチル化した。溶液を室温で一昼夜攪拌した。反応を50mLの1MHCl及びNaHCO
3飽和水の50mL洗浄によって仕立てた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、濃縮し(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体を産出し、その後、クロマトグラフィーで精製した。
【0120】
(実施例9)
1−ドデセンの自己メタセシス
図28に関して、61.0g(360mmol)の1−ドデセンを乾燥した50mLの丸底フラスコへ加えた。フラスコを窒素で20分間洗浄し、ついで、0.25g(0.30mmol)の触媒823を添加し、混合物を18時間、35℃で10mmHg真空下で攪拌した。メタセシス触媒を100gのシリカゲル、170〜400メッシュを通じてろ過によって除去し、50.2g(324mmol)の11−ドコセンを産出した。この生成物をさらに精製することなく使用した。
メドウホーム油及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図29に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0121】
(実施例10)
メチルへキセノエート(hexenoate) 及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図30に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0122】
(実施例11)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図31に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0123】
(実施例12)
メドウホーム油及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図32に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0124】
(実施例13)
メドウホーム油 及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図33に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、5.5g(18mmol )の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用い、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0125】
(実施例14)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図34に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用い、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0126】
(実施例15)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図35に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等の“Di−Glyceraldehde Ethyl Acetal”Organic Synthesis Collective Volume II, 1943 p307及びジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0127】
(実施例16)
ヘキセニルアセテート及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図36に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol )のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等に述べられたように行い、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0128】
(実施例17)
ヘキセニルアセテート及び1−ドコセンのクロスメタセシス
図37に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等に述べられたように行い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに使用し、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0129】
(実施例18)
ヘキセナールジエチルアセタール及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図38に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセナールジエチルアセタールをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセナールジエチルアセタールの5−へキサデセン酸の酸化は、Ruhoff,J.R.(“N−Heptanoic Acid” OrganicSynthesis Collective Volume II,1943p314)に述べられたように行い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに使用し、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0130】
(実施例19)
図39に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセナールジエチルアセタールをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセナールジエチルアセタールの5−へキサデセン酸の酸化は、Ruhoffに述べられたように行い、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0131】
ぺカンナッツ系ベアラーホルモン(PNCB)の合成E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール
図40は、ビニルホウ酸塩ピナコールエステル(Matheson,D.SJ AmChem Soc(1960)82,4228−4233)の(入手可能な9−デセノールのSwern酸化によって合成し、9−デセナールを産出し、その後エタノールと塩酸でアセタールとして保護した)9−デセナールジエチルアセタールとのクロスメタセシスを、触媒823で伴い、1−ボロデセナールジエチルアセタールのピナコールエステルを生成するPNCBの合成を示す。この生成物は、Miycuira Org SynVIIIp532に述べられたようなSuzuki 条件下で、Z−1−ヨードへキセン(Normant Org Syn VII,p290−294)と結合し、E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール時エチルアセタールを生成する。この物質は、カラムクロマトグラフィーによって精製し、アセタールを含水メタノール及び水中で、触媒p−トルエンスルホン酸を用いて35℃で24時間加水分解した。E−9、Z−11ヘキサデカジエナールを反応混合物を濃縮することによって単離し、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0132】
図9、11〜25及び27〜40において示す合成スキームの説明を特定の触媒及び出発物質を含むが、当業者は、図及び説明を見本としてのみであり、たとえば、
図2〜5に示すようなクラスI−IVメタセシス触媒他の合成触媒を使用することによって、修正をすることができると賞賛するであろう。
図9、11〜25、及び27〜40の合成スキームに関して具体的に、クラスIVメタセシス触媒、特に触媒848、826、807及び785が好ましい。なぜなら、これらの触媒は、他の3つのクラスの触媒よりも十分少量で使用することができるからである。たとえ、触媒807及び785を少量で使用することができ、より高い収率を産することができても、それらが現在容易に合成される触媒848、及び826は現在もっとも好ましい。触媒823、801、及び716も好ましいが、一般にクラスIV触媒より少量の収率を産する。触媒791及び707は、現在好ましくない。
【0133】
当業者は、
図1、11〜25、及び27〜40に示す合成スキームをたとえば、上述し
たような出発物質の他のアルコール保護された誘導体など、他の出発材料を用いることに
よって修正することでき、たとえば、ここに存在するクロスメタセシス生成物の別の合成
を提供するために、あるいは、E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール、E−3、Z−5ドデカジエニルアセテート、E−8,Z−10−ペンタデカジエニルアセテート、E−7、Z−9ドデカジエニルアセテート、Z−5,E−7−ドデカジエノール、E−5、Z−7ドデカジエノール、Z−9、E−11−テトラデカジエニルアセテート、Z−11、E−13−ヘキサデカジエニルアセテート、又は他の同様の製品を合成するのに使用することができると賞賛するであろう。
別の出発材料としては、メチル5−エイコセノエートを挙げることができる。別の生成物としては、4−トリデセニルアセテート、メチル5−デセノエート、メチル5−ヘキサデセノエート、9−テトラデセニルクロライド、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、11−テトラデセン酸又は11−ドコセン酸を挙げることができる。
【0134】
本発明の趣旨を逸脱することなしに、多くの変形を本発明の上述した実施形態の詳細になされることが、当業者にとって明白であろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。