(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つのポリエステル樹脂と可塑剤とを、前記少なくとも1つのポリエステル樹脂の5重量%〜100重量%の量で存在する、アルコール、ケトン、アミド、ニトリル、エーテル、スルホン、スルホキシド、ホスホラミド、エステル、ベンゼン、アミンからなる群から選択される前記可塑剤を含む押出機の第1セクションで接触させ、樹脂混合物を作成することと;
前記押出機の第2セクションで、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、有機アミン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される固体中和剤を用いて前記樹脂混合物を中和することと;
前記押出機中で、前記樹脂混合物と界面活性剤とを接触させることと;
前記押出機中で、前記樹脂混合物を溶融混合することと;
前記押出機中で、前記溶融混合した混合物を複数間隔に分けて脱イオン水と接触させ、ラテックス粒子を含む水中油エマルションを作成することと;
前記ラテックス粒子を前記押出機から連続的に回収することとを含む、プロセス。
押出機中で、少なくとも1つのポリエステル樹脂と、前記ポリエステル樹脂の5重量%〜100重量%の量で存在する、アルコール、ケトン、アミド、ニトリル、エーテル、スルホン、スルホキシド、ホスホラミド、エステル、ベンゼン、アミンからなる群から選択される可塑剤とを接触させ、樹脂混合物を作成することと;
前記押出機中で、前記樹脂混合物を中和剤で中和することと;
前記押出機中で、前記樹脂混合物と界面活性剤とを接触させることと;
前記押出機中で、前記樹脂混合物を溶融混合することと;
前記押出機中で、前記溶融混合した混合物を複数間隔に分けて脱イオン水と接触させ、ラテックス粒子を含む水中油エマルションを作成することと;
前記ラテックス粒子を前記押出機から連続的に回収することとを含む、プロセス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示によって、固形分が多いエマルションを作るためのプロセスが得られる。次いで、得られたエマルションを、トナー、塗料、粉末、コーティング、医薬用の配合添加剤、薬物用のカプセル化剤、接着剤または食品添加剤を連続プロセスで作るために使用してもよい。実施形態では、本開示によって、少なくとも1つのポリエステル樹脂と少なくとも1つの可塑剤(例えば、溶媒またはワックス)と中和剤とを、スクリューフィーダまたは押出機に一緒に供給して予備混合した混合物を作ることと;この予備混合した混合物を水および界面活性剤と接触させることと;この混合物を溶融混合することと;その後に複数間隔に分けて、この溶融混合した混合物をさらなる水と接触させ、エマルションを作ることと;粗大粒子の含有量が低いラテックス粒子を連続的に回収することとを含む、連続プロセスが得られる。他の実施形態では、本開示によって、少なくとも1つのポリエステル樹脂と少なくとも1つの可塑剤(例えば、溶媒またはワックス)とを、スクリューフィーダまたは押出機に一緒に供給して予備混合した混合物を作ることと;この予備混合した混合物を水、界面活性剤および中和剤と接触させることと;この混合物を溶融混合することと;その後に複数間隔に分けて、この溶融混合した混合物をさらなる水と接触させ、エマルションを作ることと;粗大粒子の含有量が低いラテックス粒子を連続的に回収することとを含む、連続プロセスが得られる。
【0010】
実施形態では、本開示によって、ポリエステルおよび中和剤を、スクリューフィーダまたは押出機に一緒に供給して予備混合した混合物を作ることと;この予備混合した混合物を可塑剤、水および界面活性剤と接触させることと;この混合物を溶融混合することと;その後に複数間隔に分けて、この溶融混合した混合物をさらなる水と接触させ、エマルションを作ることと;粗大粒子の含有量が低いラテックス粒子を連続的に回収することとを含む、連続プロセスも得られる。
【0011】
実施形態では、本開示によって、ポリエステルをスクリューフィーダまたは押出機に供給することと;このポリエステルを可塑剤、水および界面活性剤と接触させることと;この混合物を溶融混合することと;その後に複数間隔に分けて、この溶融混合した混合物をさらなる水と接触させ、エマルションを作ることと;粗大粒子の含有量が低いラテックス粒子を連続的に回収することとを含む、連続プロセスが得られる。実施形態では、乳化の後に、ラテックスを蒸留し、ラテックス中の残留溶媒を除去してもよい。
【0012】
本開示のラテックスエマルションを作るのに、任意の樹脂を利用してもよい。実施形態では、樹脂は、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0013】
実施形態では、樹脂は、場合により、触媒存在下でジオールと二塩基酸とを反応させることによって作られるポリエステル樹脂であってもよい。脂肪族ジオールを、例えば、約40〜約60モル%、実施形態では、約42〜約55モル%、実施形態では、約45〜約53モル%の量で利用してもよく、第2のジオールを、樹脂の約0〜約10モル%、実施形態では、約1〜約4モル%の量で利用してもよい。
【0014】
結晶性樹脂は、例えば、トナー成分の約1〜約50重量%、実施形態では、約5〜約35重量%の量で存在してもよい。結晶性樹脂は、種々の融点を有していてもよく、例えば、約30℃〜約120℃、実施形態では、約50℃〜約90℃であってもよい。結晶性樹脂は、数平均分子量(M
n)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合、例えば、約1,000〜約50,000、実施形態では、約2,000〜約25,000であってもよく、重量平均分子量(M
w)が、例えば、約2,000〜約100,000、実施形態では、約3,000〜約80,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M
w/M
n)は、例えば、約2〜約6、実施形態では、約3〜約4であってもよい。
【0015】
有機二塩基酸またはジエステルは、例えば、樹脂の約40〜約60モル%、実施形態では、約42〜約52モル%、実施形態では、約45〜約50モル%の量で存在してもよい。
【0016】
実施形態では、上述のように、不飽和アモルファスポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。
【0017】
実施形態では、適切なポリエステル樹脂は、アモルファスポリエステル、例えば、以下の式(I)
【化1】
を有するポリ(プロポキシル化ビスフェノールA−co−フマレート)樹脂であってもよく、式中、mは、約5〜約1000であってもよい。
【0018】
アモルファス樹脂は、例えば、トナー成分の約30〜約90重量%、実施形態では、約40〜約80重量%の量で存在していてもよい。実施形態では、ラテックスで使用されるアモルファス樹脂またはアモルファス樹脂の組み合わせは、ガラス転移点が、約30℃〜約80℃、実施形態では、約35℃〜約70℃であってもよい。さらなる実施形態では、ラテックスで使用される混合樹脂は、溶融粘度が、約130℃で約10〜約1,000,000Pa・S、実施形態では、約50〜約100,000Pa・Sであってもよい。
【0019】
実施形態では、樹脂は、酸基を有していてもよく、実施形態では、酸基は、樹脂の末端に存在していてもよい。存在する可能性がある酸基としては、カルボン酸基などが挙げられる。カルボン酸基の数は、樹脂を作るために利用される材料や反応条件を調節することによって制御することができる。
【0020】
実施形態では、樹脂は、酸価が、約2mg KOH/樹脂g〜約200mg KOH/樹脂g、実施形態では、約5mg KOH/樹脂g〜約50mg KOH/樹脂gのポリエステル樹脂であってもよい。酸を含有する樹脂をテトラヒドロフラン溶液に溶解してもよい。酸価は、指示薬としてフェノールフタレインを含有するKOH/メタノール溶液で滴定することによって検出されてもよい。次いで、酸価は、樹脂にあるすべての酸基を中和するのに必要なKOH/メタノールの当量に基づいて算出してもよく、この当量は、滴定の終点として特定される。
【0021】
実施形態では、可塑剤を上述の樹脂に加えてもよい。樹脂を、押出機を通すのに適切な粘度になるまで軟化させるために、可塑剤を用いてもよい。軟化した樹脂は、室温では自由に流動しないが、押出機によって混合されるには十分に柔らかいように、十分に粘性であってもよい。軟化した樹脂の複素粘度は、本明細書で時々述べられているが、実施形態では、予備混合した混合物として、約130℃で約10Pa・S〜約1,000Pa・S、実施形態では、約50Pa・S〜約500Pa・Sであってもよい。予備混合した樹脂混合物の複素粘度は、任意の適切なレオメータを用いて測定することができる。
【0022】
樹脂に適した可塑剤は、例えば、有機溶媒であってもよい。任意の適切な有機溶媒を使用してもよく、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アミン、これらの組み合わせなどを含む任意の有機溶媒を、例えば、樹脂の約5重量%〜約100重量%、実施形態では、約10重量%〜約50重量%の量で使用してもよい。
【0023】
実施形態では、有機溶媒は、水に混和しない場合があり、沸点は、約30℃〜約100℃であってもよい。本明細書で上に示した任意の適切な有機溶媒を、転相剤または転溶媒剤として用いてもよく、樹脂の約1重量%〜約25重量%、実施形態では、約5重量%〜約20重量%の量で利用してもよい。
【0024】
また、樹脂を軟化させるための可塑剤として、ワックスを用いてもよい。ワックスは、ワックス分散物の状態で与えられてもよく、1種類のワックスまたは2種類以上の異なるワックスの混合物を含んでいてもよい。ワックスが含まれている場合、ワックスは、例えば、樹脂の約1重量%〜約25重量%、実施形態では、約5重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0025】
利用可能なワックスとしては、例えば、重量平均分子量が約500〜約20,000のワックス、実施形態では、約1,000〜約10,000のワックスが挙げられる。
【0026】
実施形態では、使用されるポリエステル樹脂がアモルファス樹脂である場合、可塑剤として結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよく、これがアモルファス樹脂の軟化温度を下げ、その結果、水の沸点付近の温度で、溶融混合物の粘度は、エマルションを形成するのに十分に低い粘度である。
【0027】
実施形態では、樹脂を、弱塩基または中和剤と予備混合してもよい。実施形態では、塩基を、固体または水溶液として樹脂と接触させてもよい。樹脂および中和剤を、一緒に供給するプロセスによって同時に供給してもよく、プロセス全体で押出機への塩基および樹脂両方の供給速度を正確に制御し、次いで、溶融混合し、乳化してもよい。このプロセスを利用すると、塩基濃度を制御することができ、もっと効率のよいプロセスが可能になる。一緒に供給することによって、プロセスの再現性および安定性が確保され、初期の開始時の廃棄物が減る。
【0028】
実施形態では、樹脂の酸基を中和するために中和剤を用いてもよく、そのため、中和剤は本明細書では、「塩基性中和剤」とも呼ばれることがある。任意の適切な塩基性中和試薬を本開示にしたがって使用してもよい。実施形態では、適切な塩基性中和剤は、無機塩基薬剤および有機塩基薬剤の両方を含んでいてもよい。
【0029】
塩基性薬剤を固体(例えば、水酸化ナトリウムフレーク)で使用してもよく、その場合、塩基性薬剤は、樹脂の約0.001重量%〜50重量%、実施形態では、約0.01重量%〜約25重量%、実施形態では、約0.1重量%〜5重量%の量で存在する。
【0030】
上述のように、酸基を有する樹脂に塩基性中和剤を加えてもよい。塩基性中和剤を加え、酸基を含む樹脂を含むエマルションのpHを、約5〜約12、実施形態では、約6〜約11まで上げてもよい。酸基の中和によって、実施形態では、エマルションの形成が促進される場合がある。
【0031】
実施形態では、本開示のプロセスは、溶融混合の前または溶融混合中に、高温で樹脂に界面活性剤を加えることを含んでいてもよい。実施形態では、固体界面活性剤を、樹脂および中和剤と一緒に押出機に供給してもよい。実施形態では、溶融混合の前に、固体界面活性剤を樹脂および中和剤に加え、予備混合した混合物を作成してもよい。界面活性剤が利用される場合、樹脂エマルションは、1種類、2種類またはそれ以上の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤は、用語「イオン系界面活性剤」に包含される。実施形態では、界面活性剤は、約5重量%〜約100重量%(純粋な界面活性剤)の濃度で、実施形態では、約10重量%〜約95重量%の濃度で固体または液体として加えられてもよい。実施形態では、界面活性剤は、樹脂の約0.01重量%〜約20重量%、実施形態では、約0.1重量%〜約16重量%、実施形態では、約1重量%〜約14重量%の量で存在するように利用してもよい。
【0032】
上述のように、本発明の連続プロセスは、押出機中で、酸基を有する樹脂と、溶媒または可塑剤、固体または含水の界面活性剤と、中和剤とを含有する混合物を高温で溶融混合することを含む。高温は、約30℃〜約200℃、実施形態では、約50℃〜約150℃、実施形態では、約70℃〜約100℃であってもよい。
【0033】
本開示の溶媒を用いた押出プロセスは、図に示されているようなシステムによって達成されてもよい。開示されているプロセスは、無溶媒プロセスと比較すると、ポリエステル樹脂の分解が少ない。樹脂の溶融混合は、押出機30で行われてもよく、押出機30は、二軸型押出機、Haakeミキサのような混練機、バッチ式反応器、または粘性材料を十分に混合して、ほぼ均質の混合物を作ることが可能な任意の他のデバイスであってもよい。撹拌は、必須ではないが、ラテックスの形成を促進するために利用してもよい。任意の適切な撹拌デバイスを利用してもよい。実施形態では、撹拌は、毎分約10回転(rpm)〜約5,000rpm、実施形態では、約20rpm〜約2,000rpm、実施形態では、約50rpm〜約1,000rpmであってもよい。撹拌は、一定速度である必要はなく、変動してもよい。例えば、混合物の加熱によって均一さが増すにつれて、撹拌速度を上げてもよい。
【0034】
ラテックスを作るときに、2種類以上の樹脂を利用してもよい。上述のように、樹脂は、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0035】
実施形態では、溶融混合する前に、樹脂、可塑剤、中和剤を予備混合してもよい。実施形態では、樹脂と可塑剤とを、タンブラ10で、毎分約1回転(rpm)〜約20rpm、実施形態では、約5rpm〜約15rpmの回転速度で約10分〜約60分、実施形態では、約15分〜約30分混合し、予備混合した混合物を調製してもよい。
【0036】
予備混合した樹脂混合物を、押出機30に接続しているスクリューフィーダ20から供給する。予備混合した樹脂混合物を、別個のフィーダ(示されていない)から供給される固体形態(例えば、フレークまたはペレット)の中和剤とともに、押出機30へと一緒に供給してもよい。中和剤を水溶液で用いる場合、溶解した中和剤を、容器45で界面活性剤および水と予備混合し、ポンプ55を介して押出機の注入口75に同時に供給するか、または、注入口75に別個に供給する。中和剤を、樹脂の約0.2重量%〜約5重量%、実施形態では、約0.4重量%〜約2重量%の濃度になるような速度で供給してもよい。流動性および供給速度は、処理装置(例えば、押出機30)の大きさによってさまざまに変わるため、所望の組成物を得るには、速度ではなく、成分の濃度が与えられる。
【0037】
実施形態では、固体の界面活性剤を利用してもよく、押出機の供給ホッパに樹脂とともに供給してもよい。溶融混合の前、溶融混合中またはその後、中和剤を加える前、加えている最中またはその後に、界面活性剤を樹脂組成物に加えてもよい。または、界面活性剤は、水溶液であってもよい。もっと特定的には、予備混合した樹脂混合物が押出機30に向かって流れるように、界面活性剤の溶液を、容器45から、ダイアフラムポンプ55を経て、熱交換器65によって加熱して、押出機の注入口75に供給してもよい。固体中和剤を利用する場合、界面活性剤を樹脂と溶融混合している間に、界面活性剤溶液中の水が中和剤を活性化させ、中和した樹脂の均質混合物が得られる。界面活性剤は、樹脂の約0.5重量%〜約20重量%、実施形態では、約2重量%〜約15重量%の濃度になるような速度で供給される。
【0038】
実施形態では、可塑剤は、押出機30へ直接注入され、押出機30の中で樹脂および可塑剤が混合され、これにより、予備混合の必要がなくなる。可塑剤を、容器40から、ダイアフラムポンプ50を経て、熱交換器60によって加熱し、押出機の注入口70に供給してもよい。可塑剤は、樹脂の約5重量%〜約100重量%、実施形態では、約10重量%〜約50重量%の濃度になるような速度で注入されてもよい。注入口70は、押出機30の第1セクションIに配置されていてもよく、このセクションは、溶融ゾーンとして作用し、界面活性剤溶液を供給する注入口75の前にある。注入口75は、第1セクションの後にある第2セクションIIに配置されていてもよく、その結果、押出機30中で、可塑剤が樹脂と混合した後に、界面活性剤が混合物に加えられる。実施形態では、注入口70および75は、押出機30の同じセクション(例えば、第1セクション)に配置されていてもよく、その結果、可塑剤および界面活性剤が同時に供給される。
【0039】
樹脂、可塑剤、中和剤、界面活性剤を溶融混合したら、次いで、溶融混合した油中水分散混合物を、さらなる水を用いて転相させ、水中油のラテックスエマルションを形成してもよい。脱イオン水(DIW)を加え、固形分が約5重量%〜約50重量%、実施形態では、約10重量%〜約40重量%のラテックスを作ってもよい。実施形態では、水温は、約20℃〜約110℃、実施形態では、約60℃〜約100℃であってもよい。
【0040】
水と樹脂混合物との接触は、押出機の水注入口によって達成されてもよい。図に示されているように、溶融混合した樹脂混合物が押出機30に流れるため、あらかじめ加熱しておいたDIWを、その後にある押出機30のセクションIIIの3つの注入口110、140、170に加えてもよい。DIWをタンク80に保存していてもよく、押出機の注入口110、注入口140に、ダイアフラムポンプ90、120、150を経て供給してもよい。DIWは、それぞれ、熱交換器100、130、160で加熱される。
【0041】
油中水エマルションから水中油エマルションへの転移がゆっくり起こり、相分離ではなく、物質が混合した状態が続き、押出機でのエマルション生成が最適になるように水を加えることが有益である。実施形態では、注入口から、あらかじめ加熱した脱イオン水を約40g/分〜約400g/分、実施形態では、約100g/分〜約200g/分の速度で押出機に注入してもよく、その結果、ラテックスの最終的な固形分は、約10%〜約40%、実施形態では、約15%〜約35%である。
【0042】
押出機から出た生成物は、ラテックス流を含んでいてもよく、このラテックス流が、タンク80からダイアフラムポンプ180を経て、熱交換器190で加熱され、さらにDIWが加えられ、穏やかに撹拌されながら蒸気捕捉タンク200で集められ、望ましい固形分をもつ最終生成物が得られる。所望のラテックスが得られたら、貯蔵し、後で以下に記載する凝集/融着プロセスで使用するために、ラテックスをラテックス流210として取り出す。
【0043】
生成するラテックスエマルションの粒径は、ポリエステル樹脂に対する可塑剤、界面活性剤、中和剤の濃度比率によって制御することができる。ラテックスの固形物濃度は、水に対する樹脂混合物の比率によって制御することができる。
【0044】
本開示によれば、本明細書のプロセスによって、出発樹脂と同じ分子量特性を保持した、乳化した樹脂粒子を製造可能であることがわかり、実施形態では、あらかじめ製造した樹脂を、エマルションを作るときに利用してもよいことがわかる。
【0045】
水系媒体に乳化した樹脂粒子は、粒径が、約1500nm以下、例えば、約10nm〜約1200nm、実施形態では、約30nm〜約1,000nmであってもよい。本開示のラテックスの粒度分布は、約60nm〜約300nm、実施形態では、約125nm〜約200nmであってもよい。本開示のラテックスの粗大粒子含有量は、約0重量%〜約1重量%、実施形態では、約0.1重量%〜約0.5重量%であってもよい。本開示のラテックスの固形分は、約5重量%〜約50重量%、実施形態では、約30重量%〜約40重量%であってもよい。
【0046】
乳化させた後、エマルションを希釈するために、場合により、さらなる界面活性剤、水および/または中和剤を加えてもよいが、必須ではない。乳化させた後、エマルションを室温まで、例えば、約20℃〜約25℃に冷却してもよい。乳化させた後、ラテックスを蒸留し、ラテックス中の残留溶媒を除去してもよい。
【0047】
本開示のラテックスエマルションは、例えば、粗大粒子の含有量が低いこと;狭い粒度分布および粒径が乳化凝集トナーの製造に適していること;ラテックスを調製するのに必要なホモジナイザまたは他の分散デバイスが不要なこと;粗大粒子を取り除くために濾過する必要がないこと;従来の固体材料から、需要に応じたラテックスを製造することを含む、いくつかの利点を与えるものである。
【0048】
次いで、本開示のラテックスエマルションを利用して、結晶性ポリエステル樹脂および/またはアモルファスポリエステル樹脂を用いた、超低融点エマルション凝集プロセスに適した粒径を作ってもよい。このラテックスを、均質化または濾過を使用することなく、粗大粒子の含有量が低い状態で製造することができる。
【0049】
樹脂混合物を水と接触させて上述のようなエマルションを作ったら、次いで、得られたラテックスを利用し、当業者が入手可能な任意の方法によってトナーを作ってもよい。ラテックスエマルションを、着色剤と、場合により、分散物の状態の着色剤と、他の添加物と接触させ、適切なプロセス(実施形態では、エマルション凝集、融着プロセス)によって、超低融点トナーを作ってもよい。
【0050】
実施形態では、着色剤、ワックス、他の添加剤を含む、トナー組成物のさらなる任意原料を、樹脂を溶融混合する前、溶融混合中、またはその後に加え、本開示のラテックスエマルションを作ってもよい。さらなる原料を、ラテックスエマルションを作る前、作っている最中、またはその後に加えてもよい。さらなる実施形態では、界面活性剤を加える前に着色剤を加えてもよい。
【0051】
加えられる着色剤としては、種々の既知の適切な着色剤(例えば、染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物など)が、トナーに含まれてもよい。
【0052】
実施形態では、着色剤は、顔料、染料、これらの組み合わせ、カーボンブラック、マグネタイト、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー、ブラウン、これらの組み合わせを、トナーに望ましい色を付与するのに十分な量で含まれていてもよい。他の有用な着色剤は、本開示に基づいて容易に明らかになると理解すべきである。
【0053】
実施形態では、顔料または着色剤は、トナー粒子の固形分を基準として、約1重量%〜約35重量%、実施形態では、約5重量%〜約25重量%の量で使用されてもよい。しかし、実施形態では、これらの範囲から外れる量を用いてもよい。
【0054】
場合により、トナー粒子を作るときに、ワックスを樹脂および着色剤と組み合わせてもよい。ワックスは、ワックス分散物の状態で与えられてもよく、1種類のワックスを含んでいても、2種類以上の異なるワックスの混合物を含んでいてもよい。
【0055】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、トナー粒子の例えば約1重量%〜約25重量%、実施形態では、約5重量%〜約20重量%の量で存在してもよいが、ワックスの量は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0056】
ワックス分散物が使用される場合、ワックス分散物は、乳化凝集トナー組成物で以前から使用されている種々の任意のワックスを含んでいてもよい。
【0057】
実施形態では、ワックスを、固体ワックスを1つ以上の水系エマルションまたは分散物にした形態でトナーに組み込んでもよく、この場合、固体ワックスの粒径は、約100nm〜約300nm、実施形態では、約125nm〜約275nmであってもよい。
【0058】
トナー粒子を、当業者が利用可能な任意の方法で調製してもよい。トナー粒子製造に関連する実施形態を、乳化凝集プロセスに関して以下に記載するが、米国特許第5,290,654号および第5,302,486号に開示されている懸濁プロセスおよびカプセル化プロセスのような化学プロセスを含め、トナー粒子を調製する任意の適切な方法を使用してもよい。実施形態では、トナー組成物およびトナー粒子を、小さな粒径の樹脂粒子を凝集させて適切な粒径のトナーにし、融着させ、最終的なトナー粒子の形状および形態にするような、凝集および融着プロセスによって調製してもよい。
【0059】
実施形態では、トナー組成物を、乳化凝集プロセス(場合により、着色剤と、場合により、ワックスと、任意の他の望ましい添加剤または必要な添加剤と、上述の樹脂を含むエマルションとの混合物を、場合により、上述のような界面活性剤中で凝集させ、次いで、凝集した混合物を融着することを含むプロセス)によって調製してもよい。着色剤と、場合により、ワックスまたは他の材料(場合により、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい)を、エマルション(樹脂を含む2種類以上のエマルションの混合物であってもよい)に加えることによって、混合物を調製してもよい。得られた混合物のpHを、酸(例えば、酢酸、硝酸など)によって調節してもよい。実施形態では、混合物のpHは、約2〜約5になるように調節されてもよい。さらに、実施形態では、混合物を均質化してもよい。混合物を均質化する場合、この均質化は、毎分約600〜約6,000回転で混合することによって行われてもよい。均質化は、任意の適切な手段(例えば、IKA ULTRA TURRAX T50プローブホモジナイザを含む)によって行われてもよい。
【0060】
上述の混合物を調製した後、この混合物に凝集剤を加えてもよい。任意の適切な凝集剤を利用してトナーを作ってもよい。適切な凝集剤としては、例えば、二価カチオン材料または多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。実施形態では、樹脂のガラス転移点(Tg)より低い温度で、この混合物に凝集剤を加えてもよい。
【0061】
トナーを作るために利用される混合物に、例えば、混合物中の樹脂の約0%〜約10重量%、実施形態では、約0.2%〜約8重量%、実施形態では、約0.5%〜約5重量%の量で凝集剤を加えてもよい。この量は、凝集させるのに十分な量の薬剤を与える量であるべきである。
【0062】
所定の望ましい粒径が得られるまで、粒子を凝集させてもよい。所定の望ましい粒径とは、作る前に決定されるような、得られるべき望ましい粒径、および、このような粒径に達するまで成長プロセス中にモニタリングされる粒径を指す。成長プロセス中にサンプルを採取し、例えば、Coulter Counterを用い、平均粒径を分析してもよい。このように、高温に維持するか、または、例えば約40℃〜約100℃の温度までゆっくりと上げ、この温度で、撹拌しつつ、混合物を約0.5時間〜約6時間、実施形態では、約1時間〜約5時間保持することによって凝集を進め、凝集した粒子を得てもよい。所定の望ましい粒径に達したら、成長プロセスを止める。
【0063】
凝集剤を加えた後、粒子の成長および成形を任意の適切な条件下で行ってもよい。例えば、成長および成形を、凝集が融着とは別個に起こる条件で行ってもよい。凝集段階および融着段階を別個に行うために、凝集プロセスを、例えば、約40℃〜約90℃、実施形態では、約45℃〜約80℃の高温で、剪断条件で行ってもよく、この温度は、上述のような樹脂のガラス転移点より低い温度であってもよい。
【0064】
トナー粒子の望ましい最終粒径が達成されたら、混合物のpHを、塩基を用いて約3〜約10、実施形態では、約5〜約9のpHに調節してもよい。トナーの成長を凍結させる(すなわち、停止する)ためにpHの調節を利用してもよい。トナーの成長を止めるのに利用される塩基としては、任意の適切な塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、これらの組み合わせなど)を挙げることができる。実施形態では、pHを上述の所望な値に調節するために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えてもよい。
【0065】
実施形態では、凝集が終わってから融着の前に、凝集した粒子に樹脂をコーティングし、粒子表面にシェルを形成させてもよい。上述の樹脂をシェルとして利用してもよい。実施形態では、上述のポリエステルアモルファス樹脂ラテックスがシェルに含まれていてもよい。さらなる実施形態では、上述のポリエステルアモルファス樹脂ラテックスを、異なる樹脂と組み合わせ、次いで、樹脂コーティングとして樹脂に加え、シェルを形成させてもよい。
【0066】
実施形態では、シェルを形成させるのに利用可能な樹脂としては、限定されないが、上述の結晶性樹脂ラテックス、および/または上述のアモルファス樹脂が挙げられる。実施形態では、本開示にしたがってシェルを形成させるのに利用可能なアモルファス樹脂としては、アモルファスポリエステル、場合により、上述の結晶性ポリエステル樹脂ラテックスと組み合わせたアモルファスポリエステルが挙げられる。複数の樹脂を任意の適切な量で利用してもよい。実施形態では、第1のアモルファスポリエステル樹脂(例えば、上の式Iを有するアモルファス樹脂)は、シェルの樹脂合計量の約20重量%〜約100重量%、実施形態では、約30重量%〜約90重量%の量で存在してもよい。したがって、実施形態では、第2の樹脂は、シェルの樹脂に、シェルの樹脂合計量の約0重量%〜約80重量%、実施形態では、約10重量%〜約70重量%の量で存在していてもよい。
【0067】
シェルの樹脂を、当業者が利用可能な任意の方法によって、凝集した粒子に塗布してもよい。実施形態では、シェルを形成させるのに利用される樹脂は、上述の任意の界面活性剤を含むエマルションの状態であってもよい。樹脂と、場合により、溶媒を用いた結晶性ポリエステル樹脂ラテックスを上述のNaOHフレークで中和したものとを含むエマルションを、凝集した粒子の表面にシェルが形成されるように、上述の凝集した粒子と組み合わせてもよい。
【0068】
凝集した粒子表面でのシェルの形成は、約30℃〜約80℃、実施形態では、約35℃〜約70℃の温度に加熱しつつ行ってもよい。シェルの形成は、約5分〜約10時間、実施形態では、約10分〜約5時間行ってもよい。
【0069】
所望の粒径になるまで凝集させ、場合により任意のシェルを塗布した後、粒子が所望の最終形状になるまで融着させてもよく、融着は、例えば、混合物を約45℃〜約100℃、実施形態では、約55℃〜約99℃の温度(この温度は、トナー粒子を形成させるのに利用される樹脂のガラス転移点以上の温度であってもよい)まで加熱し、および/または、例えば、約100rpm〜約1,000rpm、実施形態では、約200rpm〜約800rpmまで撹拌を遅くすることによって行われてもよい。融着は、約0.01〜約9時間、実施形態では、約0.1〜約4時間で達成されてもよい。
【0070】
凝集および/または融着の後、混合物を室温まで、例えば、約20℃〜約25℃まで冷却してもよい。冷却は、所望な場合、迅速であってもゆっくりであってもよい。適切な冷却方法は、反応器の周囲にあるジャケットに冷水を導入することを含んでいてもよい。冷却した後、トナー粒子を、場合により、水で洗浄し、次いで乾燥してもよい。乾燥は、例えば、凍結乾燥を含む、乾燥に適した任意の方法によって行ってもよい。
【0071】
実施形態では、トナー粒子は、所望な場合または必要な場合、場合により、他の添加剤も含んでいてもよい。
【0072】
また、流動補助添加剤を含むように作った後、トナー粒子と、外部から添加剤粒子を組み合わせてもよく、添加剤は、トナー粒子の表面に存在していてもよい。
【0073】
一般的に、トナーの流動性、摩擦の向上、混合制御、現像安定性および転写安定性の向上、トナーのブロッキング温度を高くするために、シリカをトナー表面に塗布してもよい。相対湿度(RH)安定性を高め、摩擦を制御し、現像安定性および転写安定性を高めるために、TiO
2を塗布してもよい。
【0074】
これらの外部からの添加剤は、それぞれ、トナーの約0.1重量%〜約5重量%、実施形態では、約0.25重量%〜3重量%の量で存在していてもよいが、添加剤の量は、これらの範囲から外れていてもよい。実施形態では、トナーは、例えば、約0.1重量%〜約5重量%のチタニアと、約0.1重量%〜約8重量%のシリカと、約0.1重量%〜約4重量%のステアリン酸亜鉛を含んでいてもよい。