特許第5687147号(P5687147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687147
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20060101AFI20150226BHJP
   H01M 8/04 20060101ALI20150226BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20150226BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20150226BHJP
   H01M 8/12 20060101ALN20150226BHJP
【FI】
   H01M8/06 G
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 X
   H01M8/06 Z
   C01B3/38
   !H01M8/10
   !H01M8/12
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-143069(P2011-143069)
(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公開番号】特開2013-12332(P2013-12332A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2013年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JX日鉱日石エネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】古野 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 行寛
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−096400(JP,A)
【文献】 特開2011−105795(JP,A)
【文献】 特開2008−120913(JP,A)
【文献】 特表2007−500265(JP,A)
【文献】 特開2007−103078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/24
C01B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、
前記水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、
前記水素発生部に前記炭化水素系燃料を供給する燃料供給部と、
前記水素発生部の上流に配置され、脱硫触媒によって前記炭化水素系燃料を吸着脱硫する脱硫部と、を備える燃料電池システムであって、
前記脱硫触媒を水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度に加熱する加熱部を備え
前記加熱部は、前記脱硫触媒から吸着した水分を脱離させる再生処理時に前記脱硫触媒を前記温度に加熱するとともに、前記脱硫触媒によって前記炭化水素系燃料を吸着脱硫する脱硫処理時に加熱を停止することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記加熱部は、前記脱硫触媒を100℃以上、250℃以下の温度に加熱することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記脱硫部は、第1の反応部及び第2の反応部を有し、
前記加熱部は、前記第1の反応部の前記脱硫触媒を加熱する第1の加熱部と、前記第2の反応部の前記脱硫触媒を加熱する第2の加熱部と、を有し、
前記第1の加熱部及び前記第2の加熱部の一方が加熱を行っているとき、他方は加熱を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1の反応部及び前記第2の反応部を直列に配置することを特徴とする請求項3記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1の反応部及び前記第2の反応部を並列に配置することを特徴とする請求項3記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記加熱部の作動時に前記脱硫部へ流体を供給することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記流体は、前記炭化水素系燃料、または酸化剤であることを特徴とする請求項6記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記脱硫部へ流体を供給する流体供給部と、を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記脱硫触媒がゼオライトに金属を担持してなる触媒であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記炭化水素系燃料に、水分が含有されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記炭化水素系燃料が炭素数4以下の炭化水素化合物を含む、請求項1から10のいずれか一項記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、炭化水素系燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、水素発生部の上流に配置され、脱硫触媒によって炭化水素系燃料を吸着脱硫する脱硫部と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような脱硫部として、触媒寿命に見合った触媒量を脱硫部に充填し、触媒寿命まで脱硫触媒を使い切るタイプと、脱硫触媒をカートリッジに充填し、触媒寿命を全うしたタイミングでカートリッジを交換するタイプが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−218308号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、炭化水素系燃料に水分が含まれていた場合(すなわち、高露点の炭化水素系燃料を使用する場合)、脱硫触媒が水分を吸着してしまい硫黄化合物の吸着を阻害するおそれがある。従って、脱硫触媒の寿命が短くなることにより、脱硫部の寿命が短くなるという問題や、カートリッジの交換頻度が大幅に増加してしまうという問題が生じる。また、従来の脱硫部の寿命を確保するために、またはカートリッジの交換頻度を従来通りとするためには、脱硫触媒の充填量を大幅に増加させる必要が生じてしまう。これによって、システムの大型化やコスト増加という問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、脱硫部の脱硫触媒の寿命の低下を抑制できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、脱硫触媒を所定の範囲内の温度に加熱することにより、脱硫触媒の再生処理(脱硫触媒から吸着した水分を脱離させる処理)が可能となることを見出した。すなわち、水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度範囲にある場合、脱硫触媒は、吸着した水分を脱離させる一方、硫黄化合物を脱離させることなく吸着した状態を維持できる。本発明者らは、このような見地に基づいて、脱硫触媒の寿命低下の抑制が可能な燃料電池システムを見出すに至った。
【0007】
本発明に係る燃料電池システムは、炭化水素系燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、水素発生部に炭化水素系燃料を供給する燃料供給部と、水素発生部の上流に配置され、脱硫触媒によって炭化水素系燃料を吸着脱硫する脱硫部と、を備える燃料電池システムであって、水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度に加熱する加熱部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る燃料電池システムは、水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度に加熱する加熱部を備えている。炭化水素系燃料に水分が含有されることによって脱硫触媒が水分を吸着した場合、加熱部が脱硫触媒を加熱することにより、水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度に上昇させる。これによって、脱硫触媒に吸着された水分は当該脱硫触媒から脱離し除去される。また、脱硫触媒に吸着された硫黄化合物は、脱離することなく、脱硫触媒に吸着されている状態を維持する。このような再生処理によって、脱硫触媒の寿命が回復する。以上により、脱硫部の脱硫触媒の寿命低下を抑制することが可能となる。
【0009】
また、本発明者らは、更なる鋭意研究の結果、水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度として、例えば100℃以上、250℃以下とすることが好ましいことを見出した。従って、加熱部は、脱硫触媒を100℃以上、250℃以下の温度に加熱することが好ましい。
【0010】
脱硫部は、第1の反応部及び第2の反応部を有し、加熱部は、第1の反応部の脱硫触媒を加熱する第1の加熱部と、第2の反応部の脱硫触媒を加熱する第2の加熱部と、を有し、第1の加熱部及び第2の加熱部の一方が加熱を行っているとき、他方は加熱を停止することが好ましい。これによって、一方の反応部に係る脱硫触媒は高温となることで再生処理(脱硫触媒から吸着した水分を脱離させる処理)状態となり、他方の反応部に係る脱硫触媒は低温となることで脱硫可能な状態となる。これによって、一方の反応部では脱硫触媒から水分が脱離して除去され、他方の反応部では脱硫触媒によって炭化水素系燃料の硫黄化合物を除去することができる。次に、加熱側と加熱停止側を入れ替えることで、他方の反応部では脱硫触媒から水分が脱離して除去され、一方の反応部では脱硫触媒によって炭化水素系燃料の硫黄化合物を除去することができる。これによって、水素発生部側へ向かう炭化水素系燃料の硫黄化合物を確実に除去すると共に、脱硫部の全領域にわたる脱硫触媒の水分を除去することができる。また、脱硫触媒の再生処理を行う一方で、炭化水素系燃料の脱硫処理を行うこともできるため、燃料電池システムを連続運転した状態にて脱硫触媒の再生処理が可能となる。
【0011】
また、燃料電池システムにおいて、第1の反応部及び第2の反応部を直列に配置してもよく、第1の反応部及び前記第2の反応部を並列に配置してもよい。いずれの配置によっても、燃料電池システムを連続運転した状態にて脱硫触媒の再生処理が可能となる。
【0012】
燃料電池システムにおいて、加熱部の作動時に脱硫部へ、脱硫触媒に吸着した水分を脱離させて脱硫部外に送出するための流体(水分脱離用流体)を供給することが好ましい。加熱部の作動時に脱硫部へ流体を供給することによって、脱硫触媒から脱離した水分が脱硫部から確実に除去される。これによって、一度脱離した水分が再び脱硫触媒に吸着されることを確実に防止できる。
【0013】
流体として、炭化水素系燃料、または酸化剤を供給することが好ましい。燃料電池システム内既存の機器を共用して流体を供給することができる。これにより、燃料電池システム全体をコンパクトにすることができる。例えば、流体として炭化水素系燃料を用いることにより、燃料供給部を流体供給部として機能させることが可能となる。あるいは、流体として酸化剤を用いることにより、セルスタックに酸化剤を供給する酸化剤供給部を流体供給部として機能させることができる。
【0014】
一方で、流体を供給するために、燃料電池システム内の既存機器を流体供給部として共用せずに、再生処理用の流体供給部を更に備えてもよい。これにより、燃料供給部や酸化剤供給部を共用する場合に生じる燃料や酸化剤供給ラインの切替制御や流量の制御が複雑になることを抑制することができる。
【0015】
また、脱硫触媒として、ゼオライトに金属を担持してなる触媒を好適に用いることができる。
【0016】
燃料電池システムにおいて、炭化水素系燃料には、水分が含有される場合がある。このような炭化水素系燃料が適用されても、脱硫触媒の寿命の低下が抑制される。従って、炭化水素系燃料の状態に関わらず、燃料電池システムは十分な性能を発揮することができる。
【0017】
燃料電池システムにおいて、炭化水素系燃料が炭素数1〜4の炭化水素であることが好ましい。このような炭化水素系燃料が適用されることで脱硫および水素の発生を容易に行うことができ、燃料電池システムは十分な性能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、脱硫部の脱硫触媒の寿命の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック構成図である。
図2図2は、第一実施形態に係る燃料電池システムの脱硫部付近の構成を示すブロック構成図である。
図3図3は、第一実施形態に係る燃料電池システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。
図4図4は、第二実施形態に係る燃料電池システムの脱硫部付近の構成を示すブロック構成図である。
図5図5は、第二実施形態に係る燃料電池システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。
図6図6は、第三実施形態に係る燃料電池システムの脱硫部付近の構成を示すブロック構成図である。
図7図7は、脱硫触媒の再生温度を導き出すための実験結果を示すグラフである。
図8図8は、脱硫触媒の再生温度を導き出すための実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[第一実施形態]
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫部2と、水気化部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、燃料供給部7と、水供給部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。燃料電池システム1は、炭化水素系燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類、炭化水素系燃料の種類、及び改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0022】
炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。本実施形態においては、パイプラインで供給されるメタンを主成分として含むガス(例えば、都市ガス(City gas)、タウンガス(Town gas)、天然ガス(Natural gas)、バイオガス等)又はLPGを好適に使用することができる。
【0023】
本実施形態においては、炭化水素系燃料が、炭素数4以下の炭化水素化合物を含むことが好ましい。炭素数4以下の炭化水素化合物としては、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、ブテンなどの不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。炭化水素系燃料は、炭素数4以下の炭化水素化合物を含むガス、すなわち、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン及びブテンのうちの1種以上を含むガスであることが好ましい。また、炭素数4以下の炭化水素化合物を含むガスとしては、メタンを80体積%以上含むガスが好ましく、メタンを85体積%以上含むガスがより好ましい。
【0024】
炭化水素系燃料には一般的に硫黄化合物が含まれている。硫黄化合物としては、炭化水素類などにもともと含有されている硫黄化合物やガス漏れ検知のための付臭剤に含まれている化合物が挙げられる。炭化水素中にもともと含有されている硫黄化合物は、硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、二硫化炭素(CS)などである。付臭剤は、アルキルスルフィド、メルカプタンの単独又は混合物が用いられ、例えば、ジエチルスルフィド(DES)、ジメチルスルフィド(DMS)、エチルメチルスルフィド(EMS)、テトラヒドロチオフェン(THT)、tert−ブチルメルカプタン(TBM)、イソプロピルメルカプタン、ジメチルジスルフィド(DMDS)、ジエチルジスルフィド(DEDS)などである。硫黄化合物は、炭化水素系燃料の全量を基準として硫黄原子換算濃度で0.1〜10質量ppm程度含まれる。
【0025】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0026】
脱硫部2は、水素発生部4に供給される炭化水素系燃料の脱硫を行う。脱硫部2は、炭化水素系燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部2の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式が採用される。脱硫部2は、脱硫した炭化水素系燃料を水素発生部4へ供給する。
【0027】
水気化部3は、水を加熱し気化させることによって、水素発生部4に供給される水蒸気を生成する。水気化部3における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排出ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。なお、図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。水気化部3は、生成した水蒸気を水素発生部4へ供給する。
【0028】
水素発生部4は、脱硫部2からの炭化水素系燃料を用いて水素リッチガスを発生させる。水素発生部4は、炭化水素系燃料を改質触媒によって改質する改質器を有している。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。なお、水素発生部4は、セルスタック5に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
【0029】
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
【0030】
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。
【0031】
燃料供給部7は、脱硫部2へ炭化水素系燃料を供給する。水供給部8は、水気化部3へ水を供給する。酸化剤供給部9は、セルスタック5のカソード13へ酸化剤を供給する。燃料供給部7、水供給部8、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
【0032】
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
【0033】
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
【0034】
脱硫部2に供給される炭化水素系燃料として高露点のもの、すなわち水分を含んだ炭化水素系燃料が適用される場合がある。炭化水素系燃料に含まれる水は、例えば、炭化水素系燃料の製造時に混入したもの、パイプラインの破損等により混入したもの、炭化水素系燃料が脱硫部2に供給されるまでの流通経路において混入したものなどが挙げられる。水分を含んだ炭化水素系燃料が供給された場合、脱硫触媒2aは硫黄化合物と共に水分も吸着してしまうため、硫黄化合物の吸着を阻害するおそれがあり、触媒寿命への悪影響が懸念される。本発明に係る燃料電池システム1は、脱硫部2の脱硫触媒2aに吸着された水分を除去し、脱硫触媒2aを再生する機能を有している。燃料電池システム1は、0〜2.5体積%の水分が含まれている(炭化水素系燃料全体のうちの水分の体積比率)炭化水素系燃料を用いることができる。図1及び図2に示すように、燃料電池システム1は、加熱部21と、流体供給部22と、温度センサ23と、を備えている。また、制御部11は、供給制御部101と、加熱制御部102と、温度検出部103と、判定部104と、を備えている。
【0035】
加熱部21は、脱硫触媒2aを加熱する機能を有する。加熱部21として、例えば、電熱線、シリコニットヒータ、カーボンヒータなどを適用することができる。電熱線を用いる場合、例えば、脱硫部2のケーシングに電熱線を巻きつけることによって、加熱部21を構成することができる。加熱部21は、制御部11と電気的に接続されており、制御部11によって、加熱のオン・オフや加熱温度の調整が行われる。加熱部21は、脱硫触媒2aを水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度(例えば、100℃以上、250℃以下とすることが好ましい)の温度に加熱する。このような温度に加熱されることにより、脱硫触媒2aは、硫黄化合物を吸着した状態を維持する一方で、吸着した水分を脱離することができる。このような温度を以下、再生温度と称して説明する。再生温度の下限は100℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上であり、一方、再生温度の上限は250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下となるよう加熱する。
【0036】
流体供給部22は、脱硫部2に対して流体を供給する。流体供給部22は、脱硫触媒2aから脱離した水分を流体と共に水素発生部4側へ流すことにより、脱硫部2から水分を除去する。流体として、例えば、酸化剤、炭化水素系燃料などを適用することができる。流体供給部22は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。本実施形態では、脱硫部2に流体を供給するための流体供給部22を設けているが、流体として酸化剤を用いる場合、酸化剤供給部9と流体供給部22を共用してもよい。その場合、脱硫部2の上流へ酸化剤が供給されるように、酸化剤供給部9から流路を分岐させる。また、流体として炭化水素系燃料を用いる場合、燃料供給部7と流体供給部22を共用してもよい。流体供給部22が流体を供給するタイミングは、脱硫触媒2aから脱離した水分を除去できるタイミングであれば特に限定されない。一度脱離した水分が再び脱硫触媒2aに吸着されないように、流体供給部22は、脱硫触媒2aが再生温度にあるときに流体を供給することが好ましい。
【0037】
本実施形態では、燃料電池システム1の停止時に流体供給部22から流体を供給することで水分を除去する。当該実施形態では、脱硫触媒2aの連続再生を行うことはできない。水分除去に用いられた流体は、脱硫部2から大気へ排気されるか、オフガス燃焼部6にて燃焼させた後に大気へ排気される。炭化水素系燃料の脱硫処理の場合における脱硫部2からの排出ガスの供給先は水素発生部4に設定され、脱硫触媒2aの再生処理の場合における脱硫部2からの排出ガスの供給先は排気系やオフガス燃焼部6に切り替えられる。当該切り替え制御は、バルブの開閉制御などによって行うことができる。
【0038】
温度センサ23は、脱硫部2の所定箇所における温度を検出する。温度センサ23の位置は特に限定されず、脱硫触媒2aの温度を直接検出できる位置に配置されてもよく、脱硫部2のケーシングなど、脱硫触媒2aの温度を間接的に検出できる位置に配置してもよい。また、温度センサ23は、脱硫部2に対して複数箇所に設置されてもよい。温度センサ23は、制御部11と電気的に接続されており、検出結果を制御部11へ出力する。
【0039】
制御部11の供給制御部101は、燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、流体供給部22を制御する機能を有している。供給制御部101は、これらの供給部へ制御信号を出力し、供給開始、供給量、供給停止などを制御する。
【0040】
制御部11の加熱制御部102は、加熱部21による脱硫触媒2aの加熱状態を制御する機能を有している。加熱制御部102は、加熱部21のオン・オフや加熱温度の調整を行う機能を有している。加熱制御部102は、脱硫触媒2aの再生処理において、加熱部21による加熱を開始することで脱硫触媒2aの温度を再生温度に上げる機能を有する。また、加熱制御部102は、脱硫触媒2aが再生温度となったら、当該再生温度を維持するように、加熱部21の加熱状態を調整する機能を有する。加熱部21の加熱状態の調整の方法は特に限定されず、加熱制御部102は、加熱部21の温度を所定温度で一定とすることで脱硫触媒2aの温度を維持してもよく、加熱部21のオン・オフを繰り返すことによって脱硫触媒2aの温度を維持してもよい。なお、脱硫触媒2aの再生処理以外においては(燃料電池システム1の通常運転時)、加熱制御部102は、加熱部21を停止しておく。
【0041】
制御部11の温度検出部103は、温度センサ23の検出結果に基づいて脱硫触媒2aの温度に関する情報を取得する機能を有している。温度検出部103は、脱硫触媒2aの温度を直接示す値を取得してもよく、脱硫触媒2aの温度に対応する値(脱硫部2のケーシングの温度など)を取得してもよい。例えば、温度センサ23が脱硫触媒2aの温度を直接計測できる箇所に配置されていない場合、温度検出部103は、温度センサ23の検出結果を用い、演算処理や、予め準備したデータとの照会処理によって脱硫触媒2aの温度を推定してもよい。あるいは、判定部104で用いる閾値を調整することで、温度検出部103は、温度センサ23からの検出結果をそのまま制御に用いてもよい。
【0042】
制御部11の判定部104は、温度検出部103の検出結果に基づいて、脱硫触媒2aが再生温度の範囲にあるか否かを判定する機能を有している。脱硫触媒2aの再生処理が終了し、燃料電池システム1の通常運転を再開する場合においては、判定部104は、脱硫触媒2aの温度が0〜60℃の範囲にあるか否かを判定する機能を有している。例えば、判定部104は、予め閾値を設定し、当該閾値と温度検出部103で取得した温度とを比較することで、判定を行う。
【0043】
〈脱硫触媒〉
脱硫触媒2aとしては、ゼオライトに金属を担持してなる触媒を好ましく挙げることができる。
【0044】
ゼオライトとしては、A型、フォージャサイト型など様々なゼオライトを使用できるが、中でもX型ゼオライト、Y型ゼオライトを好ましく用いることができる。
【0045】
X型ゼオライトとしては、例えば、SiO/Alの比が2〜3、好ましくは2.2〜3、さらに好ましくは2.3〜3、の範囲のものを用いることができる。上記比が2より小さい場合には、得られる触媒の脱硫触媒としての寿命が低下する傾向があり、上記比が3より大きい場合には、活性金属の担持量が少なくなり、十分な脱硫性能が得られないという傾向がある。
【0046】
Y型ゼオライトとしては、例えば、SiO/Alの比が3〜10、好ましくは3.5〜8、さらに好ましくは4〜7、の範囲のものを用いることができる。上記比が3より小さい場合、または10より大きい場合には、得られる触媒の脱硫触媒としての寿命が低下する傾向があり、十分な脱硫性能が得られない。
【0047】
ゼオライトに担持する金属としては、銀、銅あるいは亜鉛を好ましく挙げることとができる、銀及び/又は銅がより好ましい。
【0048】
銀を担持する場合、銀の担持量の範囲は、脱硫性能向上の観点からゼオライト基準で10〜30質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。銀の担持方法としては、イオン交換法が好ましく使用される。イオン交換に用いるゼオライトは、ナトリウム型、アンモニウム型、プロトン型など様々な形態のものを用いることができるが、ナトリウム型が最も好ましく使用される。一方、銀は通常カチオンとして水に溶解した形態で準備される。その具体例としては、硝酸銀や過塩素酸銀などの水溶液、銀のアンミン錯イオン水溶液、などを挙げることができるが、硝酸銀水溶液が最も好ましく使用される。銀イオンを含む水溶液の濃度は銀の濃度として、通常0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0049】
銅を担持する場合、銅の担持量の範囲は、脱硫性能向上の観点から、ゼオライト基準で3〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。銅の担持方法としては、イオン交換法が好ましく使用される。イオン交換に用いるゼオライトは、ナトリウム型、アンモニウム型、プロトン型など様々な形態のものを用いることができるが、ナトリウム型が最も好ましく使用される。一方、銅は通常カチオンとして水に溶解した形態で準備される。その具体例としては、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、酢酸銅などの水溶液、銅アンミン錯体イオンのような銅錯体イオンの水溶液、などを挙げることができる。銅イオンを含む水溶液の濃度は銅の濃度として、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。
【0050】
イオン交換の方法には特に制限はないが、通常は上記のカチオン性の銀または銅を含む溶液に、前述のゼオライトを加え、通常0〜90℃、好ましくは20〜70℃の温度範囲において1時間ないし数時間程度、好ましくは撹拌しながらイオン交換処理する。ついで、固形物をろ過などの手段で分離し、水などで洗浄した後、50〜200℃、好ましくは80〜150℃の温度で乾燥処理する。このイオン交換処理は繰り返し行うことができる。次に必要であれば、200〜600℃、好ましくは250〜400℃で数時間程度焼成処理しても良い。このような方法により、目的の銀イオン交換ゼオライト(銀担持ゼオライト)または銅イオン交換ゼオライト(銅担持ゼオライト)を得ることができる。
【0051】
上記の方法で製造された銀または銅を担持したゼオライトは、アルミナ、シリカ、粘土鉱物など、もしくはベーマイトなどこれらの前駆体を、適当なバインダーとして用いて、押出成型、打錠成型、転動造粒、スプレードライおよび必要に応じて焼成するなど、通常の方法で成型して使用できる。
【0052】
上記触媒を用いた場合の脱硫条件では、通常、燃料は気化した状態であることが好ましい。また、脱硫温度は100℃以下が好ましく、例えば−50℃〜100℃の範囲、より好ましくは−20℃〜80℃の範囲、さらに好ましくは0〜60℃の範囲、さらにより好ましくは10〜50℃の範囲で選ばれる。
【0053】
都市ガスなど常温(25℃)・常圧(ゲージ圧0MPa)で気体である燃料を用いる場合、GHSVは10〜20000h−1、好ましくは10〜7000h−1の間で選択される。GHSVが10h−1より低いと脱硫性能的には十分になるが必要以上に脱硫触媒を使用するため脱硫器が過大となり好ましくない。一方、GHSVが20000h−1より大きいと十分な脱硫性能が得られない。なお、液体燃料を燃料として使用することもでき、その場合には、LHSVとして0.01〜100h−1の範囲を選択できる。
【0054】
圧力条件は、通常、常圧〜1MPa(ゲージ圧、以下同じ。)、好ましくは常圧〜0.5MPa、さらに好ましくは常圧〜0.2MPaの範囲で選択されるが、大気圧条件下が最も好ましい。
【0055】
〈制御処理〉
次に、図3を参照して、本実施形態に係る燃料電池システム1の制御処理の一例について説明する。図3に示す処理は、脱硫触媒2aの再生処理の際に、制御部11において所定のタイミングで繰り返し実行される。脱硫触媒2aの再生処理は、例えば、定期検査などによる燃料電池システム1の停止工程時に実行される。
【0056】
図3に示すように、供給制御部101は、燃料供給部7に制御信号を出力し、炭化水素系燃料の供給を停止する(ステップS10)。加熱制御部102は、加熱部21を起動させることによって、脱硫触媒2aの加熱を開始する(ステップS20)。これによって、脱硫触媒2aの温度は上昇する。温度検出部103は、温度センサ23の検出結果に基づいて、脱硫触媒2aの温度T(あるいは、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す温度T)を検出する(ステップS30)。
【0057】
判定部104は、S30で検出した温度Tが予め設定した閾値X1以上であるか否かを判定する(ステップS40)。当該処理により、判定部104は、脱硫触媒2aの温度が再生温度の範囲内にあるどうかの判断を行う。閾値X1は、脱硫触媒2aの温度が再生温度の範囲内にあることを判定できる値であれば、特に限定されない。例えば、脱硫触媒2aの温度を直接示す値を温度Tとして用いる場合、閾値X1は再生温度の範囲である100℃以上、250℃以下のいずれかの値に設定される。また、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す値(例えば、脱硫部2のケーシングの温度など)を温度Tとして用いる場合、閾値X1は、脱硫部2の温度の測定箇所に応じ、脱硫触媒2aの温度が100℃以上、250℃以下の条件を満たすような値に設定される。S40において判定部104が温度Tが閾値X1より小さいと判定した場合、再びS30、S40の処理が実行される。
【0058】
S40において温度Tが閾値X1以上であると判定した場合、判定部104は、脱硫触媒2aが再生温度に達したと判断する。当該状態では、脱硫触媒2aは、吸着した水分を脱離することによって、再生する。当該状態が維持されるように、加熱制御部102は、加熱部21による加熱状態を調整する(ステップS50)。例えば、再生温度の中でも脱硫触媒2aの再生処理に最も好適な最適温度を設定し、加熱制御部102が加熱部21を制御することによって、温度Tを当該最適温度に維持してもよい。あるいは、温度Tの上限値と下限値を設定し、加熱制御部102は、温度Tが上限値に達したときに加熱部21をオフとし(または出力を抑える)、温度Tが下限値に達したときに加熱部21をオン(または出力を上げる)としてもよい。
【0059】
また、供給制御部101は、流体供給部22に制御信号を出力し、脱硫部2へ流体を供給する(ステップS60)。これによって、脱硫触媒2aから脱離した水分が、脱硫部2から除去される。判定部104は、脱硫触媒2aの再生処理が完了したか否かを判定する(ステップS70)。再生処理完了の判定条件は特に限定されない。例えば、判定部104は、所定時間が経過したときに、再生処理完了と判定してもよい。あるいは、脱硫部2の下流側にセンサが配置されている場合、判定部104は、流体中に水分が検知されなくなったときに、再生処理完了と判定してもよい。S70において判定部104が再生処理が完了していないと判定した場合、S50、S60、70の処理が再び実行される。なお、流体の供給は、再生処理中、連続して行われてもよく、所定のタイミングごとに行われてもよい。
【0060】
S70において判定部104が再生処理完了と判定した場合、加熱制御部102は、加熱部21による脱硫触媒2aの加熱を停止する(ステップS80)。これによって、脱硫触媒2aの温度が低下する。温度検出部103は、温度センサ23の検出結果に基づいて、脱硫触媒2aの温度T(あるいは、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す温度T)を検出する(ステップS90)。
【0061】
判定部104は、S90で検出した温度Tが予め設定した閾値X2以下であるか否かを判定する(ステップS100)。当該処理により、判定部104は、脱硫触媒2aの温度が効率よく炭化水素系燃料を脱硫できる範囲内にあるどうかの判断を行う。閾値X2は、脱硫触媒2aの温度が60℃以下であることを判定できる値であれば、特に限定されない。例えば、脱硫触媒2aの温度を直接示す値を温度Tとして用いる場合、閾値X2は60℃以下のいずれかの値に設定される。また、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す値(例えば、脱硫部2のケーシングの温度など)を温度Tとして用いる場合、閾値X2は、脱硫部2の温度の測定箇所に応じ、脱硫触媒2aの温度が60℃以下の条件を満たすような値に設定される。S100において判定部104が温度Tが閾値X2より大きいと判定した場合、再びS90、S100の処理が実行される。S100において判定部104が温度Tが閾値X2以下であると判定した場合、図3に示す制御処理は終了する。これにより、脱硫触媒2aによる炭化水素系燃料の脱硫準備が整う。その後、燃料電池システム1は通常運転へ移行し、次の再生処理のタイミングで再びS10から処理が開始される。
【0062】
〈作用・効果〉
本実施形態に係る燃料電池システム1において、制御部11の加熱制御部102は、加熱部21を制御することにより、脱硫触媒2aを水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度(例えば、100℃以上、250℃以下)にすることができる。炭化水素系燃料に水分が含有されることによって脱硫触媒2aが水分を吸着した場合、加熱部21が脱硫触媒2aを加熱することにより、脱硫触媒2aの温度を水分のみを脱離させ硫黄化合物を脱離させない温度(例えば、100℃以上、250℃以下)に上昇させる。また、流体供給部22が、脱硫部2へ流体を供給する。これによって、脱硫触媒2aに吸着された水分は当該脱硫触媒2aから脱離すると共に、流体と共に脱硫部2から除去される。また、脱硫触媒2aに吸着された硫黄化合物は、脱離して水素発生部4側に流されることなく、脱硫触媒2aに吸着されている状態を維持する。このような再生処理によって、脱硫触媒2aの寿命が回復する。以上により、脱硫部2の脱硫触媒2aの寿命低下を抑制することが可能となる。
【0063】
[第二実施形態]
図4に示すように、第二実施形態に係る燃料電池システム1では、脱硫部2が上流側の第1の反応部2A及び下流側の第2の反応部2Bを備えている。第1の反応部2Aと第2の反応部2Bは直列に接続されている。なお、反応部2A,2Bの分け方は特に限定されず、例えば、脱硫触媒2aが充填されたケーシングを上流側と下流側に二つ並べ、上流側のケーシングを第1の反応部2Aとし、下流側のケーシングを第2の反応部としてもよい。あるいは、一つのケーシングの中において、上流側の領域を第1の反応部2Aとし、下流側の領域を第2の反応部2Bとしてもよい。第二実施形態に係る燃料電池システム1は、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aを加熱する第1の加熱部21Aと、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度を検出する第1の温度センサ23Aと、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aを加熱する第2の加熱部21Bと、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度を検出する第2の温度センサ23Bと、を更に備える。第二実施形態に係る燃料電池システム1では、燃料供給部7から供給される炭化水素系燃料が、脱硫触媒2aから脱離した水分を除去する流体として機能する。また、燃料供給部7が、流体供給部22として機能する。
【0064】
〈制御処理〉
図5を参照して、第二実施形態に係る燃料電池システム1の制御処理の一例について説明する。図5に示す処理は、脱硫触媒2aの再生処理の際に、制御部11において所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0065】
図5に示すように、供給制御部101は、燃料供給部7に制御信号を出力し、炭化水素系燃料を供給する(ステップS110)。なお、通常運転時から既に燃料供給部7が駆動しているときは、当該供給状態を継続させる。加熱制御部102は、第1の加熱部21Aを起動させ、第2の加熱部21Bの停止状態を維持する(ステップS120)。これによって、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度は上昇し、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度は低温で維持される。温度検出部103は、第1の温度センサ23Aの検出結果に基づいて、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度T1(あるいは、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す温度T1)を検出する(ステップS130)。
【0066】
判定部104は、S130で検出した温度T1が予め設定した閾値X1以上であるか否かを判定する(ステップS140)。当該処理により、判定部104は、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度が再生温度の範囲内にあるどうかの判断を行う。S140において判定部104が温度T1が閾値X1より小さいと判定した場合、再びS130、S140の処理が実行される。
【0067】
S140において温度T1が閾値X1以上であると判定した場合、判定部104は、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aが再生温度に達したと判断する。当該状態では、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aは、吸着した水分を脱離することによって、再生する。当該状態が維持されるように、加熱制御部102は、第1の加熱部21Aによる加熱状態を調整する(ステップS150)。このとき、供給制御部101は、燃料供給部7によって脱硫部2へ炭化水素系燃料を供給している。これによって、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aから脱離した水分が、脱硫部2から除去される。一方、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aは、加熱されていないため、炭化水素系燃料の硫黄化合物を除去する。
【0068】
判定部104は、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの再生処理が完了したか否かを判定する(ステップS160)。S160において判定部104が再生処理が完了していないと判定した場合、S150、S160の処理が再び実行される。なお、流体の供給は、再生処理中、連続して行われてもよく、所定のタイミングごとに行われてもよい。
【0069】
S160において判定部104が再生処理完了と判定した場合、加熱制御部102は、第1の加熱部21Aによる第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの加熱を停止する(ステップS170)。これによって、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度が低下する。温度検出部103は、第1の温度センサ23Aの検出結果に基づいて、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度T1(あるいは、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す温度T1)を検出する(ステップS180)。
【0070】
判定部104は、S180で検出した温度T1が予め設定した閾値X2以下であるか否かを判定する(ステップS190)。当該処理により、判定部104は、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度が効率よく炭化水素系燃料を脱硫できる範囲内にあるどうかの判断を行う。S190において判定部104が温度T1が閾値X2より大きいと判定した場合、再びS180、S190の処理が実行される。S190において判定部104が温度T1が閾値X2以下であると判定した場合、加熱制御部102は、第1の加熱部21Aの停止状態を維持し、第2の加熱部21Bを起動する(ステップS200)。これによって、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度は上昇し、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aの温度は低温で維持される。温度検出部103は、第2の温度センサ23Bの検出結果に基づいて、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度T2(あるいは、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す温度T2)を検出する(ステップS210)。
【0071】
判定部104は、S210で検出した温度T2が予め設定した閾値X1以上であるか否かを判定する(ステップS220)。当該処理により、判定部104は、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度が再生温度の範囲内にあるどうかの判断を行う。S220において判定部104が温度T2が閾値X1より小さいと判定した場合、再びS210、S220の処理が実行される。
【0072】
S220において温度T2が閾値X1以上であると判定した場合、判定部104は、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aが再生温度に達したと判断する。当該状態では、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aは、吸着した水分を脱離することによって、再生する。当該状態が維持されるように、加熱制御部102は、第2の加熱部21Bによる加熱状態を調整する(ステップS230)。このとき、供給制御部101は、燃料供給部7によって脱硫部2へ炭化水素系燃料を供給している。これによって、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aから脱離した水分が、脱硫部2から除去される。一方、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aは、加熱されていないため、炭化水素系燃料の硫黄化合物を除去する。
【0073】
判定部104は、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの再生処理が完了したか否かを判定する(ステップS240)。S240において判定部104が再生処理が完了していないと判定した場合、S230、S240の処理が再び実行される。なお、流体の供給は、再生処理中、連続して行われてもよく、所定のタイミングごとに行われてもよい。
【0074】
S240において判定部104が再生処理完了と判定した場合、加熱制御部102は、第2の加熱部21Bによる第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの加熱を停止する(ステップS250)。これによって、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度が低下する。温度検出部103は、第2の温度センサ23Bの検出結果に基づいて、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度T2(あるいは、脱硫触媒2aの温度を間接的に示す温度T2)を検出する(ステップS260)。
【0075】
判定部104は、S260で検出した温度T2が予め設定した閾値X2以下であるか否かを判定する(ステップS270)。当該処理により、判定部104は、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aの温度が効率よく炭化水素系燃料を脱硫できる範囲内にあるどうかの判断を行う。S270において判定部104が温度T2が閾値X2より大きいと判定した場合、再びS260、S270の処理が実行される。S270において判定部104が温度T2が閾値X2以下であると判定した場合、図5に示す制御処理は終了する。これにより、脱硫触媒2aによる炭化水素系燃料の脱硫準備が整う。その後、燃料電池システム1は通常運転へ移行し、次の再生処理のタイミングで再びS110から処理が開始される。ただし、少なくとも第1の反応部2Bは脱硫可能な状態であるため、S260,S270を省略して、通常運転へ移行してもよい。また、第1の加熱部21Aと第2の加熱部21Bの切換を一回のみ行っているが、複数回繰り返してもよい。また、第2の加熱部21Bから先に加熱してもよい。ただし、第1の加熱部21Aの加熱の際に、第1の反応部2Aからの水分が第2の反応部2Bを通過するため、上流側から下流側へ向かう順番で加熱することが好ましい。
【0076】
〈作用・効果〉
以上のように第二実施形態に係る燃料電池システム1において、脱硫部2は、第1の反応部2A及び第2の反応部2Bを有し、加熱部21は、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aを加熱する第1の加熱部21Aと、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aを加熱する第2の加熱部21Bと、を有している。また、第1の反応部2Aと第2の反応部2Bは直列に接続されている。第1の加熱部21A及び第2の加熱部21Bの一方が加熱を行っているとき、他方は加熱を停止する。流体供給部として機能する燃料供給部7は、流体として、炭化水素系燃料を脱硫部2に供給する。これによって、第1の反応部2Aに係る脱硫触媒2aは高温となることで再生処理状態となり、第2の反応部2Bに係る脱硫触媒2aは低温となることで脱硫可能な状態となる。この状態で脱硫部2に炭化水素系燃料が供給された場合、当該炭化水素系燃料は、第1の反応部2Aでは脱硫触媒2aから脱離した水分を除去し、第2の反応部2Bでは脱硫触媒2aによって硫黄化合物を除去される。次に、加熱部21A,21Bにおいて加熱側と加熱停止側を入れ替えることで、炭化水素系燃料は、第2の反応部2Bでは脱硫触媒2aから脱離した水分を除去し、第1の反応部2Aでは脱硫触媒2aによって硫黄化合物を除去される。流体として炭化水素系燃料を用いる場合、水素発生部4の上流側にて流体中の硫黄化合物を除去することが好ましいが、高温となった脱硫触媒2aは脱硫効率が低下する。第2実施形態に係る燃料電池システム1によれば、流体として炭化水素系燃料を用いた場合であっても、水素発生部4側へ向かう硫黄化合物を確実に除去すると共に、脱硫部2の全領域にわたる脱硫触媒の水分を除去することができる。第二実施形態に係る燃料電池システム1では、燃料電池システム連続運転時に反応部2A,2Bを交互に加熱して、炭化水素系燃料の硫黄化合物を除去しながら水分を脱硫触媒2aから脱離させ、炭化水素系燃料と共に水素発生部4へ排出することができる。当該実施形態では、いずれか一方の反応部2A,2Bで炭化水素系燃料の硫黄化合物の除去が行われるため、脱硫触媒2aの連続再生が可能である。炭化水素系燃料を水分除去のための流体として用いることができ、当該炭化水素系燃料の硫黄化合物を除去することもできることにより水素発生部4へ送ってもよいため、脱硫部2からの排気ラインや流体供給部22などを省略することが可能である。
【0077】
[第三実施形態]
図6に示すように、第三実施形態に係る燃料電池システム1では、脱硫部2が第1の反応部2A及び第2の反応部2Bを備えており、第1の反応部2Aと第2の反応部2Bが並列に接続されている。すなわち、燃料供給部7、流体供給部22、及び水素発生部4は第1の反応部2A及び第2の反応部2Bの両方に接続されている。なお、反応部2A,2Bの分け方は特に限定されず、例えば、脱硫触媒2aが充填されたケーシングを並列に二つ並べ、一方のケーシングを第1の反応部2Aとし、他方のケーシングを第2の反応部としてもよい。あるいは、一つのケーシングの中において、一方の領域を第1の反応部2Aとし、他方の領域を第2の反応部2Bとしてもよい。
【0078】
第三実施形態に係る燃料電池システム1では、燃料電池システム連続運転時に反応部2A,2Bを交互に加熱することができる。一方の加熱されている反応部で脱硫触媒2aから水分を脱離させると共に流体供給部22から流体を供給することで水分を除去し、排出ガスは大気へ排出するか、オフガス燃焼部6で燃焼させた後に大気へ排気する。なお、流体としては、炭化水素系燃料や酸化剤(空気)を用いることができ、この場合は流体供給部22を燃料供給部7や酸化剤供給部9と共用することによって、当該流体供給部22を省略することができる。他方の加熱されていない反応部へは燃料供給部7から炭化水素系燃料を供給することで脱硫を行い、硫黄化合物が除去された炭化水素系燃料を水素発生部4へ供給する。制御例としては、第二実施形態における制御処理と同様に、各反応部2A,2Bの温度T1,T2を監視して加熱制御を行うことで、再生処理と脱硫処理の切り替えを行うことができる。なお、燃料供給部7からの炭化水素系燃料の供給先の切り替え、流体供給部22からの流体の供給先の切り替え、反応部2A,2Bからの排出ガス(脱硫された炭化水素系燃料、あるいは水分を除去した流体)の排出先の切り替えは、配管等に設けられたバルブの開閉などによって制御することができる。
【0079】
〈作用・効果〉
以上のように第三実施形態に係る燃料電池システム1において、脱硫部2は、第1の反応部2A及び第2の反応部2Bを有し、加熱部21は、第1の反応部2Aの脱硫触媒2aを加熱する第1の加熱部21Aと、第2の反応部2Bの脱硫触媒2aを加熱する第2の加熱部21Bと、を有している。また、第1の反応部2Aと第2の反応部2Bは、並列に接続されている。第1の加熱部21A及び第2の加熱部21Bの一方が加熱を行っているとき、他方は加熱を停止する。これによって、第1の反応部2Aに係る脱硫触媒2aは高温となることで再生処理状態となり、第2の反応部2Bに係る脱硫触媒2aは低温となることで脱硫可能な状態となる。この状態で流体供給部22から第1の反応部2Aへ流体を供給することで、第1の反応部2Aでは脱硫触媒2aから脱離した水分が除去され、燃料供給部7から第2の反応部2Bへ炭化水素系燃料を供給することで、第2の反応部2Bでは脱硫触媒2aによって炭化水素系燃料の硫黄化合物の除去が行われる。次に、加熱部21A,21Bにおいて加熱側と加熱停止側を入れ替えると共に、流体供給部22の流体の供給先と燃料供給部7の炭化水素系燃料の供給先を入れ替えることで、第2の反応部2Bでは脱硫触媒2aから脱離した水分が除去され、第1の反応部2Aでは脱硫触媒2aによって炭化水素系燃料の硫黄化合物が除去される。第三実施形態に係る燃料電池システム1では、燃料電池システム連続運転時に反応部2A,2Bを交互に加熱して、硫黄化合物が除去された炭化水素系燃料を水素発生部4へ排出し、水分を除去した流体を排気またはオフガス燃焼部6で燃焼して排気することができる。当該実施形態では、いずれか一方の反応部2A,2Bで炭化水素系燃料の硫黄化合物の除去が行われるため、脱硫触媒2aの連続再生が可能である。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る燃料電池システムは、実施形態に係る上記燃料電池システム1に限定されない。例えば、第二実施形態及び第三実施形態においては、脱硫部2は反応部を二つ有していたが、三つ以上有していてもよい。
【0081】
〈実験例1〉
次に、脱硫触媒2aの再生温度を導き出すための実験例について説明する。まず、脱硫部2として脱硫触媒1を6ml充填した固定床流通式反応管に、炭化水素系燃料として表1に示す組成を有する都市ガス(硫黄分としてDMS(ジメチルスルフィド)を4.0質量ppm含有、水分量が1体積%)を、GHSV=5000h−1にて、常圧、30℃で流通させた。反応管出口の炭化水素系燃料の全量を基準として硫黄原子換算濃度を、SCD(sulfur Chemiluminescence Detector)ガスクロマトグラフィーにより測定する。実験開始後、出口ガスの炭化水素系燃料の全量を基準として硫黄原子換算濃度が0.05容量ppm以上となるまで炭化水素系燃料を供給する。

脱硫触媒1:AgX(銀担持X型ゼオライト)
炭化水素系燃料:表1記載の組成を有し、DMS(ジメチルスルフィド)を4.0質量
ppm(炭化水素系燃料の全量を基準とした硫黄原子換算濃度)含有
した都市ガス
炭化水素系燃料全体のうちの水分の体積比率:1体積%
【0082】
【表1】
【0083】
(脱硫触媒1の調製法)
硝酸銀19gに対し、蒸留水600mlを添加し硝酸銀水溶液を調製した。次に、攪拌しながらSiO/Al(モル比)=2.5の市販NaX型ゼオライト粉末50gと混合し、イオン交換を行った。その後、硝酸根が残らないように蒸留水にて洗浄した。洗浄後、空気中、180℃で一晩乾燥した。乾燥後の粉末状銀交換ゼオライト30gに対し、アルミナバインダを5g混合し、1mmφにて押出成型し、脱硫触媒1を調製した。脱硫触媒1中のAg担持量はゼオライト基準で25質量%であった。
【0084】
次に、出口ガスの炭化水素系燃料の全量を基準とした硫黄原子換算濃度が0.05容量ppmに達した後の脱硫触媒を加熱して温度を上昇させる。各温度における脱硫触媒の重量減少率を測定すると共に、脱硫触媒から脱離した物質の検出強度を測定する。当該実験結果を図7に示す。図7では、脱硫触媒の重量減少率がTGのグラフで示され、水分の検出強度がHOのグラフで示され、硫黄化合物の検出強度がMeS(メチルメルカプタン),DMS(ジメチルスルフィド)のグラフで示される。なお、TGについては、左側の縦軸の目盛り(重量減少率)を参照し、HO、MeS、DMSについては、右側の縦軸の目盛り(検出強度)を参照する。重量減少率は、吸着物質も全て含んだ脱硫触媒の重さを100%とし、吸着物質が脱離して、全体の重量が減少するにつれて値が減少する。検出強度が強いほど、当該温度における吸着物質の脱離量が大きいことを示す。なお、TG測定は、Bruker axs 社製の型番R/TG-DTA2010SA/Gを使用し、He雰囲気下、昇温速度5℃/minで行った。
【0085】
図7から理解されるように、脱硫触媒の温度上昇に伴い、脱硫触媒の重量減少率は、100%から徐々に減少している。このことより、脱硫触媒の吸着物質が加熱に伴って脱離していることが理解される。脱離している吸着物質の内訳を検討すると、水分の脱離量は、100℃から230℃付近において大きく増加していることが理解される。特に200℃まで、水分の脱離量は大きな値を示している。硫黄化合物の脱離は、280℃付近まで検出されていない。280℃から330℃の範囲で硫黄化合物の脱離が検出される。従って、100℃以上、250℃以下の範囲では、脱硫触媒は効率よく水分を脱離させている一方、硫黄化合物については脱離させることなく吸着を確実に維持していることが理解される。
【0086】
〈実験例2〉
脱硫触媒2として脱硫触媒1の代わりに、以下の脱硫触媒2を使用した以外は実施例1と同様の実験を行った。

脱硫触媒2:CuY(銅担持Y型ゼオライト)
【0087】
(脱硫触媒2の調製法)
硫酸銅5水和物40gに対し、蒸留水600mlを添加し硫酸銅水溶液を調製した。次に、攪拌しながらSiO/Al(モル比)=4.5の市販NaY型ゼオライト粉末50gと混合し、イオン交換を行った。その後、硫酸根が残らないように蒸留水にて洗浄した。洗浄後、空気気流中、180℃で一晩乾燥した。乾燥後の粉末状銅交換ゼオライト30gに対し、アルミナバインダーを5g混合し、1mmφにて押出成型し、脱硫触媒2とした。脱硫触媒2中の銅の担持量は担体基準で10質量%であった。
【0088】
図8は、図7に示す実験例から脱硫触媒2aを変更した実験例の結果を示すグラフである。脱硫触媒2aとして脱硫触媒2を適用し、図7の実験と同様の実験を行った。
【0089】
次に、出口ガスの炭化水素系燃料の全量を基準とした硫黄原子換算濃度が0.05容量ppmに達した後の脱硫触媒を加熱して温度を上昇させる。各温度における脱硫触媒の重量減少率を測定すると共に、脱硫触媒から脱離した物質の検出強度を測定する。当該実験結果を図8に示す。図8では、脱硫触媒の重量減少率がTGのグラフで示され、水分の検出強度がHOのグラフで示され、硫黄化合物の検出強度がMeS(メチルメルカプタン)のグラフで示される。なお、TGについては、左側の縦軸の目盛りを参照し、HO、MeSについては、右側の縦軸の目盛りを参照する。重量減少率は、吸着物質も全て含んだ脱硫触媒の重さを100%とし、吸着物質が脱離して、全体の重量が減少するにつれて値が減少する。検出強度が強いほど、当該温度における吸着物質の脱離量が大きいことを示す。
【0090】
図8から理解されるように、脱硫触媒の温度上昇に伴い、脱硫触媒の重量減少率は、100%から徐々に減少している。このことより、脱硫触媒の吸着物質が加熱に伴って脱離していることが理解される。脱離している吸着物質の内訳を検討すると、水分の脱離量は、100℃から大きく増加し、320℃付近まで高い状態が維持されていることが理解される。特に220℃まで、水分の脱離量は大きな値を示している。硫黄化合物の脱離は、290℃までほぼ検出されていない。290℃を超えた付近から400℃の範囲で硫黄化合物の脱離が検出される。従って、100℃以上、250℃以下の範囲では、脱硫触媒は効率よく水分を脱離させている一方、硫黄化合物については脱離させることなく吸着を確実に維持していることが理解される。250℃以下であれば、硫黄化合物はほぼ検出されず、より好ましいことが理解される。
【符号の説明】
【0091】
1…燃料電池システム、2…脱硫部、2a…脱硫触媒、2A…第1の反応部、2B…第2の反応部、4…水素発生部、5…セルスタック、11…制御部、21…加熱部、21A…第1の加熱部、21B…第2の加熱部、22…流体供給部、23…温度センサ、23A…第1の温度センサ、23B…第2の温度センサ、101…供給制御部(流体供給部)、102…加熱制御部(加熱部)、103…温度検出部、104…判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8