(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、第1の方法を示す図である。この第1の方法は、微細空間3内に金属部分を形成する具体的方法に係る。まず、微細空間3を有する対象物1を準備する(
図1(a))。対象物には、ウエハ、回路基板、積層基板、半導体チップ、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)等、微細空間を有するものが広く含まれる。微細空間には、TSV(Through Silicon Via)で代表される貫通孔、非貫通孔(盲孔)の他、積層された基板間に生じる微細隙間等が含まれる。機能性微粒子は、球状、鱗片状、扁平状等、任意の形状をとることができる。
【0022】
機能性微粒子を分散させる液状分散媒としては、水性分散媒又は揮発性有機分散媒を用いることができる。特に、常温で揮発するような揮発性有機分散媒が好ましい。そのような液状分散媒としては、種々のものが知られているので、それらを選択使用すればよい。
【0023】
対象物1に設けられた微細空間3は、この実施例では、貫通孔又は非貫通孔であり、開口部の孔径D1、深さH1を有している。孔径D1は、例えば25μm以下であり、深さH1は、孔径D1とのアスペクト比が、1以上、好ましくは5以上となる値である。対象物1が、例えばウエハである場合には、上述した微細空間3は、ウエハ面内に多数設けられる。
【0024】
上述した対象物1の微細空間3に、低融点金属微粉末を液状分散媒中に分散させた分散系機能性材料5を充填(流し込み)する(
図1(b))。この場合の分散系機能性材料5は、分散媒51に、熱溶解性を有する機能性微粉末として、低融点金属微粉末52を分散させた分散系となる。低融点金属微粉末52の代表例は、Sn合金微粉末である。Sn合金微粉末は、nmサイズ(1μm以下とする)に属するナノ微粒子又はナノコンポジット構造を有する微粒子で構成されていることが好ましい。Sn合金微粉末をベースとし、他の金属微粉末、例えばBi,Ga又はInの微粉末の少なくとも一種を含んでいてもよい。微粒子は、球状、鱗片状、扁平状等、任意の形状をとることができる。充填工程では、前述した差圧充填を採用することが好ましい。
【0025】
分散系機能性材料5を、微細空間3内に充填する場合、真空チャンバ内の減圧雰囲気で処理することが好ましい。減圧処理の後、真空チャンバの内圧を増圧する差圧充填方式を採用してもよい。この差圧充填によれば、分散系機能性材料5を、微細空間3の内部に確実に充填することができる。
【0026】
次に、微細空間3の内部において、低融点金属微粉末52を熱溶解させるとともに液状分散媒51を蒸発させる(
図1(c)、(d))。これにより、低融点金属微粉末52の微粒子の間に隙間G1が生じるとともに、その隙間G1が溶解した低融点金属微粉末52によって埋められる。低融点金属微粉末52がSn合金微粉末をベースとする場合には、その融点(約231℃)で熱溶解させることができる。
【0027】
更に、熱溶解した低融点金属微粉末52を加圧F1しながら冷却し、硬化させる(
図1(e))。これにより、対象物1の微細空間3の内部に低融点金属でなる機能部分50が形成されることになる。上記プロセスのうち、少なくとも、
図1(a)〜(d)は、真空チャンバ内で実行することが好ましい。
【0028】
上述したように、分散系機能性材料5を、微細空間3の内部に充填するので、本来、充填の困難な微粉末形態を有する低融点金属微粉末52を、分散系機能性材料5の流動性を利用して、微細空間3の内部に確実に充填することができる。充填に当たっては、差圧充填方式を採用することができる。
【0029】
また、低融点金属微粉末52を、液状分散媒51中に分散させた分散系機能性材料5を用いるので、溶融金属を用いる従来技術と異なって、溶融プロセスが不要である。低温状態にある分散系機能性材料5を、差圧充填方式などによって、微細空間3の内部に充填することができる。また、微細空間3を有する対象物1が、例えば、半導体回路を既に形成したウエハ等であった場合、半導体回路に対する熱的な悪影響を最小限に抑えることができる。更に、溶融のための熱エネルギーを必要としないから、消費エネルギーを低減し得る。
【0030】
第1の方法では、上述した分散系機能性材料5を、微細空間3の内部に充填し、次に、微細空間3の内部において、低融点金属微粉末52を熱溶解させるとともに液状分散媒51を蒸発させ、更に、熱溶解した低融点金属微粉末52を加圧しながら冷却し、硬化させるから、例えば、Sn合金等の低電気抵抗体の機能部分50が得られる(
図1(e))ことになる。
【0031】
また、熱溶解した低融点金属微粉末52を加圧しながら冷却し、硬化させるので、冷却時の体積縮小によって微細空間3と成形体との間に生じることのある隙間、空隙の発生を、加圧によって回避し、隙間や空隙のない高品質の機能部分50を形成することができる。
【0032】
更に、熱溶解した低融点金属微粉末52を加圧しながら冷却し、硬化させるから、低融点金属の粒成長、結晶成長が抑制される。この結果、柱状結晶の成長が抑制され、低融点金属が等軸晶化され、応力が低下し、微細空間3を有する対象物1にマイクロクラックが発生する等の不具合を回避することができる。
【0033】
次に、
図2は、第2の方法を示している。図において、
図1に現れた構成部分と対応する部分については、同一の参照符号を付してある。
図2に図示された第2の方法の特徴は、融点金属微粉末を、機能性材料及び結合材として兼用し、微細空間3内に高融点金属及び低融点金属でなる金属部分を形成する点にある。第2の方法では、微細空間3の内部に金属部分を形成するに当たり、第1の方法の場合と同様に、微細空間3を有する対象物1を準備する(
図2(a))。そして、
図2に図示すように、低融点金属微粉末52及び高融点金属微粉末53を、液状分散媒51中に分散させた分散系機能性材料5を、前述した差圧充填法により、微細空間3の内部に充填(
図2(b))する。低融点金属微粉末52及び高融点金属微粉末53は、粒径が不揃いであっても、統一されていてもよい。
【0034】
次に、微細空間3の内部において、低融点金属微粉末52を熱溶解させるとともに、液状分散媒51を蒸発させ(
図2(c))、更に、高融点金属微粉末53及び低融点金属微粉末52の溶解物を加圧しながら冷却し、硬化させる。上記工程において、低融点金属微粉末52の溶解物により、高融点金属微粒子53−53間の隙間G1を埋め、高融点金属粒子53と拡散接合させる。上記プロセスのうち、少なくとも、
図2(a)〜(c)は、真空チャンバ内で実行する。
【0035】
低融点金属微粉末52としては、上述したSn合金ベースの微粉末を用いることができる。Sn合金微粉末をベースとし、他の金属微粉末、例えばBi微粉末、Ga微粉末、In微粉末を含んでいてもよいことは、前述したとおりである。高融点金属微粉末53は、具体的には、Ag、Cu、Au、Pt、Ti、Zn、Al、Fe、Si又はNiの群から選択された少なくても1種を含む材料によって構成することができる。これらの高融点金属微粉末53は、nmサイズ(1μm以下)に属するナノ微粒子又はナノコンポジット構造を有する微粒子で構成されていることが好ましい。低融点金属微粉末52及び高融点金属微粉末53は、粒径が不揃いであっても、統一されていてもよい。また、球状、鱗片状、扁平状等、任意の形状をとることができる。
【0036】
第2の方法でも、本来、充填の困難な微粉末形態を有する低融点金属微粉末52及び高融点金属微粉末53を、分散系機能性材料5としての流動性を利用して、微細空間3内に確実に充填することができる。
【0037】
また、低融点金属微粉末52及び高融点金属微粉末53を、液状分散媒51中に分散させた分散系機能性材料5を用いるので、溶融金属を用いる従来技術と異なって、溶融プロセスが不要である。低温状態にある分散系機能性材料5を、その流動性を利用して、ガス圧、プレス圧、射出圧、又は転圧から選択された少なくとも1種の加圧力を与える手段によって、微細空間3の内部に容易に充填することができる。また、微細空間3を有する対象物1が、既に、半導体回路等を形成したウエハ等である場合、半導体回路に対する熱的な悪影響を最小限に抑えることができる。更に、溶融のための熱エネルギーを必要としないから、消費エネルギーを低減し得る。
【0038】
また、分散系機能性材料5を微細空間3の内部に充填し、次に、微細空間3の内部において、低融点金属微粉末52を熱溶解させるとともに液状分散媒51を蒸発させ、更に、高融点金属微粉末53及び低融点金属微粉末52の溶解物を加圧F1しながら冷却し、硬化させる。上述したプロセスにより、高融点金属及び低融点金属でなる機能部分50が得られることになる(
図2(e))。成型に当たっては、低融点金属微粉末52の溶解及び凝固による結合力を利用することができ、他に結合材を必要としない。このため、高融点金属微粉末53及び低融点金属微粉末52の持つ特性をそのまま発揮させることができる。
【0039】
また、高融点金属微粉末53及び低融点金属微粉末52の溶解物を加圧F1しながら冷却するので、冷却時の体積縮小によって微細空間3と成形体との間に生じることのある隙間、空隙の発生を、加圧F1によって回避し、隙間や空隙のない高品質の機能部分50を形成することができる。
【0040】
更に、熱溶解した低融点金属微粉末52を加圧しながら冷却し、成型するから、低融点金属及び高融点金属の粒成長、結晶成長が抑制される。この結果、低融点金属及び高融点金属が等軸晶化され、応力が低下し、微細空間3を有する対象物1にマイクロクラックが発生する等の不具合を回避することができる。
【0041】
第2の方法によれば、低融点金属微粉末52の溶解物により、高融点金属微粉末53の高融点金属微粒子間の隙間を埋め、前記高融点金属粒子と拡散接合させる。したがって、低融点金属及び高融点金属は、互いに一体化された状態で、成型体を構成することになり、両金属の特性に応じた機能が発揮される。
【0042】
図3は、第3の方法を図示している。図において、
図1に現れた構成部分と対応する部分については、同一の参照符号を付してある。第3の方法は、微細空間3内に電気絶縁部分を形成する具体的方法に係る。
図3を参照すると、微細空間3の内部に電気絶縁部分を形成するに当たり、絶縁性セラミック微粉末54を液状分散媒51中に分散させた分散系機能性材料5を、微細空間3の内部に充填し(
図3(a)、(b))、次に、微細空間3の内部において、分散系機能性材料5に含まれる液状分散媒51を蒸発させ(
図3(c))、次に、微細空間3の内部の絶縁性セラミック微粉末(微粒子)54の隙間G1に液状結合材55を含浸させる(
図3(d))。そして、加熱処理によって、液状結合材55を絶縁性セラミック微粉末54と化学的に反応させるなどして、セラミック微粉末54及び液状結合材55を、加圧しながら、硬化させる(
図3(e))。
【0043】
第3の方法でも、充填の困難な微粉末形態を有する絶縁性セラミック微粉末54を、液状分散媒51中に分散させた分散系機能性材料5を用い、その流動性を利用して、微細空間3の内部に容易に充填することができる。
【0044】
また、微細空間3の内部に充填された液状分散媒51を蒸発させ、次に、微細空間3の内部の絶縁性セラミック微粉末54の隙間に液状結合材55を含浸させ、最終的に、絶縁性セラミック微粉末54及び液状結合材55を、加圧しながら硬化させるプロセスにより、絶縁性セラミック及び結合材でなる電気絶縁性を有する機能部分50が得られることになる。
【0045】
さらに、絶縁性セラミック微粉末54及び液状結合材55を、加圧しながら、硬化させるので、微細空間3と成形体たる機能部分50との間に生じることのある隙間、空隙の発生を、加圧によって回避し、隙間や空隙のない高品質の機能部分50を形成することができる。
【0046】
液状結合材55は、液体ガラスであってもよいし、有機樹脂であってもよい。有機樹脂としては、熱硬化型樹脂が好的である。絶縁性セラミック微粉末54は、限定するものではないが、SiO
2、Al
2O
3等の金属酸化物又はSiN等の窒化物の少なくとも一種を含むことができる。
【0047】
液状分散媒51として、水性分散媒又は揮発性有機分散媒を用いることができることは、既に述べたとおりである。揮発性有機分散媒の代表例としては、水酸基(OH)を有するアルコール類がある。次に、このような揮発性有機分散媒51を用いた場合の具体例について述べる。
【0048】
揮発性有機分散媒51として、水酸基(OH)を有するアルコール類を用いた場合、真空チャンバ内の減圧雰囲気では、そのほとんどが蒸発するので、絶縁性セラミック微粉末54の間に隙間G1が生じる。また、揮発性有機分散媒51に含まれていたOH基は、セラミック微粒子、例えば、SiO
2との結合力により、絶縁性セラミック微粉末54の表面に付着する。分散媒51を蒸発させた後、絶縁性セラミック微粉末54の集合体を加圧してもよい。
【0049】
揮発性有機分散媒としては、水酸基(OH)を有するアルコール類を用いた場合、液状結合材55として、液体シリカ又は液体Si化合物を用いることができる。液体シリカ又は液体Si化合物でなる液状結合材55は、絶縁性セラミック微粉末54の周りの隙間G1に浸透してゆく。この場合も、引き続き、真空チャンバ内の減圧雰囲気で処理する。減圧処理の後、真空チャンバの内圧を増圧(差圧充填方式)してもよい。この差圧充填によれば、液状結合材55を、セラミック微粒子の周りに十分に浸透させることができる。
【0050】
液体シリカを用いた場合は、その有機溶媒が蒸発し、シリカ転化が起こる。液体Si化合物を用いた場合、Si化合物を、絶縁性セラミック微粉末54の表面に付着しているOH基と反応させ、シリカに転化させる。
【0051】
液体Si化合物の例としては、シラザン、シロキサン、シラノール等がある。ここでは、シラザンの無機ポリマーであるポリシラザン(PHPS)を用いた場合を例にとって説明する。ポリシラザンは、水分や酸素と反応し、シリカに転化する。有機溶媒としては、キシレン、ミネラルターベン又は高沸点芳香族系溶媒等が用いられる。
【0052】
絶縁性セラミック微粉末54の表面にOH基を残し、ポリシラザンを、このOH基と反応させることにより、シリカに転化させる。こうして得られたシリカは、通常は、アモルファスとなる。
【0053】
シリカ転化を促進するために、加熱工程において、プレス板などを用いて加圧しながら、加熱することが好ましい。加熱温度は、ポリシラザンの種類によって異なるが、一般には、室温〜450℃の範囲で選択される。この加熱処理工程において、有機溶媒の分解ガスが排出される。
【0054】
上述した工程の後、シリカ転化のさらなる促進、及び、分解ガス排出のために、例えば、1000℃前後で焼成することが好ましい。
【0055】
微細空間は、貫通孔または非貫通孔に限らない。多数の基板を積層する積層電子デバイスでは、基板間に発生する微小な隙間(微細空間)に電気絶縁物を充填するアンダーコート構造がとられる。本発明は、このようなアンダーコート形成にも適用することができる。
【0056】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様及び説明されない他の適用技術分野を想到しえることは自明である。