(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、水和反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝導遮断性能と、脱水反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝達促進機能と、を向上させることができる化学蓄熱用反応器を提供することが課題である。
【0007】
が目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の化学蓄熱用反応器は、壁厚方向に間隔をあけて設けられた伝熱隔壁と、前記伝熱隔壁の壁厚方向外側に設けられ、加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する化学蓄熱材が充填された蓄熱層と、前記伝熱隔壁間に設けられ、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、前記伝熱隔壁よりも線膨張係数が大きく、水和反応時は前記伝熱隔壁間よりも厚みが薄く、脱水反応時には熱膨張することで前記伝熱隔壁に接触して前記伝熱隔壁を介して前記蓄熱層を加熱するヒータ層と、を備える。
【0009】
請求項1の化学蓄熱用反応器では、水和反応時においては伝熱隔壁間よりもヒータ層の厚みが薄いので、ヒータ層と伝熱隔壁との間に隙間が形成される。よって、ヒータ層と伝熱隔壁との間に空気層が形成され、この空気層が伝熱遮断機能を発揮する。つまり、水和反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝導遮断性能が向上する。したがって、蓄熱層からヒータ層への伝熱が抑制され、これによりヒータ層の熱容量による顕熱ロスが低減される。
【0010】
一方、脱水反応時においてはヒータ層が熱膨張することで伝熱隔壁に面接触してヒータ層の熱が蓄熱層に伝熱される。また、反応初期の脱水速度が速い領域においては、化学蓄熱層の熱膨張によって蓄熱層から圧力を受ける。よって、伝熱隔壁はヒータ層の面接触と蓄熱層の圧力との相互作用によって、伝熱隔壁とヒータ層との接触面の圧力分布が均一化すると共に、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。したがって、脱水速度が速い領域における伝熱律速が改善する。
【0011】
このように、水和反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝導遮断性能と、脱水反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝達促進機能と、の両方が向上する。
【0012】
請求項2の化学蓄熱用反応器は、前記蓄熱層と前記伝熱隔壁との間に設けられ、脱水反応時には前記蓄熱層で発生した水蒸気が流入し、水和反応時には前記蓄熱層に水蒸気を供給する蒸気拡散層と、前記蒸気拡散層に設けられ、前記伝熱隔壁から前記蓄熱層に伝熱すると共に弾性変形可能な構造体と、を備える。
【0013】
請求項2の化学蓄熱用反応器では、蓄熱層と伝熱隔壁との間の蒸気拡散層に設けられた構造体が、水和反応時の蓄熱層の水和膨張に伴い弾性変形することで、伝熱隔壁が凸状に変形して接触面の圧力分布が不均一化することが防止される。つまり、ヒータ層と伝熱隔壁との接触面の圧力分布が均一化する。よって、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。
【0014】
また、伝熱隔壁が凸状に変形して接触面の圧力分布が不均一化することによるヒータ層への曲げ応力の発生や接触面の圧力分布の不均一化によるヒータ層の過昇温部の発生が抑制され、その結果、ヒータ層の耐久性能が向上する。
【0015】
また、脱水反応時において、伝熱隔壁を介して伝熱されたヒータ層の熱を、蒸気拡散層に設けられた構造体が蓄熱層に伝熱する。
【0016】
請求項3の化学蓄熱用反応器は、前記蓄熱層に接触するように配置され、前記蓄熱層との間で熱交換可能な被加熱媒体が充填された媒体流路層を備える。
【0017】
請求項3の化学蓄熱用反応器では、水和反応時においては、媒体流路層に充填された被加熱媒体と蓄熱層との間で熱交換され、蓄熱層の化学蓄熱材の速い反応速度が維持される。また、熱交換され温度が上昇した被加熱媒体を別途設けた流路に流すことで暖気対象を加熱・昇温させることが可能である。つまり、蓄熱層の熱の輸送が可能となる。
【0018】
一方、脱水反応時においては、蓄熱完了後(脱水完了後)に、被加熱媒体を低温媒体とすることで、蓄熱層やヒータ層等の顕熱を熱交換によって回収し、熱利用先に熱を輸送することが可能である。
【0019】
請求項4の化学蓄熱用反応器は、前記媒体流路層は、前記蓄熱層と前記伝熱隔壁との間に設けられ、前記媒体流路層には、前記伝熱隔壁から前記蓄熱層に伝熱すると共に弾性変形可能な構造体が設けられている。
【0020】
請求項4の化学蓄熱用反応器では、蓄熱層と伝熱隔壁との間の媒体流路層に設けられた構造体が、水和反応時の蓄熱層の水和膨張に伴い弾性変形することで、伝熱隔壁が凸状に変形による接触面の圧力分布が不均一化することが防止される。つまり、ヒータ層と伝熱隔壁との接触面の圧力分布が均一化する。よって、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。
【0021】
また、伝熱隔壁が凸状に変形による接触面の圧力分布が不均一化することによるヒータ層への曲げ応力の発生や接触面の圧力分布の不均一化によるヒータ層の過昇温部の発生が抑制され、その結果、ヒータ層の耐久性能が向上する。
【0022】
また、脱水反応時において、伝熱隔壁を介して伝熱されたヒータ層の熱を、媒体流路層に設けられた構造体が蓄熱層に伝熱する。
【0023】
請求項5の化学蓄熱用反応器は、前記ヒータ層を貫通する貫通孔と、前記貫通孔に挿入され、前記伝熱隔壁を支持する補強部材と、を備える。
【0024】
請求項5の化学蓄熱用反応器では、脱水反応時の蓄熱層の熱膨張に対してヒータ層と共に伝熱隔壁を補強部材が支持するので、ヒータ層にかかる応力が低減する。これによりヒータ層と伝熱隔壁との接触面の圧力分布が均一化する。よって、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。また、ヒータ層にかかる応力が低減するので、ヒータ層の耐久性能が向上する。
【0025】
また、水和反応時における蓄熱層の水和膨張に伴う伝熱隔壁の膨張や変形が抑えられ、この結果、伝熱隔壁とヒータ層との部分的な接触が防止され、空気層が確実に形成される。よって、空気層による伝熱遮断機能(断熱機能)が効果的に発揮される。つまり、水和反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝導遮断性能が向上する。したがって、蓄熱層からヒータ層への伝熱が抑制され、これによりヒータ層の熱容量による顕熱ロスが低減される。
【0026】
請求項6の化学蓄熱用反応器は、前記補強部材は、前記ヒータ層よりも、低熱伝導部材且つ低熱熱容量となる材料及び形状とされている。
【0027】
請求項6の化学蓄熱装置では、補強部材は、ヒータ層よりも、低熱伝導部材且つ低熱熱容量となる材料及び形状とされているので、水和反応時における蓄熱層から補強部材への伝熱及びヒータ層への伝熱が抑制され、その結果、顕熱ロスが軽減される。
【0028】
請求項7の化学蓄熱用反応器は、前記伝熱隔壁における前記ヒータ層側の壁面には、離型性を高める離型手段が設けられている。
【0029】
請求項7の化学蓄熱用反応器では、脱水反応時に伝熱隔壁に面接触したヒータ層が伝熱隔壁から離型する際に、離型手段によって離型性が促進されるので、ヒータ層が伝熱隔壁に接触したままとなって、空気層が形成されなくなることが防止又は抑制される。よって、水和反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝導遮断性能がより確実に発揮される
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の化学蓄熱用反応器によれば、水和反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝導遮断性能と、脱水反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝達促進機能と、の両方を向上させることができる。
【0031】
請求項2に記載の化学蓄熱用反応器によれば、接触熱抵抗が低減するので、熱伝達促進機能を更に向上させることができる。
【0032】
請求項3に記載の化学蓄熱用反応器によれば、水和反応時において、蓄熱層の化学蓄熱材の速い反応速度を維持することができる。
【0033】
請求項4に記載の化学蓄熱用反応器によれば、接触熱抵抗が低減するので、熱伝達促進機能を更に向上させることができる。
【0034】
請求項5に記載の化学蓄熱用反応器によれば、補強部材を有しない構成と比較し、熱伝達促進機能と熱伝導遮断性能とを更に向上させることができる。
【0035】
請求項6に記載の化学蓄熱用反応器によれば、水和反応時における蓄熱層から補強部材への伝熱及びヒータ層への伝熱を抑制することができる。
【0036】
請求項7に記載の化学蓄熱用反応器によれば、離型手段を有しない厚生と比較し、水和反応時におけるヒータ層と蓄熱層との間の熱伝導遮断性能をより確実に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<化学蓄熱システム>
まず、本発明の実施形態に係る化学蓄熱用反応器を用いた化学蓄熱システム10について、
図1を用いて説明する。
【0039】
図1には、化学蓄熱システム10の概略全体構成が模式的なシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、化学蓄熱システム10は、第一実施形態の化学蓄熱用反応器100を備えている。化学蓄熱用反応器100は、後述するように化学蓄熱材112(
図2参照)が脱水に伴って蓄熱(吸熱)し、水和(水酸化カルシウムへの復元)に伴って放熱(発熱)する構成とされている。
【0040】
化学蓄熱システム10は、化学蓄熱用反応器100から導入された水蒸気を凝縮する凝縮部、水蒸気が凝縮された水(液相の水、以下同じ)を貯留する貯留部、及び貯留した水を蒸発させて化学蓄熱用反応器100に供給する水蒸気を生成する蒸発部としての各機能を兼ね備える蒸発・凝縮器14を備えている。蒸発・凝縮器14の容器16は、内部に水蒸気凝縮用の冷媒流路や蒸発用の熱媒流路等が設けられて構成されている。
【0041】
この蒸発・凝縮器14の容器16は、水蒸気循環系を構成する水蒸気循環路20を介して化学蓄熱用反応器100に連通されている。水蒸気循環路20には、連通と非連通とを切り替えるための開閉弁22が設けられている。
【0042】
<第一実施形態>
つぎに、本発明の実施形態に係る第一実施形態の化学蓄熱用反応器について、
図1〜
図6を用いて説明する。
【0043】
図2に示すように、化学蓄熱用反応器100は、反応容器102の中にヒータ層150と蓄熱層110と蒸気拡散層120とが、層状に設けられた構成とされている。なお、各図の矢印Sが後述する伝熱隔壁104の壁厚方向(層方向)Sを示している。
【0044】
ヒータ層150は反応容器102における壁厚方向Sの中央部に設けられ、蓄熱層110はヒータ層150の壁厚方向Sの両外側に設けられている。そして、蒸気拡散層120が蓄熱層110の壁厚方向Sの両外側及び反応容器102の側壁102Aとの間に設けられている。
【0045】
反応容器102は、ステンレス等の金属材料で構成されている。また、反応容器102に内部には、壁厚方向Sに対向して配置された伝熱隔壁104が設けられている。これら伝熱隔壁104の間の空間(スリット)106の中にヒータ層150が設けられている。別の言い方をすると、伝熱隔壁104がヒータ層150と蓄熱層110との間を仕切っている。
【0046】
蓄熱層110は、粒子状の化学蓄熱材112が充填されている(
図4も参照)。化学蓄熱材112は、アルカリ土類金属の水酸化物の1つである水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)が採用されている。したがって、蓄熱層110では、以下に示す反応で蓄熱、放熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
【0047】
Ca(OH)
2 ⇔ CaO + H
2O
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
Ca(OH)
2 + Q → CaO + H
2O(脱水反応、
図4(A)→(B))
CaO + H
2O → Ca(OH)
2 + Q(水和反応、
図4(B)→(A))
となる。
【0048】
なお、この化学蓄熱材(Ca(OH)
2)112の1kg当たりの蓄熱容量は、略1.86[MJ/kg−Ca(OH)
2]とされている。
【0049】
蒸気拡散層120は、水蒸気流路として機能する。具体的には、水和反応時に化学蓄熱材112に、前述した水蒸気循環路20を介して蒸発・凝縮器14(
図1参照)から送られた水蒸気を供給するための流路として機能する。一方、脱水反応時には、化学蓄熱材112から分離・生成された水蒸気が水蒸気循環路20を介して蒸発・凝縮器14に送る水蒸気の流路として機能する。また、蒸気拡散層120には、金属製の波型の構造体(フィン)122が設けられ、これによって、水蒸気の流路が確保されている。また、構造体122の波型の凹凸方向は壁厚方向Sとされているので、構造体122は壁厚方向Sに弾性変形する。
【0050】
図3に示すように、ヒータ層150は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する発熱部152と、発熱部152の壁厚方向Sの両外側に設けられた絶縁部154と、が層状となった構成とされている。発熱部152はニクロム線等のヒータ線で構成され、絶縁部154はマイカ材で構成されている。そして、発熱部152は、電源158(
図1参照)から供給される電気が流れることによって発熱する。
【0051】
ヒータ層150を構成する絶縁部154の線膨張係数K1は、伝熱隔壁104の線膨張係数K2よりも大きくなるように、材料が選定されている(K1>K2)。なお、本実施形態では、ヒータ層150の絶縁部154を構成するマイカ材の線膨張係数K1は「52×10
−6[1/K]」であり、伝熱隔壁104を構成するステンレス材の線膨張係数K2は、「17.3×20
−6[1/K]」である。
【0052】
また、
図2(B)に示すように、非加熱時(予め定められた温度C1度以下)におけるヒータ層150の壁厚方向Sの厚みT1は、伝熱隔壁104間の間隔、つまり空間(スリット)106の壁厚方向Sの幅L1よりも小さい。つまり、伝熱隔壁104とヒータ層150との間に空気層108が形成された状態となる。
【0053】
しかし、ヒータ層150が加熱されると、ヒータ層150及び伝熱隔壁104共に熱膨張するが、ヒータ層150の線膨張係数K1が、伝熱隔壁104の線膨張係数K2のよりも大きくなるように材料が選定されているので、ヒータ層150の方がより大きく膨張し、その結果、加熱時(予め定められた温度C2以上)ではヒータ層150が伝熱隔壁104に当接した状態が維持される(
図5(B)を参照)。
【0054】
また、伝熱隔壁104のヒータ層150側の壁面104Aには、ヒータ層150が離型する離型性を高めたメッキ加工が施されている。つまり、壁面104Aにはメッキ層105が形成されている。
【0055】
[作用及び効果]
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
図1〜
図4に示すように、化学蓄熱システム10では、化学蓄熱用反応器100の蓄熱層110の化学蓄熱材112に蓄熱する際には、開閉弁22を開放した状態で、ヒータ層150の発熱部152に電源158から電気を流して加熱すると、熱によって化学蓄熱材112が脱水反応を生じ、これにより化学蓄熱材112(蓄熱層110)に蓄熱される。この際、化学蓄熱材112から脱水された水蒸気は、蒸気拡散層120及び水蒸気循環路20を介して蒸発・凝縮器14に導入される。蒸発・凝縮器14では、冷媒流路を流通する冷媒によって水蒸気が冷却され、凝縮された水が貯留される。
【0057】
一方、化学蓄熱用反応器100に蓄熱された熱を放熱する際には、化学蓄熱システム10は、開閉弁22を開放した状態で、蒸発・凝縮器14から水蒸気循環路20を介して化学蓄熱用反応器100の蓄熱層110の化学蓄熱材112に供給する。これにより、化学蓄熱材112に水和反応が生じ放熱する。そして、放熱された熱を利用する。
【0058】
このように、化学蓄熱用反応器100では、蓄熱層110に充填された化学蓄熱材112が、水和反応と脱水反応とによって、可逆的に発熱及び吸熱を行うように構成されている。
【0059】
つぎに、水和反応及び脱水反応のそれぞれにおけるヒータ層150について詳しく説明する。
【0060】
まず、水和反応時(
図4(B)→
図4(A)の反応時)について説明する。
【0061】
図5(A)に示すように、ヒータ層150は、非加熱状態であるので、伝熱隔壁104とヒータ層150との間に隙間がある非接触状態となる。つまり、伝熱隔壁104とヒータ層150との間に空気層108が形成された状態となる。
【0062】
一方、蓄熱層110においては、
図4(A)に示すように、水和反応によって粒状の化学蓄熱材112が膨張するが、伝熱隔壁104によって膨張が抑えられる(
図5(A)の矢印F1を参照)。よって、
図5(A)に示す空気層108が確保される。そして、空気層108が熱伝導遮断効果(断熱効果)を発揮するので、水和反応によって、蓄熱層110の化学蓄熱材112が放熱した熱のヒータ層150への伝熱が抑制される。
【0063】
したがって、ヒータ層150の熱容量による顕熱ロスが低減されるので、蓄熱層110の化学蓄熱材112から放熱された熱の熱利用効率が向上する。つまり、水和反応によって蓄熱層110の化学蓄熱材112から発生した熱を有効に利用することができる。
【0064】
つぎに、脱水反応時(
図4(A)→
図4(B)の反応時)について説明する。
【0065】
まず、
図6グラフについて説明する。
図6のグラフの(1)はヒータ層150の伝熱隔壁104への面接圧(面触率)の変化を示している。(2)は蓄熱層110(化学蓄熱材112)の温度変化を示している。(3)は、蓄熱層(化学蓄熱材112)の熱膨張力の変化を示している。(4)は脱水速度の変化を示している。なお、横軸は時間軸であり、縦軸は各グラフに応じた軸である。
【0066】
また、
図6の(A)はヒータ層150が熱膨張して伝熱隔壁104への当接すまでの間を示している。また、D線は、ヒータ層150と伝熱隔壁104との接触面の圧力分布が一定となる時点を示している。また、
図5の(A)〜(C)と
図6の(A)〜(C)とが対応している。なお、このグラフは各変化を説明するために模式的に示したものであり、正確に測定されたグラフではない。
【0067】
図6と
図5(A)及び
図5(B)に示すように、ヒータ層150が発熱すると、空気層108によって熱伝導が遮断されているので(断熱されているので)、ヒータ層150は熱を奪われないで、伝熱隔壁104に当接するまでは高速膨張する。
【0068】
図6及び
図5(B)に示すように、当接後はヒータ層150及び伝熱隔壁104が共に熱膨張するが、ヒータ層150の線膨張係数K1は、伝熱隔壁104の線膨張係数K2よりも大きくなるように材料が選定されている。よって、ヒータ層150の方がより大きく膨張し、加熱時(予め定められた温度C2以上)ではヒータ層150が伝熱隔壁104に当接した状態が維持されると共に、ヒータ層150の熱膨張によって均一に面接接触する(接触面の圧力分布が均一化する)。そして、ヒータ層150から伝熱隔壁104を介して蓄熱層150に伝熱され、蓄熱層110(化学蓄熱材112)が加熱される。
【0069】
ここで、脱水反応初期は、化学蓄熱材112が膨張状態であるので(
図4(A)を参照)、伝熱隔壁104に大きな応力(矢印F2)が発生する。よって、伝熱隔壁104は、両側から圧力を受けるので、接触抵抗熱が低減される。よって、反応初期の速い脱水速度が要求される領域(
図6の領域K)において、伝熱律速が向上する(改善される)。
【0070】
つまり、伝熱隔壁104はヒータ層150の面接触と蓄熱層150からの圧力(化学蓄熱材112の膨張圧力)との相互作用によって、伝熱隔壁104とヒータ層150とが接触面の圧力分布が均一化すると共に、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。したがって、脱水速度が速い領域における伝熱律速が向上する。
【0071】
図6及び
図5(C)に示すように、更に、脱水反応が進むと化学蓄熱材112が収縮するので(
図4(B)を参照)、伝熱隔壁104の応力(矢印F3)が下がる。しかし、脱水速度はゆっくりでよいので、好適とされる。
【0072】
また、ヒータ層150が伝熱隔壁104に均一に面接触するので、ヒータ層150の温度分布が均一化される。よってヒータ層150に過昇温部が発生することによるヒータ層150の劣化が防止される。
【0073】
ここで、脱水反応で伝熱隔壁104に面接触した状態のヒータ層150は、脱水反応が終了すると収縮する。このとき、仮にヒータ層150が伝熱隔壁104から離間しないと空気層108(
図2、
図5(A)参照)が形成されないことになる。よって、本実施形態では、伝熱隔壁104のヒータ層150側の壁面104Aには、ヒータ層150の離型性を高めたメッキ層105(
図5(B))が形成されている。したがって、ヒータ層150が伝熱隔壁104から確実に離間し、空気層108が確実に形成される。よって、空気層108による熱伝導遮断効果(断熱効果)が確実に発揮されて顕熱ロスが軽減される。
【0074】
<第二実施形態>
つぎに、本発明の実施形態に係る第一実施形態の化学蓄熱用反応器について、
図7を用いて説明する。なお、第一実施形態と個同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0075】
化学蓄熱用反応器200は、反応容器102の中に、ヒータ層150と蓄熱層110と蒸気拡散層120とが、層状に設けられた構成とされている。そして、蒸気拡散層120が伝熱隔壁104と蓄熱層150との間に配置されている。蒸気拡散層120には、金属製の波型の構造体(フィン)122が設けられ、これによって、水蒸気の流路が確保されている。また、構造体122の波型の凹凸方向は壁厚方向Sとされているので、構造体122は壁厚方向Sに弾性変形する。
【0076】
なお、蒸気拡散層120の配置位置以外の構成は、第一実施形態と同様の構成である。
【0077】
[作用及び効果]
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0078】
脱水反応時において、ヒータ層150から伝熱隔壁104に伝熱された熱は、蒸気拡散層120の金属製の波型の構造体(フィン)122を介して蓄熱層150に伝熱される。
【0079】
図8(A)及び
図8(B)に示すように、蓄熱層110と伝熱隔壁104との間の蒸気拡散層120に設けられた構造体122が、脱水反応時の蓄熱層110の熱膨張に対して壁厚方向Sに弾性変形することで、ヒータ層150と伝熱隔壁104との接触面の圧力分布が均一化する。よって、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。
【0080】
ここで、
図8(C)に示す比較例のように、蓄熱層110の膨張力が大きい場合、伝熱隔壁104は両端が固定されているので中央部が膨らみ凸状に変形する。よって、膨張したヒータ層150と接触面の圧力分布に不均一が生じることがある。このように接触面の圧力分布が不均一となると、伝熱効率が低下する怖れがある。また、ヒータ層150に曲げ応力が発生したり接触面の圧力分布に応じて過昇温部が発生したりする等によって、ヒータ層150の耐久性が低下する怖れがある。
【0081】
しかし、本実施形態では、上述したように蒸気拡散層120が伝熱隔壁104と蓄熱層110との間に配置されているので、蒸気拡散層120を構成する構造体122が弾性変形することで、伝熱隔壁104の凸状変形を抑制し、伝熱隔壁104とヒータ層150とが均一に面接触する。よって、上述した比較例で説明した接触面の圧力分布に不均一が生じることよる伝熱効率の低下やヒータ層150の耐久性の低下が防止される。
【0082】
<第三実施形態>
つぎに、本発明の実施形態に係る第三実施形態の化学蓄熱用反応器について、
図9と
図10を用いて説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0083】
化学蓄熱用反応器300は、反応容器103の中にヒータ層150と蓄熱層110と蒸気拡散層120と媒体流路層320とが、層状に設けられた構成とされている。
【0084】
反応容器103は、伝熱隔壁104の壁厚方向の両外側にそれぞれ対向して伝熱隔壁107が設けられている。これら伝熱隔壁104と伝熱隔壁107との間の空間(スリット)109が形成され、この中に金属製の波型の構造体(フィン)322が設けられている。また、構造体322の波型の凹凸方向は壁厚方向Sとされているので、構造体322は壁厚方向Sに弾性変形する。
【0085】
媒体流路層320は、蓄熱層150との間で熱交換可能な被加熱媒体324が充填されている。被加熱媒体324としては水等の液体や空気等の気体など、蓄熱層150との間で熱交換可能な流体とされている。また、図示されてない外部流路等を介して、被加熱媒体324が媒体流路層320に流入・流出するように構成されている。
【0086】
媒体流路層320の有無以外の構成は、第一実施形態と同様の構成である。
【0087】
[作用及び効果]
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0088】
水和反応時においては、蓄熱層110から伝熱隔壁107を介して媒体流路層320に流通する被加熱媒体324と熱交換させることで、蓄熱層110の温度制御を行い、速い反応速度を維持するこができる。また、被加熱媒体324を外部の暖気対象物に輸送されることで、暖気対象物を加熱・昇温することができる。つまり、蓄熱層110が放熱した熱を輸送することができる。
【0089】
また、脱水反応が完了後に、媒体流路層320に被加熱媒体324を流入させ、蓄熱層110、ヒータ層150、及び蒸気拡散層120の顕熱を熱交換によって回収することで、外部の暖気対象物に熱を輸送することも可能である。
【0090】
なお、脱水反応時においては、ヒータ層150から伝熱隔壁104に伝熱された熱は、媒体流路層320の構造体322を介して伝熱隔壁107に伝達され、伝熱隔壁107から蓄熱層150に伝熱される。
【0091】
また、
図10に示すように、脱水反応時の蓄熱層110の熱膨張によって、両端が固定された伝熱隔壁107は中央部が膨らみ凸状に変形する場合がある。しかし、伝熱隔壁107と伝熱隔壁104との間の媒体流路層320に設けられた構造体322が、壁厚方向Sに弾性変形することで、ヒータ層150と伝熱隔壁104との接触面の圧力分布が均一化する。よって、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。
【0092】
<第四実施形態>
つぎに、本発明の実施形態に係る第四実施形態の化学蓄熱用反応器について、
図11と
図12とを用いて説明する。なお、第一実施形態〜第三実施形態との同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0093】
図12に示すように、化学蓄熱用反応器400は、反応容器102の中にヒータ層450と蓄熱層110と蒸気拡散層120とが、層状に設けられた構成とされている。
【0094】
図11に示すように、ヒータ層450には、壁厚方向Sに貫通する複数の円形の貫通孔452が形成されている。言い換えると、複数の貫通孔452が形成された打ち抜き状とされている。そして、各貫通孔452に、それぞれ補強部材460が挿入されている。
【0095】
補強部材460は、セラミック製とされ中空の円筒形とされている。このように、補強部材460は、ヒータ層450よりも、低熱伝導且つ低熱容量(中空部分を含む熱容量)の材質及び形状とされている。
【0096】
図12(A)に示すように、補強部材460の壁厚方向(軸方向)Sの長さは、非加熱時(予め定められた温度C1度以下)におけるヒータ層450の壁厚方向Sの厚みよりも長くなるように設定されている。そして、対向する伝熱隔壁104間を壁厚方向Sに支持するように設定されている。
【0097】
また、
図12(B)に示すように、脱水反応時において、ヒータ層450が加熱され熱膨張すると、ヒータ層450が伝熱隔壁104に当接するように設定されている。
【0098】
ヒータ層450以外の構成は、第一実施形態と同様の構成である。
【0099】
[作用及び効果]
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0100】
図12(B)に示すように、脱水反応時の蓄熱層110の熱膨張に対してヒータ層150と共に伝熱隔壁104を補強部材460が支持するので、ヒータ層150にかかる応力が低減する。これによりヒータ層150と伝熱隔壁104との接触面の圧力分布が均一化する。よって、接触熱抵抗が低減し、熱伝達促進機能が向上する。
【0101】
また、伝熱隔壁104が凸状に変形して接触面の圧力分布が不均一化することによるヒータ層150への曲げ応力の発生や接触面の圧力分布の不均一化によるヒータ層150の過昇温部の発生が抑制され、その結果、ヒータ層150の耐久性能が向上する。
【0102】
水和反応時における蓄熱層150の熱膨張に伴う伝熱隔壁104の膨張や変形を、補強部材460が伝熱隔壁104を支えることで抑制又は防止され、この結果、伝熱隔壁104とヒータ層150との部分的な接触が防止され、空気層108が確実に確保される。よって、空気層108による伝熱遮断機能(断熱機能)が効果的に発揮される。つまり、水和反応時におけるヒータ層150と蓄熱層110との間の熱伝導遮断性能が向上する。したがって、蓄熱層110からヒータ層150への伝熱が抑制され、顕熱ロスが低減される。
【0103】
また、補強部材460は、セラミック製とされ且つ中空の円筒形とされることで、ヒータ層150よりも、低熱伝導部材且つ低熱熱容量となっている。よって、水和反応時における蓄熱層150から補強部材460への伝熱及びヒータ層150への伝熱が抑制され、その結果、顕熱ロスが軽減される。
【0104】
なお、本実施形態では、補強部材460は、セラミック製とされ且つ中空の円筒形とされることで、ヒータ層150よりも、低熱伝導部材且つ低熱熱容量(中空部分を含む熱容量)となっている。しかし、セラミック製及び中空の円筒形以外の材料及び形状であってもよい。
【0105】
<その他>
尚、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0106】
例えば、上記実施形態では、蒸気拡散層120及び媒体流路層320に設けられた構造体122、322は、金属製の波型形状であったがこれに限定されない。蒸気や被加熱媒体324(空気や水等の流体)が流通可能とされると共に壁厚方向Sに弾性変形する材質や形状であればよい。例えば、板形状の金属材料からなる弾性変形可能な多孔質体であってもよい。
【0107】
また、例えば、第三実施形態の媒体流路層320は、ヒータ層150と蓄熱層110との間に設けられていたが、これに限定されない。他の場所に設けられていてもよい。
【0108】
また、上記複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。例えば、第三実施形態の媒体流路層320を、第一実施形態の化学蓄熱用反応器、第二実施形態の化学蓄熱用反応器、及び第四実施形態の化学蓄熱用反応器に設けてもよい。
【0109】
或いは、第四実施形態のヒータ層450を、第一実施形態の化学蓄熱用反応器、第二実施形態の化学蓄熱用反応器、及び第三実施形態の化学蓄熱用反応器に用いてもよい。
【0110】
また、第一実施形態の伝熱隔壁104の壁面104Aに形成した離型性能を高めたメッキ層105を、第二実施形態〜第三実施形態の化学蓄熱用反応器に用いてもよい。更に、メッキ加工(メッキ層105)以外の方法で離型性能を高めてもよい。例えば、壁面104Aに研磨加工を施して離型性能を高めてもよい。
【0111】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。