(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687196
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】自動車のバッテリ支持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/04 20060101AFI20150226BHJP
【FI】
B60R16/04 C
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-521619(P2011-521619)
(86)(22)【出願日】2009年8月4日
(65)【公表番号】特表2011-530441(P2011-530441A)
(43)【公表日】2011年12月22日
(86)【国際出願番号】FR2009051549
(87)【国際公開番号】WO2010015777
(87)【国際公開日】20100211
【審査請求日】2012年7月17日
(31)【優先権主張番号】0855490
(32)【優先日】2008年8月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】バニエ, ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ベドック, ダヴィッド
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭48−029509(JP,U)
【文献】
特開平09−118139(JP,A)
【文献】
特開平11−180164(JP,A)
【文献】
特開平08−067151(JP,A)
【文献】
特開平07−052659(JP,A)
【文献】
特開2001−193714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のバッテリ支持構造であって、前記自動車のボディーシェル構造(4)に取り付けて固定されるように構成されるとともに、バッテリ(2)を支持するように構成され、
バッテリ(2)を完全に取り囲むように構成される略平板状のフレーム(10)を有し、
前記フレーム(10)が中央に前記バッテリ(2)を嵌め込むための開口部を有し、前記バッテリは前記フレームの上端部より上方に突出しかつその下端部より下方に突出して垂直方向に延在し、
前記フレーム(10)に前記バッテリ(2)をロックするとともに前記フレーム(10)から前記バッテリ(2)をロック解除することができるように、第1バッテリロック手段(13)が前記フレーム(10)上に設けられていて、
前記フレーム(10)が略水平な中空の本体の形状を有し、前記フレーム(10)が横方向部材(12)を有し、前記横方向部材(12)がケーブルを挿通するためにシールリングを位置決めするための波形状を有する、バッテリ支持構造。
【請求項2】
自動車のバッテリ支持構造であって、前記自動車のボディーシェル構造(4)に取り付けて固定されるように構成されるとともに、バッテリ(2)を支持するように構成され、
バッテリ(2)を完全に取り囲むように構成される略平板状のフレーム(10)を有し、
前記フレーム(10)が中央に前記バッテリ(2)を嵌め込むための開口部を有し、前記バッテリは前記フレームの上端部より上方に突出しかつその下端部より下方に突出して垂直方向に延在し、
前記フレーム(10)に前記バッテリ(2)をロックするとともに前記フレーム(10)から前記バッテリ(2)をロック解除することができるように、第1バッテリロック手段(13)が前記フレーム(10)上に設けられていて、
ガイドピン(35)が、前記フレーム(10)の一方の面に設けられており、かつ前記自動車の前記ボディーシェル構造(4)上の構造物に挿入できる、バッテリ支持構造。
【請求項3】
自動車のバッテリ支持構造であって、前記自動車のボディーシェル構造(4)に取り付けて固定されるように構成されるとともに、バッテリ(2)を支持するように構成され、
バッテリ(2)を完全に取り囲むように構成される略平板状のフレーム(10)を有し、
前記フレーム(10)が中央に前記バッテリ(2)を嵌め込むための開口部を有し、前記バッテリは前記フレームの上端部より上方に突出しかつその下端部より下方に突出して垂直方向に延在し、
前記フレーム(10)に前記バッテリ(2)をロックするとともに前記フレーム(10)から前記バッテリ(2)をロック解除することができるように、第1バッテリロック手段(13)が前記フレーム(10)上に設けられていて、
位置決め孔が前記フレーム(10)の一方の面に形成されており、この位置決め孔に前記バッテリ(2)上に設けられる位置決めピン(33)を挿入することができる、バッテリ支持構造。
【請求項4】
前記フレーム(10)が、第1横方向部材(11)により形成される略矩形のリア側部分と、前記第1横方向部材(11)に略直交する2つの側方部材(14、16)とを有することと、前記フレーム(10)が更に、前記リア側部分の略同一平面内における延出部であり、前記第1横方向部材(11)に略平行な第2横方向部材(12)を有するフロント側部分を有し、この第2横方向部材(12)が前記第1横方向部材(11)よりも短くて、前記フレーム(10)の前記リア側部分の前記側方部材(14、16)に斜め部材(18、19)を介して接続されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のバッテリ支持構造。
【請求項5】
自動車のバッテリ支持機構であって、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の支持構造により支持されるバッテリ(2)を備えており、前記バッテリ(2)が前記フレームの上方及び下方の両方に垂直に延出するように、第2ロック手段(23)が、前記バッテリ(2)に固定されて、かつ前記フレーム(10)に設けられた前記第1ロック手段(13)に係合できる、バッテリ支持機構。
【請求項6】
前記バッテリ(2)がフェアリング(22)によって取り囲まれて支持され、前記第2ロック手段(23)がこのフェアリング(22)上に形成される、請求項5に記載の支持機構。
【請求項7】
前記フェアリング(22)が、前記バッテリ(2)を収納するために適した比熱特性を有する、請求項5又は6に記載の支持機構。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の支持構造により支持されるバッテリ(2)を備えた自動車であって、前記支持構造の前記フレーム(10)の形状及び寸法が、このフレーム(10)を、前記自動車のサイドメンバー(44、46)の下と、前記サイドメンバーに略直交する前記自動車の構造部材を構成するクロスメンバー(41、42)の下の両方に、略水平に固定するために適している、自動車。
【請求項9】
前記フレーム(10)が前記ボディーシェル構造(4)に固定されており、第1シール手段(61)が前記ボディーシェル(4)と前記フレーム(10)との間に配置され、バッテリ(2)が、前記フレーム(10)に固定されてロックされ、第2シール手段(62)が前記バッテリ(2)と前記フレーム(10)との間に配置される、請求項8に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバッテリ支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリを電動車両内に固定する手段は公知であり、特に特許文献1に記載されている。これらのバッテリ、すなわち「積層体」アセンブリは、車両のサイドメンバーに中間固定手段を介して固定されたケーシングの形態を有する。
【0003】
従来、これらのバッテリは、衝撃時のあらゆる構造変形からバッテリを保護するためのフロントエンドから離間して、車両のフロントユニット内部に配置されている。これらのバッテリはまた、車両の下に配置することができるので、前部又は後部の衝撃から保護される。車両の縦方向端部の一方の近くにバッテリを配置する必要がある場合、及び例えばバッテリを車両のリア側に配置する場合、車両への衝撃によってこのバッテリが損傷し、その結果ユーザに危険が及ぶことが起こり得ないように、このバッテリの支持構造を深く考慮することが推奨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/049127号
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的の1つは、車両が受ける衝撃からバッテリを保護する自動車のバッテリ支持構造を提供することである。別の目的は、搭載バッテリを迅速かつ容易にハンドリングすることが可能な支持構造、特に単一の支持構造に取り付けられたバッテリを取り替えることができる支持構造を提供することである。したがって、本バッテリ支持構造は、車両に対するバッテリのロック、接続、及びシールのような、この取り替え可能性を実現する機能を有するように設計される。
【0006】
種々の自動車製造業者が常に掲げているこれらの目的に応えるために、本発明はまた、低コストでスペースをほとんど取らないように考案されている。
【0007】
これらの目的を達成するために、本発明は自動車のバッテリ支持構造を提供するものであり、本バッテリ支持構造は、第1に、この自動車のボディーシェル構造に取り付けて固定することができ、第2に、バッテリを支持することができる。本バッテリ支持構造は、バッテリを取り囲むことができるフレームの形状を有し、このフレームが中央にバッテリを嵌め込むのに適した開口部を有することを特徴とし、且つ第1バッテリロック手段がフレームに取り付けられていることにより、このフレームにバッテリをロックすること、及びこのフレームからバッテリをロック解除することが可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明は、請求項により更に正確に定義される。
【0009】
本発明の別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を一読して、添付の図面のうちのいずれの図面を参照すればよいのかを理解することにより明らかになるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明によるバッテリ支持構造が設けられた車両のリアアンダーフレームの下面図である。
【
図2】
図2は、
図1のバッテリ支持構造、及び搭載バッテリの図である。
【
図2a】
図2aは、
図2の拡大図であり、本発明による支持構造におけるバッテリの位置決め手段を詳細に示している。
【
図3】
図3は、本発明によるバッテリ及び支持構造により車両内に形成されるアセンブリを車両の下から見たときの図である。
【
図4】
図4は、本発明によるバッテリ支持構造を構成するフレームの上面図である。
【
図5】
図5は、
図1のバッテリ支持構造、及び搭載バッテリの側面図である。
【
図6】
図6は、本発明によるバッテリに固定されるフェアリングの上面図である。
【
図7】
図7は、車両のアンダーフレームの下面図であり、車両のボディーシェルに対する支持構造の接触連結部を更に詳細に示す複数の断面の位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これらの図に示すように、バッテリ支持構造は、車両のボディーシェル構造4に取り付けられて固定されており、且つフレーム10の形状を有する。このフレーム10の形状及び寸法は、第1に、このフレーム10をサイドメンバー44、46に固定し、第2にこれらのサイドメンバーに略直交する車両の構造部材を構成するクロスメンバー41、42に固定するために適している。このように、概して、フレーム10は、左側メンバーと右側メンバーとの間に、バッテリが搭載されている位置に応じて、それぞれ車両のフロントユニット又はリアユニット内の、前部又は後部に、略水平に横断して延在する。
【0012】
車両リアユニット内の本発明によるバッテリ2及び支持構造の設置に関連する
図1の実施例によれば、この支持構造を構成するフレーム10は、左側後部サイドメンバー44及び右側後部サイドメンバー46の下、特定の後部クロスメンバー41の下、及びメインアンダーフレームクロスメンバー42の下に取り付けられてネジ締めされる。このような設置は、具体的には、ボディーシェルと車輪支持部との間に配置されるリアアクスルアセンブリクロスメンバー5及び衝撃吸収材7に示される、リアアクスルアセンブリのアーキテクチャを考慮に入れて行なわれる。
【0013】
フレーム10の中央には、バッテリ2をはめ込むための開口部が設けられており、このバッテリをフレーム10に挿入し、フレーム10に対して、即ちボディーシェル構造4に対して、所定の位置にロックすることができる。
図3によれば、これらの部品の積層は次のように、すなわち上部から下部に向かって、車両のボディーシェル構造4、このボディーシェル構造4に固定されて、ボディーシェル4とフレーム10との間に配置される第1シール手段61を有するフレーム10、最後に、フレーム10の下にロックされるバッテリ2という純に行われ、第2シール手段62が、バッテリ2とフレーム10との間に配置される。
【0014】
第1ロック手段13は、フレーム10に設けられており、バッテリ2に固定される第2ロック手段23と補完的な形状を有する。これらの第1及び第2ロック手段が係合することにより、バッテリが作業者の望む位置にある場合に、バッテリ2が支持フレーム10に対して固定される。
【0015】
図示のように、これらの第1ロック手段13は、バッテリの外周面の周りに分布して第2ロック手段23を構成するロック突起部又はストライカー突起部に引っ掛けるように構成されたフック又はラッチの形状を有することができる。バッテリ2は、
図6に例示として示すフェアリング22によって取り囲み、かつフェアリング22によって支持することができ、このフェアリング22には、特に前述の第2ロック手段23を形成することができる。このフェアリング22は、アルミニウムにより形成することができ、バッテリ2を収納するために特定の熱特性を有することができる。
【0016】
バッテリ2と支持フレーム10との組み立ての正確さは、フレームに組み込まれたガイド及びリングを基準にして位置決め手段によりバッテリを位置決めすることにより達成される。この位置決め手段は、
図2aに示すように位置決めピン33の形状であり、これらの位置決めピン33は、バッテリに一体的に組み込まれ、フレーム10の下面に形成された孔に案内される。これらの位置決めピン33は、衝撃時の縦方向及び横方向の並進移動も停止させる。
【0017】
支持フレーム10とボディーシェル構造4との組み立ての正確さは、フレーム10の上面に配置されて、ボディーシェル構造の構造物に挿入可能なガイドピン35により達成される。
【0018】
これらの位置決めピン及びガイドピンは、第1にボディーシェル構造4に対するフレーム10の、第2にフレーム10に対するバッテリ2の、衝撃時における縦方向及び横方向の並進移動を停止させることにより、耐衝撃機能も実現する。
【0019】
フレーム10上でのロック手段13、23の位置、及び位置決め手段33の位置は、最適な方法でフレーム10に対してバッテリ2を保持するように計算される。4つのロック手段をフレーム10の外周面の周りに配置することは、バッテリ及び関連するフェアリング22が強固に保持されることを意味する。しかしながら、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、このようなロック手段の数及び位置を変更することができる。いずれの場合も、ロック手段は、特に衝撃時の急激な減速の影響下におけるバッテリ2の支持フレーム10に対する移動により力が生成される間に、引っ張り強度を保持するように設計される。
【0020】
バッテリ2は、フレーム10に対して、このバッテリがフレーム10によって完全に取り囲まれ、フレーム10の上方及び下方の両方に垂直方向に延在するように配置される。車両のアーキテクチャは、図中、バッテリ2がこのフレーム10よりも十分下方に位置し、かつこのフレーム10が、
図5に示すように、衝撃を制御する間に、フレーム10に対して、及び関連車両のボディーシェルに対して、バッテリを揺らすのに十分な高さであることを指定している。
【0021】
フレーム10は、音響性能及び耐久性のための励振モードに関して寸法が決定された中空の本体により形成されており、この中空の本体は、鋳造により一体部材として、又は例えばアルミニウム又はスチールの引抜加工により複数部材として、製造することができる。
【0022】
図4に具体的に示すように、フレーム10は、略矩形のリア側部分を有し、このリア側部分は、車両構造の後部クロスメンバー41の下に配置することができる第1横方向部材11と、第1横方向部材11に略直交し、かつ車両のサイドメンバー44、46の下に配置することができる2つの側方部材14、16とにより形成されている。フレーム10は更に、リア側部分を略同一平面で延出させたフロント側部分を有し、前記フロント側部分は、第1横方向部材11に略平行な短い基部を構成する第2横方向部材12を有する台形の形状を有しており、この第2横方向部材12は、車両構造の中央クロスメンバー42の下に配置することができる。この第2横方向部材12は、フレーム10のリア側部分の側方部材14、16に、斜め部材18、19を介して取り付けられており、これらの斜め部材は衝撃吸収クレビスの下に配置することができる。
【0023】
フレーム10は、第2横方向部材が波形状を有することを除き、略平板状の水平中空の本体の形状を有する。この構成は、シールリングを位置決めして高引張強度ケーブル及び低引張強度ケーブルをアンダーフレームから車両のシール領域に挿通するためにつくられている。しかしながら、フレームは全体的に略平板状である。更に、フレームは、バッテリの一部がフレームの上方及び下方に突出するように、又は
図5に示すように、衝撃時にこのように突出することができるように、バッテリを完全に取り囲み、かつバッテリの側壁の外周面全体を囲んでいる。したがって、バッテリ及びフレームそれぞれのロック手段は、バッテリの中間高さに位置する。
【0024】
フレーム10を設けることにより、このフレーム10にバッテリの付属部品を取り付けること、特にフレーム10に取り付けられる保護用ベルハウジングに取り付けることを想到することができる。この保護用ベルハウジングによって、防音機能及び防塵機能を管理することができ、更に、バッテリにより発生する磁界を遮断することができる。したがって、保護用ベルハウジングは、フレーム10に溶接されてフレーム10の上方に延出するとともに、バッテリ2を、フレームの下方からフレーム10を貫通するよう取り付けることも可能にする。
【0025】
このように、本発明によるバッテリ支持構造は、バッテリの取り替えを自動的に行ないながら、バッテリを保護し、更には、ボディーシェルの構造全体を強固にするという複合的な利点を有する。バッテリの取り替えは、ボディーシェルに固定されたフレームにこのバッテリを位置決めしてバッテリ交換中の車両を参照することにより、自動的に行なうことができる。