特許第5687199号(P5687199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687199
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/85 20060101AFI20150226BHJP
   B28B 11/02 20060101ALI20150226BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20150226BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   C04B41/85 C
   B28B11/02
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-532943(P2011-532943)
(86)(22)【出願日】2010年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2010064149
(87)【国際公開番号】WO2011036971
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2013年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2009-218875(P2009-218875)
(32)【優先日】2009年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】布目 卓也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 修平
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−272072(JP,A)
【文献】 特開2006−231162(JP,A)
【文献】 特開2009−040046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/85
B01D 39/20
B01D 46/00
B28B 11/02
B01J 35/04
F01N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備え、流体の入口側の端面における所定のセルの開口部と、流体の出口側の端面における残余のセルの開口部に目封止部を有し、
複数の前記目封止部に気泡を有し、前記気泡の中心が、前記目封止部の中心軸方向における一定の範囲に位置し、前記一定の範囲が、前記目封止部の、前記端面側の端部から前記目封止部の深さの1/3の位置から、前記目封止部の、前記端面側の端部から前記目封止部の深さの1/2の位置までの範囲であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記気泡の平均径が0.5〜1.6mmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記気泡が、各前記目封止部毎に、1つ又は2つ形成された請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
全ての前記目封止部に対して70%以上の目封止部が、気泡を有する請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記目封止部の深さが3〜12mmである請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記所定のセルと前記残余のセルとが交互に並ぶ請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記目封止部の中心軸方向に直交する断面において、前記目封止部の中央領域に前記気泡が形成されている請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記隔壁及び前記目封止部の材質が、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものである請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項9】
請求項1に記載のハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備えるハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、前記シートにおける、目封止部を形成しようとするセルと重なる位置に孔を開けるマスキング工程と、
前記ハニカム成形体の前記シートが貼り付けられた側の端部を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、前記ハニカム成形体の前記一方の端面から、前記シートに形成された孔を通じて、目封止材料を前記セル内に圧入する第1圧入工程と、
前記ハニカム成形体に充填された目封止材料の、前記ハニカム成形体の前記端面側の端部を凹ませて凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部が形成された目封止材料が充填された前記セル内に、前記凹部が形成された目封止材料の上から目封止材料を更に圧入する第2圧入工程とを有するハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第2圧入工程が、加圧面を有する加圧部材を、前記加圧面が前記ハニカム成形体の端面と鋭角を形成した状態で、前記シートの表面に沿って移動させて、前記加圧面によって、前記シートと前記加圧面との間に供給された目封止材料を、前記シートに形成された孔を通じて、前記凹部が形成された目封止材料が充填されたセル内に、前記凹部が形成された目封止材料の上から圧入する工程である請求項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
目封止材料が貯留される目封止用容器と、前記目封止材料が貯留された前記目封止用容器内に、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備えるハニカム成形体の端部を圧入して、ハニカム成形体の端面からセル内に目封止材料を充填する圧入手段と、を備える第1圧入装置と、
加圧面を有する加圧部材を備え、前記加圧部材によって、前記ハニカム成形体の前記セル内に充填された前記目封止材料の上から、前記セル内に更に目封止材料を圧入する第2圧入装置と、
前記ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させる乾燥装置とを備えるハニカム構造体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、温度変化に起因する変形、割れ等を抑制することができるハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、ボイラー等の排気ガス中の微粒子や有害物質は、環境への影響を考慮して排気ガス中から除去する必要性が高まっている。特に、ディーゼルエンジンから排出される微粒子(以下、「PM」ということがある。)の除去に関する規制は、欧米、日本国内において強化される方向にある。そして、このようなPMを除去するための捕集フィルタとしてハニカム構造体が用いられている。
【0003】
このような目的で使用されるフィルタとしては、目封止ハニカム構造体を利用したハニカムフィルタを挙げることができる(例えば、特許文献1,2を参照)。ここで、目封止ハニカム構造体とは、流体(排ガス、浄化ガス)の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備え、流体(排ガス)の入口側の端面における所定のセルの開口部と、流体(浄化ガス)の出口側の端面における残余のセルの開口部に目封止部を有するものである。このようなハニカムフィルタによれば、排ガスの入口側の端面からセル内に排ガスが流入し、セル内に流入した排ガスが隔壁を通過し、隔壁を通過した排ガス(浄化ガス)が排ガスの出口側の端面から排出される。そして、排ガスが隔壁を通過するときに、排ガス中に含有されるPMが隔壁により捕集され、排ガスが浄化ガスとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−40046号公報
【特許文献2】特開2006−231162号公報
【発明の概要】
【0005】
従来のハニカムフィルタにおいては、目封止部毎に、大きさの異なる気泡が形成されることがあった。また、目封止部毎に、目封止部内の異なる位置に気泡が形成されることがあった。このように、目封止部毎に、大きさの異なる気泡が形成されたり、目封止部内の異なる位置に気泡が形成されたりすると、目封止部毎に熱容量、熱膨張(率)、ヤング率等が異なってくるため、温度変化等が生じた時に、応力が集中する部分が生じ、変形や割れが発生するという問題があった。特に、隔壁が交差する部分に応力が集中し、割れ、クラック等が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、温度変化に起因する割れ、変形等を抑制することができるハニカム構造体及びその製造方法を提供することを特徴とする。
【0007】
本発明によって以下のハニカム構造体及びその製造方法が提供される。
【0008】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備え、流体の入口側の端面における所定のセルの開口部と、流体の出口側の端面における残余のセルの開口部に目封止部を有し、複数の前記目封止部に気泡を有し、前記気泡の中心が、前記目封止部の中心軸方向における一定の範囲に位置し、前記一定の範囲が、前記目封止部の、前記端面側の端部から前記目封止部の深さの1/3の位置から、前記目封止部の、前記端面側の端部から前記目封止部の深さの1/2の位置までの範囲であるハニカム構造体。
【0009】
[2] 前記気泡の平均径が0.5〜1.6mmである[1]に記載のハニカム構造体。
【0010】
[3] 前記気泡が、各前記目封止部毎に、1つ又は2つ形成された[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0012】
] 全ての前記目封止部に対して70%以上の目封止部が、気泡を有する[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0013】
] 前記目封止部の深さが3〜12mmである[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0014】
] 前記所定のセルと前記残余のセルとが交互に並ぶ[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
] 前記目封止部の中心軸方向に直交する断面において、前記目封止部の中央領域に前記気泡が形成されている[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
] 前記隔壁及び前記目封止部の材質が、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものである[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0017】
[1]に記載のハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備えるハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、前記シートにおける、目封止部を形成しようとするセルと重なる位置に孔を開けるマスキング工程と、前記ハニカム成形体の前記シートが貼り付けられた側の端部を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、前記ハニカム成形体の前記一方の端面から、前記シートに形成された孔を通じて、目封止材料を前記セル内に圧入する第1圧入工程と、前記ハニカム成形体に充填された目封止材料の、前記ハニカム成形体の前記端面側の端部を凹ませて凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部が形成された目封止材料が充填された前記セル内に、前記凹部が形成された目封止材料の上から目封止材料を更に圧入する第2圧入工程とを有するハニカム構造体の製造方法。
【0018】
10] 前記第2圧入工程が、加圧面を有する加圧部材を、前記加圧面が前記ハニカム成形体の端面と鋭角を形成した状態で、前記シートの表面に沿って移動させて、前記加圧面によって、前記シートと前記加圧面との間に供給された目封止材料を、前記シートに形成された孔を通じて、前記凹部が形成された目封止材料が充填されたセル内に、前記凹部が形成された目封止材料の上から圧入する工程である[]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0019】
11] 目封止材料が貯留される目封止用容器と、前記目封止材料が貯留された前記目封止用容器内に、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備えるハニカム成形体の端部を圧入して、ハニカム成形体の端面からセル内に目封止材料を充填する圧入手段と、を備える第1圧入装置と、加圧面を有する加圧部材を備え、前記加圧部材によって、前記ハニカム成形体の前記セル内に充填された前記目封止材料の上から、前記セル内に更に目封止材料を圧入する第2圧入装置と、前記ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させる乾燥装置とを備えるハニカム構造体の製造装置。
【0020】
本発明のハニカム構造体によれば、複数の目封止部に気泡が形成され、気泡の中心が、目封止部の中心軸方向における一定の範囲に位置しているため、目封止部毎の熱容量、熱膨張(率)、ヤング率等のバラツキを少なくすることができ、温度変化等が生じた時に、応力が集中する部分が生じるのを抑制することができ、温度変化等が生じた時の割れ、変形等の発生を抑制することができる。
【0021】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、ハニカム成形体のセル内に目封止材料を充填した後に、当該目封止材料の端面側の端部に凹部を形成し、その後に、更に、凹部が形成された目封止材料の上から新たに目封止材料を充填するため、複数の目封止部に気泡を形成し、気泡の中心が、目封止部の中心軸方向における一定の範囲に位置するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図1B】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す平面図である。
図1C図1BのA−A’断面を示す模式図である。
図2A】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図2B】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図2C】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図2D】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図2E】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図2F】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図2G】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図3】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
図4A】本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、第1圧入装置を模式的に示す側面図である。
図4B】本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、第1圧入装置を模式的に示す側面図である。
図5】本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、ハニカム成形体を反転させる装置(反転装置)を模式的に示す側面図である。
図6】本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、第2圧入装置を模式的に示す側面図である。
図7】本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、乾燥装置の断面を示す模式図である。
図8】本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0024】
(1)ハニカム構造体:
図1A図1Cに示すように、本発明のハニカム構造体の一実施形態は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁3と最外周に位置する外周壁4とを備え、流体の入口側の端面11における所定のセル2の開口部と、流体の出口側の端面12における残余のセル2の開口部に目封止部5を有し、複数の目封止部5に気泡が形成され、気泡6の中心が、目封止部5の中心軸方向における一定の範囲に位置するものである。ここで、「気泡6」とは、目封止部5内に形成された、直径0.3mm以上の空間を意味する。また、「気泡6の中心」とは、「目封止部5の、目封止部5の中心軸を含む平面で切断した断面」における気泡の幾何学的な中心を意味する。また、「目封止部5の中心軸」とは、ハニカム構造体のセル2の延びる方向、即ち目封止部5の深さ方向、に延びる軸を意味する。図1Aは、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図1Bは、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す平面図である。図1Cは、図1BのA−A’断面を示す模式図である。
【0025】
このように、本実施形態のハニカム構造体100は、複数の目封止部5に気泡が形成され、気泡6の中心が、目封止部5の中心軸方向における一定の範囲に位置するものであるため、目封止部毎の熱容量、熱膨張(率)、ヤング率等のバラツキを少なくすることができ、温度変化等が生じた時に、応力が集中する部分が生じるのを抑制することができ、温度変化等が生じた時の変形、破損等の発生を抑制することができる。特に、隔壁が交差する部分の破損等を抑制することができる。また、ハニカム構造体100の使用環境に応じて、気泡6の大きさ等を最適化することにより、上記温度変化等が生じた時の変形、破損等の発生を抑制する効果を、より大きくすることができる。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体においては、気泡6の平均径は、0.5〜1.6mmであることが好ましく、0.6〜1.2mmであることが更に好ましい。0.5mmより小さいと、目封止部5の熱容量を小さくし難くなることがある。1.6mmより大きいと、目封止部5の強度が低下することがある。気泡6の平均径は、「目封止部5の、目封止部5の中心軸を含む平面で切断した断面」における気泡の直径を、100個の目封止部5に形成された気泡6について平均した値である。一の目封止部5に複数の気泡6が形成されている場合も、全ての気泡6についての平均をとる。気泡6の直径は、光学顕微鏡で2倍に拡大した状態で測定した値とする。「目封止部5の、目封止部5の中心軸を含む平面で切断した断面、における気泡の直径」とは、当該断面における気泡の面積から算出した相当径である。「気泡の面積から算出した相当径」とは、当該断面における気泡の面積と、同じ面積の「円形」の直径を意味する。
【0027】
また、気泡6は、各目封止部毎に、1つ又は2つ形成されていることが好ましい。気泡6が3つ以上形成されていると、目封止部5の強度が低下することがある。
【0028】
目封止部5における、気泡6の中心が位置する「目封止部5の中心軸方向における一定の範囲」は、「目封止部5の、端面11(ハニカム構造体100の端面11)側の端部7から目封止部5の深さの1/3の位置」から、「目封止部5の、端面11(ハニカム構造体100の端面11)側の端部7から目封止部5の深さの1/2の位置」までの範囲であることが好ましい。「目封止部5の、端面11側の端部7から目封止部5の深さの1/3の位置」より、端部7に近い位置に気泡6が形成されると、目封止部5の端部7付近の強度が低下することがある。「目封止部5の、端面11側の端部7から目封止部5の深さの1/2の位置」より、端部7から遠い位置に気泡6が形成されると、目封止部5の、セル2の空間側を向く端部(ハニカム構造体100の内部方向を向く端部)付近の強度が低下することがある。ここで、「目封止部5の中心軸方向における一定の範囲」は、目封止部5の、「目封止部5の中心軸方向」における一定の範囲を意味する。また、上記のように、ハニカム構造体100の入口側の端面11側に形成されている目封止部5の場合は、目封止部5の中心軸方向における一定の範囲は、「目封止部5の、ハニカム構造体100の入口側の端面11側の、端部7」を基準にして定義されるが、出口側の端面12側に形成されている目封止部5の場合は、「目封止部5の、ハニカム構造体100の出口側の端面12側の、端部」を基準にして定義される。
【0029】
気泡6の中心の位置は、目封止部を、「目封止部の中心軸を含む平面」で切断し、断面における、目封止部の「ハニカム成形体の端面側」の端部から、気泡の中心までの距離(気泡深さ)を測定し、当該気泡深さの、目封止部の中心軸方向における深さに対する比の値とする。そして、100個の目封止部における気泡6の中心の位置が、「目封止部5の中心軸方向における一定の範囲」である場合に、「気泡6の中心が、目封止部5の中心軸方向における一定の範囲に位置する」ものとする。
【0030】
また、気泡6が、全ての目封止部5に対して70%以上の目封止部5に形成されたものであることが好ましく、90%以上の目封止部5に形成されたものであることが更に好ましく、全ての目封止部5に形成されたものであることが特に好ましい。70%未満であると、目封止部5の熱容量を上昇させ、温度変化による変形、破損等を防止する効果が低くなることがある。ここで、「全ての目封止部5に対して70%以上の目封止部5」は、目封止部5の個数が基準となっている。換言すれば、気泡6が、全ての目封止部5の個数に対して70%以上の個数の目封止部5に形成されたものであることが好ましい。また、全ての目封止部5とは観察するために露出された断面における目封止部全てを意味することは言うまでもない。
【0031】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、目封止部5の中心軸方向に直交する断面において、目封止部5の中央領域に気泡6が形成されていることが好ましい。「目封止部5の中央領域」とは、目封止部5の中心軸方向に直交する断面において、目封止部5と相似形の領域であって、面積が目封止部5の面積の50%であり、中心が目封止部5の重心(中心軸)と同じ位置である領域を意味する。
【0032】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁3の平均細孔径は、10〜40μmであることが好ましく、10〜30μmであることが更に好ましい。10μmより小さいと、粒子状物質の堆積が少ない場合でも圧力損失が増大することがあり、40μmより大きいとハニカム構造体100が脆くなり欠落し易くなることがある。隔壁3の平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁3の気孔率は、30〜70%であることが好ましく、35〜60%であることが更に好ましい。30%より小さいと、圧力損失が増大することがあり、70%より大きいとハニカム構造体100が脆くなり欠落し易くなることがある。隔壁3の気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁3の厚さは、200〜300μmであることが好ましく、250〜300μmであることが更に好ましい。200μmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがあり、300μmより厚いと、排ガスがセル内を通過するときの圧力損失が大きくなることがある。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体100においては、セルの延びる方向に直交する断面のセル密度は、300〜400セル/inch(46.5〜62.0セル/cm)であることが好ましい。300セル/inchより小さいと、ハニカム構造体100の強度が低下することがあり、400セル/inchより大きいと、圧力損失が高くなることがある。
【0036】
本実施形態のハニカム構造体100においては、セル形状は特に限定されないが、セルの延びる方向に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましく、その他不定形であってもよい。
【0037】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁3及び目封止部5の材質が、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものであることが好ましく、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが更に好ましく、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された1種であることが特に好ましい。また、目封止部5の材質は隔壁3の材質と同じであることが好ましい。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体100の外形は、特に限定されないが、円筒形、楕円筒形、「四角筒形等の底面多角形の筒形状」、底面不定形の筒形状等を挙げることができる。また、ハニカム構造体100の大きさは、特に限定されないが、ハニカム構造体の外径に対する、ハニカム構造体の軸方向における長さの割合(長さ/外径)が、0.1〜0.8となるように成形することが好ましく、0.1〜0.6となるように成形することが更に好ましい。また、ハニカム構造体100の形状が他の形状である場合、その底面の面積が、上記円筒形の場合の底面の面積と同じ範囲であることが好ましい。加えて、図1では全てのセルが正方形状で、かつ同サイズであるが、図8に示すハニカム構造体200のようにPMの捕集容量を上げるため、隣り合うセルの大きさを変更させた形状のハニカム構造体であっても良い。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体100は、流体の入口側の端面11における所定のセル2の開口部と、流体の出口側の端面12における残余のセルの開口部に目封止部5を有するものである。そして、上記所定のセルと上記残余のセルとが交互に配置され、入口側の端面11及び出口側の端面12において、目封止部と「セルの開口部」とにより市松模様が形成されていることが好ましい。
【0040】
目封止部5の深さは、3〜12mmであることが好ましく、5〜10mmであることが更に好ましい。3mmより浅いと、目封止部5の強度が低下することがある。12mmより深いと、隔壁3の、PMを捕集する面積が小さくなることがある。目封止部5の深さとは、目封止部5の、中心軸方向(セルの延びる方向)における長さを意味する。
【0041】
本実施形態のハニカム構造体100においては、最外周に位置する外周壁は、成形時にハニカム成形体と一体的に形成させる成形一体壁であってもよいし、成形後に、ハニカム成形体の外周を研削して所定形状とし、セメント等で外周壁を形成するセメントコート壁であってもよい。外周壁が一体成形壁の場合、外周壁の厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。外周壁がセメントコート壁の場合も同様である。また、外周壁がセメントコート壁の場合、セメントコート壁の材質としては、共素地にガラス等のフラックス成分を加えた材料等を挙げることができる。
【0042】
本実施形態のハニカム構造体100は、用途に合わせて、隔壁3の表面に、粒子状物質を燃焼除去するための触媒、排ガス中のNO等の有害物質を除去するための触媒等が担持されていてもよい。
【0043】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態について説明する。本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記本発明のハニカム構造体を製造する方法であり、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態によって、上記本発明のハニカム構造体の一実施形態を製造することができる。
【0044】
まず、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する外周壁とを備える筒状のハニカム成形体を成形する。
【0045】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものであることが好ましく、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが更に好ましく、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された1種であることが特に好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0046】
また、このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。
【0047】
セラミック成形原料を成形する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0048】
また、上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度80〜150℃、乾燥時間5分〜2時間とすることが好ましい。
【0049】
次に、得られたハニカム成形体を焼成することが好ましい。尚、焼成は、ハニカム成形体に目封止部を形成した後に行ってもよい。
【0050】
また、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0051】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、4〜6時間が好ましい。
【0052】
次に、ハニカム成形体の、流体の入口側の端面における所定のセル(第1のセル)の開口部と、流体の出口側の端面における残余のセル(第2のセル)の開口部に目封止材料を充填して、流体の入口側の端面における所定のセル(第1のセル)の開口部と、流体の出口側の端面における残余のセル(第2のセル)の開口部に目封止部を有する、上記本発明のハニカム構造体の一実施形態を得ることが好ましい。
【0053】
ハニカム成形体に目封止材料を充填する方法としては、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備えるハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、目封止部を形成しようとするセルと重なる位置に孔を開けるマスキング工程と、ハニカム成形体のシートが貼り付けられた側の端部を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、ハニカム成形体の一方の端面から、シートに形成された孔を通じて、目封止材料を前記セル内に圧入する第1圧入工程と、ハニカム成形体に充填された目封止材料の、ハニカム成形体の端面側の端部を凹ませて凹部を形成する凹部形成工程と、凹部が形成された目封止材料が充填されたセル内に、凹部が形成された目封止材料の上から目封止材料を更に圧入する第2圧入工程とを有する方法を挙げることができる。
【0054】
そして、第2圧入工程は、加圧面を有する加圧部材を、当該加圧面がハニカム成形体の端面と鋭角を形成した状態で、シートの表面に沿って移動させ、上記加圧面によって、シートと加圧面との間に供給された目封止材料を、シートに形成された孔を通じて、凹部が形成された目封止材料が充填されたセル内に、凹部が形成された目封止材料の上から圧入する工程であることが好ましい。
【0055】
上記、ハニカム成形体に目封止材料を充填する方法を、図2A図2G及び図3を用いて更に詳細に説明する。
【0056】
まず、図2A図2Bに示すように、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備えるハニカム成形体22の一方の端面にシート21を貼り付け、シート21における、目封止部を形成しようとするセルと重なる位置に孔28を開ける(マスキング工程)。図2Aは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。図2Bは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
【0057】
シート21の材質としては、ポリエステル系樹脂が好ましく、その中でもPET(ポリエチレンテレフタレート)が更に好ましい。シート21の厚さは30〜70μmが好ましい。
【0058】
シート21に孔28を形成する際には、あらかじめ、ハニカム成形体22の端面を撮像装置により撮像して、目封止部を形成すべきセルと目封止部を形成すべきでないセルの形状及び位置を特定し得る画像データを取得しておくことが好ましい。そして、取得しておいた画像データに基づき、レーザーによって、シートの「目封止部を形成すべきセルに重なる部分」に孔を開けることが好ましい。撮像装置としては、特に限定されないが、例えば、CCD(charge−coupled device)カメラ、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサ等を挙げることができる。
【0059】
次に、図2Cに示すように、ハニカム成形体22の、シートが貼り付けられた側の端部を、目封止材料24が貯留された容器(目封止用容器)23内に圧入して、ハニカム成形体22の一方の端面から、シートに形成された孔を通じて、目封止材料24をセル25内に圧入する(第1圧入工程)。そして、目封止材料24をセル25内に圧入した後には、図2Dに示すように、ハニカム成形体を目封止用容器23から引き抜く。ハニカム成形体22の端部を目封止用容器23内に圧入する際には、ハニカム成形体22の端部を鉛直方向下向きにして、ハニカム成形体22を鉛直方向下向きに移動させることが好ましい。図2Cは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。図2Dは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
【0060】
目封止材料としては、隔壁の材料として用いた材料を用いることが好ましいが、25℃における粘度が100〜300dPa・sとなるように水の量を調整することが好ましい。
【0061】
第1圧入工程においては、図4A図4Bに示すような、目封止材料が貯留される目封止用容器23と、目封止材料が貯留された目封止用容器23内に、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備えるハニカム成形体22の端部を圧入して、ハニカム成形体22の端面からセル内に目封止材料を充填する圧入手段26と、を備える第1圧入装置31を用いることが好ましい。図4Aは、本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、第1圧入装置31を模式的に示す側面図である。図4Bは、本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、第1圧入装置31を模式的に示す側面図である。
【0062】
目封止材料を貯留する目封止用容器23は、特に限定されず、ハニカム成形体の一方の端部を挿入し、目封止用容器23内に貯留された目封止材料をセル内に充填できる容器であればよい。目封止用容器23の材質は、特に限定されず、ステンレス鋼等を用いることができる。また、目封止用容器23の深さは、20〜40mmが好ましく、目封止用容器23の内径は、ハニカム成形体の端面の直径の101〜105%が好ましい。
【0063】
圧入手段26は、ハニカム成形体を把持する把持部と、ハニカム成形体を把持した状態で鉛直方向(上下方向)に移動する加圧機構とを有していることが好ましい。そして、加圧機構を用いて、ハニカム成形体を目封止用容器23内に圧入することが好ましい。把持部としては、特に限定されないが、例えば、対向する面にゴム等の弾性体を配設した2枚の板を有し、当該弾性体がハニカム成形体に接触するようにして当該2枚の板でハニカム成形体を挟むことができるように形成されたものを挙げることができる。また、加圧機構としては、モーター等により、上記把持部を上下方向に移動させる機構を挙げることができる。
【0064】
また、第1圧入装置31としては、圧入手段26でハニカム成形体を固定し、目封止用容器23を鉛直方向(上下方向)に移動させるように形成されたものでもよい。この場合、目封止用容器23がテーブルに載せられ、当該テーブルが、モーターにより鉛直方向(上下方向)に移動するように形成されていることが好ましい。
【0065】
次に、図2Fに示すように、ハニカム成形体22に充填された目封止材料24の、ハニカム成形体22の端面側の端部を凹ませて凹部27を形成する(凹部形成工程)。図2Fは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
【0066】
凹部形成工程においては、ハニカム成形体22を目封止用容器23から引き抜いた後、図2Eに示すように、ハニカム成形体22を、目封止部24を形成した側の端部(端面)を鉛直方向上向きにするように反転させる。そして、図2Fに示すように、ハニカム成形体22の目封止部24を形成した側の端部(端面)を、鉛直方向上向きに向けた状態で、放置し、重力によって凹部27を形成する。放置時間は、目封止材料の粘度が、25℃において100〜300dPa・sの場合には、20〜60秒が好ましい。図2Eは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
【0067】
ハニカム成形体を反転させる際には、図5に示すような反転装置32を用いることが好ましい。反転装置32は、ハニカム成形体22を把持して、反転させる反転機構32bと、ハニカム成形体32を把持した反転機構32bを昇降させる昇降機構32aを備えることが好ましい。昇降機構32a及び反転機構32bは、モーター等により駆動するものであることが好ましい。図5は、本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、ハニカム成形体を反転させる反転装置を模式的に示す側面図である。ここで、凹部を形成する工程は、第1圧入工程後反転してから、次工程である第2圧入工程までに要する時間で代用してもかまわない。つまり放置することなく、凹部を形成するために必要な時間を製造ラインの流れの中に設けるようにしてもかまわない。
【0068】
凹部27の凹みの深さは、0.5〜2mmが好ましい。0.5mmより浅いと、目封止部に気泡が形成され難くなることがある。2mmより深いと、目封止部に形成される気泡が大きくなり過ぎることがある。「凹部27の凹みの深さ」とは、凹部27の、ハニカム成形体の端面側の先端部分から、最も深い位置までの距離(目封止部の中心軸方向における距離)を意味する。
【0069】
また、目封止材料に凹みを形成する方法としては、セルの開口部に差し込んで、目封止材料に凹みを形成するような治具を用いる方法を挙げることもできる。
【0070】
次に、図2Gに示すように、「凹部27が形成された目封止材料24」が充填されたセル25内に、凹部27が形成された目封止材料24の上から目封止材料(充填前の目封止材料33)を更に圧入する(第2圧入工程)。図2Gは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
【0071】
第2圧入工程においては、図6に示すような、加圧面36を有する加圧部材35を備え、加圧部材35によって、ハニカム成形体22のセル内に充填された目封止材料の上から、セル内に更に目封止材料を圧入する第2圧入装置34を用いることが好ましい。尚、第2圧入装置34を用いずに、スキージ等を用いて手動で、第2圧入工程を実施してもよい。図6は、本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、第2圧入装置を模式的に示す側面図である。
【0072】
加圧部材35を構成する加圧面36の形状としては、特に限定されず、長方形、円形等を挙げることができる。加圧面36の大きさは、ハニカム成形体の端面に沿って移動させたときに、ハニカム成形体の端面全体の上(鉛直方向における上)を通って移動する大きさであることが好ましい。加圧部材35の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼等が好ましい。加圧部材35の加圧面36の材質は、ゴム等のエラストマーが好ましい。従って、加圧部材35は、ステンレス鋼等により形成された加圧部材本体に、ゴム等により形成された加圧面形成材を装着した部材であることが好ましい。
【0073】
また、加圧部材35は、ハニカム成形体の端面に対して垂直方向(鉛直方向上下)に加圧面36を移動させる加圧機構と、ハニカム成形体の端面(シートの表面)に沿って加圧面36を移動させる駆動機構とにより、移動させることが好ましい。加圧機構は、空気圧、油圧等により加圧部材を鉛直方向における上下移動させる機構であることが好ましい。駆動機構は、モーター等により加圧部材を水平方向に移動させる機構であることが好ましい。
【0074】
第2圧入装置34は、図6に示すように、ハニカム成形体22を固定する固定用テーブル37を備えていることが好ましい。図6に示す固定用テーブル37は、テーブル部37aと脚部37bとを有している。テーブル部37aには、ハニカム成形体の端部を挿入できる孔が形成されていることが好ましい。そして、ハニカム成形体を、当該孔に挿入し、ハニカム成形体の端面が、テーブル部37aの上面(鉛直方向上側を向く面)と同じ面上に位置する状態で固定し、その状態で目封止材料をセル内に充填することが好ましい。
【0075】
第2圧入工程を、第2圧入装置34を用いて実施する際には、一方の端面側に目封止材料を充填したハニカム成形体を、当該一方の端面側をテーブル部37aに固定するようにして、固定用テーブル37に固定し、その後、加圧面36を有する加圧部材35を、加圧面36がハニカム成形体22の端面と鋭角を形成した状態で、シートの表面に沿って移動させ、加圧面36によって、シートと加圧面36との間に供給された目封止材料を、シートに形成された孔を通じて、凹部が形成された目封止材料が充填されたセル内に、「凹部が形成された目封止材料」の上から圧入することが好ましい。
【0076】
図3に示すように、加圧部材35の加圧面36と、ハニカム成形体22の端面(シートの表面)との角度θは、鋭角であり、5〜70°が好ましい。5°より小さい場合も、70°より大きい場合も、目封止材料を充填し難くなることがある。また、気泡の位置をハニカム成形体の端面に近づけたい場合には、角度θを大きくすることが好ましく、具体的には40〜70°が好ましい。また、気泡をハニカム成形体の端面から遠い位置に配置させたい場合には、角度θを小さくすることが好ましく、具体的には5〜40°が好ましい。図3は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の工程の一部を示す模式図である。
【0077】
加圧部材35によって目封止材料を充填するときの、ハニカム成形体の端面を押圧する(鉛直方向下向きの)圧力は、0.2〜0.5MPaが好ましく、0.3〜0.5MPaが更に好ましい。0.2MPaより小さいと目封止材料を充填し難くなることがある。0.5MPaより大きいと、ハニカム成形体の端部を破損し易くなることがある。
【0078】
加圧部材35をハニカム成形体22の端面(シートの表面)に沿って移動させるときの移動速度は、100〜400mm/秒が好ましい。100mm/秒より遅いと、目封止材料の供給が少なくなり、表面に凹形状を残しやすく、ハニカム構造体の生産効率が低下することがある。400mm/秒より速いと、目封止材料をハニカム構造体の各セル内に均一に充填し難くなることがある。
【0079】
第2圧入工程において使用する目封止材料は、第1圧入工程において使用する目封止材料と同じであることが好ましい。
【0080】
次に、ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させて、目封止部を形成することが好ましい(乾燥工程)。乾燥工程には、図7に示すような、乾燥装置38を用いることが好ましい。図7は、本発明のハニカム構造体の製造装置の一の実施形態における、乾燥装置38の断面を示す模式図である。
【0081】
乾燥装置としては、熱風乾燥装置、ホットプレート、遠赤外線乾燥機等を挙げることができる。乾燥温度は、150〜200℃が好ましい。乾燥時間は、1〜3分が好ましい。
【0082】
本発明のハニカム構造体の製造方法においては、ハニカム成形体の一方の端面において所定のセルに目封止部を形成した後に、他方の端面において、同じ方法で、残余のセルに目封止部を形成し、本発明のハニカム構造体を得ることが好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
参考例1)
タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びシリカのうちから複数を組み合わせて、その化学組成が、SiO42〜56質量%、Al30〜45質量%、及びMgO12〜16質量%となるように所定の割合で調合されたコージェライト化原料100質量部に対して、造孔材としてグラファイトを10〜20質量部添加した。更に、メチルセルロース、及び界面活性剤をそれぞれ適当量添加して調製した杯土を、真空脱気した後、押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁と、外周壁とを備えるハニカム成形体を得た。
【0085】
次に、得られたハニカム成形体を、180℃で3分間乾燥させ、その後、1420℃で5時間焼成した。得られたハニカム成形体は、隔壁厚さが1mmであり、セル密度が300セル/inch(46.5セル/cm)であり、気孔率(隔壁の気孔率)が45%であり、平均細孔径(隔壁の平均細孔径)が25μmであった。気孔率及び平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した。
【0086】
次に、得られたハニカム成形体に、両端面に市松模様が形成されるように目封止部を形成して、ハニカム構造体を得た。目封止部の形成には、適宜、図4A図7に示す各装置(第1圧入装置31、第2圧入装置34、反転装置32、乾燥装置38)を用いた。第1圧入装置31については、ハニカム成形体を保持、移送可能な保持部と目封止材供給機構と加圧機構を有しており、圧入面を下側にした状態でハニカム成形体を保持し、所望の量の目封止材を容器23に供給した後、圧入面と反対側の端面を加圧してハニカム成形体に目封止材を圧入する装置である。反転装置32は、ハニカム成形体を保持、移送可能な保持部と回転機構と駆動機構を有しており、第2圧入装置では圧入面を鉛直方向上側にする必要があるのでハニカム成形体を容器23から取出し、ハニカム成形体を回転させて圧入面を鉛直方向上側に向ける装置である。また、駆動機構により、第2圧入装置の搬送機構にハニカム成形体を設置することが可能である。第2圧入装置34については、ハニカム成形体を所望の位置に位置決め、保持する位置決め機構と、所望の量の目封止材を供給する供給機構と加圧部材と加圧部材の駆動機構と搬送機構を有しており、加圧部材35にて目封止材をハニカム成形体に圧入して目封止部を形成する装置である。乾燥装置38は、搬送機構とチャンバー部とを有しており、ハニカム成形体の少なくとも目封止部がチャンバー内に入った状態で乾燥を行う装置である。図7に示す乾燥装置は、チャンバー部のみを示している。チャンバー部は複数あっても構わない。
【0087】
目封止部の形成に際しては、まず、ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、目封止部を形成しようとするセルと重なる位置に孔を開けた(マスキング工程)。シートの材質は、PETとし、厚さは25μmとした。シートにはレーザーで孔を開けた。
【0088】
次に、ハニカム成形体のシートが貼り付けられた側の端部を目封止材料が貯留された目封止用容器内に圧入して、ハニカム成形体の一方の端面から、シートに形成された孔を通じて、目封止材料をセル内に圧入した(第1圧入工程)。目封止材料としては、平均粒径5μmのカオリン40質量%、平均粒径40μmのタルク40質量%、平均粒径10μmの酸化アルミニウム15質量%、平均粒径5μmのシリカ5質量%を主たる無機成分として用いた。目封止材料の粘度は、25℃で250dPa・sであった。
【0089】
次に、ハニカム成形体に充填された目封止材料の、ハニカム成形体の端面側の端部を凹ませて凹部を形成した(凹部形成工程)。凹部形成工程においては、ハニカム成形体を目封止用容器から引き抜いた後、図2Eに示すように、ハニカム成形体22を、目封止部24を形成した側の端部(端面)を鉛直方向上向きにするように反転させた。そして、図2Fに示すように、ハニカム成形体22の目封止部24を形成した側の端部(端面)を、鉛直方向上向きに向けた状態で、放置し、重力によって凹部27を形成した。放置時間は、1分とした。
【0090】
次に、「凹部が形成された目封止材料」が充填されたセル内に、「凹部が形成された目封止材料」の上から目封止材料を更に圧入した(第2圧入工程)。第2圧入工程は、図6に示すような、第2圧入装置34を用いて実施した。一方の端面側に目封止材料を充填したハニカム成形体を、当該一方の端面側をテーブル部37aに固定するようにして、固定用テーブル37に固定し、その後、加圧面36を有する加圧部材35を、加圧面36がハニカム成形体22の端面と鋭角を形成した状態で、シートの表面に沿って移動させ、加圧面36によって、シートと加圧面36との間に供給された目封止材料を、シートに形成された孔を通じて、凹部が形成された目封止材料が充填されたセル内に、「凹部が形成された目封止材料」の上から圧入した。「加圧部材の加圧面」と、ハニカム成形体の端面(シートの表面)との角度θは20°とした。また、加圧部材を、シートの表面に沿って移動させるときには、加圧面によってハニカム成形体の端面を押圧しながら移動させた。このときの圧力(圧力)は0.4MPaとした。
【0091】
次に、乾燥装置を用いて、目封止部を乾燥させて、ハニカム構造体を得た。乾燥装置としては、熱風乾燥機を用いた。乾燥温度は180℃とし、乾燥時間は3分間とした。目封止部の中心軸方向の深さ(目封止部深さ)は、9mmであった。
【0092】
得られたハニカム構造体について、以下の方法で「気泡の中心の位置の平均(気泡深さ平均)」、「気泡の中心の位置の範囲(気泡深さ範囲)」及び「気泡の平均径」を求めた。
【0093】
(気泡の中心の位置の平均)
目封止部を、「目封止部の中心軸を含む平面」で切断し、断面における、目封止部の「ハニカム成形体の端面側」の端部から、気泡の中心までの距離(気泡深さ)を測定する。そして、当該気泡深さの、目封止部の中心軸方向における深さに対する比の値を求める。そして、100個の目封止部についての測定値の平均を「気泡の中心の位置の平均(気泡深さ平均)」とする。
【0094】
(気泡の中心の位置の範囲)
目封止部を、「目封止部の中心軸を含む平面」で切断し、断面における、目封止部の「ハニカム成形体の端面側」の端部から、気泡の中心までの距離(気泡深さ)を測定する。そして、当該気泡深さの、目封止部の中心軸方向における深さに対する比の値を求める。そして、100個の目封止部についての測定値における、上限値と下限値とを求め「気泡の中心の位置の範囲(気泡深さ範囲)」とする。気泡深さ範囲は、「下限値〜上限値」という範囲で表わされる。
【0095】
(気泡の平均径)
目封止部を、「目封止部の中心軸を含む平面」で切断し、断面における気泡の最大直径を測定し、100個の目封止部に形成された気泡についての測定値を平均した値とする。一の目封止部に複数の気泡が形成されている場合、全ての気泡についての平均をとる。気泡の直径は、光学顕微鏡で2倍に拡大した状態で測定した値とする。
【0096】
【表1】
【0097】
実施例1,2、参考例2〜
角度θ、加圧面による圧力、目封止深さを、表1に示すように変更した以外は、参考例1と同様にして、ハニカム構造体を作製した。参考例1の場合と同様にして、「気泡の中心の位置の平均(気泡深さ平均)」、「気泡の中心の位置の範囲(気泡深さ範囲)」及び「気泡の平均径」を求めた。結果を表1に示す。
【0098】
表1の参考例1,2、実施例1より、加圧面による圧力を上げると、気泡深さが深くなり、気泡の平均径が大きくなることがわかる。また、表1の実施例2、参考例3,4より、角度θが大きくなると、気泡深さが浅くなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のハニカム構造体は、内燃機関、ボイラー等の排気ガス中の微粒子や有害物質の処理に好適に利用することができる。その他、多量の煤煙を排出する装置の除害装置への適用も可能である。
【符号の説明】
【0100】
2:セル、3:隔壁、4:外周壁、5:目封止部、6:気泡、7:端面側の端部、8:目封止部の中心軸方向における一定の範囲、11:入口側の端面、12:出口側の端面、21:シート、22:ハニカム成形体、23:容器(目封止用容器)、24:目封止材料、25:セル、26:圧入手段、27:凹部、28:孔、31:第1圧入装置、32:反転装置、32a:昇降機構、32b:反転機構、33:充填前の目封止材料、34:第2圧入装置、35:加圧部材、36:加圧面、37:固定用テーブル、37a:テーブル部、37b:脚部、38:乾燥装置、100,200:ハニカム構造体。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8