特許第5687218号(P5687218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5687218-作業機械 図000002
  • 特許5687218-作業機械 図000003
  • 特許5687218-作業機械 図000004
  • 特許5687218-作業機械 図000005
  • 特許5687218-作業機械 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687218
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20150226BHJP
   B60J 7/00 20060101ALI20150226BHJP
   B62D 25/07 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   E02F9/16 A
   B60J7/00 A
   B60J7/00 B
   B62D25/07
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-6863(P2012-6863)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-147790(P2013-147790A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井坂 渉
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−004589(JP,A)
【文献】 特開平10−219744(JP,A)
【文献】 特開2005−335530(JP,A)
【文献】 特開2004−359006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60J 7/00
B62D 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上部にキャビンを有し、このキャビン内の作業者が車体に取り付けた作業装置を操作可能な作業機械において、
前記キャビンの天井部近傍であって少なくとも左右の側面部および前面部に分割形状のルーフカバーを取付け、前記ルーフカバーは、前側ルーフカバーおよび左側ルーフカバー、右側ルーフカバーをそれぞれ別個にプラスチック成形して構成されており、左側ルーフカバーおよび右側ルーフカバーはそれぞれ前照灯の上部を覆うように形成されていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記分割形状のルーフカバーは、前記キャビンの天井部近傍であって少なくとも左右の側面部および前面部に設けた雨垂れ防止部材に取り付けられており、前記雨垂れ防止部材は、前記キャビンの天井部を構成する前後フレームまたは前側の左右フレームに直接取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記雨垂れ防止部材と前記ルーフカバーとで前記キャビンの天井から流れる雨水用の樋を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記雨垂れ防止部材は前記ルーフカバーよりも高さが低い位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ等の作業機械に係り、特にキャブを備えた作業機械に好適な作業機械のルーフカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機械の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の建設機械では、キャビン用の雨樋を、製作が容易で溶接等による歪が発生しないようにするために、キャビンのフロント窓側に流れる雨水を誘導する雨樋を別個に形成している。そして、キャビン外側鋼板と内側鋼板を固定するトリムゴムに、キャビン外側鋼板と内側鋼板とを一緒に挟み込んで雨樋を取り付けている。
【0003】
従来の作業機械の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載のホイールローダでは、キャブを運転席を収容するキャブ本体と、キャブ本体を上方から覆うルーフ部材とにより構成する。また、ホイールローダがキャノピーを備えている場合には、キャノピーを、支柱と支柱の上端側に取り付けられ運転席を上方から覆うルーフ部材とで構成している。そして、キャブを備えるホイールローダであっても、キャノピーを備えるホイールローダであっても、ルーフ部材を共通化して製造コストを低減している。
【0004】
従来の作業機械のさらに他の例が、特許文献3に記載されている。この公報に記載の建設機械では、建設機械が備えるキャノピーにおいて、運転者の頭上のスペースを広くし、建設機械が揺れても雨水がこぼれにくいようにし、キャノピールーフの周縁全体の雨水処理を適切にできるようにするために、キャノピールーフの周縁に、上方に延びる堰部材を取付け、この堰部材でキャノピールーフの外側に樋を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−219744号公報
【特許文献2】特開2004−359006号公報
【特許文献3】特開2003−113622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の建設機械では、フロントガラスへ雨水が垂れ落ちてこの建設機械の運転者の視界が悪くなるのを防止している。特に、天井に溜まった雨水が垂れ落ちてフロントガラスの視界を悪化させるのを防止している。しかしながら、この公報に記載の建設機械では、キャビンの天井部については十分な考慮がなされていない。
【0007】
すなわち、キャビンの天部には、強度部材としての内側構造物に対し、意匠部材としての外側化粧板および内側化粧部材が用いられることが多く、これらの内外の化粧部材により、キャビンの天井部の重量が増している。また、これらの内外の化粧部材のために、キャビンの高さも高くせざるを得ないが、建設機械を輸送するときの法律の規定により、キャビンの高さにも限界がある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の建設機械では、キャビンタイプにもキャノピータイプにも同じルーフを採用することにより、経済的な効果が得られる。しかしながらこの公報に記載建設機械でもキャビンまたはキャノピーの天井にこのキャビンまたはキャノピーの天井全体を覆うルーフ部材を設けているので、天井部の重量が増加している。
【0009】
さらに、特許文献3に記載のキャノピータイプの作業機械では、キャノピーの中央部を持ち上げ、キャノピー周囲部に堰部材を設けている。しかし、キャビンタイプとは異なり十分な強度がないので、傾斜作業等には不適である。そして、堰部材から雨水が揺れ落ちない程度の揺れ作業でないと、堰部材があっても作業者の周囲にはカバーがないので作業者が天井からの雨水で濡れるおそれがある。つまり、作業者の居住空間を堅牢にしたがゆえに居住空間が狭まるときの雨水対策については、十分には考慮されていない。
【0010】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的はキャビンを備えた作業機械で、作業者の居住空間高さ(キャビン内高さ)をできるだけ広く確保しながら、ルーフカバーの重量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の特徴は、車体上部にキャビンを有し、このキャビン内の作業者が車体に取り付けた作業装置を操作可能な作業機械において、前記キャビンの天井部近傍であって少なくとも左右の側面部および前面部に分割形状のルーフカバーを取付け、前記ルーフカバーは、前側ルーフカバーおよび左側ルーフカバー、右側ルーフカバーをそれぞれ別個にプラスチック成形して構成されており、左側ルーフカバーおよび右側ルーフカバーはそれぞれ前照灯の上部を覆うように形成されていることにある。
【0012】
そしてこの特徴において、前記分割形状のルーフカバーは、前記キャビンの天井部近傍であって少なくとも左右の側面部および前面部に設けた雨垂れ防止部材に取り付けられていて、前記雨垂れ防止部材は、前記キャビンの天井部を構成する前後フレームまたは前側の左右フレームに直接取り付けられているのが好ましく、また、前記雨垂れ防止部材と前記ルーフカバーとで前記キャビンの天井から流れる雨水用の樋を形成するのが好ましい。さらに、前記雨垂れ防止部材は前記ルーフカバーよりも高さが低い位置に取り付けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホイールローダで代表される作業機械において、雨垂れ防止手段を利用して分割形状のルーフカバーをキャビンの天井部に取り付けるようにしたので、作業者の居住空間高さ(キャビン内高さ)を可能な限り広く確保しながら、ルーフカバーの重量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る作業機械の一つであるホイールローダの一実施例の側面図および上面図である。
図2図1に示した作業機械が備えるキャブの詳細側面図である。
図3図2に示したキャブの斜視図で、一部分を示した図である。
図4図2に示したキャブからルーフカバーを取り去った図である。
図5】図のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る作業機械の一例としてホイールローダを取り上げ、図面を用いて詳細に説明する。なお、作業機械はホイールローダに限るものではなく、油圧ショベルや道路機械等、キャブを有するものに適用できる。図1に、ホイールローダ1の一実施例を示す。図1(a)は、ホイールローダ1の側面図であり、図1(b)はその上面図である。ホイールローダ1では、前後部に車輪5が取り付けられた車体2の一部である前部車体4に、上下に回動可能なように作業装置8が取り付けられている。車体2の上部には、作業者が乗降するキャビン(キャブ)6が設けられている。車体2の後部は、図示しないエンジン等が格納された後部車体3を形成している。
【0017】
作業装置4は、先端にバケット10備えている。バケット10にはアーム9の一端側が連結されており、アーム9の他端側は前部車体4の端部に連結されている。バケット10には、リンク14も接続されており、リンク14の他端側はベルクランク13に接続されている。ベルクランク13は、端部を前部車体4に接続されたシリンダで駆動され、バケット10を上下に回動させる。アーム9の中間部に一端が接続され他端が前部車体4に取り付けられたアームシリンダ11により、アーム9は車体2に対し回動可能になっている。
【0018】
前後車輪5の中間部から後部にかけて位置するキャブ6の前部側であって上部には、前照灯7が取り付けられている。この前照灯の上部を覆うように、ルーフカバー20がキャブ6の上面側に取り付けられている。ルーフカバー20は、図1(b)に示すように、左右に配置されたルーフカバー22と、この左右のルーフカバー22と連続し、キャブ6の前方に位置する前ルーフカバー21とから構成されている。
【0019】
図2に、図1に示したホイールローダ1が備えるキャブ6のみを取り出して、側面図で示す。キャブ6は、上下方向に延び、キャブ6の前部側に配置されたAピラー46と、キャブの後部側に配置されたBピラー47とを有している。Aピラー46とBピラー47の間には、作業者がホイールローダ1に乗り降りする際に使用するドア30がヒンジ33により開閉可能に取り付けられている。ヒンジ33はBピラー47に取り付けられており、上下に2箇所設けられている。
【0020】
ドア30には開口が形成されており、この開口にシール部材34aを介してガラス窓34が取り付けられている。ドア30の下部には、ドアレバー38が取り付けられている。Aピラー46よりも前方側にはフロントガラスとなるガラス窓37が設けられている。Bピラー47よりも後方側にも、ガラス窓35が設けられている。Aピラー46には、作業者がキャブ6に乗り降りする際に用いる手すり36が設けられている。キャブ6の前方側には、前照灯7が左右に配置されている。同様にフェンダーミラー31も左右に配置されており、ワイパー32も設けられている。キャブ6の後部には、後照灯16が取り付けられている。
【0021】
図3に、キャブ6の上部を斜視図で示す。上述したように、キャブ6の上部であって、左右の側面および前面には、ルーフカバー20(21、22)が設けられている。ここで本発明の特徴であるが、ルーフカバー20(21、22)は、キャブ6を構成する天板41の部分には設けられておらず、キャブ6の側面部および前面部のみをカバーしている。従来は、キャブ6の上面の意匠性等を考慮して、化粧板によるルーフカバーでキャブ6の天井部分もカバーしていたが、背景技術の項で述べたように、この化粧板によりキャブ6の内部の高さが減少していた。本発明によれば、この化粧板を省いたのでキャブ6の内容積における高さを高くできるとともに、キャブ6の重量を低減できる。
【0022】
なお、化粧板を省いても、前面ガラス窓37にキャブ6の天井部からの雨が滴り落ちると作業者の操作性が低下するので、天井部に降ってきた雨が前面のガラス窓37に落ちないように、ルーフカバー21を設け、天井部の雨を側面部に設けたルーフカバー22に導いている。これにより、側面部のルーフカバー22は、前面部のルーフカバー21に流れ込む雨滴を側面部に導く役割とともに、作業者がキャブ6に乗り降りする際に雨滴が作業者に落下するのを防止する役目もしている。そのため、側面部のルーフカバー22では、後部側が溝の開口になっており、作業者の乗り降りしない部分から溜まった雨が地面へ流れ落ちるようになっている。また、側面部のルーフカバー22の前部側は左右に大きく延びており、前照灯7に雨滴が当たるのを低減している。
【0023】
図4および図5を用いて、ルーフカバー20(21、22)の詳細を説明する。図4はルーフカバー20(21、22)を取り去ったキャブ6の上部の斜視図であり、図3に対応する図である。図5(a)、(b)は、図3のA−A矢視断面図である。なおルーフカバー20(21、22)はポリプロピレン等の樹脂製である。
【0024】
キャブ6の天井部は、矩形状に形成された天板41の周縁下面部をフレーム43、44、49が支持する構成となっている。キャブ6の前面側に配置された左右フレーム44は矩形管構造であり、前面部分の上下方向中間部に、左右フレーム44の左右幅方向に延びる断面逆L字型の雨垂れ防止部材45が取り付けられている。同様に、天板41の左右の側部に配置される前後フレーム43も矩形管構造であり、側面部分の上部に、前後フレーム43と同方向に延びる断面逆L字型の雨垂れ防止部材42が取り付けられている。前後フレーム43には、Bピラー47で支持される位置よりも内側部分に支柱48が取り付けられている。なお、天板41の後部側に配置される左右フレーム49も矩形管構造であるが、雨垂れ防止部材は取り付けられていない。
【0025】
図5(a)に示すように、ルーフカバー22は断面逆L字型の雨垂れ防止部材42の水平部分に一端部が取り付けられており、樋部51を形成する。天板41に降り注いだ雨は、樋部51を伝わって地面へ注がれる。これにより、作業者がキャビン6内に搭乗するときまたはキャビン6から退出するときに、雨がドア30部に滴り落ちて濡れるのを防止する。ここで、ルーフカバー22は一端側に水平部を有し、さらに、この水平部からほぼ垂直上方に延びる部分と、この垂直部に連続しなだらかに下方に延びる部分とを有している。このとき、天板41の最高部が、ルーフカバー22の最高部以下となるようにルーフカバー22の高さを位置決めする。
【0026】
ところで、ホイールローダ1を車載して運搬するときには、その車載時の路面からの高さHは、道路運送法の規定によって定められている。したがって、ルーフカバー20を高くしすぎると、キャブ6内部の高さが減少して、居住性が低下する。一方、ルーフカバー20の高さを低くしすぎると、雨垂れ防止部材42とルーフカバー20で形成される溝の深さが減少するとともに天板41に降り注ぐ雨が溢れてガラス窓37等に流れ落ちやすくなる。そこで、ルーフカバー20(21、22)の高さ位置は、天板41とほぼ同じか僅かに高くするのが望ましい。なお、図5(a)には左側面部を示したが、前面および右側面でも雨垂れ防止部材とルーフカバーの相対的な位置関係は、同様になっている。
【0027】
図5(b)は、図5(a)に示したルーフカバー22の変形例である。雨垂れ防止部材42aの側面に張り出た部分が、水平方向ではなく斜め上方になっている場合に対応したものである。雨垂れ防止部材42aの形状に応じて、ルーフカバー22aの端部も水平から斜め下方に下がった形状となっている。その他の構成は、図5(a)に示した場合と同様である。本変形例によれば、雨垂れ防止部材42aとルーフカバー22aとで形成される樋部52は逆三角形状になる。この場合でも、ルーフカバーの最高高さを抑えて、キャブ6の内部の高さを従来よりも高くすることができる。また、キャブ6の天板41に降り注ぎ、前面側のルーフカバー21が雨垂れ防止部材45aとで形成する溝に流れ込んだ雨は、側面部のルーフカバー22と雨垂れ防止部材42aとで形成される溝に導かれる。したがって、前部のガラス窓47に直接天板41部の雨が流れ込んで作業者の作業性を損なうのを回避できる。
【0028】
以上の実施例および変形例によれば、キャブの天板部の左右両側面部と前面部にだけルーフカバーを設けたので、キャブの内側の高さを高くできる。また、樹脂製のルーフカバーを従来の一体型形状から分割形状に変えたので、樹脂成形時の型の大きさを縮小できるとともに取り扱いが容易になり、作業性が向上する。さらに、必要なところだけにルーフカバーを設けたので、重量も低減する。
【0029】
なお、上記実施例ではルーフカバーの分割数を3分割としているが、分割数はこれに限らず2個でも4個以上であってもよい。ただし、分割形状ができるだけ直線的な形状となる位置で分割するのが好ましい。また、大型のキャビンでは分割数を増やせば、樹脂成形時の型の大きさを縮小化できる。
【符号の説明】
【0030】
1…作業機械(ホイールローダ)、2…車体、3…後部車体、4…前部車体、5…車輪、6…キャビン(キャブ)、7…前照灯、8…作業装置、9…アーム、10…バケット、11…アームシリンダ、13…ベルクランク、14…リンク、16…後照灯、20…ルーフカバー、21…前ルーフカバー、22,22a…右(左)ルーフカバー、30…ドア、31…フェンダーミラー、32…ワイパー、33…ヒンジ(蝶番)、34…ガラス窓、34a…シール部材、35…ガラス窓、36…手すり、37…ガラス窓、38…ドアレバー、41…天板、42雨垂れ防止部材、42a…、43…前後フレーム、44…左右フレーム(前)、45…雨垂れ防止部材、46…Aピラー、47…Bピラー、48…支柱、49…左右フレーム(後)、51、52…樋部。
図1
図2
図3
図4
図5