特許第5687248号(P5687248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5687248導電性接合材とこれを用いたセラミック電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687248
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】導電性接合材とこれを用いたセラミック電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20150226BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20150226BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20150226BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20150226BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20150226BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   B22F1/00 K
   B22F1/00 L
   B22F1/00 N
   B22F1/02 A
   B22F1/02 D
   H01B1/00 C
   H01B1/00 M
   H01L21/52 E
   H05K3/32 B
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-149103(P2012-149103)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-11132(P2014-11132A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 浩之
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−079211(JP,A)
【文献】 特開2004−179139(JP,A)
【文献】 特開2010−257880(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0127314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 1/00
H01B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金属粒子を主体とする導電性接合材であって、
前記複合金属粒子は、コアとなる金属微粒子と、前記コアとなる金属微粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシリカと、前記シリカの表面の少なくとも一部を被覆する金属と、を有しており、
ここで、前記コアとなる金属微粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径は15nm以上300nm以下であり、
前記シリカの含有量は、前記コアとなる金属微粒子100質量部に対して10質量部以上50質量部以下である、導電性接合材。
【請求項2】
前記複合金属粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径が、40nm以上400nm以下である、請求項1に記載の導電性接合材。
【請求項3】
前記シリカの表面の少なくとも一部を被覆する金属は銅(Cu)である、請求項1または2に記載の導電性接合材。
【請求項4】
前記コアとなる金属微粒子は、銀(Ag)微粒子、銅(Cu)微粒子、アルミニウム(Al)微粒子または白金族に属するいずれかの金属の微粒子を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性接合材。
【請求項5】
前記複合金属粒子とバインダとしての樹脂とを溶媒に分散しペースト状に調製された、請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性接合材。
【請求項6】
セラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料が相互に接合されてなるセラミック電子デバイスであって、
前記少なくとも二つの電子材料を相互に接合する接合部は、複合金属粒子の焼成物によって構成されており、
前記複合金属粒子は、コアとなる金属微粒子と、前記コアとなる金属微粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシリカと、前記シリカの表面の少なくとも一部を被覆する金属と、を有しており、
ここで、前記コアとなる金属微粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径は15nm以上300nm以下であり、
前記シリカの含有量は、前記コアとなる金属微粒子100質量部に対して10質量部以上50質量部以下である、セラミック電子デバイス。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性接合材によって接合部が形成されている、セラミック電子デバイス。
【請求項8】
セラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料が相互に接合されてなるセラミック電子デバイスの製造方法であって、
請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性接合材と、セラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料と、を用意すること;
前記導電性接合材によって前記電子材料を相互に接着すること;および
前記導電性接合材によって接着した電子材料を、300℃以上500℃未満の温度で焼成して形成すること;
を包含する、セラミック電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体等のセラミック電子材料の接合に用いる導電性接合材と、これを用いたセラミック電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、電力制御技術を通じた環境対策や消費電力削減対策が注目されており、コンバータやインバータ等の電力変換器で電力制御に用いられる次世代の半導体デバイス(典型的にはパワーデバイス)が盛んに研究開発されている。
この半導体デバイスの一例として、図2に示すような構造が知られている。かかる構造では、銅(Cu)等の熱伝導性の高い材料で構成された放熱板102の上に、接合部103を介してセラミック製の絶縁基板(配線基板)104が備えられている。そして、セラミック絶縁基板104の表面には、接合部105を介して金属(例えば銅(Cu))による回路の配線パターン106が描かれており、この配線パターン106の上にはさらに接合部107を介して半導体素子108(例えばシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、砒化ガリウム(GaAs)、ダイヤモンド(C)、ゲルマニウム(Ge))が配置され、これら半導体素子108は使用用途に応じて互いに(あるいは電極と)結線されている。
【0003】
上記電子材料同士の接合には、一般に金属(例えば銀(Ag)、白金(Pt)、鉛(Pb)、銅(Cu))とガラスフリットとを含む接合材ペーストが用いられている。より具体的には、上記接合材ペーストをスクリーン印刷等の手法によって被接合材(電子材料)の表面に塗布した後、その上から他方の被接合材(電子材料)を重ね合わせ、かかる積層体を高温(例えば500℃以上800℃以下)で焼成することによって該ペーストに含まれる金属やガラスフリットを焼結させ、接合部を形成する。
しかしながら、ガラスフリットを含む接合材は塗布した際にピンホール等の不具合を生じ易く、かかる部分で局所的な抵抗の増大や熱伝導性の低下が起きることがあった。また、高温での焼成接合は電子材料への熱損傷が大きいため、より低温(典型的には500℃未満、例えば300℃〜400℃)で焼成接合し得る接合材が望まれていた。
【0004】
そこで近年、低温でも焼成接合可能な材料として、ナノメートルサイズの導電性粒子(典型的には金属微粒子)を用いることが検討されている。かかる導電性微粒子は、その高い表面活性や量子サイズ効果によって、従来に比べて低い温度(例えば500℃未満)でも十分に焼結し得、接合強度の高い接合部を形成することができる。このような従来技術としては、特許文献1,2が挙げられる。例えば特許文献1には、平均粒子径1μm以下の金属微粒子(白金または白金基合金)と、シリカと、金属化合物(アルカリ土類金属、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)等を含有する化合物)と、を用いた接合材ペーストが開示されている。また特許文献2には、平均粒子径50nm以下の銀微粒子と、平均粒子径100nm以下の無機微粒子(ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニア)と、を有機媒体中に分散させた接合材ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4615987号公報
【特許文献2】特許第4756163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の技術ではペースト中に金属化合物が含まれるため熱負荷時(焼成接合時)に飛散し易く、さらに電子材料との反応性が高いため長期間の耐久性に問題があることが判明した。また、特許文献2に記載の技術ではナノメートルサイズの粒子を溶媒中に安定して分散させることが難しく、ペースト中で該粒子が偏在化(凝集)する場合があった。この結果、かかるペーストを用いて形成した接合部では焼結後にボイド(空隙)が発生し、接合強度が不足する場合があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、放熱性や導電性に優れ、かつ従来に比べ低い温度(典型的には500℃未満、例えば300℃以上400℃以下)で焼結させた場合であっても、電子材料同士を高強度に接合し得る導電性接合材を提供することである。また、他の目的は、かかる導電性接合材を用いて形成されたセラミック電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現すべく、本発明によって、複合金属粒子を主体とする導電性接合材が提供される。かかる複合金属粒子は、コアとなる金属微粒子と、上記コアとなる金属微粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシリカと、上記シリカの表面の少なくとも一部を被覆する金属と、を有している。そして、コアとなる金属微粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径は15nm以上300nm以下であり、コアとなる金属微粒子100質量部に対するシリカの含有量は10質量部以上50質量部以下である。
上記接合材は、従来に比べ低い温度(典型的には500℃未満、例えば300℃以上400℃以下)で焼結させた場合でも、強固な接合部を形成することができる。したがって接合部以外(典型的には電子材料)への熱の影響(熱衝撃)を低減することができる。また、上記接合材は接合部に緻密に配列し得るため、かかる接合材を用いて形成した接合部は高強度で低靱性のものとなり得る。さらに、コアとなる金属微粒子の表面を被覆しているシリカの量が上記範囲にある場合、接合部に優れた導電性と高い接合強度とを付与することができる。加えて、上記シリカの表面(複合金属粒子の最表面)は電気や熱の伝導性が高い金属で被覆されているため、かかる接合材を用いて形成した接合部では優れた導電性と高い放熱性とを兼ね備えることができる。
【0009】
ここで開示される導電性接合材の好ましい一態様では、上記複合金属粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径が、40nm以上400nm以下である。
複合金属粒子の粒子径が上記範囲にある場合、低温で焼成接合した場合であっても接合部に高い接合強度を持たせることができる。したがって、接合部以外への熱の影響をより一層低減することができる。
【0010】
ここで開示される導電性接合材の好ましい一態様では、上記シリカの表面の少なくとも一部を被覆する金属は銅(Cu)である。
銅は、電子材料(例えば、電子回路の配線パターンを形成する材料)として好ましく用いられている。このため、接合材として表面を銅で被覆された複合金属粒子を用いることで、銅を含む電子材料との親和性を高めることができ、接合部の界面抵抗(電気抵抗)をより一層低減することができる。
【0011】
ここで開示される導電性接合材の好ましい一態様では、上記コアとなる金属微粒子は、銀(Ag)微粒子、銅(Cu)微粒子、アルミニウム(Al)微粒子または白金族に属するいずれかの金属の微粒子を含んでいる。
かかる構成によると、より低い温度で焼成接合した場合であっても、強固な接合部を形成することができる。さらに上記金属微粒子は電気伝導性や熱伝導性が高いため、より一層導電性や放熱性に優れた接合部を形成することができる。
【0012】
ここで開示される導電性接合材の好ましい一態様では、上記複合金属粒子とバインダとしての樹脂とを溶媒に分散し、ペースト状(スラリー状、インク状を包含する。以下同じ。)に調製されている。
導電性接合材は、少なくとも2つの被接合部分(例えば2種類の電子材料)同士を互いに接合するために用いられる。かかる用途においては、該複合金属粒子を1種以上の溶媒に分散(もしくは溶解)させペースト状に調製したものを用いることで、均質な接合部を安定して形成することができる。
【0013】
また他の側面として、ここに開示される発明によってセラミック電子デバイスが提供される。かかるセラミック電子デバイスは、セラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料が、複合金属粒子の焼成物によって、相互に接合されている。ここで、かかる複合金属粒子は、コアとなる金属微粒子と、上記コアとなる金属微粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシリカと、上記シリカの表面の少なくとも一部を被覆する金属と、を有している。そして、上記コアとなる金属微粒子の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径は15nm以上300nm以下であり、上記シリカの含有量は上記コアとなる金属微粒子100質量部に対して10質量部以上50質量部以下である。
上記構成の複合金属粒子は、従来に比べて低い温度(典型的には500℃未満、例えば300℃以上400℃以下)で焼結し、強固な接合部を形成することができる。このため、接合材以外(典型的にはセラミック電子デバイスを構成する電子材料)への熱の影響(熱損傷)を最小限にとどめることができ、耐熱性の観点から従来は使用し得なかった電子材料をも選択することができる。加えて、シリカの含有量を上記範囲とすることで優れた導電性と高い接合強度とを該接合部に付与し得る。したがって、かかる接合部は高強度かつ優れた導電性や高い放熱性を有し、該接合部を備えたセラミック電子デバイスは優れた性能を発揮し得る。
【0014】
また他の側面として、ここに開示される発明によって上記のいずれか1つに記載の導電性接合材の焼成物によって接合部が形成されているセラミック電子デバイスが提供される。
ここで開示される導電性接合材では、従来に比べ低い温度(典型的には500℃未満、例えば300℃以上400℃以下)でも複合金属粒子同士が焼結し、緻密で高強度な接合部を形成し得る。また、かかる接合部は優れた導電性や高い放熱性を備え得るため、該接合部を備えたセラミック電子デバイスは優れた性能を発揮し得る。
【0015】
さらに他の側面として、ここに開示される発明によってセラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料が相互に接合されてなるセラミック電子デバイスの製造方法が提供される。かかる製造方法は、(1)上記のいずれか1つに記載の導電性接合材と、セラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料と、を用意すること;(2)上記導電性接合材によって上記電子材料を相互に接着すること;および(3)上記導電性接合材によって接着した電子材料を、300℃以上500℃未満の温度で焼成して形成すること;を包含する。
上記製造方法によれば500℃未満(好ましくは400℃以下、例えば300℃)で焼成接合した場合であっても、緻密で強固な接合部を形成することができる。したがって、接合部以外(例えば電子材料)への熱の影響を最小限にとどめることができる。このため、耐熱性の観点から従来は使用し得なかった材料を使用することもでき、材料選択の幅を広げることができる。さらに、例えばセラミック電子デバイスを一括して焼成接合させることをも可能とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る複合金属粒子を模式的に示す断面図である。
図2図2は、一実施形態に係るセラミック電子デバイスの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。各図面は模式的に描いており、寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は必ずしも実物を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0018】
ここで開示される導電性接合材は、コア部と表面部とが質的に異なる複合金属粒子を主として備えている。かかる複合金属粒子は、典型的には図1に示すように、コアとなる金属微粒子10と、金属微粒子10の表面の少なくとも一部を被覆するシリカ12と、シリカ12の表面の少なくとも一部を被覆する金属14と、を有している。
上記構成の導電性接合材は、従来に比べ低い温度で焼結し強固な接合部を形成することができるため、熱衝撃を低減することができる。また、上記導電性接合材は凝集が生じ難く被接合部に緻密に配列し得るため、かかる接合材を用いて形成した接合部は高強度で低靱性のものとなり得る。さらに、かかる複合金属粒子の最表面は金属で被覆されているため、接合部に優れた導電性や高い放熱性を付与することができる。したがって、ここで開示される導電性接合材は従来に比べ低い温度でも被接合部同士を高強度に焼成接合し得ると同時に、該接合部に優れた導電性や高い放熱性を付与し得る。なお、複合金属粒子か否かについては、例えば一般的な走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)−エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)によって確認し得る。より具体的には、SEM観察により得られた画像を、EDXを用いて解析(マッピング)することで元素の分布状態を調べ、判断することができる。
【0019】
複合金属粒子1の平均粒子径は特に限定されないが、例えば電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径を30nm以上(典型的には40nm以上、例えば50nm以上)であって、700nm以下(典型的には600nm以下、例えば400nm以下、好ましくは300nm以下)とすることができる。導電性接合材の平均粒子径が上記範囲にある場合、低温で焼成接合した場合であっても接合部に高い接合強度を持たせることができる。したがって、接合部以外への熱の影響をより一層低減することができる。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、電子顕微鏡(走査型または透過型のいずれも使用可能である。好ましくは透過型電子顕微鏡)写真により少なくとも30個以上(例えば30〜100個)の一次粒子を観察し、得られた粒子径の算術平均値を採用することができる。
【0020】
複合金属粒子1を作製する方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして作製することができる。先ず、コアとなる金属微粒子粉末と、シリカ(例えばコロイダルシリカ)と、必要に応じてそれ以外の添加物と、を所定の配合比で乾式または湿式のボールミル等の混合機に投入して混合し、混合粉末を調製する。次に、上記得られた混合粉末を適当な温度条件下で乾燥させる。乾燥の方法は特に制限されず、自然乾燥であっても良いし、加熱により乾燥することもできる。また、加圧(真空引き)や送風等の手法を適宜組み合わせて用いることもできる。使用する材料の種類等にもよるが、乾燥温度は例えば100℃以下(典型的には50℃以上100℃以下)に設定することができ、乾燥時間は凡そ10分〜4時間(典型的には10分〜2時間)に設定することができる。これにより、表面をシリカで被覆された金属微粒子を得ることができる。そして、表面をシリカで被覆された金属微粒子と、シリカの表面を被覆する金属(例えば金属レジネート溶液)と、を所定の配合比で混合し、再度適当な温度条件下で乾燥させる。乾燥条件は上記と同様であり得る。これにより、図1に示すような三層構造の複合金属粒子1を得ることができる。かかる複合金属粒子に、粉砕や篩いがけ、分級等の処理を適宜施すことによって、所望の粒径の複合金属粒子粉末とすることができる。粉砕処理では、従来用いられる装置(例えば、ジェットミル、プラネタリーミキサー等の非媒体型分散機や、ボールミル等の媒体型分散機)のうち一種または二種以上を特に限定なく用いることができる。
以下、複合金属粒子1の構成要素について順に説明する。
【0021】
≪金属微粒子10≫
金属微粒子10としては、導電性を示す各種金属材料の粉末を一種または二種以上混合して用いることができる。例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、または白金(Pt),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd),イリジウム(Ir)に代表される白金族元素、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、タングステン(W)等を用いることができ、なかでも銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金族元素を用いることが好ましい。かかる金属をコアとして用いることで、より低い焼成温度で互いに金属結合(焼結)して強固な接合部を形成することができる。さらにかかる金属は電気伝導性や熱伝導性が高いため、導電性や放熱性に優れた接合部を形成することができる。なお、本明細書において「金属微粒子」とは、上記導電性を示す材料以外の化合物を微量に含むものをも包含する用語である。導電性を示す材料以外の化合物としては、例えば凝集を抑制し得る保護剤(典型的には有機化合物。分散剤ともいう。)として機能し得る化合物が挙げられる。かかる化合物の量は特に限定されないが、例えばコアとなる金属100質量部に対して0.1質量部以上(典型的には0.2質量部以上、例えば0.3質量部以上)であって、5質量部以下(典型的には3質量部以下、例えば2質量部以下)とすることができる。
【0022】
金属微粒子10としては、平均粒子径(一次粒子径)比較的小さいものが好ましい。これにより、低温でも焼成接合を行うことができ、該接合部に緻密性や高導電性、高放熱性を付与し得る。しかしながら、平均粒子径があまりに小さすぎる場合は、金属微粒子の表面をシリカで好適に被覆することが難しい。したがって、金属微粒子10の電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径は、例えば15nm以上300nm以下、好ましくは20nm以上300nm以下、より好ましくは20nm以上200nm以下とするとよい。コアとなる金属微粒子の粒子径が上記範囲にある場合、低温でも十分に焼結し、緻密で均質な接合部を形成することができる。
【0023】
また、金属微粒子10は典型的には球状であるが、球状以外(例えば鱗片形状、針形状等)のものを用いることもできる。ここでは金属微粒子10の表面にシリカ等を被覆するため、70質量%以上(例えば80質量%以上)が球状またはそれに類似する形状を有することが好ましい。かかる微粒子を用いることで、より均質な複合金属粒子1を得ることができる。微粒子の形状は、例えば電子顕微鏡(例えばSEM)によって少なくとも30個以上(例えば30個〜100個)の粒子を観察することによって決定することができる。なお、本明細書において「球状」とは、球状、ラグビーボール状、多角体状等を含む形状であり、例えば粒子の最も長い辺の長さ(A)と、最も短い辺の長さ(B)の比(いわゆるアスペクト比:A/B)が、1以上であって、5以下(典型的には2以下、好ましくは1.5以下)の粒子を指す。
【0024】
≪シリカ12≫
シリカ12(典型的には、二酸化ケイ素(SiO))としては、市販品を購入してもよいし、好ましい性状のものを作製することもできる。作製方法に関しては特に制限はなく、従来と同様の手法を用いることができる。また、シリカ12は典型的には粒子状(粉末状)である。かかる性状は特に限定されないが、例えば平均粒子径は0.1nm以上100nm以下(典型的には5nm以上50nm以下)とすることができる。平均粒子径が小さいものほどコア粒子の表面を均質に被覆し得るため、好ましい。金属微粒子10とシリカ12との平均粒径の比は特に限定されないが、例えば金属微粒子10の平均粒径Aとシリカ12の平均粒径Bとの比(A/B)が、1以上であって、100以下(典型的には70以下、例えば50以下)であることが好ましい。上記範囲を満たす場合、金属微粒子10表面をより均質なものとすることができる。
【0025】
なかでも球形度の高い単分散シリカ(大きさや形状が比較的揃っているシリカ)を好ましく用いることができる。単分散シリカの好適例としては、コロイダルシリカ(即ち、シリカを水や有機溶媒等の溶媒に分散させたコロイド液。コロイド液は、ゾル、ゲルを包含するものとする。)が挙げられる。なかでも、平均粒子径100nm以下(例えば5nm以上50nm以下)の球状シリカ粉末(特に単分散球状シリカ粒子)が分散してなるコロイダルシリカを好ましく用いることができる。このようなコロイダルシリカは、シリカの表面に電気二重層が形成されることによって水等の溶媒に高度に分散している。また、シリカの表面を種々のポリマー等で修飾することによって、有機溶媒に安定的に分散されたコロイダルシリカを用いることもできる。このようなコロイダルシリカは市販されており、所望する平均粒子径およびSiO濃度(質量%)に応じて、好ましいコロイダルシリカを入手する(例えば、日産化学工業株式会社製の商品名「スノーテックス」を購入する)ことができる。
【0026】
なお、シリカは金属に比べて導電性が低いため、複合金属粒子1におけるシリカ12の含有量が極端に多い場合には、接合部の導電性が低下する虞がある。一方、シリカの含有量が極端に少なすぎる場合は、接合部の接合強度が低くなりがちである。したがって、複合金属粒子1におけるシリカ12の含有量は、例えば上記コアとなる金属微粒子100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下とする。シリカの含有量が上記範囲にある接合材は、優れた導電性と高い接合強度とを備える接合部を形成することができる。
【0027】
≪金属14≫
金属14としては、例えば上記コアとなる金属微粒子10として示した金属材料の中から、一種または二種以上を適宜用いることができる。例えば、被接合材として金属部材を用いる場合には、かかる金属部材と同種の金属材料を用いることで接触抵抗(界面抵抗)を低減することができる。より具体的には、例えば銅(Cu)は種々の金属の中でも電気伝導性に優れ且つ比較的安価であるため、電子材料(例えば、電子回路の配線パターンを形成する材料)として多用されている。このため、被接合材として銅製の電子材料を用いる場合には、複合金属粒子1の表面を銅で被覆することが好ましい。被接合材と同種の金属で被覆された複合金属粒子1を用いることで、接合部における接触抵抗を低減することができる。複合金属粒子1の最表面を被覆する金属材料14の量は特に限定されないが、例えば上記コアとなる金属微粒子100質量部に対して、典型的には5質量部以上60質量部以下、例えば10質量部以上50質量部以下、好ましくは15質量部以上40質量部以下となるよう含有させることができる。
【0028】
なかでも、金属材料14を構成元素とする有機金属化合物(金属レジネート)を、溶媒中に溶解させた溶液(金属レジネート溶液)を好ましく用いることができる。かかる溶液を用いることによって、所望の金属元素をシリカの表面により均一に(例えば、膜状あるいは層状に)付与することができる。
金属レジネートとしては、例えばオクチル酸、2−エチルヘキサン酸、アビエチン酸、オレイン酸、ナフテン酸、リノレン酸、ネオデカン酸等、比較的炭素数の大きな(例えば炭素数8以上の)カルボン酸の金属塩;スルホン酸の金属塩;上記金属元素を含むアルキルメルカプチド(アルキルチオラート)、アリールメルカプチド(アリールチオラート)、メルカプトカルボン酸エステル;等を用いることができる。
【0029】
金属レジネートを溶解させる溶媒(典型的には有機溶媒)としては、上記金属レジネートが可溶であれば特に制限なく、例えば一般的に使用され得る有機溶剤を適宜用いることができる。このような有機溶剤としては、テルピネオール等のアルコール系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート等のエステル系溶剤;エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体;トルエン、キシレン等が挙げられる。
金属レジネート溶液中の金属元素の割合は特に限定されないが、例えば金属レジネート溶液全体の1質量%以上50質量%以下(典型的には5質量%以上25質量%以下、例えば5質量%以上20質量%以下)の割合で上記金属元素が含まれている金属レジネート溶液を好ましく用いることができる。このような金属レジネート溶液としては市販されているものをそのまま用いることもできるし、所望の金属を含む金属レジネートと溶媒とを混合して調製したものを用いることもできる。
【0030】
≪導電性ペースト≫
ここで開示される導電性接合材は、上述した複合金属粒子1を主体として構成されており、実質的に複合金属粒子1から構成される導電性接合材を好ましく用いることができる。かかる導電性接合材の形態は特に限定されず、例えば粉末状(粒子状)であってもよく、複合金属粒子1と任意の分散溶媒とを含むペースト状(以下、「導電性ペースト」という。)であってもよい。さらに、一旦ペースト状に調製したものを乾燥(もしくは焼成)させた固体状(ゾル状、ゲル状を含む。)であってもよい。導電性接合材は少なくとも2つの被接合部分(例えば2種類の被接合材)を接合するために用いられるため、かかる用途においてはペースト状のもの(導電性ペースト)を好ましく用いることができる。これにより均質な接合部を安定して形成することができる。導電性ペーストの調製は従来公知の手法によって行うことができる。具体的には、複合金属粒子1とバインダとを溶媒中に添加し、従来公知の種々の攪拌・混合操作(例えば、超音波、マグネチックスターラー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ロールミル等)によって混合し、溶媒中に分散させることで調製することができる。この際、溶媒中に分散させる順序も特に限定されず、複合金属粒子1とバインダとを同時に溶媒中に添加してもよく、先ずどちらか一方を溶媒中に添加して分散させた後にもう一方を添加し分散させてもよい。
【0031】
導電性ペーストの分散溶媒としては、導電性接合材を好適に分散できるもののうち、一種または二種以上を適宜用いることができる。かかる溶媒は有機系溶媒と無機系溶媒とに大別される。有機系溶媒としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、有機酸系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、または他の有機溶剤が挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えば、テルピネオール、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、1−デカノール、ドデカノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール-t-ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール-t-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチレン、トルエン、キシレン、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン等を用いることもできる。無機系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
導電性ペースト中の分散溶媒の割合は特に限定されないが、上記複合材料を均一に分散(または溶解)し得る量が好ましい。例えば、導電性ペースト全体における分散溶媒の含有率は、導電性ペースト全体の1質量%以上40質量%以下(例えば5質量%以上35質量%以下)とすることが好ましい。上記濃度のペーストでは複合金属粒子の凝集が抑制され、緻密性や電気伝導性に優れた接合部を形成することができる。
【0032】
導電性ペーストには必要に応じてバインダや任意で付加し得る他の成分(例えば分散剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤等の添加剤)を添加することもできる。バインダや添加剤等は特に限定されるものではなく、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。
バインダとしては、セルロースまたはその誘導体を用いることが好ましい。より具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ブチラールおよびこれらの塩を用いることができる。あるいはポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリウレタン等のウレタン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のビニル系重合体;ポリエチレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン等のエチレン系ポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル共重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等のゴム類;を用いることもできる。導電性ペースト中のバインダの含有率は特に限定されないが、導電性ペースト全体の1質量%以上(例えば2質量%以上)であって、20質量%以下(例えば10質量%以下、好ましくは7質量%以下)とすることが好ましい。
【0033】
分散剤としては、疎水性鎖と親水性基をもつ高分子化合物や、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩等を有するアニオン性化合物やアミン等のカチオン性化合物等を用いることができる。より具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ等を用いることができる。
【0034】
≪セラミック電子デバイス≫
また他の側面として、例えば図2に示すように、ここで開示される導電性接合材の焼成物によってセラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料が相互に接合されているセラミック電子デバイス100(典型的にはパワーデバイス)が提供される。上記電子材料は、例えば、セラミック絶縁基板(配線基板)104、回路の配線パターン106、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT),MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor),ダイオード等の半導体素子108であり得る。ここで開示される導電性接合材は、従来に比べ低い温度(例えば300℃〜400℃)でも焼結し得、緻密で高強度な接合部を形成し得る。また、かかる接合材は最表面を金属で被覆された複合金属粒子1を主体として構成されているため、これを用いてなる接合部(例えば配線パターン106と半導体素子108との接合部107)は優れた導電性や高い放熱性を備え得る。さらに、構成元素としてケイ素(Si)を含有するため、炭化ケイ素(SiC)に代表されるようなセラミック電子材料との親和性に優れ、該材料の接合部における抵抗(接触抵抗)を低減し得る。したがって、かかる接合部を有するセラミック電子デバイスは優れた性能を発揮することができる。
【0035】
なお、本明細書において「電子デバイス」とは、基板上に少なくとも1つの半導体素子を有する電子部品をいう。また、本明細書において「セラミック電子材料」とは、電子素子等を構成する電子材料のうち、少なくとも一部がセラミックで構成されている電子材料を言う。このようなセラミック電子材料を構成するセラミックとしては、基本成分が金属酸化物からなる酸化物系のセラミック;基本成分が金属の炭化物、窒化物、ホウ化物、フッ化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等からなる非酸化物系セラミック;が挙げられる。より具体的には、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、ステアタイト(MgOSiO)、サイアロン(Sialon、Si−AlN−Al固溶体)、アルミナ(Al)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、ダイヤモンド(C)等が挙げられる。
【0036】
≪セラミック電子デバイスの製造方法≫
さらに他の側面として、ここで開示される導電性接合材の焼成物によってセラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料が相互に接合されているセラミック電子デバイスの製造方法が提供される。かかる製造方法は、(1)上記のいずれか1つに記載の導電性接合材と、上記セラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料と、を用意すること;(2)上記導電性接合材によって上記電子材料を相互に接着すること;および(3)上記導電性接合材によって接着した電子材料を、300℃以上500℃未満の温度で焼成して形成すること;を包含する。ここで開示される接合材は、500℃未満(好ましくは400℃以下、例えば300℃)で焼成接合した場合であっても、緻密で強固な接合部を形成することができる。したがって、上記製造方法によれば接合部以外(例えば電子材料)への熱の影響を最小限にとどめることができ、好適である。
【0037】
ここで開示される導電性接合材を用いて製造されるセラミック電子デバイスは、上述の通り接合部に特徴を有しており、それ以外(例えば、接合部以外の構成部材や製造プロセス)は、従来のセラミック電子デバイスと同様とすることができる。以下、順に説明する。
【0038】
かかる製造方法では、先ず、導電性接合材と、セラミック電子材料を含む少なくとも二つの電子材料と、を用意する。導電性接合材および電子材料は、既に上述したものを適宜用いることができる。
次に、導電性接合材によって上記電子材料を相互に接着する。かかる接着は、典型的には基材となる電子材料(セラミック電子材料であり得る。)の接合面に、従来公知の塗布方法(例えば、スクリーン印刷法、ディスペンサー塗布法、ディップ塗布法、インクジェット法等)によって所望する膜厚や塗膜パターンとなるよう導電性接合材(典型的には導電性ペースト)を塗布し、該導電性接合材を介して他の電子材料(セラミック電子材料であり得る。)を設置し接着させる。接合材を塗布する厚み(平均厚み)は特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下とすることができる。かかる厚みとすることで、より高強度かつ靱性の低い接合部を形成することができる。
あるいは、先ず被接合材の被接合部分を相互に接触または接続させ、当該接続した部分に導電性接合材を付与することもできる。
【0039】
そして、典型的には導電性接合材によって接着した電子材料を適当な温度(典型的には30℃以上100℃以下、例えば80℃以上100℃以下)で予備乾燥させる。かかる乾燥後、導電性接合材が十分に焼結され得る温度(典型的には500℃以下、例えば300℃以上500℃未満、好ましくは300℃以上400℃以下)において所定時間、焼成を行う。ここで開示される導電性接合材は、従来に比べて低い温度で焼結し、強固な接合部を形成することができる。このため、接合材以外(典型的には電子材料)への熱の影響(熱損傷)を最小限にとどめることができ、耐熱性の観点から従来は使用し得なかった材料をも採用することができる。さらに、例えばセラミック電子デバイスを一括して焼成接合させることをも可能とし得る。
なお、焼成時には導電性接合材の焼結性を高め得る操作(例えば圧力を負荷すること)を適宜併用することができる。負荷する圧力は特に制限されないが、例えば10MPa以下(典型的には1MPa以上5MPa以下、例えば1MPa以上3MPa以下)とすることができる。これにより、より強固な接合部を形成することができる。なお、本明細書において「圧力」とは、大気圧に対する相対圧、即ち実際の圧力(絶対圧)から大気圧(凡そ0.1MPa)を差し引いた圧力の値を指す。
【0040】
セラミック電子材料の焼成接合後のプロセスとしては、例えば、従来と同様に半導体素子を使用用途等に応じて互いに(あるいは電極と)結線した後、樹脂等で封止してパッケージ化する。これにより、セラミック電子デバイスを製造することができる。
【0041】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0042】
[複合金属粒子(例1〜10)の合成]
まず、コアとなる銀微粒子(コア粒子、平均粒子径は表1の該当欄に示す)と、コロイダルシリカ(商品名「スノーテックス30」、日産化学工業株式会社製、平均粒子径10〜20nm)と、を表1の「コア粒子:シリカ」に示す質量比で混合し、かかる混合物を80℃で数十分間(10〜60分間)乾燥することによって、表面をシリカで被覆された銀微粒子(例1〜10)を得た。このシリカで被覆された銀微粒子に、(コア粒子を100質量部に対して)表1に示す質量比で銅レジネート溶液を添加して混合し、かかる混合物を80℃で数十分間(10〜60分間)乾燥した。これにより、図1に示すような三層構造の複合金属粒子1(すなわち、コア粒子となる銀微粒子10と、銀微粒子10の表面を被覆するシリカ12と、シリカ12の表面を被覆する銅14と、を有する複合金属粒子)を合成した。そして、この複合金属粒子(例1〜10)の平均粒子径をSEM観察によって求めた。結果を表1の該当欄に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
[複合金属粒子の導電性評価]
上記合成した複合金属粒子(例1〜10)を、それぞれ直径3mm×高さ20mmの円柱状にプレス成形し、これらを300℃で焼成して各複合金属粒子(例1〜10)に対応する焼成体(例1〜10)を得た。次に、各焼成体の表面に電極となる白金ペーストを塗布し、該電極部分に電流端子および電圧端子を接続するための白金線を取り付けて高温(850〜1100℃)で数十分間(10〜60分間)の焼き付けを行った。そして、一定の温度条件下(ここでは25℃)において、直流四端子法で各焼成体の導電率(S/cm)を測定した。結果を表2の該当欄に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の結果より、例1〜8の複合金属粒子は、実用的な観点から良好な導電性を有していることが確認された。一方、シリカの含有割合が最も高かった例9の複合金属粒子では、導電率が50S/cmと低い値だった。これは、導電性に優れた金属に対し、導電性の低いシリカの含有割合が高かったためと考えられる。また、コアとなる金属微粒子(銀微粒子)の平均粒子径が500nmと大きかった例10の複合金属粒子では、導電率が80S/cmと低い値だった。これは、コアとなる金属微粒子の粒径が大きいために焼成体の密度が低下したためと考えられる。
よって、導電性評価の観点からは、シリカの含有量は上記コアとしての銀微粒子100質量部に対して50質量部以下(例えば50質量部未満)とすることが好ましいことが示された。また、コアとしての金属微粒子の平均粒子径は、300nm以下とすることが好ましいことが示された。
【0047】
[セラミック電子デバイス(例1〜10)の構築]
上記得られた複合金属粒子(例1〜10)と分散溶媒としてのテルピネオールとを、それぞれ所定の質量比(複合金属粒子:テルピネオール=3.15:0.55)で混合して導電性ペースト(例1〜10)を調製した。次に、かかる導電性ペーストをスクリーン印刷によってCu板上に付与し、その上に市販のSiC基板(縦10mm×横10mm)を積層した。そして、かかる積層体を大気中で焼成し(300℃、1時間)、相互に接合させることによって、セラミック電子デバイス(例1〜10)を構築した。
【0048】
[接合性の評価]
上記のようにして作成したセラミック電子デバイスを用いて、万能型ボンドテスターで「SiC基板−Cu板」間の接合強度を測定した。より具体的には、デイジ・ジャパン株式会社製の万能型ボンドテスター「シリーズ4000」を用いて、垂直方向の引張強度を測定した。結果を表2の該当欄に示す。なお、表2の接合性評価の欄において、「○」は負荷荷重:3MPaの場合に外観上の変化(典型的には剥離)がみられなかったことを、「◎」はさらに高い荷重を負荷した場合にも外観上の変化がみられなかったことを、それぞれ表している。また、「×」は3MPaの荷重に対して外観上の変化(剥離)が認められたことを表している。
【0049】
表2の結果より、例1〜5および8〜10のセラミック電子デバイスでは3MPa以上の接合強度が得られ、接合後も剥離することがなく強固な接合部が形成されていることが確認された。なかでも、例1,2,4,5,9の複合金属粒子を用いた場合は、さらに高い接合強度を示すことが確認された。一方、コアとなる銀微微粒子の平均粒径が10nmと最も小さい例6のセラミック電子デバイスと、シリカの含有割合が5質量部と最も低かった例7のセラミック電子デバイスでは、3MPaの負荷荷重でも剥離が観察された。また、コアとなる銀微微粒子の平均粒径が最も大きい例10では、3MPaの負荷荷重で剥離は認められなかったものの、接合部の緻密化がやや不足していた。
よって、接合性評価の観点からは、シリカの量は上記コアとしての銀微粒子100質量部に対して10質量部以上50質量部以下とすることが好ましいことが示された。また、接合性評価や緻密化の観点からは、コアとしての銀微微粒子の平均粒径15nm以上300nm以下とすることが好ましく、複合金属粒子の平均粒子径40nm以上(例えば40nm以上400nm以下、好ましくは40nm以上300nm以下)とすることが好ましいことが示された。
【0050】
かかる結果はここで開示される発明の技術的意義を裏付けるものである。なお、金属微粒子10として、Agに換えて、Cu、Pt、Pd、Ti、Sn、Al、Coを用いた場合についても、同様の傾向となることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により、従来に比べ低い温度(典型的には500℃未満、例えば300℃以上400℃以下)で焼結した場合でも電子材料同士を高強度に接合し得る導電性接合材が提供される。かかる接合部は優れた導電性や高い放熱性を備え得るため、該接合部を備えたセラミック電子デバイスは優れた性能を発揮し得る。さらに、ここで開示される導電性接合材を用いることで、該セラミック電子デバイスを一括して焼成接合し得るため、生産性や作業効率をも向上することができる。
【0052】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 複合金属粒子
10 コア粒子(金属微粒子)
12 シリカ
14 金属
100 セラミック電子デバイス
102 放熱板
103 接合部
104 セラミック絶縁基板(配線基板)
105 接合部
106 配線パターン
107 接合部
108 半導体素子
図1
図2