特許第5687256号(P5687256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687256
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】扉構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20150226BHJP
   E06B 1/52 20060101ALI20150226BHJP
   E06B 1/70 20060101ALI20150226BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   E06B1/56 Z
   E06B1/52
   E06B1/70 F
   E06B5/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-189959(P2012-189959)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-47497(P2014-47497A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年8月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】古賀 和博
(72)【発明者】
【氏名】小早川 規
(72)【発明者】
【氏名】須賀 義明
【審査官】 神崎 共哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−210262(JP,A)
【文献】 特開2003−027618(JP,A)
【文献】 実開昭59−163079(JP,U)
【文献】 特開平09−021277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の開口に設けられる矩形状の扉枠と、当該扉枠に開閉可能に設けられた扉と、を備え、
前記扉枠は、略水平に延びる沓摺りおよび上枠と、当該沓摺りの一部と当該上枠とを連結して略鉛直方向に延びる一対の縦枠と、を備え、
前記壁には、床面に沿って延びて前記開口を通る構造スリットが設けられ、
前記扉枠の上枠および一対の縦枠は、前記壁の構造スリットよりも上側の部分に固定され、
前記沓摺りは、前記床面に固定された支持部と、前記一対の縦枠の下端に連結されて前記支持部の上にスライド可能に支持されたスライド部と、を備え、
前記支持部の上面は略平面であり、
前記スライド部は、当該支持部の上面に載置されることを特徴とする扉構造。
【請求項2】
壁の開口に設けられる矩形状の扉枠と、当該扉枠に開閉可能に設けられた扉と、を備え、
前記扉枠は、略水平に延びる沓摺りおよび上枠と、当該沓摺りと当該上枠とを連結して略鉛直方向に延びる一対の縦枠と、を備え、
前記壁には、床面に沿って延びて前記開口を通る構造スリットが設けられ、
前記扉枠の上枠および一対の縦枠は、前記壁の構造スリットよりも上側の部分に固定され、
前記床面の上面は略平面であり、
前記沓摺りは、前記一対の縦枠の下端に連結されて当該床面の上面に載置され、前記床面に対して相対移動可能であることを特徴とする扉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉と扉枠とを備える扉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、壁とこの壁の周囲の構造部材との取り合い部分に構造スリットを設けて、壁と周囲の構造部材との縁を切ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
構造スリットを設けるのは、例えば以下のような理由である。
すなわち、建物の壁の配置が平面視で極端に偏っていると、地震時に壁が周囲の部材の変形を拘束するため、建物が偏心してねじれが生じやすくなり、構造部材の損傷が大きくなるおそれがある。
【0004】
また、建物の壁の配置が高さ方向に極端に偏っている場合も同様である。つまり、特定の層に多くの壁が配置される場合、地震時には、壁が周囲の部材の変形を拘束するので、この層の剛性が大きくなる。よって、剛性の小さな層に大きな変形が生じて、構造部材の損傷が大きくなるおそれがある。
【0005】
また、柱の上下端に腰壁や垂れ壁が設けられている場合、柱が腰壁や垂れ壁に拘束されて挙動範囲が狭くなり、この狭くなった挙動範囲に水平力が集中して、柱にせん断破壊が生じやすくなる。
【0006】
そこで、構造スリットを、壁の床面付近に床面に沿って略水平に設けたり、壁と柱との取合い部分に沿って略鉛直に設けたりする。このようにすれば、壁が周囲の構造部材の変形を大きく拘束しないので、地震時の建物の損傷を低減できる。
【0007】
ところで、構造スリットを設けた壁に、扉および扉枠からなるドアセットを設ける場合がある。この場合、床面に沿って延びる構造スリットとドアセットとの取合いをどのようにするかが問題となる。
ここで、ドアセットについては、扉枠を周囲の躯体に固定した場合に、面内変形角の許容値が定められている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−291468号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】JIS規格 A4702:2000 「ドアセット」、2007年
【非特許文献2】JIS規格 A1521:1996 「片開きドアセットの面内変形追随性試験方法」、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の定められた許容値は、ドアセットが全体として変形可能な許容値を示すものであり、上述のように床面に沿って構造スリットを設けると、地震時にドアセットの下端縁に局部的に変位が集中するため、ドアセットが破壊されたり大きく歪んだりして、扉を開閉できなくなる、という問題があった。
【0011】
本発明は、床面に沿って構造スリットを設けても、地震時の挙動に追随できる扉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の扉構造(例えば、後述の扉構造1)は、壁(例えば、後述の壁2)の開口(例えば、後述の開口10)に設けられる矩形状の扉枠(例えば、後述の扉枠20)と、当該扉枠に開閉可能に設けられた扉(例えば、後述の扉30)と、を備え、前記扉枠は、略水平に延びる沓摺り(例えば、後述の沓摺り21)の一部および上枠(例えば、後述の上枠22)と、当該沓摺りと当該上枠とを連結して略鉛直方向に延びる一対の縦枠(例えば、後述の縦枠23A、23B)と、を備え、前記壁には、床面(例えば、後述の屋内側床面3および屋外側床面4)に沿って延びて前記開口を通る構造スリット(例えば、後述の構造スリット5)が設けられ、前記扉枠の上枠および一対の縦枠は、前記壁の構造スリットよりも上側の部分に固定され、前記沓摺りは、前記床面に固定された支持部(例えば、後述の支持部40)と、前記一対の縦枠の下端に連結されて前記支持部の上にスライド可能に支持されたスライド部(例えば、後述のスライド部41)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、扉枠の上枠、縦枠、および沓摺りのスライド部は、壁と一体となり、沓摺りの支持部は、床面と一体となる。よって、壁と床面とが変位しても、スライド部の下面が支持部の上面に対して摺動するので、この変位を受け流して、地震時の構造スリットの挙動に追従できる。
また、沓摺りのみが特殊な構造であるので、扉構造の製作や取付けのコストを低く抑えることができる。
また、支持部でスライド部を支持したので、多くの歩行者や重量物を載せた台車等が通過して、沓摺りにかかる鉛直荷重が大きい場合でも、スライド部が沈下するのを防止できる。
【0014】
請求項2に記載の扉構造(例えば、後述の扉構造1A)は、壁(例えば、後述の壁2)の開口(例えば、後述の開口10)に設けられる矩形状の扉枠(例えば、後述の扉枠20)と、当該扉枠に開閉可能に設けられた扉(例えば、後述の扉30)と、を備え、前記扉枠は、略水平に延びる沓摺り(例えば、後述の沓摺り21)および上枠(例えば、後述の上枠22)と、当該沓摺りと当該上枠とを連結して略鉛直方向に延びる一対の縦枠(例えば、後述の縦枠23A、23B)と、を備え、前記壁には、床面(例えば、後述の屋内側床面3および屋外側床面4)に沿って延びて前記開口を通る構造スリット(例えば、後述の構造スリット5)が設けられ、前記扉枠の上枠および一対の縦枠は、前記壁の構造スリットよりも上側の部分に固定され、前記沓摺りは、前記一対の縦枠の下端に連結されて前記床面に対して相対移動可能であることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、扉枠の上枠、縦枠、および沓摺りは、壁と一体となる。よって、壁と床面とが変位しても、沓摺りの下面が床面に対して相対移動するので、この変位を受け流して、地震時の構造スリットの挙動に追従できる。
また、沓摺りのみが特殊な構造であるので、扉構造の製作や取付けのコストを低く抑えることができる。
【0016】
本発明では、壁(例えば、後述の壁2)の開口(例えば、後述の開口10)に設けられる矩形状の扉枠(例えば、後述の扉枠20)と、当該扉枠に開閉可能に設けられた扉(例えば、後述の扉30)と、を備え、前記扉枠は、略水平に延びる上枠(例えば、後述の上枠22)と、当該上枠の両端から下方に向かって略鉛直方向に延びる一対の縦枠(例えば、後述の縦枠23A、23B)と、を備え、前記壁には、床面(例えば、後述の床面3)に沿って延びて前記開口を通る構造スリット(例えば、後述の構造スリット5)が設けられ、前記扉枠の上枠および一対の縦枠は、前記壁の構造スリットよりも上側の部分に固定されて前記扉を開閉可能に支持することが好ましい
【0017】
この発明によれば、扉枠の上枠および縦枠は、壁と一体となる。よって、壁と床面とが変位しても、この変位を受け流して、地震時の構造スリットの挙動に追従できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、扉枠の上枠、縦枠、および沓摺りのスライド部は、壁と一体となり、沓摺りの支持部は、床面と一体となる。よって、壁と床面とが変位しても、スライド部の下面が支持部の上面に対して摺動するので、この変位を受け流して、地震時の構造スリットの挙動に追従できる。また、沓摺りのみが特殊な構造であるので、扉構造の製作や取付けのコストを低く抑えることができる。また、支持部でスライド部を支持したので、多くの歩行者や重量物を載せた台車等が通過して、沓摺りにかかる鉛直荷重が大きい場合でも、スライド部が沈下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る扉構造の正面図である。
図2】前記実施形態に係る扉構造の沓摺りの拡大正面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】前記実施形態に係る扉構造の扉枠を壁に取り付ける手順を説明するための図(その1)である。
図5】前記実施形態に係る扉構造の扉枠を壁に取り付ける手順を説明するための図(その2)である。
図6】前記実施形態の第1変形例に係る扉構造の沓摺りの拡大断面図である。
図7】前記実施形態の第2変形例に係る扉構造の沓摺りの拡大断面図である。
図8】本発明の第2実施形態およびその変形例に係る扉構造の沓摺りの拡大断面図である。
図9】本発明の参考例およびその変形例に係る扉構造の下端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る扉構造1の正面図(屋外側から視た図)である。
【0021】
扉構造1は、屋内と屋外とを仕切る鉄筋コンクリート造の壁2の開口10に設けられ、屋内側床面3と、この屋内側床面3よりも低い屋外側床面4と、の間で往来可能とするものである。
屋内側床面3と屋外側床面4との境界部分は、切り欠かれて切欠き部11が形成されている。
開口10は矩形状であり、下辺縁となる切欠き部11、上辺縁12、側辺縁13A、13B、で構成される。
【0022】
扉構造1は、開口10に設けられる矩形状の扉枠20と、この扉枠に開閉可能に設けられた扉30(図2図3参照)と、を備える。
扉枠20は、略水平に延びる沓摺り21および上枠22と、これら沓摺り21の一部と上枠22とを連結して略鉛直方向に延びる一対の縦枠23A、23Bと、を備える。
上枠22は、開口10の上辺縁12に固定され、一対の縦枠23A、23Bは、開口10の側辺縁13A、13Bに固定されている。
【0023】
壁2の下端側には、床面3、4に沿って延びて開口10を通る構造スリット5が設けられており、これにより、構造スリット5の上下の部分は相対移動可能となっている。
この構造スリット5は、壁2の下端側に設けられて略水平に延びる第1スリット5Aと、沓摺り21と切欠き部11との間を略水平に延びる第2スリット5Bと、で構成される。
【0024】
図2は、沓摺り21の部分拡大正面図であり、図3は、図2のA−A断面図である。
沓摺り21は、切欠き部11に固定された平板状の支持部40と、この支持部40の上にスライド可能に支持されて一対の縦枠23A、23Bの下端に連結された筒状のスライド部41と、を備える。
【0025】
支持部40の上面は、円滑な平面となっている。また、この支持部40の下面には、所定間隔おきにリブ401が設けられており、このリブ401で溶接用アンカー14に溶接固定されている。この支持部40の下側の空間には、モルタルが詰められて、トロ詰め部15が形成されている。
【0026】
スライド部41は、上面が開放された筒状のスライド部本体42と、このスライド部本体42に皿ビス431で取り付けられてスライド部本体42の上面を塞ぐ平板状のカバー部43と、を備える。
【0027】
カバー部43の屋内側の端縁は、スライド部本体42から屋内側に向かって延出して、屋内側床面3の上に載置されており、このカバー部43の屋内側の端縁の下面と屋内側床面3とは、互いに摺動するスライド面S1となっている。このスライド面S1には、フッ素樹脂シート(例えばテフロン(登録商標)シート)などのすべり材を介装してもよい。
【0028】
一方、カバー部43の屋外側の端縁は、スライド部本体42から屋外側に向かって延出して、スライド部本体42とともに溝部44を形成している。
この溝部44には、ガスケット45が嵌め込まれている。
【0029】
スライド部本体42の下面は、支持部40の上面に載せられており、このスライド部本体42の下面と支持部40の上面との間は、互いに摺動するスライド面S2となっている。このスライド面S2には、フッ素樹脂シートなどのすべり材を介装してもよい。
スライド部本体42の屋外側の端縁と切欠き部11の底面との間の隙間は、シーリング46が打設されている。
またスライド部41と支持部40とは、仮止めボルト47で固定可能となっている。
【0030】
以上の扉構造1では、扉枠20の上枠22、縦枠23A、23B、および沓摺り21のスライド部41は、壁2と一体となっている。一方、沓摺り21の支持部40は、床面3、4と一体となっている。
よって、地震動により、壁2が床面3、4に対して面内方向あるいは面外方向に変位すると、スライド部41は、スライド面S1、S2で屋内側床面3および支持部40に対してスライドして変位する。
このとき、扉構造1の床面3、4に対する面内方向に追従可能な変位の最大値は、縦枠23Aの端面から切欠き部11の側壁面までの寸法d1となる。また、扉構造1の面外方向(屋内側)に追従可能な変位の最大値は、スライド部本体42の屋内側側面から切欠き部11の屋内側の内壁面までの寸法d2となる。
【0031】
上述の扉構造1の扉枠20を壁2の開口10に取り付ける手順は、以下のようになる。
まず、ドアセット製作工場にて、沓摺り21のスライド部本体42、上枠22、縦枠23A、23Bを矩形枠状に一体に製作する。そして、仮止めボルト47で支持部40をスライド部41に取り付けるとともに、カバー部43をスライド部本体42に皿ビス431で固定取り付けておく。この状態で施工現場に搬入する。
【0032】
一方、施工現場では、壁2の開口10の切欠き部11、上辺縁12、側辺縁13A、13Bに溶接用アンカー14を施工しておく。
【0033】
次に、図4(a)に示すように、カバー部43をスライド部本体42から取り外して、切欠き部11に建て込む。このとき、断面三角形状の楔16を数種類用いて、スライド部本体42の床面3、4からの高さや水平方向の位置を調整する。
ここで、高さ方向の調整代(レベル調整代)は、切欠き部11の底面から支持部40のリブ401の下端までの寸法t1である。
【0034】
次に、高さと水平方向の位置の調整が完了したら、図4(b)に示すように、支持部40のリブ401を切欠き部11の溶接用アンカー14に溶接して固定する。
また、上枠22を、上辺縁12に打設した溶接用アンカー14に溶接して固定し、縦枠23A、23Bを、側辺縁13A、13Bに打設した溶接用アンカー14に溶接して固定する。
その後、支持部40の下側の空間にモルタルを詰めてトロ詰め部15を形成する。
【0035】
次に、図4(c)に示すように、仮止めボルト47を取り外す。これにより、スライド部本体42が支持部40に対してスライド可能となる。
【0036】
次に、図5(a)に示すように、カバー部43をスライド部本体42に皿ビス431で取り付ける。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、スライド部本体42の屋外側の端縁と切欠き部11の底面との間の隙間にシーリング46を打設するとともに、溝部44にガスケット45を嵌め込む。
【0038】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)扉枠20の上枠22、縦枠23A、23B、および沓摺り21のスライド部41は、壁2と一体となり、沓摺り21の支持部40は、床面3、4と一体となる。よって、壁2が床面3、4に対して変位しても、スライド面S1、S2で摺動するので、この変位を受け流して、地震時の構造スリット5の挙動に追従できる。
また、沓摺り21のみが特殊な構造であるので、扉構造1の製作や取付けのコストを低く抑えることができる。
【0039】
(2)支持部40でスライド部41を支持したので、多くの歩行者や重量物を載せた台車等が通過して、沓摺り21にかかる鉛直荷重が大きい場合でも、スライド部41が沈下するのを防止できる。
【0040】
(3)扉構造1の面内方向に追従可能な変位の最大値は、寸法d1で決定され、面外方向に追従可能な変位の最大値は、寸法d2で決定されるので、これらの寸法d1、d2を適宜設定することにより、必要な追従可能変位量を確保できる。
【0041】
なお、本実施形態では、支持部40を平板状としたが、これに限らず、図6に示すように、支持部40を断面矩形状の筒状として、支持部40の剛性を向上させてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、支持部40を平板状とし、スライド部41を筒状としたが、これに限らず、図7に示すように、支持部40を筒状とし、スライド部41を平板状としてもよい。なお、この場合、床面3と床面4との段差が小さいので、シーリング46を上向きに打設し、溝部44には、シーリングを打設した後、ガスケット45を嵌め込んでいる。このような構造にすれば、段差を小さくすることができ、車いすの通行や歩行に障害のある人の通行が容易となる。
【0043】
〔第2実施形態〕
図8(a)は、本発明の第2実施形態に係る扉構造1Aの沓摺り21の断面図である。
本実施形態では、沓摺り21に支持部が設けられておらず、沓摺り21が第1実施形態のスライド部41のみで構成される点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、沓摺り21であるスライド部41は、一対の縦枠23A、23Bの下端に支持されて、床面3および切欠き部11に対して相対移動可能となっている。
また、カバー部43の屋内側の端縁は、スライド部本体42から屋内側に向かって延出して、屋内側床面3の上に位置しており、このカバー部43の屋内側の端縁の下面と屋内側床面3とは、相対変位する相対変位面Eとなっている。この相対変位面Eには、フッ素樹脂シートなどのすべり材を介装してもよい。
【0044】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(4)扉枠20の上枠22、縦枠23A、23B、および沓摺り21であるスライド部41は、壁2と一体となる。よって、壁2が床面3、4に対して変位しても、スライド部41の下面が床面3に対して相対移動可能であるので、この変位を受け流して、地震時の構造スリット5の挙動に追従できる。
また、沓摺り21のみが特殊な構造であるので、扉構造1Aの製作や取付けのコストを低く抑えることができる。
【0045】
(5)扉構造1Aの面外方向に追従可能な変位の最大値は、寸法d2で決定されるので、寸法d2を適宜設定することにより、必要な追従可能変位量を確保できる。
【0046】
なお、本実施形態では、スライド部41のスライド部本体42を筒状としたが、これに限らず、図8(b)に示すように、スライド部本体42を折り曲げた板状とし、カバー部43の下面に補強材としてアングル材48を設けてもよい。
【0047】
参考例
図9(a)は、本発明の参考例に係る扉構造1Bの下端部の断面図である。
参考例では、沓摺りが設けられていない点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、壁2は屋内に設けられており、扉構造1Bは、面一の屋内側床面3を往来可能とする。
扉構造1Bの扉枠20は、三方枠であり、略水平に延びる上枠22と、この上枠22の両端から下方に向かって略鉛直方向に延びる一対の縦枠23A、23Bと、を備える。
床面3には、沓摺りの代わりに、断面略コの字形状の見切縁24が取り付けられており、上枠22および縦枠23A、23Bは、この見切縁24に対して相対移動可能である。
【0048】
参考例によれば、以下のような効果がある。
(6)扉枠20の上枠22、縦枠23A、23Bは、壁2と一体となる。よって、壁2が床面3、4に対して変位しても、扉枠20の上枠22、縦枠23A、23Bは床面3と縁が切れているので、この変位を受け流して、地震時の構造スリット5の挙動に追従できる。
【0049】
なお、本参考例では、見切縁24を断面略コの字形状としたが、これに限らず、図9(b)に示すように、見切縁24を平板状としてもよいし、図9(c)に示すように、見切縁を設けなくてもよい。
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
S1、S2…スライド面
E…相対変位面
t1…レベル調整代
d1…扉構造の面内方向に追従可能な変位の最大値
d2…扉構造の面外方向に追従可能な変位の最大値
1、1A、1B…扉構造
2…壁
3…屋内側床面
4…屋外側床面
5…構造スリット
5A…第1スリット
5B…第2スリット
10…開口
11…切欠き部
12…上辺縁
13A…側辺縁
13B…側辺縁
14…溶接用アンカー
15…トロ詰め部
16…楔
20…扉枠
21…沓摺り
22…上枠
23A…縦枠
23B…縦枠
24…見切縁
30…扉
40…支持部
41…スライド部
42…スライド部本体
43…カバー部
44…溝部
45…ガスケット
46…シーリング
47…仮止めボルト
48…アングル材
401…リブ
431…皿ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9