特許第5687276号(P5687276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687276
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】涙点プラグからの薬剤のパルス放出
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20150226BHJP
【FI】
   A61F9/007 170
   A61F9/007 150
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-526900(P2012-526900)
(86)(22)【出願日】2010年8月24日
(65)【公表番号】特表2013-502991(P2013-502991A)
(43)【公表日】2013年1月31日
(86)【国際出願番号】US2010046442
(87)【国際公開番号】WO2011025766
(87)【国際公開日】20110303
【審査請求日】2013年3月19日
(31)【優先権主張番号】61/238,470
(32)【優先日】2009年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/857,885
(32)【優先日】2010年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ピュー・ランドール・ビー
(72)【発明者】
【氏名】トカルスキー・ジェイソン・エム
(72)【発明者】
【氏名】コールドレン・ブレット・エイ
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/035562(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/097468(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0177153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤のパルス送達デバイスであって、
涙点プラグの空洞に挿入されるチューブと、
前記チューブ内に大体直線状に配置される2つ以上の分離したパルス送達ユニットと、を含み、
前記2つ以上の分離したパルス送達ユニットが、前記活性薬剤を含むコアと、前記コアを包囲する封入層と、を含み、
前記分離したパルス送達ユニットが、互いに間隔を置いて大体直線配列で配置され、前記チューブから複数の活性薬剤のパルスを放出するように構成され、
それぞれの活性薬剤のパルスが、大体等容積の活性薬剤を含み、それぞれの活性薬剤のパルスが、大体等濃度の活性薬剤を含む、パルス送達デバイス。
【請求項2】
記2つ以上の分離したパルス送達ユニットが、水溶性封入ビーズを含む、請求項1に記載のパルス送達デバイス。
【請求項3】
前記パルス送達ユニットの前記大体直線状の配置により、涙液へのパルス送達ユニットの曝露が、一度に1つのパルス送達ユニットに制限される、請求項2に記載のパルス送達デバイス。
【請求項4】
第1のパルス送達ユニットと第2のパルス送達ユニットとの間に境界層を更に含む、請求項2に記載のパルス送達デバイス。
【請求項5】
パルス送達ユニットと前記涙点プラグの前記空洞の開口部との間に境界層を更に含む、請求項1に記載のパルス送達デバイス。
【請求項6】
前記境界層が生分解性膜を含む、請求項5に記載のパルス送達デバイス。
【請求項7】
前記境界層が半多孔性膜を含む、請求項5に記載のパルス送達デバイス。
【請求項8】
前記境界層がメッシュを含む、請求項5に記載のパルス送達デバイス。
【請求項9】
前記活性薬剤含有物質が、ポリ(ε−カプロラクトン)及びエチレンビニルアセテートを含む、請求項2に記載のパルス送達デバイス。
【請求項10】
前記ポリ(ε−カプロラクトン)及びエチレンビニルアセテートが、それぞれ約50重量パーセントの量で存在する、請求項9に記載のパルス送達デバイス。
【請求項11】
前記チューブが、比較的低濃度の前記活性薬剤を含む第1の活性薬剤含有物質を含む第1のパルス送達ユニットと、比較的高濃度を含む第2の活性薬剤含有物質を含む第2のパルス送達ユニットと、を含む、請求項2に記載のパルス送達デバイス。
【請求項12】
前記コアが、活性薬剤含有物質と、相分離内包物と、を含む、請求項1に記載のパルス送達デバイス。
【請求項13】
前記コアが、活性薬剤含有物質と、不安定化内包物と、を含む、請求項1に記載のパルス送達デバイス。
【請求項14】
前記コアが、活性薬剤含有物質と、安定化内包物と、を含む、請求項1に記載のパルス送達デバイス。
【請求項15】
前記涙点プラグが、涙点プラグ本体と、前記涙点プラグ本体内の空洞と、を更に含む、請求項1に記載のパルス送達デバイス。
【請求項16】
前記涙点プラグが、前記プラグが涙点内に挿入されるとき、前記本体外側の位置から前記空洞へのアクセス開口部を更に含む、請求項15に記載のパルス送達デバイス。
【請求項17】
前記涙点プラグが、前記プラグが涙点外で保管されるとき、前記本体外側の位置から前記空洞へのアクセスを妨げる、前記空洞への前記開口部全体に対する封止部を更に含む、請求項16に記載のパルス送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年8月17日に出願された米国特許出願第12/857,885号、及び2009年8月31日に出願された米国仮特許出願第61/238,470号に対する優先権を主張し、これらの内容は依拠され参照として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、薬剤などの1つ又は2つ以上の物質を涙点プラグリザーバから分与するための、並びに、いくつかの実施形態において、涙点プラグの空洞内へのパルス放出に役立つ形状で製薬成分を分与するための、方法及び装置を記述するものである。
【背景技術】
【0003】
眼疾病及び眼疾患の治療には、多くの場合、薬剤が眼に投与される。薬剤を眼に送達する従来の手段には、眼表面に対する局所適用が含まれる。眼は、薬剤が適切に構成されている場合、局所適用されたその薬剤が角膜を貫通し、眼内で治療的濃度レベルまで上昇できるため、比類なく局所投与に好適である。眼疾病及び眼疾患用の薬剤は経口により又は注射により投与することができるが、経口投与では活性薬剤が所望の薬理効果を有するには低すぎる濃度で眼に到達する可能性があり、活性薬剤の効用は、有意な全身性副作用により悪化され、また注射は、感染症の危険をもたらすことから、それらの投与経路は不都合である。
【0004】
大部分の眼用薬剤は、現在、点眼薬により局所送達され、点眼薬はある用途には有効であるが非効率的である。液滴が眼に滴下された際、液滴は眼と眼瞼との間のポケットである結膜嚢を過充填し、眼瞼縁から頬上へ溢れるため、液滴の相当の部分が損失する。加えて、眼表面上に残留した液滴の相当の部分が涙点内に排出されて、薬物の濃度が希釈される。
【0005】
他の方法では、長期間にわたる薬剤の溶出(eluding)を可能にする。しかしながら、一部の薬剤は、所定の投与量で定期的に送達されるときが最も有効である。したがって、眼科領域に薬剤を送達するための別の方法及びデバイスが、有益となる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、涙点プラグを介して薬剤をパルス投与するためのデバイスに関し、涙点プラグ空洞内に薬剤を配置することにより、涙点(punctum)内に挿入された涙点プラグを用いてこの薬剤がパルス方式で患者に送達されるような方法及び装置を含む。
【0007】
本発明によると、涙点プラグの空洞に挿入できるチューブが提供される。1つ又は2つ以上のパルス送達ユニットを、チューブ内に一般に直線状に配置する。パルス送達ユニットは、活性薬剤を含むコアと、コア周囲の封入層とを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、第1のパルス送達ユニットと第2のパルス送達ユニットとの間に境界層が含まれる。更なる実施形態では、パルス送達ユニットと涙点プラグの空洞の開口部との間に境界層を含む。非限定例として、境界層は、1つ又は2つ以上の生分解性膜、半多孔性膜、又はメッシュを含んでよい。
【0009】
別の態様では、いくつかの実施形態において、活性薬剤含有物質は、ポリ(ε−カプロラクトン)及びエチレンビニルアセテートを含んでよい。ポリ(ε−カプロラクトン)及びエチレンビニルアセテートは、例えば、約50重量パーセントの量でそれぞれ存在してよい。
【0010】
別の態様では、いくつかの実施形態において、第1のパルス送達ユニットが、比較的低濃度の活性薬剤を含む第1の活性薬剤含有物質を含んでよく、第2のパルス送達ユニットが、比較的高濃度を含む第2の活性薬剤含有物質を含んでよい。
【0011】
別の実施形態は、以下の明細書及び請求項、並びに添付図面の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明のいくつかの実施形態による涙点プラグ、及び涙点プラグ内にパルス型投与量を分与するための方法。
図1B】本発明のいくつかの実施形態による涙点プラグ、及び涙点プラグ内にパルス型投与量を分与するための方法。
図1C】本発明のいくつかの実施形態による涙点プラグ、及び涙点プラグ内にパルス型投与量を分与するための方法。
図1D】本発明のいくつかの実施形態による涙点プラグ、及び涙点プラグ内にパルス型投与量を分与するための方法。
図1E】本発明のいくつかの実施形態による涙点プラグ、及び涙点プラグ内にパルス型投与量を分与するための方法。
図2】本発明のいくつかの実施形態による涙点プラグ配置のための装置。
図3】ある期間にわたってパルス送達により送達される薬剤量のブロックグラフ。
図4】パルス型薬剤送達パッケージ。
図5A】パルス放出挿入部を伴う涙点プラグ。
図5B】パルス放出挿入部を伴う涙点プラグ。
図5C】パルス放出挿入部を伴う涙点プラグ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、活性薬剤を鼻涙管の一方又は両方、及び眼の涙液へ送達するために用いることができ、活性薬剤の送達がパルスパターンで起こる、涙点プラグを形成する装置及び方法を含む。活性薬剤を散布するための場所は、涙液内にその活性薬剤が放出され、かつ、好ましくは鼻涙管内への放出が最小限になるように配置される。パルスパターンは、チューブなどのキャリア内に、水溶性封入ビーズ、又はその他パルス送達ユニットを直線状に配列し、涙液などの水性溶液への各パルス送達ユニットの曝露を制御することにより、達成される。第1のパルス送達ユニットを水性溶液に曝露し、溶解すると、続いてパルス送達ユニット内に封入された薬剤が鼻涙管内に放出される。第1のパルス送達ユニットを溶解し、その結果薬剤の初回投与量が放出されると、続いて水性溶液に対して第2のパルス送達ユニットが曝露される。直線状に配列されたパルス送達ユニットが溶解し、次のユニットが水性溶液に曝露されるため、ユニット自体がこのパターンを繰り返す。
【0014】
いくつかの実施形態には、第1の末端部と第2の末端部とを有する涙点プラグ本体と、これら2つの末端部の間に延びる表面と、涙点プラグ本体内に収容されるリザーバと、を含み、本質的にこれらからなり、かつこれらからなる涙点プラグを形成するための装置及び方法が含まれ、リザーバは、活性薬剤含有物質及び活性薬剤を含み、本質的にこれらからなり、かつこれらからなり、活性薬剤は、パルス投与ビーズ内に直線状に存在する。涙点プラグは、例えば涙点プラグの開口部などの画定された領域を追加で含んでもよく、涙点プラグ空洞から涙点プラグ隣接領域へと活性薬剤が溶出又はその他散布するのにいっそう役立つ。いくつかの好ましい実施形態には、活性薬剤の入った空洞の直径よりも小さい直径を有する開口部を含む、活性薬剤の散布に役立つ領域が含まれる。
【0015】
本発明は更に、制御された状態で涙点プラグの空洞内に活性薬剤を送達するために使用することができるような、使用及び製造のためのデバイス及び方法をも提供する。
【0016】
ロッド、又はその他の剛性若しくは準剛性物品を挿入することによって、涙点プラグ内の空洞を充填する方法が知られている。このロッドには、製薬上の物質又はその他の薬剤が含まれ得る。しかしながら、既知の投与は、プラグから溶出する活性薬剤に頼っていた。本発明によると、直線状に進行する活性薬剤のパルスが送達される。
【0017】
定義:
本明細書で使用されるとき、用語「活性薬剤」は、疾患又は疾病を治療、抑制又は予防することができる薬剤を指す。例示的な活性薬剤には、医薬品及び栄養補助食品が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい活性薬剤は、眼、鼻及び咽喉のうちの1つ又は2つ以上の疾患又は疾病を治療、抑制又は予防することができる。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「涙点プラグ」は、それぞれ下又は上涙点を介して眼の下又は上涙小管内に挿入するのに適した寸法及び形状を有するデバイスを指す。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「開口部」は、活性薬剤がそこを通過できる寸法及び形状を有する、本発明のデバイスの涙点プラグ本体内の開口部を指す。活性薬剤のみが開口部を通過できることが好ましい。開口部は、膜、メッシュ、格子で覆われてもよく、又は覆われていなくてもよい。膜、メッシュ又は格子は、多孔質、半多孔質、透過性、半透過性及び生分解性のうちの1つ又は2つ以上であってもよい。
【0020】
ここで図1を参照すると、図1Aにおいて薬剤チューブ101は開口部102を備えて図示されており、この開口部は薬剤チューブ101本体内に形成された空洞105と液体連通している。図1Bにおいて、ディスペンサー先端103は開口部102に隣接して配置され、開口部102を通って空洞105内にパルス送達ユニット104を分与する。パルス送達ユニット104に含めることができる活性薬剤の例として、ビマトプロスト、エチレンオキシナルアセテート(ethyleneoxynalacetate)を有するビマトプロストのうち1つ又は2つ以上が挙げられる。図1Cにおいて、いくつかの実施形態では、空洞105を、境界層106又は膜を備えるディスペンサー先端103によって充填してもよい。好ましい実施形態は、涙液に可溶性の境界層106を含む。涙液など水性溶液が、所定の時間で直線状に配列されたパルス送達ユニットにアクセスするよう設計するために、境界層106の厚さ、及び水性溶液に曝露されたときの境界層の溶解時間は互いに関連し得る。したがって、境界層の厚さ及び物理的特性を調整し、眼又は鼻涙管に送達される薬剤のパルス間の時間間隔を制御することができる。
【0021】
図1Dにおいて、いくつかの実施形態では、チューブ105は、球体である封入された水溶液又は油を含む複数のパルス送達ユニット104を含有できる。別の実施形態は、活性薬剤及び賦形剤を含む封入された化合物を含む。各パルス送達ユニットは、非限定例として、10(十)ピコリットル〜100,000(一万)ピコリットルの投与量の活性薬剤又は薬剤を含んでよい。パルス送達ユニット104はまた、1つ又は2つ以上の賦形剤を含んでもよい。
【0022】
この空洞は、涙点プラグの設計によって支持され得る任意の寸法及び/又は形状であり得る。いくつかの実施形態において、空洞105の容積は約10〜100ナノリットルとなる。いくつかの具体的な実施形態には、約40ナノリットル〜50ナノリットルの空洞容積が含まれる。ディスペンサー先端を挿入することができる、空洞への開口部102には、例えば、約0.1mm〜0.4mmの直径が含まれ得、空洞105には、約0.5mm〜約2.0mmの深さが含まれ得る。いくつかの好ましい実施形態において、開口部102は約0.2mmとなり、空洞の深さは約1.5mmとなる。更なる好ましい実施形態の態様には、空洞の直径0.385、長さ1.5mm、容積175nLの設計が含まれ得る。
【0023】
活性薬剤は、活性薬剤を含有するパルス送達ユニット104から分散され、又はパルス送達ユニット104内に溶解されてもよい。あるいは、活性薬剤は、パルス送達ユニット104中の内包物、微粒子、小滴内に収容され、又はマイクロ封入されていてもよい。また別の選択肢として、活性薬剤は、パルス送達ユニット104に共有結合し、加水分解、酵素分解等により放出されてもよい。更に別の選択肢として、活性薬剤は、パルス送達ユニット104内のリザーバにあってもよい。
【0024】
図1Eにおいて、パルス送達ユニット104は、1つ又は2つ以上の膜層106によって分離されてよい。膜層106は、様々な特性を含んでよい。したがって、実施形態は、生分解性半透膜、非生分解性半透膜、孔、及びこれらの組み合わせのうち1つ又は2つ以上を含む膜層を含んでよい。
【0025】
ここで図2を参照すると、本発明のいくつかの実施形態の一例には、薬剤チューブ101(図1に図示)の空洞105内にパルス送達ユニット104を分与するための涙点プラグ活性薬剤ポンプ200が含まれる。一般に、ポンプ200は、ポンプ本体207に装着され、ディスペンサー先端203に流体連通をもたらすために取り付けられる、カートリッジ201などのパルス送達ユニット104を含有するリザーバを備える。カートリッジ201は、例えば、大きな分与用開口部を備える改善された取り外し可能な注射器を備えてよい。
【0026】
カートリッジ201は、ポリカーボネート、ステンレススチール、又はその他の剛性若しくは準剛性材料で形成され得る。いくつかの好ましい実施形態において、カートリッジは、滅菌可能でありかつ注入プロセス中の加熱に耐え得る材料で形成される。加えて、いくつかの実施形態において、カートリッジ201はディスペンサー先端203に近接する末端部とディスペンサー先端から遠位にある末端部とを有し、ディスペンサー先端に近接する末端部には、カートリッジ201をディスペンサー本体202に固定するためのルアーロックメカニズムが含まれ得る。カートリッジ201をディスペンサー先端203に近接し、かつこれに液体連通する位置に固定するために、他のロック又は固定機構を使用することもできる。ゆえにいくつかの実施形態には、ポリカーボネート製又はステンレススチール製注射器の設計が含まれ得る。
【0027】
いくつかの実施形態は、コンピューター制御のバルブを備える正圧ポンプを備え、パルス送達ユニット104の分与の開始及び停止を制御することができる。コンピューター制御のバルブにより、流量特性を制御するアクティブなバルブが提供される。いくつかの実施形態において、本発明は、極少量の活性薬剤を含有するパルス送達ユニット104を分与できる。いくつかの実施形態では、50ピコリットル以下の容積、及びいくつかの好ましい実施形態では、20ピコリットル〜60ピコリットルの容積が含まれ得る。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、パルス送達ユニット104を冷却又は加熱するための1つ又は2つ以上の温度制御デバイス204〜206を備え、同時に、a)カートリッジ201、b)ディスペンサー本体202、及びc)ディスペンサー先端203のうち1つ又は2つ以上を備えることになる。温度制御デバイス204〜206は、例えば、熱電デバイス、電気抵抗素子、及び温度制御された流体通路のうち1つ又は2つ以上を備えてよい。図示されるように、いくつかの実施形態において、温度制御デバイス205はカートリッジ201の側面に沿って配置され得、これにより活性薬剤104を備える物質が、カートリッジ201内にある間、高温に維持され得る。いくつかの実施形態はまた、ポンプ本体207内、又はそれに隣接する温度制御デバイス204を備えてもよい。いくつかの実施形態にはまた、分与される物質特性賦形剤によって調整することが可能な温度要件も含まれ得る。
【0029】
別の態様において、本発明のいくつかの実施形態には、温度プローブ206が含まれる。この温度プローブは、涙点プラグ活性薬剤ポンプ200の指定部分の温度を示すデジタル又はアナログ出力を提供するための変換器を含み得る。実施形態には、フィードバック電子回路(図示なし)が含まれ得、これにより活性薬剤104に適用される加熱量を制御することができる。いくつかの実施形態において、このフィードバックは、閉ループフィードバック設計を構成する。
【0030】
更に、いくつかの実施形態において、パルス送達ユニット104に加えられた熱量を用いて、活性薬剤104を含有する物質の成形性因子を制御することができる。典型的には、加えられる熱量が多いとパルス送達ユニット104の剛性が低下し、涙点プラグ活性薬剤ポンプ200を通るパルス送達ユニット104を移動するために加えられる圧力をより低くできる。例として、パルス送達ユニット104は、40℃〜80℃の温度で、いくつかの好ましい実施形態では60℃〜70℃の温度で、ディスペンサー先端203を通って分与することができる。いくつかの特定の実施形態において、活性パルス送達ユニット104を含む物質が分与される涙点プラグ101もまた、40℃〜80℃の温度に加熱される。いくつかの実施形態において、涙点プラグ101に対して熱を適用すると、分与中にプラグに更なる弾性をもたらすことができ、これにより空洞105が膨張し、活性薬剤104を含む物質をより容易に受け入れることが可能になる。様々な実施形態では、好ましい温度は、用いられる活性薬剤、活性薬剤104を含有する物質に含まれる賦形剤、及びパルス送達ユニット104の封入に用いられる物質のうち1つ又は2つ以上に基づくものであってよい。
【0031】
ここで図3を参照すると、グラフは、パルス放出での一般的な放出パターンを示す。時間302にわたって、薬剤放出のパルス303が起こる。薬剤放出が低い又は薬剤放出が実質的にない時間302が、パルス302間に起こる。
【0032】
いくつかの実施形態において、薬剤放出が低い又は薬剤放出が実質的にない時間302を作り出すために、薬剤チューブ101内に境界層106を含んでよい。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によると、活性薬剤が薬剤チューブ101から一定のパルスパターン、すなわち、同様の大きさのパルス(同様の大きさのパルス送達ユニットによって決まる)内に薬剤が存在する、活性薬剤を含有するパルス送達ユニット104を用いることにより、ある期間にわたって一般に同量のパルスで一般に同濃度であるパルスパターンで放出される。パルス303は、各パルス送達ユニット104において同様の濃度であってもよい。更なる実施形態では、ある量の活性薬剤を挿入すると、他のパルス送達ユニット104の平均放出よりも速い「バースト放出」つまり即時放出を示すデバイスを備える。更に他の実施形態では、可変である、パルス送達ユニット104の大きさ、パルス送達ユニット104内の薬剤濃度、パルス送達ユニット104の間隔のうち1つ又は2つ以上を含む。
【0034】
また、いくつかの代表的な実施形態では、賦形剤及び活性薬剤の混合物と物質を含有するパルス送達ユニット102を備えてもよい。事前混合装置及びプロセスには、二軸混練、カオス混合、溶媒混合、スプレードライ、又はその他の混合メカニズムが挙げられ得る。代表的な化合物には、活性物質としてビマトプロスト25%、第1賦形剤としてエチレンビニルアセテート(EVA)37.5%、及び第2賦形剤としてポリカプロラクトン(PCL)37.5%が挙げられ得る。
【0035】
事前混合された物質は、加熱された、又は非加熱の注射器200にペレットとして搭載することができる。必ずしもペレットである必要はなく、活性薬剤は、粉末、毛羽、及びその他の媒質のうち1つ又は2つ以上の形態であり得る。加えて、いくつかの実施形態において、活性薬剤の複数回の熱サイクル曝露を避けること、及び/又は気泡を最小限に抑えることが望ましいような場合は、加熱された注射器を直接、マイクロ混練機に取り付けることができる。これにより事前混合された物質は、室温以下に冷却されることなく、ナノ用量分与システム(例えば上述のようなもの)内に直接供給することができる。同様に、いくつかの実施形態において、活性薬剤を含む物質は、融解形状でナノ分与システムに供給することができる。
【0036】
本発明の別の態様では、放出される活性薬剤の濃度勾配を、活性薬剤をより含むパルス送達ユニット102を直線状に進行する1か所に、及び異なる濃度で活性薬剤104を含む物質を別の相対直線状位置に配置することによって制御してよい。あるいは、マトリックスが勾配を有する、すなわちパルス送達ユニット104の一部が第1の濃度を有し、マトリックスの隣接する部分内の第2の異なる濃度に濃度が突然変化してもよい。活性薬剤の拡散性は、活性薬剤を含有するパルス送達ユニット104の化学組成、気孔率及び結晶化度のうちの1つ又は2つ以上を変動させることにより、空間的に制御することもできる。
【0037】
ここで図4を参照すると、一般に直線状に配置される複数のパルス送達ユニット403を含む薬剤チューブ401が図示される。薬剤チューブ401の断面図に境界物質402も確認できる。直線状の配置により、一度にパルス送達ユニットを体液に接触させ、眼又は鼻涙管内に分散させることが可能になる。
【0038】
図示されるように、パルス送達ユニット403は、封入層404及び薬剤コア405を含む。例えば、油性若しくは水性コアを含有する液体入りの単分散マイクロカプセル、又は二重壁ミクロスフェアを製造するPrecision Particle Fabrication(PPF)技術などの任意の既知の方法で、封入を達成してよい。封入されたパルス送達ユニットの例として、油性若しくは水性コアを封入する単分散高分子マイクロカプセル、又は二重壁(ポリマーコア/ポリマーシェル)マイクロカプセルを挙げることができる。分子をコア又はシェル相に局在させ、パルス型活性薬剤送達などの高度に制御された放出特性を可能にすることができる。
【0039】
ここで図5を参照すると、図5Aにおいて、本発明に従って形成された涙点プラグデバイス501は、涙点プラグ本体506内にリザーバ、つまり空洞505を含んでよく、空洞505にアクセスする開口部502を備える。図5Bにおいて、1つ又は2つ以上のパルス放出ユニット504を含む1つ又は2つ以上の薬剤チューブ503が、空洞505内に挿入される。パルス放出ユニットは、好ましくは少なくとも1つの活性薬剤を含有する。図5Cにおいて、薬剤チューブを涙点プラグ内に完全に挿入し、いくつかの実施形態では、患者内に配置されて使用されるまで涙点プラグデバイス501を元の状態のままにする、封止部507を備える。
【0040】
本発明のデバイスに有用な活性薬剤含有物質は、活性薬剤を含むことができる、活性薬剤の化学的特性を変更しない、及び眼液と接触して配置された場合に有意に化学分解しない又は物理的に溶解されない、任意の物質である。活性薬剤含有物質は、非生分解性であり、すなわち哺乳動物内に一般に存在する生物学的に活性な物質に暴露された後、かなりの程度分解することがないことが好ましい。加えて、活性薬剤含有物質は、拡散、分解又は加水分解のうちの1つ又は2つ以上により、活性薬剤を放出することができる。活性薬剤含有物質は、ポリマー性物質、すなわち1種又は2種以上のポリマーから形成されていることが好ましい。
【0041】
活性薬剤含有物質が活性薬剤と混合された際、活性薬剤含有物質は、水に不溶であり、かつ非生分解性であるが、そこから活性薬剤が拡散できる1つ又は2つ以上の物質も含み得る。例えば、活性薬剤含有物質がポリマー性物質である場合、活性薬剤含有物質は、水に不溶でありかつ非生分解性である1種又は2種以上のポリマーから構成されていてもよい。
【0042】
活性薬剤含有物質に好適なポリマー性物質としては、疎水性及び親水性の吸収性及び非吸収性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好適な疎水性の非吸収性ポリマーとしては、エチレンビニルアルコール(「EVA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)及びポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)を含むが、これらに限定されないフッ素化ポリマー;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリレート及びメタクリレート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリビニルミリステート、シアノアクリレート、エポキシ、シリコーン、それらの疎水性又は親水性モノマーとのコポリマー、並びにそれらの親水性又は疎水性ポリマー及び賦形剤とのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明に有用な親水性の非吸収性ポリマーとしては、架橋性ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアクリル酸、ポリ(エチルオキサゾリン)及びポリ(ジメチルアクリルアミド)、それらの疎水性又は親水性モノマーとのコポリマー、並びにそれらの親水性又は疎水性ポリマー及び賦形剤とのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
使用し得る疎水性の吸収性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、脂肪酸から誘導されたポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エーテル−エステル)、ポリ(エステルアミド)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリカーボネート、ポリオルトエステル(polyorthoesteres)、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミノ基を含有するポリオキサエステル、リン酸エステル、ポリ)無水物)、ポリプロピレンフマレート、ポリホスファゼン、及びそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。有用な親水性の吸収性ポリマーの例としては、架橋アルギネート、ヒアルロン酸、デキストラン、ペクチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジェランガム、グアーガム、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸を含むが、これらに限定されない多糖類及び炭水化物、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン及びオボアルブミンを含むが、これらに限定されないタンパク質、ホスホリルコリン誘導体を含むが、これに限定されないリン脂質、並びにポリスルホベタイン(polysulfobetains)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
活性薬剤含有物質は、ポリカプロラクトンであるポリマー性物質がより好ましい。更により好ましくは、物質は、約10,000〜80,0000の分子量を有するポリ(ε−カプロラクトン)、及びエチレンビニルアセテートである。ポリマー性物質の総重量に基づいて約0〜約100重量パーセントのポリカプロラクトン及び約100〜約0重量パーセントのエチレンビニルアセテートが使用され、好ましくはそれぞれ約50%のポリカプロラクトン及びエチレンビニルアセテートが使用される。
【0046】
使用するポリマー性物質は約99%を超えて純粋であることが好ましく、活性薬剤は約97%を超えて純粋であることが好ましい。当業者は、混練において、混練が行われる条件が、活性薬剤の特性を考慮して、活性薬剤がプロセスにより分解されないことを確実にする必要があることを認識するであろう。ポリカプロラクトン及びエチレンビニルアセテートは、所望の活性薬剤(1種又は複数種)と混合され、マイクロ混練された後、押出されることが好ましい。
【0047】
好ましい実施形態において、活性薬剤含有物質は、例えば500,000cP〜4,000,000cPの粘度を備える高粘度材料を形成するため、少なくとも1つの活性薬剤と混合したポリマー性物質である。好ましくは、この活性薬剤含有物質が、本発明による分与ポンプ内に包含されているとき、又はこの中を通過する際に、活性薬剤含有物質を加熱することによって粘度を低下させることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、涙点プラグ本体は好ましくは活性薬剤に対して不浸透性であり(すなわち活性薬剤のうちごくわずかな量しか浸透することができず)、かつ、涙点プラグ本体は少なくとも1つの開口部を有し、ここを通って活性薬剤が放出される。開口部は、これを覆う膜又は浸透性材料を有していてもよく、これを通って、治療用の分量の活性薬剤が通過し得る。
【0049】
結論
上記の説明、及び以下の請求項によって更に定義されるとおり、本発明は、涙点プラグを処理する方法、及びそのような方法を実行するための装置、並びにそれによって形成される涙点プラグを提供する。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) 活性薬剤のパルス送達デバイスであって、
涙点プラグの空洞に挿入されるチューブと、
前記チューブ内に一般に直線状に配置される1つ又は2つ以上のパルス送達ユニットと、を含み、2つ又は3つ以上のパルス送達ユニットが、前記活性薬剤を含むコアと、前記コア周囲の封入層と、を含む、パルス送達デバイス。
(2) 前記1つ又は2つ以上のパルス送達ユニットが、水溶性封入ビーズを含む、実施態様1に記載のパルス送達デバイス。
(3) 前記パルス送達ユニットの前記一般に直線状の配置により、涙液へのパルス送達ユニットの曝露が、一度に1つのパルス送達ユニットに制限される、実施態様2に記載のパルス送達デバイス。
(4) 第1のパルス送達ユニットと第2のパルス送達ユニットとの間に境界層を更に含む、実施態様2に記載のパルス送達デバイス。
(5) パルス送達ユニットと前記涙点プラグの前記空洞の開口部との間に境界層を更に含む、実施態様1に記載のパルス送達デバイス。
(6) 前記境界層が生分解性膜を含む、実施態様5に記載のパルス送達デバイス。
(7) 前記境界層が半多孔性膜を含む、実施態様5に記載のパルス送達デバイス。
(8) 前記境界層がメッシュを含む、実施態様5に記載のパルス送達デバイス。
(9) 前記活性薬剤含有物質が、ポリ(ε−カプロラクトン)及びエチレンビニルアセテートを含む、実施態様2に記載のパルス送達デバイス。
(10) 前記ポリ(ε−カプロラクトン)及びエチレンビニルアセテートが、それぞれ約50重量パーセントの量で存在する、実施態様9に記載のパルス送達デバイス。
【0051】
(11) 前記チューブが、比較的低濃度の前記活性薬剤を含む第1の活性薬剤含有物質を含む第1のパルス送達ユニットと、比較的高濃度を含む第2の活性薬剤含有物質を含む第2のパルス送達ユニットと、を含む、実施態様2に記載のパルス送達デバイス。
(12) 前記コアが、活性薬剤含有物質と、相分離内包物と、を含む、実施態様1に記載のパルス送達デバイス。
(13) 前記コアが、活性薬剤含有物質と、不安定化内包物と、を含む、実施態様1に記載のパルス送達デバイス。
(14) 前記コアが、活性薬剤含有物質と、安定化内包物と、を含む、実施態様1に記載のパルス送達デバイス。
(15) 前記涙点プラグが、涙点プラグ本体と、前記涙点プラグ本体内の空洞と、を更に含む、実施態様1に記載のパルス送達デバイス。
(16) 前記涙点プラグが、前記プラグが涙点内に挿入されるとき、前記本体外側の位置から前記空洞へのアクセス開口部を更に含む、実施態様15に記載のパルス送達デバイス。
(17) 前記涙点プラグが、前記プラグが涙点外で保管されるとき、前記本体外側の位置から前記空洞へのアクセスを妨げる、前記空洞への前記開口部全体に対する封止部を更に含む、実施態様15に記載のパルス送達デバイス。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C