(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687277
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】自動車のリアアクスル用の閉断面の異形クロスメンバ
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20150226BHJP
【FI】
B60G9/04
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-529326(P2012-529326)
(86)(22)【出願日】2010年9月13日
(65)【公表番号】特表2013-505162(P2013-505162A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】FR2010051897
(87)【国際公開番号】WO2011033213
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年9月12日
(31)【優先権主張番号】0956381
(32)【優先日】2009年9月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】アシェ, ギヨーム
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−096903(JP,U)
【文献】
特開昭59−029507(JP,A)
【文献】
特開平11−139130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のリアアクスルの2つの長手方向のアームを接続することを可能にする自動車のリアアクスル用のねじり変形可能な閉断面のクロスメンバ(1)であって、管から形成され、該管が、前記2つのアームの一方にそれぞれ接続することができる端部(TE)と、前記管の内壁(10、11)がすき間によって隔てられているU字形またはV字形の横断面を得るように深絞りされた中央部(TI)と、各々の端部(TE)を前記中央部(TI)へとつなぐように横断面が変化している2つの移行部(TT)とを備えているクロスメンバ(1)であり、当該クロスメンバ(1)がねじり荷重にさらされるときに前記中央部(TI)のレベルにおける前記内壁(10、11)の間のすべての接触を避けるべく、各々の移行部(Tj)の全長のすべてまたは一部にわたって前記中央部(TI)の一端をそれぞれ閉じる2つのインサート(3)をさらに備えることを特徴とするクロスメンバ(1)。
【請求項2】
各々のインサート(3)が、該インサート(3)を前記管の内壁に対して保持するための手段をもたらす接着材料の層(31)によって囲まれた芯(30)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項3】
前記層(31)が、ポリウレタン発泡体であることを特徴とする、請求項2に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項4】
前記層(31)が、熱硬化性接着剤であることを特徴とする、請求項2に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項5】
前記芯(30)が、ポリプロピレンの種類のプラスチック材料で作られていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項6】
前記2つのインサート(3)を互いに機械的に接続するためのさらなる手段(40、41)を備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項7】
前記機械的に接続するための手段(40、41)が、当該クロスメンバの内部で前記2つのインサートの間を互いに実質的に平行に延びている2本のケーブルを備えており、該ケーブルの各々が、当該クロスメンバ(1)の1つの液滴状のループ(12)の内側を長手方向に延びており、該ケーブルの各々の端部が、前記2つのインサート(3)のうちの一方へと取り付けられていることを特徴とする、請求項6に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項8】
前記機械的に接続するための手段(40、41)が、当該クロスメンバの内部で前記2つのインサートの間を互いに実質的に平行に延びている2本の剛体棒を備えており、該棒の各々が、当該クロスメンバ(1)の1つの液滴状のループ(12)の内側を長手方向に延びており、前記棒の各々の端部が、前記2つのインサート(3)のうちの一方へと取り付けられていることを特徴とする、請求項6に記載のクロスメンバ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリアアクスルの構造に関し、さらに詳しくは、リアアクスルの2つの長手方向のアームを接続できるようにするねじり変形可能な閉断面の異形クロスメンバの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなリアアクスル用のクロスメンバは、一般に、円形、矩形、または長円形の断面の管から形成され、その各々の端部が、2つのアクスルアームの一方へと接続されるように意図され、管の1つの中央部が、U字形またはV字形の横断面を得るように深絞りされている。中央部により、曲げ剛性およびねじりの柔軟性が確保されている。
【0003】
この形式のクロスメンバは、例えば米国特許第6,510,763号明細書にすでに開示されている。この文献によれば、特にクロスメンバの各々の端部を中央部へと接続している2つの移行部のレベルにおいて曲げ剛性を高めるために、これら2つの移行部が、合成または金属発泡体で満たされている。発泡体は、クロスメンバの端部を通って直接注入される。変種としては、発泡剤と混合された結晶または金属粉がクロスメンバの端部を通って移行部へと導入され、次いで加熱によって膨張させられる。どちらの場合も、移行部の充てんは、中央部のクロスメンバの壁が互いにくっついているところまで可能であるにすぎない。
【0004】
しかしながら、このような構成において、中央部において互いに接触している壁が、クロスメンバがねじりを被るときに互いに変位することで、内壁のフレッチング腐食が引き起こされる。この欠点を克服するために、中央部の内壁の間に最小限の距離を保証するような様式でクロスメンバを形成する管を深絞りすることが、特に本出願の出願人の名義である仏国特許第2805479号明細書からすでに知られている。
【0005】
それでもなお、クロスメンバがねじりにさらされるとき、壁は、壁の特定の領域が接触するような相対変位を被る。この状況が、
図1に概略的に示されており、中間部において得られたクロスメンバ1の断面において、クロスメンバが上側の壁10および下側の壁11を(矢印F2およびF3によって示されているように)互いに近付くように移動させるねじり荷重(矢印F1)を被るときのこれら2つの壁の間の接触領域2が示されている。結果として、クロスメンバが、依然として、局所的に、フレッチング腐食の問題にさらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、クロスメンバの剛性に関してクロスメンバの抵抗力を高めることによって、閉断面の異形クロスメンバの中央部における腐食の恐れを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これを達成するために、本発明の主題は、自動車のリアアクスルの2つの長手方向のアームを接続することを可能にする自動車のリアアクスル用のねじり変形可能な閉断面の異形クロスメンバであって、管から形成され、管が、2つのアームの一方にそれぞれ接続することができる端部と、管の内壁がすき間によって隔てられているU字形またはV字形の横断面を得るように深絞りされた中央部と、各々の端部を中央部へとつなぐように横断面が変化している2つの移行部とを備えているクロスメンバであり、クロスメンバがねじり荷重にさらされるときに中央部のレベルにおける内壁の間のすべての接触を避けるべく、各々の移行部の全長のすべてまたは一部にわたって中央部の一端をそれぞれ閉じる2つのインサートをさらに備えることを特徴とするクロスメンバである。
【0008】
好ましくは、各々のインサートが、例えばポリプロピレンの種類のプラスチック材料で作られる芯を、インサートを管の内壁に対して保持するための手段をもたらす接着材料の層によって囲んで備えている。
【0009】
接着材料の層は、ポリウレタン発泡体であってもよく、熱硬化性接着剤であってもよい。
【0010】
インサートがクロスメンバの内側で動かぬように堅固に保持されることを保証するために、2つのインサートを互いに機械的に接続するための手段を設けることができる。
【0011】
本発明の種々の利点および特徴が、添付の図面を参照する例示の実施形態の以下の説明に照らして、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】すでに説明したとおり、先行技術による閉断面の異形クロスメンバの中央部の断面を示している。
【
図2】本発明による第1の考えられる実施形態によるクロスメンバの斜視図を示している。
【
図3c】
図2のインサートの中央の領域の断面図である。
【
図4】本発明による第2の考えられる実施形態によるクロスメンバを示している。
【
図5】
図4の機械的に接続された2つのインサートの斜視図を示している。
【
図6】
図4によるクロスメンバの中央部において得た断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明によるクロスメンバについて考えられる第1の実施形態を、
図2および
図3a〜
図3cを参照して説明する。
図2において、ねじり変形可能な閉断面のクロスメンバ1が、自動車のリアアクスルの2つのアーム(ここでは図示されていない)のうちの1つへとそれぞれ接続することができる2つの端部T
Eを備えている管から従来どおりに形成されている。さらに管は、U字形またはV字形の横断面を得るように深絞りされた中央部T
Iを備えている。
【0014】
すでに示したように、好ましくは鋼製の管が、この中央の領域において、フレッチング腐食を防止するような様式で内壁(
図6において参照番号10および11として見て取ることができる)の間に特定のすき間が存在するように深絞りされる。さらに、クロスメンバ1を形成している管は、各々の端部T
Eを中央部T
Iへとつなげるように断面が変化している2つの移行部T
Tを備えている。
【0015】
本発明によれば、クロスメンバ1が、2つのインサート3をさらに備えており、各々のインサート3が、各々の移行部T
jの全長のすべてまたは一部にわたり、中央部T
Iの一端を閉じている。
【0016】
横部材の各側にインサート3を配置することで、管の2つの壁の相対移動を少なくし、クロスメンバ1がねじり荷重にさらされたときに、中央部のレベルにおけるこれらの壁の間のすべての接触を回避することができる。
【0017】
図3a〜
図3cが、インサート3の種々の図を示している。インサート3は、好ましくは、壁の相対変位の軽減を可能にするために充分に剛な材料(典型的には、ポリプロピレンの種類のプラスチック材料である)で作られた芯30の形態である。インサートが確実にクロスメンバの内部において動かぬように保持されるよう、芯30は、好都合には、接着材料の数ミリメートルの層31によって囲まれている。この層31を、ポリウレタン発泡体または熱硬化性接着剤によって構成することができる。どちらの場合も、インサートは、各々のインサートを端部T
Eを通って導入することによってクロスメンバ1の内部に配置される。次いで、2つのインサート3を備えたクロスメンバ1の加熱段階によって、発泡体を膨張させることができ、あるいは接着剤を硬化させることができる。この加熱段階の終わりにおいて、インサート3がクロスメンバ1の内部に保持される。図において、各々のインサート3の外面が、クロスメンバの内壁の形態を完全に採用していることを理解できるであろう。すなわち、インサート3の横断面が、クロスメンバを完璧に閉じるよう、インサート3によって占められるクロスメンバの部位の横断面と同じ様式で変化している。
【0018】
インサート3は、気密であり、フレッチング腐食に対する保護だけでなく、2つのインサートの間に位置する部位の内部の酸化による腐食に対する保護も提供する。
【0019】
さらに、インサートは、液滴状のループのレベル(すなわち、クロスメンバ1のU字形またはV字形の断面の端部領域のレベル)において応力領域を大きくすることによって、ねじり応力のレベルを下げることも可能にする。したがって、好都合なことに、管の壁の厚さを減らして、より軽量でより低コストなクロスメンバを得ることを可能にすると考えられる。
【0020】
クロスメンバの内部におけるインサートの保持を補強するために、好都合には、インサート3を互いに機械的に接続することが考えられる。
図4〜6が、インサート3が各々のインサートの芯30を囲んでいる接着層31だけでなく、機械的な接続の手段によってもクロスメンバ1の内部に保持される第2の実施形態を示している。ここでは、機械的な接続の手段は、好ましくは鋼で製作されてクロスメンバの内部で2つのインサート3の間を互いに実質的に平行に延びている2本のケーブル40、41の形態であり、より具体的には、特に
図6において理解できるとおり、各々のケーブルがクロスメンバ1の2つの液滴状のループ12のうちの一方の内側を長手方向に延びている。ケーブル40および41の各々の端部が、ねじまたは他の固定具などの任意の固定手段によって、2つのインサート3の一方へと取り付けられている。このようなクロスメンバの製造は、クロスメンバ内のケーブル40、41の端部が取り付けられた一方のインサート3を導入することによって始まり、次いで他方のインサートが導入され、ケーブルの自由端へと取り付けられる。次いで、アセンブリ全体が、特にインサート3の接着層31がクロスメンバの内壁へと効果的に接着できるよう、すでに述べたように加熱される。可撓なケーブルの使用は、これらのケーブルが軽量かつ安価であるがゆえに好ましい。しかしながら、クロスメンバの内部への可撓なケーブルの導入は、あまり容易ではなく、組み立て作業を容易にするために、ケーブルを剛体棒で置き換えることも考えられる。いずれにせよ、ケーブルまたは剛体棒の長さは、配置後のインサートの間隔に一致するように構成されなければならない。