特許第5687295号(P5687295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許56872954−メチル−1−ペンテン系重合体、その製造方法およびその用途
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  • 特許5687295-4−メチル−1−ペンテン系重合体、その製造方法およびその用途 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687295
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】4−メチル−1−ペンテン系重合体、その製造方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/14 20060101AFI20150226BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20150226BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   C08F10/14
   C08F4/654
   C08F2/18
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-23265(P2013-23265)
(22)【出願日】2013年2月8日
(62)【分割の表示】特願2009-522641(P2009-522641)の分割
【原出願日】2008年7月7日
(65)【公開番号】特開2013-122061(P2013-122061A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2013年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2007-180921(P2007-180921)
(32)【優先日】2007年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】安田 和明
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
【審査官】 鈴木 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−172004(JP,A)
【文献】 特開昭60−166304(JP,A)
【文献】 特開2006−291020(JP,A)
【文献】 特開昭62−209153(JP,A)
【文献】 ルーマニア特許明細書第72426号
【文献】 エドワード・P・ムーア・Jr著、安田哲男、佐久間暢 翻訳監修,ポリプロピレンハンドブック,2001年 7月20日,第29頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00− 19/44
C08F 2/00− 2/60
C08F 4/60− 4/70
C08F 6/00−246/00
C08F301/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマー(4−メチル−1−ペンテン、または、4−メチル−1−ペンテンおよび4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の組み合わせ)、および、
有機溶媒、並びに、
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体からなる固体状チタン触媒を含む遷移金属触媒成分および共触媒成分を含む重合用触媒を、
連続的に撹拌槽型重合反応器に供給し、
液相中の重合体濃度10〜300g/L、
液相中の触媒濃度が遷移金属触媒成分として0.00001〜1mmol/L、
重合温度0〜80℃、
重合反応器中の気相部の圧力1〜10kg/cm2
平均滞留時間0.1〜10時間で、
懸濁重合法、
により生成した4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことにより得られる、下記特徴を有する4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法。
4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜100質量%と、
4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位0〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%とするを有する
【請求項2】
前記4−メチル−1−ペンテン系重合体が、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜99.9質量%と、
4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位0.1〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%とする)とを有することを特徴とする請求項1に記載の4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記電子供与体が、複数の原子を間に介してエーテル結合を2以上有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性および剛性のバランスに優れた4−メチル−1−ペンテン系重合体、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体は、加工性、耐薬品性ならびに電気的および機械的性質などに優れているため、押出成形品、射出成形品、中空成形品、フィルムおよびシートなどに加工され、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、不織布などの繊維、家電製品、機械部品、電気部品および自動車部品など、多方面の用途に供されている。特に、4−メチル−1−ペンテンを含むオレフィン系重合体は、透明性、ガス透過性、耐薬品性とともに耐熱性に優れた樹脂として、医療器具、耐熱電線、耐熱食器など様々な分野で利用されている。
【0003】
特許文献1、2には、4−メチル−1−ペンテンを含むオレフィン重合用の触媒として、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体からなる固体状チタン触媒成分と有機金属化合物からなる触媒が開示されている。これらの特許文献には、前記の触媒を用いてバッチ重合法により4−メチル−1−ペンテン系重合体を製造することが開示されている。しかしながら、これらの技術で得られた重合体は、用途によっては剛性の割に耐熱性が不足する場合があった。
【0004】
また、4−メチル−1−ペンテンを含むオレフィン系重合体用の触媒として、最近、メタロセン触媒も提案されている(特許文献3参照)。この特許文献にも、バッチ重合法により4−メチル−1−ペンテンを含むオレフィン系重合体を製造することが開示されているが、耐熱性および剛性のバランスにおいて未だ充分でない場合があり、重合方法を含めた更なる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−89663号公報
【特許文献2】国際公開第2006/054613号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/121192号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性および剛性のバランスに優れた4−メチル−1−ペンテン系重合体、その製造方法およびその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の4−メチル−1ペンテン系重合体の製造方法は、
4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマー(4−メチル−1−ペンテン、または、4−メチル−1−ペンテンおよび4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の組み合わせ)、および、
有機溶媒、並びに、
遷移金属触媒成分および共触媒成分を含む重合用触媒を、
連続的に撹拌槽型重合反応器に供給し、
液相中の重合体濃度10〜300g/L、
液相中の触媒濃度が遷移金属触媒成分として0.00001〜1mmol/L、
重合温度0〜80℃、
重合反応器中の気相部の圧力1〜10kg/cm2
平均滞留時間0.1〜10時間で、
懸濁重合法、
により生成した4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことにより得られ、その4−メチル−1−ペンテン系重合体が、
4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜100質量%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位0〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%)とを有することを特徴とする。前記製造方法で得られる4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜99.9質量%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位0.1〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%)とを有することが好ましい。
【0008】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜100質量%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位0〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%)とを有するものであり、4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーおよび有機溶媒を重合反応器に連続的に供給し、生成した4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことによって得られることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜100質量%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位0〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%)とを有するものであり、下記式(1)〜(2)を満たすことを特徴としている。
48×[Y]−7500≦[X]≦48×[Y]−7000 ・・・(1)
160℃≦[Y]≦190℃ ・・・(2)
【0010】
ただし、式(1)〜(2)中、[X]はASTM D638法で測定した4−メチル−1−ペンテン系重合体の引張弾性率(MPa)、[Y]はASTM D1525法で測定した4−メチル−1−ペンテン系重合体のビカット軟化点(℃)を示す。なお、上記4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーおよび有機溶媒を重合反応器に連続的に供給し、生成した4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことによって得られるものであることが好ましい。
【0011】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、重合反応器から抜き出した重合反応混合物に含まれる溶媒可溶性重合体の量を15質量%以内に制御することにより得られるものであることが好ましい。
【0012】
前記の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜99.9質量%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位0.1〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%)とを有することが好ましい。
【0013】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法は、有機溶媒とともに、4−メチル−1−ペンテン、あるいは4−メチル−1−ペンテンおよび4−メチル−1−ペンテン以外のオレフィンを連続的に重合反応器に供給し、生成した4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことを特徴としている。
【0014】
上記の製造方法において製造された4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位50〜100質量%、好ましくは50〜99.9質量%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位0〜50質量%、好ましくは0.1〜50質量%(ただし、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位との合計は100質量%)とを有することが好ましい。
【0015】
上記の製造方法において、重合反応器から抜き出した重合反応混合物に含まれる溶媒可溶性重合体の量は15質量%以内に制御されることが好ましい。
本発明のフィルムは、上記4−メチル−1−ペンテン系重合体からなることを特徴としている。
【0016】
本発明のLEDモールドは、上記4−メチル−1−ペンテン系重合体からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、耐熱性および剛性のバランスに優れ、フィルムおよびLEDモールドなどとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は実施例1〜10、比較例1〜5の4−メチル−1−ペンテン系重合体の引張弾性率(MPa)とビカット軟化点(℃)を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体およびその製造方法について具体的に説明する。
〔4−メチル−1−ペンテン系重合体〕
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーおよび有機溶媒を重合反応器に連続的に供給し、生成した4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことによって得られることを特徴としている。
【0020】
4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーとは、4−メチル−1−ペンテン1種単独か、あるいは4−メチル−1−ペンテンおよび4−メチル−1−ペンテン以外のオレフィン1種以上を組み合わせたものである。このような連続重合方法により製造された4−メチル−1−ペンテン系重合体は、耐熱性を有すると同時に剛性を有する。
【0021】
本発明の製造方法において用いられる有機溶媒としては、4−メチル−1−ペンテンを連続的に重合反応器に供給することができ、遷移金属触媒成分および共触媒成分を連続的に重合反応器に供給することができるものであれば特に制限されることはない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素が挙げられ、より好ましくは飽和脂肪族炭化水素、または4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。
【0022】
ここで、本発明でいう重合反応混合物とは、生成重合体と有機溶媒の混合物である溶液または懸濁液(スラリー)である。
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、あるいは4−メチル−1−ペンテンとコモノマーである他のオレフィン、特にα−オレフィンとの共重合体である。他のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび1−デセンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィン、好ましくは炭素原子数3〜20のα−オレフィン、より好ましくは炭素原子数6〜20のα−オレフィン、特に好ましくは炭素原子数8〜20のα−オレフィンである。これらのオレフィンは、一種単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。4−メチル−1−ペンテン系重合体中の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位の含有量は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位との合計100質量%中、50〜100質量%、好ましくは50〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.9質量%、特に好ましくは90〜99.9質量%である。一方、4−メチル−1−ペンテン系重合体中の他のオレフィンから導かれる構成単位の含有量は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから導かれる構成単位との合計100質量%中、0〜50質量%、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。4−メチル−1−ペンテン系重合体中の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位および他のオレフィンから導かれる構成単位の含有量は13C-NMRにより求められる。
【0023】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体の135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は通常0.1〜10dl/g、好ましくは1〜10dl/gである。
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、下記式(1)〜(2)を同時に満たすことを特徴としている。
48×[Y]−7500≦[X]≦48×[Y]−7000 ・・・(1)
160℃≦[Y]≦190℃ ・・・(2)
【0024】
式(1)〜(2)中、[X]はASTM D638法で測定した4−メチル−1−ペンテン系重合体の引張弾性率(MPa)、[Y]はASTM D1525法で測定した4−メチル−1−ペンテン系重合体のビカット軟化点(℃)を示す。
【0025】
図1は、縦軸に引張弾性率[X]、横軸にビカット軟化点[Y]をとった場合の[X]および[Y]の関係を表している。
[X]と[Y]との交点をプロットした図1のグラフは、同じ引張弾性率[X]の重合体であれば、[Y]が高い領域にプロットされる重合体ほど剛性を維持しつつ高耐熱化を実現していることを示し、同じビカット軟化点[Y]の重合体であれば、[X]が低い領域にプロットされる重合体ほど耐熱性を維持しつつ低剛性化(柔軟化)していることを示している。
即ち、上記式(1)〜(2)が示す領域に[X]と[Y]との交点を持つ重合体は、バランスよく高耐熱化、低剛性化(柔軟化)した重合体であることを示す。
【0026】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、式(1)〜(2)を満たしており、耐熱性および剛性のバランスに優れる。一方、式(1)〜(2)を満たさない4−メチル−1−ペンテン系重合体は、離型フィルムとして用いたときに皺の低減や形状追随性が不充分となる場合がある。本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体が上記式(1)〜(2)を満たす明確な理由は定かではないが、4−メチル−1−ペンテン以外のオレフィンであるコモノマー組成分布が均一化していることが理由の1つではないかと推測される。コモノマー組成分布を均一化させる手段としては特に限定はされないが、バッチ重合法で製造する場合は、4−メチル−1−ペンテンよりも他のコモノマー成分の反応性が高く、生成重合体中のコモノマー含量が経時的に変化するため、コモノマー組成分布を均一化させるには重合反応の途中でコモノマー仕込量を変えて調節する必要がある。連続重合法で製造する場合は、生成重合体中のコモノマー含量に経時変化は起こらず、コモノマー組成分布は均一化するものと推測される。
【0027】
本発明の式(1)〜(2)を満たす4−メチル−1−ペンテン系重合体を製造する方法として特に限定はされないが、連続重合法が好ましい。
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーおよび有機溶媒を重合反応器に連続的に供給し、重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことによって得られるが、このとき、重合反応混合物中に含まれる溶媒可溶性重合体の量を25質量%以内、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%に制御することが好ましい。重合反応混合物に含まれる溶媒可溶性重合体の量が上記の範囲だと、重合反応器からの重合反応混合物の連続的な抜き出しが安定するので好ましい。
【0028】
溶媒可溶性重合体とは、懸濁重合(スラリー重合)法において重合反応器内で重合反応混合物中に含まれる4−メチル−1−ペンテン系重合体のうち、低分子量または低立体規則性のため有機溶媒に溶解している成分であって、スラリーの濾液を脱揮すると得られる重合体成分をいう。溶媒可溶性重合体の量(質量%)は以下の式により求められる。
溶媒可溶性重合体の量= 溶媒可溶性重合体の生成量 / (重合体の生成量 + 溶媒可溶性重合体の生成量) × 100
【0029】
なお、溶媒可溶性重合体の生成量を低減するには、重合反応器に、後述する遷移金属触媒成分中に含まれる電子供与体を添加すると重合体の立体規則性が向上し、溶媒への溶解性が低下するので有効である。
【0030】
〔4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法〕
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法は、有機溶媒とともに、上記の4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーを連続的に重合反応器に供給し、生成した4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出すことを特徴としている。
【0031】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体の製造方法では、有機溶媒および4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーに加えて、遷移金属触媒成分および共触媒成分を含む重合触媒を連続的に重合反応器に供給する。
【0032】
遷移金属触媒成分を構成する遷移金属触媒としては、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体からなる固体状チタン触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。このうち、好ましくは固体状チタン触媒が挙げられ、特に好ましくは不活性炭化水素溶媒に懸濁させたマグネシウム化合物と、電子供与体として複数の原子を間に介してエーテル結合を2以上有する化合物と、液体状態のチタン化合物とを接触させて得られるチタン、マグネシウム、ハロゲンおよび複数のエーテル結合を有する化合物からなるチタン触媒が挙げられる。不活性炭化水素溶媒としては、ヘキサン、デカンおよびドデカンなどが挙げられる。電子供与体としては、複数の原子を間に介してエーテル結合を2以上有する化合物である2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンおよび2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンなどが挙げられる。マグネシウム化合物としては、無水塩化マグネシウムおよびメトキシ塩化マグネシウムなどが挙げられる。上記の固体状チタン触媒において、ハロゲンおよびチタンの比率(ハロゲン / チタン)は原子比で通常2〜100、好ましくは4〜90であり、2以上のエーテル結合を含む化合物およびチタンの比率(2以上のエーテル結合を含む化合物 / チタン)はモル比で通常0.01〜100、好ましくは0.2〜10であり、マグネシウムおよびチタンの比率(マグネシウム / チタン)は原子比で通常2〜100、好ましくは4〜50である。
【0033】
共触媒成分(有機金属化合物触媒成分)としては、有機アルミニウム化合物が挙げられ、たとえば、Ran AlX3-nで示される有機アルミニウム化合物が挙げられる。Ran AlX3-n中、Ra は炭素原子数1〜12の炭化水素基、たとえば、アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基およびトリル基などであり、Xはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。
【0034】
an AlX3-nで示される有機アルミニウム化合物としては、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムおよびトリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリドおよびジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリドおよびエチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリドおよびエチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライドおよびジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらのうち、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムが好ましい。
【0035】
共触媒成分(有機金属化合物触媒成分)の量は、たとえば、遷移金属触媒成分が固体状チタン触媒成分である場合には、固体状チタン触媒成分1g当たり、通常0.1〜1000000g、好ましくは100〜1000000gの重合体が生成するような量であればよく、固体状チタン触媒成分中のチタン原子1モル当たり、通常0.1〜1000モル、好ましくは約0.5〜500モル、より好ましくは1〜200モルの量である。
【0036】
遷移金属触媒成分は、不活性有機溶媒(好ましくは、飽和脂肪族炭化水素)に懸濁して重合反応器に供給するのが好ましい。
また、遷移金属触媒成分は3−メチル−1−ペンテンまたは4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンと予備重合した固体触媒成分として用いることが好ましい。予備重合は、遷移金属触媒成分1g当たり、上記のα−オレフィンを通常0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、より好ましくは1〜200gの量で重合させて行う。また、予備重合は、4−メチル−1−ペンテンの重合における反応系内の触媒濃度よりも高い触媒濃度で行うことができる。
【0037】
本発明では、4−メチル−1−ペンテン系重合体を製造するに際し、溶解重合および懸濁重合(スラリー重合)などの液相重合法が用いられるが、好ましくは懸濁重合(スラリー重合)法が用いられる。
【0038】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテン系重合体形成用モノマーを連続重合することにより製造される。
連続重合における液相中の重合体濃度は、通常10〜300g/L、好ましくは50〜300g/Lである。
【0039】
連続重合における液相中の触媒濃度は、遷移金属触媒成分として通常0.00001〜1mmol/L、好ましくは0.0001〜1mmol/Lである。
連続重合における重合温度は通常0〜80℃、好ましくは20〜80℃である。重合温度が上記の範囲より高いと、溶解度が上昇するため、溶媒可溶性重合体の生成量が増加しすぎ、重合反応器からの重合反応混合物の連続的な抜き出しが不安定化し、製品収率が低下する場合がある。一方、重合温度が上記の範囲より低いと、重合反応の進行が不充分となる場合がある。
【0040】
連続重合における重合反応容器中の気相部の圧力は通常1〜10kg/cm2である。
連続重合時には、水素を連続的に重合反応器に導入してもよい。水素を連続的に重合反応器に導入することで、重合体の分子量を調節することができ、たとえば、極限粘度[η]の小さい4−メチル−1−ペンテン系重合体を得ることができる。
【0041】
重合反応器としては、ループ型および撹拌槽型などが用いられるが、好ましくは撹拌槽型が用いられる。また、重合反応器には液満型および気液分離型などがあるが、気液分離型を用いるのが分子量制御の点で好ましい。
【0042】
重合反応器の除熱方法としては、顕熱除熱およびガス潜熱除熱などが挙げられるが、顕熱除熱法が好ましい。
重合反応混合物を重合反応器から連続的に抜き出す方法としては、加圧抜き出しおよびポンプ抜き出しが挙げられる。
【0043】
重合反応混合物は重合反応器下部から連続的に抜き出されるが、このときの抜き出し速度は平均滞留時間が通常0.1〜10時間、好ましくは0.1〜8時間となるように制御する。
【0044】
〔用途〕
本発明4−メチル−1−ペンテン系重合体から形成されるフィルムは、従来のバッチ法で製造された4−メチル−1−ペンテン系重合体から形成されるフィルムと比べ、耐熱性を有すると同時に剛性を有する。
【0045】
上記のフィルムは、たとえば、Tダイ装置を用いた押出成形法、加熱プレス法および溶媒キャスト法などの公知の方法を用いて製造することができる。このうち、Tダイ装置を用いた押出成形法が、フィルムを容易に、かつ、均一に製造することができ、さらにフィルムを幅広化できる点で特に優れている。たとえば、4−メチル−1−ペンテン系重合体の単層フィルムを単層Tダイ付き押出成形機を用いて製造する場合、押出機およびTダイの温度を260〜330℃に設定して押出成形すればよい。
【0046】
本発明4−メチル−1−ペンテン系重合体はまた、LEDモールド(発光ダイオードのモールド部材)として好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[4−メチル−1−ペンテン系重合体の評価方法]
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体の引張弾性率およびビカット軟化点の測定は下記の方法に従って行った。
(i)引張試験(MPa):ASTM D638(IV号試験片;厚さ2mm)
(ii)ビカット軟化点(℃):ASTM D1525(試験片;厚さ3mm)
(iii)13CNMR測定
NMR測定装置:Varian製Mercury400型
溶媒:重水素化ベンゼン/オルトジクロロベンゼン混合溶媒
サンプル濃度:50〜100g/l−solvent
測定条件:パルス繰り返し時間;5.5秒 積算回数;16000回 測定温度;120℃
【0048】
上記の条件で測定して得られた13CNMRスペクトルの以下の各ピークの積算値を求めて、以下の式により4−メチル−1−ペンテン系重合体中の4−メチル−1−ペンテン以外の各α−オレフィンから導かれる構成単位のモル基準の含有量(モル%)を求めた。また、得られたモル基準の含有量と、各構成成分であるα−オレフィンの分子量とから、質量基準の含有量(質量%)を求めた。
P1(46ppm付近):4−メチル−1−ペンテンの側鎖のメチレン
P2(35ppm付近):主鎖メチレンに直接結合した4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィンの側鎖のメチレン炭素
4−メチル−1−ペンテン以外のα−オレフィン含有量(モル%)=[P2/(P1+P2)]×100
【0049】
(iv)極限粘度[η](135℃、デカリン)
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した値である。すなわち、重合体約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた([η]=lim(ηsp/C) (C→0))。
【0050】
[調製例1]固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム75g、デカン280.3gおよび2−エチルヘキシルアルコ−ル308.3gを130℃で3時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン22.2mlを添加し、さらに100℃で1時間撹拌混合を行った。
【0051】
得られた均一溶液を室温まで冷却した後、この均一溶液30mlを、−20℃に保持した四塩化チタン80ml中に、撹拌下、45分間かけて全量滴下装入した。装入終了後、この混合液を4.5時間かけて110℃まで昇温し、110℃に達したところで2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン0.52mlを添加し、その後2時間同温度で撹拌した。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を100mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱反応を行った。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、90℃のデカンおよびヘキサンで、遊離したチタン化合物が検出されなくなるまで充分に洗浄した。得られた固体状チタン触媒成分はデカンスラリ−として保存した。
【0052】
上記の固体状チタン触媒成分のデカンスラリ−の一部を乾燥し、触媒組成を調べたところ、固体状チタン触媒成分の組成は、チタン3.0質量%、マグネシウム17.0質量%、塩素57質量%、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン18.8質量%および2−エチルヘキシルアルコ−ル1.3質量%であった。
【0053】
[調製例2]固体状チタン触媒成分の予備重合
撹拌装置付き200mlスケールの4つ口ガラス製反応器に乾燥窒素気流下で乾燥デカン8.36ml、トリエチルアルミニウムのデカン溶液(アルミニウム原子換算で1.0mol/l)を1.66ml装入した。次いで、20℃で撹拌しながら調製例1で得られた固体状チタン触媒成分のデカンスラリー26.5ml(チタン原子換算0.83mmol、質量で1.3gの固体状チタン触媒成分を含む)、3−メチル−1−ペンテンを4.98ml(3.3g)を加えた。その後45分間、20℃を保持して撹拌を続けたものを予備重合触媒とした。
予備重合触媒には固体状チタン触媒成分1g当たり2.5gの重合体が含まれていた。
【0054】
[実施例1]
撹拌翼を備えた内容積200Lのステンレス製重合器を用いて、連続的に4−メチル−1−ペンテンの重合を行った。
【0055】
重合器に4−メチル−1−ペンテンを毎時50L、他のα−オレフィンとして1−デセンを毎時0.3L、トリエチルアルミニウムを毎時100mmol、水素を毎時50NL、調製例2で得られた予備重合触媒のデカンスラリーを固体状チタン触媒成分換算で毎時2g、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンを毎時50mmolで加え、重合温度40℃、平均滞留時間約2時間の条件で4−メチル−1−ペンテンの連続重合を行った。重合スラリーは重合反応器下部から連続的に抜き出し、濾過乾燥後、押出機で造粒した。
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、毎時9.2kgの量で得られた。
4−メチル−1−ペンテン系重合体の評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、他のα−オレフィンの供給量を毎時0.3Lに代えて、毎時0.6Lとしたこと以外は、実施例1と同様にして連続重合を行った。
結果を表1に示す。
【0057】
[実施例3]
実施例1において、他のα−オレフィンを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして連続重合を行った。
結果を表1に示す。
【0058】
[実施例4]
実施例3において、重合温度を40℃に代えて、30℃としたこと以外は、実施例3と同様にして連続重合を行った。
結果を表1に示す。
【0059】
[実施例5]
実施例1において、他のα−オレフィンとして1−デセンに代えて、1−オクタデセンを用いたことと、他のα−オレフィンの供給量を毎時0.3Lに代えて、毎時0.7Lとしたことと、重合温度を40℃に代えて、30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして連続重合を行った。
結果を表1に示す。
【0060】
[実施例6]
実施例5において、他のα−オレフィンの供給量を毎時0.7Lに代えて、毎時1.0Lとしたこと以外は、実施例5と同様にして連続重合を行った。
結果を表2に示す。
【0061】
[実施例7]
実施例5において、他のα−オレフィンの供給量を毎時0.7Lに代えて、毎時1.3Lとしたこと以外は、実施例5と同様にして連続重合を行った。
結果を表2に示す。
【0062】
[実施例8]
実施例1において、他のα−オレフィンとして1−デセンに代えて、1−オクタデセンを用いたことと、他のα−オレフィンの供給量を毎時0.3Lに代えて、毎時0.7Lとしたこと以外は、実施例1と同様にして連続重合を行った。
結果を表2に示す。
【0063】
[実施例9]
実施例8において、他のα−オレフィンの供給量を毎時0.7Lに代えて、毎時1.0Lとしたこと以外は、実施例8と同様にして連続重合を行った。
結果を表2に示す。
【0064】
[実施例10]
実施例8において、他のα−オレフィンの供給量を毎時0.7Lに代えて、毎時1.3Lとしたこと以外は、実施例8と同様にして連続重合を行った。
結果を表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
[比較例1]
撹拌翼を備えた内容積200Lのステンレス製重合器を用いて、バッチ的に4−メチル−1−ペンテンの重合を行った。
【0068】
重合器に4−メチル−1−ペンテンを100L、他のα−オレフィンとして1−デセンを1.0L、トリエチルアルミニウムを100mmol、水素を50NL、調製例2で得られた予備重合触媒のヘキサンスラリーを固体状チタン触媒成分換算で2g、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンを50mmol加え、重合温度40℃で4−メチル−1−ペンテンのバッチ重合を行った。反応開始から4時間後、重合スラリーを重合反応器から抜き出し、濾過、乾燥後、押出機で造粒した。
【0069】
4−メチル−1−ペンテン系重合体は15.0kgの量で得られた。
得られた4−メチル−1−ペンテン系重合体の重合条件および重合体の評価結果を表3に示す。
【0070】
[比較例2]
比較例1において、他のα−オレフィンを用いなかったこと以外は、比較例1と同様にして、バッチ的に4−メチル−1−ペンテンの重合を行った。
結果を表3に示す。
【0071】
[比較例3]
比較例1において、他のα−オレフィンとして1−デセンに代えて、1−オクタデセンを用いたことと、他のα−オレフィンの供給量を1.0Lに代えて、1.6Lとしたこと以外は、比較例1と同様にしてバッチ的に4−メチル−1−ペンテンの重合を行った。
結果を表3に示す。
【0072】
[比較例4]
比較例3において、他のα−オレフィンの供給量を1.6Lに代えて、4.5Lとしたこと以外は、比較例3と同様にしてバッチ的に4−メチル−1−ペンテンの重合を行った。
結果を表3に示す。
【0073】
[比較例5]
比較例3において、他のα−オレフィンの供給量を1.6Lに代えて、9.1Lとしたこと以外は、比較例3と同様にしてバッチ的に4−メチル−1−ペンテンの重合を行った。
結果を表3に示す。
【0074】
バッチ重合法により製造した比較例1〜5の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、式(1)〜(2)を同時に満たしておらず、実施例1〜10の連続重合品と比べ、耐熱性および剛性のバランスにおいて劣ることがわかる。
【0075】
[比較例6]
実施例10において、重合温度を40℃に代えて、45℃としたこと以外は、実施例10と同様にして連続重合を行った。
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、毎時9.3kgの量で得られ、溶媒可溶性重合体の量は16.4質量%であった。
【0076】
[比較例7]
実施例10において、電子供与体を用いなかったこと以外は、実施例10と同様にして連続重合を行った。
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、毎時9.2kgの量で得られ、溶媒可溶性重合体の量は16.9質量%であった。
比較例6〜7では、重合反応器から重合反応混合物の連続的な抜き出しを安定して行うことができなかった。
【0077】
【表3】
【0078】
[実施例11]
サーモ・プラスティックス工業株式会社製のTダイ押出成形機(30mmΦ、L/D=26、C1/C2/C3/C4/A1/A2/D1/D2=300/310/310/310/310/310/310/310、スクリュー回転数60rpm)を使用して、実施例1で製造された4−メチル−1−ペンテン系重合体から、幅130mmおよび厚み50μmの単層フィルムを製造した。単層フィルムの製造は、チルロール温度は60℃、フィルムの引取り速度は7m/分の条件で行った。
製造されたフィルムは、耐熱性を有すると同時に柔軟であり、かつ、透明性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の4−メチル−1−ペンテン系重合体は、耐熱性および剛性のバランスに優れるとともに、加工性、耐薬品性ならびに電気的および機械的性質などに優れているため、押出成形品、射出成形品、中空成形品、フィルムおよびシートなどに加工され、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、不織布などの繊維、家電製品、機械部品、電気部品および自動車部品など、多くの用途に好適に用いられる。
図1