特許第5687338号(P5687338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687338
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】ゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20150226BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20150226BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20150226BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150226BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20150226BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20150226BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20150226BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20150226BHJP
   F16L 11/00 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L7/00
   C08L61/06
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08K5/54
   C08L91/00
   B60C1/00
   F16L11/00
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-517212(P2013-517212)
(86)(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公表番号】特表2013-531109(P2013-531109A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】EP2011060619
(87)【国際公開番号】WO2012004140
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】10168646.7
(32)【優先日】2010年7月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンティネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー・クリスティアン
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−228374(JP,A)
【文献】 特開平10−095856(JP,A)
【文献】 特開2010−084102(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0107608(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0132861(US,A1)
【文献】 特開2009−041018(JP,A)
【文献】 特開2008−031427(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0071245(US,A1)
【文献】 特開2002−309224(JP,A)
【文献】 特表2002−533234(JP,A)
【文献】 特開平07−018120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
B60C 1/00−19/12
F16L 9/00−11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成:
− 95から100重量部の少なくとも1種の天然または合成ポリイソプレンと、
− 41から50重量部の少なくとも1種のカーボンブラックと、
− 3から15重量部の少なくとも1種の可塑剤オイルと、
− 3から15重量部の少なくとも1種のシリカと、
− 1から7重量部の少なくとも1種の粘着付与剤樹脂と、
− さらなる添加剤と
を特徴とするゴム混合物。
【請求項2】
前記ゴム混合物が、98から100重量部の天然または合成ポリイソプレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
前記シリカが、カップリング剤によって活性化されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
前記カップリング剤が、シランであることを特徴とする、請求項3に記載のゴム混合物。
【請求項5】
前記シランの量が、0.1から5重量部であることを特徴とする、請求項4に記載のゴム混合物。
【請求項6】
前記シリカの量が、3から10重量部であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項7】
前記ゴム混合物が、3から10重量部の可塑剤オイルを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項8】
前記可塑剤オイルが、鉱油であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項9】
前記鉱油が、MESであることを特徴とする、請求項8に記載のゴム混合物。
【請求項10】
前記カーボンブラックが、60から300g/kgのASTM D1510によるヨウ素吸収係数および80から200cm/100gのASTM D2414によるDBP数を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項11】
前記粘着付与剤樹脂が、フェノール樹脂であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項12】
空気タイヤを製造するための、請求項1から11のいずれか一項に記載のゴム混合物の使用。
【請求項13】
空気タイヤのトレッドまたはボディ混合物を製造するための、請求項12に記載のゴム混合物の使用。
【請求項14】
ベルト、ドライブベルト、またはホースを製造するための、請求項1から11のいずれか一項に記載のゴム混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に空気タイヤ用、ならびにベルト、ドライブベルト、およびホース用のゴム混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
かなりの程度まで、タイヤ、特に空気タイヤの走行特性を決定するのはトレッドのゴム組成である。同様に、ドライブベルト、ホース、および他のベルトにおいて、特に高い機械的荷重を受ける場所で使用されるゴム混合物は、これらのゴム製品の安定性および寿命に実質的に関与している。したがって、空気タイヤ用ならびにベルト、ドライブベルト、およびホース用のこれらのゴム混合物に課せられた要件は、非常に厳格である。
【0003】
走行特性を改善するために、トレッド(例えば、空気タイヤの)は、しばしば2つの部分、すなわち、第1に、道路と直接接触しており、キャップと呼ばれる上側トレッド部分、および第2に、ベースとも呼ばれる下にある下側トレッド部分に分けられる。
【0004】
ここでベースは、果たすべきいくつかの機能を有する。ベースの使用は、タイヤの転がり抵抗を低下させるものであり、したがって、使用される混合物は、低ヒステリシスを有しなければならない。同時に、ベースのゴム混合物は、トレッドがタイヤカーカスに固着したままであるように、タイヤ製造作業の間に十分に高い粘着性を示さなければならない。様々な理由のために、キャップ用のゴム混合物の多くは、比較的高い量のシリカを使用し、これは、言い換えると、上側トレッド部分の電気伝導性が、非常に低いもの、またはゼロでしかないことを意味する。この場合、「炭素中心ビーム」、すなわち、キャップ全体に行き渡り、カーボンブラックを含有する電気伝導性ゴム混合物から構成される導電性パスを用いることによってトレッドの電気伝導性を確保する必要がある−これは、ベース混合物が十分な電気伝導性を有しない場合、追加の製造コストおよび複雑性を伴い得る。この場合、さらなる追加のゴム混合物を用いることが必要である。これらの要件のすべてに加えて、構造耐久性が同様に確保されなければならない。環境的理由のために、空気タイヤの低い転がり抵抗に現在焦点が当てられており、ハンドリング性と呼ばれるそれらの特性が、運転安全性を危険にさらさない限り、単に重要でない役割を果たすことを意味する。このため、現在、ゴム混合物は、低い剛性を有するベース用に使用されている。
【0005】
上に特定された要件、例えば、低ヒステリシス、十分な粘着性、電気伝導性、および構造耐久性は、互いに相容れないこと、および通常、不満足な妥協だけが見られること−すなわち、1つの要件に関してどんな改善でも、少なくとも1つのさらなる要件で悪化を伴うことが知られている。例えば、「低ヒステリシス」要件は、低度の充填および高度の架橋を有するゴム混合物を要求するが、これは、不充分な電気伝導性および低い構造耐久性をもたらす。
【0006】
耐亀裂性(構造耐久性)、およびヒステリシス(転がり抵抗)の間の目標の対立も存在する。同時に、電気伝導性は、タイヤ全体が規定された制限値に従うように、十分に高くなければならない。
【0007】
このような要件は、ベルトおよびドライブベルトなどの工業用ゴム製品に関しても見られる。
【0008】
欧州特許出願公開第1589068A1(D1)号明細書には、ゴム成分として5から50重量部のブタジエンゴムと、50から95重量部のポリイソプレンとの組合せを含むトレッドベースのためのゴム混合物が開示されている。このゴム混合物は、その唯一のフィラー成分として活性カーボンブラックを、好ましくは55から75重量部の量で含む。ゴム混合物は、そのハンドリング性を改善するために、高い剛性とともに高い可撓性を有する。
【0009】
空気タイヤトレッドのチッピング(chipping)およびチャンキング(chunking)特性を改善するために、欧州特許出願公開第1808456A1(D2)号明細書に記載されたゴム混合物は、5から80重量部の鉱油可塑剤、ならびに規定された分子量および軟化点を有する5から30重量部の樹脂に加えて、5から100重量部の規定されたカーボンブラックを含む。ここで高い量で使用されるゴム成分は、スチレン−ブタジエンゴムである。
【0010】
国際公開第2009/115383A1(D3)号パンフレットには、特にトレッドのベース用の、改善された熱の蓄積および改善された磨耗特性を特徴とするゴム混合物が記載されている。そこで記載されたゴム混合物は、単に20から40重量部のカーボンブラックを含有するだけである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明が基づく目的は、低ヒステリシス、十分な粘着性、電気伝導性、および構造耐久性の間の対立を解決し、それ故に、タイヤ製造作業またはタイヤの他の特性に悪影響を与えることなく、特に空気タイヤのベース用の、低ヒステリシスを有するゴム混合物の使用を可能にすることができる、より特にはキャップ/ベーストレッド構造を有する空気タイヤ用のゴム混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、以下の組成:
− 95から100重量部の少なくとも1種の天然または合成ポリイソプレンと、
− 41から50重量部の少なくとも1種のカーボンブラックと、
− 3から15重量部の少なくとも1種の可塑剤オイルと、
− 3から15重量部の少なくとも1種のシリカと、
− 1から7重量部の少なくとも1種の粘着付与剤樹脂と、
− さらなる添加剤と
を有するゴム混合物によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される単位の重量部(phr)(重量でゴムの100部当たりの部数)は、混合物処方のためのゴム業界における通常の量的単位である。ここで個々の物質の重量部の計量は、常に、混合物中に存在するゴムすべての合計質量の100重量部に基づく。
【0014】
驚くべきことに、比較的高い重量割合の天然および/または合成イソプレンと、41から50重量部のカーボンブラックと、比較的少量のシリカとの組合せによって、タイヤ製造作業または他のタイヤ特性に悪影響を与えることなく、特に空気タイヤのベース用の、比較的低いヒステリシスを有するゴム混合物が可能になることが見出された。さらに、驚くべきことに、その粘着性は良好であり、電気伝導性は良好である。これは、車両用トレッド、特にベースに関してのみならず、さらなる内部のタイヤ構成部材に関しても当てはまる。さらなる内部のタイヤ構成部材用のゴム混合物は、以下に要約され、タイヤ技術において通常のことであるが、ボディ配合物(body compounds)またはボディ混合物(body mixtures)とも呼ばれる。
【0015】
「ボディ混合物」という用語は、サイドウォール、内側ライナ、アペックス、ベルト、ショルダ、ベルトプロファイル、スキージ、カーカス、ビード強化材、他の強化インサート、および/またはソリッドタイヤを本質的に含む。
【0016】
同様に、低ヒステリシス、十分な粘着性、電気伝導性、および構造耐久性に関して要求が課せられているので、ドライブベルト、他のベルト、およびホース用の混合物の開発において、本発明のゴム混合物はさらに利用性を見出す。
【0017】
ゴム混合物は、95から100重量部、好ましくは98から100重量部の少なくとも1種の天然または合成ポリイソプレンと、0から5重量部、好ましくは0から2重量部のさらなる極性または非極性ゴムとを含む。この場合、極性または非極性ゴムは、ブタジエンゴムおよび/またはスチレン−ブタジエンゴムおよび/または溶液重合されたスチレン−ブタジエンゴムおよび/またはエマルション重合されたスチレン−ブタジエンゴムおよび/または液状ゴムおよび/またはハロブチルゴムおよび/またはポリノルボルネンおよび/またはイソプレン−イソブチレンコポリマーおよび/またはエチレン−プロピレン−ジエンゴムおよび/またはニトリルゴムおよび/またはクロロプレンゴムおよび/またはアクリルゴムおよび/またはフルオロゴムおよび/またはシリコーンゴムおよび/またはポリスルフィドゴムおよび/またはエピクロロヒドリンゴムおよび/またはスチレン−イソプレン−ブタジエンターポリマーからなる群から選択される。より特には、スチレン−イソプレン−ブタジエンターポリマー、ブチルゴム、ハロブチルゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムが、工業用ゴム製品の製造に用いられる。さらなる極性または非極性ゴムとして少なくとも1種のブタジエンゴムを使用することが好ましい。
【0018】
本発明のゴム混合物は、3から15重量部、好ましくは3から10重量部、より好ましくは3から6重量部のシリカを含む。ここで、シリカの全量は、特に有利な実施形態において、カップリング剤、好ましくはシランによってポリマーマトリクスに結合している。タイヤ産業で使用されるシリカは、一般に沈降シリカであり、これは特に、それらの表面積によって特徴付けされる。ここで特徴付けは、m/g単位で、フィラーの内部および外部表面積の尺度として、DIN66131およびDIN66132に従って窒素表面積(BET)の、およびm/g単位で、ゴム活性表面積であると考えられることが多い外部表面積の尺度として、ASTM D3765に従ってCTAB表面積の規格によって行われる。
【0019】
120から300m/g、好ましくは150から250m/gの窒素表面積、および120から230m/g、好ましくは140から200m/gのCTAB表面積を有するシリカが、本発明によって使用される。
【0020】
有利に使用されるシランの量は、0.1から5重量部、好ましくは0.1から2重量部である。ここで使用され得るシランカップリング剤は、ゴム混合物における使用のための当業者に公知のシランカップリング剤のすべてである。
【0021】
このように活性化されたシリカの使用は、以下に後で示される実施例における引張特性の点で利点を与える。
【0022】
特にタイヤのトレッドのベースとしての本発明のゴム混合物の使用に関して、トレッドが、製造作業の間に粘着性のままであるように、未加硫混合物の部分の十分な粘着性は、絶対に必要である。このために、ゴム混合物は、少なくとも1から5重量部の粘着付与剤樹脂を含有しなければならない。使用される粘着付与剤樹脂は、粘着付与剤として作用する炭化水素樹脂などの天然または合成樹脂である。炭化水素樹脂は、フェノール系、芳香族系または脂肪族系であってもよい。粘着付与剤樹脂は、好ましくはロジンおよびそれらのエステル、テルペン−フェノール樹脂、アルキン−フェノール樹脂、フェノール樹脂、およびクマロン−インデン樹脂からなる群から選択され、フェノール樹脂が、本発明に特に適している。
【0023】
本発明のゴム混合物は、3から15重量部、好ましくは3から10重量部の少なくとも1種の可塑剤オイルをさらに含み、可塑剤オイルは、好ましくはDAE(蒸留芳香族抽出物)および/またはRAE(残留芳香族抽出物)および/またはTDAE(処理された蒸留芳香族抽出物)および/またはMES(軽度抽出溶剤)および/またはナフタレンオイルからなる群から選択された鉱油である。可塑剤オイルをトレッドのベース用ゴム混合物に添加することが有利であり、その理由は、完成タイヤにおいて、可塑剤は一般に濃度勾配に従って移行し、その移行は、定められた手段によって制限することができるからである。転がり抵抗特性に対する正の影響は、可塑剤オイルが、比較的低いガラス転移温度(T)を有する場合に認められた。したがって、MESを使用することが極めて好ましく、TDAEを使用することが非常に好ましく、RAEを使用することが好ましい。
【0024】
ゴム混合物の範囲内で、0から5重量部の少なくとも1種のさらなる追加の可塑剤が存在していてもよい。このさらなる可塑剤は、合成可塑剤および/または脂肪酸および/または脂肪酸誘導体および/または樹脂および/またはファクチス(factice)および/または植物油もしくはBTL[biomass−to−liquid(バイオマス液化油)]であってもよい。
【0025】
さらに、本発明にとって、ゴム混合物は、41から50重量部の少なくとも1種のカーボンブラックを含むことが必須である。ここで、カーボンブラックが60から300g/kg、好ましくは80から130g/kgのASTM D1510によるヨウ素価、および80から200cm/100g、好ましくは100から140cm/100gのASTM D2414によるDBP数を有する場合、好ましい。ASTM D1510によるヨウ素価は、ヨウ素吸収係数とも呼ばれる。ASTM D2414によるDBP数は、フタル酸ジブチルを用いたカーボンブラックまたは淡色フィラーの比吸収容量を規定する。これらの性質を有するカーボンブラックの使用は、少量のベースカーボンブラックが、タイヤ製造作業の間の戻り工程(return process)の結果としてキャップゴム混合物中に入るので、トレッド全体の磨耗挙動に関して利点を有する。タイヤ試験は、キャップ中のこのような少量(約1から3重量部)でさえも、ヨウ素価およびDBP数が上に特定されたものから外れるカーボンブラックが使用される場合、磨耗における明確な劣化があることを意味することを示した。
【0026】
ゴム混合物は、好ましくは0.1から10重量部、より好ましくは0.2から8重量部、非常に好ましくは0.2から4重量部の酸化亜鉛をさらに含む。活性剤として酸化亜鉛を、通常は脂肪酸(例えば、ステアリン酸)と組み合わせて、加硫促進剤と一緒に硫黄架橋のためにゴム混合物に添加することが通常である。次いで、硫黄は、複合体の形成によって加硫のために活性化される。この場合、従来使用される酸化亜鉛は、一般に10m/g未満のBET表面積を有する。しかし、10から60m/gのBET表面積を有する、いわゆるナノ酸化亜鉛も使用することができる。
【0027】
ゴム混合物は、さらなる添加剤を追加的に含む。さらなる添加剤としては、実質的に、架橋系(架橋剤、促進剤、および遅延剤)、オゾン抑制剤、老化抑制剤、素練り補助剤、およびさらなる活性剤が挙げられる。
【0028】
さらなる添加剤の合計量の割合は、2から50重量部、好ましくは4から20重量部である。
【0029】
ゴム混合物は、硫黄または硫黄供与体の存在下で加硫され;ある種の硫黄供与体は、加硫促進剤としても作用し得る。硫黄または硫黄供与体は、最後の混合工程において、当業者に通例の量(0.4から4重量部;好ましくは1.5から2.5重量部の量の硫黄)で添加される。加硫の必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために、ゴム混合物は、加硫促進剤、加硫遅延剤などの加硫調節剤を含んでもよく、これらは、本発明によって、上記添加剤、および上記加硫活性剤中に存在する。
【0030】
本発明のゴム混合物は、ゴム業界で通例の方法によって製造され、これは、最初に1つまたは複数の混合段階において、加硫系(硫黄および加硫調節剤)とは別に、成分のすべてを含む基本混合物を調製するステップを含む。最終混合段階における加硫系の添加は、完成混合物を生成させる。完成混合物は、さらに押出し作業によって処理され、例えば、適当な形態にされる。
【0031】
本発明が基づくさらなる目的は、空気タイヤを製造するために、より特にはタイヤのトレッドのベースおよび/またはタイヤのボディ混合物を製造するために、ならびにドライブベルト、他のベルト、およびホースを製造するために上記のゴム混合物を使用するというものである。
【0032】
空気タイヤにおける使用のために、混合物は、好ましくはトレッドの形態にされ、グリーンタイヤの製造の間に公知の仕方で適用される。あるいは、ゴム混合物の幅の狭い細片の形態のトレッドは、グリーンタイヤの上に巻くことができる。始めに記載したように、トレッドが2つの部分である場合、ゴム混合物は、好ましくはベース用の混合物として用いられる。
【0033】
車両用タイヤにおけるボディ混合物として用いるための本発明のゴム混合物の製造は、トレッドについて既に記載したとおりに行われる。違いは、押出し作業後の成形にある。次いで、1つまたは複数の異なるボディ混合物のための得られた形態の本発明のゴム混合物は、グリーンタイヤを構築するために使用される。ドライブベルトおよび他のベルト、より特にはコンベイヤーベルトにおける本発明のゴム混合物の使用のために、押出された混合物は、適当な形態にされ、この操作の間にまたは後で、例としては合成繊維またはスチールコードである強度要素をしばしば与えられる。これは通常は、ゴム混合物の1つおよび/または複数の層、同じおよび/または異なる強度要素の1つおよび/または複数の層、ならびに同じおよび/または別のゴム混合物の1つおよび/または複数のさらなる層からなる多層構造をもたらす。十分な粘着性も、例えば、強固に固着するアッセンブリが個々の層間で、ゴム混合物と強度要素の間で形成され得るように、ここで関係する。
【実施例】
【0034】
本発明はこれから、表1にまとめられている比較例および実施例によってより詳細に明らかにされる。発明混合物は「I」で始まるが、一方比較混合物は、「C」で表示される。表中に存在する混合実施例のすべてに関して、示された量の数字は、重量部であり、全ゴムの100重量部に基づく(phr)。
【0035】
混合物は、実験室用タンジェンシャルミキサーにおいて2段階で通常の条件下で作製した。試験片は、加硫によって混合物のすべてから作製し、これらの試験片は、ゴム業界にとって典型的な物理的特性を決定するために用いた。試験に対して上述の試験に用いた試験方法は、以下のとおりであった:
・ DIN53 505による室温(RT)でのショアA硬度
・ DIN53 512による室温(RT)および70℃での反発弾性
・ DIN53 504による室温(RT)での100%および200%伸長時の応力値(モジュラス)
・ DIN53 504による室温(RT)での引張強度
・ DIN53 515による室温(RT)でのグレーブス引裂抵抗
・ DIN53 448による室温(RT)での破断時エネルギー
・ DIN53 504による室温(RT)での破断時伸び
・ 8%伸長時の、DIN53 513による55℃での動的貯蔵弾性率E’
・ 標準DIN IEC93による体積抵抗
SMR 10
高シスポリブタジエン、シス割合≧95重量%
Evonik製VN3
TESPD
MES
フェノール樹脂、BASF製Koresin(登録商標)
老化抑制剤、オゾン抑制剤ワックス、ステアリン酸、CTP
スルフェンアミド促進剤、CBS
【0036】
【表1】
【0037】
調査により、空気タイヤトレッドのベース用のゴム混合物について、70℃での反発値は、転がり抵抗特性と相関しており、RTでの硬度は、ハンドリング性と相関していることが示された。構造耐久性のための確立されたパラメータは、耐亀裂性を特徴付けするための物理的混合パラメータとして、破断時エネルギーおよび引裂抵抗である。
【0038】
本発明の目的は、十分な粘着性とともに、耐亀裂性および電気伝導性を保持しながら、最小ヒステリシスの最適化を達成することである。
【0039】
このように、例えば、フィラー含有量を減少させることによって低下させることができることが、表1からわかる(混合物C5と残りの混合物との比較)。非常に驚くべきことに、41重量部のカーボンブラックと38重量部のカーボンブラックの間で、ほぼ10の4乗だけ電気伝導性における急激な降下がある(混合物C1およびI1、I2)。しかし、驚くべきことに、50重量部のカーボンブラックを超えると、反発において非常に急激な降下があり(混合物C5)、これは、耐亀裂性が著しく不十分になることなしには、より広範な架橋に加えて可塑剤オイルによって対抗補償することができない。さらに、より良好な耐亀裂性は、比較的少量の活性化シリカの添加によって見られる。反発について同様の値を有する、混合物C1からC4およびI1からI3を見ると、混合物C1およびI1からI3は、シリカを含まない対応する混合物、C2からC4よりも破断時エネルギーおよび引裂抵抗についてより高い値を有することがわかる。カップリング剤の形態での活性剤の除外は、他の特性における改善がまったくなしに、反発についてより低い値をもたらす(混合物I1およびI2)。さらに、95重量部を超える量でポリイソプレンを使用することが有利であることは明らかである。このような混合物の耐亀裂性は、5重量部を超えるさらなるゴムを含有する混合物のものを凌ぐ(混合物C2およびC3)。したがって、表1から、本発明混合物I1からI3のみが、本発明において課せられた問題を成功裏に解決することができることがわかる。