(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方には、前記ロッド本体と凹凸嵌合される嵌合部が設けられている請求項1に記載の防振連結ロッド用筒型防振装置。
前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方には前記スリーブ部材に対する挿入端を規定する挿入位置規定部が設けられている請求項1又は2に記載の防振連結ロッド用筒型防振装置。
前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方には、前記ロッド本体の前記ロッド端挿入空所に対する挿入端を規定するロッド位置規定部が設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の防振連結ロッド用筒型防振装置。
前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の何れか一方にナットが一体的に設けられていると共に、前記締結部材が該第一の連結部材と該第二の連結部材の何れか他方と前記ロッド本体とを貫通するボルト孔に挿通される固定用ボルトとされており、該固定用ボルトが該ナットに螺着されることで該第一の連結部材および該第二の連結部材と該ロッド本体とが相互に固定されると共に、該固定用ボルトを該ナットに締め込むことで該第一の連結部材と該第二の連結部材が該ロッド本体に当接せしめられるようにした請求項1〜4の何れか一項に記載の防振連結ロッド用筒型防振装置。
ロッド本体の一方の端部が請求項1〜5の何れか一項に記載された防振連結ロッド用筒型防振装置における前記ロッド端挿入空所に差し入れられて、該ロッド本体の一方の端部が前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の重ね合わせ面間に固定されていることを特徴とする防振連結ロッド。
前記ロッド挿入工程において、前記ロッド本体を前記ロッド端挿入空所に差し入れる際の挿入分力によって前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方を前記スリーブ部材の軸方向外方に移動させながら、該ロッド本体を該ロッド端挿入空所に差し入れる請求項7に記載の防振連結ロッドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、インナ軸部材にロッド本体が取り付けられる構造を採用しながら、防振特性のチューニング自由度や耐久性を確保し、且つロッド本体に簡単に取り付けることができる、新規な構造の防振連結ロッド用筒型防振装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、上記の筒型防振装置を用いた防振連結ロッドと、その製造方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0011】
すなわち、本発明の第一の態様は、ロッド本体に取り付けられるインナ軸部材とアウタ筒部材とが、本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結された防振連結ロッド用筒型防振装置であって、前記インナ軸部材はスリーブ部材に対して第一の連結部材と第二の連結部材が軸方向に重ね合わされて挿入された構造を有しており、該スリーブ部材の外周面には前記本体ゴム弾性体が固着されていると共に、該スリーブ部材に挿入された該第一の連結部材と該第二の連結部材の軸方向の重ね合わせ面が相互に離隔しており、それら第一の連結部材と第二の連結部材の間にロッド端挿入空所が形成されていると共に、該ロッド端挿入空所が該スリーブ部材および該アウタ筒部材の周壁に開口するロッド挿通孔を通じて外部に連通されており、該ロッド挿通孔を通じて該ロッド端挿入空所に差し入れられる該ロッド本体の一方の端部が該第一の連結部材および該第二の連結部材に対して締結部材で固定されると共に、該第一の連結部材と該第二の連結部材が該締結部材によって該ロッド本体にそれぞれ当接せしめられるようにしたことを、特徴とする。
【0012】
このような第一の態様に従う構造とされた防振連結ロッド用筒型防振装置によれば、インナ軸部材が、スリーブ部材に第一の連結部材と第二の連結部材を差し入れた構造とされて、スリーブ部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されることから、本体ゴム弾性体のゴムボリュームを軸方向で大きく確保できる。それ故、防振特性のチューニング自由度の向上や、本体ゴム弾性体の耐久性の向上などが実現可能となる。
【0013】
しかも、アウタ筒部材を軸方向に分割する必要がなく、アウタ筒部材の軸方向寸法が大きく設定されて、アウタ筒部材の装着対象部材への圧入面が大きく確保されることから、装着対象部材に対する耐抜け力の向上や装着状態の安定化も図られる。
【0014】
また、ロッド本体が第一の連結部材と第二の連結部材の間に差し入れられて、第一の連結部材と第二の連結部材がロッド本体にそれぞれ当接されるようになっており、ロッド本体に対してインナ軸部材をがたつきなく取り付けることが可能とされる。しかも、スリーブ部材に挿入された第一の連結部材と第二の連結部材が、ロッド本体への固定時に及ぼされる締結部材の締結力によって相互に接近せしめられることにより、特別に大きな力を加えることなく、ロッド本体を第一の連結部材と第二の連結部材で挟み込むことができる。加えて、第一の連結部材と第二の連結部材は、本体ゴム弾性体に固着されることなく、スリーブ部材に挿入されていることから、第一の連結部材と第二の連結部材の接近変位が本体ゴム弾性体の弾性によって阻害されることがなく、ロッド本体への取付作業が容易である。
【0015】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された防振連結ロッド用筒型防振装置において、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方には、前記ロッド本体と凹凸嵌合される嵌合部が設けられているものである。
【0016】
第二の態様によれば、第一の連結部材と第二の連結部材の少なくとも一方に設けられた嵌合部がロッド本体に凹凸嵌合されることにより、ロッド本体がインナ軸部材に対して所定の位置に位置決めされる。しかも、ロッド本体の装着状態において、嵌合部がロッド本体に対して軸直角方向で係止されることにより、ロッド本体のロッド端挿入空所からの抜けなどが防止される。
【0017】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振連結ロッド用筒型防振装置において、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方には前記スリーブ部材に対する挿入端を規定する挿入位置規定部が設けられているものである。
【0018】
第三の態様によれば、第一の連結部材と第二の連結部材の少なくとも一方が、スリーブ部材に対して、挿入位置規定部によって規定された所定位置まで挿入されることにより、ロッド端挿入空所をインナ軸部材における軸方向の適切な位置に固定される。
【0019】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された防振連結ロッド用筒型防振装置において、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方には、前記ロッド本体の前記ロッド端挿入空所に対する挿入端を規定するロッド位置規定部が設けられているものである。
【0020】
第四の態様によれば、ロッド本体のロッド端挿入空所への挿入量が適当に設定されることにより、ロッド本体と第一の連結部材および第二の連結部材を、適切な位置で締結部材によって固定することができる。
【0021】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された防振連結ロッド用筒型防振装置において、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の何れか一方にナットが一体的に設けられていると共に、前記締結部材が該第一の連結部材と該第二の連結部材の何れか他方と前記ロッド本体とを貫通するボルト孔に挿通される固定用ボルトとされており、該固定用ボルトが該ナットに螺着されることで該第一の連結部材および該第二の連結部材と該ロッド本体とが相互に固定されると共に、該固定用ボルトを該ナットに締め込むことで該第一の連結部材と該第二の連結部材が該ロッド本体に当接せしめられるようにしたものである。
【0022】
本発明の第五の態様によれば、固定用ボルトとナットの螺着によって、第一の連結部材および第二の連結部材とロッド本体とを簡単に固定することができると共に、固定用ボルトとナットの締結力によって、第一の連結部材と第二の連結部材を相対的な接近方向に変位させて、ロッド本体に当接させることができる。しかも、固定用ボルトのナットに対する締込みを調節することで、第一の連結部材と第二の連結部材のロッド本体に対する当接力を、簡単に調節できる。
【0023】
本発明の第六の態様は、防振連結ロッドであって、ロッド本体の一方の端部が第一〜第五の何れか一つの態様に記載された防振連結ロッド用筒型防振装置における前記ロッド端挿入空所に差し入れられて、該ロッド本体の一方の端部が前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の重ね合わせ面間に固定されていることを、特徴とする。
【0024】
このような第六の態様に記載された防振連結ロッドによれば、本発明に係る防振連結ロッド用筒型防振装置を備えることによって、優れた防振性能と耐久性が実現される。
【0025】
しかも、ロッド本体の一方の端部がインナ軸部材の第一の連結部材と第二の連結部材の間に挟まれて固定されることから、端部にアウタ筒部材の圧入部が設けられた従来構造のロッド本体に比して、ロッド本体の軽量化が図られて、ロッド本体をマスとする共振系の共振周波数をより高周波に設定し易くなる。その結果、目的とする防振特性を得ながら、ロッド本体の共振による振動状態への悪影響が低減乃至は回避される。
【0026】
本発明の第七の態様は、防振連結ロッドの製造方法であって、スリーブ部材とアウタ筒部材の間に本体ゴム弾性体を加硫成形して、それらスリーブ部材とアウタ筒部材を該本体ゴム弾性体で弾性連結するゴム成形工程と、該スリーブ部材に第一の連結部材と第二の連結部材を挿入して軸方向に重ね合わせると共に、それら第一の連結部材と第二の連結部材の少なくとも一方を該スリーブ部材に対して軸方向へ移動可能に組み付けるインナ仮組工程と、該スリーブ部材と該アウタ筒部材の周壁に形成されたロッド挿通孔を通じて、該スリーブ部材に挿入された該第一の連結部材と該第二の連結部材の軸方向の重ね合わせ面間に形成されるロッド端挿入空所にロッド本体を差し入れるロッド挿入工程と、該第一の連結部材と該第二の連結部材を該ロッド本体に締結部材で相互に固定すると共に、該第一の連結部材と該第二の連結部材の少なくとも一方を該締結部材の締結力により該スリーブ部材に対して軸方向へ移動させてそれら第一の連結部材と第二の連結部材を該ロッド本体に当接させるロッド固定工程とを、有することを、特徴とする。
【0027】
このような第七の態様に記載された防振連結ロッドの製造方法によれば、ロッド本体のロッド端挿入空所への挿入時には、第一の連結部材と第二の連結部材の挿入先端面間距離が、ロッド本体の同方向での厚さ寸法よりも大きくされて、ロッド本体を小さな力で容易に挿入することができる。
【0028】
さらに、第一の連結部材と第二の連結部材が締結部材によってロッド本体に固定される際に、スリーブに対して移動可能に挿入された第一の連結部材と第二の連結部材が、締結部材の締結力によって相互に接近変位せしめられて、それぞれロッド本体に当接される。それ故、ロッド本体の締結部材による固定後には、ロッド本体が、第一の連結部材と第二の連結部材に対して、がたつきなどを生じることなく取り付けられる。
【0029】
本発明の第八の態様は、第七の態様に記載された防振連結ロッドの製造方法であって、前記インナ仮組工程において前記スリーブ部材に挿入された前記第一の連結部材と前記第二の連結部材との重ね合わせ面間の距離を前記ロッド本体よりも大きくして、前記ロッド挿入工程において該ロッド本体の一方の端部を前記ロッド端挿入空所に該第一の連結部材と該第二の連結部材の重ね合わせ面の少なくとも一方に対する隙間をもって挿入すると共に、前記ロッド固定工程において該第一の連結部材と該第二の連結部材を相対的に接近変位せしめて該ロッド本体に当接させるものである。
【0030】
第八の態様によれば、ロッド端挿入空所が予めロッド本体よりも大きく広げられていることから、ロッド本体のロッド端挿入空所への挿入作業をより小さな力で簡単に行うことができる。
【0031】
本発明の第九の態様は、第七の態様に記載された防振連結ロッドの製造方法であって、前記ロッド挿入工程において、前記ロッド本体を前記ロッド端挿入空所に差し入れる際の挿入分力によって前記第一の連結部材と前記第二の連結部材の少なくとも一方を前記スリーブ部材の軸方向外方に移動させながら、該ロッド本体を該ロッド端挿入空所に差し入れるものである。
【0032】
第九の態様によれば、インナ仮組工程において、第一の連結部材と第二の連結部材のスリーブ部材に対する挿入量を十分に大きく設定して、第一の連結部材および第二の連結部材のスリーブ部材からの脱落を防止することができる。それ故、製造作業中に防振連結ロッド用筒型防振装置を取り扱い易くなると共に、例えば、防振連結ロッド用筒型防振装置を、ロッド本体に組み付ける前の単体状態で保管や輸送する場合にも、取り扱いが容易になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、インナ軸部材がスリーブ部材に第一の連結部材と第二の連結部材を挿入した構造とされており、スリーブ部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されていることから、本体ゴム弾性体のゴムボリュームが軸方向で大きく確保されて、防振特性のチューニング自由度の向上や、耐久性の向上などが図られる。更に、スリーブ部材に挿入された第一の連結部材と第二の連結部材が、締結部材によって、ロッド端挿入空所に挿入されたロッド本体に当接されることから、ロッド本体のインナ軸部材に対するがたつきが防止される。更にまた、第一の連結部材と第二の連結部材が、本体ゴム弾性体に固着されることなく、スリーブ部材に挿入されていることから、第一の連結部材と第二の連結部材のロッド本体への当接が、本体ゴム弾性体の弾性によって阻害されることはなく、ロッド本体への取付作業も容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1〜3には、本発明の第一の実施形態としての防振連結ロッド用筒型防振装置(以下、筒型防振装置)10が示されている。筒型防振装置10は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が、本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは
図3中の上下方向を言う。また、前後方向とは車両装着状態で車両前後方向となる
図2中の左右方向を、左右方向とは車両左右方向となる
図2中の上下方向を、それぞれ言う。
【0037】
より詳細には、インナ軸部材12は、スリーブ部材18に対して、第一の連結部材20と第二の連結部材22を、上下各一方の開口から挿入した構造とされている。
【0038】
スリーブ部材18は、鉄やアルミニウム合金などの金属で形成された高剛性の部材であって、本実施形態では薄肉の略多角筒状とされている。また、スリーブ部材18の周壁の一部には、軸方向中間部分を貫通するロッド挿通孔としての内窓部24が形成されている。
【0039】
第一の連結部材20は、樹脂で形成された本体部26を有している。本体部26は、スリーブ部材18の内周形状に略対応する外周形状を有する略多角柱状とされており、中央部分には上下に貫通する貫通孔28が形成されている。更に、本体部26には、上方に開口する複数の肉抜凹所30が形成されて、軽量化が図られている。また、本体部26の上端部には、外周側に突出する挿入位置規定部としてのスリーブ当接突部32が、周上の複数箇所に一体形成されている。なお、本体部26の外周面の下端部は、下方に行くに従って次第に収縮するテーパ面とされている。
【0040】
さらに、本体部26には、ナット34が一体的に固着されている。ナット34は、貫通孔28の下端部に配設されており、貫通孔28の中間部分に形成された内フランジ部36に上面が重ね合わされて固着されていると共に、外周面が貫通孔28の内周面に固着されている。また、ナット34の下面が、本体部26の下面よりも下方に僅かに突出していると共に、ナット34の下端内周部分には、下方に向かって拡径するテーパ形状の係合凹部38が形成されている。更に、ナット34の外周面には、軸方向で交互に凹凸が設けられており、本体部26への固着面積が大きくされていると共に、本体部26との係合によって、ナット34の本体部26からの抜けが防止されている。なお、ナット34は、本体部26の成形時にインサートされている。
【0041】
第二の連結部材22は、鉄やアルミニウム合金などの金属で形成されており、第一の連結部材20と同様に、スリーブ部材18の内周形状に略対応する外周形状を有する略多角柱状とされている。更に、第二の連結部材22の中央部分には、上下に貫通するボルト孔40が形成されている。更にまた、第二の連結部材22には、下面に開口する複数の肉抜凹所42が形成されて、軽量化が図られている。さらに、第二の連結部材22には、上方に突出するロッド位置規定部としてのロッド当接突部44が一体形成されている。また、第二の連結部材22の外周面の上端部は、上方に行くに従って次第に収縮するテーパ面とされている。
【0042】
一方、アウタ筒部材14は、金属などで形成された高剛性の部材であって、薄肉大径の略円筒形状を有している。また、アウタ筒部材14には、周壁の一部を貫通するロッド挿通孔としての外窓部46が形成されている。
【0043】
そして、インナ軸部材12のスリーブ部材18が、アウタ筒部材14の内周側に所定の距離を隔てて挿入配置されており(
図4参照)、それらスリーブ部材18とアウタ筒部材14が、本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、
図5に示すように、スリーブ部材18の表面を覆うインナゴム層48と、アウタ筒部材14の内周面を覆うアウタゴム層50と、インナゴム層48とアウタゴム層50を相互に連結する左右一対の連結腕部52,52とを、一体で備えている。これにより、連結腕部52の内周側の端部が、インナゴム層48においてスリーブ部材18の外周面に加硫接着されていると共に、連結腕部52の外周側の端部が、アウタゴム層50においてアウタ筒部材14の内周面に加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16は、スリーブ部材18とアウタ筒部材14を備えた一体加硫成形品54として形成されている。また、本実施形態では、スリーブ部材18の周壁に複数の連通孔56が形成されており、ゴム材料の充填不良を生じることなく、スリーブ部材18の内外周両面に所定のインナゴム層48が形成されると共に、スリーブ部材18に対するインナゴム層48の固着強度の向上が図られる。
【0044】
さらに、インナゴム層48には、第一のインナストッパゴム58と第二のインナストッパゴム60が、前後各一方の外方に突出して設けられている。一方、アウタゴム層50には、第一のアウタストッパゴム62と第二のアウタストッパゴム64が、前後各一方の内方に突出して設けられている。更にまた、第一のインナストッパゴム58と第一のアウタストッパゴム62が、前後方向で所定の距離を隔てて対向していると共に、第二のインナストッパゴム60と第二のアウタストッパゴム64が、前後方向で所定の距離を隔てて対向している。そして、スリーブ部材18とアウタ筒部材14が、前後方向の入力に対して、第一のストッパゴム58,62または第二のストッパゴム60,64を介して当接することにより、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の相対変位量を前後方向で制限する前後ストッパ手段が構成される。
【0045】
なお、第二のインナストッパゴム60を含むインナゴム層48には、スリーブ部材18の内窓部24と対応する部分に、内貫通窓66が形成されている。同様に、アウタゴム層50にも、アウタ筒部材14の外窓部46と対応する部分に、外貫通窓68が形成されている。スリーブ部材18の内窓部24と、アウタ筒部材14の外窓部46は、周上で相互に位置決めされており、何れも車両前後方向に開口している。
【0046】
そして、
図6に示すように、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品54を構成するスリーブ部材18に、第一の連結部材20と第二の連結部材22が軸方向に重ね合わされて挿入されることにより、本実施形態の筒型防振装置10(
図3参照)が構成される。
【0047】
すなわち、インナゴム層48で覆われたスリーブ部材18の内孔70に対して、第一の連結部材20が上側の開口部から差し入れられて、スリーブ当接突部32がスリーブ部材18の上端面に当接せしめられることで軸方向に位置決めされる。このように、スリーブ当接突部32がスリーブ部材18に軸方向で当接することにより、第一の連結部材20のスリーブ部材18への挿入端が軸方向で規定されている。一方、スリーブ部材18の内孔70に対して、第二の連結部材22が下側の開口部から差し入れられて、下面がスリーブ部材18の下端面と略同じ位置になるまで挿入される。なお、スリーブ部材18の内周面に固着されたインナゴム層48には、内周面に開口して軸方向に延びる直線的な凹溝が、周上で多数形成されており、内孔70への挿入時に第一,第二の連結部材20,22に作用する摩擦抵抗の低減が図られている。
【0048】
かかる第一の連結部材20と第二の連結部材22のスリーブ部材18への組付け状態において、第一の連結部材20の挿入先端面である下面と、第二の連結部材22の挿入先端面である上面とが、スリーブ部材18の軸方向で相互に所定の距離を隔てて対向している。これにより、スリーブ部材18の内周側における第一の連結部材20と第二の連結部材22の間には、ロッド端挿入空所72が形成されている。なお、第二の連結部材22のロッド当接突部44が、ロッド端挿入空所72に突出している。
【0049】
さらに、ロッド端挿入空所72は、スリーブ部材18の内窓部24と、インナゴム層48の内貫通窓66と、アウタゴム層50の外貫通窓68と、アウタ筒部材14の外窓部46とを通じて、外部(アウタ筒部材14の外周側)に前後方向で連通されている。要するに、本実施形態では、ロッド挿通孔を構成する内窓部24と外窓部46が、内貫通窓66と外貫通窓68によって相互に連通されており、ロッド端挿入空所72がロッド挿通孔を通じて外部に連通されている。また、第二の連結部材22のロッド当接突部44は、ロッド挿通孔に対して、ボルト孔40を挟んで前後方向の反対側に位置している。
【0050】
かくの如き構造とされた筒型防振装置10は、
図7〜9に示すように、ロッド本体74の一方の端部に取り付けられることにより、防振連結ロッドとしてのトルクロッド76を構成する。
【0051】
ロッド本体74は、鉄やアルミニウム合金などで形成された高剛性の部材であって、前後方向に延びる長手状とされている。更に、ロッド本体74の中間部分には、前後方向の一方から他方(
図8の左方から右方)に向かって次第に断面積が大きくなるテーパ部78を備えており、ロッド本体74の一方の端部が略一定の矩形断面で延びる第一の取付部80とされていると共に、他方の端部が二股形状の第二の取付部82とされている。
【0052】
また、第一の取付部80には、上下に貫通するボルト孔84が形成されていると共に、ボルト孔84の上側開口部の周辺において上方に突出する係合凸部86が一体形成されている。なお、係合凸部86は、外周面が上方に向かって次第に縮径するテーパ面とされている。
【0053】
また、第二の取付部82には、左右に貫通する締結孔88が形成されており、締結孔88に挿通される図示しないボルトによって、同じく図示しないブラケット部材が取り付けられるようになっている。
【0054】
そして、ロッド本体74の第一の取付部80が、筒型防振装置10を介して、防振対象部材としての車両ボデー(図示せず)側に取り付けられると共に、ロッド本体74の第二の取付部82が、図示しないブラケット部材を介して、振動源であるパワーユニット(図示せず)側に取り付けられるようになっている。
【0055】
ここにおいて、ロッド本体74の第一の取付部80は、筒型防振装置10のインナ軸部材12に取り付けられる。即ち、ロッド本体74の第一の取付部80は、筒型防振装置10のロッド挿通孔24,46を通じて、インナ軸部材12のロッド端挿入空所72に挿入される。そして、第二の連結部材22のボルト孔40と第一の取付部80のボルト孔84に下方から挿通される締結部材としての固定用ボルト90が、第一の連結部材20のナット34に螺着されて締め付けられることにより、ロッド本体74が第一,第二の連結部材20,22の間に固定される。
【0056】
さらに、固定用ボルト90をナット34への締結によって発揮される軸方向の締結力が、第一,第二の連結部材20,22に対して、相対的な接近方向で及ぼされる。これにより、スリーブ部材18に軸方向への移動を許容された状態で挿入された第一,第二の連結部材20,22が、相互に接近して、それぞれロッド本体74の第一の取付部80に当接状態で重ね合わされる。
【0057】
なお、以下に、筒型防振装置10の製造方法を含むトルクロッド76の製造方法を説明する。
【0058】
先ず、予め準備したスリーブ部材18とアウタ筒部材14をセットされた金型によって、本体ゴム弾性体16を加硫成形することにより、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品54を形成する。以上により、ゴム成形工程を完了する。
【0059】
次に、スリーブ部材18の上側開口から第一の連結部材20を内孔70に挿入すると共に、スリーブ部材18の下側開口から第二の連結部材22を内孔70に挿入して、第一の連結部材20と第二の連結部材22を、スリーブ部材18に対して、軸方向へ移動可能な状態で仮組み付けする。以上により、インナ仮組工程を完了して、筒型防振装置10を形成する。なお、本実施形態では、第一の連結部材20の下端部と、第二の連結部材22の上端部とが、何れも挿入先端側に向かって次第に収縮するテーパ形状とされていることから、それら第一,第二の連結部材20,22のスリーブ部材18への挿入作業をより簡単に行うことができる。
【0060】
また次に、予め準備されたロッド本体74の一方の端部を、筒型防振装置10におけるアウタ筒部材14の外窓部46から差し入れて、スリーブ部材18の内窓部24を通じてインナ軸部材12のロッド端挿入空所72に挿入する。以上により、ロッド挿入工程を完了する(
図10参照)。
図10では、筒型防振装置10単体にロッド本体74を挿入した状態が示されているが、例えば、筒型防振装置10のアウタ筒部材14を車両ボデー側となるサスペンションメンバなどのホルダに圧入した後で、アウタ筒部材14の外窓部46に連通されるホルダ周壁の開口から、ロッド本体74をロッド端挿入空所72に差し入れることもできる。
【0061】
なお、本実施形態では、ロッド本体74の挿入先端面が、第二の連結部材22のロッド当接突部44に当接することで、ロッド本体74の挿入端が規定されて、ロッド本体74のロッド端挿入空所72への挿入量が適切に設定されるようになっている。尤も、ロッド当接突部44への当接によって、ロッド本体74がインナ軸部材12への装着位置に厳密に位置決めされる必要はなく、後述するロッド固定工程において、ボルト孔40,84に固定用ボルト90を挿通可能な程度に位置決めされれば良い。また、
図9に示すように、後述するロッド固定工程の完了時には、ロッド本体74がロッド当接突部44から離隔している。
【0062】
さらに、本実施形態では、インナ仮組工程でスリーブ部材18に仮組み付けされた第一の連結部材20と第二の連結部材22の重ね合わせ面間の距離が、ロッド端挿入空所72に挿入されるロッド本体74の一方の端部における厚さ寸法の最大値、要するにロッド本体74の下面から係合凸部86の突出先端までの距離よりも、大きくされている。これにより、ロッド本体74の一方の端部は、
図10に示すように、第一,第二の連結部材20,22の少なくとも一方に対する隙間をもって、ロッド端挿入空所72に挿入される。
【0063】
次に、
図9に示すように、第二の連結部材22のボルト孔40とロッド本体74のボルト孔84に、固定用ボルト90を下方から挿通して、固定用ボルト90を第一の連結部材20のナット34に螺着させることにより、第一,第二の連結部材20,22とロッド本体74を相互に固定する。更に、固定用ボルト90のナット34への締付けによる締結力が、第一の連結部材20と第二の連結部材22に対して接近方向に及ぼされることにより、第二の連結部材22がスリーブ部材18の内孔70に更に挿入されて、第一,第二の連結部材20,22が相対的に接近する。これによって、第一,第二の連結部材20,22がロッド本体74に上下各一方側から当接せしめられて、ロッド本体74が第一,第二の連結部材20,22の間に挟持される。以上により、ロッド固定工程を完了して、ロッド本体74に筒型防振装置10を取り付けたトルクロッド76を形成する。
【0064】
なお、ロッド本体74における係合凸部86の外周面と、第一の連結部材20における係合凹部38の内周面とが、互いに略対応するテーパ面とされていることから、それらテーパ面の案内作用によって、ロッド本体74が第一の連結部材20に対して軸直角方向で所定の位置に案内される。しかも、ロッド本体74の係合凸部86が、第一の連結部材20のナット34に設けられた係合凹部38に嵌め合わされて、軸直角方向で相互に係合することにより、ロッド本体74がインナ軸部材12に対して所定の位置に保持される。加えて、ナット34の下面が本体部26の下面よりも下方に突出して位置していることから、ロッド本体74が何れも金属製とされたナット34と第二の連結部材22との間で挟持されて、ロッド本体74への当接によって樹脂製の本体部26が損傷するのを防ぐことができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、スリーブ部材18が略多角筒形状とされていると共に、第一の連結部材20の外周面がスリーブ部材18の内周面形状に対応する略多角筒形状とされていることから、スリーブ部材18に対する第一の連結部材20の相対回転が防止されている。それ故、スリーブ部材18をジグなどで支持しながら固定用ボルト90を締め付けることにより、締付けトルクの反力が本体ゴム弾性体16に作用するのを回避することができる。なお、第一の連結部材20自体をジグによって回転不能に支持しながら、固定用ボルト90を締め付けることによって、トルク反力が本体ゴム弾性体16に及ぼされるのを防ぐこともできる。
【0066】
更にまた、本実施形態では、ロッド本体74のインナ軸部材12への取付け状態において、ロッド本体74の上面が、スリーブ部材18における内窓部24の上縁に対して、インナゴム層48を介して当接しており、ロッド本体74の上方への移動が制限されている。一方、ロッド本体74の下面は、スリーブ部材18における内窓部24の下縁から離隔しているが、ロッド本体74の下方への変位は、第一の連結部材20のスリーブ当接突部32がスリーブ部材18の上面に当接状態で重ね合わされることによって制限されている。
【0067】
このような構造とされたトルクロッド76は、アウタ筒部材14が車両ボデー側に取り付けられると共に、インナ軸部材12がロッド本体74を介して振動源であるパワーユニット側に取り付けられることから、軸直角方向の振動入力時にも、アウタ筒部材14が車両ボデーに対して相対変位することがない。それ故、アウタ筒部材14の周囲に空間を設けることなく、アウタ筒部材14の装着スペースだけを設けることによって、車両ボデー側に取り付けられる他部材との干渉が防止されると共に、大きな入力荷重に対しても線形な防振特性を得ることができる。
【0068】
しかも、ロッド本体74に大径のアウタ筒部材14を圧入するための筒状部を設ける必要がなく、ロッド本体74の軽量化が図られることから、ロッド本体74をマスとする共振系において共振周波数をより高周波に設定可能となって、該共振系の共振による実用領域での振動状態の悪化が防止される。
【0069】
また、筒型防振装置10は、インナ軸部材12がスリーブ部材18に第一,第二の連結部材20,22を各一方の開口から挿入した構造とされており、スリーブ部材18とアウタ筒部材14が軸方向で分割されることなく全長に亘って連続的に延びている。それ故、インナ軸部材12およびアウタ筒部材14において、本体ゴム弾性体16の固着面が連続的に大きく確保されることにより、本体ゴム弾性体16の軸方向でのゴムボリュームが大きく確保されて、防振特性のチューニング自由度の向上や、耐久性の向上などが図られる。しかも、本体ゴム弾性体16を、インナ軸部材12およびアウタ筒部材14に、強固に固着させることもできる。
【0070】
さらに、第一,第二の連結部材20,22は、本体ゴム弾性体16に直接固着されることなく、スリーブ部材18に軸方向の移動を許容される仮組付け状態で挿入される。それ故、ロッド本体74を取り付けるロッド固定工程において、固定用ボルト90とナット34の締結力による第一,第二の連結部材20,22の相対的な接近移動が、本体ゴム弾性体16の弾性に妨げられることなく許容される。従って、固定用ボルト90のナット34への締付けに大きな力を要することなく、ロッド本体74に対して第一,第二の連結部材20,22を当接させることができると共に、第一,第二の連結部材20,22の変位によって本体ゴム弾性体16に歪みが生じるのも回避される。
【0071】
更にまた、第一,第二の連結部材20,22がロッド本体74の第一の取付部80に当接しており、第一の取付部80が第一,第二の連結部材20,22によって挟み込まれていることから、ロッド本体74の第一,第二の連結部材20,22に対するがたつきなどが防止されて、ロッド本体74が安定した装着状態に保持される。特に、第一,第二の連結部材20,22がスリーブ部材18に対して軸方向へ移動可能とされていることから、ロッド端挿入空所72の軸方向寸法を高精度に設定することなく、第一,第二の連結部材20,22をロッド本体74に安定して当接させることができる。
【0072】
また、第一の連結部材20のナット34に形成された係合凹部38が、ロッド本体74の係合凸部86に凹凸嵌合されて、それら係合凹部38と係合凸部86がインナ軸部材12の軸直角方向で係止されている。それ故、ロッド本体74が第一の連結部材20に対して軸直角方向で相対的に位置決め保持されて、ロッド本体74のロッド端挿入空所72からの抜けが有利に防止されると共に、軸直角方向の入力によって固定用ボルト90に及ぼされる剪断力が低減されて、耐久性の向上も図られる。
【0073】
さらに、アウタ筒部材14も分割されることなく一体とされていることから、図示しないホルダへの圧入代が軸方向で大きく確保されて、アウタ筒部材14のホルダに対する耐抜け力がより大きく得られると共に、アウタ筒部材14のホルダに対する傾動も効率的に制限されて、安定した装着状態が実現される。しかも、ホルダに対して1つのアウタ筒部材14を圧入するだけで良く、車両ボデーへの取付作業も容易である。
【0074】
図11には、本発明の第二の実施形態としての防振連結ロッド用筒型防振装置100が示されている。筒型防振装置100は、インナ軸部材102とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0075】
より詳細には、インナ軸部材102は、略多角筒状とされたスリーブ部材18に、第一の連結部材104と第二の連結部材106とを各一方の開口から挿入した構造を有している。第一の連結部材104は、スリーブ部材18の内周形状に対応する外周形状を有する略有底多角筒状とされており、周壁部の上端部には、フランジ状とされた挿入端規定部としてのスリーブ当接突部108が一体形成されている。更に、第一の連結部材104の底壁部には、中央部分を上下に貫通するボルト孔110が形成されていると共に、ボルト孔110の周囲に嵌合部としての係合凸部112が下方に突出して形成されている。更にまた、第一の連結部材104の底壁部には、上面にナット114が溶接などの手段で固着されており、ナット114のねじ孔がボルト孔110と連通されている。
【0076】
第二の連結部材106は、第一の連結部材104からナット114を除いた構造とされており、第一の連結部材104と略同じ構造で上下逆向きとされている。本実施形態では、第二の連結部材106にも、第一の連結部材104と同様のスリーブ当接突部108と係合凸部112が設けられている。
【0077】
なお、本実施形態の第一,第二の連結部材104,106は、例えば、金属板材をプレス加工することにより、簡単且つ安価に得ることができる。また、第一,第二の連結部材104,106の底壁部に形成される係合凸部112は、底壁部におけるボルト孔110の周辺部分を曲げ加工することで、容易に形成される。
【0078】
そして、インナゴム層48で覆われたスリーブ部材18の内孔70に、第一の連結部材104が上開口から挿入されていると共に、第二の連結部材106が下開口から挿入されている。第一,第二の連結部材104,106は、スリーブ部材18に対して、軸方向に移動可能に組み付けられている。
【0079】
さらに、第一,第二の連結部材104,106は、底壁部が上下に離隔しており、それら第一,第二の連結部材104,106の底壁部間にロッド端挿入空所72が形成されている。なお、本実施形態では、第一の連結部材104のスリーブ当接突部108が、スリーブ部材18の上端面に、インナゴム層48を介して当接していると共に、第二の連結部材106のスリーブ当接突部108が、スリーブ部材18の下端面に対して下方に離隔している。尤も、第一,第二の連結部材104,106が、スリーブ部材18に対して移動可能に仮組み付けされることから、第一,第二の連結部材104,106は、スリーブ部材18に対して、各スリーブ当接突部108,108がスリーブ部材18の軸方向端面に当接するまで差し入れられていても良い。
【0080】
このような本実施形態に従う構造とされた筒型防振装置100によれば、第一の連結部材104と第二の連結部材106が、同一形状のプレス金具で形成されることから、優れた量産性で安価に製造可能となる。しかも、薄肉のプレス金具で形成することにより、第一,第二の連結部材104,106の軽量化も図られる。
【0081】
かくの如き構造とされた本実施形態の筒型防振装置100は、
図12,13に示すように、ロッド本体74の一方の端部に取り付けられて、防振連結ロッドとしてのトルクロッド116を構成する。即ち、ロッド本体74の一方の端部が、筒型防振装置100のロッド挿通孔24,46を通じて、インナ軸部材102のロッド端挿入空所72に差し入れられている。そして、第一,第二の連結部材104,106のボルト孔110,110とロッド本体74のボルト孔84とに挿通された固定用ボルト90が、第一の連結部材104のナット114に螺着されて締め付けられることにより、第一,第二の連結部材104,106とロッド本体74が相互に固定される。なお、本実施形態のロッド本体74では、ボルト孔84の上下開口周辺に、それぞれ係合凹部118が形成されている。
【0082】
さらに、本実施形態においても、前記第一の実施形態と同様に、ロッド本体74が、第一の連結部材104に対して隙間をもって、ロッド端挿入空所72に挿入されるようになっている(
図14参照)。そして、固定用ボルト90がナット114に締め付けられることによって、第二の連結部材106がスリーブ部材18に対して挿入方向に移動せしめられて、
図13に示すように、第一,第二の連結部材104,106がロッド本体74の上下各一方の面に当接状態で重ね合わされる。しかも、第一,第二の連結部材104,106の係合凸部112,112が、ロッド本体74の上下両面に開口する係合凹部118,118の各一方に嵌合されて、係合凸部112の外周面が係合凹部118の内周面に軸直角方向で係止されることにより、ロッド本体74がインナ軸部材102に対して軸直角方向で位置決めされている。
【0083】
本実施形態に係るトルクロッド116によれば、ロッド本体74に固定される第一,第二の連結部材104,106がプレス金具で形成されて軽量とされていることから、ロッド本体74および第一,第二の連結部材104,106をマスとする共振系の共振現象が、実用周波数域の振動状態に悪影響を及ぼすのを、より効果的に防ぐことができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、スリーブ部材は多角筒状に限定されず、例えば、円筒形状でも良いが、好適には、スリーブ部材に対する第一,第二の連結部材の相対回転が阻止されるように、周方向で断面形状が変化する筒状とされていることが望ましい。
【0085】
また、第一の実施形態では、樹脂製の本体部26に金属製のナット34をインサートして一体的に形成されたものが例示されているが、例えば、本体部とナットを金属によって一体形成することもできる。
【0086】
また、前記実施形態では、固定用ボルト90のナット34への螺着によって、第二の連結部材22のみをスリーブ部材18に対して軸方向に移動させる例を示したが、第一,第二の連結部材20,22の両方を、スリーブ部材18に対してそれぞれ軸方向に移動させて、相互に接近させることもできる。更に、第一,第二の連結部材20,22の何れか一方を、スリーブ部材18に対して、軸方向への移動不能に取り付けても良い。
【0087】
さらに、前記実施形態において締結部材としての固定用ボルト90とナット34を用いた構造を例示したが、第一,第二の連結部材とロッド本体との固定手段は、例示されたボルト固定構造に限定されるものではなく、例えばリベット(ピンかしめ構造)などによって、第一,第二の連結部材とロッド本体とを固定することも可能である。
【0088】
また、前記実施形態では、第一の連結部材20と第二の連結部材22の挿入先端面間の距離を、予めロッド本体74における第一の取付部80の同方向での寸法よりも大きくしておくことにより、ロッド本体74がロッド端挿入空所72に隙間をもって容易に挿入されるようになっているが、これはあくまでも例示であって、限定されるものではない。
【0089】
具体的には、例えば、先ず、インナ仮組工程において、第一の連結部材20と第二の連結部材22の挿入先端面間の距離が、予めロッド本体74における第一の取付部80の同方向での寸法と同じか小さくなるように、第一,第二の連結部材20,22をスリーブ部材18に挿入する。次に、ロッド挿入工程において、ロッド本体74をロッド端挿入空所72へ挿入することにより、それら第一,第二の連結部材20,22に軸方向外向きの挿入分力を作用せしめる。そして、第一の連結部材20と第二の連結部材22の挿入先端面間の距離を押し広げながら、ロッド本体74の第一の取付部80をロッド端挿入空所72に挿入する。その後、ロッド固定工程において、固定用ボルト90で第一,第二の連結部材20,22をロッド本体74に固定すると共に、第一,第二の連結部材20,22を接近変位させてロッド本体74に当接させることにより、ロッド本体74をインナ軸部材12に取り付ける。このように、第一,第二の連結部材20,22の挿入先端面間の距離が、ロッド本体74の同方向での寸法以下とされている場合にも、ロッド本体74をロッド端挿入空所72に挿入することができる。
【0090】
また、本発明は、トルクロッド以外の防振連結ロッドと、それに用いられる筒型防振装置にも、適用可能である。
インナ軸部材にロッド本体が取り付けられる構造を採用しながら、防振特性のチューニング自由度や耐久性を確保し、且つロッド本体に簡単に取り付けることができる、新規な構造の防振連結ロッド用筒型防振装置と、それを用いた防振連結ロッド、防振連結ロッドの製造方法を提供することにある。
インナ軸部材12が、本体ゴム弾性体16が固着されたスリーブ部材18に、第一の連結部材20と第二の連結部材22が重ね合わされて挿入された構造を有していると共に、スリーブ部材18に挿入された第一,第二の連結部材20,22の間にロッド端挿入空所72が形成されており、ロッド挿通孔24,46を通じてロッド端挿入空所72に差し入れられるロッド本体74の一方の端部80が、第一,第二の連結部材20,22に締結部材90で固定されると共に、第一,第二の連結部材20,22が締結部材90によってロッド本体74にそれぞれ当接せしめられるようにした。