(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含んで成り、該非拮抗的定率モル比の範囲は(イリノテカン:フロクスウリジンが)1:1である医薬組成物であって、
前記非拮抗的定率モル比(のイリノテカン及びフロクスウリジン)は、対象者の癌を治療する方法で(前記医薬組成物を)使用するために、投与した後、血漿中で少なくとも4時間維持されるようにリポソーム中に被包化されており、
ここで、前記方法は、30分間から3時間で実行される、前記対象者に対する前記医薬組成物の1投与ないし回(dose)の静脈投与を含み、ここで、各投与は0.0003モル/m2/ドース以下の前記フロクスウリジンを含んでおり、前記フロクスウリジンは0.0006モル/m2/月を超えないレベルで投与され、
前記癌が、進行固形腫瘍であり、該進行固形腫瘍が、胃の腫瘍、腎臓腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、食道腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、卵巣腫瘍、骨肉種、又は蝶形骨洞腫瘍である
ことを特徴とする、医薬組成物。
【発明の開示】
【0007】
一つの視点において、本発明は対象者(subject)の癌を治療する方法を提供し、前記方法は、前記対象者に非拮抗的定率(ないし固定的、fixed)モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含む医薬組成物を投与することを含み、この場合、前記非拮抗的定率モル比が血漿中で少なくとも約4時間維持される。別の実施態様では、非拮抗的定率モル比が、少なくとも約8時間、少なくとも約16時間、又は少なくとも約24時間維持される。典型的には、イリノテカン及びフロクスウリジンは運搬ビークル(delivery vehicle、以下「ビークル」という)に安定的に関連ないし連携される。ある実施態様では、ビークルはリポソームである。
【0008】
別の視点において、本発明は対象者の癌を治療する方法を提供し、前記方法は、前記対象者に非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含む医薬組成物を投与することを含み、この場合、前記組成物は静脈投与される。いくつかの実施態様では、前記医薬組成物は、少なくとも約30分で、さらに約3時間未満で投与される。特定の実施態様では、前記医薬組成物は約90分で投与される。
【0009】
ある視点において、本発明は癌の治療を必要とする対象者の癌を治療する方法を提供し、前記方法は、前記対象者に非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含む医薬組成物を投与することを含み、この場合、フロクスウリジンは0.001モル/m
2/ドース(投与ないし回、dose、以下「ドース」とする)未満で投与される。特定の実施態様では、フロクスウリジンは約0.0003モル/m
2/ドースで投与される。
【0010】
別の視点において、本発明は癌の治療を必要とする対象者の癌を治療する方法を提供し、前記方法は、前記対象者に非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含む医薬組成物を投与することを含み、この場合、フロクスウリジンは0.01モル/m
2/月未満で投与される。特定の実施態様では、フロクスウリジンは約0.0006モル/m
2/月で投与される。
【0011】
本発明で提供される方法では、イリノテカンとフロクスウリジンの非拮抗的定率モル比は、約5:1から約1:5であり得る。特定の実施態様では、イリノテカン:フロクスウリジンの非拮抗的定率は約1:1である。典型的には、前記非拮抗的定率のイリノテカン及びフロクスウリジンはリポソーム中に被包化される。
【0012】
いくつかの実施態様では、癌は、進行固形腫瘍である。進行固形腫瘍は、胃の腫瘍、腎腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、食道腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、卵巣腫瘍、骨肉種、蝶形骨洞腫瘍でありえる。時には、癌は再発癌である。対象者は、以前に少なくとも1つの抗腫瘍治療法を受けていてもよい。時には、抗腫瘍治療法は多剤治療法である。
【0013】
さらにまた意図されるものは、非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含む医薬組成物の使用であり、この場合、前記非拮抗的定率モル比は、癌を有する対象者を本明細書で開示するように治療するために血漿中で少なくとも約4時間維持される。別の視点において、本発明は、癌治療用の医薬の調製を目的とする、非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含む開示の医薬組成物の使用を提供し、この場合、前記非拮抗的定率モル比は、癌を有する対象者を本明細書に開示するように治療するために血漿中で少なくとも約4時間維持される。
【0014】
別に規定されないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術的及び学術的用語は、本発明が属する分野で通常の技術を有するものが一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書で引用される全ての特許、特許出願、公開公報、及び他の刊行物は、その全体が参照により本明細書に含まれる。この節で説明される定義が、参照により本明細書に含まれる特許、特許出願、公開公報、及び他の刊行物において説明される定義とは相容れないか、或いは矛盾する場合は、この節で説明する定義が参照により本明細書に含まれる定義に優先する。
【0015】
本明細書で用いられる、不定冠詞の“a”又は“an”は“少なくとも1つ”又は“1つ以上”を意味する。
【0016】
イリノテカン及びフロクスウリジンについては、in vitroにおける非拮抗的モル比の範囲は5:1から1:5であり、この場合、1:1のモル比が最適であることが見出された(L.D. Mayer et al. Mol Cancer Ther (2006) 5:1854-63)。したがって、本明細書で用いられるように、“イリノテカン及びフロクスウリジンの非拮抗的モル比”は、約5:1から約1:5のイリノテカン:フロクスウリジンのモル比を指す。いくつかの実施態様では、非拮抗的モル比は、イリノテカン:フロクスウリジンが約1:1である。
【0017】
本明細書で提供されるものは、非拮抗的モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを送達して、迅速な投与という利点を提供し毒性副作用を制限して投与量を増加しながら腫瘍活性を強化する方法である。略記すれば、スクリーニング技術を用いて非拮抗的な化学療法薬剤比をin vitroで決定した。これらの同じ比率をフリードラッグカクテル(例えばリポソーム送達を有しない、通常の水性医薬処方物)として別々に投与するならば、この比率は維持されない。なぜならば、薬剤はそれぞれ互いに別個に分配及び除去ないし消失(eliminated)され、その結果、持続的に変化する比率を生じるからである。リポソームにおける共被包化薬剤(co-encapsulated drugs)を用いることによって、本明細書で提供される方法は、投与後の非拮抗的比率の長時間に及ぶ維持を可能にする。リポソーム処方物は、各薬剤の個々の薬物動態を制御することによって正確な割合で各薬剤を送達し、それによって非拮抗的な比率を維持する。
【0018】
典型的には、持続送達(sustained delivery)は、治療的に有効な薬剤レベルを血漿中及び最終的には腫瘍で維持するために、より大量の投与される薬剤を必要とする。そのような大用量は、長時間にわたって(多くの場合1日以上)投与され、長時時間の病院内滞在及び/又は長期注入プロトコル(これらは、例えば、感染のような合併症のリスク又はポンプの機能不良を増大させる)に関する信頼性を必要とする。また別の欠点は、より高い用量にともなう毒性であり、これは至適血漿レベルの達成を妨げる可能性がある。フリードラッグカクテルは、同時に投与される薬剤が互いに一定範囲内の比率でのみ有効であるときにはさらに不利である。例えば、イリノテカン及びフロクスウリジンのモルは、実際のところ腫瘍細胞株に依存し、一定のイリノテカン:フロクスウリジン比(<5:1、かつ>1:5)では互いに拮抗することがある。
【0019】
CPX-1は、イリノテカンHClとフロクスウリジンの定率モル比1:1を含むリポソーム処方物であり、カクテルとして投与したフリードラッグ及び個々のリポソーム薬剤と比較したとき、細胞培養及び結直腸in vivo癌モデルで有効性の増強を示した。同時係属中の共有U.S.公開公報No. US 2004/0265368(2004年4月2日出願)を参照されたい。イリノテカンHCl及びフロクスウリジンの適切な供給源は任意に利用することができる。ある実施態様では、イリノテカンHClは(+)-7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン10-(1,4' ビピペリジン)-1'-カルボキシレート、モノヒドロクロリド、トリハイドレートであり、フロクスウリジンは2'-デオキシ-5-フルオロウリジンである。
【0020】
本明細書で提供する非拮抗的定率モル比のイリノテカン:フロクスウリジン配合物の持続的送達を許容する、任意の適切なビークルを利用することができる。いくつかの実施態様では、リポソーム処方物を利用することができる。リポソームは、腫瘍部位に被包化薬剤を定率で持続的に送達するために設計される。ある実施態様では、イリノテカン及びフロクスウリジンはリポソームと安定的に関連ないし連携される。典型的には、リポソームは、300nm未満、時には200nm未満の直径を有する。ある実施例では、これらリポソームの予定サイズはほぼ110nmであり、滅菌は0.2μmフィルターによるろ過によって達成される。特定の実施態様では、リポソーム膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)及びコレステロール(CHOL)を7:2:1のモル比で構成される。ある事例では、リポソームは油中水誘導リポソーム法(an water in oil derived liposome method)によって調製され、押し出されたリポソームは、pH7.0のリン酸緩衝シュクロース中に懸濁される。リポソーム中で配合薬を被包化する、任意の適切な手段を利用することができる。特定の実施態様では、イリノテカン及びフロクスウリジンは、グルコン酸銅/トリエタノールアミンによる能動的ローディング方法(active loading procedure)を用いてリポソーム中に被包化され、この方法によって、イリノテカンは、予め形成されたリポソームの内側に複合体形成により蓄積され、フロクスウリジンは受動的に被包化される。
【0021】
本明細書で提供される方法は、任意の対象者、特に癌又は進行固形腫瘍をもつ人間で有用である。癌は、異常な制御不能の増殖を示す悪性細胞を包含する。そのような細胞は、多数の特徴的な性質、例えば制御不能増殖、不死、転移能、迅速な増殖及び増殖率、並びに一定の典型的な形態的特徴を有する。癌細胞は多くの場合腫瘍の形態で存在するが、そのような細胞はまた哺乳動物内で単独でも存在し得るか、又は非腫瘍形成癌細胞、例えば白血病細胞であり得る。細胞は任意の多数の方法によって癌と同定することができる。この方法には、腫瘍の存在の検出(例えば臨床的又は放射能による手段によって)、腫瘍内細胞又は別の生物学的サンプル由来(例えば、組織生検標本由来)細胞の調査、癌指標血液マーカーの測定(例えばCA125、PAP、PSA、CEAなど)、及び/又は癌指標遺伝子型の検出(例えばTP53、ATMなど)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。“固形腫瘍”という用語は、癌細胞の固形塊を形成する白血病又はリンパ腫(すなわち血液の癌)以外の腫瘍を指す。本明細書で用いられる、“進行固形腫瘍”という用語は、転移性又は局所で進行し、手術できない悪性腫瘍を指す。固形腫瘍は、副腎、膀胱、骨、脳、乳房、子宮頸管、結腸、食道、胆嚢、神経節、胃腸管、頭部及び頸部、心臓、腎臓、肝臓、肺臓、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、前立腺、直腸、唾液腺、洞、皮膚、軟組織、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺又は子宮の癌を含む、任意の起源に由来するものであり得るが、ただしこれらに限定されない。
【0022】
本明細書に開示する方法は、非拮抗的モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンの持続送達を提供する。例えば、血漿中でのイリノテカン:フロクスウリジンの非拮抗的モル比は、配合薬の1回投与後、少なくとも約24時間、少なくとも約16時間、少なくとも約12時間、少なくとも約8時間、少なくとも約4時間まで維持される。さらにまた、リポソーム被包化配合薬の血漿中の持続濃度はフリーカクテルドラッグの配合物(free cocktail drug combination)の血漿中の薬剤濃度よりも高い。
【0023】
本方法はまた、以前に報告された用量強度よりも極めて低い用量強度のフロクスウリジンの投与を促進し、一方でその治療効果は維持される。表1及び2を参照されたい。
【0024】
表1:イリノテカンとの併用におけるフロクスウリジン又は5FUのモル用量及び用量強度の比較
【0025】
表2:CPX-1とFORFIRI(トゥアニガンド)におけるイリノテカンのモル用量及び用量強度の比較
【0026】
例えば、5-FU及びイリノテカンのFOLFIRI治療法は、0.0246モル/m
2/ドース又は0.0492モル/m
2/月のフルオロピリミジン(この場合は5-FU)の用量強度を必要とする。5-FUとフロクスウリジンは、同じ活性中間体を介して腫瘍細胞死を誘発し、モル基準で類似の用量で投与されるときは臨床的に等価であることが示されたことは特記されるべきである。5FU、イリノテカン及びLVのIFL治療法は、0.0038モル/m
2/日又は0.0154モル/m
2/月のフルオロピリミジンの用量強度を必要とする。対照的に、CPX-1の投与時に用いられるフルオロピリミジン(この場合はフロクスウリジン)の用量強度は、イリノテカン:フロクスウリジン配合薬の約0.0035モル/m
2/ドース未満、約0.0025モル/m
2/ドース未満、約0.0010モル/m
2/ドース、又は0.0005モル/m
2/ドースでよく、一方で治療有効性は維持される。典型的には、1日にただ1回投与される。特定の実施態様では、フルオロピリミジンの用量強度は、イリノテカン:フロクスウリジン配合薬の約0.0003モル/m
2/ドースである。数多の実施態様では、フルオロピリミジンの用量強度は、約0.0150モル/m
2/月未満、約0.0100モル/m
2/月未満、約0.0050モル/m
2/月未満、又は約0.0020モル/m
2/月未満である。特定の実施態様では、フルオロピリミジンの用量強度は、イリノテカン:フロクスウリジン配合薬の約0.0006モル/m
2/月である。
【0027】
本明細書で提供する方法を用いて、フルオロピリミジン(例えばフロクスウリジン)は、薬剤が通常の非リポソーム系水性処方物として個々に投与されるときよりも少ない用量で投与されるが、一方で治療有効性は維持される。
【0028】
開示する方法はまた、定率モル比のイリノテカン:フロクスウリジン配合薬の治療的に有効な用量を迅速に送達する手段を提供する。CPX-1のリポソーム処方物は、現行の治療法よりも短い(したがって、より迅速な)静脈内投与を要求するというまた別の利点を有する。典型的には、リポソーム被包化イリノテカン:フロクスウリジン配合薬は、静注により、少なくとも約30分で、及び約3時間未満で患者に投与することができる。ある実施態様では、リポソーム被包化イリノテカン:フロクスウリジン配合薬は、約90分かけて静注により投与される。対照的に、イリノテカン及びフロクスウリジンのフリードラッグカクテルを用いる他の治療法は、少なくとも24時間(J.Y. Douillard et al. Lancet (2000) 355:1041-47)、時には48時間までかかる注入を必要とする(C. Tournigand et al. Proc ASCO (2000) 19:245a(Abstract 949);C. Tournigand et al. J Clin Oncol (2004) 22(2):229-37)。このことは、例えば病院経費を軽減し、患者にとっては病院での滞在を回避して生活の質を改善し、ポンプによる合併症を回避し、そのような病院での滞在中の感染の機会を少なくするという点で有利である。
【0029】
本開示方法は再発癌の処置において治療的に有効である。“再発癌”は、以前の治療に応答した、以前の完全な又は部分的緩解の後で再発した癌を指す。再発は任意の態様で定義することができ、臨床的、放射能的若しくは生化学的アッセイによって、又は癌マーカーのレベル増加によって検出される腫瘍の再出現又は再増殖を含む。以前の治療には、化学療法、生物学的療法、放射能療法、及び骨髄移植を含むことができるが、ただしこれらに限定されない。
【0030】
いくつかの実施態様では、本明細書で提供する方法で処置される患者は、以前に治療を受け成功しなかったか、又は他の療法に耐性を有する患者である。例えば、患者は、化学療法又は生物学的療法のいずれかを受けたか又はそれらに耐性となった後で、本明細書で提供する方法を用いて治療を受けることができる。数多の事例では、患者は以前に白金含有治療法(a platinum-containing regimen)を受けたことがある。ある実施態様では、患者は以前にFOLFIRI、FOLFOX(5-FU及びオキサリプラチン)又はIFLを受けたことがある。特定の実施態様では、患者は以前にイリノテカンで治療されたことがある。
【0031】
本明細書で開示する方法はまた、以前に治療されたことがない癌のファーストライン治療として利用することができる。
【0032】
開示する本治療方法に対する応答には、腫瘍の病状における任意の臨床的に明瞭な陽性変化が含まれる。そのような応答は、全体的な生存の増加、進行が停止した生存(progression-free survival)の増加を含む。病気の応答は任意の適切な手段によって判定される。ある実施態様では、病状はRECIST(固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors))基準を用いて判定される(P. Therasse et al. J Natl Cancer Inst (2000) 92:205-16)。調査時の最高応答は以下に概略するように分類されるであろう:完全な応答(CR:Cpmplete Response):腫瘍についての全ての臨床的及び放射能による証拠の消失。部分的応答(PR:Partial Response):最長の直径の基準値合計をリファレンスとして採用したとき、標的病巣の最長直径の合計が少なくとも30%減少する。安定的病状(SD:Stable Disease):病気の定常的状態。PRとみなされるほど十分な縮小もPDとみなされるほど十分な増加もない。進行的病状(PD: Progressive Disease):治療開始以来記録された最長直径の最小合計をリファレンスとして採用したとき、測定した病巣の最長直径の合計が少なくとも20%増加する。新しい病巣の外観もまた、進行的病状を構成する。例外的な状況では、測定されない病巣の明瞭な進行は病状の進行の証拠として認容され得る。
【0033】
本明細書で提供する医薬組成物は、任意の適切な対象者、好ましくは癌を有する人間の対象者に投与される。好ましくは、本発明の医薬組成物は静脈内投与される。ビークル処方物の投与量は、薬剤対脂質の比率、並びに患者の年齢、体重及び状態を基準にした担当医師の意見により左右されるであろう。
【0034】
本発明のビークルを含む医薬組成物は標準的な技術にしたがって調製され、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど安定性強化のための糖タンパク質を含み、水、緩衝水、0.9%食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロースなどからなることができる。これらの組成物は、従来から周知の滅菌技術によって滅菌することができる。得られた水溶液を使用のために包装するか、又は無菌的条件下でろ過し、凍結乾燥(凍結乾燥調製物は投与前に無菌的水溶液と混合される)してもよい。この組成物は、生理的条件に近づけるために必要な医薬的に許容できる補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、張度調節剤など、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含むことができる。さらにまた、ビークル懸濁物は脂質保護剤を含むことができ、脂質保護剤は、保存時の遊離ラジカル及び脂質過酸化障害から脂質を保護する。脂肪親和性遊離ラジカルクェンチャー(例えばα-トコフェロール)及び水溶性鉄特異的キレーター(例えばフェリオキシアミン)が適切である。ロイコヴォリンもまた、標準的技術により本発明の組成物とともに投与して、投与されるフルオロピリミジンの寿命を延長させることができる。
【0035】
医薬処方物のビークルの濃度は、例えば約0.05重量%未満、通常は約2−5%、又は少なくとも2−5%から10−30重量%まで大きく変動させることができ、選択した個別の投与態様にしたがって主として液体の体積、粘度などによって選択されるであろう。例えば、濃度は、処置に伴う液体負荷を減じるために増加させることができる。また別には、刺激性脂質で構成されるビークルを希釈して濃度を下げ、投与部位の炎症を軽減することができる。診断に関しては、投与されるビークルの量は、使用される個別の標識、診断される病状、及び医師の判断に左右されるであろう。
【実施例】
【0036】
実施例1:臨床試験フェーズI
【0037】
CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤の開発は以下に拠った:1)2つの活性部分、イリノテカンHCl及びフロクスウリジンの非拮抗的な比率を、細胞によるスクリーニングアッセイを用いて規定すること、及び2)静脈内投与後にこの比率を維持するためにリポソーム系薬剤担体を設計すること。この比率は、イリノテカンHCl及びフロクスウリジンにおいて現行で用いられている経験的に得られる治療法を基準にしなかった。それどころか、イリノテカンHCl及びフルオロピリミジンの抗腫瘍作用の比率依存性は、これら薬剤を担体中で固定することの理論的根拠を提供し、これらの併用で現在達成された治療活性が改善された。CPX-1は、イリノテカン及びフロクスウリジンに対して感受性を有する癌で治療効果の強化を提供するであろうと予想された。ヒトの胃腸腫瘍の細胞株におけるin vitro及びネズミの結直腸癌モデルのin vivoでの前臨床データは、選択された薬剤対薬剤の比について理論的根拠を明示した。
【0038】
本実験の主要目的は、進行固形腫瘍をもつ患者に2週間毎のスケジュールで注入として投与することができる、CPX-1の推奨フェーズII用量(このプロトコルで最大耐用量(MTD)と定義される)を決定することであった。本実験はまた、CPX-1の安全性及び用量制限毒性、並びにこのスケジュールで投与されるCPX-1の薬物動態パラメーターを評価するとともに、進行固形腫瘍をもつ患者でこのスケジュールで投与されるCPX-1の予備的有効性情報を決定した。
【0039】
物理的、化学的及び薬学的情報
【0040】
CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤は、抗悪性腫瘍剤イリノテカンHCL三水和物((+)-7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン10-(1,4'ビピペリジン)-1'-カルボキシレート、モノヒドロクロリド、トリハイドレート)及びフロクスウリジン(2'-デオキシ-5-フルオロウリジン)の定率配合の点滴静注用リポソーム処方物である。これら2つの薬剤は、前臨床実験で非拮抗的活性を有することが示された1:1のモル比でリポソーム中に含有されていた。リポソーム膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)及びコレステロール(CHOL)を7:2:1のモル比で構成される。CPX-1は緩徐な注入による静脈内投与を意図した。CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤は、1回使用バイアル中に、無菌的で発熱物質を含まない、薄青緑色の不透明懸濁液として提供される。CPX-1は凍結状態(-20℃)で保存され、希釈及び投与前に室温で60分間融解された。この懸濁液は、患者に静脈内投与する前に、通常の食塩水又は注射用デキストロースで希釈された。
【0041】
CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤の各1回使用バイアルは、25mgのイリノテカンHCl三水和物及び9.1mgのフロクスウリジンを提供した。融解した薬剤製品の各1mLは、下記の表に示す成分を含有した。
【0042】
表3:CPX-1リポソーム注射剤の成分
【0043】
記載されているCPX-1の用量はいずれも、CPX-1注射剤で送達されるイリノテカンHCl三水和物及びフロクスウリジン含有量を指す。例えば、50/18mg/kgのCPX-1用量は、CPX-1として送達される50mg/kgのイリノテカンHCl三水和物及び18mg/kgのフロクスウリジンを指す。CPX-1用量はまた、CPX-1の単位として言及することができる。1単位のCPX-1は、1mgのイリノテカンHCl三水和物及び0.36mgのフロクスウリジンを含む。
【0044】
臨床試験
【0045】
開始用量:細胞毒性抗悪性腫瘍剤については、人での最初の試験のための通常の開始用量は、体表面積を基準にして算出され(mg/m
2)、一般的には、げっ歯類のLD
10の1/10(この用量が非げっ歯類で重度の毒性を示さない場合)、又はもっとも感受性を有する種の“低毒性用量(Toxic Dose Low)”(血液学的、化学的、臨床的又は形態学的パラメーターで薬剤誘発性病理学的変化を生じる最低の用量)の1/3(この用量の2倍が致死的でなく、重篤で不可逆な毒性を引き起こさない場合)として投与される。CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤についてのげっ歯類のLD
10は特定されなかった。最高被検用量(ラットで100mg/kgのイリノテカンHCl)は全く致死的ではなかった。イヌでは、CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤の低毒性用量は、5mg/kgのイリノテカンHCl(+1.8mg/kgのフロクスウリジン)であり、イリノテカンHClの100mg/m
2と等価である。この用量の2倍は致死的ではなかった。この毒性情報から、本フェーズI試験のための開始用量レベルは、CPX-1 33:12mg/m
2と算出した。任意に、投薬の簡便さから、開始用量はCPX-1 30:10.9mg/m
2とした。この試験では、1単位のCPX-1は1mgのイリノテカン及び0.36mgのフロクスウリジンを含有した。
【0046】
スケジュール:14日毎の投薬スケジュールを以下に基づいて選択した:(1)イリノテカン(及びフルオロピリジン)についての先行例、(2)CPX-1についての動物の薬物動態、及び(3)毒性の蓄積を回避の所望。使用が承認されたイリノテカンのスケジュールは、毎週イリノテカン125mg/m
2を4週間実施して、2週間の休止を含み、イリノテカンの“欧州スケジュール”は3週間毎の300−350mg/m
2である(3000mg/m
2の用量は70歳を超える場合に推奨されるか、又はパフォーマンス・ステータスが2において推奨されている)。FOLFIRI治療法(C. Tournigand et al. J Clin Oncol (2004) 22:229-237)、すなわち、また別の頻繁に用いられるイリノテカン/5-FU/ロイコヴォリン治療法では、2週間毎に180mg/m
2の用量のイリノテカンが投与された。
【0047】
注入時間:急性注入関連反応(例えば、潮紅、呼吸短縮、頭痛、冷感、背中の痛み、胸部の圧迫感及び/又は低血圧)が、リポソーム系化学療法剤(Doxil(商標)、Ortho Biotech Products L.P. (2001)、及びDaunoXome(商標)、Gilead Sciences, Inc. (2002)、パッケージ挿入物)を投与された臨床試験の多くの患者で観察された。ほとんどの患者で、これらの反応は、いったん注入が終了したら、数時間から1日で解決した。数名の患者では、この反応は注入速度を遅くすることによって解決された。下記の表は、いくつかのリポソーム製品とCPX-1での脂質の量を比較したものである。90分の注入時間はこの情報に基づいて選択された。
【0048】
表4:リポソーム製品中の脂質の量
仮定(Assumptions):
Doxil(商標)は、1mg/分の注入速度で開始し、耐え得るようならばこの速度を速めて1時間にわたって注入することが推奨された。
計算は、70kg、1.8m
2のBSA患者を基準にしている。
上記のCPX-1用量は、125:45.5mg/m
2の用量であると仮定される。
【0049】
患者は治療不能の進行転移性又は再発癌を有することが立証された。
【0050】
表5:薬剤の投与
【0051】
用量レベル:CPX-1の用量は個々の患者では増加させなかった。用量は、毒性に基づいて、以下の用量増加スキームにしたがい連続群で増加させた。
表6:患者群で用いられたCPX-1用量
【0052】
必要な場合には、その後の用量は各群について1/3増加させた。しかしながら、DLTはおそらく群5で認められるべきであると予測された。その群5は、FOLFIRIの14日スケジュールで投与されるイリノテカンよりわずかに高い用量を投与された。
【0053】
薬剤処方物:CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤は、抗悪性腫瘍剤イリノテカンHCL三水和物及びフロクスウリジンの定率配合リポソーム処方物である。この2つの薬剤は、1:1の定率モル比でリポソーム内に存在する。リポソーム膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)及びコレステロール(CHOL)が7:2:1のモル比で構成される。これらのリポソームは油中水誘導リポソーム法によって調製され、pH7.0のシュクロース-リン酸緩衝液に懸濁された。これらリポソームの予定サイズはほぼ100nmであり、滅菌は0.22μmフィルターによるろ過によって達成された。
【0054】
CPX-1は、褐色ガラスの1回使用バイアルに、5mLの無菌的で発熱物質を含まない、薄青緑色の不透明懸濁液として提供された。CPX-1の用量は、CPX-1注射剤で送達されるイリノテカンHCl三水和物及びフロクスウリジン含有量によって示される。例えば、50:18mg/m
2のCPX-1用量は、CPX-1として送達される、50mg/m
2のイリノテカンHCl三水和物及び18mg/m
2のフロクスウリジンを示す。
【0055】
薬剤の投与:CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤による処置は、90分の点滴静注によって実施される。注入の長さの論理的根拠は上記に概略されている。CPX-1(イリノテカンHCl:フロクスウリジン)リポソーム注射剤の注入は、抹消又は中枢静脈カテーテルのいずれかにより実施し、特定時間の間に薬剤が注入されたことを保証するために注入ポンプを使用する。PVC非含有投与セット、例えばポリエチレンでラインニングされたものを使用した。インラインフィルターは使用しなかった。
【0056】
用量制限毒性(DLT)の決定:患者のDLTは、第1回目の治療の間にのみ発生する毒性に対して、副作用に関するNCI共通用語基準(NCI Common Terminology Criteria for Adverse Events)ヴァージョン3.0を用いて決定した。用量制限毒性は、第1回目の治療中に発生するグレード3又は4の非血液学的毒性と定義される(前投薬されていない吐き気又は嘔吐を除く)。用量制限血液学的毒性(Dose limiting hematologic toxicity)は以下のものと定義される:8日以上にわたって絶対好中球数(ANC)が0.5x10
9/Lよりも少ない、発熱性好中球減少症(ANCが500x10
9/Lよりも少ないとともに38.5℃を超える発熱又は発熱性好中球減少症のための入院を伴うものと定義される)、血小板数が25x10
9/Lよりも少ない(出血の有無)又は出血に付随するグレード3の血小板減少症(血小板は25x10
9/Lよりも多く、かつ50x10
9/Lよりも少ない)。肝転移をもつ患者については、3から5xULNのALT又はAST(CTCAEに関してはグレード2)、グレード3 ALT又はAST毒性を示しつつ、この試験を開始することはDLTを構成しなかった。
【0057】
最大耐用量(MTD)の決定:最大耐用量(MTD)は、DLTを経験するのが患者の1/3未満である用量と定義され、この用量は、1/3以上がDLTを経験する群から次に低い用量の群での用量であった。
【0058】
3人又は4人の患者のいずれも、ある用量レベルで最小28日の処置期間の治療の間にDLTを経験しなかった場合には、また別の3人又は4人の患者群で次の用量レベルを調べた。
【0059】
ある用量レベルで3人(又は4人)の患者のうち1人がDLTを経験した場合、さらに別の患者を加えて総数6人とし、これらの患者を同じ用量レベルで処置する。6人のうち1人がDLTを経験した場合には増加を継続させる。ある用量レベルで2人以上の患者がDLTを経験した場合、このレベルに対する増加を中止した。さらに別の3人から12人の患者を先の用量レベルで処置し、フェーズII用量としてのその適切性を確認し、抗腫瘍活性の予備的証拠を探索した。
【0060】
薬物動態分析
【0061】
イリノテカン及びSN-38並びにフロクスウリジン及び5FUについて、有効性を確認した特別な高速液体クロマトグラフィー質量分析方法を用いて血漿を解析した。血漿濃度-時間プロフィルを、各患者のイリノテカン、SN-38、フロクスウリジン及び5-FUについて作成した。薬物動態パラメーターは、全ての評価可能な対象者の血漿濃度時間プロフィルから決定した。非コンパートメント法(non-compartmental methods)及びウィンノンリン(WinNonlin
TM)プロフェッショナル(ヴァージョン4.0以上)を用い、算出された薬物動態パラメーターには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):
−Cmax 最大観察濃度
−Tmax Cmax発生時間
−λz 自然log(ln)変換濃度対時間データの直線的回帰から得られる、ター
ミナルフェーズでの消失速度定数(elimination rate constant)
(1日目の投与後のみ)
−t
1/2 消失半減期(Terminal half-life)、ln(2)/λzとして算出
−AUC(0-last) 0時間から最後の投与後の定量可能な血漿濃度の、血漿濃度-時間曲線
下の面積、線形台形法(linear trapezoidal method)によって得る
−AUC(0-inf) 0時間から無限大時間まで外挿した血漿濃度-時間曲線下の面積
−CL 用量/AUC(0-inf)として計算した全身的クリアランス(イリノテカン及
びフロクスウリジンのみ)
【0062】
各処置群について血漿濃度及びPKパラメーターを要約するために、記述統計学(平均、SD、CV%、中央値、分およびmax)を用いた。
【0063】
結果:26人の対象者(16M:10F)、平均年齢54.5歳(21−72)、全員が以前に治療を受けている、6群に登録し、5番目の群は6人に拡大した。診断:結直腸腫瘍8人、膵臓腫瘍3人、卵巣腫瘍3人、乳房腫瘍2人、胃の腫瘍2人、食道腫瘍2人、肉腫2人、腎細胞腫瘍1人、前立腺腫瘍1人、NSCLC 1人及び蝶形骨洞腫瘍1人。7人の患者(4M:3F)、平均年齢58歳(50−79)、彼ら7人全員が以前に治療を受け結直腸癌を有し、試験の延長フェーズに登録した。
図1を参照されたい。
【0064】
この試験の用量増加フェーズでほぼ全ての患者が進行悪性疾患を有し、この試験の前に大量の治療を受けていた。結果として、目的の応答及び症状の進行を伴わない生存(progression free survival:PFS)の延長(PFS>5ヶ月)についての我々の予想は低かった。
【0065】
我々は目的の部分的応答を示す2人の患者を観察した。第一の患者は結腸癌を有し、その応答は4.5ヶ月続いた。この対象者は転移症状を示し、原発腫瘍の外科的切除を受け、続いてイリノテカン+オキサリプラチンで処置されて肝転移が縮小し、残りの肝病巣の切除を試みたが持続的なリンパ節病巣が発見され、最終的にカペシタビンで処置され、その対象者はフェーズI試験に入る前に完全に管理された。この患者は、以前のフルオロピリミジン及びイリノテカンの暴露にもかかわらず応答した。
【0066】
第二の患者は、非小細胞肺癌を有し、3.0ヶ月間応答した。この患者は、以前にドセタキセル、シスプラチン、エトポシド及びゲフィチニブを投与された。このタイプの癌は伝統的にフルオロピリミジンでは処置されないが、イリノテカンには応答し得る。
【0067】
さらにまた、我々は、5ヶ月又はそれより長く安定的症状を示す9人の患者を観察した。また、症状の進行を伴わない生存(PFS)の持続を示す、3人のまた別の患者が存在し、彼らは近い将来、期間が5ヶ月を超える可能性がある。これらの患者の大半は、以前に大量の化学療法を受けていた。これらの対象者が受けていた以前の治療は下記の表に要約される。
【0068】
表7:患者が受けていた以前の治療
【0069】
安全性:DLTは6番目の用量レベルで観察された、すなわち4人の対象者がDLTを示し、3人が下痢(1人は脱水/ARFのために死亡した)、1人が好中球減少症であった。おそらく関連を有すると思われる他のグレード3及び4の事象は以下のそれぞれ1つを含んでいた:グレード3の下痢、グレード3の嘔吐、グレード3の好中球減少症、グレード3の疲労感、グレード3の圧迫骨折及び関節痛並びに肺塞栓グレード4.PK:薬物動態解析は
図2に示されている。今日まで解析した26人の対象者全員で、IRI対FLOXの1:1のモル比が24時間維持され、代謝物5-FU及びSN-38が血漿中に存在した。下記で本臨床試験の結果を以前の臨床試験の公表データと比較した。
【0070】
表8:通常の薬剤として又はCPX-1として投与したときのイリノテカンのPKの比較
【0071】
CPX-1は、薬剤比が最適な抗腫瘍活性を基にしてin vitroで予め選択され、薬物動態制御を通して全身的に維持される、薬剤配合物を開発するための新規なアプローチである。210単位(U)/m
2のCPX-1の推奨用量を用いるフェーズ2試験が予定されている。
【0072】
当業者には明白であろうが、本発明の多くの改変及び変更が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく成し得るであろう。本明細書に記載した具体的な実施態様は、単なる例示として提供され、本発明は添付の請求の範囲並びにそのような請求の範囲が指定する等価物によって制限されるべきであり、本発明は、例示として本明細書に提供した個別の実施態様によって制限されない。
【0073】
上記の刊行物及び文書の引用は、前述のいずれも関連の先行技術であることを認容するものではなく、また、これら刊行物及び文書の内容又は日付に関して認容するものでもない。本明細書に引用した米国特許及び他の出願公開公報は、参照により本明細書に含まれる。
なお、ここに、まとめとして、本発明の好ましい実施の形態(I
、II
及びIIIシリーズ)を示す。
Iシリーズ
(形態1)
非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含んで成り、該非拮抗的定率モル比の範囲は(イリノテカン:フロクスウリジンが)5:1から1:5である医薬組成物であって、
前記非拮抗的定率モル比(のイリノテカン及びフロクスウリジン)は、対象者の癌を治療する方法で(前記医薬組成物を)使用するために投与した後、血漿中で少なくとも約4時間維持されるようにリポソーム中に被包化されており、ここで、前記方法は24時間未満で前記対象者に対する前記医薬組成物の静脈投与を含むことを特徴とする、医薬組成物。
(形態2)
前記イリノテカン:フロクスウリジンの非拮抗的定率モル比が約1:1である、形態1に記載の医薬組成物。
(形態3)
前記フロクスウリジンが0.001モル/m
2/ドース(投与ないし回、dose)を超えないレベルで投与される、形態1又は2に記載の医薬組成物。
(形態4)
前記フロクスウリジンが0.0003モル/m
2/ドースで投与される、形態3に記載の医薬組成物。
(形態5)
前記フロクスウリジンは0.01モル/m
2/月を超えないレベルで投与される、形態1乃至4のいずれかに記載の医薬組成物。
(形態6)
前記フロクスウリジンが0.0006モル/m
2/月で投与される、形態5に記載の医薬組成物。
(形態7)
前記各投与は30分間から3時間で実行される、形態1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
(形態8)
前記各投与は約90分間で実行される、形態7に記載の医薬組成物。
(形態9)
前記非拮抗的定率モル比は少なくとも約8時間維持される、形態1から8のいずれかに記載の医薬組成物。
(形態10)
前記癌が、進行固形腫瘍である、形態1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
(形態11)
前記進行固形腫瘍が、胃の腫瘍、腎臓腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、食道腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、卵巣腫瘍、骨肉種、又は蝶形骨洞腫瘍である、形態10に記載の医薬組成物。
IIシリーズ
(形態1)
非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含んで成り、該非拮抗的定率モル比の範囲は(イリノテカン:フロクスウリジンが)1:1である医薬組成物であって、
前記非拮抗的定率モル比(のイリノテカン及びフロクスウリジン)は、対象者の癌を治療する方法で(前記医薬組成物を)使用するために、投与した後、血漿中で少なくとも4時間維持されるようにリポソーム中に被包化されており、
ここで、前記方法は、30分間から3時間で実行される、前記対象者に対する前記医薬組成物の1投与ないし回(dose)の静脈投与を含み、ここで、各投与は0.0004モル/m
2/ドース未満の前記フロクスウリジンを含んでおり、前記フロクスウリジンは0.0008モル/m
2/月を超えないレベルで投与され、
前記癌が、進行固形腫瘍であり、該進行固形腫瘍が、胃の腫瘍、腎臓腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、食道腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、卵巣腫瘍、骨肉種、又は蝶形骨洞腫瘍である
ことを特徴とする、医薬組成物。
(形態2)
前記フロクスウリジンが0.0003モル/m
2/ドースで投与される、形態1に記載の医薬組成物。
(形態3)
前記フロクスウリジンが0.0006モル/m
2/月で投与される、形態1に記載の医薬組成物。
(形態4)
前記各投与は90分間で実行される、形態1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
(形態5)
前記非拮抗的定率モル比は少なくとも8時間維持される、形態1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
IIIシリーズ
(形態1)
非拮抗的定率モル比のイリノテカン及びフロクスウリジンを含んで成り、該非拮抗的定率モル比の範囲は(イリノテカン:フロクスウリジンが)1:1である医薬組成物であって、
前記非拮抗的定率モル比(のイリノテカン及びフロクスウリジン)は、対象者の癌を治療する方法で(前記医薬組成物を)使用するために、投与した後、血漿中で少なくとも4時間維持されるようにリポソーム中に被包化されており、
ここで、前記方法は、30分間から3時間で実行される、前記対象者に対する前記医薬組成物の1投与ないし回(dose)の静脈投与を含み、ここで、各投与は0.0003モル/m2/ドース以下の前記フロクスウリジンを含んでおり、前記フロクスウリジンは0.0006モル/m2/月を超えないレベルで投与され、
前記癌が、進行固形腫瘍であり、該進行固形腫瘍が、胃の腫瘍、腎臓腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、食道腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、卵巣腫瘍、骨肉種、又は蝶形骨洞腫瘍である
ことを特徴とする、医薬組成物。
(形態2)
前記医薬組成物の前記各投与は90分間で投与される、形態1に記載の医薬組成物。
(形態3)
前記非拮抗的定率モル比は少なくとも8時間維持される、形態1又は2に記載の医薬組成物。