(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687501
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】直接火炎型燃料電池用単セル
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20060101AFI20150226BHJP
H01M 8/12 20060101ALI20150226BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
H01M8/02 E
H01M8/02 K
H01M8/12
H01M4/86 M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-3732(P2011-3732)
(22)【出願日】2011年1月12日
(65)【公開番号】特開2012-146498(P2012-146498A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柏原 建記
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−373675(JP,A)
【文献】
特開2006−190592(JP,A)
【文献】
特開2007−026782(JP,A)
【文献】
特開2005−063686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層の一方の面に燃料極層が形成されると共に、その面と反対側の面に空気極層が形成された直接火炎型燃料電池用単セルであって、
前記燃料極層が多孔質に形成されていると共に、
前記固体電解質層は燃料極層表面から厚み1〜10μmに形成され、
且つ、固体電解質層の一部が燃料極層表面から1〜10μm下の燃料極層内部まで浸透していることを特徴とする、
直接火炎型燃料電池用単セル。
【請求項2】
前記燃料極層は厚みが50〜1500μmであり、気孔率が20〜60容量%であることを特徴とする請求項1に記載の直接火炎型燃料電池用単セル。
【請求項3】
前記固体電解質層を形成する固体電解質材料が、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の直接火炎型燃料電池用単セル。
【請求項4】
前記燃料極層の表面及び気孔内面が酸化コバルトで被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直接火炎型燃料電池用単セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体酸化物形燃料電池の中でも特に、還元炎を生成可能な燃料を燃焼させ、燃焼によって形成される火炎を燃料極にあてて燃料電池単セルを加熱すると共に、火炎中の燃料種を燃料として発電を行う直接火炎型燃料電池用の単セルに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCともいう)は、電解質として固体酸化物を使用すること、動作環境(発電可能温度)が高温であることに特徴がある。
【0003】
SOFCは、電解質を挟んで一方の側に燃料極を備え、他方の側に空気極を備え、燃料極側には燃料ガスを、空気極側には酸化剤ガスを供給し、電解質を介して燃料と酸化剤を電気化学的に反応させることにより発電する発電装置である。個体電解質を発電可能温度まで昇温した上で、燃料極側に燃料ガスを、空気極側に酸化剤ガスを供給し、燃料極と空気極を電気回路で接続することで、該電気回路に電流が流れる。
【0004】
燃料極と空気極を備えた電解質は単セルと呼ばれ、この単セルとして、平板型、筒型、又はハニカム型など様々な形状のものが考案され、実用化が図られている。
【0005】
SOFCのひとつの形態として、直接火炎型燃料電池がある(例えば、特許文献1)。直接火炎型燃料電池とは、還元炎を生成可能な燃料を燃焼させ、燃焼によって形成される火炎を燃料極にあてて燃料電池単セルを加熱すると共に、火炎中の燃料種を燃料として発電を行うSOFCである。
【0006】
なお、還元炎とは、一酸化炭素(CO)や水素(H
2)などの還元成分を含む火炎である。還元成分は、燃料が完全燃焼する過程のガスに含まれ、燃料を燃焼させる際の内炎も還元炎にあたる。
【0007】
還元炎を生成可能な燃料は、気体、液体、或いは固体であってもよく、例えば、メタン (CH
4)、エタン(C
2H
6)、プロパン(C
3H
8)、ブタン(C
4H
10)等のパラフィン系炭化水素、エチレン(C
2H
4)、プロピレン(C
3H
6)、ブチレン(C
4H
8)等のオレフィン系炭化水素等の炭化水素系ガス、又はこれらの炭化水素系ガスを含む混合ガス等が用いることができる。また、メタノール、エタノール、石油、灯油、ジメチルエーテル(DME)等も用いることができる。
【0008】
なお、SOFCでは、電解質を薄膜化することによって、発電中に電解質内を酸化物イオンが通過する際の酸素イオン伝導抵抗が小さくなり、発電効率が向上して出力密度が増し、高い出力が得易くなること知られている。
【0009】
電解質を薄膜化する場合には、電解質層の強度が弱くなるため、燃料極層を厚くして燃料極層によって電解質層を支持する燃料極支持、或いは空気極層によって電解質層を支持する空気極支持といった構成が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−190592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
直接火炎型燃料電池は、一般的な2室型燃料電池や1室型燃料電池と比較して、「室」を設ける必要が無いため構造が簡素化できる半面、出力密度においては一般的な2室型燃料電池と比較して低調であった。そのため、出力密度の高い単セルが求められていた。
【0012】
電解質の薄膜化によって発電効率が向上して出力密度が増すのは、直接火炎型燃料電池においても同様であるが、直接火炎型燃料電池は火炎を直接あてて加熱し、冷却時には火炎を消火して大気中で冷却するため、単セルの温度変化が急激であり、電解質を薄膜化した場合には、熱衝撃などによって電解質が燃料極層から剥離しやすい等、耐久性に問題があった。
【0013】
そのため、発電効率を高めるために電解質層を薄膜化しても、耐久性に優れた単セルが求められていた。
【0014】
本発明は、電解質層が薄膜で出力密度に優れると共に、耐久性にも優れた直接火炎型燃料電池用単セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、固体電解質層の一方の面に燃料極層が形成されると共に、その面と反対側の面に空気極層が形成された直接火炎型燃料電池用単セルであって、前記燃料極層が多孔質に形成されていると共に、前記固体電解質層は燃料極層表面から厚み1〜10μmに形成され、且つ、固体電解質層の一部が燃料極層表面から1〜10μm下の燃料極層内部まで浸透していることを特徴とする直接火炎型燃料電池用単セルである。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の直接火炎型燃料電池用単セルにおいて、前記燃料極層は厚みが50〜1500μmであり、気孔率が20〜60容量%であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の直接火炎型燃料電池用単セルにおいて、前記固体電解質層を形成する固体電解質材料が、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の直接火炎型燃料電池用単セルにおいて、前記燃料極層の表面及び気孔内面が酸化コバル
トで被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、電解質層が薄膜であって出力密度に優れると共に、耐久性に優れた直接火炎型燃料電池用単セルを得ることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果がより発揮される。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1と請求項2の効果に加え、直接火炎型燃料電池用単セルの出力密度がより優れる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3の効果に加え、直接火炎型燃料電池用単セルの劣化を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を具体化した実施形態を示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を損なわない範囲において構成を変えて利用することができる。
【0024】
本発明の直接火炎型燃料電池用単セルの模式図を
図1〜2に示す。
図1は、単セルの側面(上の図)及び平面(下の図)を図示した摸式図である。なお、
図1では、単セルの層構成をわかりやすくするために、側面図における各層の厚みについてはそれぞれ縮尺が異なる。実際には、
図1と比べると、固体電解質層21の厚みは燃料極層22の厚みと比較してもっと薄く、空気極層23の厚みも燃料極層22厚みと比較してもっと薄い。
図2は、
図1に示すX−X´断面の一部であって、単セルの固体電解質層21近辺の断面を図示した模式図である。なお、
図2では、断面の構成を単純なモデルとして図示するために、多孔質燃料極層22の気孔25は全て同じ大きさで、規則的に配置されているが、実際はこの限りではなく、気孔の大きさや配置はランダムであってもよい。
【0025】
図1に示す直接火炎型燃料電池用単セル10は、固体電解質層21の一方の面に燃料極層22が形成されると共に、その面と反対側の面に空気極層23が形成されたものである。
【0026】
なお、前記燃料極層22は多孔質に形成されている。
【0027】
また、固体電解質層21は非常に薄い層であり、この直接火炎型燃料電池用単セル10は、燃料極層22によって固体電解質層21が支持されている燃料極支持型の単セルである。
【0028】
また、
図2に示すように、固体電解質層21の一部は、燃料極層22内部まで浸透している。燃料極層が多孔質であるため、このように固体電解質層21の一部を浸透させることができる。
【0029】
本発明の直接火炎型燃料電池用単セル10においては、固体電解質層21の燃料極層22の表面32を基準とした厚み(
図2に示すA)は1〜10μmであって、固体電解質層21の燃料極層22の表面23を基準とした浸透深さ(
図2に示すB)は1〜10μmである。
【0030】
以上のような構成にすることによって、電解質層が薄膜であって出力密度に優れると共に、耐久性に優れた直接火炎型燃料電池用単セルを得ることができる。
【0031】
次に、この直接火炎型燃料電池用単セル10の各構成要素の詳細について説明する。
【0032】
固体電解質層21を形成する材料は、酸素イオン導電性を有する公知のセラミックス材料を用いればよく、例えば、イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)、イットリア部分安定化ジルコニア(3YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、ランタンガレート(LSGM)、コバルト添加ランタンガレート(LSGMC)などを挙げることができる。これらは、1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、直接火炎型燃料電池に用いたときに、発電効率に優れ、高い出力を得やすい点において、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)を用いることが特に好ましい。該スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)はCe、またはAlがドープされたものであってもよい。
【0033】
固体電解質層21は、燃料極層22の表面32を基準とした厚みが1〜10μm(より好ましくは2〜8μm)となる様に形成する。固体電解質層21の厚みを薄くすることによって、発電効率に優れた燃料電池が得られる。しかし、1μm以下(好ましくは2μm以下)では電解質層の緻密化が不安定となりやすく、燃料極と空気極の間でガスや電流のリークが生じて出力が低下する恐れがある。
【0034】
また、固体電解質層21は、燃料極層22の表面23を基準として1〜10μm(より好ましくは1〜5μm、特に好ましくは1〜3μm)下の燃料極層22内部まで浸透している。固体電解質層21を燃料極層22内部まで浸透させることによって、発電時の加熱・冷却による熱衝撃などによって固体電解質層21が燃料極層22から剥離するのを防ぐことができる。なお、浸透深さが小さい場合には、十分な剥離防止効果が得られない。また、浸透深さが大きすぎると、剥離防止効果は得られるものの、固体電解質層21の燃料極層22の表面32を基準とした厚みを薄くしたことによって発電効率を向上させる効果を損なう恐れがある。
【0035】
燃料極層22を形成する材料は、燃料電池の燃料極の材料として公知のものを用いればよく、例えば、Ni、Fe、Co、Pt、Pd、Ru、Agなどの酸化物、又はこれらの酸化物の混合物などが挙げられる。また、これらを前記固体電解質材料と混合物したものを用いてもよい。
【0036】
なお、直接火炎型燃料電池用単セル10は、燃料極支持型であるので、燃料極層22は固体電解質層21を支持できるだけの強度を有することが必要である。燃料極層22の強度は、前記した材料の選定以外にも、材料の焼成温度や、層の気孔率や厚みなどによっても影響されるが、それらは単セルを利用するにあたって必要とされる単セルの強度によって適宜設定すればよい。
ただし、直接火炎型燃料電池用単セル10の出力や耐久性を考慮した場合、好ましくは、厚みが50〜1500μm(より好ましくは200〜1000μm、特に好ましくは500〜800μm)であり、気孔率が20〜60容量%(より好ましくは30〜50容量%)である。この範囲であれば、耐久性に優れ、出力密度に優れた単セルが容易に得られる。
【0037】
空気極層23を形成する材料は、燃料電池の空気極の材料として公知のものを用いればよく、例えば、Co、Fe、Cr、Mnなどの複合酸化物、又はこれらの複合酸化物の混合物などが挙げられる。前記複合酸化物としては、SSC;(Sm,Sr)CoO
3、LSM;(La,Sr)MnO
3、LSC;(La,Sr)CoO
3、(La,Sr)(Fe,Co)O
3、LNF;(LaNi
0.6Fe
0.4O
3)、(La,Ca)MnO
3などがある。
【0038】
なお、空気極層23の厚みや気孔率は特に限定されない。本発明の効果を損ねない範囲で適宜設定すればよい。
【0039】
なお、直接火炎型燃料電池用単セル10は、発電時には単セルの燃料極層を火炎に曝すために、燃料極に火炎中の煤(炭素の微粒子)が付着しやすく、煤が付着すると単セルの出力が低下する。そのため、固体電解質層を薄くして高出力の単セルを得ても、すぐに出力が低下してしまうことがある。
【0040】
その対策として、燃料極層を酸化コバルトで被覆することが好ましい。それによって、燃料極層への煤の付着を抑えることができ、煤の付着を原因とする単セルの出力の低下を抑制して単セルの耐久性を向上させることができる。
【0041】
酸化コバルトは、燃料極層に被覆しても、燃料極材料の焼成温度以下であれば焼結して燃料極を閉塞させることがなく、燃料極への気体(燃料ガス等)の供給や燃料極からの気体(水蒸気ガス等)の排出を妨げないので濃度過電圧を悪化させない。また発電時には還元され導電性を発現するので抵抗過電圧を悪化させることもない。
【0042】
酸化コバルトとしては、CoO(一酸化コバルト)、Co
2O
3(三酸化二コバルト)、Co
3O
4(四酸化三コバルト)などが挙げられる。これらの酸化コバルトは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
これらの酸化コバルトで燃料極層を被覆する方法は特に限定されない。燃料極に酸化コバルトを付着させればよく、例えば、酸化コバルトの粉末を溶媒に分散させたスラリーで燃料極層を被覆して、必要に応じて乾燥工程を経た後に焼成する方法を採用することができる。なお、このスラリーには、必要に応じて有機高分子(水溶性合成樹脂、合成樹脂エマルション等)など、酸化コバルト粉末と溶媒以外の成分を含有させてもよい。
【0044】
なお、直接火炎型燃料電池用単セル10は燃料極支持型であって、燃料極層の厚みが厚いため、燃料極層の気孔内部にも煤が付着する場合がある。そこで、燃料極層が燃料極層の気孔内面も酸化コバルトで被覆することが特に好ましい。気孔内面に、前記した酸化コバルトを含有したスラリーを浸透させて被覆すればよい。また、気孔内にスラリーを浸透させるには、燃料極層をスラリーに浸漬する方法などでよい。スラリーが浸透しにくい場合には、スラリーに圧力をかけたり、真空引きしたりして強制的にスラリーを気孔内に送り込めばよい。
【0045】
酸化コバルトは、燃料極層の表面に被覆厚み1〜30μm(より好ましくは2〜20μm)で被覆することが好ましい。被覆厚みが薄すぎると煤の付着を抑制できない。逆に、被覆厚みは厚すぎると燃料極への燃料ガスの供給を妨げる恐れがある。また、上記被覆厚みで十分な煤の抑制効果があり、これ以上の被覆厚みで被覆しても煤の付着抑制効果は変わらない。そのため、単セルの容量や重量が増える等のデメリットがあっても、被覆厚みを厚くするメリットがない。
【0046】
なお、燃料極層の表面及び気孔内面に酸化コバルトを被覆する場合には、被覆厚みが明確に測定できないため、燃料極層を形成する燃料極材料100質量部に対して酸化コバルト10〜50質量部(より好ましくは15〜30質量部)となるように被覆することがこの好ましい。酸化コバルトの量が少なすぎると煤の付着を抑制できない。逆に、多すぎると燃料極への燃料ガスの供給を妨げる恐れがある。
【0047】
以上に説明した
図1〜2に示す実施形態においては、直接火炎型燃料電池用単セル10は平板型であったが、本発明は平板型に限定されるものではない。例えば、円筒型の単セルなどにも応用することができる。
【0048】
また、直接火炎型燃料電池用単セルには前記した以外にも、集電材層やインターコネクターなど、本発明の効果を損なわない範囲において、前記したもの以外の構成を備えていてもよい。
【0049】
(製造方法)
本発明の直接火炎型燃料電池用単セルは以下の方法で製造することができる。なお、以下の製造方法は、一例であり、直接火炎型燃料電池用単セルの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0050】
まず、多孔質な燃料極層を形成する。
燃料極層の形成方法は、特に限定しない。一般的な多孔質セラミックの形成方法を採用すればよく、例えば、燃料極材料の粉末とバインダーと造孔剤とを含有したセラミックグリーン体を作製して、そのグリーン体を焼成する方法などがある。
【0051】
次に、燃料極層の表面に、固体電解質層を形成する。
固体電解質層の形成方法は、固体電解質材料の粉末を溶媒に分散させた分散液を燃料極層の表面に塗装し、必要に応じて分散液の乾燥工程を設けた後に、焼成する方法を採用することが好ましい。分散液を用いることで、燃料極層の表面に固体電解質層を形成すると共に、固体電解質層の一部を燃料極層に浸透させることができる。
【0052】
前記分散液は、溶媒として水や有機溶剤などを用いて、これに固体電解質材料の粉末を分散させたものである。分散液には必要に応じて有機高分子などその他の材料を含有させてもよい。
この分散液を燃料極層に浸透させやすくするためには、固体電解質材料の粉末は粒子径0.05〜1μmのものを用いることが好ましい。また、分散液中の固体電解質材料の粉末の含有量は5〜17質量%(より好ましくは、6〜10質量%)が好ましい。含有量が多すぎると分散液が燃料極層に浸透しにくくなる。逆に含有量が少なすぎると固体電解質層の厚みが確保しにくくなる。
【0053】
分散液の塗装方法は、特に限定されないが、分散液に燃料極層をディッピングする方法を採用すれば1〜10μmの厚みの固体電解質層を容易に形成できる。
【0054】
次に、固体電解質層の表面に、空気極層を形成する。
空気極層の形成方法は、特に限定しない。一般的な空気極の形成方法を採用すればよく、例えば、空気極材料の粉末と粉末を溶媒に分散させた分散液を固体電解質層の表面に塗装し、必要に応じて分散液の乾燥工程を設けた後に、焼成する方法などがある。なお、分散液には必要に応じて有機高分子などその他の材料を含有させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】直接火炎型燃料電池用単セルの平面図および側面図
【
図2】直接火炎型燃料電池用単セルのX−X´断面の一部を示す模式図
【符号の説明】
【0056】
10 直接火炎型燃料電池用単セル
21 固体電解質層
22 燃料極層
23 空気極層
25 燃料極層の気孔
32 燃料極層の表面
A 燃料極層表面基準とした固体電解質層の厚み
B 燃料極層表面基準とした固体電解質層の燃料極層への浸透深さ