(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る防水通音部材を説明するための図である。
図1(A)は断面図であり、
図1(B)は上面図である。本実施形態の防水通音部材2は、防水通音膜11および支持層12を備える。防水通音膜11の一方面側には、防水通音部材2を筐体に接着するための筐体側接着層21が設けられている。また、防水通音膜11の他方面側には、支持層側接着層22により支持層12が接着されている。
図1に示すように、防水通音部材2は、工場出荷時には、筐体側接着層21を利用して剥離紙13に接着されることにより剥離紙13により担持される。
【0011】
防水通音膜11は、音の通過を許容しつつ液体および埃などの異物の通過を阻止する膜である。本実施形態では、防水通音膜11は長方形だが、正方形や他の多角形あるいは円形など他の形状であってもよい。
【0012】
本実施形態では、防水通音膜11は高分子フィルムにより構成されている。高分子フィルムの材料としては、高分子材料が挙げられる。防水通音膜11を構成する好適な高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。防水通音膜11は、多孔質であることおよびフッ素を含有していることが(フッ素樹脂からなることが)好ましく、多孔質ポリテトラフルオロエチレンは、防水通音膜11を構成する材料として特に好適である。また、防水通音膜11は、不織布の態様を有していてもよく、ナノファイバーを集結させることにより構成されていてもよい。また、防水通音膜11には撥水処理が施されていてもよい。
【0013】
支持層12は、防水通音膜11に接着されることにより防水通音部材2の剛性を高める、接着成分を有さない層である。すなわち、支持層12は、防水通音部材2の形状を安定させる作用を有する。
【0014】
支持層12は、音が通過可能な構成を有する。本実施形態では、支持層12は、防水通音膜11の四辺に沿う矩形枠状をなしており、中央に音を通過させるための開口を形成する。そして、支持層12は、支持層側接着層22によって防水通音膜11の周縁部に接着されている。ただし、支持層12は、防水通音膜11の形状によっては、例えば円環枠状であってもよい。なお、枠状とは、ロの字型および円環状の形状を含む。また、支持層12の材料が音の通過を妨げにくい材料から選定される場合は、支持層12は防水通音膜11を全面的に覆う板上の形状を有していてもよい。
【0015】
また、本実施形態では、支持層12は、防水通音膜11の輪郭よりも大きな輪郭を有する(すなわち、支持層12の周縁部が、全周にわたって防水通音膜11からも周囲に張り出している)。なお、本明細書中では、単に輪郭と記載する場合は、アウトライン(外郭)を指す。
【0016】
支持層12は、高分子フィルムにより構成可能である。高分子フィルムの材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの高分子材料が挙げられる。また、クッション性を有する高分子発泡体(例えばPORON、SCF(登録商標))およびウレタンは、支持層12の材料として好適に用いられ得る。また、支持層12の材料は、上記の材料を組み合わせたものであってもよい。
【0017】
筐体側接着層21および支持層側接着層22は、接着成分を有する層である。
図1に示すように、本実施形態では、筐体側接着層21および支持層側接着層22は、防水通音膜11と同一の輪郭を有するとともに支持層12と同一の形状の開口を形成する矩形枠状をなしている。すなわち、支持層12の周縁部は、全周にわたって筐体側接着層21および支持層側接着層22から周囲に張り出している。
【0018】
なお、支持層12、筐体側接着層21および支持層側接着層22の具体的な寸法関係は特に限定されないが、支持層12のうち、筐体側接着層21から張り出している領域の幅(
図1(A)のl
s)は、例えば1.0mmである。また、筐体側接着層21の中心から輪郭までの距離(
図1(A)のr
a)に対する支持層12の中心から輪郭までの距離(
図1(A)のr
s)の比(r
s/r
a)は、例えば1.1〜3.0である。支持層12のうち、支持層側接着層22から張り出している領域の幅および支持層側接着層22の中心から輪郭までの距離に対する支持層12の中心から輪郭までの距離の比も同様である。
【0019】
なお、本実施形態では筐体側接着層21および支持層側接着層22は同一形状の矩形枠状をなしているが、例えば円環枠状を有していてもよく、互いに異なる形状の輪郭を有していてもよい。また、本実施形態では、支持層12、筐体側接着層21および支持層側接着層22は枠状の形状を有し、これらは同一の形状の開口を有するが、これらは互いに異なる形状の開口を有していてもよい。
【0020】
また、本実施形態の防水通音部材2では、筐体側接着層21は、防水通音膜11から見て支持層12とは反対側に設けられているが、筐体側接着層21は、防水通音膜11から見て支持層12側に設けられていてもよい。
【0021】
筐体側接着層21および支持層側接着層22としては、例えば、アクリル系やシリコーン系の粘着剤を用いた接着テープが挙げられる。
【0022】
本実施形態では、支持層12の周縁部は、全周にわたって筐体側接着層21から周囲に張り出しているので、防水通音部材2を筐体に取り付ける際に、防水通音部材2の端面が筐体に誤って接触したとしても、支持層12の端面が筐体に接触するだけで、筐体側接着層21の端面が筐体に接触することがない。すなわち、本実施形態によれば、防水通音部材2の端面が、筐体側接着層21の端面により筐体に接着されるおそれが低減する。また、本実施形態によれば、防水通音部材2が筐体に取り付けられた後に、筐体側接着層21の端面に粉塵などの異物が付着するおそれも低減する。
【0023】
また、支持層12の周縁部は、全周にわたって支持層側接着層22からも周囲に張り出しているので、防水通音部材2の端面が、支持層側接着層22の端面により筐体に接着されるおそれも低減する。
【0024】
また、支持層12の周縁部上には支持層側接着層22は設けられてないので、このような周縁部をピンセットなどの器具で掴んでも、器具に支持層側接着層22に由来する接着成分が付着しない。また、本実施形態の支持層12は、防水通音膜11の輪郭よりも大きな輪郭を有するので、支持層12の周縁部をピンセットなどの器具で掴む際には、防水通音膜11が邪魔にならない。すなわち、本実施形態の支持層12は、掴み代としても好適に作用する。
【0025】
また、本実施形態の防水通音部材2では、筐体側接着層21は、防水通音膜11から見て支持層12とは反対側に設けられている。すなわち、支持層12と、防水通音部材2が担持される剥離紙13との間のスペースおよび防水通音部材2を取り付けるべき筐体との間のスペースを確保できるので、支持層12は容易に掴まれ、容易に筐体に取り付けられ得る。したがって、防水通音部材2を筐体に取り付ける際に、防水通音部材2の端面が筐体に誤って接触されるおそれが低減する。
【0026】
以上により、本発明の実施形態を説明した。しかし、本発明は、これらには限定されない。そこで、本発明の他の実施形態を以下でまとめて説明する。
【0027】
上記の実施形態の防水通音部材2では、筐体側接着層21の端面と、防水通音膜11の端面と支持層側接着層22の端面とは連続しているが、防水通音部材は他の態様を有していてもよい。例えば、
図2に示すように、
図1の防水通音膜11を、輪郭を小さくした防水通音膜111に置換して、防水通音部材102を構成してもよい(第1の変形例)。
図2に示す防水通音部材102では、防水通音膜111は、筐体側接着層21の輪郭および支持層側接着層22の輪郭よりも小さな輪郭を有する。換言すると、筐体側接着層21および支持層側接着層22が、全周にわたって防水通音膜111から周囲に張り出している。
図2に示す防水通音部材102は、
図1に示す防水通音部材2と同様の効果を有する。さらに、
図2に示す防水通音部材102が有する防水通音膜111は、
図1に示す防水通音部材2が有する防水通音膜11よりも小さいため、
図2のように防水通音部材102を構成すれば、防水通音膜の素材を節約できる。
【0028】
また、
図3に示すように、
図2の筐体側接着層21を、輪郭を小さくした筐体側接着層221に置換して、防水通音部材202を構成してもよい(第2の変形例)。
図3に示す防水通音部材202では、防水通音膜111および筐体側接着層221は、同一の輪郭を有する。換言すると、防水通音膜111の端面と筐体側接着層221の端面とは連続している。すなわち、
図3の防水通音部材202では、筐体側接着層221が防水通音膜111から張り出していないので、防水通音部材102の端面が筐体側接着層21の端面により筐体に接着されるおそれに比べると、防水通音部材202の端面が筐体側接着層221の端面により筐体に接着されるおそれは小さい。また、
図3に示す防水通音部材202が有する筐体側接着層221は、
図2に示す防水通音部材102が有する筐体側接着層21よりも小さいため、
図3のように防水通音部材202を構成すれば、筐体側接着層の素材を節約できる。
【0029】
また、
図4に示すように、
図3の筐体側接着層221を、輪郭を小さくした筐体側接着層321に置換して、防水通音部材302を構成してもよい(第3の変形例)。
図4に示す防水通音部材302では、筐体側接着層321は、防水通音膜111の輪郭よりも小さな輪郭を有する。すなわち、防水通音膜111が、全周にわたって筐体側接着層321から周囲に張り出しているので、防水通音部材202の端面が筐体側接着層221の端面により筐体に接着されるおそれに比べると、防水通音部材302の端面が筐体側接着層321の端面により筐体に接着されるおそれは小さい。また、
図4に示す防水通音部材302が有する筐体側接着層321は、
図3に示す防水通音部材202が有する筐体側接着層221よりも小さいため、
図4のように防水通音部材302を構成すれば、筐体側接着層の素材をさらに節約できる。
【0030】
また、
図5に示すように、
図4の防水通音膜111を、
図1の防水通音膜11に置換して、防水通音部材402を構成してもよい(第4の変形例)。
図5に示す防水通音部材402では、防水通音膜11および支持層側接着層22は同一の輪郭を有する。換言すると、防水通音膜11の端面と支持層側接着層22の端面とは連続している。すなわち、
図5に示す防水通音部材402では、支持層側接着層22が防水通音膜11から張り出していないので、防水通音部材302の端面が支持層側接着層22の端面により筐体に接着されるおそれに比べると、防水通音部材402の端面が支持層側接着層22の端面により筐体に接着されるおそれは小さい。
【0031】
また、
図6に示すように、筐体側接着層221が形成された防水通音膜11に支持層512を直接接着させて防水通音部材502を構成してもよい(第5の変形例)。
図6に示す防水通音部材502では、防水通音膜11および支持層512が同一の輪郭を有し(換言すると、防水通音膜11の端面と支持層512の端面とが連続し)、防水通音膜11および支持層512が全周にわたって筐体側接着層221から周囲に張り出している。したがって、防水通音部材302および防水通音部材402を構成する場合と同様の理由で、防水通音部材502の端面が筐体側接着層221の端面により筐体に接着されるおそれは小さい。さらに、防水通音部材502は、防水通音膜11と支持層512の間に接着層を有さないので、防水通音膜11と支持層512の間に接着層を有する場合に比べると、防水通音部材502の端面が筐体の取付位置以外の部分に接着されるおそれは小さい。なお、
図6のように、防水通音膜11と支持層512とを直接接着させる方法としては、例えば熱ラミネートが挙げられる。