特許第5687746号(P5687746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5687746スティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造及びスティップリング模様を縫製するためのステッチデータを記録した記憶装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5687746
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】スティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造及びスティップリング模様を縫製するためのステッチデータを記録した記憶装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/04 20060101AFI20150226BHJP
   G06F 17/50 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   D05B19/04
   G06F17/50 680G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-198033(P2013-198033)
(22)【出願日】2013年9月25日
(62)【分割の表示】特願2008-219046(P2008-219046)の分割
【原出願日】2008年8月28日
(65)【公開番号】特開2013-252457(P2013-252457A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2013年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081879
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 清
(72)【発明者】
【氏名】金剛 猛
(72)【発明者】
【氏名】本山弘美
(72)【発明者】
【氏名】加 藤 伸 一
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−136623(JP,A)
【文献】 米国特許第6968255(US,B1)
【文献】 特開2000−126484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 19/00−21/00
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍可能なミシンによって縫製され、上下の相対する辺と左右の相対する辺により形成される4角形の刺繍可能範囲内に描かれるスティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造であって、
該4角形の上下の相対する辺の中の一方の辺の複数の第1点にほぼ接するように凸状に模様を前記ミシンに縫製させるための凸部ステッチデータと、
該一方の辺の複数の第2点に所定の距離離間して凹状に模様を前記ミシンに縫製させるための凹部ステッチデータと、
前記4角形の上下の相対する辺の中の他方の辺の、前記複数の第1点に夫々対応する複数の第1対応点に所定の距離離間して凹状に模様を前記ミシンに縫製させるための凹部ステッチデータと、
前記他方の辺の、前記複数の第2点に夫々対応する複数の第2対応点にほぼ接するように凸状に模様を前記ミシンに縫製させるための凸部ステッチデータと、を有し、
前記第1対応点は、前記第1点を通り前記左右の相対する辺の一方の辺に平行な線が、上下の相対する辺の中の他方の辺と交わる点であり、
前記第2対応点は、前記第2点を通り前記左右の相対する辺の一方の辺に平行な線が、上下の相対する辺の中の他方の辺と交わる点である、
スティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造。
【請求項2】
前記スティップリング模様を、前記一方の辺と前記他方の辺を接触するように、前記ミシンに複数回縫製させるステッチデータを有する、
請求項1のスティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造。
【請求項3】
刺繍可能なミシンによって縫製され、上下の相対する辺と左右の相対する辺により形成される4角形の刺繍可能範囲内に描かれるスティップリング模様を縫製するためのステッチデータを記録した記憶装置であって、
該4角形の上下の相対する辺の中の一方の辺の複数の第1点にほぼ接するように凸状に模様を前記ミシンに縫製させるための凸部ステッチデータと、
該一方の辺の複数の第2点に所定の距離離間して凹状に模様を前記ミシンに縫製させるための凹部ステッチデータと、
前記4角形の上下の相対する辺の中の他方の辺の、前記複数の第1点に夫々対応する複数の第1対応点に所定の距離離間して凹状に模様を前記ミシンに縫製させるための凹部ステッチデータと、
前記他方の辺の、前記複数の第2点に夫々対応する複数の第2対応点にほぼ接するように凸状に模様を前記ミシンに縫製させるための凸部ステッチデータと、を記録し、
前記第1対応点は、前記第1点を通り前記左右の相対する辺の一方の辺に平行な線が、上下の相対する辺の中の他方の辺と交わる点であり、
前記第2対応点は、前記第2点を通り前記左右の相対する辺の一方の辺に平行な線が、上下の相対する辺の中の他方の辺と交わる点である、
スティップリング模様を縫製するためのステッチデータを記録した記憶装置
【請求項4】
前記スティップリング模様を、前記一方の辺と前記他方の辺を接触するように、前記ミシンに複数回縫製させるステッチデータを記録した、
請求項1のスティップリング模様を縫製するためのステッチデータを記録した記憶装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミシンによって縫製されるスティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造及びスティップリング模様を縫製するためのステッチデータを記録した記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スティップリング模様は、一筆書きのように1本の線で複雑な曲線を描いた模様であり、キルティング縫いなどに主として用いられている。
このスティップリング模様を縫う場合には、従来はフリーモーション技術と呼ばれる人手作業によって行われており、ミシンの送り歯を下げた状態にし、布の送り出し量を手で調整し、また縫い針の動作速度をコントロ一ラのペダル操作で調整して手作業で縫っていた。しかし縫い目のピッチ幅を一定に揃えるため、布の送り出し量と縫い針の動作速度を同時に調整する必要があり、熟練した作業者でなければ、スティップリング模様を縫うことは困難であった。特に、一般のミシン使用者が、大きなキルト生地にスティップリング模様をミシンで縫うことは、不可能であった。
そのため、近年スティップリング縫いを機械的に行う試みがなされており、例えばスティップリング模様データを自動的に生成する装置の提案などがなされている。(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2008ー136623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ミシンなどを用いて機械的にスティップリング模様縫いを行う場合、一度に大きな面積を縫うことができず、布などの縫い対象物の装着位置をずらしながら、複数回の縫製を行う必要があった。
このような複数回の縫製を行う場合、大きな模様を分割して縫う方法と1回で縫製可能な単位模様を繰り返し縫う方法とが考えられるが、前者の場合1つの模様を分割するために、位置あわせが難しく、模様がずれやすい問題があった。
また、単位模様を繰り返し縫う方法の場合、単位模様間で重なりが生じたり、また模様の間隔が広くなりすぎて、単位模様と単位模様の間に隙間が生じたりする問題があり、全体的に統一感を保った縫製模様が得にくい問題があった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のスティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造は、刺繍可能なミシンによって縫製され、上下の相対する辺と左右の相対する辺により形成される4角形の刺繍可能範囲内に描かれるスティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造であって、該4角形の上下の相対する辺の中の一方の辺の複数の第1点にほぼ接するように凸状に模様を前記ミシンに縫製させるための凸部ステッチデータと、該一方の辺の複数の第2点に所定の距離離間して凹状に模様を前記ミシンに縫製させるための凹部ステッチデータと、前記4角形の上下の相対する辺の中の他方の辺の、前記複数の第1点に夫々対応する複数の第1対応点に所定の距離離間して凹状に模様を前記ミシンに縫製させるための凹部ステッチデータと、前記他方の辺の、前記複数の第2点に夫々対応する複数の第2対応点にほぼ接するように凸状に模様を前記ミシンに縫製させるための凸部ステッチデータと、を有し、前記第1対応点は、前記第1点を通り前記左右の相対する辺の一方の辺に平行な線が、上下の相対する辺の中の他方の辺と交わる点であり、前記第2対応点は、前記第2点を通り前記左右の相対する辺の一方の辺に平行な線が、上下の相対する辺の中の他方の辺と交わる点である。
上記構成のステッチデータ構造によるスティップリング模様を、前記一方の辺と前記他方の辺を接触するように、複数回縫製した場合、スティップリング模様とスティップリング模様の重なりや単位模様間に隙間が生じることがなく、外見的な違和感を生じることなく、全体的に統一的な大きなスティップリング模様縫いを行うことができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスティップリング模様を縫製するためのステッチデータ構造或いはスティップリング模様を縫製するためのステッチデータを記録した記録媒体によれば、大きな布の全面に単位模様を繰り返し縫うことにより、単位模様と単位模様の重なりや単位模様間に隙間が生じることがなく、外見的な違和感を生じることなく、全体的に統一的な大きなスティップリング模様縫いを行うことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、刺繍縫い可能なミシンにスティップリング模様縫い装置を組み込んだ実施形態を示している。
ミシン本体αは縫い機構7と表示装置8を備えており、更に刺繍枠74を備えている。この刺繍枠74にスティップリング刺繍対象物である布を装着し、該布の位置をずらしつつ刺繍枠74の大きさを超えたスティップリング模様の縫製を実現している。
【0008】
図2のブロック図によりこの実施形態を更に詳細に説明する。
ミシン本体α全体は中央演算装置100に制御されており、中央演算装置100からの指令によりミシンモータ制御装置70が制御されミシンモータ71を介して針や送り歯などの縫い機構7を制御している。また、X,Yモータ制御装置72とX,Yモータ73を制御して縫い機構7の刺繍枠74をxy方向に移動させ、スティップリング模様縫いを行わせるように構成されている。
更に表示制御装置80を介して表示装置8に適宜必要な表示を行わせるようになっている。
【0009】
中央演算装置100には模様記憶装置2が接続し、少なくとも1つのスティップリング模様のデータを格納してある。図3にスティップリング模様20の一実施形態を示す。図示するように、1つの模様線21で複雑な模様を形成してある。
前述したように単位模様を繰り返し縫う方法では、キルト生地を刺繍枠に張設して、選択した単位スティップリング模様20を、縦横に複数個整列して組み合わせ配置し、刺繍する。このとき、図3に示すように配置された単位スティップリング模様20の接合部では、単位スティップリング模様の外周の境界付近に形成される凹凸部が、相手側の境界付近に形成される凹凸部にほぼ対応して形成され、全体として一体感のある大きなスティップリング模様が形成されるようになっている。
【0010】
図4により、スティップリング模様20の構成を更に詳細に説明する。スティップリング模様20は、刺繍可能範囲75の内側に描かれている。刺繍可能範囲75は、刺繍枠74により規定される刺繍枠74よりも小さな4角形をなしている。
刺繍可能範囲75は、互いに相対する一方の辺である上側基準線76と他方の辺である下側基準線77を有している。また同様に互いに相対する一方の辺である左側基準線78と他方の辺である右側基準線79とを有している。
【0011】
上側基準線76には、複数の第1点A1〜A7が設けられており、この第1点Aに対応する下側基準線77上に第1対応点a1〜a7が設けられている。上側基準線76上の第1点Aを通り、左側基準線78に平行な線が下側基準線77と交わる点が第1対応点aになっている。
この第1点A1〜A7に接するように、或いはほぼ接するように、凸部25が形成されている。凸部25は模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。
【0012】
一方下側基準線77上の第1対応点a1〜a7から所定の距離だけ離間して、凹部26が形成されている。この凹部26も模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。凹部26は、第1対応点a1〜a7から離れる方向に曲線を描いており、第1対応点a1〜a7に対して凹状になっている。
【0013】
上側基準線76には、また複数の第2点B1〜第2点B4が設定されており、この第2点Bに対応する下側基準線77上に第2対応点b1〜b4が設けられている。上側基準線76上の第2点Bを通り、左側基準線78に平行な線が下側基準線77と交わる点が第2対応点bになっている。
【0014】
上側基準線76上の第2点B1〜B4から所定の距離だけ離間して、凹部26が形成されている。この凹部26も模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。凹部26は、第2点B1〜B4から離れる方向に曲線を描いており、第2点B1〜B4に対して凹状になっている。
【0015】
一方下側基準線77上の第2対応点b1〜b4に接するように、或いはほぼ接するように、凸部25が形成されている。凸部25は模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。
【0016】
以上のように、相互に向かいあう上側基準線76と下側基準線77には、それぞれ対応する第1点Aと第1対応点a、第2点Bと第2対応点bに凸部25と凹部26が形成されている。即ち、第1点Aには凸部25が形成され、第1対応点aには凹部26が形成されている。一方、第2点Bには凹部26が形成され、第2対応点bには凸部25が形成されている。
即ち、上側基準線76と下側基準線77の対応する点には逆方向に曲げれらた曲線が形成されている。
【0017】
以上のような構成のスティップリング模様20を、縦横方向につなぎ合わせた状態の一例を図5に示す。ここで、スティップリング模様20とスティップリング模様20Uを見ると、その接合部において、スティップリング模様20Uの下側基準線77とスティップリング模様20の上側基準線76が重なり、スティップリング模様20U側の凸部25と凹部26がスティップリング模様20側の凸部25と凹部26にそれぞれ逆に対応するように配置される。即ちスティップリング模様20U側の凸部25がスティップリング模様20側の凹部26と向き合うように配置され、スティップリング模様20U側の凹部26がスティップリング模様20側の凸部25と向き合うように配置されることになる。
【0018】
そのため、スティップリング模様20を連続的に縫製した場合、スティップリング模様20が重なりあったり、不自然に離間することがなく、図5に示すように全体的に一体感のある模様が形成できる。
【0019】
左側基準線78と右側基準線79にも、全く同様に第1点Aと第1対応点a、第2点Bと第2対応点bが形成されている。即ち、左側基準線78には、複数の第1点A1〜A10が設けられており、この第1点Aに対応する右側基準線79上に第1対応点a1〜a10が設けられている。左側基準線78上の第1点Aを通り、上側基準線76に平行な線が右側基準線79と交わる点が第1対応点aになっている。
この第1点A1〜A10に接するように、或いはほぼ接するように、凸部25が形成されている。凸部25は模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。
【0020】
一方右側基準線79上の第1対応点a1〜a10から所定の距離だけ離間して、凹部26が形成されている。この凹部26も模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。凹部26は、第1対応点a1〜a10から離れる方向に曲線を描いており、第1対応点a1〜a10に対して凹状になっている。
【0021】
左側基準線78には、また複数の第2点B1〜B7が設定されており、この第2点Bに対応する右側基準線79上に第2対応点b1〜b7が設けられている。左側基準線78上の第2点Bを通り、上側基準線76に平行な線が右側基準線79と交わる点が第2対応点bになっている。
【0022】
左側基準線78上の第2点B1〜B7から所定の距離だけ離間して、凹部26が形成されている。この凹部26も模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。凹部26は、第2点B1〜B7から離れる方向に曲線を描いており、第2点B1〜B7に対して凹状になっている。
【0023】
一方右側基準線79上の第2対応点b1〜b7に接するように、或いはほぼ接するように、凸部25が形成されている。凸部25は模様線21に連続する線で形成され、スティップリング模様20の一部をなしている。
【0024】
ここで、図5においてスティップリング模様20とスティップリング模様20Rとを見ると、その接合部において、スティップリング模様20の右側基準線79とスティップリング模様20Rの左側基準線78が重なり、スティップリング模様20側の凸部25と凹部26がスティップリング模様20R側の凸部25と凹部26にそれぞれ逆に対応するように配置される。即ちスティップリング模様20側の凸部25がスティップリング模様20R側の凹部26と向き合うように配置され、スティップリング模様20側の凹部26がスティップリング模様20R側の凸部25と向き合うように配置されることになる。
【0025】
以上のように、上記構成のスティップリング模様20は、縦横いずれの方向に連続させて縫製しても、図5に示すようにスティップリング模様20が重なりあったり、不自然に離間することがなく、全体的に一体感のある模様が形成できる。
【0026】
次に上記構成のスティップリング模様20の具体的な配置方法の一例について説明する。
この実施形態では、図6に示すように、模様記憶装置2に、xy寸法の標準サイズのスティップリング模様20、x’=1/2x、y寸法の縦半分サイズのスティップリング模様20’、x、y’=1/2y寸法の横半分サイズのスティップリング模様20”、x’=1/2x、y’=1/2y寸法の1/4サイズのスティップリング模様20’”の模様データを備えている。
標準サイズの模様20の縦横長さは、前述したように刺繍枠74の縦横長さに対応した刺繍可能範囲75の寸法になっている。
なお、その他スティップリング模様の形状の異なる模様データを模様記憶装置2に格納しておくことが可能である。
【0027】
模様選択装置1は模様記憶装置2に格納されたスティップリング模様20データを選択して読み出す構成を備えている。模様選択装置1は選択入力装置10を備え、ユーザが指令したスティップリング模様20を選択して読み出すことも可能であり、また中央演算装置100からの指令によりスティップリング模様20を選択して読み出すことも可能になっている。選択され、読み出されたスティップリング模様20データは中央演算装置100に備えられた一時記憶装置(図示せず)に格納される。
【0028】
布サイズ入力装置3は、ユーザが布などの刺繍対象物のサイズを入力するものであり、スティップリング模様を刺繍したい布の縦と横のサイズを指定入力するようになっている。一般的にスティップリング模様縫いを行う布のサイズは大きく、通常はスティップリング模様20のサイズよりも大きくなる。
本発明の実施形態では大きなキルト生地である布30の所定のサイズXYに収まるように、スティップリング模様20を縦横に複数個整列してスティップリング模様の刺繍を行うため、単位スティップリング模様20のサイズを調整して、縦横に整数個配列する。
【0029】
張り替え数算出装置4は、前記刺繍対象物のサイズと前記選択された単位模様の所定の縦横長さに基づいて、刺繍対象物のサイズに対応する単位模様の縦横の数を整数として算出する算出手段である。即ち張り替え数算出装置4は、模様選択装置1で選択された模様の縦横長さと布サイズ入力装置3で指定された布の縦横長さに基づいて、布のサイズに対応する横方向のスティップリング模様20の数及び縦方向のスティップリング模様20の数を算出する。
【0030】
図7図8により具体的に説明する。
図7に示すように、横方向サイズX、縦方向サイズYの布30に、横方向サイズx、縦方向サイズyのスティップリング模様20を刺繍する場合を考えると、図示するように、横に2列、縦2段にスティップリング模様20を配設することが考えられる。一方、図8に示すように横2列縦3段とすることも可能である。
通常はX÷x、Y÷yを演算し、四捨五入して整数の解を得ればよい。また、切捨ての整数解と切り上げの整数解の両方を求め、後述する拡大縮小率の小さい配設を選択するように構成することも可能である。
【0031】
図7図8に示すように、張り替え数算出装置4で算出した配設では、布30の大きさにスティップリング模様20が完全に適合しない場合が殆どである。そのため、ステッチ変更装置6において、張り替え数算出装置4で算出した配設数に応じて布30のXYとスティップリング模様20のx×列数、y×段数が一致するように、スティップリング模様20のデータを横方向、縦方向にそれぞれ拡大縮小するように構成されている。すなわち、スティップリング模様20のステッチデータにそれぞれ拡大縮小率α、βを掛けて、縦横方向に拡大縮小する。その結果、スティップリング模様20の縦横サイズをx×α、y×βとする。この拡大縮小したスティップリング模様20の縦横サイズは、布30のXYに適合し、X=x×α×列数、Y=y×β×段数となる。
なおステッチ変更装置6は、算出手段により算出された単位模様の縦横数と前記対象物のサイズに基づいて、前記単位模様が前記刺繍対象物に適合するように、前記単位模様の縦方向及び横方向の拡大/縮小率を計算する計算手段である。
【0032】
従来は、模様の拡大・縮小は、模様の形状を崩さないために縦・横の倍率は同じとしているが、本発明では、模様の崩れが従来の模様のように明確に現れないスティップリング模様の特性を生かして、それぞれ縦横に独立して拡大、縮小して、単位スティップリング模様20のサイズを調整することにより、模様崩れを感じさせずに布30のサイズに一致するスティップリング模様20の刺繍縫いを実現できる。またスティップリング模様20を整数個配設するように構成しているため、模様が途中で切れたりすることがない。
また、単位スティップリング模様20は、前記したように接合時に違和感が生じないように構成されているため、スティップリング模様20とスティップリング模様20の更に円滑な接合部を得ることができる。
【0033】
ミシン本体αには更にプリンタ9が設けられており、布30に縫製される模様を印刷できるようになっている。即ち縦横所定数に組み合わされ、且つ布30に一致するように拡大縮小されたスティップリング模様20の全体を印刷し、布30と刺繍枠74の位置あわせに使用できるようになっている。
縦・横の模様数、模様の縦・横の倍率などの縫製情報や製図情報と単位スティップリング模様のテンプレートをプリンタに出力することも可能である。
【0034】
中央演算装置100は更に、縦・横倍率算出装置5において算出された拡大/縮小率が所定の値を超えたか否か判断する拡大/縮小率判断手段50を接続しており、所定値を超えた場合、表示装置8にその旨の告知を行わせるようになっている。該所定値は、例えば模様崩れを起こさない所定の限界倍率とすることができる。
【0035】
中央演算装置100は更に、前記拡大/縮小率判断手段が、拡大/縮小率が所定の値を超えたと判断した時、模様選択装置1に模様記憶装置2から他のサイズのスティップリング模様20を選択させるように構成されている。即ち、図8に示すように、標準サイズで拡大/縮小率が所定値を超えたら、他の縦半分サイズ、横半分サイズ、1/4サイズの中から適宜のものを選択させ、張り替え数算出装置4、縦・横倍率算出装置5、に同じ動作を実行させるように構成されている。該新たに選択したスティップリング模様20においても、拡大縮小率判断装置50が所定値を超えると判断したら、更に他のスティップリング模様20を選択して同様な動作を繰り返すように構成されている。
【0036】
図9のフローチャートにより動作を説明する。
表示装置8に表示された模様記憶装置2のスティップリング模様20を選択し(ステップS1)、刺繍を施す布30の縦、横の長さXYを指定する(ステップS2、3)。張り替え数算出装置4において布30の縦・横サイズXYに整列して配置可能な縦・横の模様数(整数)を算出する(ステップS4)。該算出された張り替え数と前記布30のサイズを基に、全体の模様サイズが布30のサイズに一致するように、選択された単位スティップリング模様20の縦・横それぞれの倍率を算出する(ステップS5)。
算出された各倍率が、模様崩れを起こさない所定の限界倍率を超えた場合(ステップS6)、警告を表示装置8に表示し(ステップS12)、ステップS1に戻り、サイズの異なる別の単位スティップリング模様20を選択し(ステップS1)、同一の動作を繰り返す。
拡大縮小率が所定の値を超えていない場合、算出された各倍率にもとづいて、スティップリング模様20のステッチデータをステッチ変更装置6により拡大、縮小する(ステップS7)。そして縦・横の模様数、模様の縦・横の倍率などの縫製情報を表示装置に表示する(ステップS8)。印刷指示があった場合(ステップS9)、縫製情報を含む製図情報と単位スティップリング模様のテンプレートをプリンタに出力する(ステップS13)。
縫いスタートが指示されると(ステップS10)、中央演算装置100はミシンモータ制御装置70とX,Yモータ制御装置72を制御して前記拡大縮小されたスティップリング模様20の縫いを張り替え数算出装置4で算出された縦・横の数だけ実行する(ステップS11)。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図。
図3】本発明の一実施形態を示す説明図。
図4】本発明の一実施形態を示す説明図。
図5】本発明の一実施形態を示す説明図。
図6】本発明の一実施形態のスティップリング模様20のサイズの態様を示す説明図。
図7】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
図8】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
図9】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0038】
1:模様選択装置、2:模様記憶装置、3:布サイズ入力装置、4:張り替え数算出装置、5:縦・横倍率算出装置、6:ステッチ変更装置、7:縫い機構、8:表示装置、9:プリンタ、10:選択入力装置、20:スティップリング模様、21:模様線、25:凸部、26:凹部、30:布、50:拡大縮小率判断装置、70:ミシンモータ制御装置、71:ミシンモータ、72:X,Yモータ制御装置、73:X,Yモータ、74:刺繍枠、75:刺繍可能範囲、76:上側基準線、77:下側基準線、78:左側基準線、79:右側基準線、80:表示制御装置、90:プリンタ駆動装置、100:中央演算装置。
図1
図2
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図5
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図9