【文献】
CROCKER,C. et al.,Large-ring and cyclometalated rhodium complexes from some medium-chain α,ω.-diphosphines,Journal of the American Chemical Society,1980年,Vol.102, No.13,p.4373-4379
【文献】
BOSCH,M. et al.,A Series of (Butadiene)rhodium(I) Complexes with an Open-Sandwich- or Half-Sandwich-Type Structure,Chemistry - A European Journal,1999年,Vol.5, No.7,p.2203-2211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、有機電子材料、医農薬中間体として嵩高い構造をもつ化合物が数多く合成されている。また、安価ではあるが、反応性の低い塩素原子を持つ基質からの反応も同様に求められている。例えば、特許文献2で示されるクロスカップリングは嵩高い置換基があり、基質の反応性が低い場合は、目的とする芳香族アミン化合物の収率が低いという問題がある。これらはクロスカップリング反応一般の共通した問題である。そして、反応系に適した立体的特性および電子的特性の微調整が可能で、より活性の高い触媒が必要とされている。
そこで、本発明は、効率よくクロスカップリング反応が進行し高収率で目的物を得ることができる新規な有機リン系配位子及び有機リン系配位化合物触媒を提供し、さらには、立体的特性および電子的特性の微調整が可能で、またこれらを使用することにより、高収率でクロスカップリング反応を行うことのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の問題点を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、下記一般式(1)のR
1、R
2、R
3およびR
4を変えることで立体的特性および電子的特性の微調整が可能な構造を持つ配位子を使用すると高収率でクロスカップリング反応が進行することを見出した。
すなわち、本発明は、下記のとおりに要約される。
(1)下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(2)一般式(1)においてR
1とR
2が共にt−ブチル基である(1)に記載のホスフィン化合物。
(3)下記式(2)で表される(2)に記載のホスフィン化合物。
(4)下記式(3)で表される(2)に記載のホスフィン化合物。
(5)下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物が、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属に配位してなる配位化合物触媒。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(6)遷移金属が、Pd、Ni、Pt、Rh、Ir、Ru、Co、Fe、CuおよびAuから選択される、(5)に記載の配位化合物触媒。
(7)下記式(4)で表される(6)に記載の配位化合物。
PdCl
2(tBu
2P−CH
2−CH=CH−CH
3)
2 (4)
(式中、tBuは、第3級ブチル基を示す。)
(8)下記式(5)で表される(6)に記載の配位化合物。
PdCl
2(tBu
2P−CH
2−CH=C(CH
3)
2)
2 (5)
(式中、tBuは、第3級ブチル基を示す。)
(9)下記一般式(6)で表されるホスホニウム塩化合物。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示し、Y
−は、B
−F
4またはB
−Ph
4を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(10)式(6)においてR
1およびR
2が、3級ブチル基である、(9)に記載のホスホニウム塩化合物。
(11)式(1)で表されるホスフィン化合物及び/又は式(6)で表されるホスホニウム塩化合物と、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属化合物とを反応液中に加えて生成する配位化合物を触媒又は触媒系の少なくとも一部とし、この触媒又は触媒系を用いることを特徴とする、芳香族化合物の製造方法。
(R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示し、Y
−は、B
−F
4またはB
−Ph
4を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(12)下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物が、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属に配位してなる配位化合物を、触媒あるいは触媒系の少なくとも一部として用いることを特徴とする、芳香族化合物の製造方法。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(13)式(1)で表されるホスフィン化合物、及び/又は式(6)で表されるホスホニウム塩化合物と、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属化合物とを反応液中に加えて生成する配位化合物を触媒としてあるいは触媒系の少なくとも一部として用い、ハロゲン原子及び/又は反応活性基を有する芳香族化合物と、第一級アミン及び/又は第二級アミンとを反応させることを含む、芳香族アミン化合物の製造方法。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示し、Y
−は、B
−F
4またはB
−Ph
4を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(14)下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物が、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属に配位してなる配位化合物を、触媒としてあるいは触媒系の少なくとも一部として用い、ハロゲン原子及び/又は反応活性基を有する芳香族化合物と、第一級アミン及び/又は第二級アミンとを反応させることを含む、芳香族アミン化合物の製造方法。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(15)式(1)で表されるホスフィン化合物及び/又は式(6)で表されるホスホニウム塩化合物と、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属化合物とを反応液中に加えて生成する配位化合物を触媒としてあるいは触媒系の少なくとも一部として用い、ハロゲン原子及び/又は反応活性基を有する芳香族化合物と、ホウ素化合物とを反応させることを含む、芳香族化合物の製造方法。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示し、Y
−は、B
−F
4またはB
−Ph
4を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
(16)下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物が、元素の周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属に配位してなる配位化合物を、触媒としてあるいは触媒系の少なくとも一部として用い、ハロゲン原子及び/又は反応活性基を有する芳香族化合物と、ホウ素化合物とを反応させることを含む、芳香族化合物の製造方法。
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素はとらない。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の、有機リン化合物を配位子とした触媒を用いるとクロスカップリング反応が効率よく進行する。また、反応系に適した立体的特性および電子的特性の微調整が可能である。このために、本発明の製造方法を実施することにより高収率で芳香族化合物を製造することが可能となり、ビフェニル化合物や芳香族アミンなどの芳香族化合物を高収率で得ることができる。また、本発明の金属錯体は、安定であり取り扱いも容易である。これらのことから本発明の製造方法は、有機電子材料、医農薬中間体の製造に有用であり、工業的に極めて価値が高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(ホスフィン化合物)
本発明の一般式(1)で表されるホスフィン化合物において、R
1およびR
2は、それぞれ独立に2級アルキル基、3級アルキル基またはシクロアルキル基を示す。2級アルキル基の場合はC3〜C18のアルキル基から選択され、より有利にはC3〜C6が好ましく、また3級アルキル基の場合は、C4〜C18のアルキル基から選択され、より有利にはC4〜C8が好ましい。具体的には、イソプロピル基、s-ブチル基、t−ブチル基が好ましい。最も好ましいのは、t−ブチル基である。シクロアルキル基は、単環式もしくは多環式シクロアルキル基のいずれでもよく、例えば、アダマンチル基またはノルボルニル基であってもよい。好ましくはC3〜C8のシクロアルキル基であり、より好ましくは、シクロヘキシル基である。
R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。ただし、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3、およびR
4は同時に水素はとらない。
脂肪族基としては、C1〜C18のアルキル基、C2〜C18のアルケニル基またはC2〜C18のアルキニル基であり、それらの基は、直鎖状もしくは分枝状であってもよい。複素脂肪族基は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基において、少なくとも1つの酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子を含み、それらの基は直鎖状でも分枝状でもよい。脂環式基は、C3〜C18のシクロアルキル基、C5〜C18のシクロアルケニル基を含み、単環でも多環式系でもよい。芳香族基は、単環系および多環系を含む。複素環式基は、脂環式基において該環構造内に少なくとも1つのヘテロ原子を有するものと、芳香族基において該環構造内に少なくとも1つのヘテロ原子を有するものを含む。
【0009】
上記した置換基は、さらに他の置換基によって置換されていてもよく、例えば脂肪族基は、芳香族基によって置換されてアラルキル基を形成してもよく、またはその逆に芳香族基が脂肪族基によって置換されてアルキルアリール基を形成してもよい。
最も好ましいR
1とR
2の組み合わせとしてはともにt−ブチル基またはともにシクロヘキシル基またはt−ブチル基とシクロヘキシル基であり、R
3とR
4の組み合わせとしてはメチル基と水素原子またはともにメチル基である。具体的にはジ−t−ブチルクロチルホスフィン、ジ−t−ブチルプレニルホスフィン、ジシクロヘキシルクロチルホスフィン、ジシクロヘキシルプレニルホスフィン、t−ブチルシクロヘキシルクロチルホスフィン、t−ブチルシクロヘキシルプレニルホスフィンを指す。
本発明のホスフィン化合物と類似の構造を持つジ−t−ブチルアリルホスフィン、ジ−t−ブチル−n−ブチルホスフィンなどでは後述する比較例2、比較例9に見られるように本発明のホスフィン化合物と比較し、クロスカップリング反応において明らかな収率の低下がみられている。一方、本発明の一般式(1)化合物でR
3とR
4の組み合わせがメチル基と水素原子、またはR
3、R
4がともにメチル基とした場合には、明らかにクロスカップリング反応の収率が向上することからも本発明による効果は特別なものであって優れたものである。
加えて、反応系に応じて、R
1、R
2および/又はR
3、R
4の基を変えることでその立体的特性および電子的特性の微調整が可能である。例えば、実施例10の反応ではR
3とR
4の組み合わせがメチル基と水素原子であるジ−t−ブチルクロチルホスフィンが効果的であったが、実施例12の反応ではR
3、R
4がともにメチル基であるジ−t−ブチルプレニルホスフィンが効果的であった。
本発明は、特に式(1)の化合物に示すように、末端オレフィン(つまりR
3、R
4は共に水素原子)ではなく、内部オレフィン(R
3、R
4の少なくともいずれかが水素原子以外)としてオレフィンの電子密度を変えることにより、より高収率でクロスカップリング反応を行うことができるホスフィン化合物とするものである。
このような本発明のホスフィン化合物としては下記のものが挙げられるが、例示の化合物に限定されるものではない。
【0010】
ジイソプロピルクロチルホスフィン、ジイソプロピルプレニルホスフィン、ジイソプロピル−2−ペンテニルホスフィン、ジイソプロピル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン、ジイソプロピル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン、ジイソプロピル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン、ジイソプロピル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン、ジイソプロピル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン、ジイソプロピル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン、ジイソプロピル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン、ジイソプロピルシンナミルホスフィン、ジイソプロピル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン、ジイソプロピル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン、ジイソプロピル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン、ジイソプロピル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン、ジイソプロピル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン、ジイソプロピル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン、ジシクロヘキシルクロチルホスフィン、ジシクロヘキシルプレニルホスフィン、ジシクロヘキシル−2−ペンテニルホスフィン、ジシクロヘキシル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン、ジシクロヘキシル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン、ジシクロヘキシル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン、ジシクロヘキシル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン、ジシクロヘキシル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン、ジシクロヘキシル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン、ジシクロヘキシル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン、ジシクロヘキシルシンナミルホスフィン、ジシクロヘキシル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン、ジシクロヘキシル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン、ジシクロヘキシル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン、ジシクロヘキシル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン、ジシクロヘキシル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン、ジシクロヘキシル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン、ジ−t−ブチルクロチルホスフィン、ジ−t−ブチルプレニルホスフィン、ジ−t−ブチル−2−ペンテニルホスフィン、ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン、ジ−t−ブチル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン、ジ−t−ブチル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン、ジ−t−ブチル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン、ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン、ジ−t−ブチル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン、ジ−t−ブチル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン、ジ−t−ブチルシンナミルホスフィン、ジ−t−ブチル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン、ジ−t−ブチル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン、ジ−t−ブチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン、ジ−t−ブチル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン、ジ−t−ブチル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン、ジ−t−ブチル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン
【0011】
(ホスフィン化合物の合成)
本発明である一般式(1)で示されるホスフィン化合物は一般式(7)で示されるジアルキルホスフィナスクロライドに、一般式(8)で示されるグリニヤール試薬を、銅化合物を触媒として反応させることにより合成できる。一般式(7)において、R
1およびR
2はそれぞれ独立に、C3〜C18の2級アルキル基、C4〜C18の3級アルキル基またはC3〜C18のシクロアルキル基を示し、より有利にはC3〜C6の2級またはC4〜C8の3級アルキル基、C3〜C8のシクロアルキル基である。2級アルキル基、3級アルキル基の具体例としてはイソプロピル基、s-ブチル基、t−ブチル基がよい。最も好ましいのは、t−ブチル基である。シクロアルキル基は、単環式もしくはアダマンチル基またはノルボルニル基のような多環式基であってもよい。好ましいシクロアルキル基は、シクロヘキシル基である。
【0012】
(8)で示されるグリニヤール試薬において、R
3およびR
4は、それぞれ独立に水素、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香族基、脂環式基または複素環式基を示す。なお、R
3およびR
4はリン原子を有することなく、またR
3およびR
4は同時に水素とはならない。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、それらの基は、直鎖状もしくは分枝状であってもよい。複素脂肪族基は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基において、付加的にその骨格内にまたは結合原子として少なくとも1つのヘテロ原子、例えば酸素原子もしくは窒素を有する基を含み、それらの基は直鎖状でも分枝状でもよい。脂環式基は、シクロアルキル基、シクロアルケニル基を含み、単環でも多環式系でもよい。芳香族基は、単環系および多環系を含む。複素環式基は、脂環式基において該環構造内に少なくとも1つのヘテロ原子を有するものと、芳香族基において該環構造内に少なくとも1つのヘテロ原子を有するものを含む。
【0013】
上記した置換基は、さらに他の置換基によって置換されていてもよく、例えば脂肪族基は、芳香族基によって置換されてアラルキル基を形成してもよく、またはその逆に芳香族基が脂肪族基によって置換されてアルキルアリール基を形成してもよい。
最も好ましいR
3およびR
4の組み合わせとしてはメチル基と水素原子である。
また、Xは、塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を示す。
【0014】
反応溶媒はテトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル系溶剤を単独、あるいはベンゼンやトルエンなどの芳香族系またはヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤との混合系であっても同様の結果を得ることができる。
【0015】
例えば一般式(2)で示されるジ−t−ブチルクロチルホスフィンは、クロチルクロライドもしくは3−クロロ−1−ブテンのグリニャール試薬を、銅触媒存在下でジ−t−ブチルホスフィナスクロライドに滴下することで得られる。
銅化合物の使用量は、一般式(7)のジアルキルホスフィナスハライドに対して、0.1モル%から10モル%が適当である。特に好ましい銅化合物の使用量は、一般式(7)のジアルキルホスフィナスハライドに対して0.5モル%から3モル%である。また、その銅化合物の種類は、無機銅および有機銅のいずれも使用可能であり、特に好ましくは、ハロゲン化銅または銅(II)アセチルアセトナートである。
【0016】
また、本発明のホスフィン化合物の合成方法に用いられる一般式(8)のグリニヤール試薬の使用量は、一般式(7)のジアルキルホスフィナスハライドに対し、0.5当量ないし5当量である。好ましい、一般式(8)のグリニヤール試薬の使用量は、一般式(7)のジアルキルホスフィナスハライドに対し、0.9当量ないし1.5当量である。
反応終了後の処理方法は、通常のグリニヤール試薬による第3級ホスフィン化合物類の合成法に準じればよい。すなわち、副生するハロゲン化マグネシウムなどの無機塩を除くために、反応系に無機塩を溶解するだけの水あるいは希硫酸などの希薄酸性水溶液を混合した後、水層を分液除去し,残った有機層を常圧あるいは減圧下において使用した溶媒を留去することにより、目的とする一般式(1)の第3級ホスフィンを得ることができる。
また、異性化が問題となる場合は、他の製造方法として、例えば、ホスフィナスハライドとオルガノリチウム試薬との反応、ジアルキルホスフィンとオレフィンの反応、ジアルキルホスフィンとアルケニルハライドとの反応、ホスフィナスハライドと金属リチウムなどから調製したホスフィドとアルケニルハライドとの反応などが挙げられる。ただし、これらの方法に限定されるものではない。
【0017】
(ホスフィン化合物に配位してなる)有機リン系配位化合物触媒
本発明の一態様は、前記のホスフィン化合物が、遷移金属、特に周期律表の第8族、第9族、第10族および第11族から選択される遷移金属に配位してなる配位化合物である。遷移金属は、有利にはPd、Ni、Pt、Rh、Ir、Ru、Co、Fe、CuおよびAuから選択され、より有利には、該金属はPdもしくはNiで最も有利には該金属は、Pdである。このような本発明の配位化合物としては下記のものが挙げられるが、例示の化合物に限定されるものではない。
ビス(ジイソプロピルクロチルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピルプレニルホスフィン)パラジウム、ビス(ビス(ジイソプロピル−2−ペンテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピルシンナミルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシルクロチルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシルプレニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−2−ペンテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシルシンナミルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−2−ペンテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチルシンナミルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジイソプロピルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ビス(ジイソプロピル−2−ペンテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピルシンナミルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−2−ペンテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシルシンナミルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−2−ペンテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルシンナミルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジイソプロピルクロチルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピルプレニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ビス(ジイソプロピル−2−ペンテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピルシンナミルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジイソプロピル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシルクロチルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシルプレニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−2−ペンテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシルシンナミルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−
(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジシクロヘキシル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−2−ペンテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヘキセニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−シクロヘキシル−2−プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−4−フルオロ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−4−メトキシ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノ−2−ブテニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−2,4−ヘキサジエニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−2−ヘキセ−4−イン−1−イルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルシンナミルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−フルオロフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−メトキシフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−フリル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−ピリジル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチル−3−(2−チエニル)プロペニルホスフィン)ニッケルジクロリド
好ましくはビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)ニッケルジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)ニッケルジクロリドである。
使用するホスフィン化合物は通常、蒸留品や再結晶品を用いるが、反応液またはその濃縮品や反応液に酸を加えて4級化して上層を留去後に、アルカリと溶剤を加えて得られた上層を使用してもかまわない。前記の配位化合物は、公知の方法もしくはそれに準じた方法により事前に製造し、次いで触媒反応のために使用することができる。
また、実施例11に示すように遷移金属化合物をホスフィン化合物やホスホニウム塩と一緒に触媒反応に加えて使用することもできる。このとき、遷移金属化合物はホスフィン化合物や反応液中のアルカリと反応してホスフィン化合物となったホスホニウム塩と配位して、上記の触媒反応と同様の反応を進めることができる。
遷移金属化合物として示すニッケル化合物の例としては、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ニッケル(II)アセチルアセトナート、酸化ニッケル(II)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(0)、などが挙げられる。また鉄化合物の例としては、塩化鉄(II)(FeCl
2)、塩化鉄(III)(FeCl
3)などハロゲン鉄が挙げられる。ただし、上記した例に限定されるものではない。
遷移金属化合物として使用されるなかでも、使用されるパラジウム化合物の例としては、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、アセチルアセトン酸パラジウム(II)、パラジウム(0)ジベンジリデンアセトン錯体、パラジウム(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)、パラジウム(0)ビス(トリ-o-トリルホスフィン)、プロピオン酸パラジウム(II)、パラジウム(II)(シクロオクタジエン-1,5)ジクロリド、パラジウム(0)-ジアリルエーテル錯体、硝酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)ビス(アセトニトリル)、塩化パラジウム(II)ビス(ベンゾニトリル)および他のパラジウム(0)錯体およびパラジウム(II)錯体が使用できる。
前記した配位化合物を事前に製造する場合は、一般式(1)で示されるホスフィン化合物と遷移金属または遷移金属化合物を水、または有機溶剤、或いはこれらの混合溶剤中で反応させることにより容易に製造できる。例えば一般式(4)で示されるビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリドはジ−t−ブチルクロチルホスフィンの溶液にテトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウムのメタノール溶液を加え、必要に応じて加熱することで合成できる。使用できる反応溶剤としては水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶剤やヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶媒やベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤や塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤やアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶剤やテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル溶剤、これらの混合溶剤があげられる。
【0018】
(ホスホニウム塩化合物)
ホスホニウム塩化合物としては、一般式(6)において特にR
1およびR
2が3級ブチル基で、Y
−がB
−F
4もしくはB
−Ph
4であるホスホニウム塩が好ましい。Y
−がB
−F
4であるホスホニウム塩は、塩化メチレンに希釈された一般式(1)のホスフィン化合物に、40%ホウフッ化水素酸水溶液を加えて、有機層を濃縮することで合成することができる。また、一般式(1)のホスフィン化合物はその製造での反応液を使用しても問題なく、溶解性が低い場合は40%ホウフッ化水素酸水溶液を加えた後に、有機層を除去した後に塩化メチレンなどのハロゲン系溶剤で抽出すればよい。また、一般式(1)のホスフィン化合物の、塩酸や硫酸などの酸からなる4級塩にテトラフルオロホウ酸ナトリウム水溶液を加えることでも同様に合成が可能である。Y
−がB
−Ph
4であるホスホニウム塩は一般式(1)のホスフィン化合物の塩酸や硫酸などの酸からなる4級塩にテトラフェニルホウ酸ナトリウム水溶液を加えることで合成が可能である。
【0019】
(触媒の使用方法)
一般に、使用する触媒量としては、基質に対して0.001〜50モル%の範囲で使用できる。好ましくは、0.01〜10モル%であり、より好ましくは0.01〜5モル%である。ホスフィン配位子は、遷移金属に対して等モル以上あれば良く、遷移金属と配位子との比率は、1:1〜1:100の範囲で使用できる。好ましくは遷移金属と配位子との比率1:1〜1:10であり、1:1〜1:5の範囲が特に好ましい。使用されるべき厳密な遷移金属/配位子比は、特定の用途に依存し、また使用される触媒の量にも依存する。こうして一般に、非常に低い遷移金属濃度(<0.01モル%)の場合には、0.5〜0.01モル%の遷移金属という遷移金属濃度の場合よりも低い遷移金属/配位子比を使用することが好適である。
当該触媒は、有利には、C-C結合もしくはC-ヘテロ原子結合が形成されるカップリング反応で使用される。しかしながら、当業者には、他の遷移金属で触媒される反応、例えばメタセシス又は二重結合もしくはカルボニル化合物の水素添加をも、当該触媒により触媒できることは明らかである。
【0020】
(芳香族アミン化合物の製造方法)
本発明は有機溶媒中において遷移金属触媒、並びに塩基存在下、ハロゲン原子及び/又は反応活性基を有する芳香族化合物と、第一級アミンおよび/又は第二級アミンとを反応させることを含む芳香族アミン化合物の製造方法を提供し、下記反応式に示すとおりである。
式中、Ar
1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示し、Xは反応活性化基を示す。Xの例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはスルホネート基が挙げられ、具体的には、ブロモベンゼン、2−ブロモアニソール、3−ブロモアニソール、4−ブロモアニソール、2−ブロモトルエン、3−ブロモトルエン、4−ブロモトルエン、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、4−ブロモフェノール、2−ブロモベンゾニトリル、3−ブロモベンゾニトリル、4−ブロモベンゾニトリル、2−ブロモベンゾトリフロリド、3−ブロモベンゾトリフロリド、4−ブロモベンゾトリフロリド、1−ブロモ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−ブロモ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−ブロモフェネチルアルコール、3−ブロモフェネチルアルコール、4−ブロモフェネチルアルコール、5−ブロモ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−ブロモ−1,3−ジメチルベンゼン、2−ブロモ−1,4−ジメチルベンゼン、3−ブロモ−1,2−ジメチルベンゼン、4−ブロモ−1,2−ジメチルベンゼン、4−ブロモ−1,3−ジメチルベンゼン、5−ブロモ−1,3−ジメチルベンゼン、1−ブロモ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−ブロモ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−ブロモビフェニル、3−ブロモビフェニル、4−ブロモビフェニル、4−ブロモ−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−ブロモ−2−メチルナフタレン、1−ブロモ−4−メチルナフタレン、1−ブロモ−9H−フルオレン、2−ブロモ−9H−フルオレン等のアリールブロマイド類;クロロベンゼン、2−クロロアニソール、3−クロロアニソール、4−クロロアニソール、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−クロロベンゾニトリル、3−クロロベンゾニトリル、4−クロロベンゾニトリル、2−クロロベンゾトリフロリド、3−クロロベンゾトリフロリド、4−クロロベンゾトリフロリド、1−クロロ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−クロロ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−クロロフェネチルアルコール、3−クロロフェネチルアルコール、4−クロロフェネチルアルコール、5−クロロ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、2−クロロ−1,4−ジメチルベンゼン、3−クロロ−1,2−ジメチルベンゼン、4−クロロ−1,2−ジメチルベンゼン、4−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、5−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、1−クロロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−クロロビフェニル、3−クロロビフェニル、4−クロロビフェニル、4−クロロ−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−クロロ−ナフタレン、2−クロロ−ナフタレン、1−クロロ−2−メチルナフタレン、1−クロロ−4−メチルナフタレン、1−クロロ−9H−フルオレン、2−クロロ−9H−フルオレン等のアリールクロライド類;ヨードベンゼン、2−ヨードアニソール、3−ヨードアニソール、4−ヨードアニソール、2−ヨードトルエン、3−ヨードトルエン、4−ヨードトルエン、2−ヨードフェノール、3−ヨードフェノール、4−ヨードフェノール、2−ヨードベンゾニトリル、3−ヨードベンゾニトリル、4−ヨードベンゾニトリル、2−ヨードベンゾトリフロリド、3−ヨードベンゾトリフロリド、4−ヨードベンゾトリフロリド、1−ヨード−2,4−ジメトキシベンゼン、1−ヨード−2,5−ジメトキシベンゼン、2−ヨードフェネチルアルコール、3−ヨードフェネチルアルコール、4−ヨードフェネチルアルコール、5−ヨード−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−ヨード−1,3−ジメチルベンゼン、2−ヨード−1,4−ジメチルベンゼン、3−ヨード−1,2−ジメチルベンゼン、4−ヨード−1,2−ジメチルベンゼン、4−ヨード−1,3−ジメチルベンゼン、5−ヨード−1,3−ジメチルベンゼン、1−ヨード−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−ヨード−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−ヨードビフェニル、3−ヨードビフェニル、4−ヨードビフェニル、4−ヨード−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−ヨード−ナフタレン、2−ヨード−ナフタレン、1−ヨード−2−メチルナフタレン、1−ヨード−4−メチルナフタレン等のアリールアイオダイド類;フルオロベンゼン、2−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、2−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2−フルオロベンゾニトリル、3−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベンゾニトリル、2−フルオロベンゾトリフロリド、3−フルオロベンゾトリフロリド、4−フルオロベンゾトリフロリド、1−フルオロ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−フルオロ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−フルオロフェネチルアルコール、3−フルオロフェネチルアルコール、4−フルオロフェネチルアルコール、5−フルオロ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−フルオロ−1,3−ジメチルベンゼン、2−フルオロ−1,4−ジメチルベンゼン、3−フルオロ−1,2−ジメチルベンゼン、4−フルオロ−1,2−ジメチルベンゼン、4−フルオロ−1,3−ジメチルベンゼン、5−フルオロ−1,3−ジメチルベンゼン、1−フルオロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−フルオロ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4−フルオロ−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−フルオロ−ナフタレン、2−フルオロ−ナフタレン、1−フルオロ−2−メチルナフタレン、1−フルオロ−4−メチルナフタレン等のアリールフルオリド類;アリールスルホナートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシアニソール、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシアニソール、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシアニソール、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシトルエン、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシトルエン、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシトルエン、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェノール、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェノール、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェノール、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾニトリル、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾニトリル、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾニトリル、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾトリフロリド、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾトリフロリド、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゾトリフロリド、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェネチルアルコール、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェネチルアルコール、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェネチルアルコール、5−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,3−ジメチルベンゼン、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,4−ジメチルベンゼン、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,2−ジメチルベンゼン、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,2−ジメチルベンゼン、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,3−ジメチルベンゼン、5−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,3−ジメチルベンゼン、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシビフェニル、3−トリフルオロメタンスルホニルオキシビフェニル、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシビフェニル、4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシナフタレン、2−トリフルオロメタンスルホニルオキシナフタレン、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−2−メチルナフタレン、1−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−4−メチルナフタレン等のアリールトリフルオロメタンスルホナート類;メタンスルホニルオキシベンゼン、2−メタンスルホニルオキシアニソール、3−メタンスルホニルオキシアニソール、4−メタンスルホニルオキシアニソール、2−メタンスルホニルオキシトルエン、3−メタンスルホニルオキシトルエン、4−メタンスルホニルオキシトルエン、2−メタンスルホニルオキシフェノール、3−メタンスルホニルオキシフェノール、4−メタンスルホニルオキシフェノール、2−メタンスルホニルオキシベンゾニトリル、3−メタンスルホニルオキシベンゾニトリル、4−メタンスルホニルオキシベンゾニトリル、2−メタンスルホニルオキシベンゾトリフロリド、3−メタンスルホニルオキシベンゾトリフロリド、4−メタンスルホニルオキシベンゾトリフロリド、1−メタンスルホニルオキシ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−メタンスルホニルオキシ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−メタンスルホニルオキシフェネチルアルコール、3−メタンスルホニルオキシフェネチルアルコール、4−メタンスルホニルオキシフェネチルアルコール、5−メタンスルホニルオキシ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−メタンスルホニルオキシ−1,3−ジメチルベンゼン、2−メタンスルホニルオキシ−1,4−ジメチルベンゼン、3−メタンスルホニルオキシ−1,2−ジメチルベンゼン、4−メタンスルホニルオキシ−1,2−ジメチルベンゼン、4−メタンスルホニルオキシ−1,3−ジメチルベンゼン、5−メタンスルホニルオキシ−1,3−ジメチルベンゼン、1−メタンスルホニルオキシ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−メタンスルホニルオキシ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−メタンスルホニルオキシビフェニル、3−メタンスルホニルオキシビフェニル、4−メタンスルホニルオキシビフェニル、4−メタンスルホニルオキシ−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−メタンスルホニルオキシナフタレン、2−メタンスルホニルオキシナフタレン、1−メタンスルホニルオキシ−2−メチルナフタレン、1−メタンスルホニルオキシ−4−メチルナフタレン等のアリールメタンスルホナート類;p−トルエンスルホニルオキシベンゼン、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アニソール、3−(p−トルエンスルホニルオキシ)アニソール、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)アニソール、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)トルエン、3−(p−トルエンスルホニルオキシ)トルエン、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)トルエン、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェノール、3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェノール、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェノール、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゾニトリル、3−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゾニトリル、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゾニトリル、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゾトリフロリド、3−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゾトリフロリド、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゾトリフロリド、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2,4−ジメトキシベンゼン、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2,5−ジメトキシベンゼン、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェネチルアルコール、
3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェネチルアルコール、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェネチルアルコール、5−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,3−ジメチルベンゼン、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,4−ジメチルベンゼン、3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,2−ジメチルベンゼン、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,2−ジメチルベンゼン、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,3−ジメチルベンゼン、5−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,3−ジメチルベンゼン、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビフェニル、3−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビフェニル、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビフェニル、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフタレン、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフタレン、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−メチルナフタレン、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−4−メチルナフタレン等のアリールp−トルエンスルホナート類;等が例示される。また、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、4、4’−ジブロモビフェニル、4、4’−ジクロロビフェニル、4、4’−ヨードビフェニル、1−ブロモ−2−フルオロベンゼン、1−ブロモ−3−フルオロベンゼン、1−ブロモ−4−フルオロベンゼン、1−ブロモ−2−クロロベンゼン、1−ブロモ−3−クロロベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、2−ブロモ−5−クロロトルエン、3−ブロモ−4−クロロベンゾトリフロリド、5−ブロモ−2−クロロベンゾトリフロリド、1−ブロモ−2,3−ジクロロベンゼン、1−ブロモ−2,6−ジクロロベンゼン、1−ブロモ−3,5−ジクロロベンゼン、2−ブロモ−4−フルオロトルエン、2−ブロモ−5−フルオロトルエン、3−ブロモ−4−フルオロトルエン、4−ブロモ−2−フルオロトルエン、4−ブロモ−3−フルオロトルエン、2,7−ジブロモ−9H−フルオレン、1,8−ジブロモ−9H−フルオレン、2,7−ジクロロ−9H−フルオレン、1,8−ジクロロ−9H−フルオレン、2−ブロモ−9,9−ジメチルフルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレン等のハロゲン原子を二つ以上有するアリールハライド類;1−クロロ−2−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン、1−クロロ−3−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン、1−クロロ−4−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン、9−クロロ−10−トリフルオロメタンスルホニルオキシアントラセン、9−クロロ−10−トリフルオロメタンスルホニルオキシアントラセン、4−クロロ−4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシビフェニル、4−ヨード−4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシビフェニル、1−ブロモ−2−メタンスルホニルオキシベンゼン、1−ブロモ−3−メタンスルホニルオキシベンゼン、1−ブロモ−4−メタンスルホニルオキシベンゼン、9−ブロモ−10−メタンスルホニルオキシアントラセン、9−クロロ−10−メタンスルホニルオキシアントラセン、4−ブロモ−4’−メタンスルホニルオキシビフェニル、4−クロロ−4’−メタンスルホニルオキシビフェニル、4−ヨード−4’−メタンスルホニルオキシビフェニル、1−ブロモ−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、1−ブロモ−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、1−ブロモ−4−(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、9−ブロモ−10−(p−トルエンスルホニルオキシ)アントラセン、9−クロロ−10−(p−トルエンスルホニルオキシ)アントラセン、4−ブロモ−4’−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビフェニル、4−クロロ−4’−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビフェニル、4−ヨード−4’−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビフェニル等のハロゲン原子とスルホナート基をそれぞれ1つ以上有するアリールハライド類も本発明において使用されるアリールハライドとして例示することができる。また、これらに限定されるものではない。R
5およびR
6はそれぞれ独立に水素(ただし、R
5およびR
6は同時に水素はとらない)、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい単環または多環式の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい単環または多環式の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい単環または多環式の芳香族複素環基を示すか、或いは、R
5とR
6が同一の環構造を形成し、その環内の窒素原子が反応に関与するカルバゾール、ピペリジン、モルホリンなどのような、R
5、R
6及び窒素原子が縮合した縮合複素環であっても良い。本発明に使用しうるアミンとしては、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ネオペンチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、アダマンチルアミン、ベンジルアミン、α−メチルベンジルアミン、α,α−ジメチルベンジルアミン、2−フェニルエチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−メトキシプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン等の置換基を有してもよい脂肪族一級アミン類;アニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、4−ブロモアニリン、2−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2−アニシジン、3−アニシジン、4−アニシジン、2−トルイジン、3−トルイジン、4−トルイジン、2,3−ジメチルアニリン、2,4−ジメチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、3,5−ジメチルアニリン、2,4,6−トリメチルアニリン、2,3−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,3−ジフルオロアニリン、2,4−ジフルオロアニリン、2,6−ジフルオロアニリン、2-クロロ‐3-フルオロアニリン、2-クロロ‐4-フルオロアニリン、2-クロロ‐5-フルオロアニリン、2-クロロ‐6-フルオロアニリン、3-クロロ‐2-フルオロアニリン、3-クロロ‐4-フルオロアニリン、4-クロロ‐2-フルオロアニリン、5-クロロ‐2-フルオロアニリン、6-クロロ‐2-フルオロアニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、2−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、1,4−ジアミノベンゼン、4−ジメチルアミノアニリン、4,4’−ジアミノビフェニル等の置換基を有してもよい芳香族第一級アミン類;2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−アミノピリミジン、4−アミノピリミジン、3−アミノピラゾール、5−アミノピラゾール、3−アミノトリアゾール、5−アミノトリアゾール、2−アミノインドール、3−アミノインドール、2−アミノキノリン、3−アミノキノリン、4−アミノキノリン、7−アミノキノリン、8−アミノキノリン、9−アミノアントラセン等の置換基を有してもよい複素芳香族一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルイソプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、メチル−t−ブチルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,α−ジメチルベンジルアミン、N,α,α−トリメチルベンジルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルフェネチルアミン等の置換基を有してもよい脂肪族二級アミン類;ピペラジン、2−メチルピペラジン、ホモピペラジン、N−メチルホモピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−エトキシカルボニルピペラジン、N−ベンジルピペラジン、モルホリン、3,5−ジメチルモルホリン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、4−ピペリドンエチレンケタール、ピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン等の置換基を有してもよい複素脂肪族環状アミン類;ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、カルバゾール等の置換基を有してもよい複素芳香族環状アミン類;N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−イソプロピルアニリン、N−t−ブチルアニリン、N−メチル−1−ナフチルアミン、N−メチル−2−ナフチルアミン、2−メチルアミノピリジン、3−メチルアミノピリジン、2−メチルアミノピリミジン、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン、N,N−ジフェニルアミン等の芳香環に置換基を有してもよい芳香族第二級アミン類;等が挙げられ、またこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の製造方法では、塩基の存在(共存)下で反応を行うことが好ましい。塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、燐酸カリウム等の無機塩基、ブチルリチウム、フェニルリチウム、メチルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムクロライドなどの有機金属塩基、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、およびリチウムヘキサメチルジシラジドなどの金属アミド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノラート)、カリウム(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノラート) 等の金属アルコキシド等を挙げることができる。好ましくは、金属アルコキシドを挙げることができ、より好ましくはナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド等のアルコキシ基のC1〜C6のアルカリ金属アルコキシドを挙げることができる。
本発明の製造方法では、有機溶媒の存在下で反応を行うことが好ましい。使用できる有機溶媒としては、トルエン、キシレン(o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、およびそれらの混合物)、メシチレン、p−シメン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒やテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはトルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンであり、より好ましくはトルエン、キシレン、メシチレンであり、さらに好ましくはキシレンである。
【0022】
(芳香族化合物の製造方法)
本発明は溶媒中において遷移金属触媒、並びに塩基存在下、ハロゲン原子及び/又は反応活性基を有する芳香族化合物と、有機ホウ素化合物群のいずれかを反応させることを含む芳香族化合物の製造方法を提供し、下記反応式に示すとおりである。
式中、Ar
2は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環化合物を示す。また、Xは反応活性化基を示し、例としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはスルホネート基が挙げられ、Ar
1と同様に例示できる。
【0023】
式中、R
7は置換基を有していてもよいアルキル、アルケニル、アルキニルなどの脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Yはナトリウム、カリウムなどのカウンターカチオンを表す。また、R
8は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を示し、nは1〜3の整数を表す。また、R
9は置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよいアルキレン基を―OBO−の結合手として、−OBO−を含む環が形成されていてもよい。本発明に使用しうるボロン酸としては、例えば、メチルボロン酸、エチルボロン酸、シクロプロピルボロン酸、ブチルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸等のアルキルボロン酸類;ビニルボロン酸、1−プロペン−1−イルボロン酸、1−プロペン−2−イルボロン酸、1−ブテン−1−イルボロン酸、1−ブテン−2−イルボロン酸、2−ブテン−2−イルボロン酸、1−ペンテン−1−イルボロン酸、α−スチリルボロン酸、β−スチリルボロン酸、1,2−ジフェニルエテニルボロン酸、2,2−ジフェニルエテニルボロン酸、シクロペンテニルボロン酸、シクロヘキセニルボロン酸、2−メチルシクロヘキセニルボロン酸等のアルケニルボロン酸類;エチニルボロン酸、3−メトキシ−1−プロピン−1−イルボロン酸、シクロプロピルエチニルボロン酸、1−ペンチニルボロン酸、3,3−ジメチル−1−ブチン−1−イルボロン酸、2−フェニル−1−エチニルボロン酸、5−クロロ−1−ペンチニルボロン酸、2−(ジ−t−ブチルジメチルシラニル)−エチニルボロン酸等のアルキニルボロン酸類;アリールボロン酸としてはフェニルボロン酸が挙げられ、その他には2−メチルフェニルボロン酸、3−メチルフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸等のアルキルアリールボロン酸類;2−チエニルボロン酸、2−フリルボロン酸、2−ピリジルボロン酸等の複素環式基を有するボロン酸類;2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルボロン酸、2−フルオロフェニルボロン酸、3−フルオロフェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、2−クロロフェニルボロン酸、3−クロロフェニルボロン酸、4−クロロフェニルボロン酸、2−ブロモフェニルボロン酸、3−ブロモフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、2−ヨードフェニルボロン酸、3−ヨードフェニルボロン酸、4−ヨードフェニルボロン酸、2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、3,4−ジフルオロフェニルボロン酸、2,3−ジフルオロフェニルボロン酸、3,4、5−トリフルオロフェニルボロン酸、2、3,4−トリフルオロフェニルボロン酸、2,4,6−トリフルオロフェニルボロン酸等のハロゲン原子を有するアリールボロン酸類;2−シアノフェニルボロン酸、3−シアノフェニルボロン酸、4−シアノフェニルボロン酸等のシアノ基を有するアリールボロン酸類;4−メトキシフェニルボロン酸、4−t−ブトキシフェニルボロン酸等のアルコシアリールボロン酸類;1−ナフチルボロン酸、9−フェナントレンボロン酸、9−アントラセンボロン酸、フェロセニルボロン酸等の多環式アリールボロン酸類;2−ヒドロキシフェニルボロン酸、3−ヒドロキシフェニルボロン酸、4−ヒドロキシフェニルボロン酸等のヒドロキシアリールボロン酸類;4−アセチルフェニルボロン酸、4−ホルミルフェニルボロン酸等のカルボニル置換基を有するアリールボロン酸類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらボロン酸のエステル類( 例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ピナコールエステル等)なども同様に挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法は、塩基の存在(共存)下で反応を行うことが好ましい。反応には一般的な無機塩基、有機塩基のいずれも使用できるが、好ましい塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸カリウム(K
2CO
3)、炭酸セシウム(Cs
2CO
3)などの炭酸塩、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、例えば、リン酸ナトリウム(Na
3PO
4)、リン酸カリウム(K
3PO
4)などのリン酸塩、例えば、トリエチルアミン類、ピリジン、モルホリン、キノリン、ピペリジン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、アニリン類、テトラn−ブチルアンモニウムアセテートなどのアンモニウム塩などの有機塩などが挙げられる。このような塩基は、単独で用いてもよく、また、2種類以上併用して用いることもできる。
【0025】
本発明の製造方法には通常、溶媒が用いられ、好ましくは有機溶媒中で行なわれる。また水などの溶媒も用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒などが挙げられる。
【0026】
(その他の反応)
前記したカップリング反応の例示は、本発明の触媒が使用できるカップリング反応の種類を制限するものではなく、また、本発明の触媒が次に示す類似のカップリング反応で使用できることは当業者には明白である。
(a)有機スズ化合物と、離脱基としてハロゲンもしくは擬ハロゲンを有する炭素求電子体とのスティル-クロスカップリング;
(b)オルガノシランと、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのヒヤマ-クロスカップリング;
(c)有機亜鉛化合物と、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのネギシ-クロスカップリング;
(d)グリニャール化合物と、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのクマダ-クロスカップリング;
(e)末端アルキンと、アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物とのソノガシラ-クロスカップリング;
(f)エノレートおよび他の安定化されたカルバニオンのアリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物によるα-アリール化;
(g)アリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物のシアノ化;
(h)アリールもしくはヘテロアリールのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物のカルボニル化;
(i)アリール、ヘテロアリールもしくはビニルのハロゲン化物もしくは擬ハロゲン化物のオレフィンへのヘック-カップリングからなる群から選択される反応。
【実施例】
【0027】
全ての化学薬品は、販売供給元から試薬として購入し、特段の記載がない限り、更なる精製をせずに使用した。テトラヒドロフラン(THF)は、脱水溶剤を使用した。 プロトン(1H )NMR(核磁気共鳴スペクトル)は、JNM−ECS400(日本電子株式会社製)において、それぞれ400MHzで記録された。化学シフトは、デルタスケール(δ)で百万当たりの部(ppm)で示され、かつ1H NMRではテトラメチルシラン(δ=0ppm)が参照される。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、純度(%)はガスクロマトグラフィー分析での面積百分率値である。また、銅化合物の添加量については、ジアルキルホスフィナスクロライドに対するモル%を併せて示した。
【0028】
[実施例1]
ジ−t−ブチルクロチルホスフィンの製造
充分に窒素置換した1L容量の四頚フラスコに、テトラヒドロフラン70ml、トルエン140ml、ジ−t−ブチルホスフィナスクロライド53.1g(0.28mol)、および塩化銅(I)0.83g(0.0084mol(3モル%相当))を仕込んだ。そこへ、あらかじめ塩化クロチル27.9g(0.31mol)と金属マグネシウム15.0g(0.62mol)とより、テトラヒドロフラン327ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液を、10℃から20℃の温度を保ちながら2時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃から20℃の温度で3時間攪拌した。反応液を25℃にもどした後、ガスクロマトグラフィーにてジ−t−ブチルホスフィナスクロライドの消失を確認した。その後、反応液に3%硫酸水溶液62mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒を留去し、次いで蒸留を行い、1.1torr(146.63Pa)の減圧下において80℃で留出した留分を集めることにより、目的とするジ−t−ブチルクロチルホスフィン31.0g(純度97.0%)を粘稠油状物質として得た。収率54%。
【0029】
[実施例2]
ビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリドの製造
充分に窒素置換した200ml容量の四頚フラスコに、ヘキサン11mlと、ジ−t−ブチルクロチルホスフィン7.2g(0.036mol)とを仕込んだ。ここに、テトラクロロパラジウム酸(II)ナトリウムのメタノール溶液66.4g(0.018mol)を仕込み、10分間加熱還流した。次に、25℃に冷却後、濾過し、メタノール27mlで洗浄した。得られた固体を乾燥させ、目的とするビス(ジ−t−ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド9.8gを黄色固体として得た。収率94%。
【0030】
[実施例3]
ジ−t−ブチルクロチルホスホニウムテトラフルオロボレートの製造
充分に窒素置換した300ml容量の四頚フラスコに、ヘキサン15mlと、ジ−t−ブチルクロチルホスフィン4.0g(0.020mol)とを仕込んだ。そこへ40%ホウフッ化水素酸水溶液4.38g(0.021mol)を仕込み、25℃にて撹拌した。その後、得られた下層にトルエン30mlを仕込み、25℃にて撹拌後分液した。次に得られた下層に塩化メチレン30mlを仕込み、25℃にて撹拌した。得られた有機層を減圧下で溶媒を留去し、目的とするジ−t−ブチルクロチルホスホニウムテトラフルオロボレート5.4gを白色固体として得た。収率95%。
【0031】
[実施例4]
ジ-t-ブチルクロチルホスホニウムテトラフェニルボレートの製造
充分に窒素置換した100ml容量の四頚フラスコに、テトラヒドロフラン2.7mlと、トルエン5.5mlと、ジ-t-ブチルホスフィナスクロライド7.1g(0.039mol)と、塩化銅(I)0.12g(0.0012mol(3モル%相当))とを仕込んだ。そこへ、あらかじめ塩化クロチル3.9g(0.043mol)と金属マグネシウム2.1g(0.086mol)とより、テトラヒドロフラン41ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液を、30℃から45℃の温度を保ちながら20分間かけて滴下した。滴下終了後、30℃から40℃の温度で3時間攪拌した。反応液を25℃にもどした後、ガスクロマトグラフィーにてジ-t-ブチルホスフィナスクロライドの消失を確認した。その後、反応液に3%硫酸水溶液13mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗した。次に、10%硫酸水溶液54mlを加え30分撹拌後分液した。下層をトルエン10mlで洗浄後、ヘキサン15mlと20%苛性ソーダ水溶液20mlを加え30分撹拌し分液した。上層を水洗し、20%硫酸水溶液10.4g(0.021mol)を仕込み、25℃にて撹拌した。次に、20%苛性ソーダ水溶液4.0g(0.020mol)を仕込み、25℃にて撹拌した。さらに、18.7%ソディウムテトラフェニルボレート水溶液11.5g(0.021mol)を仕込み、25℃にて10分間撹拌した。次に、濾過し、脱イオン水255ml、メタノール142mlで洗浄した。得られた固体を乾燥させ、目的とするジ-t-ブチルクロチルホスホニウムテトラフェニルボレート8.4gを白色固体として得た。収率42%。
【0032】
[実施例5]
ビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリドの製造
充分に窒素置換した100ml容量の四頚フラスコに、テトラヒドロフラン5.3mlと、トルエン5.5mlと、ジ-t-ブチルホスフィナスクロライド9.5g(0.050mol)と、塩化銅(I)0.15g(0.0015mol(3モル%相当))とを仕込んだ。そこへ、あらかじめ塩化プレニル5.8g(0.055mol)と金属マグネシウム2.7g(0.11mol)とより、テトラヒドロフラン119ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液を、30℃から40℃の温度を保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃から40℃の温度で1時間攪拌した。反応液を25℃にもどした後、ガスクロマトグラフィーにてジ-t-ブチルホスフィナスクロライドの消失を確認した。その後、反応液に3%硫酸水溶液8mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗した。次に、10%硫酸水溶液56mlを加え30分撹拌後分液した。下層をトルエン6mlで洗浄後、ヘキサン29mlと20%苛性ソーダ水溶液20mlを加え30分撹拌し分液した。上層を水洗後、テトラクロロパラジウム酸(II)ナトリウムのメタノール溶液45.9g(0.012mol)を仕込み、10分間加熱還流した。次に、25℃に冷却後、濾過し、メタノール29mlで洗浄した。得られた固体を乾燥させ、目的とするビス(ジ−t−ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド6.1gを黄色固体として得た(収率41%)。
【0033】
[実施例6]
ビス(ジシクロヘキシルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリドの製造
ジ-t-ブチルホスフィナスクロライドの代わりにジシクロヘキシルホスフィナスクロライドを用いる以外は、実施例5と同様の方法にて反応を行った結果、目的とするビス(ジシクロヘキシルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド7.5gを黄色固体として得た(収率44%)。
[比較例1]
N,N’−ジフェニルフェニレンジアミンと2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼンからN,N’−ビス(1,3−ジメチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミンの合成
不活性ガス雰囲気下、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン(10mmol)、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン(22mmol)、パラジウムアセテート (0.1mmol)、ジ−t−ブチルフェニルホスフィン(0.2mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(30mmol)、およびo−キシレン(40mL)を130〜135℃にて6時間攪拌し、得られた反応混合物を、内部標準物質を使用しHPLCにて定量を行った結果、目的とするN,N’−ビス(1,3−ジメチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミンを収率46%で得た。(特許文献2の追試)
【0034】
[実施例7]
ジ−t−ブチルフェニルホスフィンとパラジウムアセテートの代わりにビス(ジ-t-ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.1mmol)を用いる以外は、比較例1と同条件にて反応を行った結果、目的とするN,N’−ビス(1,3−ジメチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミンの収率は82%であった。このように、本発明の製造方法は、比較例1(特許文献2の追試)の製造方法に比べ、高い収率で目的物を得ることができる。
【0035】
[比較例2]
N,N−ジフェニルアミンと2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼンから2,6−ジメチル−N,N−ジフェニルアニリンの合成
不活性ガス雰囲気下、N,N−ジフェニルアミン(2.0mmol)、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン(3.0mmol)、ビス(ジ-t-ブチルアリルホスフィン)パラジウムジクロリド (0.01mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(3.6mmol)、およびo−キシレン(4mL)を145℃にて6時間攪拌し、得られた反応混合物を、内部標準物質を使用しHPLCにて定量を行った結果、目的とする2,6−ジメチル−N,N−ジフェニルアニリンを収率29%で得た。
[実施例8]
ビス(ジ-t-ブチルアリルホスフィン)パラジウムジクロリドの代わりに、ビス(ジ-t-ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.01mmol)を用いる以外は、比較例2と同条件にて反応を行った結果、目的とする2,6−ジメチル−N,N−ジフェニルアニリンの収率は68%であった。このように、本発明の製造方法は、比較例2の製造方法に比べ、高い収率で目的物を得ることができる。
[比較例3]
2,4,6−トリメチルアニリンと1−ブロモ−2−クロロベンゼンから(N−クロロフェニル)−2,4,6−トリメチルアニリンの合成
不活性ガス雰囲気下、2,4,6−トリメチルアニリン(10.0mmol)、1−ブロモ−2−クロロベンゼン(10.0mmol)、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0.01mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(12.0mmol)、およびo−キシレン(20mL)を140℃にて6時間攪拌した。反応混合物のGC分析の結果、目的とする(N−クロロフェニル)−2,4,6−トリメチルアニリンを収率31%で得た。
[比較例4]
ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウムの代わりに塩化パラジウム(0.01mmol)、ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン(0.02mmol)を用いる以外は、比較例3と同条件にて反応を行った結果、目的とする(N−クロロフェニル)−2,4,6−トリメチルアニリンの収率は70%であった
[実施例9]
ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウムの代わりにビス(ジ-t-ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.01mmol)を用いる以外は、比較例3と同条件にて反応を行った結果、目的とする(N−クロロフェニル)−2,4,6−トリメチルアニリンの収率は94%であった。このように、本発明の製造方法は、比較例3、及び比較例4の製造方法に比べ、高い収率で目的物を得ることができる。
[比較例5]
2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼンと4−メチルフェニルボロン酸無水物から2,4’,6−トリメチルビフェニルの合成
不活性ガス雰囲気下、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン(10mmol)、4−メチルフェニルボロン酸無水物(5mmol)、塩化パラジウム(0.1mmol)、ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン(0.2mmol)、炭酸カリウム(20mmol)、1,4−ジオキサン(27mL)および水(3mL)を80℃にて5時間攪拌した。反応混合物のGC分析の結果、目的とする2,4’,6−トリメチルビフェニルを収率84%で得た。(非特許文献1の追試)
【0036】
[比較例6]
ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィンと塩化パラジウムの代わりにビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0.1mmol)を用いる以外は、比較例5と同条件にて反応を行った結果、目的とする2,4’,6−トリメチルビフェニルの収率は60%であった。
[実施例10]
ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィンと塩化パラジウムの代わりにビス(ジ-t-ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.1mmol)を用いて反応時間を3時間とする以外は、比較例5と同条件にて反応を行った結果、目的とする2,4’,6−トリメチルビフェニルの収率は91%であった。このように、本発明の製造方法は、比較例5(非特許文献1の追試)及び比較例6の製造方法に比べ、反応時間も短縮できて高い収率で目的物を得ることができる。
[実施例11]
ビス(ジ-t-ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリドの代わりにジ-t-ブチルクロチルホスホニウムテトラフルオロボレート(0.20mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0.10mmol)を用いる以外は、比較例5と同条件にて反応を行った結果、目的とする2−メトキシ−4’−メチルビフェニルの収率は92%であった。
【0037】
[比較例7]
2−クロロアニソールと4−メチルフェニルボロン酸無水物から2−メトキシ−4’−メチルビフェニルの合成
不活性ガス雰囲気下、2−クロロアニソール(10mmol)、4−メチルフェニルボロン酸無水物(7mmol)、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0.05mmol)、リン酸カリウム(15mmol)、1,4−ジオキサン(18mL)および水(2mL)を100℃にて2時間攪拌した。反応混合物のGC分析の結果、目的とする2−メトキシ−4’−メチルビフェニルを収率72%で得た。
[比較例8]
ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウムの代わりに、塩化パラジウム(0.05mmol)、ジ−t−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン(0.1mmol)を用いる以外は、比較例7と同条件にて反応を行った結果、目的とする2−メトキシ−4’−メチルビフェニルの収率は78%であった。
[比較例9]
ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウムの代わりに酢酸パラジウム(0.05mmol)、ジ-t-ブチル−n−ブチルホスフィン(0.10mmol)を用いる以外は、比較例7と同条件にて反応を行った結果、目的とする2−メトキシ−4’−メチルビフェニルの収率は75%であった。
[実施例12]
ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウムの代わりにビス(ジ-t-ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.05mmol)を用いる以外は、比較例7と同条件にて反応を行った結果、目的とする2−メトキシ−4’−メチルビフェニルの収率は93%であった。このように、本発明の製造方法は、比較例7〜9の製造方法に比べ、高い収率で目的物を得ることができる。
【0038】
[比較例10]
2−ブロモアニソールとビニルボロン酸無水物−ピリジン錯体から2−エテニルメトキシベンゼンの合成
不活性ガス雰囲気下、2−ブロモアニソール(10mmol)、ビニルボロン酸無水物−ピリジン錯体(4mmol)、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0.05mmol)、リン酸カリウム(15mmol)、1,4−ジオキサン(18mL)および水(2mL)を80℃にて6時間攪拌した。反応混合物のGC分析の結果、目的とする2−エテニルメトキシベンゼンを収率54%で得た。
[実施例13]
ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウムの代わりにビス(ジ-t-ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.05mmol)を用いる以外は、比較例10と同条件にて反応を行った結果、目的とする2−エテニルメトキシベンゼンの収率は87%あった。このように、本発明の製造方法は、比較例10の製造方法に比べ、高い収率で目的物を得ることができる。
【0039】
[比較例11]
1−ブロモ−3−クロロベンゼンとカルバゾールから9−(3−クロロフェニル)−9H−カルバゾールの合成
不活性ガス雰囲気下、カルバゾール(10mmol)、1−ブロモ−3−クロロベンゼン(11mmol)、ビス(ジ-t-ブチルフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド (0.3mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(15mmol)、およびo−キシレン(80mL)を135℃にて9時間攪拌し、得られた反応混合物を、内部標準物質を使用しGCにて定量を行った結果、目的とする9−(3−クロロフェニル)−9H−カルバゾールを収率67%で得た。
[実施例14]
ビス(ジ-t-ブチルフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドの代わりに、ビス(ジ-t-ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.3mmol)を用いる以外は、比較例11と同条件にて反応を行った結果、目的とする9−(3−クロロフェニル)−9H−カルバゾールの収率は95%であった。このように、本発明の製造方法は、比較例11の製造方法に比べ、高い収率で目的物を得ることができる。
[実施例15]
2−クロロトルエンとモルホリンから4−トリルモルホリンの合成
不活性ガス雰囲気下、2−クロロトルエン(10mmol)、モルホリン(12mmol)、ビス(ジ-t-ブチルクロチルホスフィン)パラジウムジクロリド (0.01mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(12mmol)、およびo−キシレン(20mL)を135℃にて6時間攪拌し、得られた反応混合物のGC分析の結果、目的とする4−トリルモルホリンを収率58%で得た。
[実施例16]
4−クロロベンゾニトリルと4−メチルフェニルボロン酸無水物から4’−メチルビフェニル−4−カルボニトリルの合成
不活性ガス雰囲気下、4−クロロベンゾニトリル(10mmol)、4−メチルフェニルボロン酸無水物(7mmol)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0.5mmol)、ジ−t−ブチルクロチルホスフィン(1.0mmol)、リン酸カリウム(15mmol)、1,4−ジオキサン(18mL)および水(2mL)を80℃にて6時間攪拌した。反応混合物のGC分析の結果、目的とする4’−メチルビフェニル−4−カルボニトリルを収率88%で得た。