特許第5688001号(P5688001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688001
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】遠心分離装置
(51)【国際特許分類】
   B04B 11/04 20060101AFI20150305BHJP
   B04B 5/02 20060101ALI20150305BHJP
   B04B 13/00 20060101ALI20150305BHJP
   B04B 15/02 20060101ALI20150305BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B04B11/04
   B04B5/02 Z
   B04B13/00
   B04B15/02
   B04B5/02 A
   G01N1/10 H
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-268607(P2011-268607)
(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2013-119070(P2013-119070A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2011年12月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、内閣府最先端研究開発支援プログラムの研究課題「再生医療産業化に向けたシステムインテグレーション−臓器ファクトリーの創生−」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡野 光夫
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰三
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−002884(JP,A)
【文献】 特開昭56−021656(JP,A)
【文献】 特開2009−268825(JP,A)
【文献】 特開2010−038876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00−15/12
G01N 1/00−1/34
A01N 1/00−1/02
A61M 1/00−1/02
C12N 1/00−1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が外部と隔離された容器を回転させて該容器の内部に収納された試料用液体を沈殿または分離する遠心分離装置において、
前記容器の内部に取り付けられ前記試料用液体を前記容器の内部に導入、あるいは該試料用液体を前記容器の外部へ吸出するピペットと、
前記ピペットに連接され、前記ピペットへ前記試料用液体を供給、あるいは前記試料用液体を前記ピペットの外部に送出する可撓性チューブと、
前記容器を載置し回転により前記容器に遠心力を付与するべく、前記容器を第1回転軸に対して公転させる回転体と、
前記容器の内壁面と前記ピペットの先端との相対位置を調整するピペット先端移動手段と、
前記容器の一部と連接された前記ピペット先端移動手段を、前記遠心分離装置のケーシングに連結し、前記容器に回転時の支点を与える連結部と、を有し、
前記連結部は
記ケーシングに取り付けられた前記第1回転軸と
記ピペット先端移動手段に取り付けられた、前記容器の自転軸である第2回転軸それぞれ接合可能な継手とを備え、
前記回転体が前記第1回転軸に対して前記容器を公転させることに伴って生じる、前記容器の自転による前記可撓性チューブの捻じれを戻すように、前記容器の自転方向と反対方向に前記第2回転軸を回転させる自転抑制機能を有することを特徴とする遠心分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心分離装置において、
前記連結部は、ユニバーサルジョイントで構成されることを特徴とする遠心分離装置。
【請求項3】
請求項1に記載の遠心分離装置において、
前記容器は、前記試料用液体から分離された細胞の培養を行う際に、培養する細胞を付着するための平坦形状を有する部位と、前記試料用液体を吸引する際に、前記試料用液体の回収に供する培地回収部位と、を有することを特徴とする遠心分離装置。
【請求項4】
請求項に記載の遠心分離装置において、
前記培地回収部位は、前記平坦形状を有する部位を構成する前記容器の側面の一端と、該一端と接する前記容器の底面の一端とにより形成されるコーナー部位であることを特徴とする遠心分離装置。
【請求項5】
請求項1に記載の遠心分離装置において、
前記ピペット先端移動手段は、前記回転体に取り付けられたスリップリングを介して電気ケーブルと電気的に接する手段により、前記ピペット先端の上下動に必要な電気エネルギーの供給を受けることを特徴とする遠心分離装置。
【請求項6】
請求項1に記載の遠心分離装置において、
前記連結部の前記第1回転軸と前記可撓性チューブとを仕切るように前記ケーシングに取り付けられた、前記可撓性チューブより高い剛性を有する部材を配置したことを特徴とする遠心分離装置。
【請求項7】
請求項1に記載の遠心分離装置において、
前記回転体に回転力を供給するモータの回転位置を検出するエンコーダおよび前記回転体の回転停止位置を制御する回転停止位置制御手段とを有し、
前記回転停止位置制御手段は、前記容器の回転停止位置を前記エンコーダの出力があらかじめ定められた静止位置になるように制御することを特徴とする遠心分離装置。
【請求項8】
請求項1に記載の遠心分離装置において、
少なくとも前記容器を所定の温度に保持する温度制御手段を、さらに有することを特徴とする遠心分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を高速で回転させて内部の試料を沈殿または分離する遠心分離装置に係り、特に、容器内部を外部から隔離した状態のまま試料導入が可能な遠心分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を体外で増幅培養して組織や臓器を作り、医療に適用する再生医療が近年注目されている。再生医療で用いられる細胞の多くは、培養容器に付着して増殖する接着性細胞である。一般的に、接着性細胞を培養すると、次第に容器内で増殖する余地が無くなり、増殖できなくなる。このため、細胞が容器内いっぱいになった時に、細胞をはがして希釈し、細胞懸濁液を新しい容器に播きなおす操作が必要となる。この操作を継代と呼ぶ。
【0003】
遠心分離は沈殿、分離のために広く用いられる装置であるが、細胞培養では主に継代操作に用いられる。細胞をはがして、希釈した後、遠心分離装置を用いて細胞と上澄を分離することで、夾雑物の排除、細胞をはがすための酵素の除去、培地の効率的な交換が可能となる。
【0004】
遠心分離を行う際は、培養容器から遠沈管へ細胞懸濁液を移すために蓋を開ける必要があった。外部の細菌類に汚染されるリスクを減らすために、蓋を開ける場合は出来るだけ滅菌しておくことが求められるため、滅菌作業に伴う設備の複雑化や作業時間の増加を招いていた。しかし、蓋を開けることなしに遠心分離を行なえれば、滅菌環境を維持するための装置を簡略化することが出来るため、培養装置のコスト低減に役立つ。このような考え方により、閉鎖系のまま遠心分離を行う方法が特許文献1に開示されている。この方法は、遠沈管に培地を供給、排出するためのピペットを有し、遠沈管の自転を静止するための機構をとりつけたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−268825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている方法は、送液チューブを付けたまま遠心分離を行っても送液チューブがよじれないことを目的としたものである。しかし、送液チューブを積極的に動作させる方法について考慮されてはいない。
【0007】
一般的に、遠心分離後の上清を効率的に取り除くためにはピペットを出来るだけ底部に差し込むことが望ましいが、深すぎると上清吸引時に細胞も同時に吸引するおそれがある。また逆にピペットを遠沈管底部から離して配置すると、上清液の排出効率が悪化する。
【0008】
本発明では、回転体にピペットの上下動機構を構築してピペットの差し込み深さを変え、細胞を外気に触れさせることなく効率的な遠心分離を実現できる遠心分離手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記発明の目的を達せするために、本発明になる遠心分離装置の主な特徴は以下の通りである。
【0010】
内部が外部と隔離された容器を回転させて該容器の内部に収納された試料用液体を沈殿または分離する遠心分離装置において、容器の内部に取り付けられ試料用液体を容器の内部に導入、あるいは該試料用液体を容器の外部へ吸出するピペットと、容器の外部に取り付けられ、ピペット内の試料用液体を容器の外部に送出する可撓性チューブと、容器を載置し回転により容器に遠心力を付与する回転体と、回転体に載置された容器に回転時の支点を与える連結部とを有し、連結部は、容器を回転する際に容器の中心軸回りの自転を抑制する自転抑制手段と、容器の内壁面とピペットの先端との相対位置を調整するピペット先端移動手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
また、内部が外部と隔離された容器を回転させて該容器の内部に収納された試料用液体を沈殿または分離する遠心分離装置において、容器の内部に取り付けられ試料用液体を前記容器の内部に導入、あるいは該試料用液体を容器の外部へ吸出するピペットと、容器の外部に取り付けられ、ピペット内の試料用液体を容器の外部に送出する可撓性チューブと、回転により容器に遠心力を付与する回転部と、回転部とヒンジで接続された容器を支持する容器支持部と、容器支持部の先端近傍に取り付けられ容器の回転に供する転輪と、転輪を支えるとともに転輪の回転軌道を備える転輪支持板と、容器に回転時の支点を与える連結部と、転輪支持板を上下動することによりヒンジを支点として容器支持部を上下に移動する上下動機構と、連結部に、容器を回転する際に容器の中心軸回りの自転を抑制する自転抑制手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠沈管にチューブや電線などの付帯物を付けたまま回転させても付帯物がよじれることがないため、遠心分離を行う際に蓋の開閉なしに、チューブによる送液により遠心分離装置への細胞懸濁液移送が可能である。
【0013】
このことにより、細胞培養装置の外部環境を滅菌するための装置を簡略化でき、培養コストを低減出来るという効果がある。
【0014】
また、ピペット先端を遠沈管の最下部に近づけるとともに、遠心分離中はピペット先端が細胞沈殿の邪魔にならないように、出来るだけ遠沈管の再下部から離すことが出来る。
【0015】
このように、チューブの切断や繋ぎ換えの必要ない培養装置の構築が容易になる。したがって、細胞培養装置の自動化が実現しやすいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ユニバーサルジョイントを用いた遠心分離装置の一実施例を示す図である。
図2】ピペット移動機構の一実施例を示す図である。
図3】ピペット移動機構への電力供給方法の一実施例を示す図である。
図4】培養容器による遠心機構の一実施例を示す図である。
図5】培養容器の一実施例を示す図である。
図6】培養容器の別の実施例を示す図である。
図7】転輪の構成図である。
図8】中空円板ガイドの概要図である。
図9】遠心機構に使用する遠沈管の別の実施例を示す図である。
図10】遠心分離装置10の動作を表すフローチャートの一実施例を示す図である。
図11】遠心分離装置10の動作を表すフローチャートの一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
汚染リスクが少なく、自動化が容易な自動培養装置を構築するという目的を実現するため、前記目的に好適な遠心分離装置を実現した。
【0018】
図1は、ユニバーサルジョイントを用いた本発明による遠心分離装置の一実施例である。
ここで、10は遠心分離装置であり、11は回転運動を発生するモータである。12は遠心分離装置10において細胞懸濁液が導入される遠沈管である。13はピペットであり、14はピペット13に取り付けられる送液チューブである。送液チューブは、自在に撓むことができるフレキシブルな材質で構成された可撓性を有するチューブである。ピペット13は遠沈管12に取り付けられており、ピペット13により遠沈管12に細胞懸濁液を導入または吸出する。15はピペット移動機構であり、遠沈管12に取り付けられる。ピペット移動機構15は遠沈管12とピペット13の相対位置を変える機構を有する。16は電気ケーブルであり、ピペット移動機構15に移動時に必要となる電気エネルギーを供給する。
【0019】
一般的に、送液チューブ14をとりつけたままモータ11による回転運動を与えると、遠沈管12は遠心力により回転腕17に押しつけられるため、摩擦力により回転腕17と一体となって回転する傾向があり、それに伴って遠沈管12自身は自転することになり、送液チューブ14にねじれが生じやすい。そのため、遠沈管12の自転を抑制する手段が必要となる。18はユニバーサルジョイントであり、本発明はユニバーサルジョイント18により前記の課題を解消する。ユニバーサルジョイント18はモータ11の回転軸上に配置されており、遠心分離装置10のケーシングに固定される。このことにより、ピペット移動機構15、遠沈管12はモータ11の回転軸周りには回転できるものの、自転軸は拘束されることになる。このため送液チューブ14や電気ケーブル16のねじれは抑制される。
【0020】
19は押さえ板であり、回転腕17の回転時に送液チューブ14や電気ケーブル16がユニバーサルジョイント18に絡みつかないように設けたものである。この目的のため、押さえ板19の素材としては、送液チューブ14より変形しにくい材料、例えば、剛性の高い材料を用いる。また、20はカウンターウェイトであり、遠心分離時の振動発生をなくすために設けたものである。
【0021】
なお、本図で図示するように、遠心分離装置10のケーシングは、ペルチェ素子や熱交換機によって実現されるヒータやクーラなどの温度調節装置を備えていてもよい。これにより、細胞に好適な温度を維持したまま細胞の操作が可能となる。
【0022】
図2はピペット移動機構の実施例について説明した図である。
21は遠沈管の蓋であり、遠沈管12にねじ結合または摩擦結合される。遠沈管蓋21の中央部には摺動シール22が設けられており、摺動シール22にピペット13が貫通する。ピペット13は摺動シール22に接触しながら遠沈管12内を上下動することが出来る。なお、遠沈管12内部の細胞懸濁液は摺動シール22によりシールされており、外部に漏れ出すことはない。
【0023】
遠沈管蓋21は気体透過膜を一部に有することが望ましい。このことにより、細胞懸濁液導入時に液量と同体積の空気を遠沈管12の外部に逃がすことが可能となり、遠沈管12内の圧力をほぼ一定に保つことが出来る。本図では簡単のため気体透過膜は図示していない。
【0024】
23はベローズであり、例えばフッ素樹脂やシリコンで形成される。ベローズ23の底部は遠沈管の蓋21に、また、ベローズ23の上部はピペット13に設けられたベローズ止め24に結合されており、ピペット13のうち、ベローズ23の内側にある部分が外部に露出することは無いようになっている。遠沈管12、ピペット13、送液チューブ14、遠沈管蓋21、摺動シール22、ベローズ23は組み立てられた状態でγ線滅菌もしくは紫外線滅菌され、遠心分離装置使用者によってピペット移動機構15に組み付けられる。
【0025】
25はソレノイド、26はピペット上下動リンクであり、いずれもピペット移動機構15内に配置される。ソレノイド25は電気ケーブル16(ここでは図示せず)により電力の供給を受け、ピペット上下動リンク26を動作させる。ピペット上下動リンク25はピペット13の突出部27にはめ込まれ、ソレノイド25の動作をピペット13に伝達する。
【0026】
図3はピペット移動機構15への電力供給方法の別の実施例である。ここで、30は回転腕17上に設けられたプリント配線である。31はスリップリング、32はブラシである。プリント配線30はスリップリング32と電気的に結合されており、スリップリング31はブラシ32と接触しながら回転する。ブラシ32は電気ケーブル16と電気的に結合されている。これにより、電気ケーブル16により供給された電気エネルギーはブラシ32、スリップリング31、プリント配線30を介して、ピペット移動機構15に供給される。このような構成にすることにより、回転腕17の回転により電気ケーブル16が激しく移動することがなくなり、結果として遠心分離装置の寿命を延ばす効果を持つ。
【0027】
図4は培養容器による遠心機構の別の実施例である。41は培養容器であり、本実施例では培養容器41を回転させることによって、培養容器41から遠沈管12への送液工程をなくしたことが特徴である。なお、本図ではカウンターウェイトの図示を省略した。
【0028】
42は容器支持腕であり、回転腕17に取り付けられる。なお、容器支持腕42と回転腕17とのなす角は可変となるように、ヒンジなどにより結合される。培養容器41は容器支持腕42上に固定される。43は転輪であり、培養容器41と容器支持腕42の外周部に取り付けられる車輪状機構である。転輪43の構成については後述する。44は中空円板ガイドであり、この上を転輪43が接触しながら移動する。このことにより、培養容器はモータ11の回転軸周りに公転することが出来る。
【0029】
45は中空円板ガイド44を上下に可動するアクチュエータ、46はエンコーダ、47は回転停止位置制御手段である。ピペット13を回転軸と見た場合の回転方向をロール角、回転腕17と容器支持腕42との相対回転方向をピッチ角と定義した場合、本図の構成では、モータ11による回転により培養容器41のロール角が変化する。培養容器41の培養面を水平にするためには、モータ11の回転角を把握し、培養時には所定の位置にする必要がある。回転停止位置制御手段47はモータの停止位置を常に同一箇所とし、ロール角を0にして培養容器を停止させる。回転停止位置制御手段47はエンコーダ46の信号を取得してモータ11の回転角を把握し、モータ11の位置制御を行う。これにより培養容器のまま遠心分離することが出来るようになる。エンコーダ46は絶対角を測定できるアブソリュート型や、一回転につき1回以上基準位置信号(Z信号)を発生できるものを用いる。
【0030】
アクチュエータ45が上昇しているときは、培養容器41は水平方向に配置され、細胞培養に好適な位置となる。一方、アクチュエータ45が下降しているときは、培養容器41はピッチ方向に回転して、ピペット先端が培養容器41の最深部に近づく。本実施例ではこのように、アクチュエータにより培養容器41を傾けることによりピペット13先端部の位置を移動している。
【0031】
なお、図1で示したように、遠心分離装置のケーシングは、ペルチェ素子や熱交換機によって実現されるヒータやクーラなどの温度調節装置(図示せず)を備えていてもよい。これにより、細胞に好適な温度を維持したまま細胞の操作が可能となる。
【0032】
図5は培養容器41の形状を示す図である。図5(a)は全体形状を示す図、図5(b)は吸引時の状態を示す図、図5(c)は静置培養時の状態を示す図である。培養容器41の形状はピペット13先端部の培養容器41からの高さをピッチ角により変化するようになっている。51は接着性細胞が付着する平坦形状であり、52は培地回収部位である。吸引時のピペット13先端部と容器最下部との距離をh1、静置培養時のピペット13先端部と容器最下部との距離をh2とすると、培養容器41が傾くことによってh1とh2の大きさは変化する。このことにより、吸引時にはよりピペット13の先端部を容器最下部とを近づけることが出来、上清の吸い残しを少なくできるという効果がある。
【0033】
なお、図5(a)に示す培養容器41は蓋を2個有している。これは、一方は気体の送受用、もう一方は液体の送受用として設けられたものである。このことにより、培養に必要な空気や培地を細胞の生育に合わせて調整することが可能になる。また、別の実施例として、蓋を1個とし、外部と気体を交換できる空気透過膜を有する培養容器41の構成としても良い。
【0034】
図6は培養容器41の別の形態を示す図である。図6(a)は吸引時の状態を示す図であり、図6(b)は遠心・静置培養時の状態を示す図である。
【0035】
ピペット13は平坦形状51と角度を持って配置されている。52は培地回収部位であり、53は遠心時細胞集積部位である。図6(a)の状態では、非回転時には重力は鉛直方向に働くため、培地は培地回収部位52に集まる。一方、回転時には遠心力により図6(b)の状態となる。この時、細胞は重力と遠心力の合力を受けて遠心時細胞集積部位53に集まる。したがって、本構成によれば上清吸引時に細胞の集積場所とは異なる場所にピペット13の先端が配置されるため、上清吸引時に吸う細胞の個数が少なく、培養効率上都合が良い。なお、細胞培養時には図6(b)の状態とし、平坦部に接着性細胞を付着させて細胞培養する。
【0036】
図7は転輪43の構成図である。61は培養容器41と容器支持腕42を保持する内輪、62は中空円板ガイド44に接触しながら回転する外輪である。63はベアリングであり、内輪61と外輪62の間に配置される。これにより、内輪61と外輪62とは互いに回転可能となる。
【0037】
図8は中空円板ガイド44部分の全体図である。中空円板ガイド44はモータ11が配置される中央部分がくりぬかれた円板形状をしており、中空円板ガイド44上を転輪43が接触及び回転しながら同心円状に移動する。中空円板ガイド44にはアクチュエータ45が取り付けられており、中空円板ガイド44の水平面を維持しながら中空円板ガイド44を上下動させる。このことにより、容器支持腕42にピッチ角を発生させることが出来、培養、遠心、吸引の各工程においてピッチ角を制御することが可能になる。
【0038】
図9は遠心機構に使用する遠沈管の別の実施例である。ここで、71は細胞懸濁液用ピペット、72は上清用ピペットである。細胞懸濁液用ピペット71と上清用ピペット72はピペット先端深さが異なるように遠沈管蓋21に固定されている。細胞懸濁液用ピペット71はピペッティングを行ったり、細胞を全て抜き取ったりする際に用いるピペットであり、上清用ピペット72は上清を抜き取る際に使用するピペットである。このように深さを違えて配置することにより、上清抜き取り時に細胞を取り去ってしまうリスクを低減し、かつ、ロスなく細胞を抜き取ったりすることが可能となり、本発明で意図した効果を期待できる。
【0039】
図10図1における遠心分離装置10の動作をフローチャートで示したものである。最初に遠心分離装置10内に細胞懸濁液を導入する際ピペットを上昇させるが、これは気泡発生を抑えるためである。ピペットを下降したまま細胞懸濁液を導入した場合、もしチューブ内に空気が混入していた場合には細胞懸濁液内にそのチューブ内の空気が気泡として入るおそれがある。一般的に気泡ははじける際に細胞に物理的ダメージを与えると言われており、本発明はその悪影響を考慮したものである。
【0040】
上清吸い出し時には細胞を吸い出さない程度にピペットを出来るだけ下降させる。細胞濃度が分かっていれば、沈殿の量も推測することが出来るため、下降量をあらかじめ設定しておくことも可能である。もちろん、上位コントローラ(図示せず)から細胞濃度を受け取り、下降量を逐次演算する構成としても差し支えない。
【0041】
また、図中「ピペッティング」とは、液を少量吸い吐きを繰り返して細胞懸濁液をつくる作業を指す。このシーケンスにより、死細胞やデブリ(ごみ)の除去、細胞懸濁液の濃縮、細胞の洗浄を行うことが出来る。
【0042】
図11図4における遠心分離装置10の動作をフローチャートで示したものである。図4は培養と遠心分離を同一容器で行なうものである。培養して、PBS(生理食塩水)で洗浄し、トリプシン(消化酵素の一つ)で剥がして細胞懸濁液を作製した後は、図10と同様のシーケンスとなる。
【0043】
以下に、本件発明の上記実施形態から把握できる請求項以外の遠心分離装置に係る技術思想を記載する。
(1)内部が外部と隔離された容器を回転させて該容器の内部に収納された試料用液体を沈殿または分離する遠心分離装置において、
前記容器の内部に取り付けられ前記試料用液体を前記容器の内部に導入、あるいは該試料用液体を前記容器の外部へ吸出するピペットと、
前記容器の外部に取り付けられ、前記ピペット内の前記試料用液体を前記容器の外部に送出する可撓性チューブと、
回転により前記容器に遠心力を付与する回転部と、
前記回転部とヒンジで接続された前記容器を支持する容器支持部と、
前記容器支持部の先端近傍に取り付けられ前記容器の回転に供する転輪と、
前記転輪を支えるとともに前記転輪の回転軌道を備える転輪支持板と、
前記容器に回転時の支点を与える連結部と、
前記転輪支持板を上下動することにより前記ヒンジを支点として前記容器支持部を上下に移動する上下動機構と、
前記連結部に、前記容器を回転する際に前記容器の中心軸回りの自転を抑制する自転抑制手段を有し、
前記容器の底面の一端と該一端と接する一側面がなす第1の角度が、前記底面の他端と該他端と接する他側面がなす第2の角度に比して鋭角をなし、前記ピペットの先端が前記第2の角度側の底面に配置されていることを特徴とする遠心分離装置。
(2)上記(1)において、前記容器の底部と前記ピペットの先端部との距離が異なる少なくとも二種類の前記ピペットが前記容器の内部に装着されていることを特徴とする遠心分離装置。
(3)上記(2)において、前記二種類のピペットは、吸出する対象物に応じて使い分けることを特徴とする遠心分離装置。
【符号の説明】
【0044】
10…遠心分離装置、
11…モータ、
12…遠沈管、
13…ピペット、
14…送液チューブ、
15…ピペット移動機構、
16…電気ケーブル、
17…回転腕、
18…ユニバーサルジョイント、
19…押さえ板、
20…カウンターウェイト、
21…遠沈管蓋、
22…摺動シール、
23…ベローズ、
24…ベローズ止め、
25…ソレノイド、
26…ピペット上下動リンク、
27…突出部、
30…プリント配線、
31…スリップリング、
32…ブラシ、
41…培養容器、
42…容器支持腕、
43…転輪、
44…中空円板ガイド、
45…アクチュエータ、
46…エンコーダ、
47…回転停止位置制御手段、
51…平坦形状、
52…培地回収部位、
53…遠心時細胞集積部位、
61…内輪、
62…外輪、
63…ベアリング、
71…細胞懸濁液用ピペット、
72…上清用ピペット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11