特許第5688077号(P5688077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5688077接着剤用樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着性シートおよびこれを接着剤層として含むプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688077
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】接着剤用樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着性シートおよびこれを接着剤層として含むプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20150305BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20150305BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20150305BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150305BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20150305BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20150305BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J167/00
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09J175/06
   C09J7/00
   H05K1/03 650
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-510658(P2012-510658)
(86)(22)【出願日】2011年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2011059067
(87)【国際公開番号】WO2011129323
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-92937(P2010-92937)
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 武
(72)【発明者】
【氏名】南原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】麻田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】谷川 優人
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】釼持 洋一
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/038733(WO,A1)
【文献】 特許第4978753(JP,B2)
【文献】 特開2010−84005(JP,A)
【文献】 特開2005−60607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を含有し、酸価(単位:当量/10g)が100以上1000以下であり、数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、ガラス転移温度が30℃以上80℃以下であるポリウレタン樹脂(a−1)、
数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、ガラス転移温度が0℃以下であるポリエステル樹脂(a−2)、
窒素原子を含有するエポキシ樹脂(b)、
ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(c)、
からなり、
前記ポリウレタン樹脂(a−1)と前記ポリエステル樹脂(a−2)の合計に対する前記ポリウレタン樹脂(a−1)の含有率が70質量%以上95質量%以下であり、
前記ポリウレタン樹脂(a−1)と前記ポリエステル樹脂(a−2)の合計に対する樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の含有率が5質量%以上30質量%以下であり、
前記エポキシ樹脂(b)の配合比率が、樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の0.1質量%以上20質量%以下である、
接着剤用樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(b)がグリシジルジアミン構造を有する、請求項1記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(c)の配合比率が、樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の60質量%以上99.9質量%以下である、請求項1に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(a−1)が、
ポリエステルポリオール(d)、
1つのカルボン酸基と2つの水酸基を有する化合物(e)、
ポリイソシアネート(f)
の反応によって得られるものである、請求項1に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに有機溶剤を含有する請求項1に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤用樹脂組成物を含有する接着剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤用樹脂組成物を含有する接着性シート。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤用樹脂組成物を用いてなる接着剤層を含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種プラスチックフィルムへの接着性、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属への接着性、ガラスエポキシへの接着性、耐熱性、耐湿性、シートライフなどに優れた樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着性シートおよびこれを接着剤層として含むプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で接着剤は使用されているが使用目的の多様化により、従来使用されてきた接着剤よりも各種プラスチックフィルムへの接着性、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属への接着性、ガラスエポキシへの接着性、耐熱性、耐湿性、シートライフなど、更なる高性能化が求められている。たとえば、フレキシブルプリント配線板(以下FPCと略すことがある)をはじめとする回路基板用の接着剤には接着性、加工性、電気特性、保存性が求められる。従来、この用途には、エポキシ/アクリルブタジエン系接着剤、エポキシ/ポリビニルブチラール系接着剤などが使用されている。
【0003】
特に最近の配線の高密度化、フレキシブルプリント配線板の多層化に伴い、高温高湿度下での接着性の向上が強く求められている。従来のエポキシ/アクリルブタジエン系接着剤、エポキシ/ポリビニルブチラール系接着剤では、特に、高温高湿度下での接着性、加工性が不良で、また、金属、プラスチックフィルムの接着性も十分ではなかった。また常温でも流通できるような安定したシートライフの確保はできていなかった。
【0004】
これらの課題に対し、特定のポリエステル・ポリウレタンとエポキシ樹脂を主成分とする接着剤用樹脂組成物が、たとえば特開平11―116930号公報(特許文献1)、特開2008−205370号公報(特許文献2)、特開2007−204715号公報(特許文献3)などに提案されている。しかしながら、特許文献1に示されている組成物では高温下での接着性の向上は認められるものの、高温且つ高湿度下での接着性は不十分であった。また特許文献1に示されている組成物では、ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基とエポキシ基の反応は常温でも徐々に進行するため、シートライフが短いとの問題があった。また、特許文献2に示されている組成物では、高温下および高湿度下での接着性、プラスチックフィルムを補強板に用いた際の耐加湿半田性は向上可能であるものの、金属を補強板に用いた際の耐加湿半田性を十分に満足するものではなかった。また、特許文献2に示されている組成物では、常温保管後および40℃保管後の耐加湿半田性、高温且つ高湿度下での接着性が著しく低下するものであり、安定したシートライフが確保できていなかった。また、特許文献3ではポリウレタン樹脂のガラス転移温度を上げて、高温下での接着性とシートライフの改善に成功している。しかしながら、ガラス転移温度を上げることは必然的に接着剤層の柔軟性の低下を伴い、フレキシブルプリント配線板の製造工程において、接着性シートを裁断・打ち抜きする際、ならびに、離型フィルムから剥す際に接着性シートに割れ、剥がれが発生し、加工適性が不十分であるという欠点がある。また、特許文献3に示された組成物は、高温且つ高湿度下での接着性についても不十分であった。
【0005】
一方、ガラス転移温度の異なる2種のポリエステル樹脂が配合された接着剤組成物が特開2008−019375号公報(特許文献4)、特開2009−084348号公報(特許文献5)に開示されている。これらの接着剤組成物では、ガラス転移温度の高いポリエステル樹脂とガラス転移温度の低いポリエステル樹脂を配合することにより、室温での加工適性は改善されるが、一般的な接着性シートの保管温度である5℃以下の条件では柔軟性が低く、低温下での加工性については満足のいくものではなかった。また、ポリエステル樹脂はポリウレタン樹脂に比べ、凝集力が低いため、接着性、耐熱性に劣り、加えてプレス加工時の流れ出し量も大きくなり、基材を汚染するという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11―116930号公報
【特許文献2】特開2008−205370号公報
【特許文献3】特開2007−204715号公報
【特許文献4】特開2008−019375号公報
【特許文献5】特開2009−084348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題はこれら従来の接着剤が抱えている各問題点を改良することであり、各種プラスチックフィルム、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属、ガラスエポキシへの接着性を維持しつつ、高湿度下での鉛フリーハンダにも対応できる高度の耐湿熱性、高温高湿度下での接着性に優れ、使用時の加工適性に優れた接着剤を提供すること、さらには前記接着剤から得た接着性シートがたとえ高温高湿下で流通された後に使用されても良好な接着特性の維持が可能なシートライフの長い接着性シートを提供すること、にある。また、前記接着剤または接着性シートから得られた接着剤層を含むプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成からなる。
【0009】
本発明の接着剤用樹脂組成物は、カルボキシル基を含有し、酸価(単位:当量/10g)が100以上1000以下であり、数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、ガラス転移温度が30℃以上80℃以下であるポリウレタン樹脂(a−1)、数平均分子量が5.0×10以上1.0×10以下であり、ガラス転移温度が0℃以下であるポリエステル樹脂(a−2)、窒素原子を含有するエポキシ樹脂(b)、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(c)、からなり、前記ポリウレタン樹脂(a−1)と前記ポリエステル樹脂(a−2)の合計に対する前記ポリウレタン樹脂(a−1)の含有率が70質量%以上95質量%以下であり、前記ポリウレタン樹脂(a−1)と前記ポリエステル樹脂(a−2)の合計に対する樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の含有率が5質量%以上30質量%以下であり、前記エポキシ樹脂(b)の配合比率が、樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の0.1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする(以下、単に「樹脂組成物」と呼称することがある)。
【0010】
本発明の接着剤用樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(b)はグリシジルジアミン構造を有することが好ましい。
【0011】
本発明の接着剤用樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(c)の配合比率は、樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の60質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の接着剤用樹脂組成物において、前記ポリウレタン樹脂(a−1)は、ポリエステルポリオール(d)、1つのカルボン酸基と2つの水酸基を有する化合物(e)、ポリイソシアネート(f)の反応によって得られるものであることが好ましい。
【0013】
本発明の接着剤用樹脂組成物は、さらに有機溶剤を含有することが好ましい。
本発明は、上述した本発明の樹脂組成物を含有する接着剤についても提供する。
【0014】
本発明は、上述した本発明の樹脂組成物を含有する接着性シートについても提供する。
本発明は、上述した本発明の樹脂組成物を用いてなる接着剤層を含むプリント配線板についても提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、各種プラスチックフィルムへの接着性、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属への接着性、ガラスエポキシへの接着性、高温高湿度下での接着性に優れ、製造時の加工適性に優れた接着剤を得ることができ、かつ接着性シートのシートライフが良好な樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着性シートおよびこれを接着剤層として含むプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の接着剤用樹脂組成物は、特定のポリウレタン樹脂(a−1)、特定のポリエステル樹脂(a−2)、特定のエポキシ樹脂(b)、特定のエポキシ樹脂(c)からなり、さらに有機溶剤を含有していても良い。
【0017】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(a−1)の数平均分子量は、5.0×10以上1.0×10である。ポリウレタン樹脂(a−1)の数平均分子量が5.0×10未満だと塗布直後の密着性が不充分で作業性が悪くなり、また、可とう性が低下し、接着性が低下する傾向にある。ポリウレタン樹脂(a−1)の数平均分子量が1.0×10を超えると、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られないことがある。ポリウレタン樹脂(a−1)の数平均分子量の下限値は、好ましくは8.0×10であり、さらに好ましくは1.0×10である。また、ポリウレタン樹脂(a−1)の数平均分子量の上限値は、好ましくは5.0×10、さらに好ましくは3.5×10である。
【0018】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(a−1)の酸価(単位:当量/10g)は100以上1000以下である。ポリウレタン樹脂(a−1)の酸価が100当量/10g未満だと、金属製基材への密着性が不充分になる傾向にある。また、エポキシ樹脂との架橋が不十分であり、耐熱性が低下する傾向にある。ポリウレタン樹脂(a−1)の酸価が1000当量/10gを超えると、溶剤に溶解した際のワニスの保存安定性が低下し、また接着性シートの架橋反応が常温下で進行し易く、安定したシートライフが得られないといった傾向にある。また、エポキシ樹脂との架橋が密になりすぎ、接着性が低下する傾向にある。ポリウレタン樹脂(a−1)の酸価の下限は、好ましくは150当量/10g、より好ましくは200当量/10g、さらに好ましくは400当量/10gである。ポリウレタン樹脂(a−1)の酸価の上限は、好ましくは900当量/10g、より好ましくは800当量/10g、さらに好ましくは700当量/10gである。酸価を導入する方法は、ポリウレタンを構成するポリエステルポリオールに3官能以上の多官能のカルボン酸を共重合する方法、鎖延長剤にカルボン酸を含有するジオールを使用する方法などがある。
【0019】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(a−1)のガラス転移温度は、30℃以上80℃以下である。ガラス転移温度が30℃未満だと、高温高湿度下での接着性が不十分になる傾向がある。ガラス転移温度が80℃を超えると、基材との貼り合せが不十分になり、また常温での弾性率が高くなり、常温での接着性が不十分になる傾向がある。好ましくはガラス転移温度の下限は35℃、より好ましくはガラス転移温度の下限は40℃である。好ましい上限は75℃、より好ましい上限は70℃である。
【0020】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(a−1)は、その原料としてポリエステルポリオール(d)と、ポリイソシアネート(f)と、鎖延長剤と、を使用することが好ましい。
【0021】
前記ポリエステルポリオール(d)の数平均分子量は、2000以上50000以下であることが好ましく、6000以上35000以下であることがより好ましい。数平均分子量が2000未満であれば、分子内のウレタン結合の数が多くなりすぎ半田耐熱性に劣り、接着性も低下する。反対に数平均分子量が50000を超える場合にはエポキシ樹脂との架橋点間距離が長くなりすぎ半田耐熱性が劣る。
【0022】
前記ポリエステルポリオール(d)は、ポリエステルポリオール(d)を構成する全酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族酸が30モル%以上であることが好ましく、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上である。芳香族酸が30モル%未満の場合、塗膜の凝集力が弱く、各種基材への接着強度の低下が見られる。
【0023】
芳香族酸の例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が例示できる。また、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸、および、それらの金属塩、アンモニウム塩などのスルホン酸基またはスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4−ビス(p−ヒドロキシフェニル)バレリック酸などの芳香族オキシカルボン酸などを挙げることができる。これらのうちでもテレフタル酸、イソフタル酸、およびその混合物が塗膜の凝集力を上げる点で特に好ましい。
【0024】
なおその他の酸成分としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0025】
一方、グリコール成分は脂肪族グリコール、脂環族グリコール、芳香族含有グリコール、エーテル結合含有グリコールなどからなることが好ましく、脂肪族グリコールの例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどを挙げることができ、脂環族グリコールの例としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメチロール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物などを挙げることができる。エーテル結合含有グリコールの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド付加物、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加物などを挙げることができる。芳香族含有グリコールの例としてはパラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物などの、ビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類などを例示できる。
【0026】
また、分子構造の中に水酸基とカルボキシル基を有するオキシカルボン酸化合物もポリエステル原料として使用することができ、5−ヒドロキシイソフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4−ビス(p−ヒドロキシフェニル)バレリック酸などを例示できる。
【0027】
本発明で使用されるポリエステルポリオール(d)中には、分岐骨格を導入する目的で、ポリエステルポリオール(d)を構成する全酸成分または全グリコール成分の合計を100モル%としたとき、0.1モル%以上5モル%以下の範囲内の3官能以上のポリカルボン酸類および/または3官能以上のポリオール類を共重合しても構わない。本発明の接着剤用樹脂組成物にはエポキシ樹脂が配合されているので、分岐骨格を導入することにより、樹脂(a−1)の末端基、すなわち架橋剤と反応できる官能基が増え、架橋密度が高い、強度の高い塗膜を得ることができる。このような効果を示す3官能以上のポリカルボン酸の例としてはトリメリット酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などの化合物を挙げることができ、一方、3官能以上のポリオールの例としてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。3官能以上のポリカルボン酸および/または3官能以上のポリオールを使用する場合は、それぞれ全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0.1モル%以上5モル%以下、好ましくは0.1モル%以上3モル%以下の範囲で共重合するのが良く、5モル%を超えると塗膜の破断点伸度などの力学物性の低下が生じることがあり、また重合中にゲル化を起こす可能性がある。
【0028】
本発明で使用されるポリエステルポリオール(d)中には、必要によりカルボキシル基を導入する目的で、0.1モル%以上10モル%以下の範囲内での酸付加を行うことができる。酸付加にモノカルボン酸、ジカルボン酸、多官能カルボン酸化合物を用いると、エステル交換により分子量の低下が起こるので、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などの化合物が使用できる。本発明で使用されるポリエステルポリオール(d)を構成する全酸成分を100モル%としたとき、10モル%以上の酸付加を行うと、ゲル化を起こすことがあり、またポリエステルの解重合を起こし樹脂分子量を下げてしまうことがある。酸付加を行う方法としては、たとえば、ポリエステル重縮合後バルク状態で直接行う方法と、ポリエステルを溶液化し付加する方法がある。バルク状態での反応は、速度が速いが、多量に付加するとゲル化が起こることがあり、かつ高温での反応になるので、酸素ガスを遮断し酸化を防ぐなどの注意が必要である。一方、溶液状態での付加は、反応は遅いが、多量のカルボキシル基を安定に導入することができる。
【0029】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(a−1)の製造に使用するポリイソシアネート(f)は、ジイソシアネート、その二量体(ウレトジオン)、その三量体(イソシアヌレート、トリオール付加物、ビューレット)などの一種、またはそれら二種以上の混合物であってもよい。たとえば、ジイソシアネート成分としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−キシリレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネ−トメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどが挙げられるが、黄変性の問題から、脂肪族・脂環族のジイソシアネートが好ましい。さらに入手の容易さと経済的な理由で、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0030】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(a−1)を製造する上で、必要により鎖延長剤を使用してもよい。鎖延長剤としては、ポリエステルポリオール(d)の構成成分として既に記載した低分子量ジオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などの1つのカルボン酸と2つの水酸基を有する化合物(e)などが挙げられる。その中で、酸価導入の容易さと、汎用溶剤への溶解性からジメチロールブタン酸が好ましい。また、水酸基導入の容易さから、トリメチロールプロパンの使用も好ましい。
【0031】
本発明に用いるポリウレタン樹脂(a−1)の製造方法としては、前記ポリエステルポリオール(d)および前記ポリイソシアネート(f)、必要により前記鎖延長剤を一括して反応容器に仕込んでも良いし、分割して仕込んでもよい。いずれにしても、系内のポリエステルポリオール、鎖延長剤の水酸基価の合計と、ポリイソシアネートのイソシアネート基の合計について、イソシアネート基/水酸基の官能基の比率が1以下で反応させる。またこの反応は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒の存在下または非存在下に反応させることにより製造することができる。その溶媒としては、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチルなど)、エーテル系溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、ケトン系溶媒(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)およびこれらの混合溶媒が挙げられるが、環境負荷の低減の観点から、酢酸エチル、メチルエチルケトンが好ましい。反応装置としては、撹拌装置の具備した反応缶に限らず、ニーダー、二軸押出機のような混合混練装置も使用できる。
【0032】
ウレタン反応を促進させるため、通常のウレタン反応において用いられる触媒、たとえば錫系触媒(トリメチルチンラウレート、ジメチルチンジラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジヒドロキサイド、スタナスオクトエートなど)、鉛系触媒(レッドオレート、レッド−2−エチルヘキソエートなど)、アミン系触媒(トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセンなど)などを使用することができるが、有害性の観点からアミン系触媒が好ましい。
【0033】
本発明に用いるポリエステル樹脂(a−2)の数平均分子量は、5.0×10以上1.0×10以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂(a−2)の数平均分子量が5.0×10未満だと接着剤の機械的強度が低下し、耐熱性、接着性が低下する傾向があり、数平均分子量が1.0×10を超えると、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られないことがある。ポリエステル樹脂(a−2)の数平均分子量の下限値は、好ましくは8.0×10であり、さらに好ましくは1.0×10である。またポリエステル樹脂(a−2)の数平均分子量の上限値は、好ましくは5.0×10であり、さらに好ましくは3.5×10である。
【0034】
本発明に用いるポリエステル樹脂(a−2)のガラス転移温度は0℃以下である。ガラス転移温度が0℃を超えると、接着性シートが硬く脆くなる傾向にあり、製造時に接着性シートがひび割れ作業性を低下させる場合がある。また接着剤が硬くなり、接着性が不十分になる傾向がある。ガラス転移温度は好ましくは−5℃以下、より好ましくは−10℃以下である。
【0035】
本発明におけるポリエステル樹脂(a−2)に用いられる酸成分およびグリコール成分としては、前記ポリエステルポリオール(d)に用いられる酸成分およびグリコール成分として挙げたものと同様の化合物を好適に用いることが可能である。ポリエステル樹脂(a−2)のガラス転移温度を0℃以下とする方法としては、脂肪族ジカルボン酸を共重合する方法、長鎖グリコールを共重合する方法、ポリアルキレングリコールを共重合する方法、ラクトンを共重合する方法などがある。
【0036】
脂肪族カルボン酸の例としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などが挙げられる。長鎖グリコールの例としては、ノナンジオール、デカンジオール、ダイマー酸ジオールなどが挙げられる。ポリアルキレングリコールの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ラクトンの例としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。ラクトンの中では、入手の容易さと経済的理由からε−カプロラクトンが好ましく、共重合方法としては、重縮合後にバルク状態でラクトンモノマーを投入しポリエステル樹脂に開環重合させる方法が好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物においてポリウレタン樹脂(a−1)およびポリエステル樹脂(a−2)の配合割合は、質量比で95/5〜70/30であり、好ましくは95/5〜80/20、より好ましくは93/7〜85/15である。ポリエステル樹脂(a−2)の配合量が30質量%より大きいと、室温および高温、高温高湿での接着性が低下する傾向にあり、5質量%未満であると、接着性シートが硬く脆くなる傾向にあり、製造時に接着性シートがひび割れ、作業性を低下させる傾向にある。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、窒素原子を含有するエポキシ樹脂(b)を必須とする。本発明の樹脂組成物は半硬化状態にすることでプレス加工時の接着性シートの流れ出し量を抑制でき、製品の汚染、不良率が大幅に改善される。窒素原子を含有するエポキシ樹脂を含有させると、比較的低い温度、短時間の加熱で本発明の樹脂組成物の塗膜を半硬化状態(Bステージ状態)することができるため、作業性が大幅に向上される。窒素原子を含有するエポキシ樹脂(b)としては、たとえば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどのグリシジルアミンなどが挙げられる。これら窒素原子を含有するエポキシ樹脂(b)の配合量はエポキシ樹脂全体の0.1質量%以上20質量%以下である。エポキシ樹脂(b)の配合量が0.1質量%より少なくなると半硬化状態にするために長時間の加熱が必要となり、作業性が低下する。エポキシ樹脂(b)の配合量が20質量%より多くなると、過度に剛直性が高くなり、接着性が低下する傾向にある。また、保存中に架橋反応が進み易く、シートライフが低下する。エポキシ樹脂(b)の配合量の下限は、好ましくは1質量%であり、より好ましくは2質量%である。エポキシ樹脂(b)の配合量の上限は、好ましくは10質量%であり、より好ましくは5質量%である。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(c)を必須とする。バルキーなジシクロペンタジエン骨格を持つエポキシ樹脂からなる硬化塗膜は、極めて吸湿率が小さく、また、硬化塗膜の架橋密度を下げて、基材からの剥離時の応力を緩和させることができるため、高湿度下での接着性が更に向上する。ジシクロペンタジエン骨格を持つエポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂全体の60質量%以上が好ましく、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。ジシクロペンタジエン骨格を持つエポキシ樹脂を60質量%以上含むことで、より優れた高温高湿下での接着性を発現することができる。
【0040】
本発明の接着剤用樹脂組成物に配合するエポキシ樹脂として、その他のエポキシも併用することができる。たとえば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルタイプ、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステルタイプ、あるいは3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの脂環族あるいは脂肪族エポキサイドが挙げられる。本発明の樹脂組成物に配合するエポキシ樹脂全体の配合量は、前記ポリウレタン樹脂(a−1)と前記ポリエステル樹脂(a−2)の合計100質量部に対して5質量部以上30質量部以下である。エポキシ樹脂全体の配合量が前記ポリウレタン樹脂(a−1)と前記ポリエステル樹脂(a−2)の合計100質量部に対して5質量部未満であると、架橋が不十分になり耐熱性が低下する傾向にあり、30質量部より大きくなると、未反応のエポキシ樹脂が多量に残存し、耐熱性、耐湿性が低下する傾向にある。
【0041】
本発明に使用するエポキシ樹脂の硬化反応に、硬化触媒を使用することができる。たとえば2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N’−メチル−N−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7などの三級アミン類、ならびに、これらの三級アミン類をフェノール、オクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩などでアミン塩にした化合物、トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナートなどのカチオン触媒、トリフェニルフォスフィンなどが挙げられる。これらのうち1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7などの三級アミン類、ならびに、これらの三級アミン類をフェノール、オクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩などでアミン塩にした化合物が、熱硬化性および耐熱性、金属への接着性、配合後の保存安定性の点で好ましい。その際の配合量はポリウレタン樹脂(a−1)100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の配合量であることが好ましい。この範囲であればポリウレタン樹脂(a−1)とエポキシ化合物の反応に対する効果が一段と増し、強固な接着性能を得ることができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物には必要に応じ、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、リン系などの酸化防止剤、臭素系、リン系、窒素系、水酸化金属化合物などの難燃剤、レベリング剤、顔料、染料などの添加剤を適宜配合することができる。
【0043】
本発明の接着剤用樹脂組成物は、一液型に限定されず、複数の剤に分け使用に先立ち混合する複数剤混合型の接着剤用樹脂組成物であってもよい。複数剤混合型の場合、接着剤として用いる際に複数剤を正確な配合比でかつ均一に混合する必要があり、剤数が増すほどにその工程の困難度も大きくなる。したがって、複数剤混合型の中でも、二液混合型または三液混合型とすることが好ましい。二液混合型の好ましい例としては、ポリウレタン樹脂(a−1)とポリエステル樹脂(a−2)と有機溶剤からなる剤と、窒素原子を含有するエポキシ樹脂(b)とジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(c)と有機溶剤からなる剤と、の二剤とすることを挙げることができる。また、三液混合型の好ましい例としては、ポリウレタン樹脂(a−1)と有機溶剤からなる剤と、ポリエステル樹脂(a−2)と有機溶剤からなる剤と、窒素原子を含有するエポキシ樹脂無機充填材(b)とジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(c)と有機溶剤からなる剤と、の三剤とすることを挙げることができる。もちろん、前記二液混合型、三液混合型の接着剤組成物において、その一部の剤または全ての剤に有機溶剤を用いないことも差支えない。
【0044】
本発明において、接着性シートとは、基材と本発明の樹脂組成物、または基材と本発明の樹脂組成物と離型基材から構成されるものである。接着性シートは本発明の樹脂組成物によって基材を被接着材に接着させる機能を有する。接着性シートの基材は、接着後、被接着材の保護層として機能する。また接着性シートの基材として離型性基材を使用すると、離型性基材を離型して、さらに別の被接着材に接着剤層を転写することができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物を、常法に従い、各種基材に塗布し、乾燥することにより、本発明の接着性シートを得ることができる。また乾燥後、接着剤層に離型基材を貼付けると、基材への裏移りを起こすことなく巻き取りが可能になり操業性に優れるとともに、接着剤層が保護されることから保存性に優れ、使用も容易である。また離型基材に塗布、乾燥後、必要に応じて別の離型基材を貼付すれば、接着剤層そのものを他の基材に転写することも可能になる。また、接着性シートは本発明の樹脂組成物の少なくとも一部が反応した半硬化状態(Bステージ状態)であることが好ましい。半硬化状態にすることでプレス加工時の接着性シートの流れ出し量を抑制でき、製品の汚染、不良率の増加を防止できる。
【0046】
ここで、本発明の樹脂組成物を塗布する基材としては、特に限定されるものではないが、フィルム状樹脂、金属板、金属箔、紙類などを挙げることができる。フィルム状樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、オレフィン系樹脂などを例示することができる。金属板および金属箔の素材としては、SUS、銅、アルミ、鉄、亜鉛などの各種金属、およびそれぞれの合金、めっき品などを例示することができる。紙類として上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などを例示することができる。また複合素材として、ガラスエポキシなどを例示することができる。本発明の樹脂組成物との接着力、耐久性から、本発明の樹脂組成物を塗布する基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、SUS鋼板、銅箔、アルミ箔、ガラスエポキシが好ましい。
【0047】
また本発明の樹脂組成物を塗布する離型基材としては、特に限定されるものではないが、たとえば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたもの、ならびに、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などの各種オレフィンフィルム上、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に上記離型剤を塗布したものが挙げられるが、塗布された接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与えるなどの理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、ポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0048】
なお、本発明の樹脂組成物を基材上にコーティングする方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーターなどを使用する方法が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤層を設けることもできる。乾燥後の接着剤層の厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5μm以上200μm以下の範囲である。接着剤層の厚みが5μm未満では、接着強度が不十分である。接着剤層の厚みが200μmを超える場合には乾燥が不十分で、残留溶剤が多くなり、プリント配線板製造のプレス時に膨れを生じるという問題点が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1%以下が好ましい。乾燥後の残留溶剤率が1%を超える場合には、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡して、膨れを生じるという問題点が挙げられる。
【0049】
本発明における「プリント配線板」は、導体回路を形成する金属箔と樹脂層とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、たとえば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルム、スクリーン印刷インキなどを用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。
【0050】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。たとえば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層およびカバーフィルム層の4層から構成されるプリント配線板とすることができる。またたとえば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるプリント配線板とすることができる。プリント配線板は必要に応じて補強材で補強することがあり、その場合、補強材、接着剤層が基材フィルム層の下に設けられる。
【0051】
さらに、必要に応じて、上記のプリント配線板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。
【0052】
本発明の樹脂組成物はプリント配線板の各接着剤層に好適に使用することが可能である。特に本発明の樹脂組成物を接着剤として使用すると、プリント配線板を構成する基材に対して高い接着性を有し、かつ鉛フリーハンダにも対応できる高度の耐熱性を有し、さらに高温高湿度下においても高い接着性を維持することが可能である。特に耐ハンダ性を評価する高温領域において、低い貯蔵弾性率を維持しながら、高い架橋密度を得ることができるので、加湿状態での耐ハンダ性試験における水分の蒸発による衝撃を十分に緩和することが可能であり、金属箔層とカバーフィルム層間の接着剤、および基材フィルム層と補強材層間の接着に適している。特に、SUS板のように剛直な補強材を使用した場合、加湿状態でのハンダづけの際の基材フィルム層と補強材層間の接着剤層に及ぶ衝撃は強大であり、そのような場合の接着に用いる樹脂組成物として好適である。
【0053】
本発明のプリント配線板において、基材フィルムとしては、従来からプリント配線板の基材として使用されている任意の樹脂フィルムが使用可能である。基材フィルムの樹脂としては、ハロゲンを含む樹脂を用いてもよく、ハロゲンを含まない樹脂を用いてもよい。環境問題の観点から、好ましくは、ハロゲンを含まない樹脂であるが、難燃性の観点からは、ハロゲンを含む樹脂を用いることもできる。基材フィルムは、好ましくは、ポリイミドフィルムまたはポリアミドイミドフィルムであることが好ましい。
【0054】
本発明に用いる金属箔としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。材質としては、たとえば、銅箔、アルミニウム箔、スチール箔、およびニッケル箔などを使用することができ、これらを複合した複合金属箔、亜鉛、クロム化合物など他の金属で処理した金属箔についても用いることができる。好ましくは、銅箔である。
【0055】
金属箔の厚みについては特に限定はないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。
【0056】
金属箔は、通常、ロール状の形態で提供されている。本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されない。ロール状の形態の金属箔を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250mm以上500mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0057】
カバーフィルムとしては、プリント配線板用の絶縁フィルムとして従来公知の任意の絶縁フィルムが使用可能である。たとえば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの各種ポリマーから製造されるフィルムが使用可能である。より好ましくは、ポリイミドフィルムまたはポリアミドイミドフィルムであり、さらに好ましくは、ポリイミドフィルムである。
【0058】
ポリイミドフィルムは、その樹脂成分としてポリイミド樹脂を主成分とする。樹脂成分のうち、90質量%以上がポリイミドであることが好ましく、95質量%以上がポリイミドであることがより好ましく、98質量%以上がポリイミドであることがさらに好ましく、99質量%以上がポリイミドであることが特に好ましい。ポリイミド樹脂としては、従来公知の任意の樹脂を使用することができる。
【0059】
カバーフィルムの素材樹脂としては、ハロゲンを含む樹脂を用いてもよく、ハロゲンを含まない樹脂を用いてもよい。環境問題の観点から、好ましくは、ハロゲンを含まない樹脂であるが、難燃性の観点からは、ハロゲンを含む樹脂を用いることもできる。
【0060】
補強材としては、SUS板、アルミニウム板などの金属板、ポリイミドフィルム、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化した板などが使用される。
【0061】
本発明のプリント配線板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知の任意のプロセスを用いて製造することができる。
【0062】
好ましい実施態様では、カバーフィルム層に接着剤層を積層した半製品(以下、「カバーフィルム側半製品」という)を製造する。他方、基材フィルム層に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側2層半製品」という)または基材フィルム層に接着剤層を積層し、その上に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側3層半製品」という)を製造する(以下、基材フィルム側2層半製品と基材フィルム側3層半製品とを合わせて「基材フィルム側半製品」という)。このようにして得られたカバーフィルム側半製品と、基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、4層または5層のプリント配線板を得ることができる。さらに補強材層に接着剤層を積層した半製品(以下、「補強材側半製品」という)を製造し、必要に応じて、プリント配線板の基材フィルム層に貼り合わせ補強することができる。また、補強材と基材フィルム間に用いる接着剤を離型基材に塗布し、プリント配線板の基材フィルム裏面に転写し、補強材と貼り合わせることもできる。
【0063】
基材フィルム側半製品は、たとえば、
1) 前記金属箔に基材フィルムとなる樹脂の溶液を塗布し、塗膜を初期乾燥する工程、
2) 1)で得られた金属箔と初期乾燥塗膜との積層物を熱処理・乾燥する工程(以下、「熱処理・脱溶剤工程」という)、
を含む製造法により得られる。
【0064】
金属箔層における回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アクティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
【0065】
得られた基材フィルム側半製品は、そのままカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後にカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0066】
カバーフィルム側半製品は、たとえば、カバーフィルムに接着剤を塗布して製造される。必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0067】
得られたカバーフィルム側半製品は、そのまま基材側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0068】
基材フィルム側半製品とカバーフィルム側半製品とは、それぞれ、たとえば、ロールの形態で保管された後、貼り合わされて、プリント配線板が製造される。貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能であり、たとえば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロール装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼り合わせることもできる。
【0069】
補強材側半製品は、たとえば、ポリイミドフィルムのように柔らかく巻き取り可能な補強材の場合、補強材に接着剤を塗布して製造されることが好適である。また、たとえばSUS、アルミなどの金属板、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化させた板などのように硬く巻き取りできない補強板の場合、予め離型基材に塗布した接着剤を転写塗布することによって製造されることが好適である。また、必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0070】
得られた補強材側半製品は、そのままプリント配線板裏面との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0071】
基材フィルム側半製品、カバーフィルム側半製品、補強剤側半製品はいずれも、本発明におけるプリント配線板用積層体である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは質量部を示す。
【0073】
(物性評価方法)
(1)ポリエステル樹脂の組成
ポリエステル樹脂を重クロロホルムに溶解し、H−NMR分析により、酸成分、グリコール成分のモル比を求めた。
【0074】
(2)数平均分子量Mn
試料を、樹脂濃度が0.5質量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィーにより分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
【0075】
(3)ガラス転移温度
測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−200を用いて、20℃/minの昇温速度で測定し、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点をガラス転移温度とした。
【0076】
(4)酸価
試料0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを用い、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、樹脂10gあたりの当量(当量/10g)を算出した。
【0077】
(5)エポキシ価
JIS K 7236に準拠し、過塩素酸滴定法を用いて得られたエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量)から樹脂10gあたりの当量(当量/10g)を算出した。
【0078】
(特性評価方法)
(1)接着性
後述する接着剤組成物を厚さ25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル)に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性シートの接着剤組成物を塗布した面と500μmのSUS304板とを160℃で30kgf/cmの加圧下に1分間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た(初期評価用サンプル)。また、接着性シートを、40℃、相対湿度80%加湿下にて3週間放置後、SUS304板を圧延銅箔に変更するほかは初期評価用サンプルの場合と同様にしてプレスおよび熱処理を行い、経時評価用のサンプルを得た。
【0079】
これらのサンプルを東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃雰囲気下、引張速度50mm/minで180°剥離試験を行い、接着強度を評価した。この試験は常温での接着強度を示すものである。実用的性能から考慮すると15N/cm以上が好ましく、より好ましくは20N/cm以上である。
【0080】
(2)クリープ特性
後述する接着剤用樹脂組成物を厚さ125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、カプトン)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。このようにして得られた接着性シートを5mm幅に切断し、接着剤用樹脂組成物を塗布した面と500μmのSUS304板とを、160℃で30kgf/cmの加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、クリープ特性評価用サンプルを得た(初期評価用サンプル)。また、上記接着性シートを、40℃、相対湿度80%加湿下にて14日間放置後、初期評価用サンプルの場合と同様にしてSUS304板とプレス、熱処理して硬化させ、経時評価用のサンプルを得た。得られたサンプルの一端をSUS304板から剥がし、200gの錘をぶら下げて剥離形態が180°剥離となるようにし、60℃×90%雰囲気下に30分間保持し、その間に剥がれた距離を測定した。この試験は、高温高湿下での接着強度を示すもので、剥離のないものが好ましく、剥離距離が大きくなるほど、接着強度が低い。
【0081】
(3)流れ出し性(プレス適性)
前記クリープ特性評価用サンプル(初期評価用サンプル)のポリイミドフィルムからの接着剤の流れ出し量を測定した。
【0082】
(判定)
a:0.15mm未満、
b:0.15mm以上0.3mm未満、
c:0.3mm以上。
【0083】
(4)低温折り曲げ試験
後述する接着剤用樹脂組成物を厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製、パイレン)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥し接着性シートを得た。該接着性シートを5℃雰囲気下で24時間以上放置後、5℃雰囲気下のまま、接着剤組成物の層が外側になるように折り曲げ、亀裂、割れの有無を確認した。亀裂、割れの無いものは、製造時の打ち抜き加工、スリット加工の際に亀裂、割れが抑制され、また低温下においても作業性を向上し、不良品率を低下できる。
【0084】
(判定)
a:亀裂、割れなし、
b:亀裂、割れあり。
【0085】
<ポリエステル樹脂Aの重合例>
撹拌器、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸203部、イソフタル酸203部、無水トリメリット酸9.6部、エチレングリコール158部、ネオペンチルグリコール177部、テトラブチルチタネート0.2部を仕込み、4時間かけて250℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で30分後期重合を行った。その後、窒素にて常圧に戻し、ε−カプロラクトン399部を投入し、200℃で1時間反応させることによってポリエステル樹脂Cを得た。このようにして得られたポリエステル樹脂Cの組成、特性値を表1に示した。各測定評価項目は前述の方法に従った。
【0086】
<ポリエステル樹脂Bの重合例>
撹拌器、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸125部、イソフタル酸120部、セバシン酸202部、無水トリメリット酸4.8部、2−メチル−1,3−プロパンジオール311部、1,4−ブタンジオール140部、テトラブチルチタネート0.2部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を240℃まで昇温し、更に1mmHg以下で1時間後期重合を行った。その後、窒素にて常圧に戻し、無水トリメリット酸4.8部を投入し、220℃で30分間反応させることによってポリエステル樹脂Aを得たこのようにして得られたポリエステルの組成、特性値を表1に示した。各測定評価項目は先述の方法に従った。
【0087】
<ポリエステル樹脂C,D,F,G,Iの重合例>
ポリエステル樹脂A,Bの重合例と同様にして、また温度、時間を適宜選択し表1に示す原料を用いて、ポリエステル樹脂C,D,F,G,Iを得た。この樹脂の組成、特性値を表1に示した。
【0088】
<ポリエステル樹脂Eの重合例>
撹拌器、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸208部、イソフタル酸208部、エチレングリコール158部、ネオペンチルグリコール177部、テトラブチルチタネート0.2部を仕込み、4時間かけて240℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で1時間後期重合を行い、ポリエステル樹脂Eを得た。このようにして得られたポリエステル樹脂の組成、特性値を表1に示した。各測定評価項目は先述の方法に従った。
【0089】
<ポリエステル樹脂Hの重合例>
ポリエステル樹脂Eの重合例と同様にして、また温度、時間を適宜選択し表1に示す原料を用いて、ポリエステル樹脂Hを得た。この樹脂の組成、特性値を表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
<ポリウレタン樹脂Aの重合例>
温度計、攪拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器に表1に記載したポリエステル樹脂D650部、トルエン650部を仕込み溶解後、トルエン413部を蒸留させ、トルエン/水の共沸により反応系を脱水した。60℃まで冷却後、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)を29.3部、メチルエチルケトン237部を加えた。DMBAが溶解後、ヘキサメチレンジイソシアネートを30.6部、さらに反応触媒としてジアザビシクロウンデセン(DBU)を0.03部加え、80℃で7時間反応させてから、メチルエチルケトン444部、トルエン148部を投入して固形分濃度を40重量%に調整し、ポリウレタン樹脂A溶液を得た。ポリウレタン樹脂Aの溶液を120℃で1時間乾燥することにより溶剤を除いたフィルムを用いて、上述した各測定評価項目に従い測定した。ポリウレタン樹脂の特性を表2に示した。
【0092】
<ポリウレタン樹脂B,C,D,E,Fの重合例>
ポリウレタン樹脂Aの重合例と同様にして、表2に示す原料を用いて、ポリウレタン樹脂B,C,D,E,Fを得た。特性値を表2に示した。各測定評価項目は上述の方法に従った。
【0093】
【表2】
【0094】
<実施例1>
ポリウレタン樹脂Aを95部(固形分のみの質量、溶剤は含まない。以下同様)、ポリエステル樹脂Aを5部、エポキシ樹脂A[大日本インキ化学工業(株)製 HP7200−H(ジシクロペンタンジエン型エポキシ樹脂)、エポキシ価=3540当量/10g]15.11部、エポキシ樹脂B[三菱瓦斯化学(株)製 TETRAD−X(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)、エポキシ価=10000当量/10g]]0.43部、を配合し、目的とする接着剤用樹脂組成物を得た。なお、エポキシ樹脂は、MEK70%溶液として配合した。エポキシ樹脂の配合量は、ポリウレタン樹脂Aおよびポリエステル樹脂Aの酸価の総量の1.6倍グリシジル基を含むように算出して決定した。接着評価試料を上述の方法で作製し、評価した結果を表3に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。また、流れ出し性、低温折り曲げ性も良好な結果を示している。
【0095】
<実施例2〜12>
実施例1と同じく、表3、表4に示される樹脂種、配合量で試料を作製し、樹脂特性を評価した。なお、エポキシ樹脂Cは、東都化成社製 YDCN703(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ価=4651当量/106g])である。評価した結果を表3、表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。また、流れ出し性、低温折り曲げ性も良好な結果を示している。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
<比較例1〜12>
実施例1〜12と同様にして、表5、表6に示される、樹脂種、配合量で試料を作製し、樹脂特性を評価した。
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
比較例1は、ガラス転移温度が0℃以下のポリエステル樹脂が配合されておらず、本発明の範囲外である。柔軟性が不十分となり、低温折り曲げ性が不良である。
【0102】
比較例2は、窒素含有のエポキシ樹脂が配合されておらず本発明の範囲外である。接着性シートの流動性が高く、流れ出し性が不良である。
【0103】
比較例3は、配合されるポリエステル樹脂のガラス転移温度が高く、本発明の範囲外である。柔軟性が不十分となり、低温折り曲げ性が不良である。
【0104】
比較例4は、ポリエステル樹脂の配合量が多く、本発明の範囲外である。凝集力が小さくなるため、剥離強度が不良である。また、接着性シートの耐熱性が低く、流れ出し性が不良である。
【0105】
比較例5は、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が配合されておらず本発明の範囲外である。硬化塗膜の架橋密度が高くなり、剥離時の応力を緩和能力が低くなるため剥離強度が低く、吸湿性が高くなるため、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良である。
【0106】
比較例6は、エポキシ樹脂の配合量が多く、本発明の範囲外である。反応性が高く、接着性シートの安定性が不良であり、経時で剥離強度、クリープ特性が大幅に低下する。
【0107】
比較例7は、窒素含有のエポキシ樹脂の配合量が多く本発明の範囲外である。過度に剛直性が高くなり、室温の剥離強度、クリープ特性共に不良である。
【0108】
比較例8は、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が低く本発明の範囲外である。耐熱性が低いため、クリープ特性が不良である。また、接着性シートの安定性が不良であり、経時で室温の剥離強度が大幅に低下する。
【0109】
比較例9は、ポリウレタン樹脂の酸価が大きく本発明の範囲外である。硬化物の剛直性が過度に高くなるため、室温の剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良である。
【0110】
比較例10は、ポリウレタン樹脂の酸価が低く本発明の範囲外である。硬化物の架橋が不十分となり、凝集力、耐熱性が低下するため、剥離強度、クリープ特性が不良である。また、接着性シートの流動性が高く、流れ出し性が不良である。
【0111】
比較例11は、ポリウレタン樹脂の分子量が小さく本発明の範囲外である。可とう性が低いため、室温の剥離強度も低く、高温高湿度下での接着性の指標となるクリープ特性も不良である。
【0112】
比較例12は、配合されるポリエステル樹脂の分子量が低く、本発明の範囲外である。耐熱性が不十分となり、流れ出し性、クリープ特性が不良である。
【0113】
<比較例13>
特許文献4の合成例1、合成例5と同様にして、ポリエステル樹脂1、ポリエステル樹脂2を合成した。得られたポリエステル樹脂1、ポリエステル樹脂2を用いて特許文献4の実施例1と同様にして分散溶液(接着剤)を得た。
【0114】
<ポリエステル樹脂1の合成>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、テレフタル酸83部、イソフタル酸81部、無水トリメリット酸2部、エチレングリコール77部、ネオペンチルグリコール79部を仕込み、加圧下4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて重合触媒としてテトラブチルチタネート0.08部を入れ、常圧で10分間攪拌した後、1時間かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで上昇し、更に1mmHg以下で30分後期重合を行った。その後、窒素雰囲気下中、200℃まで冷却した後、無水トリメリット酸2部を仕込み、30分間攪拌を行い、ポリエステル樹脂1を得た。この様にして得られたポリエステル樹脂1の特性値を以下に示した。各測定評価項目は先述の方法に従った。
【0115】
・数平均分子量:14000、
・酸価:100当量/10g。
【0116】
・ガラス転移温度:60℃、
・樹脂組成:テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール///トリメリット酸=50/49/1//50/50///1(モル比)。
【0117】
<ポリエステル樹脂2の合成>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、テレフタル酸105部、イソフタル酸17部、セバシン酸55部、エチレングリコール90部、ネオペンチルグリコール68部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて重合触媒としてテトラブチルチタネート0.08部を入れ、常圧で10分間攪拌した後、1時間かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで上昇し、更に1mmHg以下で30分後期重合を行い、ポリエステル樹脂2を得た。この様にして得られたポリエステル樹脂2の特性値を以下に示した。各測定評価項目は先述の方法に従った。
【0118】
・数平均分子量:30000、
・酸価:40当量/10g、
・ガラス転移温度:10℃、
・樹脂組成:テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=63/10/27//58/42(モル比)。
【0119】
<分散溶液(接着剤)の作製>
得られたポリエステル樹脂1及びポリエステル樹脂2をそれぞれ固形分濃度が30%となるように、メチルエチルケトン/トルエン=1/4(重量比)にて溶解した。これらの溶解したポリエステル樹脂を固形分量で100部(ポリエステル樹脂1/ポリエステル樹脂2=28/72[重量比])、デカブロモジフェニルエーテルを50部、三酸化アンチモンを36部、二酸化チタンを14部、二酸化ケイ素を4部、ガラスビーズを100部、250mlマヨネーズ瓶に入れて、シェーカーで6時間分散し、分散溶液を得た。
【0120】
<分散溶液(接着剤)の接着剤特性評価>
得られた分散溶液を上述の特性評価方法に従い、評価した。評価結果を以下に示した。
【0121】
・剥離強度
初期:8N/cm
40℃80%RH3週間放置後:7N/cm
・クリープ特性
初期:>40mm
40℃80%RH3週間放置後:>40mm
・流れ出し量
判定:×
・低温折り曲げ試験
判定:×
比較例13は、ポリウレタン樹脂が含まれず、凝集力が低いため、剥離強度、流れ出し量が不良である。また、エポキシ樹脂が配合されていないため、非架橋(熱可塑性)の塗膜となり、耐熱性が低く、クリープ特性も不良である。加えて、配合されるポリエステル樹脂のガラス転移温度が高いため、柔軟性が不十分となり、低温折り曲げ性が不良である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明により、各種プラスチックフィルムへの接着性、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属への接着性、ガラスエポキシへの接着性、高温高湿度下での接着性に優れ、製造時の加工適性に優れた接着剤を得ることができ、かつ接着性シートのシートライフが良好な樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着性シートおよびこれを接着剤層として含むプリント配線板を提供することができる。